JP2022105839A - エアフィルタ用濾材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材を提供する。【解決手段】湿式不織布を含むエアフィルタ用濾材であって、前記湿式不織布が、繊維直径が100~1000nmのナノファイバーからなる繊維A、バインダー繊維B、および繊維直径が4~12μmの繊維Cを含む。【選択図】なし
Description
本発明は高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材に関する。
従来、空気清浄などを目的とするエアフィルタ用濾材として、ポリプロピレンなどの合成繊維の不織布に静電加工を施した静電式フィルタや、静電加工を施していないガラス繊維からなるエアフィルタが主として使用されている(特許文献1、2)。しかしながら、静電式フィルタでは長期間の使用時には空気中のオイルミストや水分により捕集性能が劣化してしまうという問題があった。ガラス繊維からなるエアフィルタでは、廃棄残差により環境負荷が大きいという問題があった。
また近年、フィルタの高性能化をするために繊維径が1μm未満の極細繊維(ナノファイバー)を使用した不織布が提案されている(特許文献3、4)。しかしながら、かかる不織布では目詰まりによる低寿命化のおそれがあり、逆に、空隙率を高めると捕集性能が低下するという問題があった。
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材を提供するものである。
本発明者らは、鋭意研究した結果、前記課題を達成できるエアフィルタ用濾材を発明するに至った。
かくして本発明によれば、「湿式不織布を含むエアフィルタ用濾材であって、前記湿式不織布が、繊維直径が100~1000nmのナノファイバーからなる繊維A、バインダー繊維B、および繊維直径が4~12μmの繊維Cを含むことを特徴とするエアフィルタ用濾材。」が提供される。
その際、前記バインダー繊維Bの繊維直径が10~15μmの範囲内であることが好ましい。また前記記載の繊維A、繊維B、および繊維Cがポリエステル繊維からなることが好ましい。また、前記湿式不織布に付着量1.0~8.0g/m2で樹脂が付与されていることが好ましい。また、目付けが50~120g/m2の範囲内であることが好ましい。また、厚みが0.2~0.6mmの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加
工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材が得られる。
工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のエアフィルタ用濾材は湿式不織布を含み、該湿式不織布が、単繊維の繊維直径(「繊維径」ということもある。)が100~1000nmのナノファイバーからなる繊維A、バインダー繊維B、および単繊維の繊維直径が4~12μmの繊維Cを含む。その際、前記バインダー繊維Bの繊維直径が10~15μmの範囲内であることが好ましい。また、繊維Bと繊維Cの繊維直径比率B:Cが1.0:3.0~3.0:1.0(より好ましくは1.0:1.5~1.5:1.0)であることが好ましい。
湿式不織布が、前記繊維A、バインダー繊維B、および繊維Cを含むことで、湿式抄紙時の繊維分散スラリー液中での繊維A、繊維B、繊維Cの偏在化を抑制し、不織布内部の各繊維間における不均一な繊維分散および空隙の形成を抑制することができる。これにより、不織布の繊維分散状態を均一化でき、地合いや厚みの均一化、また孔径の分布のばらつきを防ぐことができる。
ここで、ナノファイバー(繊維A)の繊維径は1000nm以下(好ましくは700nm以下)が重要である。これより大きくなると、孔径が大きくなり、捕集性能が低下するおそれがある。また100nm以上(好ましくは200nm以上)が重要である。これよりも小さい場合は、繊維自身の分散性が難しく、むしろ凝集の発生や、抄紙工程で網の目を通過してシート形成が困難になるおそれがある。
ここで、前記の繊維径は、透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で単繊維断面写真を撮影し測定することができる。その際、測長機能を有するTEMでは、測長機能を活用して測定することができ、n数5の平均値でもとめられる。また、測長機能の無いTEMでは、撮った写真を拡大コピーして、縮尺を考慮した上で定規にて測定すればよい。単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、繊維径は、単繊維の横断面の外接円の直径を用いるものとする。
前記ナノファイバー(繊維A)において、アスペクト比(繊維径Dに対する繊維長Lの比L/D)としては、100~2500の範囲内であることが好ましい。
前記ナノファイバー(繊維A)の繊維種類としてはポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリオレフィン繊維などが例示され、特にポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維は融点が260~270℃であり、耐熱性、耐溶剤性、加水分解性に優れ、エアフィルタ用濾材として信頼性の高いポリマーである。
