JP5348307B2 - 化粧シート及びこれを用いた化粧板 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧板に関する。
家具や台所製品のキャビネット、床タイルや壁パネル、あるいは台所のシンク周りなどに用いられる化粧板には、建材用基板に、例えば木目調柄などを印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせたものが一般に用いられている。そして、このような化粧板に使用される化粧シートには、ラミネート加工などの二次加工のために、柔軟性、切削性、耐破断性などの加工適性や、耐汚染性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、耐候性などの使用適性など、種々の特性が要求される。
こうした要求を満たすために、上記加工適性を十分に満足する基材を用い、該基材の表面に表面保護層を施すことが行われており、電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましく用いられている。電離放射線硬化性樹脂組成物は紫外線や電子線などの電離放射線によって硬化する組成物であり、該組成物を用いると、表面保護層としては有機溶剤を使用せず無溶剤で塗布形成できるので環境に良く、しかも高架橋密度にできるので、耐磨耗性などの表面強度も容易に出せるなどの各種利点が得られる。
ところで、近年の消費者の高級品指向により、床タイルや壁パネル、あるいは家具や台所製品のキャビネットなどに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板や化粧シートにおいても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。そのため、化粧シートに凹凸感、立体感、奥行感といった、質感の付与が重要となってきている。このような質感を表現する化粧シートとしては、模様の特定の部分にあわせて艶消しや凹凸を付与する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
しかし、これらの文献で開示される化粧シートは、シート表面側に設けられる表面層に無機粒子を含有させることで、該表面層に一定の硬度を付与して耐擦傷性などを向上し、かつ質感を表現できるものではあるが、特に採用する絵柄が暗めのトーンのものの場合、無機粒子に起因する白濁により、絵柄の鮮明性の低下が顕著となるといった問題があった。
特開2006−51695号公報 国際公開第2006/035880号パンフレット
本発明は、このような状況下で、白濁による絵柄の鮮明性の低下が改善された、優れた意匠感と、優れた耐汚染性とを有する化粧シート、及びこれを用いた化粧板を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材、低艶絵柄インキ層及び表面保護層を有する化粧シートにおいて、該低艶絵柄インキ層に所定の吸油量のシリカ微粒子を用い、かつ該表面保護層の形成に電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、インサート成形用加飾シートの内部にエンボス加工による凹凸模様を設け、該凹凸模様を樹脂により埋めることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子を含有する絵柄インキを部分的に塗布して絵柄インキ層を形成する工程、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を該絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該絵柄インキ層が形成された領域及び該絵柄インキ層が形成されてない領域とを含む全面にわたって被覆するように塗布し、架橋硬化させて表面保護層を形成する工程を順に有する、基材、絵柄インキ層、表面保護層、及び該表面保護層中であって該絵柄インキ層の直上部やその近傍に低光沢領域を有する化粧シートの製造方法、
(2)絵柄インキ層を形成する樹脂組成物に用いられる樹脂が、非架橋性樹脂である上記(1)に記載の化粧シートの製造方法、及び
(3)基材上に、吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子を含有する絵柄インキを部分的に塗布して絵柄インキ層を形成する工程、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を該絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該絵柄インキ層が形成された領域及び該絵柄インキ層が形成されてない領域とを含む全面にわたって被覆するように塗布し、架橋硬化させて表面保護層を形成する工程を順に有する、基材、絵柄インキ層、表面保護層、及び該表面保護層中であって該絵柄インキ層の直上部やその近傍に低光沢領域を有する化粧シートの製造工程、ならびに該化粧シートの該基材と基板とを接着剤層を介して貼付けする工程を順に有する化粧板の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、白濁による絵柄の鮮明性の低下が改善された、優れた意匠感と、優れた耐汚染性とを有する化粧シート、及びこれを用いた化粧板を得ることができる。
本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧板の断面を示す模式図である。
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、基材上に少なくとも、部分的に設けられた低艶絵柄インキ層と、該低艶絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該低艶絵柄インキ層が形成された領域及び該低艶絵柄インキ層が形成されてない領域とを含む全面にわたって被覆する表面保護層を有する化粧シートであって、該低艶絵柄インキ層を形成する低艶絵柄インキが吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子を含有し、該表面保護層は電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなり、該表面保護層中に、該低艶絵柄インキ層の直上部及びその近傍に視覚的に凹部として認識される凹部領域が形成されることを特徴とする。
