JP4976488B2 - 薄葉紙 - Google Patents

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Description

本発明は、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙に関する。
従来、感熱孔版印刷原紙用などの薄葉紙としては、マニラ麻等の天然繊維で構成された物(例えば特許文献1参照)、太さや長さが不均一なアクリル系繊維で構成されたもの(例えば特許文献2参照)、天然繊維とポリエステル繊維とで構成されかつ樹脂加工を施したもの(例えば特許文献3参照)、ポリエチレンテレフタレート繊維とポリエチレンナフタレート未延伸繊維とで構成されたもの(例えば特許文献4参照)などが提案されている。
しかしながら、天然繊維を用いた薄葉紙では、繊度のバラツキが大きいため、感熱孔版印刷原紙として用いた際に、薄葉紙の空隙に斑が生じやすいため印刷の安定性が不十分であるという問題があった。また、太さや長さが不均一なアクリル系繊維を用いた薄葉紙でも同様の問題があった。また、樹脂加工を施した薄葉紙では、インク通過性が不安定であるため均一な印刷ができないという問題があった。また、バインダー繊維としてポリエチレンナフタレート繊維を用いた薄葉紙では、薄葉紙を製造する際の熱処理条件の設定が難しいという問題があった。
なお、最近では、繊度が小さい繊維の研究開発が盛んに行われている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)。
特開2001−315456号公報 特開平11−301134号公報 特開平9−39429号公報 特開2000−118162号公報 特開2004−162244号公報 国際公開第2005/095686号公報 国際公開第2005/080679号公報
本発明の目的は、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙を提供することにある。上記目的は、本発明の薄葉紙により達成することができる。
本発明の薄葉紙は、目付けが5〜30g/mの薄葉紙であって、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径Dが550〜800nmかつ該繊径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内である短繊維Aと、単繊維繊度が0.1dtex以上のバインダー繊維Bとを、短繊維A/バインダー繊維Bの重量比90/10〜50/50で含むことを特徴とする薄葉紙である。
ここで、前記の短繊維Aが、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなりかつその島径Dが550〜800nmである島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に対して溶解し易いポリマーからなる海成分とを有する複合繊維をカットした後、該複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより前記の海成分を溶解除去したものであることが好ましい。また、前記の複合繊維において、海成分が、5−ナトリウムスルホン酸を6〜12モル%および分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。また、前記の複合繊維において、島成分がポリエステルからなることが好ましい。また、前記の複合繊維において、島数が100以上であることが好ましい。また、前記の複合繊維において、海成分と島成分との複合重量比率(海:島)が20:80〜80:20の範囲内であることが好ましい。また、前記のバインダー繊維Bが、ポリエステルポリマーが紡糸速度800〜1200m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維であることが好ましい。また、前記のバインダー繊維Bが、芯部がポリエチレンテレフタレートで形成され、かつ鞘部が共重合ポリエステルで形成される芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
本発明の薄葉紙の表面において、最大孔径Maと平均孔径Avとの比Ma/Avが2以下であることが好ましい。また、薄葉紙の通気度が16cc/cm/sec以下であることが好ましい。また、薄葉紙が感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用であることが好ましい。
図1は、実施例1で得られた薄葉紙の表面の電顕写真である。
図2は、比較例4で得られた薄葉紙の表面の電顕写真である。
本発明において、短繊維Aは繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径D(単繊維の直径)が100〜1000nm(好ましくは300〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)かつ該繊径D(nm)に対する繊維長L(nm)の比L/Dが500〜2500(好ましくは500〜1500)の範囲内となるようにカットされていることが肝要である。前記繊径Dが1000nmよりも大きいと薄葉紙の表面に現れる孔の孔径が不均一(すなわち、平均孔径と最大孔径との比が大きい。)となるため好ましくない。逆に、該繊径Dが100nmよりも小さいと抄紙の際に網から脱落しやすくなり好ましくない。また、前記の比(L/D)が2500よりも大きいと、抄紙の際に繊維同士が絡みを発生し分散不良となるため、地合いの均一な薄葉紙が得られにくいため好ましくない。逆に、前記の比L/Dが500よりも小さいと、繊維と繊維とのつながりが極めて弱くなり、抄紙工程の際にワイヤーパートから毛布への移行が困難となり工程安定性が低下し好ましくない。
前記の繊径Dは,透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定することができる。その際、測長機能を有するTEMでは、測長機能を活用して測定することができる。また、測長機能の無いTEMでは、撮った写真を拡大コピーして、縮尺を考慮した上で定規にて測定すればよい。
