JP7322452B2 - シリコーンゴム複合体、およびその製造方法 - Google Patents
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そこで、上記問題点を解消するためにシリコーンゴム単体とプラスチックフィルムを複合一体化することが検討されてきた。このことにより、しわや密着などの作業性のほか、長尺の複合体が得られやすくなり効率的なロールtoロールの製造にも使える。
加えて、厚み精度が十分でないことから、該プラスチックフィルムを積載ないしロール状に集積したとき、その集積量が大きくなるにつれてしわや折れ曲がりを生じたりして元の形状に戻らず、離型材としての利用が困難になることがあった。
さらに、シリコーンゴム複合体を枚葉状やロール状で用いる際、シリコーンゴム複合体を重ねた時に基材層とシリコーンゴム層とが密着しすぎて、シリコーンゴム複合体が剥がれにくくなり、作業性が低下するという問題があった。
以下、本発明の実施形態の一例としてのシリコーンゴム複合体(以下、「本複合体」とも称する)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明に使用される基材層(A層)の主成分は、耐熱性や機械的強度の観点から、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする。前記結晶性ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、耐熱性、フィルムの腰、平滑性、商業的入手のしやすさ等に加え、他の層との接着性の観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、基材層(A層)は機械的強度の観点から、少なくとも1軸に配向されていることが好ましく、2軸に延伸されていることがより好ましい。
中心線平均粗さ(Sa)は、面粗さにおいて、表面の平均面に対する各点の高さの差の絶対値の平均であり、ISO 25178に準拠される。
本発明では、基材層(A層)の片面に、非晶性ポリマーを含有する下塗り層(B層)を有する。下塗り層(B層)を用いることで、薄膜層(C層)を均一に形成することができる。
具体例としては、ポリエステル樹脂及び/またはポリエーテル樹脂をウレタン結合等で直鎖状に高分子量化したポリウレタン樹脂、アクリル酸及び/またはメタクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル樹脂、酸成分あるいはグリコール成分が2種類以上の単量体よりなる共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。これら非晶性樹脂は、薄膜に塗工されるので、通常有機溶剤で希釈した状態、あるいは水中に乳化または可溶化させて適度な濃度に調整したものが使用される。
本発明では、下塗り層(B層)の上にさらに薄膜層(C層)を形成させる。薄膜層(C層)にはシリコーン樹脂が含まれており、中でも下塗り層(B層)に対して親和性が高く、塗布後、加熱あるいはUV照射等で架橋被膜を形成するものや、シリコーンゴム層(D層)架橋時に同時に架橋被膜を形成するものが好ましい。
付加型シリコーン樹脂としては、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、白金触媒の存在下で反応硬化させて得られるものが挙げられる。縮合型シリコーン樹脂としては、末端にシラノール基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、有機スズ触媒存在下で加熱硬化して得られるものが挙げられる。
シリコーンゴム層(D層)には、シリコーンエラストマー樹脂が含まれていることが特徴である。
シリコーンゴム層(D層)に使用可能なシリコーンエラストマー樹脂の例として、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンエラストマー樹脂が好ましく挙げられる。
また、シリコーンゴム層(D層)は、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンエラストマー樹脂を含むことも、圧縮永久歪みの調整の観点から好ましい。ビニル基を含有する場合は、ポリジメチルシロキサン全量に対するビニル基の含有量は、0.05~5モル%であることが好ましく、0.5~4モル%であることがより好ましく、1~3モル%であることがさらに好ましい。ビニル基の含有量が0.05モル%であれば、シリコーンエラストマー樹脂の架橋密度を調整しやすくなり、所望の圧縮永久歪みを有するシリコーンエラストマー樹脂を得ることができる。一方、5モル%以下であれば、シリコーンエラストマー樹脂が過度に硬化することがないため好ましい。
なお、硬度の測定方法は、JIS K6301スプリング式硬さ試験A形に準拠する。
なお、本発明のシリコーンゴム複合体の積層構成は、A層/B層/C層/D層の順に積層され、一体化してなるものである。または、必要に応じて、シリコーンゴム層(D層)の表面に保護層などの他の層を積層させてもよい。
本発明のシリコーンゴム複合体同士の室温での剥離力が0.03mN/20mm以下が好ましく、0.02mN/20mm以下がより好ましい。一方、下限は剥離特性の観点から特に限定されない。
本複合体を離型材として用いる際、室温での剥離力が低いほど、本複合体の加工時に本複合体同士を剥がす際、必要な力が少なくて済み、生産工程における剥離の失敗、本複合体の変形などの不具合を抑制することができる。中でも、本複合体は、粘着性をシリコーンゴム層(D層)があっても、上記不具合は抑制され、低い剥離特性を有することができる。
室温での剥離力は後述の実施例に記載の方法で測定するものとする。
本発明のシリコーンゴム複合体の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする基材層(A層)の片面側に、非晶性ポリマーを含有する下塗り層(B層)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C層)、シリコーンエラストマー樹脂を含有するシリコーンゴム層(D層)の順に積層させ、一体化させる。
