JP2012116200A - 三次元加工用加飾シート - Google Patents

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信雄 齋藤
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Abstract

【課題】成形性が良好で金型離れが良く、成形により表面にクラック、傷等が入ることがなく、かつ耐擦傷性及び耐溶剤性をも改良した三次元加工用加飾シートを提供する。
【解決手段】支持体の上に少なくとも表面保護層を積層してなる三次元加工用加飾シートであって、該支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において該三次元加工用加飾シートが300%を超える破断伸度(JIS K 7127に準拠)を有し、かつ該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、0.2〜6.0μmの膜厚を有することを特徴とする三次元加工用加飾シートである。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途の加飾成形体に用いられる三次元加工用加飾シートに関するものである。
従来から、樹脂成形物等の被着体の表面を加飾したシートを成形することにより製造される加飾成形体が各種用途で使用されている。この加飾シート成形方法により表面が加飾された加飾成形体が得られる。従って、この製造方法に用いられる加飾シートはシートを伸ばして加飾するので、成形により表面にクラック等が入らない成形性能が求められると同時に、成形体の使用上の観点から、耐擦傷性、耐溶剤性等も良好であることが求められる。
例えば、特許文献1では、特定のガラス転移温度と架橋密度の架橋性組成物のクリア硬化層を熱可塑性樹脂のシート状基材上に積層してなる射出成形体表面被覆用積層シートであって、30〜300%の破断伸度を有する積層シートが提案されている。
しかしながら、三次元加工において、加飾シートの割れを防ぐためには、30〜300%の破断伸度では満足できず、また、300%以上延伸可能なシートでは金型離れが悪く、耐擦傷性、耐溶剤性も悪いのが実情であった。
そこで、三次元加工時の成形性、金型離れ、耐擦傷性、耐溶剤性等のさらなる改良が求められている。
特開2000−202975号公報
本発明は、このような状況下で、成形性が良好で金型離れが良く、成形により表面にクラック、傷等が入ることがなく、かつ耐擦傷性及び耐溶剤性をも改良した三次元加工用加飾シートを提供することを課題とするものである。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、表面保護層に改良を加えることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.支持体の上に少なくとも表面保護層を積層してなる三次元加工用加飾シートであって、該支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において該三次元加工用加飾シートが300%を超える破断伸度(JIS K 7127に準拠)を有し、かつ該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、0.2〜6.0μmの膜厚を有することを特徴とする三次元加工用加飾シート。
2.以下の測定条件で測定した140℃における前記表面保護層の貯蔵弾性率が7.7×105〜1.2×108Paの範囲であることを特徴とする上記1に記載の三次元加工用加飾シート。
貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。
3.前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜20:80の比率(質量比)で含む樹脂組成物である上記1又は2に記載の三次元加工用加飾シート。
4.前記支持体と前記表面保護層との間に、さらに透明熱可塑性樹脂層を設けてなる上記1〜3のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
5.前記支持体と前記透明熱可塑性樹脂層との間に、さらに第2熱可塑性樹脂層を設けてなる上記4に記載の三次元加工用加飾シート。
6.前記電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である上記3〜5のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
7.三次元加工がインサート成形である上記1〜6のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
本発明の三次元加工用加飾シートは、成形性が良好で金型離れが良く、成形により表面にクラック、傷等が入ることがなく、かつ高い耐擦傷性及び耐溶剤性を有する。
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の三次元加工用加飾シートの第1の実施態様の断面を示す模式図である。
本発明の三次元加工用加飾シート10は、支持体11の上に少なくとも表面保護層12を積層してなる。
なお、本発明の加飾シート10の延伸性は、支持体11の延伸性の影響を大きく受ける。そのため、支持体11のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において加飾シート10が300%を超える破断伸度を有することを要する。複雑な形状の三次元加工において、加飾シート10の表面クラック又は割れを防ぐためである。この観点から380%以上の破断伸度が好ましい。また、500%以下であれば、延伸後においても必要な膜厚を確保でき形状保持性が良好となるので好ましい。なお、本発明の加飾シート10に用いられる支持体11は、単層又は複数層のいずれでも良い。
また、本発明の加飾シート10に設けられる表面保護層12が0.2〜6.0μmの膜厚を有することを要する。膜厚が0.2μm未満であると耐擦傷性及び耐溶剤性が低下し、6.0μmを超えると成形性、破断伸度及び耐擦傷性が低下するからである。この観点から0.7〜6.0μmの膜厚が好ましい。
図2乃至5は、本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。ただし、本発明の三次元加工用加飾シートは、これらの実施態様に限定されるものではない。
図2に記載された本発明の加飾シート10の第2の実施態様は、支持体11と表面保護層12との間に、さらに透明熱可塑性樹脂層13を設けている。
図3に記載された本発明の加飾シート10の第3の実施態様は、支持体11と透明熱可塑性樹脂層13との間に、さらに第2熱可塑性樹脂層14を設けている。
図4に記載された本発明の加飾シート10の第4の実施態様は、支持体11の上に接着剤層16、印刷層15、透明熱可塑性樹脂層13、プライマー層17及び表面保護層12を積層している。ここで、印刷層15は、透明熱可塑性樹脂層13の表側及び裏側のいずれに積層されても良いし、支持体11の表面に積層されていても良い。
また、図5に記載された本発明の加飾シート10の第5の実施態様は、支持体11の上に接着剤層16b、第2熱可塑性樹脂層14、印刷層15、接着剤層16a、透明熱可塑性樹脂層13、プライマー層17及び表面保護層12を積層している。ここで、印刷層15は、透明熱可塑性樹脂層13の表側及び裏側のいずれに積層されても良い。また、第2熱可塑性樹脂層14が透明又は半透明の場合は、印刷層15は支持体11の表面又は第2熱可塑性樹脂層14の裏側に積層されていても良い。接着剤層16aと16bとは同じ材料を用いても良いし、異なっていても良い。
本発明に係る表面保護層12は、耐擦傷性及び耐溶剤性の表面保護機能を果たすために電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものであることを要する。ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
また、本発明に係る表面保護層12は、貯蔵弾性率が7.7×105〜1.2×108Paの範囲であることが好ましい。貯蔵弾性率が1.2×108Pa以下であると真空成形時に表面保護層にクラックを生じることなく成形することができる。また、架橋型の樹脂の場合、ゴム状態での貯蔵弾性率が高いほど、平均架橋点間分子量が低い、すなわち、架橋密度が高いため、表面の耐擦傷性、耐溶剤性等は向上する。よって、貯蔵弾性率がこの範囲内であると、表面保護層を形成した後の成型性及び表面の耐擦傷性が高いレベルで満足しうるバランスの取れた加飾シートが得られる。
電離放射線硬化性樹脂として用いられる重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも2官能以上の多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー(2官能、3官能、4官能又はそれ以上の多官能のオリゴマー)、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物として、電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜20:80の比率(質量比)で含む樹脂組成物であることが好ましい。この範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性、耐擦傷性及び耐溶剤性のバランスが良好となる。この点から、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の質量比は、60:40〜20:80の範囲がさらに好ましく、60:40〜25:75の範囲が特に好ましい。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
