JP2019199668A - マスク用濾材およびマスク - Google Patents

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三枝 神山
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【課題】エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるマスク用濾材およびマスクを提供する。【解決手段】マスク用濾材であって、繊維径1000nm以下のナノファイバーを含み、密度が0.25g/cm3以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるマスク用濾材およびマスクに関する。
近年、濾材シートをエレクトレット加工することにより捕集率を向上した、風邪や花粉などの対策用マスク(顔マスク)が広く知られている。エレクトレット加工とは、濾材を構成する繊維を帯電させることにより、静電気力により粒子を捕集し、捕集率を向上させるものである。しかしながら、捕集した粒子が濾材に堆積されるにつれて、構成繊維に帯電した電荷が中和されていき、静電気力が低下するという問題があった。さらには、たばこの煙に代表されるオイルミストに対しては、オイルミストが繊維表面を薄く被覆することで電荷の消失が促進され、静電気力が著しく低下するという問題があった。
その対策として、特許文献1には、フィルターを構成する繊維の表面張力を下げることで撥油性を与え、繊維表面でのミストの広がりを抑制することで電荷の消失を低減させることにより、初期捕集率を維持する方法が提案されている。具体的には、撥油性を高めるために樹脂内にパーフルオロ基を有した添加剤を混合する方法があげられているが、電荷の消失に伴う捕集効果の低下は無視できない。
また、特許文献2には、繊維径の小さいエレクトレット化繊維を混繊することにより、物理的な捕集効率を高める方法が提案されている。しかしながら、使用している繊維径がミクロンオーダーであるため、静電気力が完全に失われた状態では十分な捕集性能が得られていない。
特開2009−6313号公報 特開平10−46460号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるマスク用濾材およびマスクを提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、マスク用濾材の構成を巧みに工夫することにより所望のマスク用濾材およびマスクが得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「マスク用濾材であって、繊維径1000nm以下のナノファイバーを含み、密度が0.25g/cm以下であることを特徴とするマスク用濾材。」が提供される。
その際、前記ナノファイバーが、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、またはナイロン繊維からなることが好ましい。また、濾材が湿式不織布からなることが好ましい。また、イソプロピルアルコール処理後の0.3μm粒子捕集率が90%以上であることが好ましい。また、イソプロピルアルコール処理後の0.3μ粒子捕集率が処理前の0.9倍以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記のマスク用濾材を用いてなるマスクが提供される。かかるマスクにおいて、エレクトレット加工が施されてないことが好ましい。
本発明によれば、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるマスク用濾材およびマスクが提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明は、風邪や花粉などの対策用マスク(顔マスク)に用いられる濾材およびマスクに関する。以下、本発明のマスク用濾材について具体的に説明する。
本発明でいうナノファイバーは1000nm以下(好ましくは200〜800nm)の繊維径を有する。該繊維径はナノファイバーの単繊維径である。該繊維径が1000nmよりも大きいと捕集性能が低下するおそれがある。逆に、該繊維径が200nmよりも小さいと極細繊維の分散性が低下し捕集性能が低下するおそれがある。
前記の繊維径は、透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で単繊維断面写真を撮影し測定することができる。その際、測長機能を有するTEMでは、測長機能を活用して測定することができる。また、測長機能の無いTEMでは、撮った写真を拡大コピーして、縮尺を考慮した上で定規にて測定すればよい。
その際、単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、繊維径は、単繊維の横断面の外接円の直径を用いるものとする。
前記ナノファイバーにおいて繊維長が0.4〜1.5mmであることが好ましい。。該繊維長が0.4mmよりも小さいと工程性が低下するおそれがある。逆に該繊維長が1.5mmよりも大きいと分散性不良により凝集繊維塊となり捕集性能や強度が低下するおそれがある。また、繊維径Dに対する繊維長Lの比L/Dとしては200〜4000、より好ましくは800〜2500の範囲内であることが好ましい。
前記ナノファイバーの繊維種類としては特に限定されないが、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、脂肪族ポリアミド繊維などが例示される。なかでもポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することもある。)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
また、前記ポリエステル繊維は延伸糸、未延伸糸、半延伸糸いずれでもよい。また、伸度が60%未満でもよいし60%以上でもよい。なお、ポリエステル延伸糸は通常、伸度が60%未満であり、ポリエステル未延伸糸は通常、伸度が60%以上である。
