JP5834716B2 - 転写シート、化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた鏡面性と加工性とを備える化粧シートを与える転写シート、前記性状を有する化粧シート、並びにこの化粧シートを用いた化粧板に関するものである。
転写シートとしてはこれまで種々のものが知られている。例えば、特許文献1には、プラスチック成形品等の被転写体表面に転写により保護層及び絵柄層を同時に付与することができる転写シートとして、基材シートの片面に電離放射線硬化型樹脂の硬化物からなる離型性層、プライマー層、絵柄層及び接着剤層をこの順に積層した転写シートが記載されている。
また、特許文献2には耐摩耗性に優れる転写シートとして、離型性を有する基材上に少なくとも剥離層、装飾層、接着剤層を積層した転写シートにおいて、前記剥離層が熱可塑性樹脂と平均粒径1〜10μmの高硬度の微粒子を含む転写シートが開示されている。
さらに、特許文献3には合成樹脂基材上にベタ塗り層を設け、該ベタ塗り層上にマット樹脂により絵柄を形成し、該絵柄及び前記ベタ塗り層上にNCO基を含む樹脂皮膜層を形成しかつ乾燥させてなる表面化粧シート製造用転写シートが開示されている。
特開平4−189600号公報 特開平11−147396号公報 特開2001−58498号公報
このような転写シートにおいては、被転写体に転写される層の鏡面性及び製造効率の観点から、転写後に剥離される層と被転写体に転写される層との密着性及び剥離性の制御が極めて重要である。しかしながら、各層を構成する材質によりその密着力は異なるため、鏡面性、加工性等の目標物性を高い水準で兼ね備える化粧シートを与える転写シートを作製することは難しく、特に、前記密着性、剥離性を制御しつつ被写体に転写される層の加工性を確保することは極めて困難であった。
具体的には、被転写体に転写される表面保護層を加工性に優れる樹脂(塗膜伸び率が20〜60%)で構成した場合には以下の問題が生じる。すなわち、前記塗膜伸び率を有する樹脂により構成される表面保護層と、転写後に剥離される転写用フィルム層との密着が弱すぎる場合には、接着剤を塗布した際に転写用フィルム層と表面保護層との間で浮き・クラックが生じるという問題があり、転写用フィルム層と表面保護層との密着が強すぎる場合には、転写用フィルム層が表面保護層より剥離できないか、あるいは転写用フィルム層が材破するという問題がある。
本発明は、このような状況下になされたものであって、優れた鏡面性と加工性とを備える化粧シートを与える転写シート、及び上記性状を有する化粧シート並びにそれを用いた化粧板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
表面保護層と、転写用フィルム層とを有する構成の転写シートにおいて、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、かつ所定の方法で測定される該表面保護層の塗膜伸び率が特定の範囲にあること、また、JIS B0601−1994に準拠して測定される、転写用フィルム層の算術平均粗さRaが特定の範囲にあること、さらに特定のクロスカット法に基づく付着性試験により、該表面保護層が転写用フィルム層より剥離されること、の各要件を満たす転写シートが、前記目的に適合し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]表面保護層及び転写用フィルム層を有する転写シートであって、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、(a)下記測定法により測定される該表面保護層の塗膜伸び率が20〜60%であること、(b)前記転写用フィルム層の平滑性は、JIS B0601−1994に準拠して測定される表面の算術平均粗さRaが0.05〜2μmであること、及び(c)JIS K5600−5−6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験により、該表面保護層が転写用フィルム層より剥離されることを特徴とする転写シート、
[2]少なくともベース基材層を有する被転写部材と、表面保護層及び転写用フィルム層を順に有する転写シートの表面保護層とを、接着剤層を介して接着した化粧シート、及び
[3]前記化粧シートを被着材に接着した化粧板、
を提供するものである。
本発明によれば、優れた鏡面性と加工性とを備える化粧シートを与える転写シート、及び上記性状を有する化粧シート並びにそれを用いた化粧板を提供することができる。
本発明の転写シートの一例の構成を示す断面模式図である。 本発明の化粧シートの一例の構成を示す断面模式図である。
まず、本発明の転写シートについて説明する。
[転写シート]
図1は、本発明の転写シートの構成の一例を示す断面模式図である。この転写シート10は、表面保護層2及び転写用フィルム層1を有し、該表面保護層2が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、以下に示す(a)、(b)及び(c)の要件を満たすことを特徴とする。
なお、当該転写シート10は、後述の被転写部材の印刷絵柄層4に接合させるために、必要に応じ、表面保護層2上に接着剤層3を設けてもよい。
(転写シートの性状)
当該転写シート10は、(a)下記測定法により測定される該表面保護層の塗膜伸び率が20〜60%であることを要する。
<表面保護層の塗膜伸び率の測定法>
転写用フィルム層上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、これに電離放射線を照射することにより硬化させた硬化物を厚さ140μmのポリプロピレンシート上に転写して得られた積層シートについて、JIS K6732に準拠したダンベル型試験片に打ち抜いたシートを用意し、引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製 テンシロンRTC−1250A)を用い、塗膜伸び率を測定する(試験温度:23℃、50mm/min±10%)。
