JP2003253555A - 極細繊維束およびその製造方法 - Google Patents

極細繊維束およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極細繊維の含有率の高い極細繊維束及び極細
短繊維、並びに空隙サイズ(ポアサイズ)が小さく、厚
みが小さく、吸液量の高い不織布の提供。 【解決手段】 溶剤溶解性又は薬液分解性の異なる複数
のポリマーからなる極細繊維形成性繊維よりなる繊維束
を、溶剤又は薬液で処理して、極細繊維形成性繊維中の
溶剤溶解性又は薬液分解性の大きなポリマーを溶解除去
又は分解除去するか、或いは極細繊維形成性繊維を構成
している複数のポリマー間を分割剥離させて得た、極細
繊維の含有率が95〜100%の極細繊維束、それから
なる極細短繊維、該極細短繊維よりなる湿式不織布であ
り、前記極細繊維束は、極細繊維形成性繊維よりなる前
記繊維束を繊維密度を0.01〜0.1g/cm3にし
た状態で溶剤又は薬液で極細繊維化して製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極細繊維束および
その製造方法、該極細繊維束よりなる極細短繊維並びに
該極細短繊維を用いてなる湿式不織布に関する。より詳
細には、本発明は、極細繊維の含有率の極めて高い極細
繊維束およびその製造方法、該極細繊維束をカットして
得られる極細短繊維並びに該極細短繊維を用いてなる湿
式不織布に関するものである。極細繊維の含有率の極め
て高い本発明の極細繊維束をカットして得られる本発明
の極細短繊維を用いることにより、空隙サイズ(ポアサ
イズ)が小さく、厚みが小さく、しかも吸液量および保
液量の高い湿式不織布を製造することができ、該湿式不
織布は、電池やキャパシターのセパレーターなどとして
極めて有用である。
【0002】
【従来の技術】極細繊維よりなる不織布は、空隙のサイ
ズ(ポアサイズ)が小さく、また柔軟で、厚さを薄くで
きることから、人工皮革、フィルター、クリーニング用
布帛、その他の種々の用途に用いられており、その一つ
として、電池やキャパシターのセパレーターとしての用
途が挙げられる。電池やキャパシターなどのセパレータ
ー用の不織布に対しては、電池やキャパシターの性能の
向上の点から、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さ
く且つ厚さの薄い不織布が強く求められている。特に、
電池用セパレーターでは、ポアサイズが小さくて活物質
や導電性物質の通過を阻止し得る性能に優れること、薄
くて電池内で占める容積が小さくて済むこと、アルカリ
液などの電解液の吸収・保持能に優れることが、電池性
能の向上の点から強く求められている。しかしながら、
従来の極細繊維製の不織布は、その空隙サイズが十分に
小さいとは言えず、かかる点から空隙サイズが極めて小
さく、且つ厚さの薄い不織布の開発が急務となってい
る。
【0003】極細繊維製の不織布の製法としては、従
来、溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまたは薬液分解
性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性の海
島型、多層積層型、または放射状配列型の複合紡糸繊維
または混合紡糸繊維を短繊維状にし、その短繊維からカ
ードウエブを形成し、そのカードウエブに熱エンボスや
水流交絡を施して不織布を作製した後、その不織布を溶
剤や薬液で処理して、不織布を構成している複合紡糸繊
維または混合紡糸繊維中の溶剤溶解性の大きなポリマー
または薬液分解性の大きなポリマーを溶解除去または分
解除去して極細繊維化したり、或いは複合紡糸繊維また
は混合紡糸繊維中の複数のポリマー間に分割剥離を生じ
させて極細繊維化する方法が広く採用されている。
【0004】しかしながら、上記した従来の方法による
場合は、複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の易溶解性
ポリマーまたは易分解性ポリマーの溶解除去または分解
除去が不完全であったり、複合紡糸繊維または混合紡糸
繊維における複数のポリマー間の分割剥離が不完全にな
り、極細繊維化が十分に行われないことが多い。その結
果、溶剤や薬剤による極細繊維化処理後の不織布では、
空隙の大きさが不揃いであったり、空隙のサイズが十分
に小さくならないという欠点がある。しかも、不織布を
構成する複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の易溶解性
ポリマーまたは易分解性ポリマーを溶解除去または分解
除去して極細繊維化するそのような不織布では、溶剤ま
たは薬液による処理を施す不織布の密度を予め高くして
空隙のサイズを小さくしておいても、溶剤または薬液に
