JP5581769B2 - 加飾シートの製造方法及び加飾シート - Google Patents
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Description
しかし、かかる製造方法においては、意匠層を形成した際に表面に凹凸が生じ、その上に表面保護層を積層した際に表面保護層表面の平滑性が損なわれることが懸念される。
また、従来のように加飾シートの平滑化処理を全く行わないと、加飾シート表面の平滑性及び艶と射出成形後の加飾成形品の平滑性及び艶とが著しく異なることにより、加飾シートの意匠感と加飾成形品の意匠感とが大きく相違することがあった。
(1)表面が平滑な剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に意匠層を形成する工程と、該プライマー層及び該意匠層を基材上に転写する工程と、該基材上の該剥離フィルムを剥がす工程と、該基材上に形成された該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに該加飾シートの裏面の算術平均粗さRaを1.0〜10.0μmとする粗面化処理工程を含むことを特徴とする、射出成形法による加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シートの製造方法、
(2)前記プライマー層及び意匠層を基材上に転写する工程において、鏡面板を用いた熱プレス加工又は鏡面ロールを用いたエンボス加工を用いる上記(1)に記載の加飾シートの製造方法、
(3)前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる上記(1)又は(2)に記載の加飾シートの製造方法、
(4)前記プライマー層及び意匠層を基材上に転写する工程と同時に加飾シートの裏面の粗面化処理工程を行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の加飾シートの製造方法、
(5)前記粗面化処理が、前記基材の裏面側に微小粒子を含有する樹脂層を設けることにより行われる上記(1)に記載の加飾シートの製造方法、
(6)基材上に意匠層と、プライマー層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートであって、該表面保護層の表面が平滑であり、該加飾シートの裏面の算術平均粗さRaが、1.0〜10.0μmであることを特徴とする、射出成形法による加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シート、
(7)前記表面保護層の表面の算術平均粗さRaが、0.01μm以上1.0μm未満である上記(6)に記載の加飾シート、
(8)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により得られる加飾シートを用いることを特徴とする射出成形法による加飾樹脂成形品の製造方法、
(9)前記加飾シートを真空成形型により予め成形品の表面形状に真空成形して成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させる工程を有する上記(8)に記載の加飾樹脂成形品の製造方法、
(10)前記加飾シートを射出成形型と真空成形型の兼用型に配置し、予備成形する工程、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させる工程を有する上記(8)に記載の加飾樹脂成形品の製造方法、
を提供するものである。
図1及び図2は本発明の加飾シートの製造方法の概略を示す工程図である。本発明の製造方法は、以下の(1)〜(7)の工程を少なくとも含む方法である。
表面が平滑な剥離フィルム11上にプライマー組成物を積層した後必要に応じ乾燥することによりプライマー層12を形成する。
本発明において、剥離フィルムの表面が平滑であるとは、算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であることをいい、0.2μm以下であることが好ましい。ここで、算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601:2001に規定された算術平均粗さRaをいう。
また、本発明の加飾シート表面の平滑性は、算術平均粗さRaとして0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。
次に、プライマー層12上に意匠用インキを印刷又は塗工した後必要に応じ乾燥することにより意匠層13を形成する。意匠層13は、絵柄層及び/又は全面ベタ着色層からなる。
次いで、剥離フィルム11上に形成されたプライマー層12及び意匠層13を基材14に転写する。転写方法としては鏡面板を用いた熱プレス加工や鏡面ロールを用いたエンボス加工を用いることが好ましい。具体的には、公知の熱プレス機、エンボス加工機を用い、プライマー層12及び意匠層13を積層した剥離フィルム11と基材14を加熱軟化させ、重ねた状態で加圧し貼り合わせる。これにより、図1の(a)に示すようなシートが得られる。
転写後の基材14上の剥離フィルム11を剥がすことにより、図1の(b)に示すように基材14上に意匠層13とプライマー層12とがその順に積層されたシートが得られる。このとき、プライマー層12の表面は、前工程の剥離フィルム面を賦形し平滑面となっている。
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液又は電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液をプライマー層12の平滑面上に塗工することにより積層する。塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、プライマー層12の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明の製造方法においては、調製された塗工液を、プライマー層12の表面に、硬化後の厚さが1〜30μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