ポリエステル繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレートの他、これらを主たる繰返し単位とし、その他のコモノマー成分としてイソフタル酸や5-スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε-カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等を更に共重合させた共重合体が好ましい。マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009-091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得
られたポリエステルでもよい。
られたポリエステルでもよい。
前記ナノファイバー(繊維A)の製造方法としては、特に限定されないが、国際公開第2005/095686号パンフレットに開示された方法が好ましい。すなわち、繊維径およびその均一性の点で、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に対して溶解し易いポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分を有する複合繊維にアルカリ減量加工を施し、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーに対する溶解速度比が200以上(好ましくは300~3000)であると、島分離性が良好となり好ましい。溶解速度が200倍未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解する間に、分離した繊維断面表層部の島成分が、繊維径が小さいために溶解されるため、海相当分が減量されているにもかかわらず、繊維断面中央部の海成分を完全に溶解除去できず、島成分の太さ斑や島成分自体の溶剤侵食につながり、均一な繊維径の繊維が得られないおそれがある。
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。さらに具体例を挙げれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが、アルカリ水溶液に対して溶解しやすく好ましい。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液等を言う。これ以外にも、海成分と、該海成分を溶解する溶液の組合せとしては、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例として挙げることができる。
ポリエステル系ポリマーの中でも、5-ナトリウムスルホイソフタル酸6~12モル%と分子量4000~12000のポリエチレングリコールを3~10質量%共重合させた固有粘度が0.4~0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5-ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じる可能性がある。また、共重合量が10質量%以上になると、溶融粘度が低下するおそれがある。
一方、島成分を形成する難溶解性ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリオレフィン類等が好適な例として挙げられる。具体的には、機械的強度や耐熱性を要求される用途では、ポリエステル類では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5-スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε-カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。また、ポリアミド類では、ナイロン6(Ny-6)、ナイロン66(Ny-66)等の脂肪族ポリアミド類が好ましい。また、ポリオレフィン類は酸やアルカリ等に侵され難いことや、比較的低い融点のために極細繊維として取り出した後のバインダー成分として使える等の特徴があり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸等のビニルモノマーのエチレン共重合体等を好ましい例としてあげることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合率が20モル%以下のポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、あるいは、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が高い融点による耐熱性や力学的特性を備えているので、ポリビニルアルコール/ポリアクリロニトリル混合紡糸繊維からなる極細フィブリル化繊維に比べ、耐熱性や強度を要求される用途へ適用でき、好ましい。なお、島成分は丸断面に限らず、三角断面や扁平断面等の異型断面であってもよい。
前記の海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後の主体繊維の物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、艶消し剤、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合質量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合や、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1~2.0、特に1.3~1.5の範囲であるこの比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
