JP5240012B2 - 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 - Google Patents

加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP5240012B2
JP5240012B2 JP2009088078A JP2009088078A JP5240012B2 JP 5240012 B2 JP5240012 B2 JP 5240012B2 JP 2009088078 A JP2009088078 A JP 2009088078A JP 2009088078 A JP2009088078 A JP 2009088078A JP 5240012 B2 JP5240012 B2 JP 5240012B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
decorative sheet
decorative
protective layer
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009088078A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010234768A (ja
Inventor
信雄 齋藤
絵美 竹内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2009088078A priority Critical patent/JP5240012B2/ja
Publication of JP2010234768A publication Critical patent/JP2010234768A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5240012B2 publication Critical patent/JP5240012B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は加飾シート、該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法並びに該製造方法により製造される加飾樹脂成形品に関する。
成形品の表面に加飾シートを積層することで加飾した加飾成形品が、車両内装部品等の各種用途で使用されている。このような加飾成形品の成形方法としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化するインサート成形法(例えば、特許文献1参照)と射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形体表面に加飾を施す射出成形同時加飾法(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)がある。
ところで、加飾成形品は表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させる目的で表面保護層が設けられる。しかしながら、上述の加飾成形品の成形方法において、インサート成形法では加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する過程、射出成形同時加飾法では加飾シートが予備成形時にあるいは溶融樹脂の射出時に、キャビティの内周面に沿うように延伸されて密着する過程で、加飾シートが真空圧空作用により、あるいは溶融樹脂の圧力、剪断応力による引っ張りなどによって、金型形状に沿うために最低必要な量以上に伸ばされるため、成形品の曲面部の表面保護層にクラックが入るという問題があった。
上記問題点に対して、表面保護層の成形性を上げるために表面保護層として熱硬化性樹脂を用いることが行われてきた(例えば、特許文献4参照)。熱硬化性樹脂は成形性については良好な結果を示し、表面保護層にクラックは入りにくいが、加飾成形品の表面の耐摩耗性や耐擦傷性は満足いくものではなかった。
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾成形品の表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させる試みがなされたが、成形の際に成形品曲面部にクラックが生じるという問題があった。
さらには、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、また、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。また、三次元形状の成形品に紫外線を照射する必要があるため、別途三次元形状の成形品に紫外線照射可能な設備が必要である。
そこで、本発明者らは、基材上に、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化した表面保護層を有し、かつ、表面保護層の厚さが1〜1000μmである加飾シートを提案した(特許文献5参照)。この加飾シートは、高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好で、インサート成形法や射出成形同時加飾法においても、表面保護層にクラック等が入らない。
特開2004−322501号公報 特公昭50−19132号公報 特公昭61−17255号公報 特開平6−134859号公報 特開2007−290392号公報
上記特許文献5に開示される加飾シートは、高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好であるが、該加飾シートに対して、同様の成形加工性を維持しつつ、さらに、高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有する加飾シートが望まれていた。
また、特許文献5に開示される化粧シートは、熱可塑性樹脂として、アクリル系樹脂を用いるが、アクリル系樹脂は必ずしも耐溶剤性が高くないために、アルコールを用いた洗剤等の溶剤系生活汚染に表面保護層表層が犯されることがあった。
このような課題に対して、本発明は、極めて高い耐摩耗性や耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好でクラック等が入らない表面保護層を有する加飾成形品の成形に用いる加飾シート、該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法並びに該製造方法により製造される加飾樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂とフェノキシ樹脂を90:10〜10:90の比率(質量比)で含み、該フェノキシ樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が20,000〜150,000である樹脂組成物を架橋硬化したものである加飾シート、
(2)上記(1)に記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法、
