JP5577673B2 - 転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾フィルムの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾フィルムが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾フィルムと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出し、基材を剥離することにより、転写層を転写した加飾成形品を得る。
また、成形性の良好な基材の上に、未硬化状態では熱可塑性の固体である電離放射線硬化性樹脂からなる保護層を設けた転写シートを、射出成形金型内に配置して、転写シートを真空成形又は真空・圧空成形をした後に、電離放射線を照射して樹脂を硬化させて保護層を形成し、更に金型内を閉じて溶融樹脂を射出して射出成形を行い、金型内で硬度の高い保護層を形成させることを特徴とする成形品の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
これらの方法は、シートの状態で保護層を硬化させると、十分な成形性が得られなくなるため、真空成形後、真空・圧空成形後又は射出同時成型後に、紫外線もしくは電子線を照射して、保護層の硬化がなされるが、真空成形、真空・圧空成形又は射出同時成型の際に、未硬化樹脂層が流動するために、成形体への転写が良好になされない場合があった。
従って、既に保護層を硬化させた転写用加飾フィルムを真空成形、真空・圧空成形又は射出同時成型あるいは熱転写に用いることが要望されている。
本発明は、加飾樹脂成型品に意匠性を付与するための射出成形同時転写加飾法及び熱転写に用いられる加飾フィルムであって、加飾樹脂成型品の最表面の層として転写される保護層が、電離放射線硬化性樹脂により構成され、かつ転写後の離型層と保護層との剥離強度範囲を適切にすることにより、転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こさず、転写後に剥がしムラを起こさない、転写性に優れる転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
[1] 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなる、転写加飾フィルムであって、該保護層が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであり、且つ該重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが1000〜40000であることを特徴とする転写加飾フィルム、
[2] 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、基材上に離型層を積層する工程、該離型層上に、重量平均分子量Mwが1000〜40000である重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層を形成する工程、該保護層の上に着色層を積層する工程及び該着色層の上に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする転写加飾フィルムの製造方法、
[3] 上記[1]に記載の転写加飾フィルムを用いてなる加飾成形品、及び
[4] 上記[2]に記載の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて熱盤によって基材側から該転写加飾フィルムを加熱する工程、加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程及び該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法を提供するものである。
但し、剥離強度測定方法は以下の通りである。
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。
図1に示される本発明の転写加飾フィルム10は、基材11上に、離型層12、保護層13、必要に応じて設けられるプライマー層14、着色層15、接着剤層16を順に積層させてなり、保護層13が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ転写後の離型層12と保護層13との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであることを特徴とする。この剥離強度が0.1N/25mm未満であると転写時に層間剥離を起こす恐れがあり、1.0N/25mmを超えると転写後に剥がしムラを起こす恐れがあり、いずれも本発明の課題を解決し得ない。
本発明に係る基材11は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられる樹脂フィルムの厚みは、通常10〜150μmであり、10〜125μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。
また、基材11は、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムとして使用することができる。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーをいう。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。さらに本発明で用いるポリエステル樹脂は、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であっても良く、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのモノマーやポリマーとの共重合体であっても良い。
なお、該ポリエステル樹脂はホモポリマーでも良く、コポリマーでも良く、また第三成分を共重合させたものであっても良い。例えば、一般に耐熱性や寸法安定性に優れるポリエチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)としたポリエステル樹脂と、一般に成形性に優れるポリブチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)とするポリエステル樹脂とを配合することができる。該配合比としては、得られるフィルムの動的弾性率により適宜選択すれば良く、通常70/30〜95/5であり、75/25〜85/15の範囲が好ましい。このように配合したポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性、及び成形性に優れるため、本発明の基材シートとして好適に用いることができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、基材は、基材と各層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施しても良い。なお、ポリエステルフィルムとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
離型層12は、保護層13、所望により積層されるプライマー層14、着色層15、及び接着剤層16からなる転写層の、基材シート11からの剥離を容易に行うために設けられるものである。離型層12は、図1に示すように、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、一部に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層12の厚みは、通常、0.01〜5μm程度であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲である。
保護層13は、重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。この重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwは1000〜40000であることが好ましい。重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが1000以上であれば転写後の剥離強度が高過ぎることがなく好ましく、また、重量平均分子量Mwが40000以下であれば剥離強度が低過ぎることがなく好ましい。これらの観点から、重量平均分子量Mwは、より好ましくは1500〜25000、特に好ましくは、2000〜20000である。
ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上述の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、成形性を確保する観点から2官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが特に好ましい。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
フィラーの種類としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウムなどの無機物、アクリルビーズ、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)などの有機高分子などからなる粒子が用いられる。これらのうち、タック性低減効果を有し、取り扱いが容易で、かつ安価なシリカが好適である。
フィラーの平均粒径は好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmであり、添加量は、保護層を形成する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がさらに好ましい。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状などである。
本発明の転写加飾フィルムは、保護層13と後述する着色層15との間に、さらにプライマー層14を積層することが好ましい。プライマー層14を積層することにより、保護層13と着色層15の密着性をさらに向上させることができるからである。プライマー層14は透明又は半透明な層であることが好ましく、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂の1種単独又は2種以上の混合物が用いられるが、特にポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものが好ましい。
上記樹脂を溶媒に溶解した塗工液を、公知の方法で塗布、乾燥してプライマー層とする。プライマー層の厚みについては、通常、0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmの範囲である。
本発明に係る着色層15は、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり射出樹脂などの着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層には、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けられる場合の外、それ単独で装飾層を形成する場合がある。
本発明に係る絵柄層は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために設けられる層である。絵柄層の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。
着色層15は、通常は、上記の保護層13又はプライマー層14に印刷インキでグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法により形成することで、図1に示すように保護層13と接着剤層16との間に形成される。着色層15の厚みは、意匠性の観点から3〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
着色層15の形成に用いられる印刷インキは、上記成分の他に、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤などを適宜添加することができる。印刷インキは、上記成分を、通常溶剤に溶解又は分散した態様で提供される。溶剤としては、バインダー樹脂を溶解又は分散させるものであれば良く、有機溶剤及び/又は水を使用することができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエステル類、アルコール類が挙げられる。
本発明に係る接着剤層16は、好ましくは保護層13、所望により積層されるプライマー層14、及び着色層15を、接着性良く加飾成形品に転写するために形成される。接着剤層16としては、感熱接着剤や加圧接着剤などで構成されるものが挙げられるが、本発明においては、必要に応じて加熱及び加圧によって、加飾成形品に対する密着性を発現するヒートシール層であることが好ましい。接着剤層16に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の1種又は2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、前記剥離層で挙げた塗布方法の中から適した方法をそれぞれ選択して、塗布、乾燥することにより形成できる。
接着剤層16の厚みとしては、転写加飾フィルムを接着性良く、かつ効率的に加飾成形品に転写し得るという点から、0.1〜6μm程度が好ましい。
次に、図2及び図3に基づいて、剥離強度測定方法の詳細を説明する。図2及び図3は、本発明の転写加飾フィルム10の転写後の離型層12と保護層13との剥離強度を測定する評価用試料の形状を示す平面模式図、並びに評価用試料の断面形状及び剥離方向を示す断面模式図である。
図2に示すように転写後の加飾成形品1の加飾フィルム10の基材11表面に幅25mmのニチバン株式会社製セロハンテープ20を貼り付け、セロハンテープ端それぞれに沿ってカッターで切り込みを入れ、幅25mmの切れ込み部分を有する試験片を作製する。次に、セロハンテープが貼り付いた切れ込み部分の所定長さ(クランプ長さに相当する長さ)を、離型層−保護層間で剥がしてテンシロン引張試験機のクランプに取り付け、図3に示すように、射出樹脂30を有する加飾成形品1表面と基材11及び離型層12とが90°をなすように25℃の温度条件下、100mm/minの速度で基材11及び離型層12と保護層13とを剥離し、その剥離強度を測定する。
本発明の転写加飾フィルムの製造方法は、基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、[1]基材11上に離型層12を積層する工程、[2]該離型層12上に重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、[3]該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層13を形成する工程、[4]該保護層13の上に着色層15を積層する工程及び[5]該着色層15の上に接着剤層16を積層する工程を含むことを特徴とする。
なお、着色層15を例えば上記のように絵柄層と隠蔽層との組み合わせとする場合は、一層を積層した後、乾燥し、その後次の層を積層すれば良い。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜60kGy(1〜6Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
[射出成形同時転写加飾による加飾成形品の製造方法]
以下に、射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法を説明する。
射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法は、以下の工程(1)〜(5)を含むものである。
(1)まず、本発明の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて、熱盤によって基材側から転写加飾フィルムを加熱する工程、
(2)加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程、及び
(5)該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程。
なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさし、基材として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70〜130℃程度である。
