JP2009113388A - 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上に少なくとも撥液性インキ層と表面保護層とをこの順に有し、撥液性インキ層と表面保護層とが接触してなる加飾シート10であって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、表面保護層の厚さが1〜1000μmである加飾シートである。
【選択図】図1
Description
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾成形品の表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させる試みがなされたが、成形の際に成形品曲面部にクラックが生じるという問題があった。
さらには、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、また、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。また、三次元形状の成形品に紫外線を照射する必要があるため、別途三次元形状の成形品に紫外線照射可能な設備が必要である。
(1)基材上に少なくとも撥液性インキ層と表面保護層とをこの順に有し、撥液性インキ層と表面保護層とが接触してなる加飾シートであって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、表面保護層の厚さが1〜1000μmであり、かつ撥液性インキ層が、(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれるインキによって形成される加飾シート、
(2)上記(1)に記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法、
(3)上記(1)に記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(4)上記(2)又は(3)に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品、
を提供するものである。
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
特に好ましい態様である、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲であることが好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が上記範囲内であると、表面保護層を形成した後の表面の耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性が特に向上する。以上の点から、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位は1〜9モルの範囲がさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などが挙げられる。
貯蔵弾性率の測定条件は、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、表面保護層を構成する樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(成形性及び耐擦傷性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に絵柄層12、隠蔽層13及び接着剤層14を有し、かつ、基材11の絵柄層12の反対側に表面保護層15及び撥液性インキ層16を有するものである。ここで、表面保護層15は上述の表面保護層形成用樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。また、基材11と表面保護層15の間にプライマー層を設けてもよい。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.2mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
本発明の加飾シートは、プライマー層の下記測定条件で測定した120℃における破断伸度が200%以上であることが好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。破断伸度が200%以上であると、真空成形時において表面保護層の延伸部に微細な割れや白化が生じにくい。
(破断伸度測定の測定条件)
JIS K 7127:1999に準拠し、該プライマー層を構成するプライマー組成物を架橋硬化(50℃72時間加熱)して製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。
(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは(9/1)〜(1/9)、より好ましくは(8/2)〜(2/8)の範囲で調整し、種々の加飾シートに用いることができるので、プライマー組成物に用いられる樹脂として特に好ましい。
本発明においては、調製された塗工液を、基材11の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
撥液性インキ層16を設けることで、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な意匠を付与することができる。
上記体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。
また、繊細な意匠性を得るために、該撥液性インキには、艶消剤を添加することができる。艶消剤としては、材料設計の自由度が高く、塗工安定性に優れる点で、シリカが好ましい。艶消剤の粒径としては、0.1〜10μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であると十分な艶消し効果が見られ、一方、10μm以下であると、艶消剤が均一に分散して美麗な艶消し面を形成し得る。以上の観点から、艶消剤の平均粒子径は0.2〜5μmの範囲がさらに好ましく、0.2〜3μmの範囲が特に好ましい。
艶消剤の含有量としては、撥液性インキ組成物中に1〜50質量%(固形分換算)の範囲が好ましく、2〜10質量%の範囲がさらに好ましい。
また、該撥液性インキを着色する場合に撥液性インキに添加される顔料としては、例えばキナクリドンレッド、磯インドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料を用いることができる。
なお、(ロ)の撥液性インキには、上記(イ)の撥液性インキと同様に、体質顔料及艶消剤を添加することができる。具体的には、上記(イ)の撥液性インキにおいて挙げられるものが用いられる。
なお、撥液性を有する添加剤は、(ハ)の撥液性インキの十分な撥液性と、賦型シートの十分な離型性を得るために添加されるものであり、例えば、シリコ−ン系、フッ素系樹脂等が挙げられる。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
本発明の加飾シートは、表面保護層15の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い成形性が得られることから、特に表面保護層に高い膜厚を要求される部材の加飾シートとして有用である。
また、表面保護層15の硬化後の厚さを1〜20μm未満とすることにより、成形性が向上し、自動車内装用途などの複雑な3次元形状への高い追従性を得ることができる。従って、本発明の加飾シートにおいて、硬質な電離放射線硬化性樹脂を配合しても優れた成形性を発現させることができ、成形性を損なうことなく、塗膜を硬くすることができるため、加工や実用面で必要な耐擦傷性、耐汚染性等の優れた特性を持たせることができる。