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1及び2を用いて説明する。図1及び2は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図である。
図1に示す例では、基材2上に、所定の微粒子10を含む低艶絵柄インキ層3が積層され、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層5が積層されたものである。そして、低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍における表面保護層には低光沢領域4が形成される。表面保護層5側から本発明の化粧板を見ると、部分的に存在する低光沢領域4は視覚的に凹部として認識され、全体として凹凸模様が認識されるものである。なお、低光沢領域4は図中で点の集合により表現されている。
図2に示す例では、基材2上に全面を被覆する一様均一な着色層6、絵柄層7、一様均一な浸透防止層8、所定の微粒子10を含む低艶絵柄インキ層3、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなる表面保護層5がこの順に積層されたものである。図2に示される化粧シート1も、図1に示されるシートと同様に、低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍における表面保護層には低光沢領域4が形成され、該低光沢領域4は視覚的に凹部として認識され、全体として凹凸模様が認識される。
《基材2》
本発明で用いられる基材2は、通常化粧シート用として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材などを用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体など、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが挙げられる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間の強度の強化や、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させた、紙間強化紙、樹脂含浸紙などであってもよい。そのほか、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙など建材分野で使われることの多い各種紙、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙などを用いることもできる。
また、各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維などの無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、もしくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
金属箔、金属シート、又は金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅などからなるものや、これらの金属をめっきなどで施したものを使用することもできる。各種の木質系の板としては、木材の単板、合板、集成材、パーチクルボード、又はMDF(中密度繊維板)などの木質繊維板が挙げられる。窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイルなどが例示される。これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだものなど、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材は基材と各層との層間密着性の強化等のためのプライマー層を形成するなどの処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
基材2の厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
《低艶絵柄インキ層3及び低光沢領域4》
本発明の化粧シートに設けられる低艶絵柄インキ層3は、基材上に部分的に存在し、図1に示すように基材2に直接積層されるか、または図2に示すように、必要に応じて設けられた着色層6、絵柄層7、浸透防止層8などの上に積層されるものである。そして、該低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍における表面保護層には、低光沢領域4が形成される。
表面保護層5側から本発明の化粧シートを見ると、低光沢領域4は艶が低く、その周辺の艶との差によって視覚的に凹部として認識されるため、全体として、この低光沢領域4によって視覚的に凹凸模様として認識される。
表面保護層5中に形成される低光沢領域4の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図1及び図2に示すように、低艶絵柄インキ層3の表面から表面保護層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、表面保護層5の最表面に達するものであってもよい。
低光沢領域4とその周辺とにおける艶差の発生機構やその広がりの程度の強弱の発生機構については、十分解明されるには至っていないが、艶差の発生機構については、各種実験と観察、測定の結果から、低艶絵柄インキ層3の表面に表面保護層5を形成するための電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、各材料の組合せ、塗工条件の適当な選択によって、低艶絵柄インキ層3の樹脂成分と表面保護層が、一部溶出、分散、混合などの相互作用を発現することによるものと推測される。この際、低艶絵柄インキ層3のインキと電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍に存在し、該懸濁状態となった部分が光を散乱して低光沢領域をなすものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面保護層を架橋硬化させることにより、かかる状態が固定されると、表面保護層5中に低光沢領域4が部分的に形成され、目の錯覚により、その部分が凹部であるかのように認知されるものと推測される。