このようにして得られた加飾成形品は、冷却した後に金型から取り出した後、基材11及び剥離層12を剥離することにより保護層13、所望により設けられるプライマー層14、着色層15及び接着剤層16からなる転写層が転写された加飾成形品となる。
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であれば良く、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でも良いし、二種以上混合して用いても良い。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述の基材に用いることのできるものと同様の公知の着色剤を使用できる。
加飾成形品を構成する射出樹脂成形体の厚みについては特に制限はなく、当該加飾成形品の用途に応じて選定されるが、通常1〜5mm、好ましくは2〜3mmである。
加飾前の成形品の表面に加熱された転写加飾フィルムを密着させた後冷却して加飾成形品を得る。熱転写による加飾の場合も、上記の射出成形同時転写加飾の場合と同様に、転写加飾フィルムを加熱する温度は、基材シートのガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましく、ガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。
加飾前の成形品の熱転写する表面は平面が好ましいが、なだらかな局面であっても良い。加飾前の成形品はシート状であっても良い。
(評価方法)
1.重量平均分子量
GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された値を用いた。
2.剥離強度
上記の方法による。
易接着処理が施された2軸延伸PETフィルム(厚み:75μm)上に、アクリル−メラミン系樹脂をグラビア法により塗布して、離型層(厚み:3μm)を形成した。
次いで、第1表に示す重量平均分子量を有する電子線硬化性樹脂EB−1乃至EB−8のいずれかを第1表に示すように電子線硬化性樹脂組成物として用いて上記離型層の上にグラビアリバース法により塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させ、保護層(厚み:12μm)を形成した。
なお、EB−1乃至EB−7は、いずれも2官能ウレタンアクリレートオリゴマーであり、EB−8は、2官能ウレタンアクリレートモノマーであった。
次に、上記保護層の上に、ポリウレタン系2液硬化型プライマー液を塗布してプライマー層(厚み:1.5μm)を形成した。
次いで、上記プライマー層の上に、アクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂とをバインダー樹脂とした印刷インキ(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂:50質量%)を塗工量3g/m2でグラビア印刷を施して木目模様の絵柄層を形成し、さらにアクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂とからなる樹脂組成物(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂:50質量%)を塗工量4g/m2でグラビア印刷を施して接着剤層を形成し、8種類の転写加飾フィルムを得た。これらの8種類の転写加飾フィルムを上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
これに対し、比較例1の転写加飾フィルムは転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こし、比較例2の転写加飾フィルムは転写後に剥がしムラを起こし、いずれも転写性が劣り、取り扱いが難しかった。
10 転写加飾フィルム
11 基材
12 離型層
13 保護層
14 プライマー層
15 着色層
16 接着剤層
20 セロハンテープ
30 射出樹脂
Claims (14)
- 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなる、転写加飾フィルムであって、該保護層が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであり、且つ該重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが1000〜40000であることを特徴とする転写加飾フィルム。
剥離強度測定方法:
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。 - 前記離型層が、熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体及びこれらの樹脂の変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物から構成されることを特徴とする請求項1に記載の転写加飾フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂及び硝化綿から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の転写加飾フィルム。
- 前記離型層が、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
- 前記保護層と前記着色層との間に、さらにプライマー層を積層してなる請求項1〜4のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
- 前記基材がポリエステルフィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
- 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、基材上に離型層を積層する工程、該離型層上に、重量平均分子量Mwが1000〜40000である重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層を形成する工程、該保護層の上に着色層を積層する工程及び該着色層の上に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする転写加飾フィルムの製造方法。
剥離強度測定方法:
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。 - 前記離型層が、熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体及びこれらの樹脂の変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物から構成されることを特徴とする請求項7に記載の転写加飾フィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂及び硝化綿から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の転写加飾フィルムの製造方法。
- 前記離型層が、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物から構成されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
- 前記保護層を形成する工程と前記着色層を積層する工程との間に、さらに該保護層の上にプライマー層を積層する工程を含む請求項7〜10のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
- 前記基材がポリエステルフィルムである請求項7〜11のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の転写加飾フィルムを用いてなる加飾成形品。
- 請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて熱盤によって基材側から該転写加飾フィルムを加熱する工程、加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程及び該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。
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