よる処理によって易溶解性ポリマーまたは易分解性ポリ
マーが除去されることにより、空隙のサイズが大きくな
り、空隙サイズの小さい極細繊維製の不織布を得ること
が一層困難である。
【0005】極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸
繊維を用いて不織布を製造した後に溶剤や薬液で処理し
て極細繊維化する上記した方法に代えて、極細繊維を予
め製造しておき、その極細繊維を用いて極細繊維製の不
織布を直接製造する方法がある。そして、そのような方
法としては、紡糸によって極細繊維を直接製造した後、
紡糸して得られた極細繊維を用いて不織布を製造する方
法、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を不
織布にする前に予め溶剤や薬液で処理して極細繊維化
し、それにより得られた極細繊維を用いて不織布を製造
する方法が挙げられる。しかしながら、極細繊維を直接
紡糸する前者の方法による場合は、例えば繊維径5μm
以下というような繊度の極めて小さい極細繊維を紡糸工
程によって長時間安定して製造することは技術的に容易
ではなく、実用性に乏しい。また、極細繊維形成性の複
合紡糸繊維や混合紡糸繊維を不織布にする前に予め溶剤
や薬液で処理して極細繊維化する後者の方法では、極細
繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を完全に且つ
効率よく極細繊維化するのは従来困難であった。かかる
点から、実用上は、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混
合紡糸繊維を用いて不織布を製造した後に、溶剤や薬液
で処理して不織布を構成する複合紡糸繊維や混合紡糸繊
維を極細繊維化する方法を採用せざるを得ないのが現状
であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、空隙
サイズ(ポアサイズ)が極めて小さく、厚さが薄く、し
かも吸液量や保液量が大きくて、電池やキャパシターの
セパレーターなどとして有効に用い得る不織布、該不織
布の製造に有用な極細短繊維を提供することである。そ
して、本発明の目的は、前記した極細短繊維を得るため
の、極細繊維の含有率の高い極細繊維束およびその製造
方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、溶剤溶解性
が異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性繊維ま
たは薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊
維形成性繊維よりなる繊維束を、所定の繊維密度にした
状態で、溶剤または薬液で処理して、極細繊維形成性繊
維中の溶剤溶解性の大きなポリマーを溶解除去するかま
たは薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或
いは極細繊維形成性繊維を構成している複数のポリマー
間に分割剥離を生じさせると、極細繊維化がほぼ完全に
行われて、極細繊維の含有率が95〜100%と極めて
高い、従来にない極細繊維束が得られることを見出し
た。そして、本発明者らは、上記した極細繊維束の製造
に当たっては、極細繊維形成性繊維よりなる繊維束を、
前記した繊維密度になるようにして枠体内外間での通液
が可能な枠体に巻き付けて溶剤または薬液で処理する
か、或いは前記した繊維密度になるように維持しながら
溶剤または薬液中を連続的に移動させて処理することに
より、極細繊維の含有率の高い前記極細繊維束を円滑に
製造できることを見出した。
【0008】また、本発明者らは、極細繊維束の製造に
用いる極細繊維形成性繊維としては、溶剤溶解性が異な
るかまたは薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる
複合紡糸繊維または混合紡糸繊維のいずれも使用できる
が、そのうちでも繊維の長さ方向に各ポリマー成分が連
続した状態で複合されている複合紡糸繊維、特に海島
型、多層積層型または放射状貼合わせ型の複合紡糸繊維
が好ましく用いられることを見出した。さらに、本発明
者らは、極細繊維の含有率の極めて高い前記した極細繊
維束を所定の長さにカットして極細短繊維をつくり、そ
の極細短繊維を用いて湿式抄造すると、空隙サイズが極
めて小さく、厚さが薄く、しかも吸液量および保液量が
大きく、電池やキャパシターのセパレーターなどとして
極めて有用な高機能の湿式不織布が得られることを見出
し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、 (1) 溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまたは薬液