次に島数は、100以上(より好ましくは300~1000)であることが好ましい。また、その海島複合質量比率(海:島)は、20:80~80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80質量%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方、20質量%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
溶融紡糸に用いられる口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するもの等任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ、未延伸糸を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200~5000m/分であることが望ましい。200m/分未満では生産性が悪くなるおそれがある。また、5000m/分超では紡糸安定性が悪くなるおそれがある。
得られた繊維は、海成分を抽出後に得られる極細繊維の用途・目的に応じて、そのままカット工程あるいはその後の抽出工程に供してもよいし、目的とする強度・伸度・熱収縮特性に合わせるために、延伸工程や熱処理工程を経由して、カット工程あるいはその後の抽出工程に供することができる。延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもよい。
次に、かかる複合繊維をカットする工程に供する。島径Dに対する繊維長Lの比L/Dが100~2500の範囲内となるようにカットすることが好ましい。かかるカットは、
数十本~数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッター等でカットすることが好ましい。
数十本~数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッター等でカットすることが好ましい。
前記の繊維径を有する繊維は、前記複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより得られる。その際、アルカリ減量加工において、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1~5%であることが好ましく、さらには0.4~3%であることが好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%を越えると繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
また、アルカリ減量加工の処理時間は5~60分であることが好ましく、さらには10~30分であることが好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分を越えると島成分までも減量されるおそれがある。
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2~10質量%であることが好ましい。2質量%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10質量%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
なお、前記のカット工程とアルカリ減量工程の順序を逆にして、まずアルカリ減量加工を行った後、カットを行ってもよい。
本発明におけるバインダー繊維Bは熱融着性繊維であって、不織布の強度やネットワーク構造および収縮による嵩向上などの役割があり、未延伸繊維(複屈折率(Δn)が0.05以下)または複合繊維を用いることができる。
ここで、未延伸繊維や複合繊維からなる熱融着性繊維において、繊維直径が10~15μmであることが好ましい。単繊維繊度としては1.1~2.5dtexが好ましい。また、熱融着性繊維の繊維長は1~20mm(より好ましくは3~10mm)であることが好ましい。
上記のバインダー繊維Bのうち、未延伸繊維としては、紡糸速度が600~1500m/minで紡糸された未延伸ポリエステル繊維が好ましい。ここで、未延伸繊維に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、好ましくは生産性、水への分散性等の理由から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。また、未延伸糸に用いられるポリフェニレンスルフィドとしては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができる。その中でも、p-フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらにポリ(p-フェニレンスルフィド)がより好ましい。
一方、バインダー繊維Bのうち、複合繊維としては、抄紙後に施す80~170℃の熱処理によって融着し接着効果を発現するポリマー成分(例えば、非晶性共重合ポリエステル)が鞘部に配され、これらのポリマーより融点が20℃以上高い他のポリマー(例えば
、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の通常のポリエステル)が芯部に配された芯鞘型複合繊維が好ましい。なお、バインダー繊維Bは、バインダー成分(低融点成分)が単繊維の表面の全部または一部を形成している、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維等の公知のバインダー繊維でもよい。
