JP5310896B2 - 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾成形品の表面の耐擦傷性を向上させる試みがなされたが、成形の際に成形品曲面部に割れが生じるという問題があった。
さらには、表面保護層として紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、また、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。また、三次元形状の成形品に紫外線を照射する必要があるため、別途三次元形状の成形品に紫外線照射可能な設備が必要である。
(1)基材上に少なくともプライマー層と該プライマー層の上に積層された表面保護層とを有する加飾シートであって、該プライマー層の以下の測定条件で測定した120℃における破断伸度が200%以上であり、該プライマー層の厚さが0.6μm以上であり、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜22:78の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体であり、該熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲であり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、かつ、表面保護層の厚さが1〜1000μmである射出成形用加飾シート、
破断伸度の測定条件:JIS K 7127:1999に準拠し、該プライマー層を構成するプライマー組成物(硬化性組成物の場合は50℃72時間加熱して架橋硬化する)を製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する、
(3)前記樹脂組成物の以下の測定条件で測定した140℃における貯蔵弾性率が1×105 〜1.2×108 Paの範囲である上記(1)又は(2)の加飾シート、
貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する、
(6)上記(1)〜(4)のいずれかの加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の加飾シートと、樹脂成形体とを有する加飾樹脂成形品
を提供するものである。
ここで、破断伸度の測定条件は、JIS K 7127:1999に準拠し、該プライマー層を構成するプライマー組成物(硬化性組成物の場合は50℃72時間加熱して架橋硬化する)を製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定するものである。
これに対し、本発明において、120℃における破断伸度が200%以上であるプライマー層を用いることにより、基材と表面保護層の密着性向上の効果のみならず、基材及び表面保護層が成形時の形状追従性・挙動が異なっても、その成形時の追従性等の違いを緩和する作用を発揮して表面保護層の割れ、白化等を好適に防止する効果を奏する。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.1〜3.0の範囲であることが好ましい。多分散度がこの範囲内であると、やはり架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐擦傷性のいずれも高いレベルで得ることができる。
表面保護層の硬化後の厚さは用途によって、上記範囲内で適宜決定されるものであり、例えば車両外装部品を考慮した場合には、透明感、塗装感等の意匠性及び耐擦傷性が要求されることから、表面保護層を厚膜化することが好ましい。具体的には、表面保護層の硬化後の厚さは20μm以上であることが好ましい。本発明の加飾シートは、表面保護層の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い成形性が得られることから、特に表面保護層に高い膜厚を要求される部材の加飾シートとして有用である。
また、自動車内装用途等に用いる場合には、表面保護層の硬化後の厚さを1〜20μmとすることが好ましい。この範囲とすることにより、成形性が向上し、複雑な3次元形状への高い追従性を得ることができる。従って、本発明の加飾シートにおいて、硬質な電離放射線硬化性樹脂を配合しても優れた成形性を発現させることができ、成形性を損なうことなく、塗膜を硬くすることができるため、加工や実用面で必要な耐擦傷性、耐汚染性等の優れた特性を持たせることができる。
また、架橋型の樹脂の場合、ゴム状態での貯蔵弾性率が高いほど、平均架橋点間分子量が低い、すなわち、架橋密度が高いため、表面の耐擦傷性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐汚染物性等は向上する。よって、貯蔵弾性率がこの範囲内であると、上記した表面保護層を形成した後の成型性及び表面の耐擦傷性をさらに高いレベルで満足しうる加飾シートが得られる。以上の観点から、該貯蔵弾性率は7.7×105 〜1.2×108Paの範囲であることがさらに好ましく、1.0×106 〜1.0×107Paであることが特に好ましい。
貯蔵弾性率の測定条件は、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、表面保護層を構成する樹脂組成物を架橋硬化(電子線照射条件:加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad))して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタアクリルを意味する。
(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネート及び/又はその変性物が用いられる。アクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は、所望によりアクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは(9/1)〜(1/9)、より好ましくは(8/2)〜(2/8)の範囲で調整し得る。これにより、種々の加飾シートに用いることができるので、プライマー組成物に用いられる樹脂として特に好ましい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
特に好ましい態様であるメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲であることが好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が上記範囲内であると、表面保護層を形成した後の表面の耐擦傷性、耐溶剤性が特に向上する。以上の点から、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位は1〜9モルの範囲がさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