分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性
繊維よりなる繊維束を、溶剤または薬液で処理して、極
細繊維形成性繊維中の溶剤溶解性の大きなポリマーを溶
解除去するかまたは薬液分解性の大きなポリマーを分解
除去するか、或いは極細繊維形成性繊維を構成している
複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることにより得
られた極細繊維束であって、極細繊維束を構成する全繊
維の本数に対する極細繊維の本数が95〜100%であ
ることを特徴とする極細繊維束である。
【0010】そして、本発明は、 (2) 極細繊維束を構成している極細繊維の単繊維繊
度が0.4dtex以下である前記(1)の極細繊維
束; (3) 極細繊維形成性繊維が、溶剤溶解性の異なる複
数のポリマーまたは薬液分解性の異なる複数のポリマー
からなる極細繊維形成性の複合紡糸繊維である前記
(1)または(2)の極細繊維束;および、 (4) 極細繊維形成性繊維が; ・溶剤溶解性の大きいポリマーを海成分とし溶剤溶解性
の小さいポリマーを島成分とするか、または薬液分解性
の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリ
マーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面
形状を有する複合紡糸繊維; ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層
以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有
する複合紡糸繊維;或いは、 ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分
割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸
繊維;である前記(3)の極細繊維束;である。
【0011】さらに、本発明は、 (5) 溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまたは薬液
分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性
繊維よりなる繊維束を、繊維束の繊維密度を0.01〜
0.1g/cm3にした状態で、溶剤または薬液で処理
して、極細繊維形成性繊維中の溶剤溶解性の大きなポリ
マーを溶解除去するかまたは薬液分解性の大きなポリマ
ーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性繊維を構成
している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせること
を特徴とする極細繊維束の製造方法である。
【0012】そして、本発明は、 (6) 極細繊維形成性繊維が、溶剤溶解性の異なる複
数のポリマーまたは薬液分解性の異なる複数のポリマー
からなる極細繊維形成性の複合紡糸繊維である前記
(5)の極細繊維束の製造方法; (7) 極細繊維形成性繊維が; ・溶剤溶解性の大きいポリマーを海成分とし溶剤溶解性
の小さいポリマーを島成分とするか、または薬液分解性
の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリ
マーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面
形状を有する複合紡糸繊維; ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層
以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有
する複合紡糸繊維;或いは、 ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分
割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸
繊維;である前記(6)の極細繊維束の製造方法; (8) 極細繊維形成性よりなる繊維束を、繊維密度が
0.01〜0.1g/cm3となるように、枠体内外間
の通液が可能な枠体に巻き付けた状態で、溶剤または薬
液で処理する前記(5)〜(7)のいずれかの極細繊維
束の製造方法;および、 (9) 極細繊維形成性繊維よりなる繊維束を、繊維密
度が0.01〜0.1g/cm3となる状態にして、溶
剤または薬液中を連続的に移動させながら溶剤また薬液
で処理する前記(5)〜(7)のいずれかの極細繊維束
の製造方法;である。
【0013】さらに、本発明は、 (10) 前記(1)〜(4)のいずれかの極細繊維束