表面保護層の塗膜伸び率が上記範囲にあれば、当該転写シートは、加工性に優れる化粧シートを与えることができる。該塗膜伸び率は、特に20〜45%の範囲にあることが好ましい。
当該転写シート10においては、(b)転写用フィルム層1のJIS B0601−1994に準拠して測定される表面の算術平均粗さRaが0.05〜2μmであることを要する。
上記Raが上記範囲にあれば、当該転写シートは、鏡面性に優れる化粧シートを与えることができる。該Raは、好ましくは0.1〜1μmである。
さらに、当該転写シート10においては、(c)JIS K5600−5−6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験により、該表面保護層が転写用フィルム層より剥離されることを要する。
前記クロスカット法に基づく付着性試験により、該表面保護層が転写用フィルム層より剥離されない場合、転写用フィルム層と表面保護層間の密着が強すぎ、転写用フィルム層が、表面保護層より剥離できないか、あるいは、転写用フィルム層が材破してしまう。
当該転写シートは、上述したような性状を有するが、さらに転写用フィルム層と表面保護層との密着力がよく、JIS K5600−6−1:1999に規定される点滴法に従った耐液体性試験により、該表面保護層にクラック若しくは転写用フィルム層との間の浮きが目視で観察されない。
(転写用フィルム層)
転写用フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の合成樹脂フィルムを用いることができる。これらの中でも、成形性、耐熱性、印刷適性等を考慮すると2軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルム(OPP)が最も好ましい。転写用フィルム層の厚さは10〜100μm程度で、好ましくは20〜50μmである。厚さが20μm以上では強度が十分となり、また厚さが50μm以下では、インモールド転写及びロール転写が可能であり、コスト的に有利となる。
なお、前記転写用フィルム層は、保護フィルムとして用いることも可能である。すなわち、後述のように化粧シートを化粧板に積層する際に、転写用フィルム層を剥離せずにそのまま施工を行うことにより、保護フィルムとして使用することができる。
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物としては、電離放射線硬化性樹脂及び後述の各種添加剤を含有するコーティング剤組成物が好ましい。
なお、本発明における電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより架橋、硬化する樹脂をいい、従来慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーを用いることができる。ここで、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他に、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
前記重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる重合性オリゴマーの重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)は、1000〜10000であることが好ましく、2000〜10000がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内(オリゴマー)であれば、加工性に優れ、コーティング剤組成物が適度なチキソ性を備えるため表面保護層の形成が容易となる。
なお、加工性に優れる表面保護層(塗膜伸び率が20〜60%)は、異なる硬さを有する2種以上の電離放射線硬化性樹脂を混合して形成する方法、2)電離放射線硬化性樹脂にエラストマーを混合する方法等によって得ることが可能である。また、電離放射線硬化型樹脂を用いているので、1分子内に存在する重合性の官能基の数を変更する方法や、異なる官能基数の電離放射線硬化性樹脂を混合する方法等によっても所望の伸び率に調整することができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
<各種添加剤>
本発明におけるコーティング剤は、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば耐候剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤等が挙げられる。また、自浄性を付与するためにシリケート化合物を用いることもできる。
本発明において使用することができる耐候剤としては、紫外線吸収剤(UVA)及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系(以下「HALS」と記載する。)、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また市販品としては、チバスペシャリティケミカルズ製、商品名「チヌビン123」などが挙げられる。
紫外線吸収剤及び/又は光安定剤の含有量は、基材及び各層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。紫外線吸収剤及び/又は光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤等がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。