上記熱可塑性樹脂のうち、本発明では(メタ)アクリル系樹脂を主成分とするものが好ましく、なかでもモノマー成分として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるものが好ましい。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピルなどが挙げられ、これらのうちメタクリル酸メチルが最も好ましい。
次に、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体としては、上記例示されたものから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が例示され、該共重合体においてもメタクリル酸メチルを主成分とするものが好ましい。すなわち、メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体が好ましく、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルの共重合体などが例示される。これらのうち、効果の点から特にメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体が最も好ましい。なお、これらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。
また、メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲であることが好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位が上記範囲内であると、耐擦傷性及び耐溶剤性が向上する。
次に、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体について、他のモノマーとは(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に限定されないが、本発明では、(メタ)アクリル酸、スチレン、(無水)マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン,ノルボルネン類等の脂環式オレフィンモノマー、ビニルカプロラクタム、シトラコン酸無水物、N−フェニルマレイミド等のマレイミド類、ビニルエーテル類などが挙げられ、特にスチレン及び(無水)マレイン酸が共重合成分として好適である。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン又は(無水)マレイン酸の二元共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン及び(無水)マレイン酸の三元共重合体が好適である。
なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。
また、前記(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸との共重合体においては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位100モルに対して、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸に由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位100モルに対して、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸に由来する構成単位が上記範囲内であると、やはり耐擦傷性及び耐溶剤性が向上する。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、特に重量平均分子量が6万〜15万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐擦傷性及び耐溶剤性のいずれも高いレベルで得ることができる。
ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定には、東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製TSKgel αM(商品名)であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における分子量及び分子量分布はポリスチレン換算を行った。
また、本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐擦傷性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでも良く、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
耐擦傷性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では、ポリエチレンワックス等のワックス類、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐擦傷性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
また、本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化して得られる表面保護層12の所望物性に応じて、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
本発明の加飾シート10に、意匠効果の拡大等の目的で、所望により積層される透明熱可塑性樹脂層13は、透明性及び真空成形適性を考慮して選定され、代表的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの、単層シート又は同種もしくは異種樹脂による複層シート単層又は複層で形成されることが好ましい。
透明熱可塑性樹脂層13に用いられる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」という)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂等が使用される。これらの内、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂又はポリエステル樹脂が、透明性、成形性の点で好ましい。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう〕が挙げられる。
透明熱可塑性樹脂層13の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、20〜1,000μm程度であり、コスト等を考慮すると50〜500μm程度が好ましい。
本発明に係る透明熱可塑性樹脂層13は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また透明熱可塑性樹脂層13には所望によりプライマー層17を形成する等の処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ印刷層15として形成されていても良い。
本発明の加飾シート10に所望により積層される第2熱可塑性樹脂層14は、代表的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの、単層シート又は同種もしくは異種樹脂による複層シート単層又は複層で形成されることが好ましい。第2熱可塑性樹脂層14は、隠蔽性を付与する目的で又は意匠的効果を狙って着色熱可塑性樹脂層として設けても良いし、別な意匠的効果を狙って透明又は半透明熱可塑性樹脂層として設けても良い。
第2熱可塑性樹脂層14に用いられる熱可塑性樹脂としては、透明熱可塑性樹脂層13と同様のものが挙げられる。着色熱可塑性樹脂層に用いられる着色剤としては、後述する印刷層15に用いられるものが挙げられる。
第2熱可塑性樹脂層14の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、20〜1,000μm程度であり、コスト等を考慮すると50〜500μm程度が好ましい。
本発明の加飾シート10に用いられる支持体11としては、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これらの樹脂の内、ABS樹脂及びポリプロピレン樹脂がさらに好ましく、成形体の表面のクラック、傷等を防止するためにはABS樹脂が特に好ましい。支持体11は、加飾シート10を補強し、一体化物の形態を保持するために用いられるので100〜500μmの厚さを有することが好ましい。