(3)上記(1)に記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(4)上記(2)又は(3)に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品、
を提供するものである。
本発明によれば、極めて高い耐摩耗性や耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好でクラック等が入らない表面保護層を有する加飾成形品の成形に用いる加飾シート、該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法並びに該製造方法により製造される加飾樹脂成形品を提供することができる。
本発明の加飾シートにおける一態様の断面を示す模式図である。 本発明の加飾シートにおける他の一態様の断面を示す模式図である。
本発明の加飾シートは、基材上に少なくとも表面保護層を有し、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂とフェノキシ樹脂を90:10〜10:90の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであることを特徴とする。
(電離放射線硬化性樹脂)
本発明の加飾シートの表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
(フェノキシ樹脂)
本発明の加飾シートの表面保護層を構成するもう一方の成分である、フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂と同様の原料から製造されるポリヒドロキシポリエーテル樹脂であり、通常のエポキシ樹脂よりも分子量が大きい熱可塑性樹脂である。典型的には、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンから誘導される、下記一般式(I)を繰り返し単位として有する樹脂である。
Figure 0005240012
本発明で用いるフェノキシ樹脂は、重量平均分子量が20,000〜150,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のいずれも高いレベルで得ることができる。より具体的には、重量平均分子量が20,000以上であると十分な可撓性が得られる。また、重量平均分子量が150,000以下であると、粘度が高くなりすぎることがなく、他の樹脂との十分な相溶性が得られ、透明感が損なわれることがない。以上の観点から、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、25,000〜80,000の範囲がさらに好ましく、30,000〜80,000の範囲が特に好ましい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などが挙げられる。
また、前記フェノキシ樹脂の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.1〜3.0の範囲であることが好ましい。多分散度がこの範囲内であると、やはり架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のいずれも高いレベルで得ることができる。以上の点から、該フェノキシ樹脂の多分散度は、さらに1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。
本発明で用いることのできるフェノキシ樹脂として、市販品を用いることができ、例えば、PKHH(ユニオンカーバイド社製)、エピコート1255HX−30(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノトートYP−50(東都化成(株)製)などが挙げられる。
本発明の加飾シートの表面保護層を構成する樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂とフェノキシ樹脂の質量比が、90:10〜10:90の範囲である。この範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のバランスが良好となる。以上の点から、電離放射線硬化性樹脂とフェノキシ樹脂の質量比は、80:20〜20:80の範囲がさらに好ましく、60:40〜40:60の範囲が特に好ましい。
また本発明における表面保護層を構成する樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(成形性及び耐擦傷性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
次に、本発明の加飾シートの構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に絵柄層12、隠蔽層13及び接着剤層14を有し、かつ、基材11の絵柄層12の反対側に表面保護層15を有するものである。ここで、表面保護層15は上述の樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。
一方、図2に示す例では、基材11がバッカー層20を兼ねる構成を有する加飾シート10の断面を示す模式図である。すなわち、基材11(20)上に絵柄層12及びプライマー層16を有し、該プライマー層の上に表面保護層15を積層してなる加飾シートである。
(基材)
基材11としては、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」という)、塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用される。また、基材11は、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートとして使用することができる。
なお、基材11がバッカー層20を兼ねる図2に示す構成では、基材11の材質としてABS樹脂を用いることが好ましく、いわゆるバッカー層は用いられない。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.5mm程度が一般的である。
これらの基材はその上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
(絵柄層)
図1及び図2に示される絵柄層12は樹脂成形品に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層12に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
(隠蔽層)
隠蔽層13は所望により設けられる層であり、バッカーフィルム表面の色の変化、ばらつきにより、加飾シートの柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられる。通常不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
(接着剤層)