<表面保護層>
本発明の転写シート10における表面保護層2は、前述した転写用フィルム層1上に、前記コーティング剤組成物を塗布して、電離放射線硬化性樹脂組成物の層を設け、これに電離放射線を照射することにより硬化させて形成する層である。
コーティング組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性と防汚性とを得る観点から、好ましくは2〜20μmである。
当該コーティング剤組成物の塗布により形成した未硬化樹脂組成物の層は、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して硬化することで表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂組成物を硬化させることが好ましい。
照射線量は、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。なお、この場合、従来公知の光重合開始剤を、当該コーティング剤組成物中に含有させておくことが好ましい。
(接着剤層)
本発明の転写シート10において、表面保護層2上に所望により設けられる接着剤層3は、表面保護層2及び転写用フィルム層1を有する転写シートを、後述の被転写部材に接着させるための層で、本発明では感熱接着剤、熱硬化接着剤が好ましく使用される。具体的には、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等より選択される1種以上の樹脂をグラビア印刷、オフセット印刷、ロールコート、スクリーン印刷等公知の手法を用いて、表面保護層2上に積層する。この接着剤層3の塗布量は、2〜25g/m2の範囲であることが好ましい。2g/m2以上であれば、転写シートと被転写部材との十分な接着性が得られ、25g/m2以下であると経済的に好ましい。以上の点から、該接着剤層3の塗布量は、通常、3〜20g/m2の範囲がさらに好ましい。
また、接着剤層3の厚さとしては、通常2〜25μmの範囲であり、3〜20μmの範囲が好ましい。
なお、表面保護層2は、その上に設けられる接着剤層3との密着性を高めるために、予めコロナ放電処理を施すことが好ましい。また、この接着剤層3は、転写シート側でなく、被転写部材側に設けてもよい。
次に、本発明の化粧シートについて説明する。
[化粧シート]
図2は、本発明の化粧シートの構成の一例を示す断面模式図であって、該図2に基づいて当該化粧シートについて説明する。
この化粧シート20は、ベース基材層6、着色隠蔽層5及び印刷絵柄層4を順に有する被転写部材の該印刷絵柄層4上に、表面保護層2及び転写用フィルム層1を備えた転写シートを、接着剤層を介して設けたものである。
なお、本発明の化粧シートにおいては、前記本発明の転写シートを用いることが好ましく、前記着色隠蔽層、印刷絵柄層については、必要に応じて省略することができる。
(ベース基材層)
当該化粧シート20におけるベース基材層6は、通常化粧シート用として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、各種繊維の織布や不織布、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材などを用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体など、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。これらのうち、加工性などを考慮すると、プラスチックフィルム、プラスチックシートが好ましく、なかでもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂が好ましく、加工性を考慮するとポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン結晶部を有し、かつプロピレン以外の炭素素2〜20のα−オレフィン共重合体なども好ましい。その他、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンのコモノマーを15モル%以上含むプロピレン−α−オレフィン共重合体なども好ましく挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントにアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントにアタクチックポリプロピレンを質量比80:20で混合したものが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂からなるベース基材層は、例えばカレンダー法、インフレーション法、Tダイ押出法などにより得ることができる。
ベース基材層6の厚さについては特に制限はないが、加工性、柔軟性、強度などの観点から、50〜150μmの範囲であることが好ましく、50〜120μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、ベース基材層6は、物理的または化学的表面処理を施したり、プライマー層を設けることもできる。さらに、顔料や染料を用いて着色することもできる。基材シートの着色態様には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)とがあり、これらはその用途によって任意で選択しうる。
(着色隠蔽層)
当該化粧シート20において、前述したベース基材6上に設けられる着色隠蔽層5は、通常該ベース基材6を全面にわたって被覆する一様均一な層であって、該ベース基材6の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、ベース基材6がもっている模様を活かす場合もある。