上述のように、支持体11は、単層又は複数層のいずれでも良いが、複数層の場合として、例えば、支持体11の表面にブロッキング防止処理、プライマー処理や酸処理がなされ、表面にブロッキング防止層、プライマー層又は酸変性層が形成された場合が挙げられる。
また、印刷層15のみでは表現できない意匠性を出すため、顔料やマット剤等を含有させた樹脂層、例えばマット樹脂層を支持体11と表面保護層12との間に形成しても良い。
図4又は5に示される、所望により積層される印刷層15は、絵柄層及び/又は隠蔽層からなることが好ましい。
絵柄層は樹脂成形体に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
隠蔽層は、一般には所望により設けられる層であり、支持体11表面の色の変化、ばらつきにより、加飾シートの柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられることが多い。通常、不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。隠蔽層は、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により形成される。
上記の第2熱可塑性樹脂層14が、着色熱可塑性樹脂として積層され、隠蔽性を奏する場合は、印刷層15としての隠蔽層はなくても良い。
本発明において、各層の密着性を向上させるために、所望により接着剤層16を各層間に設けても良い。例えば図4及び5のように、支持体11と印刷層15との密着性を向上させるために、接着剤層16、16bを支持体11と印刷層15との間に設けることができる。また、図5のように、透明熱可塑性樹脂層13と印刷層15との密着性を向上させるために、所望により接着剤層16aを、透明熱可塑性樹脂層13と印刷層15との間に設けることができる。
接着剤層としては、射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂(例えば、イソシアネート硬化剤と各種ポリオールからなる2液硬化型)、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、接着剤層の厚みは要求物性等に応じて適宜厚さとすれば良いが、通常1〜100μm程度である。また、接着剤層の形成方法は特に限定は無いが、通常は、上記樹脂を希釈溶剤で希釈した樹脂液からなるインキ又は塗液として、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により形成する。また、接着剤層中には、更に、インキ(又は塗液)の印刷(又は塗工)適性等の諸物性を調整、向上させる為に、必要に応じて、その他の副材料、例えば、体質顔料等の各種添加剤を添加しても良い。
本発明において、表面保護層12と透明熱可塑性樹脂層13との密着性を向上するために、プライマー層17を適宜設けることができる。この所望により設けられるプライマー層17の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(例えば、イソシアネート硬化剤と各種ポリオールとからなる2液硬化型)、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。表面保護層12と透明熱可塑性樹脂層13との密着性が高まる共に耐候性も高まり、密着性の経時低下が殆どない点から2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
表面保護層12の形成は上記した本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これを支持体11又は透明熱可塑性樹脂層13の表面に、あるいはプライマー層17を介して塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、透明熱可塑性樹脂層13の表面に、硬化後の厚さが上述のようになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、透明熱可塑性樹脂層13として電子線により劣化する樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、透明熱可塑性樹脂層13への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による樹脂の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
本発明の三次元加工用加飾シート10を製造する方法は、図1の場合は、支持体11の表面に表面保護層12を印刷又は塗工すれば良い。また、図3の場合は、例えば、透明熱可塑性樹脂層13の表面に表面保護層12を、裏面に第2熱可塑性樹脂層14及び支持体11を順次積層すれば良い。
図4の場合は、例えば、透明熱可塑性樹脂層13の表面側にプライマー層17を積層し、さらにその表面に表面保護層12を積層する共に、透明熱可塑性樹脂層13の裏面側に印刷層15、即ち、絵柄層及び/又は隠蔽層を順次積層する。その後、印刷層15上に接着剤層16を積層した後、支持体11を積層する。
図5のように第2熱可塑性樹脂層14を設ける場合の製造方法の一例を示す。図4の場合のように透明熱可塑性樹脂層13の表面側にプライマー層17を積層し、さらにその表面に表面保護層12を積層する。また、第2熱可塑性樹脂層14の表面側に印刷層15を積層し、さらにその表面に接着剤層16aを積層する。その後、透明熱可塑性樹脂層13の裏面側と第2熱可塑性樹脂層14の表面側の接着剤層16aとをラミネート等により貼り合わせる。その後、第2熱可塑性樹脂層14の裏面側に接着剤層16bを塗工等により積層し、支持体11と貼り合わせる。
通常、例えば図2、3又は5において、透明熱可塑性樹脂層13又は第2熱可塑性樹脂層14と支持体11とが同じ樹脂材料の場合は接着剤層16が必要でない場合がある。また、例えば図3において、透明熱可塑性樹脂層13と第2熱可塑性樹脂層14とが同じ樹脂材料の場合は接着剤層16が必要でない場合がある。
上述の塗布順序は、製造の便宜のため適宜変更して良い。
上記の積層は、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により行なわれる。
本発明の加飾シート10を用いた三次元加工方法として好適なインサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シート10を真空成形型により予め成形体表面形状に真空成形し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形体を製造する。
射出樹脂は用途に応じた樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が代表的である。また、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等も用途に応じ用いることができる。
以上のようにして製造された加飾樹脂成形体は、その表面保護層に成形過程でクラックや割れが入ることがなく、その表面は高い耐擦傷性や耐溶剤性を有する。さらに本発明の製造方法では、加飾シートの製造段階で表面保護層が完全硬化されるので、加飾樹脂成形体を製造した後に表面保護層を架橋硬化する工程が不要である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性は、下記の方法に従って測定した。
(1)成形性
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて、以下に示す方法でインサート成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;外観上異常なし
△;3次元形状部又は300%延伸部の大部分で軽微な艶変化又はクラック発生
×;延伸部分全体に著しい艶変化又はクラック発生
<インサート成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで140〜160℃に加熱し、軟化させる。次いで、射出成形用雌型と同形状の型を用いて真空成形を行い、型の内部形状に成形する。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形シートを得た。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の耐熱ABS樹脂を射出樹脂温度230℃で型内に射出し、固化させて、加飾樹脂成形体を製造した。
(2)破断伸度
本発明の加飾シート10の延伸性は、支持体11の延伸性の影響を大きく受けるため、支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において、JIS K 7127に準拠した引張試験を行ない、加飾シートの試料片の初期の長さL0 、及び加飾シートの試料片に目視できる亀裂が発生した時又は破断時(亀裂が発生することなく試料片が破断した場合)の試料片の長さL1 から下式に従って求めた。
破断伸度(%)={(L1 −L0 )×100}/L0
測定条件は、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mmの条件であった。
なお、支持体が複数層を有する場合は、一番厚い層を支持体と見做して測定温度条件を設定する。
(3)貯蔵弾性率E'