本発明の化粧シートにおいては、この低艶絵柄インキ層3の特徴をいかして、好ましく設けられる絵柄層7との組合せにより、絵柄層7が表現しようとする模様のうち、艶を消して視覚的に凹部を表現したい部分と低艶絵柄インキ層3とを同調させることによって、艶差による視覚的凹部を有する模様が得られる。例えば、絵柄層7によって木目模様を表現しようとする場合には、木目の導管部分に低艶絵柄インキ層3のインキ部分を同調させることにより、艶差により導管部分が視覚的に凹部となった模様が得られる。また、絵柄層7によってタイル貼模様を表現しようとする場合には、タイル貼の目地溝部分に低艶絵柄インキ層3のインキ部分を同調させることにより、艶差によって、目地溝部分が視覚的に凹部となった模様が得られる。
(低艶絵柄インキ)
低艶絵柄インキ層3を形成する低艶絵柄インキは、吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子10を含有する。シリカ微粒子の吸油量が上記の範囲内であると、化粧シートの白濁による絵柄の鮮明性の低下が改善された、優れた意匠性と耐汚染性とを得ることができる。このような観点から、シリカ微粒子の吸油量は、130ml/100g以下が好ましい。
また、本発明におけるシリカ微粒子の吸油量の下限は特にないが、10ml/100g以上が好ましく、30ml/100g以上がより好ましい。
シリカ微粒子の平均粒径は、低艶絵柄インキ層の厚さにもよるが、0.1〜7μmの範囲であることが好ましく、0.1〜5μmの範囲であることがより好ましく、0.1〜3μmがさらに好ましい。シリカ微粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、インキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールが容易であり、通常低艶絵柄インキ層の厚さより小さくなるので該微粒子の頭だしが比較的押えられ目立たなくなるので、視覚的な違和感がおこりにくい。ここで、平均粒径は、コールターカウンター法もしくはレーザー回折法により測定されたものである。
シリカ微粒子の比表面積は、本発明においては特に制限はないが、通常10〜800m2/g程度のものから適宜選択して用いればよい。ここで、比表面積は窒素吸着によるJIS K6221の方法で測定した値である。
低艶絵柄インキ中のシリカ微粒子の濃度は、後述する低艶絵柄インキに含まれるバインダー樹脂100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。シリカ微粒子の濃度が上記範囲内であると、インキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールが容易であり、十分な意匠性も得られる。
低艶絵柄インキに含まれるバインダー樹脂は、表面保護層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合などの相互作用を発現し得る性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。このようなバインダー樹脂としては、ポリエステルウレタン系樹脂などの熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、なかでもポリエステルウレタン系樹脂などの熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂が好ましい。
また、必要に応じて、低光沢領域の発現の程度、低艶領域とその周囲との艶差のコントラストを調整するため、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを混合することができる。
低艶絵柄インキは、着色剤を含有することができ、それ自体でも絵柄模様を与えることができるが、図2に示すような着色層6や絵柄層7を有する場合には、必ずしも着色剤を添加して着色する必要はない。
低艶絵柄インキに用いられる着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
低艶絵柄インキの塗布量は、2〜20g/m2の範囲であることが好ましい。2g/m2以上であると、上述した低艶絵柄インキと電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用が起こり、低光沢領域が十分得られるため、化粧シート表面の十分な艶差が得られる。一方20g/m2以下であると、低艶絵柄インキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、低艶絵柄インキの塗布量は5〜10g/m2の範囲であることがより好ましい。
《表面保護層5》
表面保護層5は、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化して形成するものであり、層中には、上記したように低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍に視覚的に凹部として認識される低光沢領域4が形成されている。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層5の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂、各種添加剤などを含む樹脂組成物である。この電離放射線硬化性樹脂組成物に好ましく用いられる電離放射線硬化性樹脂は、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができるが、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95〜100%程度としても塗工性を有し、かつ硬化する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。