JP5439909B2 - 加飾シートの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、かかる製造方法においては、意匠層を形成した際に表面に凹凸が生じ、その上に表面保護層を積層した際に表面保護層表面の平滑性が損なわれることが懸念される。
また、従来のように加飾シートの平滑化処理を全く行わないと、加飾シート表面の平滑性及び艶と射出成形後の加飾成形品の平滑性及び艶とが著しく異なることにより、加飾シートの意匠感と加飾成形品の意匠感とが大きく相違することがあった。
(1)表面が平滑な剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に意匠層を形成する工程と、該プライマー層及び該意匠層を基材上に転写する工程と、該基材上の該剥離フィルムを剥がす工程と、該基材上に形成された該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする加飾シートの製造方法、及び
(2)前記転写する工程が、熱プレス加工により行われる上記(1)に記載の加飾シートの製造方法、
を提供するものである。
図1は本発明の加飾シート10の製造方法の概略を示す工程図である。本発明の製造方法は、以下の(1)〜(6)の工程を少なくとも含む方法である。
表面が平滑な剥離フィルム11上にプライマー組成物を積層した後必要に応じ乾燥することによりプライマー層12を形成する。
本発明において、剥離フィルムの表面が平滑であるとは、表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であることをいい、0.2μm以下であることが好ましい。ここで、表面粗さ(Ra)とは、JIS B 0601:2001に規定された算術平均粗さRaをいう。
また、本発明の加飾シート表面の平滑性は、表面粗さRaとして0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。
次に、プライマー層12上に意匠用インキを印刷又は塗工した後必要に応じ乾燥することにより意匠層13を形成する。意匠層13は、絵柄層及び/又は全面ベタ着色層からなる。
次いで、剥離フィルム11上に形成されたプライマー層12及び意匠層13を基材14に転写する。転写方法としては鏡面板を用いた熱プレス加工や鏡面ロールを用いたエンボス加工を用いることが好ましい。具体的には、公知の熱プレス機、エンボス加工機を用い、プライマー層12及び意匠層13を積層した剥離フィルム11と基材14を加熱軟化させ、重ねた状態で加圧し貼り合わせる。これにより、図1の(a)に示すようなシートが得られる。
転写後の基材14上の剥離フィルム11を剥がすことにより、図1の(b)に示すように基材14上に意匠層13とプライマー層12とがその順に積層されたシートが得られる。このとき、プライマー層12の表面は、前工程の剥離フィルム面を賦形し平滑面となっている。
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液又は電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液をプライマー層12の平滑面上に塗工することにより積層する。塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、プライマー層12の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明の製造方法においては、調製された塗工液を、プライマー層12の表面に、硬化後の厚さが1〜30μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
次に、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に電子線、紫外線等の電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層15を形成する。これにより、図1の(c)に示すように表面保護層15が形成された加飾シート10を得ることができる。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、電子線により劣化する基材14を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材14への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
プライマー層12を構成するプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が用いられる。
0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることも可能となる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
基材14の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.5mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
重合性モノマーとしては、代表的には、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
艶消し剤としては、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらのうち吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
艶消し剤の粒径としては、0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmが好ましい。
これらの艶消し剤の表面保護層を構成する樹脂組成物における含有量は、1〜80質量%の範囲であることが好ましい。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の製造方法により得られる加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくても良い。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