表面処理をしていないポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルムの上に各実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を架橋硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化膜をPETフィルムから剥がして、幅10mm、長さ20mmの試験片を切り出した。該試験片を用いて、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、動的粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンス・エフ・イー(株)製「RSA II」)を用い、140℃の貯蔵弾性率E'を測定した。測定は、クランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定した。
(4)耐擦傷性
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、JIS L0849(摩耗試験機II型(学振型))に準拠して試験(500g荷重、100回)を行い、以下の基準で評価した。試験に用いた装置は、(テスター産業(株)製「学振型摩耗試験機」)である。評価基準は以下のとおりである。
○;傷付きなし。
×;傷付き又は艶変化が発生した。
(5)耐溶剤性
エタノール50%水溶液を加飾シート表面に滴下した後、1分経過後にふき取り、表面保護層の塗膜の変化の有無を目視にて判断し、下記の基準で評価した。
〇:全く変化なし。
×:変化が認められる。
(6)金型離れ性
真空成形後の成形体の金型離れ性及び射出成形後の成形体の金型離れ性を評価した。金型から成形体を抜くときに、表面保護層に目視でシワ、フクレ、ハガレ等が起きず外観上問題ない場合、良好(○)とし、金型離れが悪く成形体の表面保護層に目視でシワ、フクレ、ハガレ等が起き外観に問題がある場合、不良(×)とした。真空成形体の金型離れ性は、型と表面保護層が対向するように成形し、評価した。
実施例1及び2ならびに比較例1〜4
電子線硬化性樹脂(以下「EB」という)である4官能のウレタンアクリレート33質量部に、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)のモル比100:5の共重合体(以下「PMMA−1」という、重量平均分子量(Mw):1.0×105、数平均分子量(Mn):0.60×105)を67質量部混合し、電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB:PMMA−1の質量比は33:67である。
次に、ASTM D648法による熱変形温度が80℃である厚さ400μmの着色ABS樹脂シートからなる支持体表面に、アクリルウレタン系プライマー1μmをグラビアコートにて形成し、プライマー塗工面に、上記電子線硬化性樹脂組成物を表1に記載された値になるようにグラビアコートにより塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成して3次元加工用加飾シートを得た。
以上のようにして得られた6種類の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
実施例3〜8
表1に示す透明熱可塑性樹脂層上に印刷層を形成した。実施例3、4、7及び8においては、印刷層とは反対側の透明熱可塑性樹脂層上に、実施例1及び2と同じアクリルウレタン系プライマーをグラビアコートしてプライマー層を形成し、プライマー層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。また、実施例5及び6においては、プライマー層を形成することなく、印刷層とは反対側の透明熱可塑性樹脂層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。これらの未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成した。
次に、印刷層上に2液硬化型ウレタン樹脂接着剤を塗布して接着剤層とし実施例1及び2と同じ着色ABS樹脂シートからなる支持体と接着した。得られたシートを40℃、3日間養生し、接着剤層16bの硬化を促進させ、加飾シート10を得た。
以上のようにして得られた6種類の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
実施例9
厚み60μmの着色ポリプロピレンフィルムである第2熱可塑性樹脂層14表面に、印刷層を形成し、一方、厚み60μmの透明ポリプロピレンフィルムである透明熱可塑性樹脂層13表面に、2液硬化型ウレタン樹脂接着剤をグラビアコートにて約5μmの厚みで形成し、接着剤層16aとした。
次に、第2熱可塑性樹脂層14の上の印刷層側と透明熱可塑性樹脂層13の上の接着剤層16a側とを接着した。得られた積層体の透明熱可塑性樹脂層13表面に、実施例1及び2と同じアクリルウレタン系プライマーをグラビアコートしてプライマー層を形成し、プライマー層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成した。
得られた積層体の第2熱可塑性樹脂層14側に2液硬化型ウレタン樹脂接着剤をグラビアコートし、厚み10μmの接着剤層16bを形成し、実施例1及び2と同じ着色ABS樹脂シートからなる支持体と接着した。得られたシートを40℃、3日間養生し、接着剤層16bの硬化を促進させ、加飾シート10を得た。
以上のようにして得られた実施例9の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2012116200
注) 破断伸度(%)において、「387<」とあるのは、破断伸度が387%を超えることを確認して試験を打ち切ったことを示す。
表面保護層の材料A〜C及び透明熱可塑性樹脂層の材料D〜Eの組成内容
表面保護層の材料A:(EB/PMMA−1)=(33/67)(質量部)
表面保護層の材料B:(EB/PMMA−2)=(33/67)(質量部)
表面保護層の材料C:(EB/ポリエステル−1)=(25/75)(質量部)
透明熱可塑性樹脂層の材料D:ポリプロピレン樹脂 無延伸ポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダムコポリマー)、軟化点:125℃、ヘイズ(曇価):7.0
透明熱可塑性樹脂層の材料E:アクリル樹脂 メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、軟化点:105℃、ヘイズ(曇価):0.5
ここで、EBは4官能ウレタンアクリレートであり、PMMA−1は上記の通りであり、PMMA−2はメタクリル酸メチル(MMA)単独重合体{重量平均分子量(Mw):1.1×105、数平均分子量(Mn):0.64×105、多分散度(Mw/Mn):1.72}であり、ポリエステル−1はポリエステル樹脂{重量平均分子量(Mw):0.86×105、数平均分子量(Mn):0.41×105、多分散度(Mw/Mn):2.1}である。
表1から分かるように、実施例1〜9の加飾シートは、成形性、破断伸度、耐擦傷性、及び耐溶剤性のいずれも良好であり、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' は、7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であった。
これに対し、比較例1の加飾シートにおいては、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' が7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であり、破断伸度が高かったが、表面保護層の厚みが薄過ぎるため耐擦傷性及び耐溶剤性のいずれも悪かった。
また、比較例2〜4の加飾シートにおいては、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' が7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であり、耐溶剤性が良好であったが、破断伸度が低く、耐擦傷性も悪かった。
さらに、真空成形後の成形体の金型離れ性、射出成形後の成形体の金型離れ性を評価した結果、実施例1〜9及び比較例1〜4はいずれも、真空成形後及び射出成形後の金型離れ性の双方とも良好であった。
本発明の三次元加工用加飾シートは、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途の加飾成形体に好適に用いられる。
本発明の三次元加工用加飾シートの一実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。
10 加飾シート
11 支持体
12 表面保護層
13 透明熱可塑性樹脂層
14 第2熱可塑性樹脂層
15 印刷層
16 接着剤層
17 プライマー層
本発明は、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途の加飾成形体に用いられる三次元加工用加飾シートに関するものである。