そのような電離放射線硬化性樹脂の代表例を以下に記載する。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有するような多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて用いればよい。官能基数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられる。これらのオリゴマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。これらの重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。これは、本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には紫外線吸収剤が含まれることから、紫外線の照射の場合は、紫外線照射量が不足する場合があり、照射する紫外線の波長や照射量の調製を要することがあるが、電子線の照射の場合は、そのような調製は不要であり、安定した硬化特性が効率的に得られるからである。
(シリコーン(メタ)アクリレート)
電離放射線硬化性樹脂組成物は、シリコーン(メタ)アクリレートを含有することができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、電離放射線硬化性樹脂との相乗効果により、耐汚染性などの表面物性を付与すると同時に、表面保護層の表面張力を制御する目的で添加されるものである。
シリコーン(メタ)アクリレートは、ポリシロキサンからなるシリコーンオイルのうち、または片方乃至両方の末端に(メタ)アクリル基を導入した変性シリコーンオイルの中の一つである。シリコーン(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものが使用でき、有機基が(メタ)アクリル基であれば特に限定されず、該有機基を1〜6つ有する変性シリコーンオイルを好ましく用いることができる。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置には、特に制限はない。
上記シリコーン(メタ)アクリレートの含有量は、耐汚染性の向上とその使用効果を十分に得る観点から、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜4質量部が好ましく、1.0〜2.5質量部がより好ましい。また、シリコーン(メタ)アクリレートの官能基当量(分子量/官能基数)としては、例えば1000〜20000の条件を有するものが挙げられる。
〈各種添加剤〉
本発明において電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる所望物性に応じて、各種添加剤を配合する事ができる。添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
(表面保護層5の形成)
表面保護層5の形成について、好ましい態様の一例を以下に説明する。
まず重合性モノマーや重合性オリゴマーなどの電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて添加されるシリコーン(メタ)アクリレートや各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合して、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製する。この電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はないが、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどの非水溶性有機溶媒や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒、水、またはこれらの混合溶剤などが好ましく挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物中の溶媒の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度に応じて適宜選定すればよいが、通常電離放射線硬化性樹脂組成物が固形分基準で65〜85質量%となるような量である。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工は、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の性能を有する表面保護層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、表面保護層を設ける効果を十分に得る観点から、好ましくは2〜20μmである。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
このようにして形成した表面保護層5には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
(凸形状9)
表面保護層5は、低艶絵柄インキ層3あるいは低光沢領域4の形成に伴って隆起して形成する凸形状9を有していてもよい。表面保護層5の表面が、このような凸形状を有することによって、凸形状の部分で光が散乱されること、表面積が増加し、かつ低艶が認識できる視野角も広がることなどの理由から、上記低光沢領域4の効果と協調して、さらに視覚的な凹凸感が強調される。なお、該凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常2〜3μmの範囲である。
また、表面保護層5の表面、特に低艶絵柄インキ層3の直上部及びその近傍の凸形状の表面部分には、低艶絵柄インキ層3に含まれる微粒子の効果により、微細な凹凸形状が形成することがある(図示省略)。
本発明の化粧シートは、凸形状9や上記の微細な凹凸形状の効果により、質感を確保しつつ、低光沢領域4により視覚的に凹凸感を感じさせる意匠感を得ることができ、さらに質感とは相反する優れた耐汚染性を得ることが可能となる。
《着色層6》