を所定の繊維長にカットしてなる極細短繊維;および、 (11) 極細短繊維の繊維長L(mm)と極細繊維の
繊維直径D(mm)の比(L/D)が100〜5,00
0の範囲にある前記(10)の極細短繊維維;である。
【0014】そして、本発明は、 (12) 前記(10)または(11)の極細短繊維を
用いて形成した湿式不織布; (13) 湿式不織布の厚さ方向断面における1mm2
当たりの繊維総数が5,000本以上であり且つ極細短
繊維数と非極細短繊維数の比率が95/5〜100/0
である前記(12)の湿式不織布;および、 (14) 電池またはキャパシターのセパレーター用で
ある前記した(12)または(13)の湿式不織布;で
ある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明において、溶剤または薬液による極細繊維
化処理を施す繊維束は、溶剤に対する溶解性の異なる複
数(2種類以上)のポリマー、または薬液による分解性
の異なる複数(2種類以上)のポリマーから構成されて
いる極細繊維形成性繊維が多数本集合した繊維束であ
る。極細繊維形成性繊維としては、溶剤溶解性の異なる
複数のポリマー、または薬液分解性の異なる複数のポリ
マーから構成されている複合紡糸繊維および混合紡糸繊
維のいずれもが使用でき、そのうちでも複合紡糸繊維が
好ましく用いられる。複合紡糸繊維では、繊維を構成し
ている2種類以上のポリマーが繊維の長さ方向に途中で
途切れずに連続した状態で複合されており、そのため繊
維の長さ方向に連続した状態で極細繊維化が行われるた
め、極細繊維化の途中または極細繊維化後に、極細繊維
化された繊維が極細繊維束から脱落するなどのトラブル
が生じず、目的とする極細繊維束を円滑に得ることがで
きる。極細繊維形成性繊維を構成する複数のポリマー
は、溶剤溶解性または薬液分解性が異なるだけではな
く、互いに非相溶性であることが好ましく、それによっ
て極細繊維化が一層円滑に行われる。
【0016】溶剤溶解性の異なる複数のポリマーからな
る極細繊維形成性繊維よりなる繊維束では、繊維束を溶
剤で処理することにより、溶剤に対する溶解性の大きな
1種または2種以上のポリマーが溶解除去され一方溶剤
に対する溶解性の小さな1種または2種以上のポリマー
が極細繊維として繊維束中に残留することによって極細
繊維化するか、或いは溶剤に対する溶解性の大きなポリ
マーの一部が溶解することによって溶剤溶解性の大きな
ポリマーと溶剤溶解性の小さなポリマーとの間(界面)
に分割剥離が生じて極細繊維化して極細繊維束が形成さ
れる。また、薬液分解性の異なる複数のポリマーからな
る極細繊維形成性繊維よりなる繊維束では、繊維束を薬
液で処理することにより、薬液による分解性の大きな1
種または2種以上のポリマーが分解除去され一方薬液に
よる分解性の小さな1種または2種以上のポリマーが極
細繊維として繊維束中に残留することによって極細繊維
化するか、或いは薬液分解性の大きなポリマーの一部が
分解することによって薬液分解性の大きなポリマーと薬
液分解性の小さなポリマーとの間(界面)に分割剥離が
生じて極細繊維化して極細繊維束が形成される。
【0017】極細繊維形成性繊維における溶剤溶解性ま
たは薬液分解性の異なる複数のポリマーの組み合わせ
は、最終的な用途、各用途で要求される性能、極細繊維
化のために用いる溶剤や薬液の種類、極細繊維形成性繊
維の製造(紡糸)の容易性などを考慮して決めることが
でき特に限定されるものではなく、ポリエステル系ポリ
マー、ポリアミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマ
ー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリスチレン系
ポリマーなどの従来から繊維の製造に用いられるいるポ
リマーのうちの適当なものを選択して組み合わせること
ができる。溶剤に対して易溶解性であるかまたは薬液に
より易分解性であるポリマーの具体例としては、水溶性
で且つ熱可塑性を有するポリビニルアルコールやエチレ
ン変性ビニルアルコール系ポリマー、アルカリ水溶液に
より易分解性であるポリエチレンテレフタレート、ポリ
アルキレングリコール、イソフタル酸や5−ナトリウム
スルホイソフタル酸などの第3成分を共重合した変性エ
チレンテレフタレート系ポリエステルポリマー、炭化水
素系溶剤に易溶解性のポリスチレンポリマーなどを挙げ
ることができる。一方、溶剤易溶解性または薬液易分解
性の上記で例示したポリマーと組み合わせて用いられる
溶剤難溶解性または薬液難分解性のポリマーの具体例と
しては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレ
フィン;エチレン−ビニルアルコール系共重合体;オレ
フィン系単量体よりなる重合体ブロックと(メタ)アクリ