この着色隠蔽層5の形成に用いるインキとしては、次に示す印刷絵柄層4で用いるインキと同様のものを使用することができる。
(印刷絵柄層)
当該化粧シート20における印刷絵柄層4は、当該化粧シート20に装飾性を付与するものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリントなどの公知の印刷法などを用いることができる。
≪絵柄インキ≫
印刷絵柄層4に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。
バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの公知のバインダーの中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択すれば良い。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体などのアクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの単体又はこれらを含む混合物を用いることができる。
これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤;水などの無機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、1種単独又は2種以上を混合して使用できる。
さらに、絵柄インキには架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、シラノール基含有化合物などが挙げられるが、イソシアネート基含有化合物が好ましい。
なお、化粧シート20の鏡面性及び加工性は、後述の鏡面性及び加工性の評価方法によって確認することができる。
[化粧板]
本発明の化粧板は、前記本発明の化粧シート20を被着材に接着させたものであって、転写用フィルム層1を剥離することにより、最表面層に鏡面性と加工性に優れる表面保護層2を有する製品を得ることができる。
本発明の化粧シートが適用される被着材は、特に制限されるものではなく、公知の化粧板に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラスなどが挙げられる。特に、本発明の化粧シートは、鋼板などの金属材料、木質材に好適に使用することができる。鋼板としては、具体的には、溶融亜鉛メッキ鋼板などが挙げられ、木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピーなどの各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)などが挙げられる。
本発明の化粧シートの各種被着材への積層方法としては特に限定されるものではなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法などを採用することができる。接着剤は、被着材の種類などに応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのほか、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
なお、接着剤を用いて本発明の化粧シートを各種被着材に接着するに際しては、接着性を高める観点から、裏面プライマー層7を設けることが好ましい。
このようにして製造された化粧板は、例えば、壁、天井、床などの建築物の内装材、窓枠、扉、手すりなどの建具の表面化粧板、家具又は弱電、OA機器などのキャビネットの表面化粧板、玄関ドアなどの外装材として好ましく用いることができる。特に、この化粧板は耐候性に優れ、鏡面性及び加工性が高いため、鋼板などに貼付され、玄関などの外装材として用いることが好適である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で用いた転写用フィルム層及び表面保護層、並びに各例で得られた転写シート及び化粧シートについて、下記の評価を行った。
(1)各転写用フィルム層の表面の算術平均粗さRaを、(株)小坂研究所製の高精度表面粗さ計SE-3FATを用い、JIS B0601−1994に準拠して測定した。
(2)各表面保護層の塗膜伸び率
転写用フィルム層上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、これに電離放射線を照射することにより硬化させた硬化物を厚さ140μmのポリプロピレンシート上に転写して得られた積層シートについて、JIS K6732−1996に準拠して、塗膜伸び率を測定した(試験温度:23℃、50mm/min±10%)。
(3)転写シートの耐液体性試験
転写用フィルム層に電離放射線硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布したのち、電子線を5Mradの条件で照射して塗膜を硬化させ表面保護層を形成したものについて、JIS K5600−6−1:1999に規定された点滴法に従って耐液体性試験を実施し、目視により下記の判定基準で評価した。
○・・・表面保護層にクラック、もしくは転写用フィルム層との間に浮きが起こらない。
×・・・表面保護層にクラック、もしくは転写用フィルム層との間に浮きが起こる。
(4)転写シートの付着性試験
上記(3)と同じ試料について、JIS K5600−5−6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験を実施し下記の判定基準で評価した。
○・・・表面保護層が剥離される。
×・・・表面保護層が剥離されない。
(5)転写用フィルム層剥離後の化粧シート表面を目視で観察し、蛍光灯の映りにより下記の判定基準で鏡面性を評価した。
○・・・蛍光灯がハッキリと表面に映る。
×・・・蛍光灯がぼやけて映る。