着色層6は、本発明の化粧シートの意匠性を高める目的で所望により設けられる、隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものである。着色層6は、基材2が着色されていたり、色ムラがあるときに、基材2の表面の色を整えて、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。着色層6は、通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活用する場合もある。基材2が適切に着色されている場合には着色層6の形成を行う必要はない。
着色層6の形成に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などが好ましく挙げられ、これらの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。上記のなかでも、ウレタン樹脂が好ましい。
着色層6に好ましく用いられるウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどのポリオールとイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどの脂肪族ないしは脂環式イソシアネートなどのイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。またウレタン樹脂の平均分子量は10,000〜50,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は−70〜60℃程度のものが耐油性、耐スクラッチ性のために好ましい。
着色剤としては、低艶絵柄インキに用いられる着色剤と同様のものが挙げられ、これらの中から、所望する絵柄などに応じて適宜選択して使用すればよい。
着色層6の厚さは、通常1〜20μm程度であり、図2に示されるような、全面にわたって被覆される一様均一な印刷層、いわゆるベタ印刷層であることが好ましい。
《絵柄層7》
絵柄層7は、本発明の化粧シートに装飾性を与えるために所望により設けられる層であり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
絵柄層7に用いる絵柄インキとしては、着色層6に用いるインキと同様のものを用いることができる。
《浸透防止層8》
浸透防止層8は所望により設けられる層であって、上記の低艶絵柄インキ及び表面保護層5を構成する電離放射線硬化性樹脂が、基材2中に浸透することを抑制する機能を持つものであり、基材2が紙や不織布などの浸透性基材である場合に特に効果を発揮する。従って、浸透防止層8は基材2と低艶絵柄インキ層3の間に位置すればよく、例えば、基材2と着色層6との間、着色層6と絵柄層7との間又は図2に示されるように絵柄層7と低艶絵柄インキ層3の間に設けられる。通常は、表面保護層5を構成する電離放射線硬化性樹脂と密着性がある、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層を、図2に示すように絵柄層7と低艶絵柄インキ層3の間に設ける。このことにより、基材2上に着色層6、絵柄層7などがある場合には、これらの表面をならし、これらと低艶絵柄インキ層3及び表面保護層5との接着性を高める機能をも併せて果たすものである。
浸透防止層8に好適な硬化性樹脂としては、上記の着色層6を形成するインキのバインダーに用いられるものが挙げられる。なかでも、上記のウレタン樹脂が耐スクラッチ性向上の観点から好ましい。
浸透防止層8の厚さは、通常1〜20μm程度である。
[化粧板]
本発明の化粧シートは、各種基板に貼付して化粧板として使用することができる。具体的には、図3に示すように、基板12に接着剤層11を介して化粧シート1を貼付して得られるものである。
被着体となる基板は、特に限定されず、基材2に用いられるものと同様のものを使用することができる。また、該基板は色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。被着体となる基板としては各種素材の平板、曲面板などの板材、あるいは上記素材が単体かあるいは複合された立体形状物品(成形品)が対象となる。
また、化粧シートに、和紙、洋紙、合成紙、不織布、織布、寒冷紗、含浸紙、合成樹脂シートなどの裏打ち材を貼付して用いてもよい。裏打ち材を貼付することにより、化粧シート自体の補強、化粧シートの割れや破け防止、接着剤の化粧シート表面への染み出し防止などの作用がなされ、不良品の発生が防止されると共に、取り扱いが容易となることとなり、生産性を向上することができる。
接着剤を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧シートが載置された基板を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレスなどの貼着装置を用いて圧締して、化粧シートを基板表面に接着し、化粧板とする。
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーターなどの塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系などの接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白などの無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤などを添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
化粧シートの基板上への貼着は、通常、本発明の化粧シートの裏面に接着剤層を形成して基板を貼付するか、基板の上に接着剤を塗布して化粧シートを貼付するなどの方法による。
このようにして製造される化粧板は、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッターなどの切削加工機を用いて溝加工、面取加工などの任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床などの建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モールなどの建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器などのキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装などに好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(1)L値の測定(白濁の評価)