なお、前記(メタ)アクリル樹脂の多分散度は、1.5〜2.5の範囲であることが特に好ましい。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等を好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(成形性及び耐擦傷性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等が、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等が用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料等が用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に所望により設けられる絵柄層12、所望により設けられる隠蔽層13及び所望により設けられる接着剤層14を有し、且つ基材11の絵柄層12の反対側にプライマー層15及び表面保護層16を有するものである。ここで、表面保護層16は上述の樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。
また、所望により、例えばインサート成形用加飾シートの場合には、接着剤層14の上にバッカーフィルム20が積層される。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.2mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
プライマー層15を形成するための架橋硬化条件は、用いる樹脂にもよるが、通常、40〜60℃で24〜168時間加熱することが好ましい。
本発明においては、調製された塗工液を、基材11の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
なお、測定条件としては、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件であり、表面保護層に割れが入る際の引張伸度で評価するものである。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シート10を真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じて型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シート10を一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
また、バッカーフィルム20としては、射出樹脂と接着性の良好な樹脂が使用されることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂等が好ましい。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シート10が受けるため、平板に近く、加飾シート10の絞りが小さい場合には、加飾シート10は予熱してもしなくてもよい。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
評価方法
(1)プライマー層の破断伸度及び破断強度
シリコーン樹脂を全面コートし離型層を形成した離型紙上に第1表に示した各プライマー層を構成するプライマー組成物をそれぞれ40±10μmで塗布し、プライマー組成物が硬化性である場合は50℃72時間加熱し硬化した後、(一方、プライマー組成物が硬化性でない場合は加熱処理することなく、)離型紙より塗膜を剥離、プライマー塗膜を作製した。
JIS K 7127:1999に準拠し、幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmである前記プライマー塗膜のサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度及び破断強度を測定し、プライマー層の破断伸度及び破断強度とした。
架橋硬化後の樹脂組成物、プライマー組成物、(即ち、前記プライマー塗膜)及び基材の熱軟化点温度、軟化開始温度及び軟化完了温度を熱分析装置(TMA)を用い、以下条件にて測定した。
測定条件
サンプル:幅5mm×長さ15mm
10℃/minの昇温速度で、常温から180℃まで昇温し、得られた曲線から軟化温度を、曲線の一次微分曲線から軟化開始、軟化完了温度をそれぞれ求めた。
表面処理をしていないPETフィルムの上に各実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を架橋硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化膜をPETフィルムから剥がして、幅10mm、長さ20mmの試験片を切り出した。該試験片を用いて、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、動的粘弾性測定装置〔レオメトリック・サイエンス・エフ・イー(株)製「RSA II」〕を用い、140℃の貯蔵弾性率を測定した。測定は、クランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定した。
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で真空成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:シート、表面保護層膜に割れ、破断、白化等無く良好である
○:200%延伸部に微細な割れ、白化が見られるが実用上問題ないレベルである
△;3次元形状部又は200%延伸部の大部分で軽微な艶変化又は割れが発生した
×;延伸部分全体に著しい艶変化、白化又は割れが発生した
<真空成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃まで加熱し、軟化させた後、射出成形用型の雌型と同形状の型を用いて、最大延伸倍率200倍にて真空成形を行い、型の内部形状に成形する。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形品を得た。
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で射出成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は上記真空成形における評価基準と同様である。
<射出成形>
上記真空成形したシートを射出成形機の雌型に設置し雄雌両型を型締めした後、溶融したABS樹脂を型ゲート部より射出し、サンプルと一体化して加飾成形品を作製した。
射出成形条件としては、射出樹脂温度230℃、ホットランナはマニホールド部温度240℃、ゲート部温度235℃、金型は雌型が45℃、雄型が50℃、射出時間5秒、冷却時間20秒で行った。型開き後、加飾成形品を型より取り出して加飾樹脂成形品を得た。