従来から、樹脂成形物等の被着体の表面を加飾したシートを成形することにより製造される加飾成形体が各種用途で使用されている。この加飾シート成形方法により表面が加飾された加飾成形体が得られる。従って、この製造方法に用いられる加飾シートはシートを伸ばして加飾するので、成形により表面にクラック等が入らない成形性能が求められると同時に、成形体の使用上の観点から、耐擦傷性、耐溶剤性等も良好であることが求められる。
例えば、特許文献1では、特定のガラス転移温度と架橋密度の架橋性組成物のクリア硬化層を熱可塑性樹脂のシート状基材上に積層してなる射出成形体表面被覆用積層シートであって、30〜300%の破断伸度を有する積層シートが提案されている。
しかしながら、三次元加工において、加飾シートの割れを防ぐためには、30〜300%の破断伸度では満足できず、また、300%以上延伸可能なシートでは金型離れが悪く、耐擦傷性、耐溶剤性も悪いのが実情であった。
そこで、三次元加工時の成形性、金型離れ、耐擦傷性、耐溶剤性等のさらなる改良が求められている。
特開2000−202975号公報
本発明は、このような状況下で、成形性が良好で金型離れが良く、成形により表面にクラック、傷等が入ることがなく、かつ耐擦傷性及び耐溶剤性をも改良した三次元加工用加飾シートを提供することを課題とするものである。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、表面保護層に改良を加えることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1. 支持体の上に少なくとも表面保護層を積層してなる三次元加工用加飾シートであって、該支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において該三次元加工用加飾シートが300%を超える破断伸度(JIS K 7127に準拠)を有し、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、0.2〜6.0μmの膜厚を有し、かつ該支持体と該表面保護層との間に、透明熱可塑性樹脂層を設けてなることを特徴とする三次元加工用加飾シート。
. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜20:80の比率(質量比)で含む樹脂組成物である上記1に記載の三次元加工用加飾シート。
. 前記支持体と前記透明熱可塑性樹脂層との間に、さらに第2熱可塑性樹脂層を設けてなる上記1又は2に記載の三次元加工用加飾シート。
. 三次元加工がインサート成形である上記1〜のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
5. 樹脂成形物に上記1〜4のいずれかに記載の三次元加工用加飾シートを一体化させてなる加飾樹脂成形体。
本発明の三次元加工用加飾シートは、成形性が良好で金型離れが良く、成形により表面にクラック、傷等が入ることがなく、かつ高い耐擦傷性及び耐溶剤性を有する。
本発明の三次元加工用加飾シートの一実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元加工用加飾シートの他の実施態様の断面を示す模式図である。 参考例となる三次元加工用加飾シートの態様の断面を示す模式図である。
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。
1乃至4は、本発明の三次元加工用加飾シートの第1の実施態様及び他の実施態様の断面を示す模式図である。ただし、本発明の三次元加工用加飾シートは、これらの実施態様に限定されるものではない。
に記載された本発明の加飾シート10の第の実施態様は、支持体11と表面保護層12との間に、透明熱可塑性樹脂層13を設けている。
に記載された本発明の加飾シート10の第の実施態様は、支持体11と透明熱可塑性樹脂層13との間に、さらに第2熱可塑性樹脂層14を設けている。
に記載された本発明の加飾シート10の第の実施態様は、支持体11の上に接着剤層16、印刷層15、透明熱可塑性樹脂層13、プライマー層17及び表面保護層12を積層している。ここで、印刷層15は、透明熱可塑性樹脂層13の表側及び裏側のいずれに積層されても良いし、支持体11の表面に積層されていても良い。
また、図に記載された本発明の加飾シート10の第の実施態様は、支持体11の上に接着剤層16b、第2熱可塑性樹脂層14、印刷層15、接着剤層16a、透明熱可塑性樹脂層13、プライマー層17及び表面保護層12を積層している。ここで、印刷層15は、透明熱可塑性樹脂層13の表側及び裏側のいずれに積層されても良い。また、第2熱可塑性樹脂層14が透明又は半透明の場合は、印刷層15は支持体11の表面又は第2熱可塑性樹脂層14の裏側に積層されていても良い。接着剤層16aと16bとは同じ材料を用いても良いし、異なっていても良い。
なお、本発明の加飾シート10の延伸性は、支持体11の延伸性の影響を大きく受ける。そのため、支持体11のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において加飾シート10が300%を超える破断伸度を有することを要する。複雑な形状の三次元加工において、加飾シート10の表面クラック又は割れを防ぐためである。この観点から380%以上の破断伸度が好ましい。また、500%以下であれば、延伸後においても必要な膜厚を確保でき形状保持性が良好となるので好ましい。なお、本発明の加飾シート10に用いられる支持体11は、単層又は複数層のいずれでも良い。
また、本発明の加飾シート10に設けられる表面保護層12が0.2〜6.0μmの膜厚を有することを要する。膜厚が0.2μm未満であると耐擦傷性及び耐溶剤性が低下し、6.0μmを超えると成形性、破断伸度及び耐擦傷性が低下するからである。この観点から0.7〜6.0μmの膜厚が好ましい。
は、参考例となる三次元加工用加飾シートの態様の断面を示す模式図である。
参考例となる三次元加工用加飾シート10は、支持体11の上に少なくとも表面保護層12を積層してなる。
本発明に係る表面保護層12は、耐擦傷性及び耐溶剤性の表面保護機能を果たすために電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものであることを要する。ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
また、本発明に係る表面保護層12は、貯蔵弾性率が7.7×105〜1.2×108Paの範囲であることが好ましい。貯蔵弾性率が1.2×108Pa以下であると真空成形時に表面保護層にクラックを生じることなく成形することができる。また、架橋型の樹脂の場合、ゴム状態での貯蔵弾性率が高いほど、平均架橋点間分子量が低い、すなわち、架橋密度が高いため、表面の耐擦傷性、耐溶剤性等は向上する。よって、貯蔵弾性率がこの範囲内であると、表面保護層を形成した後の成型性及び表面の耐擦傷性が高いレベルで満足しうるバランスの取れた加飾シートが得られる。
電離放射線硬化性樹脂として用いられる重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも2官能以上の多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー(2官能、3官能、4官能又はそれ以上の多官能のオリゴマー)、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物として、電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜20:80の比率(質量比)で含む樹脂組成物であることが好ましい。この範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性、耐擦傷性及び耐溶剤性のバランスが良好となる。この点から、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の質量比は、60:40〜20:80の範囲がさらに好ましく、60:40〜25:75の範囲が特に好ましい。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
上記熱可塑性樹脂のうち、本発明では(メタ)アクリル系樹脂を主成分とするものが好ましく、なかでもモノマー成分として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるものが好ましい。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピルなどが挙げられ、これらのうちメタクリル酸メチルが最も好ましい。
次に、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体としては、上記例示されたものから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が例示され、該共重合体においてもメタクリル酸メチルを主成分とするものが好ましい。すなわち、メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体が好ましく、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルの共重合体などが例示される。これらのうち、効果の点から特にメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体が最も好ましい。なお、これらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。