次に、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に電子線、紫外線等の電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層15を形成する。これにより、図1の(c)に示すように表面保護層15が形成された加飾シート10を得ることができる。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、電子線により劣化する基材14を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材14への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
本発明における加飾シート裏面の粗面化処理工程は、上述の算術平均粗さRaを満たす程度に加飾シートの裏面を粗面化し得る工程であれば特に限定されないが、例えば、加飾シート10の裏面側、具体的には基材14の意匠層13やプライマー層12と接しない面を、梨地板を用いた熱プレスや梨地ロールを用いたエンボス加工やサンドブラスト処理により粗面化する方法が挙げられる。熱プレス加工、エンボス加工としては、公知の方法を用いることができ、加飾シート10を、構成する基材の軟化温度以上、融点或いは溶融温度未満の温度に加熱して軟化させ、該加飾シート10の裏面側を加圧、賦形した後、冷却、固化することにより、図1に示すように加飾シート10の裏面は粗面化される。
また、本発明における粗面化処理としては、図2(d)に示すように、加飾シート10の裏面を、微小粒子含有樹脂層16を設けることにより、粗面化する方法も挙げられる。
被処理面のRaの調整は、熱プレス温度やエンボス温度を調整したり、梨地板や梨地ロールの表面粗さを調整することで行うことができる。熱プレス温度やエンボス温度は、基材により適宜選定すればよく、例えば、塩化ビニルは30〜70℃、ポリプロピレン樹脂は160〜180℃、アクリル系樹脂は150〜260℃とすると、梨地板や梨地ロールの凹凸形状を良好に賦形することができる。また、梨地板や梨地ロールの算術平均粗さRaは、1.0〜20.0μmであると好ましく、1.0〜15.0μmであるとより好ましく、1.0〜10.0μmであるとさらに好ましい。
加飾シート10の裏面側に、微小粒子含有樹脂層16を設ける場合には、上記(1)〜(6)のいずれかの工程の前後で行うことができるが、上記工程(3)以降に行うと、加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaを高く維持しやすいため好ましい。被処理面のRaの調整は、微小粒子とバインダー樹脂との配合比や、微小粒子の粒径を調整することで行うことができる。
また、上記粗面化処理は、裏面の十点平均粗さRzを1.0〜100.0μmとすることが好ましく、5.0〜50μmとすることが好ましい。ここで、十点平均粗さRzとは、JIS B 0601:2001に規定された十点平均粗さRzをいう。
加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaが1.0μm未満であると、本発明の効果が発現せず、10.0μmを超えると、加飾シート10の裏面側の粗さが表面にも影響するため、例えば加飾シート10を用いてインサート成形を行った場合に、得られる成形品の表面の平滑性や表面艶が劣ったり、射出樹脂との密着性が劣るなどの問題が発生する。
プライマー層12を構成するプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が用いられる。
0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることも可能となる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
基材14の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.5mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
重合性モノマーとしては、代表的には、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。三次元成形性と耐薬品性と耐傷付き性とを鼎立させる観点から、2,000〜100,000であることが特に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー/プレポリマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
微小粒子の平均粒径は好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmであり、添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がさらに好ましい。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状などである。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の製造方法により得られる加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくても良い。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
なお、各評価方法・測定方法の詳細を以下に示す。
(算術平均粗さRa)
株式会社東京精密製表面粗さ測定器、商品名「ハンディサーフE−35A」を使用し、JIS B 0601:2001に準拠し、長さLの粗さ曲線を中心線から折り返し、それぞれの粗さ曲線と中心線によって得られた全面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わした。
(十点平均粗さRzJIS)
十点平均粗さRzJISを、JIS B 0601:2001に準拠して、測定長4mm、カットオフ値0.8mmで測定した。
(エンボス堅牢度)