加飾シート10は射出樹脂との密着性を向上させるため、所望により、接着剤層14を設けることができる。接着剤層14には、射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。
なお、図2に示される構成においては、接着剤層14は、通常用いられない。
(プライマー層)
図2に示す構成では、所望により、プライマー層16を設けてもよい。プライマー層16は絵柄層12の表面をならして平滑化し、基材11及び絵柄層12と、表面保護層15との接着性を向上させる目的で用いられるものである。
プライマー層を構成する材料としては、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、または、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが好適に用いられる。なお、プライマー層は、絵柄層12が観察されるように、通常、透明又は半透明なもので構成される。
また、プライマー層12の厚さは0.1〜10μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることもが可能となる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。
(表面保護層)
表面保護層15の形成は上述の樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これを塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、基材11の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるようにすることが好ましく、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
本発明においては、表面保護層15の硬化後の厚さが1〜1000μmであることが好ましい。表面保護層15の硬化後の厚さが1μm以上であると、耐擦傷性、耐候性などの保護層としての十分な物性が得られる。特に、車両外装部品を考慮した場合には、透明感、塗装感などの意匠性及び耐摩耗性が要求されることから、さらに表面保護層15を厚膜化する必要がある。従って、表面保護層15の硬化後の厚さは20μm以上であることが好ましい。一方、表面保護層15の硬化後の厚さが1000μm以下であると、電離放射線を均一に照射することが可能であり、硬化が十分となり、硬化後の成形性も良好であり、さらに経済的にも有利である。
本発明の加飾シートは、表面保護層15の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い成形性が得られることから、特に表面保護層に高い膜厚を要求される部材の加飾シートとして有用である。
また、表面保護層15の硬化後の厚さを1〜20μm未満とすることにより、成形性が向上し、自動車内装用途などの複雑な3次元形状への高い追従性を得ることができる。従って、本発明の加飾シートにおいて、硬質な電離放射線硬化性樹脂を配合しても優れた成形性を発現させることができ、成形性を損なうことなく、塗膜を硬くすることができるため、加工や実用面で必要な耐擦傷性、耐汚染性等の優れた特性を持たせることができる。
また、本発明の加飾シートは、JIS K 7127に準拠した引張試験における引張伸度が50%以上であることが好ましい。引張伸度は高いほど成形性は良好となるが、引張伸度が50%以上であれば、通常用いられる真空成形型での真空成形時に表面保護層にクラックが発生しない。また、引張伸度は150%以上であることがさらに好ましい。引張伸度が150%以上であると複雑な形状や変形の大きい形状に対しても追従し、表面保護層にクラックが発生しない。
なお、測定条件としては、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件であり、表面保護層にクラックが入る際の引張伸度で評価するものである。
本発明の加飾シートは、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法などの各種射出成形法に用いることができ、インサート成形法及び射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
射出樹脂は用途に応じた樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が代表的である。また、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等も用途に応じ用いることができる。
次に、射出成形同時加飾法においては、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくてもよい。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
以上のようにして製造された加飾樹脂成形体は、その表面保護層に成形過程でクラックが入ることがなく、その表面は高い耐摩耗性や耐擦傷性を有する。また、従来表面保護層として用いられていたアクリルフィルムに対して、耐溶剤性及び耐薬品性が極めて高い。また、特開2007−290392号公報に開示される加飾シートと比較しても、さらに耐溶剤性及び耐薬品性が高い。
また、本発明の製造方法では、加飾シートの製造段階で表面保護層が完全硬化されるので、加飾樹脂成形体を製造した後に表面保護層を架橋硬化する工程が不要である。
本発明の加飾樹脂成形体は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途に適している。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
評価方法
(1)成形性(塗膜の形状追随性)
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて、以下に示す方法で真空成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;表面保護層に塗膜割れや白化が見られず、良好に型の形状に追随した。
×;型の形状に追随できずに表面保護層に塗膜割れや白化が見られた。
<真空成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させる。次いで、射出成形用雌型と同形状の型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率150倍)、型の内部形状に成形する。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形品を得る。
(2)耐溶剤性
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて、表面にエタノールを滴下後、時計皿で滴下部分を被覆した。常温で1時間放置した後、時計皿をはずし、目視にて外観を確認した。評価基準は以下のとおりである。
○;外観に異常なし
△;軽微な白化が見られたり、軽微な塗膜の割れが見られる
×;著しい白化が見られ、塗膜の割れが見られる
(3)耐擦傷性