なお、表面粗さRaは、株式会社東京精密製表面粗さ測定器、商品名「ハンディサーフE−35A」を使用し、JIS B 0601:2001に準拠し、長さLの粗さ曲線を中心線から折り返し、それぞれの粗さ曲線と中心線によって得られた全面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わした。
また、表面艶は、グロスメーター(村上色彩技術研究所製「GMX−203」)を用い、入射角60°の条件で、グロス値を測定した。数値が高いほど艶が高いことを示す。
剥離フィルムとして表層にシリコーン系の離型層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm、表面粗さ(Ra):0.01μm)を用い、この剥離フィルム上にアクリル/ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明なプライマー層を形成した。
次いで、このプライマー層上にアクリルウレタン共重合樹脂インキを用い、グラビア印刷により木目柄の意匠層を形成した。その後、剥離フィルム上にプライマー層と意匠層とが形成されたシートの意匠層側を基材(ABS樹脂からなるシート、厚さ;400μm)に接触させた後、熱プレス機を用いて熱転写する熱プレス加工を行った。この熱プレス加工条件は、150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間であった。熱プレス加工後、剥離フィルムを剥離し、プライマー層、意匠層を基材に転写した。
次に、剥離フィルムを剥離した後のプライマー層表面に、2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;2,000)からなる電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが6μmとなるようにグラビアリバースにて塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ加飾シートを得た。
次に、得られた加飾シートを、シートの温度が170℃になるまで赤外線ヒーターで加熱し、軟化させた後、真空成形した。型より加飾シートを離型し、不要部分にダイカット型を油圧により押し当てて不要部分をトリミングした。このトリミングした加飾シートを用いて、射出成形型に挿入した後、型締めして、型内にABS樹脂を射出して、成形品表面に加飾シートが積層一体化し、インサート成形による加飾樹脂成形品を得た。
実施例1の電離放射線硬化性樹脂組成物において、2官能のウレタンアクリレート100質量部に対して平均粒径3μmのシリカを10質量部添加した以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例1において、剥離フィルムを用いないで基材上に絵柄層、プライマー層、表面保護層を順次積層した以外、実施例1と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布、硬化した後にステンレス製鏡面板を用いた熱プレス機を用い、150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間熱プレス加工を行い、表面を平滑化した以外、比較例1と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例2において、剥離フィルムを用いないで基材上に絵柄層、プライマー層表面保護層を順次積層した以外、実施例2と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例4
比較例3において、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布、硬化した後にステンレス製鏡面板を用いた熱プレス機を用い、150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間熱プレス加工を行い、表面を平滑化した以外、比較例3と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
これに対し、平滑化処理をしなかった比較例1の加飾シートは、表面粗さRaが大きく、インサート成形後に表面粗さRaが小さくなったため、加飾シートと加飾樹脂成形品とで意匠感が大きく異なってしまった。
また、表面保護層積層後に平滑化処理を行った比較例2の加飾シートは、インサート成形前では表面粗さRaが小さく表面艶が高かったが、インサート成形後に表面粗さRaが大きくなり、表面艶が低くなったので、加飾シートと加飾樹脂成形品とで意匠感が大きく異なってしまった。
これに対し、平滑化処理をしなかった比較例3の加飾シートは、表面粗さRaが大きく、低光沢な意匠性が得られたが、インサート成形後に表面粗さRaが小さくなったため、加飾シートと加飾樹脂成形品とで意匠感が大きく異なってしまった。
また、表面保護層積層後に平滑化処理を行った比較例4の加飾シートは、熱プレス加工することにより、鏡面板を賦形し艶が高くなり、低光沢なサンプルを得る事ができなかった。さらに、インサート成形後に表面粗さRaが大きくなり、表面艶が低くなったので、加飾シートと加飾樹脂成形品とで意匠感が大きく異なってしまった。
11. 剥離フィルム
12.プライマー層
13.意匠層
14.基材
15.表面保護層
Claims (4)
- 射出成形法による加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シートの製造方法であって、表面が平滑な剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に意匠層を形成する工程と、該プライマー層及び該意匠層を基材上に転写する工程と、該基材上の該剥離フィルムを剥がす工程と、該基材上に形成された該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする加飾シートの製造方法。
- 前記転写する工程が、熱プレス加工により行われる請求項1に記載の加飾シートの製造方法。
- 前記基材の厚みが0.03〜1.0mmである請求項1又は2に記載の加飾シートの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により得られた加飾シートを使用し、射出成形法により加飾シートと射出樹脂を一体化させる工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
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