加飾シートを所定温度のオイルバスに1分間浸漬し、浸漬後のエンボスのしぼ戻り及び艶を目視した。10℃刻みで評価を行い、しぼ戻りがなく、艶の変化もない最も高い温度を示した。
(耐ブロッキング性)
加飾シートを2枚用い、一方の表面側と他方の裏面側とを重ね合わせてブロッキング・テスターにより2.94MPaの荷重をかけ、40℃で72時間放置した後、接している面同士の付着・接合程度を以下の指標により評価した。
○:重ねた加飾シートを剥がす際、全く抵抗が無い状態である。
×:重ねた加飾シートを剥がす際に抵抗が有り、加飾シートの表面側にブロッキングに由来する擦り傷やシワが確認された。
(異物による傷、凹み)
加飾シートを、一層の表面側と他層の裏面側とを重ね合わせたロール状に巻き取り、20℃で168時間放置した。ロールから20枚の加飾シートを切り出し、表面保護層に傷、凹みが有るものの枚数を確認した。尚、これらの傷や凹みは、ロールに巻き込まれた微細な塵埃等の異物に起因するものと考えられる。
○:傷、凹みが生じた加飾シート 0枚
△:傷、凹みが生じた加飾シート 10枚未満
×:傷、凹みが生じた加飾シート 10枚以上
(表面艶)
グロスメーター(ビックガードナー社製マイクロ−トリ−グロス)を用い、入射角60°の条件で、グロス値を測定した。数値が高いほど艶が高いことを示す。
(平滑性)
加飾シートをインサート成形した成形品表面を目視にて評価した。
○;表面の平滑性に優れ、成形品表面に鮮鋭な像が映り込んだ。
×;表面の平滑性に乏しく、成形品表面に映り込んだ像が歪んだ。
(ヘイズ)
ASTM D4039に定義されたヘイズ値にて評価した。グロスメーター(ビックガードナー社製マイクロ−トリ−グロス)を用い、入射角60°、20°の条件で、それぞのグロス値を測定し、下式にてヘイズ値を求めた。
ヘイズ値=グロス値(60°)−グロス値(20°)
ヘイズ値が小さいほど光沢感、透明感が高いことを示し、ヘイズ値が大きいほど曇り透明性が低いことを示す。
(射出樹脂との密着性)
インサート成形後にシート表面にカッターナイフを用いて2mm間隔に縦10本、横10本の碁盤目状の切れ込みを入れた後、切れ込みを入れた部分にニチバン製セロテープ(登録商標)を圧着し、急激剥離した。
◎:剥離はなかった。
○:碁盤目の切れ込みに沿って極軽微な剥離が見られた。
×:シートと射出樹脂の間で剥離が見られた。
剥離フィルムとして表層にシリコーン系の離型層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm、算術平均粗さ(Ra):0.01μm)を用い、この剥離フィルム上にアクリル/ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明なプライマー層を形成した。
次いで、このプライマー層上にアクリルウレタン共重合樹脂インキを用い、グラビア印刷により木目柄の意匠層を形成した。その後、剥離フィルム上にプライマー層と意匠層とが形成されたシートの意匠層側を基材(ABS樹脂からなるシート、厚さ;400μm)に接触させた後、プライマー層側(表面側)に算術平均粗さRa0.05μmのステンレス製鏡面板を、基材側(裏面側)に算術平均粗さRa8.0μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた熱プレス機を用いて、150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間熱プレス加工を行った。熱プレス加工後、剥離フィルムを剥離し、プライマー層、意匠層を基材に転写した。
次に、剥離フィルムを剥離した後のプライマー層表面に、2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;2,000)からなる電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが6μmとなるようにグラビアリバースにて塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ加飾シートを得た。
得られた加飾シートの算術平均粗さRaは、表面側が0.1μmであり、裏面側が3.0μmであった。また、エンボス堅牢度は130℃であった。
次に、得られた加飾シートを、シートの温度が170℃になるまで赤外線ヒーターで加熱し、軟化させた後、真空成形した。型より加飾シートを離型し、裏面を確認したところエンボスは消失し、平滑になっていた。真空成形した加飾シートの不要部分を、ダイカット型を油圧により押し当ててトリミングした。このトリミングした加飾シートを用いて、射出成形型に挿入した後、型締めして、型内にABS樹脂を射出して、成形品表面に加飾シートが積層一体化し、インサート成形による加飾樹脂成形品を得た。
熱プレスの温度を140℃に変更した以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
熱プレスの温度を180℃に変更した以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
熱プレスの温度を230℃に変更した以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例1の熱プレス加工において、裏面側に、梨地柄の入ったステンレス製金属板に代えて、算術平均粗さRa0.05μmのステンレス製鏡面板を用い、また、表面の電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、裏面側にアクリル系樹脂100質量部及びシリカ(平均粒径:1.5μm)3質量部からなる組成物を塗工量1g/m2でグラビア印刷を施して微小粒子含有樹脂層を設けた以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径3.0μmのシリカを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径5.0μmのシリカを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径5.0μmのアクリルビーズを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径5.0μmのポリエチレンワックスを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