その際、単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、繊径Dは、単繊維の横断面の外接円の直径を用いるものとする。なお、100〜1000nmの範囲の繊径は、繊度に換算すると0.0001〜0.01dtexとなる。
前記のような短繊維Aの製造方法としては特に限定されないが、国際公開第2005/095686号パンフレットに開示された方法が好ましい。すなわち、繊径およびその均一性の点で、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなりかつその島径Dが100〜1000nmである島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に溶解しやすいポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分とを有する複合繊維をカットした後にアルカリ減量加工を施し、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。なお、前記島径は、透過型電子顕微鏡で複合繊維の単繊維横断面を撮影することにより測定が可能である。なお、島の形状が丸断面以外の異型断面である場合には、前記の島径Dは、その外接円の直径を用いる。
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーに対する溶解速度比が200以上(好ましくは300〜3000)であると、島の分離性が良好となり好ましい。溶解速度が200倍未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解する間に、分離した繊維断面表層部の島成分が、繊径が小さいために溶解されるため、海相当分が減量されているにもかかわらず、繊維断面中央部の海成分を完全に溶解除去できず、島成分の太さ斑や島成分自体の溶剤侵食につながり、均一な繊径の短繊維が得ることができないおそれがある。
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。更に具体例を挙げれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが、アルカリ水溶液に対して溶解しやすく好ましい。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液などを言う。これ以外にも、海成分と、該海成分を溶解する溶液の組合せとしては、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例として挙げることができる。
ポリエステル系ポリマーの中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じる可能性がある。また、共重合量が10重量%以上になると、溶融粘度低下作用があるので、好ましくない。
一方、島成分を形成する難溶解性ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類などが好適な例として挙げられる。具体的には、機械的強度や耐熱性を要求される用途では、ポリエステル類では、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することもある。)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。また、ポリアミド類では、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が好ましい。一方、ポリオレフィン類は酸やアルカリ等に侵され難いことや、比較的低い融点のために極細繊維として取り出した後のバインダー成分として使える等の特徴があり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸などのビニルモノマーのエチレン共重合体等を好ましい例としてあげることができる。さらに島成分は丸断面に限らず、異型断面であってもよい。特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合率が20モル%以下のポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、あるいは、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が、高い融点による耐熱性や力学的特性を備えているので、ポリビニルアルコール/ポリアクリロニトリル混合紡糸繊維からなる極細フィブリル化繊維に比べ、耐熱性や強度を要求される用途へ適用でき、好ましい。
前記の海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後の極細繊維の物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
次に島数は、100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
溶融紡糸に用いられる口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ、未延伸糸を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200〜5000m/分であることが望ましい。200m/分以下では生産性が悪い。また、5000m/分以上では紡糸安定性が悪い。
得られた未延伸糸は、海成分を抽出後に得られる極細繊維の用途・目的に応じて、そのままカット工程あるいはその後の抽出工程に供してもよいし、目的とする強度・伸度・熱収縮特性に合わせるために、延伸工程や熱処理工程を経由して、カット工程あるいはその後の抽出工程に供することができる。延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもかまわない。
次に、かかる複合繊維を、島径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内となるようにカットする。かかるカットは、未延伸糸または延伸糸をそのまま、または数十本〜数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッターなどでカットすることが好ましい。