ル酸系単量体よりなる重合体ブロックを有するブロック
共重合体(BLP);ナイロン6、ナイロン66、芳香
族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとから合成
される半芳香族ポリアミドなどのポリアミド;ポリエチ
レンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなど
のポリエステルなどを挙げることができる。
【0018】より具体的には、極細繊維形成性繊維にお
ける複数のポリマーの組み合わせとしては、例えば、ア
ルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとアルカリ
水溶液により難分解性のポリオレフィンとの組み合わ
せ;アルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとア
ルカリ水溶液により難分解性のエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体の組み合わせ;アルカリ水溶液により易分
解性のポリエステルとアルカリ水溶液により難分解性の
オレフィン系重合体ブロックと(メタ)アクリル酸系重
合体ブロックを有するブロック共重合体(BLP)の組
み合わせ;アルカリ水溶液により易分解性のポリエステ
ルとアルカリ水溶液により難分解性のポリアミドの組み
合わせ;酸水溶液により易分解性のポリアミドと酸水溶
液により難分解性のポリエステルの組み合わせ;炭化水
素系溶剤に易溶解性のポリオレフィン(ポリプロピレ
ン、ポリエチレン、ポリブチレンなど)と炭化水素系溶
剤に難溶解性のポリエステルの組み合わせ;炭化水素系
溶剤に易溶解性のポリオレフィン(ポリプロピレン、ポ
リエチレン、ポリブチレンなど)と炭化水素系溶剤に難
溶解性のポリアミドの組み合わせ;炭化水素系溶剤に易
溶解性のポリスチレンと炭化水素系溶剤に難溶解性のポ
リエステルの組み合わせ;炭化水素系溶剤に易溶解性の
ポリスチレンと炭化水素系溶剤に難溶解性のポリアミド
の組み合わせ;などを挙げることができる。
【0019】極細繊維形成性繊維、特に極細繊維形成性
の複合紡糸繊維および混合紡糸繊維では、溶剤溶解性ま
たは薬液分解性の異なる複数のポリマーは、極細繊維化
され易い複合形態または混合形態を有している必要があ
る。そのため、極細繊維形成性の複合紡糸繊維または混
合紡糸繊維としては、(a) 溶剤溶解性または薬液分
解性の大きなポリマーを海成分とし溶剤溶解性または薬
液分解性の小さなポリマーを島成分とする海島型の横断
面形状を有する複合紡糸繊維または混合紡糸繊維;
(b)溶剤溶解性または薬液分解性の異なる複数(2種
類以上)のポリマーが交互に積層状態で貼合わさった多
層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維または混合
紡糸繊維;或いは、(c)溶剤溶解性または薬液分解性
の異なる複数(2種類以上)のポリマーが交互に放射状
に配置された横断面形状を有する複合紡糸繊維または混
合紡糸繊維;が好ましく用いられ、特に前記(a)〜
(c)の複合紡糸繊維がより好ましく用いられる。前記
(a)のタイプの複合紡糸繊維または混合紡糸繊維で
は、島の数は10個以上であることが、また前記(b)
および(c)のタイプの複合紡糸繊維または混合紡糸繊
維では、積層数または放射状の貼合せ数が10以上(分
割数が10以上)であることが、溶剤や薬液によって処
理した時に形成される極細繊維の繊度を0.4dtex
以下にすることができ、それによって最終的に製造され
る湿式不織布における空隙サイズをより小さくできるこ
とから好ましい。
【0020】極細繊維形成性繊維の単繊維繊度は特に制
限されないが、一般的には、1〜10dtex程度、特
に2〜6dtex程度であることが、溶剤または薬液に
よる極細繊維化が円滑に行われ、単繊維繊度が0.4d
tex以下、より好ましくは0.2dtex以下の極細
繊維よりなる極細繊維束が形成され易くなり、しかも溶
剤または薬液処理前の整トウ性も良好であることから好
ましい。特に、溶剤または薬液で処理したときに、単繊
維繊度が0.4dtex以下、特に0.2dtex以下
の極細繊維になるように、極細繊維形成性繊維の単繊維
繊度および複合形態(例えば海島型の複合紡糸繊維にお
ける島の数、多層積層型や放射状貼合せ型の複合紡糸繊
維における積層数又は貼合せ数など)を選択することが
好ましい。
【0021】上記した極細繊維形成性繊維よりなる繊維
束を溶剤または薬液で処理して極細繊維束を製造する。
溶剤または薬液による処理を施す前の繊維束では、繊維
束を形成する極細繊維形成性繊維の本数および繊維束全
体の太さは、極細繊維形成性繊維を構成するポリマーの
種類、極細繊維形成性繊維の単繊維繊度などに応じて調
整できるが、一般的には、繊維束は5万〜40万本、特