、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の通常のポリエステル)が芯部に配された芯鞘型複合繊維が好ましい。なお、バインダー繊維Bは、バインダー成分(低融点成分)が単繊維の表面の全部または一部を形成している、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維等の公知のバインダー繊維でもよい。
ここで、上記非晶性共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の酸成分と、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分とのランダムまたはブロック共重合体として得られる。中でも、従来から広く用いられているテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分として用いることがコストの面で好ましい。このような共重合ポリエステルは、ガラス転移点が50~100℃の範囲となり、明確な結晶融点を示さない。
さらに、ナノファイバーの分散を助けるとともに、空隙率の向上と地合い均一化にも寄与する繊維Cについては、非バインダー繊維であって、繊維径が均一で分散性のよいポリエステル繊維が最もよい。繊維直径としては4~12μm(好ましくは4~9μm)であることが重要である。単繊維繊度では0.04~1.6dtexが好ましい。また、繊維長3~10mmの、延伸されたポリエチレンテレフタレートからなる短繊維が寸法安定性等の観点から好ましい。ただし、少量および目的に応じて、種々の紙用繊維素材が使用可能であり、たとえば、木材パルプ、天然パルプ、アラミドやポリエチレンを主成分とする合成パルプ、ナイロン、アクリル、ビニロン、レーヨン等の成分を含む合成繊維または半合成繊維を混合、添加してもよい。
本発明のエアフィルタ用濾材は湿式不織布を含む。かかる湿式不織布を製造する方法としては、通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機、あるいはこれらを複数台組み合わせて多層抄きなどとして抄紙した後、熱処理する製造方法が好ましい。その際、熱処理工程としては、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤーのどちらでも可能である。また、熱処理の後、乾燥機による非接触型の熱処理や、金属/金属ローラー、金属/ペーパーローラー、金属/弾性ローラーなどのカレンダーを施してもよい。
また、多層構造を有する不織布の製造方法としては、例えば、前記のような湿式不織布を得た後、カレンダー機などを用いて接着させるとよい。
ここで、不織布の高空隙構造の保持とその後の加工工程への補強、フィルタ使用環境下における送風圧に対する強度保持をするために、前記不織布に樹脂付着量が固形分で1.0~8.0g/m2となるよう樹脂含侵加工を施すと、樹脂含侵加工によって不織布の三次元構造を強固にすることができ好ましい。樹脂含浸加工において湿式不織布そのものを硬化させるための含浸樹脂は、片面、両面コート、あるいは含浸のいずれでもよい。含浸樹脂は、アクリルアミド系、ウレタン系、エポキシ系、ポリビニルアルコール系が好ましい。
かくして得られたエアフィルタ用濾材において、目付は50~120g/m2であることが好ましい。また、厚み0.2~0.6mmが好ましい。これよりも薄い場合は不織布の強度の低下やフィルタの低寿命化となってしまうおそれがある。また、これよりも厚い場合はプリーツ性が悪くなる点や、エアフィルタの省スペース化においてデメリットとなるおそれがある。また、剛軟度としては、樹脂付与なしでタテ、ヨコともに200~40
0mgfであることが好ましく、樹脂付与ありでタテ、ヨコともに500~4000mgfであることが好ましい。
0mgfであることが好ましく、樹脂付与ありでタテ、ヨコともに500~4000mgfであることが好ましい。
本発明のエアフィルタ用濾材は前記の構成を有するので、不織布の高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつ。なお、抗菌加工や難燃加工などを施してもよい。
本発明のエアフィルタ用濾材は、自動車その他車両などのエアフィルタ、キャビン、マスク、空気清浄機、ビル空調用、半導体、食品、医薬品工場などに用いられるエアフィルタなどとして好適に使用される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されているものではない。実施例中の物性は、以下の方法により測定した。
(1)繊維直径(繊維径)
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定した。ただし、繊維直径は、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定した。ただし、繊維直径は、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
(2)繊維長
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の極細短繊維(短繊維A)を基盤上に寝かせた状態とし、20~500倍で繊維長Lを測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の極細短繊維(短繊維A)を基盤上に寝かせた状態とし、20~500倍で繊維長Lを測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
(3)目付け