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、以下の基準で評価した。試験に用いた装置は、テスター産業(株)製「学振型摩耗試験機」であり、摩擦用白綿布としてカナキン3号を用い500g荷重で、200往復後の試験片で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;傷付きなし
△;傷付き又は艶変化が試験面の1/2以下の面で発生
×;傷付き又は艶変化が試験面の1/2以上で発生
(4)耐摩耗性
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、東洋精機(株)製テーバー摩耗試験機を用い、摩耗輪:CS−17、荷重:1kg、回転数:200回転の条件で試験後の試験片の表面を観察した。評価基準は以下のとおりである。
○;摩耗により絵柄層が欠落していない
△;一部絵柄層が欠落し基材が露出
×;絵柄層全面が欠落し基材が露出
(5)引張伸度
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、JIS K 7127に準拠して、引張伸度を測定した。測定条件としては、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件であり、表面保護層にクラックが入る際の引張伸度で評価した。
実施例1
電子線硬化性樹脂(以下「EB樹脂」という)である2官能のウレタンアクリレート(第1表中では「EB−1」と記載する。)20質量部と、フェノキシ樹脂重量平均分子量(Mw)0.5×105、数平均分子量(Mn)0.1×105、多分散度(Mw/Mn)5.0)80質量部を混合し、電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB樹脂とフェノキシ樹脂の質量比は20:80である。
次に、基材として厚さ75μmの透明アクリル樹脂フィルムを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層を施していない表面に、上記電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが5μmとなるように塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層側に膜厚10μmのウレタン系樹脂接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートとラミネートして加飾シートを得た。
該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例2及び3
EB樹脂とフェノキシ樹脂の質量比を第1表に記載するように変化させたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例4
EB樹脂として、3官能のウレタンアクリレート(第1表中では「EB−2」と記載する。)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例5
基材として、厚さ400μmのABS樹脂シートを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成し、該絵柄層上にアクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明なプライマー層を形成した。該プライマー層上に、実施例1で用いたのと同じ電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗工した。この未硬化樹脂層に、実施例1に記載の条件と同じ条件で電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、加飾シートを得た。
比較例1
実施例1において、フェノキシ樹脂を用いず、2官能のウレタンアクリレート(EB−1)100質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、EB樹脂を用いず、フェノキシ樹脂100質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
比較例3
実施例1において、フェノキシ樹脂に代えて、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルのモル比100:5であって、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.60×105、多分散度(Mw/Mn)1.67の共重合体(以下「PMMA」記載する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
比較例4及び5
EB樹脂とPMMAの質量比を第1表に記載するように変化させたこと以外は比較例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
Figure 0005240012
*1 EB−1;2官能のウレタンアクリレート
*2 EB−2;3官能のウレタンアクリレート
*3 PMMA樹脂;MMAとMAの共重合体、MMA:MAのモル比が100:5、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.60×105、多分散度(Mw/Mn)1.67
本発明の樹脂組成物を用いた表面保護層を形成した加飾シートは、通常のインサート成形法や射出成形同時加飾法において、160℃程度の加熱温度から金型に接触時の温度まで急激な温度低下と急激な伸張速度、高伸張度の条件であってもクラックや割れが発生することがない。
また、このように成形性が良好な上、製造された加飾樹脂成形品の表面は高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有することが確認された。特に、本発明の加飾シートにおける、表面保護層を形成する樹脂組成物は、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂の含有量を、電離放射線硬化性樹脂との質量比で、10:90(フェノキシ樹脂:電離放射線硬化性樹脂)以上に含有させることで十分な効果があるため、相対的に電離放射線硬化性樹脂を多く含ませることができ、化粧シートに優れた表面物性を付与することができる。
さらに、本発明の加飾シートは、表面保護層を形成する樹脂組成物の耐溶剤性が高いために、アルコールを用いた洗剤等の溶剤系生活汚染に表面保護層表層が犯されることがない。
本発明の加飾シートはその表面が、高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好でクラック等が入らない。従って、本発明の加飾シートを用いて製造した加飾樹脂成形体は、その表面保護層に成形過程でクラックが入ることがなく、その表面は高い耐摩耗性や耐擦傷性を有する。また、本発明の製造方法によれば、加飾シートの製造段階で表面保護層が完全硬化されるので、加飾樹脂成形体を製造した後に表面保護層を架橋硬化する工程が不要である。
10.加飾シート
11.基材
12.絵柄層
13.隠蔽層
14.接着剤層
15.表面保護層
16.プライマー層
20.バッカー層