に10万〜25万本程度の極細繊維形成性繊維から形成
されていることが整トウ性の点から好ましく、または繊
維束の太さは20万〜200万dtex、特に40万〜
100万dtexであることが、極細繊維化が円滑に行
われる点、極細繊維化時の取り扱い性に優れる点から好
ましい。
【0022】本発明では、極細繊維形成性繊維よりなる
繊維束を溶剤または薬液で処理して極細繊維束を製造す
るに当たって、極細繊維形成性繊維よりなる繊維束を、
繊維密度が0.01〜0.1g/cm3の範囲内にある
状態にし、その状態で溶剤または薬液で処理して、極細
繊維形成性繊維中の溶剤溶解性の大きなポリマーを溶解
除去するか、薬液分解性の大きなポリマーを分解除去す
るか、或いは極細繊維形成性繊維を構成している複数の
ポリマー間に分割剥離を生じさせることが必要である。
溶剤または薬液で処理する際に、繊維束の繊維密度が
0.01g/cm3よりも小さいと、処理される繊維束
の形状が不安定になり、極細繊維化が均一に行われなく
なる。一方、繊維束の繊維密度が0.1g/cm3より
も大きいと、繊維束内への溶剤または薬液の浸透が悪く
なり、極細繊維化が不完全になり、極細繊維束における
極細繊維の含有率が低下する。溶剤または薬液による極
細繊維化処理は、繊維束の繊維密度を0.02〜0.0
9g/cm3の状態にして行うことが好ましい。
【0023】ここで、本明細書でいう、溶剤または薬液
による極細繊維化処理を行う際の繊維束の繊維密度と
は、繊維束を溶剤または薬液で処理するために所定の形
態にしたときに、該所定の形態にされた繊維束の体積を
V(cm3)とし、その体積部分が有する質量W(g)
を前記体積Vで除した値[すなわち式:W/V(g/c
3)により求められる値]をいう。また、本発明にお
ける「繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3
にした状態」とは、溶剤または薬液による処理を施す直
前での繊維束の繊維密度が0.01〜0.1g/cm3
の状態にあることを意味する。溶剤または薬液による極
細繊維化処理の途中および処理後には、極細繊維形成性
繊維中の易溶解性ポリマーまたは易分解性ポリマーの一
部または全部が溶解除去または分解除去されるため、繊
維束の繊維密度は処理を施す直前よりも当然低くなって
おり、したがって前記0.01〜0.1g/cm3より
も低くなっていても構わない。
【0024】繊維束の極細繊維化処理は、繊維束の繊維
密度を0.01〜0.1g/cm3にした状態で溶剤ま
たは薬液を用いて行うのであればいずれの方法で行って
もよいが、繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/c
3の状態にして、溶剤または薬液中に繊維束を浸漬し
て処理を行うことが好ましい。繊維束の溶剤または薬液
による極細繊維化処理は、バッチ式で行ってもよいし、
連続式で行ってもよいし、またはバッチ式と連続式を併
用して行ってもよい。いずれの場合も、極細繊維化処理
時に繊維束が溶剤または薬液と十分に接触するようにし
て処理を行うことが、極細繊維化を均一に且つ効率よく
行うことができる点から好ましい。
【0025】極細繊維形成性繊維よりなる繊維束をバッ
チ式で極細繊維化処理する方法としては、例えば、枠体
の内外間の通液が可能な枠体に、繊維束を、繊維密度が
0.01〜0.1g/cm3になるようにして巻き付
け、それを枠体ごと溶剤または薬液中に浸漬して、極細
繊維形成性繊維を構成している易溶解性または易分解性
ポリマーを溶解または分解させる方法を挙げることがで
きる。何ら限定されるものではないが、そのような方法
の具体例としては、例えば、図1および図2に示すよう
な方法を挙げることができる。
【0026】図1に示す方法では、枠体1は壁面がな
く、四隅と上下に配置した棒状の枠材のみから形成され
ているために、枠体1の内外間の通液が自在に行われ、
枠体1に巻き付けた繊維束2は、処理浴3内の溶剤また
は薬液4と十分に接触することができ、それによって極
細繊維化が均一に且つ効率良く行われる。この図1の方
法では、極細繊維化処理を施す際の繊維束2の繊維密度
は、次のようにして求められる。すなわち、図1におい
て、枠体1の外側の隣り合う2つの辺の寸法をそれぞれ
1(cm)およびB1(cm)とし、枠体1に繊維束2
を巻き付けた後の外側の隣り合う2つ辺の寸法をそれぞ
れA2(cm)およびB2(cm)として、枠体1への繊
維束2の巻き付け幅(巻き付け高さ)をC(cm)と
し、枠体1に巻き付けられた繊維束2の質量をW(g)
とすると、溶剤または薬液を用いて極細繊維化処理され
る直前の繊維束2の繊維密度(d)は、下記の数式
(i)から求められる。
【0027】
【数1】 繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (i) 但し、V(cm3)=(A2×B2−A1×B1)×C