前記ナノファイバーの製造方法は特に限定されないが、国際公開第2005/095686号パンフレットや国際公開第2008/130019号パンフレットに開示された方法が好ましい。すなわち、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に対して溶解し易いポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分とを有する複合繊維にアルカリ減量加工を施し、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーに対する溶解速度比が200以上、好ましくは300〜3000であると、島分離性が良好となり好ましい。
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。さらに具体例をあげれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが、アルカリ水溶液に対して溶解しやすく好ましい。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液などをいう。これ以外にも、海成分と、該海成分を溶解する溶液の組合せとしては、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶媒、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例としてあげることができる。
ポリエステル系ポリマーの中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じるおそれがある。また、共重合量が10重量%以上になると、溶融粘度が低下するおそれがある。
一方、島成分を形成する難溶解性ポリマーとしては、最終的にナノファイバーを形成するポリマーであり、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが好適な例としてあげられる。具体的には、機械的強度や耐熱性を要求される用途では、ポリエステル類では、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することもある。)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。また、ポリアミド類では、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が好ましい。一方、ポリオレフィン類は酸やアルカリ等に侵され難いことや、比較的低い融点のために極細繊維として取り出した後のバインダー成分として使える等の特徴があり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸などのビニルモノマーのエチレン共重合体等を好ましい例としてあげることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合率が20モル%以下のポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、あるいは、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が、高い融点による耐熱性や力学的特性を備えているので、ポリビニルアルコール/ポリアクリロニトリル混合紡糸繊維からなる極細フィブリル化繊維に比べ、耐熱性や強度を要求される用途へ適用でき好ましい。なお、島成分は丸断面に限らず、三角断面や扁平断面などの異型断面であってもよい。
前記の海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後のナノファイバーの物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士の接合を防止しやすい。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
次に島数は、100以上、より好ましくは500〜2000であることが好ましい。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分のナノファイバーへの転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなるおそれがある。
溶融紡糸に用いられる口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群(ピンレス)を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ未延伸糸(複屈折率Δnが0.05以下であることが好ましい。)を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200〜5000m/分であることが好ましい。200m/分以下では生産性が低下するおそれがある。また、5000m/分以上では紡糸安定性が低下するおそれがある。
得られた未延伸糸は、必要に応じてそのままカット工程あるいはその後の抽出工程(アルカリ減量加工)に供してもよいし、延伸工程や熱処理工程を経由して延伸糸とした後、カット工程あるいはその後の抽出工程(アルカリ減量加工)に供してもよい。その際、延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもよい。カット工程と抽出工程の順番は逆にしてもよい。
かかるカットは、未延伸糸または延伸糸をそのまま、または数十本〜数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッターなどでカットすることが好ましい。
前記の海島型複合繊維にアルカリ減量加工を施してナノファイバーとする際、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1〜5%であることが好ましく、さらには0.4〜3%であることが好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%を越えると繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr))×100