白濁の評価を行いやすくするために、各実施例及び比較例において、使用する着色剤をカーボンブラックとした以外は各実施例及び比較例と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、
JIS Z8729−2004のL***表色系におけるL*値を、分光測色計(「CM−3500d(型番)」:コニカミノルタホールディングス株式会社製)により測定した。L*値は小さければ小さいほど、白濁が少ないことを示す。
(2)マジック拭取り性(耐汚染性)の評価
マジック拭取り性の評価を行いやすくするために、各実施例及び比較例において、使用する着色剤をチタン白のみとした以外は各実施例及び比較例と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートの表面に、油性マジックで四角(5cm×5cm)を塗りつぶして3分後、ガーゼで拭取った。拭取り後に残存した四角の面積比率を目視にて観察し、以下の基準で評価した。これを5回繰り返した平均値をマジック拭取り性の評価とした。
5 残存率が1%未満
4 残存率が1%以上5%未満
3 残存率が5%以上10%未満
2 残存率が10%以上50%未満
1 残存率が50%以上
実施例1:化粧シートの作製
基材2として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量5g/m2の(全面ベタ)層をグラビア印刷にて施して着色層6とした。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の絵柄層7をグラビア印刷にて形成した。
次いで、数平均分子量20,000、ガラス転移温度(Tg)−59.8℃のポリエステルウレタン系樹脂とトリレンジイソシアネートからなるポリイソシアネートをバインダーとする塗料組成物を用いて、塗工量7g/m2で全面にグラビア印刷して浸透防止層8(プライマー層)を形成した。
次に、数平均分子量30,000、ガラス転移温度(Tg)−62.8℃のポリエステルウレタン系樹脂をバインダーとし、シリカ微粒子(吸油量:55ml/100g,平均粒径:0.6μm)をバインダー100質量部に対して5質量部配合した低艶絵柄インキを用いて木目模様の導管部分に位置同調するようにグラビア印刷にて低艶絵柄インキ層3を形成した。
これらインキ層の上に4官能ウレタンアクリレート100質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1質量部からなる電子線硬化性樹脂組成物を塗工量5g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層5とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シートを得た。
この化粧シートのグロス値の測定を行い、マジック拭取り性について評価した。その結果を第1表に示す。
実施例2−5及び比較例1
実施例1において、低艶絵柄インキ中のシリカ微粒子を、各々第1表に示される吸油量のものにかえた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートのグロス値の測定を行い、マジック拭取り性について評価した。その結果を第1表に示す。
*1,樹脂100質量部あたりのシリカ微粒子の含有量(質量部)
本発明によれば、白濁による絵柄の鮮明性の低下が改善された、優れた意匠感と、優れた耐汚染性とを有する化粧シート、及びこれを用いた化粧板を得ることができる。本発明の化粧シート及び化粧板は、建築物の内装または外装材、建具の表面化粧板、家具の表面化粧板、及び車両の内装、外装などに好適に用いられる。
1.化粧シート
2.基材
3.低艶絵柄インキ層
4.低光沢領域
5.表面保護層
6.着色層
7.絵柄層
8.浸透防止層
9.凸形状
10.微粒子
11.接着剤層
12.基板

Claims (3)

  1. 基材上に、吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子を含有する絵柄インキを部分的に塗布して絵柄インキ層を形成する工程、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を該絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該絵柄インキ層が形成された領域及び該絵柄インキ層が形成されてない領域とを含む全面にわたって被覆するように塗布し、架橋硬化させて表面保護層を形成する工程を順に有する、基材、絵柄インキ層、表面保護層、及び該表面保護層中であって該絵柄インキ層の直上部やその近傍に低光沢領域を有する化粧シートの製造方法。
  2. 絵柄インキ層を形成する樹脂組成物に用いられる樹脂が、非架橋性樹脂である請求項1に記載の化粧シートの製造方法。
  3. 基材上に、吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が150ml/100g以下であるシリカ微粒子を含有する絵柄インキを部分的に塗布して絵柄インキ層を形成する工程、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を該絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該絵柄インキ層が形成された領域及び該絵柄インキ層が形成されてない領域とを含む全面にわたって被覆するように塗布し、架橋硬化させて表面保護層を形成する工程を有する、基材、絵柄インキ層、表面保護層、及び該表面保護層中であって該絵柄インキ層の直上部やその近傍に低光沢領域を順に有する化粧シートの製造工程、ならびに該化粧シートの該基材と基板とを接着剤層を介して貼付けする工程を順に有する化粧板の製造方法。
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