JP2019093339A - 透湿濾材 - Google Patents
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Abstract
【課題】透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材を提供する。【解決手段】多層構造を有する透湿濾材であって、繊維径が100〜1000nmの極細繊維を含む繊維層Aと、繊維経1.0〜30.0μmの繊維を含む繊維層Bとを含む。【選択図】なし
Description
本発明は、透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材に関する。
近年、環境問題や省エネの観点から、空調設備や移住設備が重要となっており、排気中の熱や湿度を有効に使用する熱交換換気設備が注目されている。熱交換換気設備の特徴として、空気を取り入れる吸気経路と室外に排出する排気経路とが分けられている全熱交換エレメントを有しており、使用している濾材は透湿性が高く、液体である水を通さない性能が必要である。従来は天然パルプを主成分にした紙が多く用いられてきた。ただし、天然パルプを主成分とした紙は十分な透湿性能が得られる一方で、水も透過するため防水性能が必要となり、コスト高になってしまう。
また、全熱交換エレメント用に使用する濾材は成膜等の工程を有する。その為、透湿濾材は加工に耐えうる強度が求められる。強度を上げるために補強用の繊維層を積層することも提案(例えば特許文献1)されているが、濾材の平滑性が低いと成膜性および成膜後の層間剥離が発生するおそれがあった。
本発明は、透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、透湿濾材において構成繊維の繊維径などを巧みに工夫することにより、透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「多層構造を有する透湿濾材であって、繊維径が100〜1000nmの極細繊維を含む繊維層Aと、繊維経1.0〜30.0μmの繊維を含む繊維層Bとを含むことを特徴とする透湿濾材。」が提供される。
その際、前記繊維層Aと繊維層Bとがともに不織布からなることが好ましい。また、透湿濾材が、前記繊維層Aと繊維層Bとの2層構造を有し、繊維層A側表面において表面粗さが5〜10μmの範囲内であり、かつ繊維層B側表面において表面粗さが20〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、透湿濾材において、引張強度がMD方向10N/15mm以上、かつCD方向5N/15mm以上であることが好ましい。また、透湿濾材において、透気度が10秒以下であることが好ましい。また、透湿濾材が全熱交換エレメント用であることが好ましい。
本発明によれば、透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の透湿濾材において、濾材Aは、繊維径が100〜1000nm(好ましくは200〜700nm)の極細繊維を含む。該繊維径が1000nmより大きいと平滑性が悪くなり成膜性が低下するおそれがある。逆に該繊維径が100nmより小さいと製造が困難になるおそれがある。
ここで、前記の繊維径は、透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で単繊維断面写真を撮影し測定することができる。その際、測長機能を有するTEMでは、測長機能を活用して測定することができる。また、測長機能の無いTEMでは、撮った写真を拡大コピーして、縮尺を考慮した上で定規にて測定すればよい。単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、繊維径は、単繊維の横断面の外接円の直径を用いるものとする。
前記極細繊維において、アスペクト比(繊維径Dに対する繊維長Lの比L/D)としては、100〜2500の範囲内であることが好ましい。
前記極細繊維の繊維種類としては特に限定されないが、ポリエステル繊維またはポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維またはポリオレフィン繊維またはナイロン(Ny)繊維が好ましい。
ポリエステル繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維を形成するポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができる。その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらにポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
また、ポリオレフィン繊維には、ポリプロピレン繊維とポリエチレン繊維が含まれる。
また、ナイロン繊維にはナイロン6繊維とナイロン66繊維が含まれる。
また、ポリオレフィン繊維には、ポリプロピレン繊維とポリエチレン繊維が含まれる。
また、ナイロン繊維にはナイロン6繊維とナイロン66繊維が含まれる。
前記極細繊維の製造方法としては、特に限定されないが、国際公開第2005/095686号パンフレットに開示された方法が好ましい。すなわち、繊維径およびその均一性の点で、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に対して溶解し易いポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分を有する複合繊維にアルカリ減量加工を施し、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーに対する溶解速度比が100以上(好ましくは300〜3000)であると、島分離性が良好となり好ましい。溶解速度が200倍未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解する間に、分離した繊維断面表層部の島成分が、繊径が小さいために溶解されるため、海相当分が減量されているにもかかわらず、繊維断面中央部の海成分を完全に溶解除去できず、島成分の太さ斑や島成分自体の溶剤侵食につながり、均一な繊維径の繊維が得られないおそれがある。