また、アルカリ減量加工の処理時間は5〜60分であることが好ましく、さらには10〜30分であることが好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分を越えると島成分までも減量されるおそれがある。
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2%〜10%であることが好ましい。2%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
アルカリ減量の方法としては、海島型複合繊維をアルカリ液に投入し、所定の条件、時間でアルカリ減量処理した後に一度、脱水工程を経てから、再度、水中に投入し、酢酸、シュウ酸などの有機酸を使用して中和、希釈を進め最終的に脱水する方法や、または、所定の時間アルカリ減量処理した後に、先に中和処理を施し、更に水を注入し希釈を進めその後脱水をする方法等があげられる。前者では、バッチ式に処理する為、少量での製造(加工)を行える事ができるものの、中和処理に時間を要するため少し生産性が悪い。後者は半連続生産が可能であるが、中和処理時に多くの酸系水溶液及び希釈のために多くの水を必要とするという問題点がある。処理設備は何ら制限されるものではないが、脱水時に繊維脱落を防止する観点から、特許第3678511号公報に開示されているような開口率(単位面積当たりの開口部分の面積比率)が10〜50%であるメッシュ状物(例えば非アルカリ加水分解性袋など)を使用することが好ましい。該開口率が10%未満では水分の抜けが極めて悪く、50%を超えると、繊維の脱落が発生するおそれがある。
さらには、アルカリ減量加工の後、繊維の分散性を高めるために分散剤(例えば、高松油脂(株)製の型式YM−81)を繊維表面に、繊維重量に対して0.1〜5.0重量%付着させることが好ましい。
本発明のマスク用濾材は湿式不織布からなることが好ましい。湿式不織布は、スパンボンド法やメルトブロー法、エレクトロスピニング法等により作製された不織布と比較して、目付け、繊維径、通気度などのフィルター性能に関わる性質のばらつきが小さく、分離精度に優れることから好ましい。
ここで、かかる湿式不織布はナノファイバーだけでなくバインダー繊維も含まれることが好ましい。
バインダー繊維は熱接着性繊維である。湿式不織布にバインダー繊維が含まれることにより、不織布の強度やネットワーク構造および収縮による嵩向上などの効果が得られる。バインダー繊維としては、繊維径が3μm以上の、未延伸糸または複合繊維が好ましい。バインダー繊維の単繊維繊度は、0.1〜3.3dtex、より好ましくは0.2〜1.7dtexであることが好ましい。バインダー繊維の繊維長は、3〜10mmであることが好ましい。
バインダー繊維のうち、未延伸繊維としては、紡糸速度が600〜1500m/minで紡糸された未延伸ポリエステル繊維が好ましい。ポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、好ましくは生産性、水への分散性などの理由から、ポリエチレンテレフタレートやそれを主成分とする共重合ポリエステルが好ましい。
また、バインダー繊維のうち、複合繊維としては、抄紙時のドライヤー温度により融着接着効果を発現するポリマー成分、たとえば非結晶性共重合ポリエステルが鞘部に配置され、これらのポリマーより融点が20℃以上高い他のポリマーが芯部に配置された芯鞘型複合繊維が好ましい。また、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維などの形態も使用できる。
ここで、上記の非結晶性共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分として用いることがコスト面からも好ましい。
さらに、ナノファイバーの分散を助けるとともに、空隙率の向上にも寄与する非バインダー繊維でありナノファイバーよりも太繊度の繊維が湿式不織布からなる層に含まれていてもよい。ナノファイバーよりも太繊度の繊維としては、繊維径が均一で分散性のよい前記のようなポリエステル繊維が好ましい。また、少量および目的に応じて、種々の紙用繊維素材が使用可能であり、たとえば、木材パルプ、天然パルプ、アラミドやポリエチレンを主成分とする合成パルプ、ナイロン、アクリル、ビニロン、レーヨン等の成分を含む合成繊維または半合成繊維を混合、添加してもよい。
前記の湿式不織布は、前記の繊維を用いて通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機などを用いて抄紙した後、バインダー繊維を熱接着することにより得られる。
かくして得られたマスク用濾材において、密度が0.25g/cm以下(好ましくは0.10〜0.20g/cm)であることが肝要である。かかる密度が0.25g/cmよりも大きいと、圧損(圧力損失)が大きくなるおそれがある。逆に、かかる密度が0.10よりも小さいと補修率が低下するおそれがある。
本発明のマスク用濾材は前記の構成を有するので、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できる。
ここで、イソプロピルアルコール処理後の0.3μm粒子捕集率が90%以上であることが好ましい。また、イソプロピルアルコール処理後の0.3μ粒子捕集率が処理前の0.9倍以上であることが好ましい。
本発明のマスクは前記のマスク用濾材を用いてなるマスクである。かかるマスクにおいて、前記濾材を単体でも良いし、各種スパンボンドやサーマルボンドからなる不織布基材と重ねて、または貼り合せて使用することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた物性の測定方法は下記の通りである。
(1)繊維直径・繊度
繊維断面を鋭利な刃物でカットして、その断面を2000倍のSEMで観察する。100個の平均を繊維直径とする。また繊度は、1万メートルあたりの重量dtex:デシテックス表示とする。
(2)目付け
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付を測定した。