【0028】図1の方法では、上記の数式(i)によっ
て求められる繊維密度(d)が0.01〜0.1g/c
3の範囲になるように調整しながら繊維束2を枠体1
に巻き付け、そのようにして巻き付けた繊維束2を枠体
1ごと溶剤または薬液中に浸漬して極細繊維化処理を行
う。繊維束2を枠体1に巻き付ける際の締め付け度合
い、巻き付けられた繊維束2の隣り合う繊維束2の間隔
(接触状態)、繊維束2の太さ、巻き付ける前の繊維束
2自体の密度などを調整することによって、極細繊維化
処理を行う際の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3
の範囲にすることができる。
【0029】また、図2に示す方法では、枠体1は内外
間の通液が可能な柵状の円筒体から形成されているため
に、図1に示す方法と同様に、筒状の枠体1の内外間の
通液が自在に行われ、筒状の枠体1に巻き付けた繊維束
2は、処理浴3内の溶剤または薬液4と十分に接触しな
がら、極細繊維化が均一に且つ効率良く行われる。この
図2の方法では、極細繊維化処理を施す際の繊維束2の
繊維密度は、次のようにして求められる。すなわち、図
2において、枠体1の外径をE1(cm)とし、枠体1
に繊維束2を巻き付けた後の外径をE2(cm)とし
て、枠体1への繊維束2の巻き付け幅(巻き付け高さ)
をF(cm)とし、枠体1に巻き付けられた繊維束2の
質量をW(g)とすると、溶剤または薬液を用いて極細
繊維化処理される直前の繊維束2の繊維密度(d)は、
下記の数式(ii)から求められる。
【0030】
【数2】 繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (ii) 但し、V(cm3)={π(E2/2)2−π(E1/2)2}×F
【0031】図2の方法による場合も、上記の数式(i
i)によって求められる繊維密度(d)が0.01〜0
1g/cm3の範囲になるように調整しながら繊維束2
を枠体1に巻き付け、それを枠体1ごと溶剤または薬液
中に浸漬して極細繊維化を行う。繊維束2を枠体1に巻
き付ける際の締め付け度合い、巻き付けられた繊維束2
の隣り合う繊維束2の間隔(接触度合い)、繊維束2の
太さ、巻き付ける前の繊維束2自体の密度などを調整す
ることによって、極細繊維化処理を行う際の繊維密度を
0.01〜0.1g/cm3の範囲にすることができ
る。
【0032】繊維束を巻き付ける枠体は、図1および図
2に示すものに何ら限定されず、極細繊維化処理時に繊
維束を構成している極細繊維形成性繊維が溶剤または薬
液に十分に且つ均一に接触し得る構造の枠体であればい
ずれでもよい。枠体に繊維束を巻き付けて極細繊維化処
理を行う際に、必要に応じて、繊維束を巻き付けた枠体
を溶剤または薬液中で上下や左右などに動かしながら処
理を行うと、溶剤または薬液と極細繊維形成性繊維の接
触がより良好になり、極細繊維化を促進することができ
る。また、繊維束を枠体に巻き付ける上記した方法に代
えて、例えば、繊維束を横に複数並列させ、それを網状
の通液性シートで上下からサンドイッチ状に挟んで、溶
剤または薬液中に浸漬して極細繊維化処理する方法など
を採用して行ってもよい。
【0033】また、極細繊維形成性繊維よりなる繊維束
を連続式で極細繊維化する方法としては、例えば、図3
に示す方法を挙げることができる。図3において(a)
は、処理浴3を縦方向からみた断面図であり、(b)は
処理浴3を上方からみた平面図であり、(c)は処理浴
3に入る直前の繊維が横方向に並んだ繊維束2の一部
[図3の(b)において点線で包囲した部分]を示す図
である。図3において5a,5b,5cは移送用ローラ
ーを示す。図3に示す方法では、繊維束2を構成する極
細繊維形成性繊維が横に並列した状態で、処理浴3に入
れた溶剤または薬液4中を連続的に移動しながら極細繊
維化される。この図3に示すような連続式の方法による
場合は、繊維束2は、処理浴3内の溶剤または薬液4と
十分に接触しながら次々と連続的に極細繊維化されて極
細繊維束が形成されるため、極細繊維の含有率の極めて
高い極細繊維を生産性良く製造することができる。図3
に示す方法では、繊維束2を構成する極細繊維形成性繊
維を並列状態でローラー5aに供給するために、繊維束
2を開繊しながら処理浴3に供給するようにしてもよ
い。また、処理浴3で極細繊維化された極細繊維束は、
洗浄や薬液の中和処理などを施した後に、また丸い束状
に収束してもよいし、或いは繊維を並列させた状態のま
ま短繊維化するためのカット工程に導いてもよい。ま
た、図3に示す方法では、必要に応じて溶剤または薬液
4を流動させながら処理を行うこともできる。この図3
の方法では、極細繊維化処理を施す際(施す直前)の繊
維束2の繊維密度は、次のようにして求められる。すな
わち、図3の(c)に示すように、所定の質量W(g)
