JP6028775B2 - 加飾シート、それを用いてなる加飾樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。
そこで、耐傷付き性と三次元成形性とを両立し得る表面保護層が要望されている。
本発明は、このような状況下で、耐薬品性と三次元成形性とを両立し得る加飾シート、それを用いてなる加飾樹脂成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
1.基材上に少なくともプライマー層及び表面保護層を有する加飾シートであって、該表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、該表面保護層を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を含有せず、かつ、該プライマー層が、少なくともポリオール、イソシアネート、及び非架橋型ウレタン樹脂を含有するプライマー組成物を用いて形成されてなることを特徴とする、インサート成形法又は射出成形同時加飾法用の加飾シート、
2.前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、少なくともポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する上記1に記載の加飾シート、
3.前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、少なくともポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する上記1又は2に記載の加飾シート、
4.前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの質量比が98:2〜70:30である上記2又は3に記載の加飾シート、
5.前記多官能(メタ)アクリレートが、3官能以上であることを特徴とする上記2〜4のいずれかに記載の加飾シート、
6.前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量が、2,000〜10,000である上記2〜5のいずれかに記載の加飾シート、
7.前記ポリオールが、アクリルポリオールである上記1〜6のいずれかに記載の加飾シート、
8.前記プライマー組成物におけるポリオールと非架橋型ウレタン樹脂との質量比が、99:1〜50:50である上記1〜7のいずれかに記載の加飾シート、
9.前記非架橋型ウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以下である上記1〜8のいずれかに記載の加飾シート、
10.前記ポリオールの水酸基に対する、前記イソシアネートのイソシアネート基の当量比が、0.5〜2.0である上記1〜9のいずれかに記載の加飾シート、
11.前記ポリオールのガラス転移点が、−50〜150℃である上記1〜10のいずれかに記載の加飾シート、
12.上記1〜11のいずれかに記載の加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品、及び
13.基材上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の加飾シートの製造方法、
を提供するものである。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電離放射線硬化性樹脂を含有する組成物をいう。電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の一態様の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に絵柄層12、プライマー層13及び表面保護層14が順次積層されている。ここで、表面保護層14は上述の電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。
本発明の加飾シート10は、表面保護層14の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくして三次元成形性を付与するため、また、加飾シート10の耐薬品性を付与するため、基材11と表面保護層14との間にプライマー層13を有する。プライマー層13を構成するプライマー組成物としては、少なくともポリオール及びイソシアネートを含有するものが用いられる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが使用され、成形の容易さ等の観点からアクリルポリオールが好ましい。
ポリオールとしては、ガラス転移点が180℃以下のものが好ましく、−50〜150℃のものがより好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、炭素数1〜6のものがより好ましい。
アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を併用することができる。
前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートであればよく、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられ、プライマー層13の黄変を抑止する観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート等の非黄変性のものを用いることが好ましい。
ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオールを主剤とし、上記イソシアネートと反応させてなる非架橋型ウレタン樹脂を使用でき、成形性、耐熱性、耐候性、表面保護層14との密着性等の観点から、ポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート等の非黄変性イソシアネートとの組合せより合成されるものが特に好ましい。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。
ウレタン樹脂としては、ガラス転移点が100℃以下のものが好ましく、40〜100℃のものがより好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以下であると、プライマー層の常温における柔軟性が優れ、40℃以上であると、加飾シート10を三次元成形に供する際に、加熱により凝集力が著しく低下したり、プライマー層が溶解することがない。
プライマー組成物におけるポリオールとウレタン樹脂との比率は、質量比で99:1〜50:50であると好ましく、90:10〜60:40であるとより好ましい。
本発明の加飾シート10において、電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性オリゴマーや重合性モノマーの中から適宜選択して用いることができる。
好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5〜80:20である。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。このポリカーボネート(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましく、2〜5官能有することがより好ましい。2官能以上であると、架橋密度が十分となるため、硬化後の表面保護層14に傷がつきにくくなり、また、5官能以下であると、架橋密度が高すぎないため、加飾シートを三次元成形に供した場合であっても、形状に十分に追従することができる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましく、10,000以下が特に好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、1,000〜20,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましい。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。三次元成形性と耐薬品性と耐傷付き性とを鼎立させる観点から、2,000〜100,000であることが特に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下が特に好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000〜50,000であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
光増感剤として、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることもできる。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
基材11としては、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用される。また、基材11は、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートとして使用することができる。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.05〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.1〜0.7mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材は色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