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。さらに具体例を挙げれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが、アルカリ水溶液に対して溶解しやすく好ましい。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液などを言う。これ以外にも、海成分と、該海成分を溶解する溶液の組合せとしては、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶削、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例として挙げることができる。
ポリエステル系ポリマーの中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じる可能性がある。また、共重合量が10重量%以上になると、溶融粘度が低下するおそれがある。
一方、島成分を形成する難溶解性ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリオレフィン類などが好適な例として挙げられる。具体的には、機械的強度や耐熱性を要求される用途では、ポリエステル類では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。また、ポリアミド類では、ナイロン6(Ny−6)、ナイロン66(Ny−66)等の脂肪族ポリアミド類が好ましい。また、ポリオレフィン類は酸やアルカリ等に侵され難いことや、比較的低い融点のために極細繊維として取り出した後のバインダー成分として使える等の特徴があり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸などのビニルモノマーのエチレン共重合体等を好ましい例としてあげることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合率が20モル%以下のポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、あるいは、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が高い融点による耐熱性や力学的特性を備えているので、ポリビニルアルコール/ポリアクリロニトリル混合紡糸繊維からなる極細フィブリル化繊維に比べ、耐熱性や強度を要求される用途へ適用でき、好ましい。なお、島成分は丸断面に限らず、三角断面や扁平断面などの異型断面であってもよい。
前記の海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後の主体繊維の物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、艶消し剤、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲であるこの比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
次に島数は、100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方、20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
溶融紡糸に用いられる口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ、未延伸糸を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200〜5000m/分であることが望ましい。200m/分以下では生産性が悪くなるおそれがある。また、5000m/分以上では紡糸安定性が悪くなるおそれがある。
得られた繊維は、海成分を抽出後に得られる極細繊維の用途・目的に応じて、そのままカット工程あるいはその後の抽出工程に供してもよいし、目的とする強度・伸度・熱収縮特性に合わせるために、延伸工程や熱処理工程を経由して、カット工程あるいはその後の抽出工程に供することができる。延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもよい。
次に、かかる複合繊維を、島径Dに対する繊維長Lの比L/Dが100〜2500の範囲内となるようにカットする。かかるカットは、数十本〜数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッターなどでカットすることが好ましい。
前記の繊維径Dを有する繊維は、前記複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより得られる。その際、アルカリ減量加工において、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1〜5%であることが好ましく、さらには0.4〜3%であることが好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%以上では繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
また、アルカリ減量加工の処理時間は5〜60分であることが好ましく、さらには10〜30分であることが好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分以上では島成分までも減量されるおそれがある。
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2〜10%であることが好ましい。2%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
なお、前記のカット工程とアルカリ減量工程の順序を逆にして、まずアルカリ減量加工を行った後、カットを行ってもよい。
なお、前記のカット工程とアルカリ減量工程の順序を逆にして、まずアルカリ減量加工を行った後、カットを行ってもよい。
本発明の透湿濾材において、繊維層Aは前記の極細繊維だけで透湿濾材を構成してもよいが、バインダー繊維を併用することは好ましいことである。
バインダー繊維としては、単繊維繊度が0.1dtex(繊径3μm)以上の、未延伸繊維(複屈折率(Δn)が0.05以下)または複合繊維を用いることができる。
バインダー繊維としては、単繊維繊度が0.1dtex(繊径3μm)以上の、未延伸繊維(複屈折率(Δn)が0.05以下)または複合繊維を用いることができる。