(6)化粧シートの加工性
Vカット加工を行ったのち、目視にてVカット部分の確認を行い、下記の判定基準で評価した。
◎・・・化粧シートの表面の割れはまったく確認されなかった。
○・・・化粧シートの割れが軽微であるが、実用上問題ない。
△・・・化粧シートの割れが若干確認された。
×・・・化粧シートの割れが著しかった。
実施例1
(1)転写シートの作製
転写用フィルム層であるPETフィルム(フィルムII)[東レ社製、品名「S50」、Ra:0.1〜1μm、厚さ25μm]に、電離放射線硬化性樹脂組成物Wをグラビア印刷により乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布した後、電子線を5Mradの条件で照射して塗膜を硬化させ、表面保護層を形成した。なお、前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなる表面保護層について塗膜伸び率を予め前記測定方法にしたがって測定したところ40%であった。
この表面保護層側にコロナ放電処理を施し、処理面にポリエステル系熱硬化型2液接着剤を塗布することにより、接着剤層を形成した。これにより、図1に示す構成の転写シートを得た。この転写シートにおける表面保護層の塗膜伸び率は40%であった。
(2)化粧シートの作製
ベース基材として厚さ140μmであるポリオレフィン系樹脂シートを用い、この基材上にウレタンアクリル系樹脂からなるバインダー100質量部に対して、顔料として酸化チタンを10質量部含有するインキを乾燥後の塗布量が2g/m2(着色隠蔽層)及び1g/m2(印刷絵柄層)となるようにそれぞれ形成した。
次いで、上記(1)で作製した接着剤層及び表面保護層を有するPETフィルム(転写シート)を接着剤層が印刷絵柄層に接するように印刷絵柄層の上にラミネートして、化粧シートを作製した。
転写用フィルム層のRa及び表面保護層の塗膜伸び率を、それぞれ表1及び表2に示すと共に、表3に各評価結果を示す。なお、表2には加工性も併記した。
実施例2及び比較例1〜6
表3に示す種類の転写用フィルム層を用い、かつ表面保護層として、表2に示す塗膜伸び率を有するものを用い、実施例1と同様にして、転写シートを作製し、さらに化粧シートを作製した。各評価結果を表3に示す。なお、実施例及び比較例で用いたフィルムは以下のとおりである。また、表3中のサンプル作成不可とは、サンプルの作成段階において転写用フィルム層/表面保護層間においてクラック・浮きが発生したため、ベース基材への転写が不可となりサンプルを作成できなかったものを指す。
[注]
フィルムI:東洋紡社製PETフィルム「A4100」
フィルムII:東レ社製PETフィルム「S50」
フィルムIII:東セロ社製OPPフィルム「U−1」
本発明の転写シートは、優れた鏡面性及び加工性を備える化粧シートを与えることができる。この化粧シートを各種被着材に積層することにより、様々な用途に有用な鏡面性と加工性に優れる化粧板が得られる。
1 転写用フィルム層
2 表面保護層
3 接着剤層
4 印刷絵柄層
5 着色隠蔽層
6 ベース基材層
7 裏面プライマー層

Claims (8)

  1. 表面保護層及び転写用フィルム層を有する転写シートであって、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
    (a)下記測定法により測定される該表面保護層の塗膜伸び率が20〜60%であること、
    (b)前記転写用フィルム層の平滑性は、JIS B0601−1994に準拠して測定される表面の算術平均粗さRaが0.05〜2μmであること、及び
    (c)JIS K5600−5−6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験により、該表面保護層が転写用フィルム層より剥離されること、
    を特徴とする転写シート。
    <表面保護層の塗膜伸び率の測定法>
    転写用フィルム層上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、これに電離放射線を照射することにより硬化させた硬化物を厚さ140μmのポリプロピレンシート上に転写して得られた積層シートについて、JIS K6732−1996に準拠して、塗膜伸び率を測定した(試験温度:23℃、50mm/min±10%)。
  2. 転写用フィルム層が2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は2軸延伸ポリプロピレンフィルムである請求項1に記載の転写シート。
  3. 電離放射線硬化性樹脂組成物が、電子線硬化性樹脂組成物を含む請求項1又は2に記載の転写シート。
  4. 少なくともベース基材層を有する被転写部材と、請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護層及び転写用フィルム層を順に有する転写シートの表面保護層とを、接着剤層を介して接着した化粧シート。
  5. 請求項4に記載の化粧シートを被着材に接着した化粧板。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の転写シートと、少なくともベース基材層を有する被転写部材とを、転写シートの表面保護層側を、接着剤層を介して接着させる化粧シートの製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の転写シートと、少なくともベース基材層を有する被転写部材とを、転写シートの表面保護層側を、接着剤層を介して接着させる化粧シートを被着材に接着する化粧板の製造方法。
  8. さらに、転写シート層を剥離する請求項7に記載の化粧板の製造方法。
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