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、JIS L0849〔摩耗試験機II型(学振型)〕に準拠して試験を行い、以下の基準で評価した。試験に用いた装置は、テスター産業(株)製「学振型摩耗試験機」であり、摩擦用白綿布としてカナキン3号を用い500g荷重で50往復後の試験片で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;傷付きなし
○;外観上著しい傷付きなし
△;傷付き又は艶変化が試験面の1/4以上1/2以下の面で発生
×;傷付き又は艶変化が試験面の1/2以上で発生
厚さ75μmの透明アクリル樹脂フィルムの裏面に、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次に、絵柄層を施していない表面に、各実施例及び比較例で製造した加飾シートの表面保護層の作製に用いた電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmになるように塗工した。この未硬化状樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層に膜厚10μmのウレタン系接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートとラミネートして加飾シートを得た。試験片として幅25mm、長さ120mmの試験片を切り出し、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で引張試験を行い、伸度200%まで測定した。表面保護層(硬化膜)に割れが入る引張伸度(%)で評価し、伸度200%までで割れが入らなかったものは >200と表記した。
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製TSKgel αM(商品名)であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における分子量及び分子量分布はポリスチレン換算を行った。
両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムの一方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目柄の模様柄印刷層をグラビア印刷法で形成した後、他方の面にグラビア印刷法で第1表に示す樹脂を主剤とし、実施例2〜5及び比較例1に硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂を塗布し、60℃48時間加熱により硬化して2μm厚さの透明プライマー層を形成した。実施例1及び比較例2は硬化剤を用いないで塗布し、2μm厚さの透明プライマー層を形成した。
また、4官能のウレタンアクリレート(EB−1、第2表参照)33質量部に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」という)とアクリル酸メチル(以下「MA」という)のモル比100:5であって、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.60×105、多分散度(Mw/Mn)1.67の共重合体(以下「PMMA−1」という、第2表参照)を67質量部混合し、第4表に実施例3として示す電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB樹脂(EB−1):PMMA−1の質量比は33:67である。
次に、前記プライマー層を形成した表面全面に、第4表に実施例3として示す電離放射線硬化型樹脂組成物を塗布するとともに電子線〔加速電圧:165KeV、照射量:5Mrad〕を照射して厚さ5μmの透明表面保護層を形成した。
前記絵柄層上に2液硬化型ウレタン系樹脂からなる厚さ10μmの接着剤層を形成し、その接着剤層上に400μm厚さの着色アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン共重合〔ABS〕樹脂をバッカーフィルム20としてドライラミネート方式にて接着し加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
また、プライマー塗膜の破断伸度及び破断強度と、架橋硬化後の樹脂組成物、プライマー塗膜及び記基材の熱軟化点温度、軟化開始温度及び軟化完了温度とを第1表に示す。
実施例3の加飾シートと同じ構成にて、透明プライマー層の厚さを1、7、10、15μmに変更して、実施例6〜9の加飾シートを得るとともに、透明プライマー層を積層しない比較例3の加飾シート、透明プライマー層の厚さを0.5μmに変更した比較例4の加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第3表に示す。
EB樹脂(EB−1)とPMMA−1との質量比を第4表に記載するように変化させたこと以外は実施例3と同様にして実施例10〜12の加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
PMMA−1に代えて、MMA、スチレン及び無水マレイン酸の共重合体(MMA:スチレン:無水マレイン酸のモル比が100:32:84、重量平均分子量(Mw)0.96×105、数平均分子量(Mn)0.46×105、多分散度(Mw/Mn)2.09、以下「PMMA−2」という、第2表−2)を用いたこと以外は実施例3と同様にして参考例1の加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
PMMA−1に代えて、MMA、MA、スチレン及び無水マレイン酸の共重合体(MMA:MA:スチレン:無水マレイン酸のモル比が100:8:10:69、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.57×105、多分散度(Mw/Mn)1.75、以下「PMMA−3」という、第2表−2)を用いたこと以外は実施例3と同様にして参考例2の加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
PMMA−1に代えて、MMAの単独重合体であって、重量平均分子量(Mw)1.1×105、数平均分子量(Mn)0.64×105、多分散度(Mw/Mn)1.72、以下「PMMA−4」という、第2表−2)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして参考例3の加飾シートを、実施例10と同様にして参考例4の加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
表面保護層の膜厚を第4表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