また、メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲であることが好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位が上記範囲内であると、耐擦傷性及び耐溶剤性が向上する。
次に、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体について、他のモノマーとは(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に限定されないが、本発明では、(メタ)アクリル酸、スチレン、(無水)マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン,ノルボルネン類等の脂環式オレフィンモノマー、ビニルカプロラクタム、シトラコン酸無水物、N−フェニルマレイミド等のマレイミド類、ビニルエーテル類などが挙げられ、特にスチレン及び(無水)マレイン酸が共重合成分として好適である。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン又は(無水)マレイン酸の二元共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン及び(無水)マレイン酸の三元共重合体が好適である。
なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。
また、前記(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸との共重合体においては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位100モルに対して、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸に由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位100モルに対して、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸に由来する構成単位が上記範囲内であると、やはり耐擦傷性及び耐溶剤性が向上する。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、特に重量平均分子量が6万〜15万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐擦傷性及び耐溶剤性のいずれも高いレベルで得ることができる。
ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定には、東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製TSKgel αM(商品名)であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における分子量及び分子量分布はポリスチレン換算を行った。
また、本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐擦傷性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでも良く、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
耐擦傷性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では、ポリエチレンワックス等のワックス類、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐擦傷性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
また、本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化して得られる表面保護層12の所望物性に応じて、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
本発明の加飾シート10に、意匠効果の拡大等の目的で、所望により積層される透明熱可塑性樹脂層13は、透明性及び真空成形適性を考慮して選定され、代表的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの、単層シート又は同種もしくは異種樹脂による複層シート単層又は複層で形成されることが好ましい。
透明熱可塑性樹脂層13に用いられる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」という)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂等が使用される。これらの内、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂又はポリエステル樹脂が、透明性、成形性の点で好ましい。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう〕が挙げられる。
透明熱可塑性樹脂層13の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、20〜1,000μm程度であり、コスト等を考慮すると50〜500μm程度が好ましい。
本発明に係る透明熱可塑性樹脂層13は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また透明熱可塑性樹脂層13には所望によりプライマー層17を形成する等の処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ印刷層15として形成されていても良い。
本発明の加飾シート10に所望により積層される第2熱可塑性樹脂層14は、代表的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの、単層シート又は同種もしくは異種樹脂による複層シート単層又は複層で形成されることが好ましい。第2熱可塑性樹脂層14は、隠蔽性を付与する目的で又は意匠的効果を狙って着色熱可塑性樹脂層として設けても良いし、別な意匠的効果を狙って透明又は半透明熱可塑性樹脂層として設けても良い。
第2熱可塑性樹脂層14に用いられる熱可塑性樹脂としては、透明熱可塑性樹脂層13と同様のものが挙げられる。着色熱可塑性樹脂層に用いられる着色剤としては、後述する印刷層15に用いられるものが挙げられる。
第2熱可塑性樹脂層14の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、20〜1,000μm程度であり、コスト等を考慮すると50〜500μm程度が好ましい。
本発明の加飾シート10に用いられる支持体11としては、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これらの樹脂の内、ABS樹脂及びポリプロピレン樹脂がさらに好ましく、成形体の表面のクラック、傷等を防止するためにはABS樹脂が特に好ましい。支持体11は、加飾シート10を補強し、一体化物の形態を保持するために用いられるので100〜500μmの厚さを有することが好ましい。
上述のように、支持体11は、単層又は複数層のいずれでも良いが、複数層の場合として、例えば、支持体11の表面にブロッキング防止処理、プライマー処理や酸処理がなされ、表面にブロッキング防止層、プライマー層又は酸変性層が形成された場合が挙げられる。
また、印刷層15のみでは表現できない意匠性を出すため、顔料やマット剤等を含有させた樹脂層、例えばマット樹脂層を支持体11と表面保護層12との間に形成しても良い。
図3又は4に示される、所望により積層される印刷層15は、絵柄層及び/又は隠蔽層からなることが好ましい。
絵柄層は樹脂成形体に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
隠蔽層は、一般には所望により設けられる層であり、支持体11表面の色の変化、ばらつきにより、加飾シートの柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられることが多い。通常、不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。隠蔽層は、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により形成される。
上記の第2熱可塑性樹脂層14が、着色熱可塑性樹脂として積層され、隠蔽性を奏する場合は、印刷層15としての隠蔽層はなくても良い。
本発明において、各層の密着性を向上させるために、所望により接着剤層16を各層間に設けても良い。例えば図3及び4のように、支持体11と印刷層15との密着性を向上させるために、接着剤層16又は16bを支持体11と印刷層15との間に設けることができる。また、図4のように、透明熱可塑性樹脂層13と印刷層15との密着性を向上させるために、所望により接着剤層16aを、透明熱可塑性樹脂層13と印刷層15との間に設けることができる。