Claims (7)

  1. 基材上に少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂とフェノキシ樹脂を90:10〜10:90の比率(質量比)で含み、該フェノキシ樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が20,000〜150,000である樹脂組成物を架橋硬化したものである加飾シート。
  2. 前記表面保護層の厚さが1〜1000μmである請求項1に記載の加飾シート。
  3. JIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が50%以上である請求項1又は2に記載の加飾シート。
    測定条件;幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で、表面保護層にクラックが入るまでの引張伸度を測定する。
  4. 前記電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である請求項1〜のいずれかに記載の加飾シート。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品。
JP2009088078A 2009-03-31 2009-03-31 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 Active JP5240012B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009088078A JP5240012B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009088078A JP5240012B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010234768A JP2010234768A (ja) 2010-10-21
JP5240012B2 true JP5240012B2 (ja) 2013-07-17

Family

ID=43089559

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009088078A Active JP5240012B2 (ja) 2009-03-31 2009-03-31 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5240012B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102145544A (zh) * 2010-12-02 2011-08-10 国营红阳机械厂 一种防热层的成型方法
TW201248254A (en) * 2011-05-20 2012-12-01 Masahiro Umeda Printed film for touch panel, cover glass for touch panel, liquid crystal display panel, multifunction terminal, and method for manufacturing printed film for touch panel
JP5906831B2 (ja) * 2012-03-09 2016-04-20 凸版印刷株式会社 加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法および加飾成形品製造方法
CN104582928B (zh) 2012-11-27 2017-02-22 松下知识产权经营株式会社 模内成形方法和模内转印膜及其制造方法
JP6531392B2 (ja) * 2013-09-20 2019-06-19 東レ株式会社 積層フィルム

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007030479A (ja) * 2005-07-29 2007-02-08 Mitsubishi Chemicals Corp 活性エネルギー線硬化樹脂積層体およびその製造方法
JP4899998B2 (ja) * 2006-03-31 2012-03-21 大日本印刷株式会社 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5527871B2 (ja) * 2007-06-20 2014-06-25 日本化薬株式会社 紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物
TWI607231B (zh) * 2007-07-04 2017-12-01 琳得科股份有限公司 硬被覆膜

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010234768A (ja) 2010-10-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4899998B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5201289B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5332258B2 (ja) 樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた加飾シート
JP5487685B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
WO2010001867A1 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
WO2012101820A1 (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品
JP5663927B2 (ja) 加飾シート、それを用いてなる加飾樹脂成形品及びその製造方法
JP5476903B2 (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品
JP5267018B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5267017B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5228448B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5585011B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5012433B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5223222B2 (ja) 樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた加飾シート
JP5240012B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5359753B2 (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品
JP5272322B2 (ja) 樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた加飾シート
JP5012434B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP6020642B2 (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品
JP6822280B2 (ja) 加飾シート及び加飾樹脂成形品
JP5733439B2 (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品
JP5310896B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5152389B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP5012435B2 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品
JP2012218301A (ja) 加飾シート及びそれを用いてなる加飾樹脂成形品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121207

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121218

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130212

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130305

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130318

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160412

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5240012

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150