繊径Dを有する短繊維Aは、カットされた前記複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより得られる。その際、アルカリ減量加工において、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1〜5%である事が好ましく、さらには0.4〜3%である事が好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%以上では繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
また、アルカリ減量加工の処理時間は5〜60分である事が好ましく、さらには10〜30分である事が好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分以上では島成分までも減量されるおそれがある
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2%〜10%である事が好ましい。2%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
アルカリ減量の方法としては、カットされた複合繊維をアルカリ液に投入し、所定の条件、時間で処理した後に一度、脱水工程を経てから、再度、水中に投入し酢酸、シュウ酸などの有機酸を使用して中和、希釈を進め最終的脱水する方法や、または、所定の時間処理した後に、先に中和処理を施し、更に水を注入し希釈を進めその後脱水をする方法等が挙げられる。前者は、バッチ式に処理する為、少量での製造(加工)を行える事ができる反面、中和処理に時間を要す為、若干生産性が悪い。後者は半連続生産が可能であるが、中和処理時に多くの酸系水溶液及び希釈に多くの水を必要とする点がある。処理設備は何ら制限されるものではないが、脱水時に繊維脱落を防止する観点から、特許第3678511号公報に開示されているような開口率(単位面積当たりの開口部分の面積のこと)が10〜50%であるメッシュ状物(例えば非アルカリ加水分解性袋など)を適応する事が好ましい。該開口率が10%未満では水分の抜けが極めて悪く、50%を超えると、繊維の脱落が発生するおそれがある。
さらには、アルカリ減量加工の後、分散性を高めるために分散剤(例えば、高松油脂(株)製の型式YM−81)を繊維表面に、繊維重量に対して0.1〜5.0重量%付着させることが好ましい。
次に、本発明の薄葉紙に用いられるバインダー繊維Bとしては、単繊維繊度が0.1dtex(繊径3μm)以上の、未延伸繊維(複屈折率(Δn)が0.05以下)または複合繊維を用いる事が出来る。
ここで、未延伸繊維や複合繊維からなるバインダー繊維Bにおいて、単繊維繊度は0.2〜3.3dtex(より好ましくは0.5〜1.7dtex)が好ましい。また、バインダー繊維Bの繊維長は1〜20mm(より好ましくは3〜10mm)であることが好ましい。なお、未延伸繊維からなるバインダー繊維を用いる場合、抄紙後のドライヤーの後、熱圧着工程が必要であるため、抄紙後、カレンダー/エンボス処理を施すことが好ましい。
上記のバインダー繊維Bのうち、未延伸繊維としては、紡糸速度が好ましくは800〜1200m/分、さらに好ましくは900〜1150m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維が挙げられる。ここで、未延伸繊維に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、好ましくは生産性、水への分散性などの理由から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。
一方、バインダー繊維Bのうち、複合繊維としては、抄紙後に施す80〜170℃の熱処理によって融着し接着効果を発現するポリマー成分(例えば、非晶性共重合ポリエステル)が鞘部に配され、これらのポリマーより融点が20℃以上高い他のポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの通常のポリエステル)が芯部に配された芯鞘型複合繊維が好ましい。なお、バインダー繊維Bは、バインダー成分(低融点成分)が単繊維の表面の全部または一部を形成している、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維などの公知のバインダー繊維でもよい。
ここで、上記非晶性共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの酸成分と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分とのランダムまたはブロック共重合体として得られる。中でも、従来から広く用いられているテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分として用いることがコストの面で好ましい。このような共重合ポリエステルは、ガラス転移点が50〜100℃の範囲となり、明確な結晶融点を示さない。
本発明の薄葉紙において、短繊維Aとバインダー繊維Bとが(短繊維A/バインダー繊維B)の重量比90/10〜50/50(好ましくは90/10〜60/40、特に好ましくは80/20〜60/40)で含まれることが肝要である。短繊維Aの重量比率が該範囲よりも小さいと、薄葉紙表面に現れる孔の孔径が不均一となり、また均一な地合いが得られず好ましくない。逆に、短繊維Aの重量比率が該範囲よりも大きいとバインダー力を形成する接着成分の量が極めて少なくなるため、得られたシート(薄葉紙)の物理的な強度が不足し、毛羽発生や工程性に問題が生じ好ましくない。また、本発明の薄葉紙は前記短繊維Aとバインダー繊維Bだけで構成されることが好ましいが、薄葉紙全重量の30重量%以内であれば、前記の短繊維Aおよびバインダー繊維B以外の繊維として、各種合成繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン、オレフィン系、アラミド系)、木材パルプやリンターパルプなどの天然パルプ、アラミドやポリエチレンを主成分とする合成パルプなどが含まれていてもさしつかえない。