接着剤層としては、射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂(例えば、イソシアネート硬化剤と各種ポリオールからなる2液硬化型)、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、接着剤層の厚みは要求物性等に応じて適宜厚さとすれば良いが、通常1〜100μm程度である。また、接着剤層の形成方法は特に限定は無いが、通常は、上記樹脂を希釈溶剤で希釈した樹脂液からなるインキ又は塗液として、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により形成する。また、接着剤層中には、更に、インキ(又は塗液)の印刷(又は塗工)適性等の諸物性を調整、向上させる為に、必要に応じて、その他の副材料、例えば、体質顔料等の各種添加剤を添加しても良い。
本発明において、表面保護層12と透明熱可塑性樹脂層13との密着性を向上するために、プライマー層17を適宜設けることができる。この所望により設けられるプライマー層17の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(例えば、イソシアネート硬化剤と各種ポリオールとからなる2液硬化型)、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。表面保護層12と透明熱可塑性樹脂層13との密着性が高まる共に耐候性も高まり、密着性の経時低下が殆どない点から2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
表面保護層12の形成は上記した本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これを支持体11又は透明熱可塑性樹脂層13の表面に、あるいはプライマー層17を介して塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、透明熱可塑性樹脂層13の表面に、硬化後の厚さが上述のようになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、透明熱可塑性樹脂層13として電子線により劣化する樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、透明熱可塑性樹脂層13への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による樹脂の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
本発明の三次元加工用加飾シート10を製造する方法は、図の場合は、例えば、透明熱可塑性樹脂層13の表面に表面保護層12を、裏面に第2熱可塑性樹脂層14及び支持体11を順次積層すれば良い。
の場合は、例えば、透明熱可塑性樹脂層13の表面側にプライマー層17を積層し、さらにその表面に表面保護層12を積層する共に、透明熱可塑性樹脂層13の裏面側に印刷層15、即ち、絵柄層及び/又は隠蔽層を順次積層する。その後、印刷層15上に接着剤層16を積層した後、支持体11を積層する。
のように第2熱可塑性樹脂層14を設ける場合の製造方法の一例を示す。図の場合のように透明熱可塑性樹脂層13の表面側にプライマー層17を積層し、さらにその表面に表面保護層12を積層する。また、第2熱可塑性樹脂層14の表面側に印刷層15を積層し、さらにその表面に接着剤層16aを積層する。その後、透明熱可塑性樹脂層13の裏面側と第2熱可塑性樹脂層14の表面側の接着剤層16aとをラミネート等により貼り合わせる。その後、第2熱可塑性樹脂層14の裏面側に接着剤層16bを塗工等により積層し、支持体11と貼り合わせる。
通常、例えば図1、2又は4において、透明熱可塑性樹脂層13又は第2熱可塑性樹脂層14と支持体11とが同じ樹脂材料の場合は接着剤層16が必要でない場合がある。また、例えば図2において、透明熱可塑性樹脂層13と第2熱可塑性樹脂層14とが同じ樹脂材料の場合は接着剤層16が必要でない場合がある。
上述の塗布順序は、製造の便宜のため適宜変更して良い。
上記の積層は、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工手段により行なわれる。
参考例となるの場合は、支持体11の表面に表面保護層12を印刷又は塗工すれば良い。
本発明の加飾シート10を用いた三次元加工方法として好適なインサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シート10を真空成形型により予め成形体表面形状に真空成形し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形体を製造する。
射出樹脂は用途に応じた樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が代表的である。また、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等も用途に応じ用いることができる。
以上のようにして製造された加飾樹脂成形体は、その表面保護層に成形過程でクラックや割れが入ることがなく、その表面は高い耐擦傷性や耐溶剤性を有する。さらに本発明の製造方法では、加飾シートの製造段階で表面保護層が完全硬化されるので、加飾樹脂成形体を製造した後に表面保護層を架橋硬化する工程が不要である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性は、下記の方法に従って測定した。
(1)成形性
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて、以下に示す方法でインサート成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;外観上異常なし
△;3次元形状部又は300%延伸部の大部分で軽微な艶変化又はクラック発生
×;延伸部分全体に著しい艶変化又はクラック発生
<インサート成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで140〜160℃に加熱し、軟化させる。次いで、射出成形用雌型と同形状の型を用いて真空成形を行い、型の内部形状に成形する。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形シートを得た。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の耐熱ABS樹脂を射出樹脂温度230℃で型内に射出し、固化させて、加飾樹脂成形体を製造した。
(2)破断伸度
本発明の加飾シート10の延伸性は、支持体11の延伸性の影響を大きく受けるため、支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において、JIS K 7127に準拠した引張試験を行ない、加飾シートの試料片の初期の長さL0 、及び加飾シートの試料片に目視できる亀裂が発生した時又は破断時(亀裂が発生することなく試料片が破断した場合)の試料片の長さL1 から下式に従って求めた。
破断伸度(%)={(L1 −L0 )×100}/L0
測定条件は、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mmの条件であった。
なお、支持体が複数層を有する場合は、一番厚い層を支持体と見做して測定温度条件を設定する。
(3)貯蔵弾性率E'
表面処理をしていないポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルムの上に各実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を架橋硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化膜をPETフィルムから剥がして、幅10mm、長さ20mmの試験片を切り出した。該試験片を用いて、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、動的粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンス・エフ・イー(株)製「RSA II」)を用い、140℃の貯蔵弾性率E'を測定した。測定は、クランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定した。
(4)耐擦傷性
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、JIS L0849(摩耗試験機II型(学振型))に準拠して試験(500g荷重、100回)を行い、以下の基準で評価した。試験に用いた装置は、(テスター産業(株)製「学振型摩耗試験機」)である。評価基準は以下のとおりである。
○;傷付きなし。
×;傷付き又は艶変化が発生した。
(5)耐溶剤性
エタノール50%水溶液を加飾シート表面に滴下した後、1分経過後にふき取り、表面保護層の塗膜の変化の有無を目視にて判断し、下記の基準で評価した。
〇:全く変化なし。
×:変化が認められる。
(6)金型離れ性