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付けを測定した。
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付けを測定した。
(4)厚さ
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の測定方法)に基づいて厚みを測定した。測定荷重は75g/cm2にて、n=5で測定し、平均値を求めた。
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の測定方法)に基づいて厚みを測定した。測定荷重は75g/cm2にて、n=5で測定し、平均値を求めた。
(5)空隙率
上記目付け、厚さ、繊維密度(g/cm3)から下記式にて計算した。
空隙率(%)=100-((目付け)/(厚さ)/繊維密度×100)
上記目付け、厚さ、繊維密度(g/cm3)から下記式にて計算した。
空隙率(%)=100-((目付け)/(厚さ)/繊維密度×100)
(6)捕集率
パーティクル測定器(リオン株式会社製パーティクルカウンターKC-01(0.3~5μm))にて、大気塵(0.3~5μm)を速度5.1cm/secでサンプルを通過させた時に、サンプルに捕集された大気塵中の0.3μm粒子数を測定し、大気塵中の0.3μm粒子数から100分率で捕集率を算出した。
パーティクル測定器(リオン株式会社製パーティクルカウンターKC-01(0.3~5μm))にて、大気塵(0.3~5μm)を速度5.1cm/secでサンプルを通過させた時に、サンプルに捕集された大気塵中の0.3μm粒子数を測定し、大気塵中の0.3μm粒子数から100分率で捕集率を算出した。
(7)圧損
大気塵(0.3~5μm)を速度5.1cm/secでサンプルを通過させた時の大気圧に対する差圧をゲージから読み取った。
大気塵(0.3~5μm)を速度5.1cm/secでサンプルを通過させた時の大気圧に対する差圧をゲージから読み取った。
(8)pf値
圧損と捕集率から以下の式により、フィルタの性能指標を算出した。
pf値=-LOG((100-0.3μm捕集率(%))/100)/(圧損(Pa)/9.8)×100
圧損と捕集率から以下の式により、フィルタの性能指標を算出した。
pf値=-LOG((100-0.3μm捕集率(%))/100)/(圧損(Pa)/9.8)×100
(9)剛軟度
JIS L1085(不織布芯地試験方法)に基づき測定した。
JIS L1085(不織布芯地試験方法)に基づき測定した。
(10)フロック数
光透過型光学式地合計(M/K systems社製 3D Sheet Analyzer Model M/K 950)にてフロック数を測定した。モデル中心階級#32以上のピクセルが3つ以上集まった塊を高秤量領域であるフロックと定義し、フロック数を測定した。
光透過型光学式地合計(M/K systems社製 3D Sheet Analyzer Model M/K 950)にてフロック数を測定した。モデル中心階級#32以上のピクセルが3つ以上集まった塊を高秤量領域であるフロックと定義し、フロック数を測定した。
(11)樹脂量
不織布を樹脂溶液に含侵しプレスロールで過剰に付着した樹脂溶液を絞り、高温槽で乾燥することで樹脂加工不織布を得た。このときプレスロール後の不織布に付与された樹脂溶液量(g/m2)と樹脂濃度(%)から乾燥後の樹脂付着量(g/m2)を計算した。
不織布を樹脂溶液に含侵しプレスロールで過剰に付着した樹脂溶液を絞り、高温槽で乾燥することで樹脂加工不織布を得た。このときプレスロール後の不織布に付与された樹脂溶液量(g/m2)と樹脂濃度(%)から乾燥後の樹脂付着量(g/m2)を計算した。
[実施例1]
繊維径700nm×長さ0.5mmのナノファイバー繊維A(ポリエステル繊維)と、芯鞘複合型熱融着性繊維で単繊維繊度2.2dtex(単繊維の直径14.3μm)×長さ5mmのバインダー繊維B(芯ポリマーは、融点256℃のポリエチレンテレフタレート、鞘ポリマーはテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分とする非晶性共重合ポリエステルで、それぞれを50/50wt%の割合で断面形成したもの)と、単繊維繊度0.6dtex(単繊維の直径7.5μm)×長さ5mmの繊維C(ポリエステル繊維)を用いて、これらをA:B:C=30:30:40の割合で配合し、水中に分散させたスラリーを湿式抄紙法で不織布を作製し、ヤンキードライヤー(120℃)で乾燥し湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材を得た。
繊維径700nm×長さ0.5mmのナノファイバー繊維A(ポリエステル繊維)と、芯鞘複合型熱融着性繊維で単繊維繊度2.2dtex(単繊維の直径14.3μm)×長さ5mmのバインダー繊維B(芯ポリマーは、融点256℃のポリエチレンテレフタレート、鞘ポリマーはテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分とする非晶性共重合ポリエステルで、それぞれを50/50wt%の割合で断面形成したもの)と、単繊維繊度0.6dtex(単繊維の直径7.5μm)×長さ5mmの繊維C(ポリエステル繊維)を用いて、これらをA:B:C=30:30:40の割合で配合し、水中に分散させたスラリーを湿式抄紙法で不織布を作製し、ヤンキードライヤー(120℃)で乾燥し湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材を得た。
[実施例2、比較例1~3]