ここで、未延伸繊維や複合繊維からなるバインダー繊維において、単繊維繊度は0.2〜3.3dtex(より好ましくは0.5〜1.7dtex)が好ましい。また、バインダー繊維の繊維長は1〜20mm(より好ましくは3〜10mm)であることが好ましい。なお、未延伸繊維からなるバインダー繊維を用いる場合、抄紙後のドライヤーの後、熱圧着工程が必要であるため、抄紙後、カレンダー/エンボス処理を施すことが好ましい。
上記のバインダー繊維のうち、未延伸繊維としては、紡糸速度が好ましくは800〜1200m/分、さらに好ましくは900〜1150m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維が挙げられる。ここで、未延伸繊維に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、好ましくは生産性、水への分散性などの理由から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。
一方、バインダー繊維のうち、複合繊維としては、抄紙後に施す80〜170℃の熱処理によって融着し接着効果を発現するポリマー成分(例えば、非晶性共重合ポリエステル)が鞘部に配され、これらのポリマーより融点が20℃以上高い他のポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの通常のポリエステル)が芯部に配された芯鞘型複合繊維が好ましい。なお、バインダー繊維Bは、バインダー成分(低融点成分)が単繊維の表面の全部または一部を形成している、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維などの公知のバインダー繊維でもよい。
ここで、上記非晶性共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの酸成分と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分とのランダムまたはブロック共重合体として得られる。中でも、従来から広く用いられているテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分として用いることがコストの面で好ましい。このような共重合ポリエステルは、ガラス転移点が50〜100℃の範囲となり、明確な結晶融点を示さない。
本発明の透湿濾材において、繊維層Aには前記の極細繊維およびバインダー繊維以外の繊維として、各種合成繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン、オレフィン系、アラミド系)、木材パルプやリンターパルプなどの天然パルプ、アラミドやポリエチレンを主成分とする合成パルプなどを用いることができる。特に、単繊維繊度0.05〜0.6dtex、繊維長3〜10mmの、延伸されたポリエチレンテレフタレートからなるポリエチレンテレフタレート短繊維が寸法安定性等の観点から好ましい。
本発明の透湿濾材において、繊維層Bは繊維経1.0〜30.0μmの繊維(以下、繊維b)を含む。かかる繊維bにおいて、繊維径以外の繊維種類やL/Dなどは前記極細繊維と同様でよい。なかでも、単繊維繊度0.05〜0.6dtex、繊維長3〜10mmの、延伸されたポリエチレンテレフタレートからなるポリエチレンテレフタレート短繊維が好ましい。
また、繊維層Bには、繊維層Aと同様に、繊維bや前記バインダー繊維に各種繊維が含まれていてもよい。
本発明の透湿濾材において、繊維層Aおよび繊維層Bがともに不織布からなることが好ましい。特に、湿式不織布からなることが好ましい。かかる湿式不織布を製造する方法としては、通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機、あるいはこれらを複数台組み合わせて多層抄きなどとして抄紙した後、熱処理する製造方法が好ましい。その際、熱処理工程としては、抄紙工程後、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤーのどちらでも可能である。また、熱処理の後、金属/金属ローラー、金属/ペーパーローラー、金属/弾性ローラーなどのカレンダー/エンボスを施してもよい。
前記のような多層構造を有する透湿濾材の製造方法としては、例えば、前記のような湿式不織布を得た後、カレンダー機などを用いて接着させるとよい。
本発明の透湿濾材は前記の構成を有するので、透湿性および加工性に優れ、特に全熱交換エレメント用濾材として好適に用いられる。
(1)繊維径
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定した。ただし、繊維径は、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
(2)繊維長
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の極細短繊維(短繊維A)を基盤上に寝かせた状態とし、20〜500倍で繊維長Lを測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
(3)目付け
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付けを測定した。
(4)厚さ
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の測定方法)に基づいて厚さを測定した。測定荷重は75g/cm2にて、n=5で測定し、平均値を求めた。
(5)空隙率
上記目付け、厚さ、繊維密度(g/cm3)から下記式にて計算した。
空隙率(%)=100−((目付け)/(厚さ)/繊維密度× 100)
(6)引張強度
JIS P8113 (紙および板紙の引張強さと試験方法)に基づいて実施した。
(7)ガーレ透気度
JIS P8117 (紙および板紙の透気度試験方法)に基づいて実施した。
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定した。ただし、繊維径は、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
(2)繊維長
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の極細短繊維(短繊維A)を基盤上に寝かせた状態とし、20〜500倍で繊維長Lを測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
(3)目付け
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付けを測定した。
(4)厚さ