本発明の薄葉紙を製造する方法としては、通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機、あるいはこれらを複数台組み合わせて多層抄きなどとして、抄紙した後、熱処理する製造方法が好ましい。その際、熱処理工程としては、抄紙工程後、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤーのどちらでも可能である。また、熱処理の後、金属/金属ローラー、金属/ペーパーローラー、金属/弾性ローラーなどのカレンダー/エンボスを施しても良い。特に、本発明の薄葉紙にカレンダー加工またはエンボス加工を施すと、表面平滑性の向上(厚みの均一化)、接着点を形成することによる強度アップという効果を奏する。また、未延伸繊維からなるバインダー繊維Bを用いる場合は、熱圧着工程が必要であるため、かかるカレンダー加工またはエンボス加工が必要である。
かくして得られた薄葉紙において、薄葉紙の目付けが5〜30g/m(より好ましくは5〜20g/m)の範囲内であることが好ましい。該目付けが5g/m未満では、抄紙工程の安定性が悪く、製造時に紙切れを発生したり、得られた不織布の強度が弱くなりすぎるため好ましくない。逆に、該目付けが30g/mよりも大きい場合は、感熱孔版印刷原紙用としては大きすぎるため目的とする性能が得られず好ましくない。
本発明の薄葉紙は、前記のように、特定の繊径および繊維長を有する短繊維Aとバインダー繊維Bとを特定の重量比率で用いて湿式抄紙されたものであるので、薄葉紙表面に現れる孔の孔径が均一であり、また、均一な地合いを呈する。その際、薄葉紙表面に現れる孔の孔径の最大孔径Maと平均孔径Avとの比Ma/Avが2以下であることが好ましい。ただし、かかる孔径は薄葉紙から、任意の位置で大きさ3cm×3cm(正方形)の試料をとり、西華産業(株)製PMIパームポロメーター(ASTM E1294−89準拠)を用いて、その最大孔径Maと平均孔径Avを求めるものとする。また、通気度が16cc/cm/sec以下(より好ましくは0.1〜10cc/cm/sec)であることが好ましい。
本発明の薄葉紙は極めて均一な地合いを呈するので、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として好適に使用することができる。
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)溶融粘度
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットした。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見た。
(2)溶解速度測定
海成分および島成分のポリマーを、各々、径0.3mm、長さ0.6mmのキャピラリーを24孔もつ口金から吐出し、1000〜2000m/分の紡糸速度で引き取って得た未延伸糸を残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、83dtex/24フィラメントのマルチフィラメントを作製した。これを所定の溶剤および溶解温度で浴比100として、溶解時間と溶解量から減量速度を算出した。
(3)繊径D
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し繊径Dを測定した。ただし、繊径Dは、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
(4)繊維長L
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の極細短繊維(短繊維A)を基盤上に寝かせた状態とし、20〜500倍で繊維長を測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
(5)引張り強度(裂断長)
JIS P8113(紙及び板紙の引張強さ試験方法)に基づいて引張り強度(裂断長)を測定した。
(6)孔径
西華産業(株)製PMIパームポロメーター(ASTM E1294−89準拠)を用いて、最大孔径Ma(μm)と平均孔径Av(μm)の測定を実施した。最大孔径Maと平均孔径Avとの比Ma/Avが2以下のものを合格とする。
(7)伸度
JIS P8132(紙及び板紙の伸び試験方法)に基づいて伸度を測定した。
(8)目付
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付を測定した。
(9)厚み
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて厚みを測定した。
(10)密度
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて密度を測定した。
(11)融点
Du Pont社製、熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とした。なお、n数5でその平均値を求めた。
(12)地合い
出来上がったサンプルの表面の状態を目視にて地合いを4段階に判定した。地合いが良いものから順に、4級、3級、2級、1級とした。
[実施例1]
島成分に285℃での溶融粘度が120Pa・secのポリエチレンテレフタレート、海成分に285℃での溶融粘度が135Pa・secである平均分子量4000のポリエチレングリコールを4重量%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートを使用し、海:島=10:90の重量比率で島数400の口金を用いて紡糸し、紡糸速度1500m/minで引き取った。アルカリ減量速度差は1000倍であった。これを3.9倍に延伸した後、ギロチンカッターで1000μmにカットして、短繊維A用複合繊維を得た。これを4%NaOH水溶液で75℃にて10%減量したところ、繊維径と繊維長が比較的均一である極細短繊維が生成していることを確認した(繊径750nm、繊維長1mm、アスペクト比(L/D)=1333、丸断面)。これとは別に、バインダー繊維Bとして未延伸ポリエステルカットファイバー(繊度0.2dtex(繊径4.5μm)、繊維長3mm、捲縮ナシ)を用いて、ミキサー撹拌(短繊維A/バインダー繊維B=60/40)した後、角型抄紙マシンを用いて手抄きを実施し、ロータリードライヤーを用いて乾燥処理を実施する事でサンプルシートを得た。その後、カレンダー機加工(金属ローラー/金属ローラー、線圧120kg/cm、温度160℃、速度2m/min)を施して薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。また、該薄葉紙の表面の電顕写真を図1に示す。