繊維A:繊維B:繊維Cの配合比と繊維径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で不織布からなるエアフィルタ用濾材を作製した。
繊維A:繊維B:繊維Cの配合比と繊維径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で不織布からなるエアフィルタ用濾材を作製した。
以下、結果を説明する。実施例1は空隙率が84%以上と高く、フィルタ性能を示すpf値が10以上を達成し、フィルタ性能が高い。また、フロック数が16個と少なく、地合いの均一性に優れる。実施例2は実施例1と配合比が異なるが高空隙率を達成し、フィルタ性能と地合いの均一性に優れる結果を示した。このようにナノファイバー繊維Aと混合するバインダー繊維Bと繊維Cの繊維径比率を最適化することで、不織布の高空隙構造と不織布のフロック数が少なく地合いの均一性に優れる不織布が得られた。
一方、比較例1は繊維Cの繊維径が大きいため空隙率84%以上と高いが、フィルタ性能pf値が9.7と低下し、フロック数が36と多く、地合いの均一性が悪化した。比較例2は比較例1よりもフィルタ性能と地合いの均一性が低下したことに加え、ナノファイバー繊維Aの増加に伴い空隙率が低下した。比較例1~2のこれらの原因は、不織布の骨格となるバインダー繊維Bと地合いの均一性に貢献する繊維Cの組合せが悪いために、高空隙構造と地合いの均一性を同時に達成できなかったと考える。また、比較例3は空隙率が78%と低下し、フィルタ性能が低下した。このように繊維Cを細くしすぎると不織布構造が緻密となり、高空隙構造が達成できない。フィルタ設計において高空隙構造の保持と地合いの均一性(繊維の分散均一性)が重要であり、それらを達成するためにはナノファイバー繊維Aと混合する少なくとも2種の繊維の構成の最適化が重要となり、不織布の3次元構造の骨格をバインダー繊維Bにて形成し、フィルタ性能の主因子であるナノファイバー繊維Aと地合いを均す役割として繊維Cを均一に分散させ、地合いを均一化することが重要である。
[実施例3~5]
実施例3~5は剛性を増加させるために不織布を熱硬化性樹脂に含侵加工した。なお、樹脂含侵加工は不織布を樹脂溶液(樹脂+水)に含侵し、プレスロールで過剰に付着した樹脂溶液を絞り、高温槽で乾燥した。付着量のコントロールは樹脂濃度を変えて行った。
実施例3~5は剛性を増加させるために不織布を熱硬化性樹脂に含侵加工した。なお、樹脂含侵加工は不織布を樹脂溶液(樹脂+水)に含侵し、プレスロールで過剰に付着した樹脂溶液を絞り、高温槽で乾燥した。付着量のコントロールは樹脂濃度を変えて行った。
樹脂付着量を最適化することで、薄膜でもプリーツ加工可能な剛性を達成し、低プリーツ間隔のプリーツフィルタへの加工性とフィルタ性能にも優れるものとなった。プリーツフィルタはプリーツ間隔を小さくすることで、濾過面積を増加することができ、濾材にかかる風速を減少させ、プリーツフィルタ全体の圧力損失を減少することができる。
[比較例4]
比較例4は剛性を増加させるために不織布にポリエステル系スパンボンド基材(目付110g/m2、厚み0.32mm)を貼合せ加工した。これにより、高い剛性は得られるが、厚みが0.6mmより大きくなり、低プリーツ間隔のプリーツフィルタへの加工ではプリーツ間距離が狭くなり、濾材が密着してしまい、圧損が増大するおそれがある。
比較例4は剛性を増加させるために不織布にポリエステル系スパンボンド基材(目付110g/m2、厚み0.32mm)を貼合せ加工した。これにより、高い剛性は得られるが、厚みが0.6mmより大きくなり、低プリーツ間隔のプリーツフィルタへの加工ではプリーツ間距離が狭くなり、濾材が密着してしまい、圧損が増大するおそれがある。
本発明によれば、高空隙構造を保持し、地合いの均一性に優れ、かつ薄膜でプリーツ加工性に優れる低圧損・高捕集性能をもつエアフィルタ用濾材が得られる。
Claims (6)
- 湿式不織布を含むエアフィルタ用濾材であって、前記湿式不織布が、繊維直径が100~1000nmのナノファイバーからなる繊維A、バインダー繊維B、および繊維直径が4~12μmの繊維Cを含むことを特徴とするエアフィルタ用濾材。
- 前記バインダー繊維Bの繊維直径が10~15μmの範囲内である、請求項1に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記記載の繊維A、繊維B、および繊維Cがポリエステル繊維からなる、請求項1または請求項2に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記湿式不織布に付着量1.0~8.0g/m2で樹脂が付与されてなる、請求項1~3のいずれかに記載のエアフィルタ用濾材。
- 目付けが50~120g/m2の範囲内である、請求項1~4のいずれかに記載のエアフィルタ用濾材。
- 厚みが0.2~0.6mmの範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載のエアフィルタ用濾材。
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JP2021000421A JP2022105839A (ja) | 2021-01-05 | 2021-01-05 | エアフィルタ用濾材 |
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- 2021-01-05 JP JP2021000421A patent/JP2022105839A/ja active Pending
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