2官能のポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000)と6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;6,000)を94:6の比で混合した電子線硬化性樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
2官能のアクリルシリコーンアクリレート(重量平均分子量;20,000)と6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;5,000)を70:30の比で混合した電子線硬化性樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例1の熱プレス加工において、裏面側に、梨地柄の入ったステンレス製金属板に代えて、算術平均粗さRa0.05μmのステンレス製鏡面板を用いて熱プレス加工を行った以外は、実施例1と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例1の熱プレス加工において、裏面側に、算術平均粗さRaが19μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いて、140℃で熱プレス加工を行った以外は、実施例1と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例1において、表面側にアクリル系樹脂100質量部及びシリカ(平均粒径:3.0μm)10質量部からなる組成物を塗工量1g/m2でグラビア印刷を施して微小粒子含有樹脂層を設けた以外は比較例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径0.1μmのシリカを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
平均粒径1.5μmのシリカに代えて、平均粒径9.0μmのシリカを用いた以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例1において、裏面側に帯電防止剤としてカチオン系界面活性剤(ジメチル硫酸トリメチルアンモニウム塩)のイソプロピルアルコール10%溶液を乾燥時塗布厚が0.5g/m3となるようにグラビアコーティングにより塗布した以外は実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
また、加飾シート表面側に微小粒子含有樹脂層を設けた比較例3では、加飾シート表面の平滑性が損なわれた。
比較例6では、加飾シートの裏面に界面活性剤を塗布することでブロッキングが抑止されたが、加飾シートの両面が共に平滑であるため、異物の巻き込みによる傷や凹みは完全には防止できず、また、射出樹脂との密着性が低下してしまった。
11.剥離フィルム
12.プライマー層
13.意匠層
14.基材
15.表面保護層
16.微小粒子含有樹脂層
Claims (10)
- 表面が平滑な剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に意匠層を形成する工程と、該プライマー層及び該意匠層を基材上に転写する工程と、該基材上の該剥離フィルムを剥がす工程と、該基材上に形成された該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに該加飾シートの裏面の算術平均粗さRaを1.0〜10.0μmとする粗面化処理工程を含むことを特徴とする、射出成形法による加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シートの製造方法。
- 前記プライマー層及び意匠層を基材上に転写する工程において、鏡面板を用いた熱プレス加工又は鏡面ロールを用いたエンボス加工を用いる請求項1に記載の加飾シートの製造方法。
- 前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる請求項1又は2に記載の加飾シートの製造方法。
- 前記プライマー層及び意匠層を基材上に転写する工程と同時に加飾シートの裏面の粗面化処理工程を行う請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シートの製造方法。
- 前記粗面化処理が、前記基材の裏面側に微小粒子を含有する樹脂層を設けることにより行われる請求項1に記載の加飾シートの製造方法。
- 基材上に意匠層と、プライマー層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートであって、該表面保護層の表面が平滑であり、該加飾シートの裏面の算術平均粗さRaが、1.0〜10.0μmであることを特徴とする、射出成形法による加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シート。
- 前記表面保護層の表面の算術平均粗さRaが、0.01μm以上1.0μm未満である請求項6に記載の加飾シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られる加飾シートを用いることを特徴とする射出成形法による加飾樹脂成形品の製造方法。
- 前記加飾シートを真空成形型により予め成形品の表面形状に真空成形して成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させる工程を有する請求項8に記載の加飾樹脂成形品の製造方法。
- 前記加飾シートを射出成形型と真空成形型の兼用型に配置し、予備成形する工程、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させる工程を有する請求項8に記載の加飾樹脂成形品の製造方法。
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