なお、測定条件としては、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件であり、表面保護層にクラックが入る際の引張伸度で評価するものである。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくてもよい。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
本発明の加飾樹脂成形体は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途に適している。
評価方法
(1)成形性(真空成形)
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で真空成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;外観上異常なし
○;3次元形状部又は200%延伸部の一部に軽微な艶変化又はクラックがあるが実用上問題なし
△;3次元形状部又は200%延伸部の大部分で軽微な艶変化又はクラック発生
×;延伸部分全体に著しい艶変化又はクラック発生
<真空成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させる。次いで、射出成形用雌型と同形状の型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率200倍)、型の内部形状に成形する。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形品を得る。
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で射出成形同時加飾を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は上記真空成形における評価基準と同様である。
<射出成形同時加飾>
加飾シートを可動金型内に設置し、赤外線輻射面ヒーターで加飾シートを130℃まで加熱して軟化させた後、射出成形型で真空成形により予備成形した。その後、雌雄両型を型締めした後、耐熱ABS樹脂を雄型のゲートから射出し、射出成形物の成形と同時に加飾シートをその表面に積層一体化して、加飾成形品を成形した。射出成形条件としては、射出樹脂温度230℃、ホットランナはマニホールド部温度240℃、ゲート部温度235℃、金型は雌型が45℃、雄型が50℃、射出時間5秒、冷却時間20秒で行った。型開き後、加飾成形品を型より取り出して射出成形同時加飾品を得た。
各実施例及び比較例で製造した加飾シートについて、JIS L0849〔摩耗試験機II型(学振型)〕に準拠して試験を行い、以下の基準で評価した。試験に用いた装置は、テスター産業(株)製「学振型摩耗試験機」であり、摩擦用白綿布としてカナキン3号を用い500g荷重で50往復後の試験片で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;傷付きなし
○;外観上著しい傷付きなし
△;傷付き又は艶変化が試験面の1/4以上1/2以下の面で発生
×;傷付き又は艶変化が試験面の1/2以上で発生
厚さ75μmの透明アクリル樹脂フィルムの裏面に、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次に、絵柄層を施していない表面に、各実施例及び比較例で製造した加飾シートの表面保護層の作製に用いた電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmになるように塗工した。この未硬化状樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層に膜厚10μmのウレタン系接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートとラミネートして加飾シートを得た。試験片として幅25mm、長さ120mmの試験片を切り出し、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で引張試験を行い、伸度200%まで測定した。硬化膜にクラックが入る引張伸度(%)で評価し、伸度200%まででクラックが入らなかったものは >200と表記した。
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製TSKgel αM(商品名)であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における分子量および分子量分布はポリスチレン換算を行った。
表面処理をしていないPETフィルムの上に各実施例及び比較例で製造した表面保護層形成用樹脂組成物を架橋硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化膜をPETフィルムから剥がして、幅10mm、長さ20mmの試験片を切り出した。該試験片を用いて、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、動的粘弾性測定装置〔レオメトリック・サイエンス・エフ・イー(株)製「RSA II」〕を用い、140℃の貯蔵弾性率を測定した。測定は、クランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定した。
表面の意匠性を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;導管部が凹部として認識され、さらには木目の質感も得られ、意匠性が極めて高かった。
○;導管部が凹部として認識され、意匠性が高かった。
×;意匠が平面的で、意匠性に劣るものであった。
電子線硬化性樹脂(以下「EB樹脂」という)である4官能のウレタンアクリレート(EB−1、第1表参照)25質量部に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」という)とアクリル酸メチル(以下「MA」という)のモル比100:5であって、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.60×105、多分散度(Mw/Mn)1.67の共重合体(以下「PMMA−1」という、第1表参照)を75質量部混合し、電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB樹脂:PMMA−1の質量比は25:75である。
次に、基材として、両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムを用い、該フィルムの裏面に、2液硬化型ウレタンインキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層を施していない表面に、アクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明プライマー層を形成した。該プライマー層の上に、シリコーン/アクリル共重合系印刷インキ100質量部に、平均粒径0.2μmのシリカを2質量部、平均粒径3μmのシリカを3質量部、及びアミノ変性シリコーンオイル1質量部を配合して得た撥液性インキを用い、グラビア印刷にて、上記絵柄層の木目柄の導管部と同調するように塗工し、厚さ1.0μmの撥液インキ層を得た。
該撥液インキ層上に、上記表面保護層形成用電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが3μmとなるように塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層側に膜厚10μmの2液硬化型ウレタン系樹脂接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートとラミネートして加飾シートを得た。
該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB樹脂とPMMA−1の質量比を第2表に記載するように変化させたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