この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
また、本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
基材層(A層)として、厚み50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、S-100)を用いた。基材層(A層)の片面は、サンドブラスト処理による粗面処理を施し、中心線平均粗さ(Sa)を3.3μmとした。
基材層(A層)で粗面化した表面とは異なる表面に、下記に示す方法で下塗り層(B層)、薄膜層(C層)、シリコーンゴム層(D層)の順に積層させ、一体化させることでシリコーン複合体を得た。
非晶性ポリエステル樹脂、(東洋紡績(株)製、商品名:バイロン240)15質量部、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、商品名:コロネートL)2質量部を溶剤(MEK/トルエン=1/4(質量比))85質量部に希釈し、塗工液とした。これを上記基材層(A層)の表面に乾燥後の厚みが1.0μmになるようにバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で、100℃で10分間乾燥および架橋を行った。
縮合型シリコーン樹脂組成物(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名:SRX290)20質量部および硬化剤(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名:SRX242C)1.2質量部を溶剤(トルエン)79.8質量部に希釈して塗工液を得た。これを下塗り層(B層)の表面に乾燥後の厚みが0.1μmになるようにバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で、100℃で10分間乾燥および架橋を行った。
ミラブル型シリコーンコンパウンド(信越化学工業社製、商品名KE-561U)をプレス成形法にて、厚みが3mmの未架橋状態のシリコーンエラストマー樹脂シートを得た。前記樹脂シートを薄膜層(C層)の表面に接するように積層して、室温でプレス圧50kg/cm2でシリコーンゴム複合体を作製した。
前記シリコーンゴム複合体のシリコーンゴム層(D層)表面に、加速電圧200kVの電子線照射装置にて100kGyの電子線を照射し、硬度が55のシリコーンゴム層(D層)を形成した。
(1)中心線平均粗さ(Sa)
シリコーンゴム層(D層)とは反対側の基材層(A層)の表面の中心線平均粗さ(Sa)を、表面粗さ測定器((株)小坂研究所社製、SE-3F)を用いて測定した。
すなわち、測定によって得られた試料フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として、粗さ曲線y=f(x)で表した時、次の式で与えられた値を〔μm〕で表した。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
20mm×120mmのサイズにカットしたシリコーンゴム複合体を2枚準備した後、シリコーンゴム複合体の基材層(A層)と、もう1枚のシリコーンゴム複合体のシリコーンゴム層(D層)とが接するように貼り合わせ、室温での剥離力を測定した。剥離力測定には、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/minの条件下、T字剥離を行った。
サンドブラスト処理の代わりにレーザーアブレージョン処理で粗面処理を施した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム複合体を作製した。評価結果は表1に示す。
基材層(A層)の片面に、サンドブラスト処理による粗面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム複合体を作製した。評価結果は表1に示す。
一方、比較例のように、基材層(A層)に粗面処理を施さなかった場合、基材層(A層)とシリコーンゴム層(D層)との剥離特性が不十分なものとなり、加工の際にシリコーンゴム複合体同士が剥がれにくくなり、生産性が悪化するおそれがある。
Claims (6)
- 結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする基材層(A層)の片面側に、非晶性ポリマーを含有する下塗り層(B層)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C層)、シリコーンエラストマー樹脂を含有するシリコーンゴム層(D層)の順に積層され、一体化してなるシリコーンゴム複合体であり、
当該基材層(A層)の片面側とは異なる他面側のISO 25178に基づく中心線平均粗さ(Sa)が1.0μm以上であるシリコーンゴム複合体。 - 前記基材層(A層)が、少なくとも1軸方向に配向を有する請求項1に記載のシリコーンゴム複合体。
- 前記シリコーンゴム層(D層)が、放射線硬化物である請求項1または2に記載のシリコーンゴム複合体。
- 請求項1~3のいずれかに記載のシリコーンゴム複合体を用いた離型材。
- 結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする基材層(A層)の片面側に、非晶性ポリマーを含有する下塗り層(B層)、シリコーン樹脂を含有する薄膜層(C層)、シリコーンエラストマー樹脂を含有するシリコーンゴム層(D層)の順に積層され、一体化してなるシリコーンゴム複合体の製造方法において、
前記基材層(A層)の片面側とは異なる他面側に粗面処理を行う工程を有し、該多面側のISO 25178に基づく中心線平均粗さ(Sa)が1.0μm以上である、シリコーンゴム複合体の製造方法。 - 前記粗面処理は、サンドブラスト処理またはレーザーアブレージョン処理である請求項5に記載のシリコーンゴム複合体の製造方法。
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