(3)厚さ
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の測定方法)に基づいて厚みを測定した。測定荷重は75g/cmにて、N=5で測定し、平均値を求めた。
(4)密度、空隙率
上記目付けと厚さより計算した。
空隙率(%)=100−((目付け)/(厚さ)/繊維密度×100)
(5)圧損および0.3μm粒子捕集率
風速5.1cm/secで空気を通過させた際の圧力損失(Pa)および0.3μm粒子の捕集率(%)を測定した。
また、デシケータの中にイソプロピルアルコール溶液とサンプルを入れて密閉し、24時間暴露させることにより、イソプロピルアルコール処理を行った。
イソプロピルアルコール処理後のサンプルについても、0.3μm粒子捕集率を測定した。
(6)マスク着用評価
濾材をマスクに加工し、着用時に息苦しさを感じた場合は×、息苦しさを感じなかった場合は○で評価を行った。
[実施例1]
島成分に285℃での溶融粘度が120Pa・secのポリエチレンテレフタレート、海成分に285℃での溶融粘度が135Pa・secである平均分子量4000のポリエチレングリコールを4重量%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートを使用し、海:島=30:70の重量比率で島数=836の口金を用いて紡糸し、紡糸速度1500m/minで引き取った。アルカリ減量速度差は1000倍であった。これを延伸後、ギロチンカッターで0.5mmにカットして、ナノファイバー用海島型複合繊維を得た。これを4%NaOH水溶液で75℃にて30%減量し、本繊維をナノファイバーとした(繊維径400nm、繊維長0.4mm、アスペクト比1000、丸断面)。
次いで、該ナノファイバーと、繊度1.7dtex×繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維と、熱接着繊維として芯鞘複合型熱接着性繊維で、繊度1.7dtex×繊維長5mm(芯ポリマーと鞘ポリマーは、それぞれ融点256℃のポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分とする非晶性共重合ポリエステルを50/50wt%の割合で断面形成したもの)をこの順で10:60:30の割合で配合し、分散剤・消泡剤を適量添加して、分散剤・消泡剤を適量添加して、分散させたスラリーを円網で湿式抄紙し、ニップローラーでの脱水後、巻き取った。引き続いて、ベルト式乾燥機に巻出しながら導入し、加熱収縮によりバインダー間のネットワークを形成して構造固定したのち、一定の張力にて巻き取った。乾燥後の目付けは60g/mであった。評価結果を表1に示す。
得られた濾材を用いて顔マスクを得たところ、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるものであった。
[実施例2]
実施例1において、該ナノファイバーと、繊度1.7dtex×繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維と、芯鞘複合型熱接着性繊維で、繊度1.7dtex×繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維の割合について円網側を0:70:30(目付30g/m)、短網側を10:60:30(目付30g/m)とした以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、ナノファイバーの繊維を1.2μmとした以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、該ナノファイバーと、繊度1.7dtex×繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維と、芯鞘複合型熱接着性繊維で、繊度1.7dtex×繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維の割合を15:55:30とした以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
市販のマスクを分解し、メルトブロー不織布濾材を取り出し、評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、ニップローラーの圧力を調整し、密度が0.26g/cmとなるよう厚みを調整した以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
Figure 2019199668
本発明によれば、エレクトレット加工をしなくても、高捕集率および低圧損を両立できるマスク用濾材およびマスクが提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (7)

  1. マスク用濾材であって、繊維径1000nm以下のナノファイバーを含み、密度が0.25g/cm以下であることを特徴とするマスク用濾材。
  2. 前記ナノファイバーが、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、またはナイロン繊維からなる、請求項1に記載のマスク用濾材。
  3. 濾材が湿式不織布からなる、請求項1または請求項2に記載のマスク用濾材。
  4. イソプロピルアルコール処理後の0.3μm粒子捕集率が90%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のマスク用濾材。
  5. イソプロピルアルコール処理後の0.3μ粒子捕集率が処理前の0.9倍以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のマスク用濾材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のマスク用濾材を用いてなるマスク。
  7. エレクトレット加工が施されてない、請求項6に記載のマスク。
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