真空成形後の成形体の金型離れ性及び射出成形後の成形体の金型離れ性を評価した。金型から成形体を抜くときに、表面保護層に目視でシワ、フクレ、ハガレ等が起きず外観上問題ない場合、良好(○)とし、金型離れが悪く成形体の表面保護層に目視でシワ、フクレ、ハガレ等が起き外観に問題がある場合、不良(×)とした。真空成形体の金型離れ性は、型と表面保護層が対向するように成形し、評価した。
参考例1及び2ならびに比較例1〜4
電子線硬化性樹脂(以下「EB」という)である4官能のウレタンアクリレート33質量部に、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)のモル比100:5の共重合体(以下「PMMA−1」という、重量平均分子量(Mw):1.0×105、数平均分子量(Mn):0.60×105)を67質量部混合し、電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB:PMMA−1の質量比は33:67である。
次に、ASTM D648法による熱変形温度が80℃である厚さ400μmの着色ABS樹脂シートからなる支持体表面に、アクリルウレタン系プライマー1μmをグラビアコートにて形成し、プライマー塗工面に、上記電子線硬化性樹脂組成物を表1に記載された値になるようにグラビアコートにより塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成して3次元加工用加飾シートを得た。
以上のようにして得られた6種類の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜6
表1に示す透明熱可塑性樹脂層上に印刷層を形成した。実施例1、2、5及び6においては、印刷層とは反対側の透明熱可塑性樹脂層上に、参考例1及び2と同じアクリルウレタン系プライマーをグラビアコートしてプライマー層を形成し、プライマー層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。また、実施例3及び4においては、プライマー層を形成することなく、印刷層とは反対側の透明熱可塑性樹脂層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。これらの未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成した。
次に、印刷層上に2液硬化型ウレタン樹脂接着剤を塗布して接着剤層とし参考例1及び2と同じ着色ABS樹脂シートからなる支持体と接着した。得られたシートを40℃、3日間養生し、接着剤層16bの硬化を促進させ、加飾シート10を得た。
以上のようにして得られた6種類の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
実施例
厚み60μmの着色ポリプロピレンフィルムである第2熱可塑性樹脂層14表面に、印刷層を形成し、一方、厚み60μmの透明ポリプロピレンフィルムである透明熱可塑性樹脂層13表面に、2液硬化型ウレタン樹脂接着剤をグラビアコートにて約5μmの厚みで形成し、接着剤層16aとした。
次に、第2熱可塑性樹脂層14の上の印刷層側と透明熱可塑性樹脂層13の上の接着剤層16a側とを接着した。得られた積層体の透明熱可塑性樹脂層13表面に、参考例1及び2と同じアクリルウレタン系プライマーをグラビアコートしてプライマー層を形成し、プライマー層上に表1に示す電子線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにより塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ表面保護層を形成した。
得られた積層体の第2熱可塑性樹脂層14側に2液硬化型ウレタン樹脂接着剤をグラビアコートし、厚み10μmの接着剤層16bを形成し、参考例1及び2と同じ着色ABS樹脂シートからなる支持体と接着した。得られたシートを40℃、3日間養生し、接着剤層16bの硬化を促進させ、加飾シート10を得た。
以上のようにして得られた実施例の加飾シートの成形性、破断伸度、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E'、耐擦傷性、耐溶剤性及び金型離れ性を上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2012116200
注) 破断伸度(%)において、「387<」とあるのは、破断伸度が387%を超えることを確認して試験を打ち切ったことを示す。
表面保護層の材料A〜C及び透明熱可塑性樹脂層の材料D〜Eの組成内容
表面保護層の材料A:(EB/PMMA−1)=(33/67)(質量部)
表面保護層の材料B:(EB/PMMA−2)=(33/67)(質量部)
表面保護層の材料C:(EB/ポリエステル−1)=(25/75)(質量部)
透明熱可塑性樹脂層の材料D:ポリプロピレン樹脂 無延伸ポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダムコポリマー)、軟化点:125℃、ヘイズ(曇価):7.0
透明熱可塑性樹脂層の材料E:アクリル樹脂 メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、軟化点:105℃、ヘイズ(曇価):0.5
ここで、EBは4官能ウレタンアクリレートであり、PMMA−1は上記の通りであり、PMMA−2はメタクリル酸メチル(MMA)単独重合体{重量平均分子量(Mw):1.1×105、数平均分子量(Mn):0.64×105、多分散度(Mw/Mn):1.72}であり、ポリエステル−1はポリエステル樹脂{重量平均分子量(Mw):0.86×105、数平均分子量(Mn):0.41×105、多分散度(Mw/Mn):2.1}である。
表1から分かるように、参考例1、2及び実施例1〜7の加飾シートは、成形性、破断伸度、耐擦傷性、及び耐溶剤性のいずれも良好であり、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' は、7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であった。
これに対し、比較例1の加飾シートにおいては、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' が7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であり、破断伸度が高かったが、表面保護層の厚みが薄過ぎるため耐擦傷性及び耐溶剤性のいずれも悪かった。
また、比較例2〜4の加飾シートにおいては、表面保護層の140℃における貯蔵弾性率E' が7.7×105〜1.2×108Paの範囲内であり、耐溶剤性が良好であったが、破断伸度が低く、耐擦傷性も悪かった。
さらに、真空成形後の成形体の金型離れ性、射出成形後の成形体の金型離れ性を評価した結果、参考例1、2、実施例1〜7及び比較例1〜4はいずれも、真空成形後及び射出成形後の金型離れ性の双方とも良好であった。
本発明の三次元加工用加飾シートは、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途の加飾成形体に好適に用いられる。
10 加飾シート
11 支持体
12 表面保護層
13 透明熱可塑性樹脂層
14 第2熱可塑性樹脂層
15 印刷層
16 接着剤層
17 プライマー層

Claims (7)

  1. 支持体の上に少なくとも表面保護層を積層してなる三次元加工用加飾シートであって、該支持体のASTM D648法による熱変形温度より40℃高い温度において該三次元加工用加飾シートが300%を超える破断伸度(JIS K 7127に準拠)を有し、かつ該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、0.2〜6.0μmの膜厚を有することを特徴とする三次元加工用加飾シート。
  2. 以下の測定条件で測定した140℃における前記表面保護層の貯蔵弾性率が7.7×105〜1.2×108Paの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の三次元加工用加飾シート。
    貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。
  3. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜20:80の比率(質量比)で含む樹脂組成物である請求項1又は2に記載の三次元加工用加飾シート。
  4. 前記支持体と前記表面保護層との間に、さらに透明熱可塑性樹脂層を設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
  5. 前記支持体と前記透明熱可塑性樹脂層との間に、さらに第2熱可塑性樹脂層を設けてなる請求項4に記載の三次元加工用加飾シート。
  6. 前記電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である請求項3〜5のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
  7. 三次元加工がインサート成形である請求項1〜6のいずれかに記載の三次元加工用加飾シート。
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