表面保護層の膜厚を第4表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例10と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
PMMA−1に代えて、それぞれ第2表−2に示すPMMA−5又はPMMA−6を用いたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
EB樹脂としてEB−1に代えて2官能のウレタンアクリレート(EB−2、第2表−1参照)を用い、EB樹脂とPMMA−1の質量比を第4表に示すように変えたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
EB−1に代えて、3官能のウレタンアクリレート(EB−3、第2表−1参照)を用いたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
実施例3において、EB樹脂を用いないこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
EB樹脂とPMMA−1の質量比を第4表に記載するように変化させたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
実施例3において、PMMAを用いないこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
EB樹脂として、2官能のウレタンアクリレートを用い、PMMAを用いなかったこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
表面保護層の膜厚を第4表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
PMMA−1に代えて、それぞれ第2表−2に示すPMMA−7、PMMA−8及びPMMA−9を用いたこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
EB−1に代えて、2官能のウレタンアクリレート(EB−4、第2表−1参照)を用い、PMMAを用いないこと以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第4表に示す。
バッカーフィルムを積層しなかったこと以外は実施例1〜5及び比較例1〜2と同様にして加飾シートを得た。これらの加飾シートをそれぞれ所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、該加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形し、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態のABS樹脂を射出(射出樹脂温度230℃)、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させ、その後、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層された同時加飾樹脂成形品を取り出した。実施例28〜32の加飾シートを用いた同時加飾樹脂成形品はいずれもシート、表面保護層膜に割れ、破断、白化等無く良好であった。これに対し、比較例16(プライマー層:ポリカーボネートウレタン)の加飾シートを用いた同時加飾樹脂成形品は3次元形状部又は200%延伸部の大部分で軽微な艶変化又は割れが発生し、比較例17(プライマー層:アクリル/塩酢ビ共重合体)の加飾シートを用いた同時加飾樹脂成形品は200%延伸部に微細な割れ、白化が見られた。
さらに、このように成形性に優れる上、製造された加飾樹脂成形品の表面は高い耐擦傷性を有することが確認された。
従って、本発明の加飾樹脂成形体は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器等の用途に好適である。
11.基材
12.絵柄層
13.隠蔽層
14.接着剤層
15.プライマー層
16.表面保護層
20.バッカーフィルム
Claims (10)
- 基材上に少なくともプライマー層と該プライマー層の上に積層された表面保護層とを有する加飾シートであって、該プライマー層の以下の測定条件で測定した120℃における破断伸度が200%以上であり、該プライマー層の厚さが0.6μm以上であり、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜22:78の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体であり、該熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲であり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、かつ、表面保護層の厚さが1〜1000μmである射出成形用加飾シート。
破断伸度の測定条件:JIS K 7127:1999に準拠し、該プライマー層を構成するプライマー組成物(硬化性組成物の場合は50℃72時間加熱して架橋硬化する)を製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する。 - 架橋硬化後の前記樹脂組成物、前記プライマー組成物及び前記基材の熱軟化点温度、軟化開始温度及び軟化完了温度のいずれもが、該樹脂組成物の温度より該プライマー組成物の温度が高く、該プライマー組成物の温度より該基材の温度が高いという関係にある請求項1に記載の加飾シート。
- 前記樹脂組成物の以下の測定条件で測定した140℃における貯蔵弾性率が1×105 〜1.2×108 Paの範囲である請求項1又は2に記載の加飾シート。
貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。 - 前記プライマー組成物が(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂の多分散度が1.1〜3.0の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
- JIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が50%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の加飾シート。
測定条件;幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で、表面保護層に割れが入るまでの引張伸度を測定する。 - 電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シートと、樹脂成形体とを有する加飾樹脂成形品。
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