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の測定方法)に基づいて厚さを測定した。測定荷重は75g/cm2にて、n=5で測定し、平均値を求めた。
(5)空隙率
上記目付け、厚さ、繊維密度(g/cm3)から下記式にて計算した。
空隙率(%)=100−((目付け)/(厚さ)/繊維密度× 100)
(6)引張強度
JIS P8113 (紙および板紙の引張強さと試験方法)に基づいて実施した。
(7)ガーレ透気度
JIS P8117 (紙および板紙の透気度試験方法)に基づいて実施した。
[実施例1]
島成分にポリエチレンテレフタレート(PET)、海成分に5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸、延伸後、ギロチンカッターで切断し、海:島=30:70、島数836、繊度5.6dtex、カット長0.5mmの海島型複合繊維を得た。これを1.5%NaOH水溶液で80℃にて30%減量し、本繊維を極細繊維とした(延伸されたポリエステル繊維、繊維径400nm、繊維長0.4mm)。
島成分にポリエチレンテレフタレート(PET)、海成分に5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸、延伸後、ギロチンカッターで切断し、海:島=30:70、島数836、繊度5.6dtex、カット長0.5mmの海島型複合繊維を得た。これを1.5%NaOH水溶液で80℃にて30%減量し、本繊維を極細繊維とした(延伸されたポリエステル繊維、繊維径400nm、繊維長0.4mm)。
次いで、前記極細繊維(50wt%)とバインダー繊維(50wt%)とを混合撹拌した後、抄紙機で湿式抄紙を行いヤンキードライヤー120℃で乾燥し湿式不織布からなる繊維層Aを得た。
また、ポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸して得られた繊維径が12.6μmのポリエチレンテレフタレート繊維(60wt%)と、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(40wt%)を準備し、抄紙機で湿式抄紙を行いヤンキードライヤー140℃で乾燥し湿式不織布からなる繊維層Bを得た。
次いで、前記繊維層Aと前記繊維層Bとをカレンダー機にて熱接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、極細繊維(延伸されたポリエステル繊維、繊維径700nm、繊維長0.5mm)を用いた繊維層Aと、実施例1と同様な方法で繊維層Bを得た後、繊維層Aと繊維層Bをカレンダー機にて熱接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で、極細繊維(延伸されたポリエステル繊維、繊維径700nm、繊維長0.5mm)を用いた繊維層Aと、実施例1と同様な方法で繊維層Bを得た後、繊維層Aと繊維層Bをカレンダー機にて熱接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2と同様な方法で繊維層Aを得た。また、ポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸して得られた繊維径が7.5μmのポリエチレンテレフタレート繊維(60wt%)と、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維40%を準備し、抄紙機で湿式抄紙を行いヤンキードライヤー140℃で乾燥し湿式不織布からなる繊維層Bを得た。次いで、繊維層Aと繊維層Bとをラミネート機により熱接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
実施例2と同様な方法で繊維層Aを得た。また、ポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸して得られた繊維径が7.5μmのポリエチレンテレフタレート繊維(60wt%)と、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維40%を準備し、抄紙機で湿式抄紙を行いヤンキードライヤー140℃で乾燥し湿式不織布からなる繊維層Bを得た。次いで、繊維層Aと繊維層Bとをラミネート機により熱接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2と同様な方法で繊維層Aを得た。また、実施例1と同様な方法で繊維層Bを得た後、繊維層Aと繊維層Bをラミネート機により接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
実施例2と同様な方法で繊維層Aを得た。また、実施例1と同様な方法で繊維層Bを得た後、繊維層Aと繊維層Bをラミネート機により接着し、透湿濾材を得た。評価結果を表1に示す。
本発明によれば、透湿性だけでなく表面平滑性および強度にも優れる透湿濾材が提供され、その工業的価値は極めて大である。
Claims (6)
- 多層構造を有する透湿濾材であって、繊維径が100〜1000nmの極細繊維を含む繊維層Aと、繊維経1.0〜30.0μmの繊維を含む繊維層Bとを含むことを特徴とする透湿濾材。
- 前記繊維層Aと繊維層Bとがともに不織布からなる、請求項1に記載の透湿濾材。
- 透湿濾材が、前記繊維層Aと繊維層Bとの2層構造を有し、繊維層A側表面において表面粗さが5〜10μmの範囲内であり、かつ繊維層B側表面において表面粗さが20〜50μmの範囲内である、請求項1または請求項2に記載の透湿濾材。
- 透湿濾材において、引張強度がMD方向10N/15mm以上、かつCD方向5N/15mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の透湿濾材。
- 透湿濾材において、透気度が10秒以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の透湿濾材。
- 透湿濾材が全熱交換エレメント用である、請求項1〜5のいずれかに記載の透湿濾材。
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-
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- 2017-11-22 JP JP2017224726A patent/JP2019093339A/ja active Pending
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