本発明の加飾シートは、図1に示すように、加飾樹脂成形品に装飾性を与える絵柄層12を設けてもよく、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
本発明の加飾シートは、例えば、基材11上にプライマー層13を形成する工程と、該プライマー層13表面に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層14を形成する工程とを含む製造方法により製造される。
絵柄層12を形成する場合には、基材11上に絵柄層12を形成し、さらに絵柄層12上にプライマー層13と表面保護層14とを順次積層することができる。
以下、各工程について具体的に説明する。
また、絵柄層12は、形成した後に鏡面板を用いた熱プレス処理や、鏡面ロールを用いたロールプレス処理を施すことにより、凹凸を平滑化することができ、その上に形成されるプライマー層13や、表面保護層14の表面をも平滑化することができる。表面保護層14の表面を平滑化することにより、加飾シート表面の平滑性及び艶と三次元成形後の加飾樹脂成形品の平滑性及び艶とが著しく異なることにより、加飾シートの意匠感と加飾樹脂成形品の意匠感とが大きく相違する問題が抑止される。
両面が平滑化された加飾シート10をロール状に巻き取った場合、加飾シート10の間に微細な粉塵等が挟まれてしまい、また、加飾シート10の表面と裏面とが互いに密着してしまい、表面保護層14の表面に擦り傷やシワがつく場合があるが、この問題は、上記熱プレス処理やロールプレス処理を行う際に、基材11の裏面側(絵柄層12やプライマー層13が形成されていない側)に梨地板や梨地ロールを用いたり、あるいは、基材11の裏面側にバインダー樹脂及び微小粒子を含有する樹脂層を設けたりして粗面化することで抑止することができる。
転写コーティング法においては、上記剥離フィルムとして表面が平滑なものを選択することで、表面が平滑なプライマー層13を形成することができる。
調製された塗工液は、プライマー層13の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工され、未硬化樹脂層が形成される。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
本発明の加飾シートは、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法などの各種射出成形法に用いることができ、インサート成形法及び射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくても良い。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
(1)三次元成形性(真空成形)
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で真空成形を行い、成形後の外観を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:表面保護層に塗膜割れや白化が全く見られず、良好に型の形状に追従した。
×:型の形状に追従できずに表面保護層に塗膜割れや白化が見られた。
<真空成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで170℃に加熱し、軟化させる。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、型の内部形状に成形する。シートを冷却後、型より加飾シートを離型する。
各実施例及び比較例で得た加飾シートの表面に、5枚重ねにしたガーゼを置き、エタノールを0.5ml滴下し、時計皿で被覆した。室温(25℃)下で30分間放置した後、時計皿及びガーゼを除去し、加飾シート表面の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:表面に痕跡が確認できなかった。
×:表面に白化、膨潤、剥離等の異常が確認された。
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における重量平均分子量はポリスチレン換算を行った。
基材としてABS樹脂からなるシート(厚さ:400μm)を用い、該シートの表面に、アクリルウレタン共重合樹脂インキを用いグラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層の表面に第1表に記載のプライマー組成物をグラビアコートにより塗工してプライマー層を形成した。プライマー層の厚さは1μmであった。
次に、プライマー層の表面に、第1表に示す組成の電子線硬化性樹脂組成物を樹脂組成物の硬化後の厚さが6μmとなるようにグラビアリバースにより塗工した。
この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて加飾シートを得た。
該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
電子線硬化性樹脂A:2官能のポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量:10,000)
電子線硬化性樹脂B:6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6,000)
ポリオールA:アクリルポリオール(ガラス転移点:99℃)
ポリオールB:ポリエステルポリオール(ガラス転移点:−40℃)
ポリオールC:ポリカーボネートポリオール(ガラス転移点:−45℃)
ウレタン樹脂A:ポリエステル系非架橋型ウレタン樹脂(ガラス転移点:60℃)
ウレタン樹脂B:ポリエーテル系非架橋型ウレタン樹脂(ガラス転移点:140℃)
アクリルウレタン共重合体:(数平均分子量:20,000、ガラス転移点:50℃)
アクリル樹脂:(数平均分子量:8,000、ガラス転移点:100℃)
イソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネート
11.基材
12.絵柄層
13.プライマー層
14.表面保護層
Claims (13)
- 基材上に少なくともプライマー層及び表面保護層を有する加飾シートであって、該表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、該表面保護層を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を含有せず、かつ、該プライマー層が、少なくともポリオール、イソシアネート、及び非架橋型ウレタン樹脂を含有するプライマー組成物を用いて形成されてなることを特徴とする、インサート成形法又は射出成形同時加飾法用の加飾シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、少なくともポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する請求項1に記載の加飾シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、少なくともポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの質量比が98:2〜70:30である請求項2又は3に記載の加飾シート。
- 前記多官能(メタ)アクリレートが、3官能以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量が、2,000〜10,000である請求項2〜5のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ポリオールが、アクリルポリオールである請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記プライマー組成物におけるポリオールと非架橋型ウレタン樹脂との質量比が、99:1〜50:50である請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記非架橋型ウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以下である請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ポリオールの水酸基に対する、前記イソシアネートのイソシアネート基の当量比が、0.5〜2.0である請求項1〜9のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ポリオールのガラス転移点が、−50〜150℃である請求項1〜10のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品。
- 基材上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の加飾シートの製造方法。
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