次いで、該薄葉紙を用いて、感熱孔版印刷原紙および電池用セパレータおよびコンデンサ用ペーパーを得たところ、地合いが均一なため高品質であった。
[実施例2]
実施例1で使用したバインダー繊維Bに代えて、芯鞘複合型バインダー繊維(帝人ファイバー・TBS、繊度1.1dtex(繊径10μm)、繊維長5mm、芯/鞘=50/50、芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:共重合ポリエステル、捲縮なし)を用いて、ロータリードライヤーで薄葉紙を得た。本薄葉紙は、ロータリードライヤーにて、強固な接着を形成していたので、カレンダー加工を実施しなかった。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で使用した繊維の比率を変更(短繊維A/バインダー繊維B=80/20)した以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[実施例4]
実施例2で使用した繊維の比率を変更(短繊維A/バインダー繊維B=80/20)した以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で使用した短繊維Aの繊維長を2mmに変更(アスペクト比(L/D)=2667)した以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。アスペクト比が大きくなった為、分散性が悪化し、斑が多いサンプルとなった。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[比較例2]
実施例1で使用した短繊維Aの繊維長を0.3mmに変更(アスペクト比(L/D)=400)した以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。アスペクト比が小さくなった為、分散性が更に向上した反面、湿紙強度が弱く、工程性の悪化及び乾燥時の収縮率がアップし、斑が多いサンプルとなった。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で使用した繊維の構成を変更(短繊維A/バインダー繊維B=25/75)した以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。短繊維Aの比率が下がった事により、繊維構成本数がダウンした為、目開きの大きな薄葉紙となった。得られた薄葉紙の物性を表1に示す。
[比較例4]
実施例1で使用した短繊維Aの代わりにポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.1dtex(繊径3μm)、繊維長3mm、アスペクト比(L/D)=1000、捲縮ナシ)を用いた以外は同様の条件にて薄葉紙を得た。繊維径がアップしたため、目開きの大きい薄葉紙となった。得られた物性を表1に示す。また、該薄葉紙の表面の電顕写真を図2に示す。
本発明によれば、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (11)

  1. 目付けが5〜30g/mの薄葉紙であって、
    繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径Dが550〜800nmかつ該繊径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内である短繊維Aと、単繊維繊度が0.1dtex以上のバインダー繊維Bとを、短繊維A/バインダー繊維Bの重量比90/10〜50/50で含むことを特徴とする薄葉紙。
  2. 前記の短繊維Aが、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなりかつその島径Dが550〜800nmである島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に対して溶解し易いポリマーからなる海成分とを有する複合繊維をカットした後、該複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより前記の海成分を溶解除去したものである、請求の範囲第1項に記載の薄葉紙。
  3. 前記の複合繊維において、海成分が、5−ナトリウムスルホン酸を6〜12モル%および分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエチレンテレフタレートからなる、請求の範囲第2項に記載の薄葉紙。
  4. 前記の複合繊維において、島成分がポリエステルからなる、請求の範囲第2項に記載の薄葉紙。
  5. 前記の複合繊維において、島数が100以上である、請求の範囲第2項に記載の薄葉紙。
  6. 前記の複合繊維において、海成分と島成分との複合重量比率(海:島)が20:80〜80:20の範囲内である、請求の範囲第2項に記載の薄葉紙
  7. 前記のバインダー繊維Bが、ポリエステルポリマーが紡糸速度800〜1200m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維である、請求の範囲第1項に記載の薄葉紙。
  8. 前記のバインダー繊維Bが、芯部がポリエチレンテレフタレートで形成され、かつ鞘部が共重合ポリエステルで形成される芯鞘型複合繊維である、請求の範囲第1項に記載の薄葉紙。
  9. 薄葉紙の表面において、最大孔径Maと平均孔径Avとの比Ma/Avが2以下である、請求の範囲第1項に記載の薄葉紙。
  10. 薄葉紙の通気度が16cc/cm/sec以下である、請求の範囲第1項に記載の薄葉紙。
  11. 薄葉紙が感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用である、請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の薄葉紙。
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