PMMA−1に代えて、MMA、スチレン及び無水マレイン酸の共重合体(MMA:スチレン:無水マレイン酸のモル比が100:32:84、重量平均分子量(Mw)0.96×105、数平均分子量(Mn)0.46×105、多分散度(Mw/Mn)2.09、以下「PMMA−2」という、第1表参照)を用いたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
PMMA−1に代えて、MMA、MA、スチレン及び無水マレイン酸の共重合体(MMA:MA:スチレン:無水マレイン酸のモル比が100:8:10:69、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.57×105、多分散度(Mw/Mn)1.75、以下「PMMA−3」という、第1表参照)を用いたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
PMMA−1に代えて、MMAの単独重合体であって、重量平均分子量(Mw)1.1×105、数平均分子量(Mn)0.64×105、多分散度(Mw/Mn)1.72、以下「PMMA−4」という、第1表参照)を用いたこと以外は、実施例2又は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
表面保護層の膜厚を第2表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
表面保護層の膜厚を第2表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
PMMA−1に代えて、それぞれ第1表に示すPMMA−5及びPMMA−6を用いたこと(第1表参照)以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB樹脂としてEB−1に代えて2官能のウレタンアクリレート(EB−2、第1表参照)を用い、EB樹脂とPMMA−1の質量比を第2表に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB−1に代えて、3官能のウレタンアクリレート(EB−3、第1表参照)を用いたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
実施例1において、EB樹脂を用いないこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB樹脂とPMMA−1の質量比を第2表に記載するように変化させたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
実施例1において、PMMAを用いないこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB樹脂として、2官能のウレタンアクリレートを用い、PMMAを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
表面保護層の膜厚を第2表に記載されるとおりに変化させたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
PMMA−1に代えて、それぞれ第1表に示すPMMA−7、PMMA−8及びPMMA−9を用いたこと(第1表参照)以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
EB−1に代えて、2官能のウレタンアクリレート(EB−4、第1表参照)を用い、PMMAを用いないこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
さらに、このように成形性が良好な上、製造された加飾樹脂成形品の表面は高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有することが確認された。
特に、実施例9及び10の加飾シートは、高い成形性を有し、かつ該加飾シートを用いて製造した成形品は、高い耐擦傷性を有するとともに、高透明感、高光沢感を有するものであった。
11.基材
12.絵柄層
13.隠蔽層
14.接着剤層
15.表面保護層
16.撥液性インキ層
20.バッカーフィルム
Claims (16)
- 基材上に少なくとも撥液性インキ層と表面保護層とをこの順に有し、撥液性インキ層と表面保護層とが接触してなる加飾シートであって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、表面保護層の厚さが1〜1000μmであり、かつ撥液性インキ層が、(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれるインキによって形成される加飾シート。
- 前記表面保護層を形成するための樹脂組成物の以下の測定条件で測定した140℃における貯蔵弾性率が1×105〜1.2×108Paの範囲である請求項1に記載の加飾シート。
貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、表面保護層を形成するための樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。 - 前記熱可塑性樹脂が少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなる請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂が2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体である請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体である請求項4に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲である請求項5に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体であり、該熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲である請求項5に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸との共重合体である請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂中の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位100モルに対して、スチレン及び/又は(無水)マレイン酸に由来する構成単位が0.1〜200モルの範囲である請求項8に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチルの単独重合体である請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂の多分散度が1.1〜3.0の範囲である請求項1〜10のいずれかに記載の加飾シート。
- JIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が50%以上である請求項1〜11のいずれかに記載の加飾シート。
測定条件;幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で、表面保護層にクラックが入るまでの引張伸度を測定する。 - 電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である請求項1〜12のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項14又は15に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品。
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