に相当する部分の繊維が並列した状態にある繊維束2の
幅をJ1(cm)、長さをJ2(cm)および厚さをJ3
(cm)とすると、溶剤または薬液を用いて極細繊維化
処理される直前の繊維束2の繊維密度(d)は、下記の
数式(iii)から求められる。
【0034】
【数3】 繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (iii) 但し、V(cm3)=J1×J2×J3
【0035】図3の方法による場合も、上記の数式(ii
i)によって求められる繊維密度(d)が0.01〜
0.1g/cm3の範囲になるように調整した状態で、
処理浴3中に導いて極細繊維化処理を行う。繊維の並列
密度などを調整することによって、極細繊維化処理を行
う際の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3の範囲に
することができる。
【0036】極細繊維形成性繊維よりなる繊維束の極細
繊維化処理に用いる溶剤または薬液の種類は、極細繊維
形成性繊維を構成する複数のポリマーの組み合わせに応
じて選択すればよく、例えば、水溶性ポリマーと水不溶
性のポリマーとの組み合わせでは水を溶剤として用い
て、アルカリ水溶液に易分解性のポリマーと難分解性の
ポリマーとの組み合わせでは水酸化ナトリウム水溶液、
水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を薬液とし
て用いて、アルカリ水溶液に易溶解性のポリマーと難溶
解性のポリマーとの組み合わせではアルカリ水溶液を溶
剤として用いて、酸水溶液に易溶解性のポリマーと難溶
解性のポリマーとの組み合わせでは酸水溶液を溶剤とし
て用いて、また炭化水素系溶剤に易溶解性のポリマーと
難溶解性のポリマーとの組み合わせでは炭化水素系溶剤
を用いて、極細繊維化処理を行えばよい。極細繊維化処
理の際の溶剤または薬液の温度、処理時間などの処理条
件は、溶剤または薬液の種類、処理方式、極細繊維形成
性繊維を構成するポリマーの種類、極細繊維形成性繊維
の複合形態や単繊維繊度、極細繊維束の太さなどに応じ
て適当な条件を採用するのがよい。一般的には、極細繊
維化処理時の溶剤または薬液の温度としては、常温〜1
00℃の温度が均一な極細繊維化および処理の迅速性な
どの点から好ましく採用される。極細繊維形成性繊維よ
りなる繊維束を極細繊維化するための溶剤または薬液を
入れた処理浴中には、必要に応じて、溶剤または薬液の
繊維束への浸透を促進するための浸透剤などを添加して
もよい。また、極細繊維化処理後に、極細繊維化に用い
た溶剤または薬液の種類などに応じて、得られた極細繊
維束に対して水洗、中和処理、乾燥処理などを施すよう
にする。
【0037】例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル
酸などのスルホイソフタル酸塩を共重合してなるポリエ
チレンテレフタレートと、ポリプロピレンまたはエチレ
ン−ビニルアルコール系共重合体を組み合わせた海島型
複合紡糸繊維または多層積層型複合紡糸繊維よりなる繊
維束を水酸化ナトリウム水溶液を用いて極細繊維化する
場合は、水1dm3に水酸化ナトリウム100〜400
gを溶解したアルカリ水溶液中に、50〜95℃の温度
で30〜60分間程度浸漬することによって、複合紡糸
繊維中のスルホイソフタル酸塩共重合ポリエチレンテレ
フタレートを完全に分解除去して、実質的にポリプロピ
レン極細繊維またはエチレン−酢酸ビニル共重合体極細
繊維のみからなる極細繊維束にすることができる。これ
により得られる極細繊維束は、水(湯)洗、酢酸や塩酸
などの酸水溶液による中和処理、水洗などを順に行うこ
とによって、目的とする極細繊維束を得ることができ
る。
【0038】上記した本発明の方法で極細繊維形成性繊
維よりなる繊維束の極細繊維化を行うことによって、極
細繊維束を構成する全繊維の本数に対する極細繊維の本
数が95〜100%であって、極細繊維の含有率の極め
て高い、本発明の極細繊維束が得られる。ここで、本明
細書でいう極細繊維束における極細繊維の含有率は、極
細繊維束をその長さ方向と直角に切断した横断面につい
て、該横断面における繊維の総本数[極細繊維と非極細
繊維(極細繊維化されていない繊維)の合計本数]を数
え、該総本数に対する極細繊維の本数の割合をいう。な
お、ここでいう「非極細繊維」とは、極細繊維化が全く
生じていない極細繊維形成性繊維のままの繊維、極細繊
維形成性繊維を溶剤または薬剤で処理した際に、溶剤溶
解性または薬剤分解性の大きなポリマーが十分に溶解ま
たは分解しなかったことにより極細繊維が複数本まとま
った状態の繊維、或いは極細繊維形成性繊維を形成して
いる複数のポリマー間に分割剥離を生じる際に分割剥離
が不十分であったことにより極細繊維が複数本まとまっ
た状態の繊維をいう。極細繊維束における極細繊維の含
有率の詳細な測定法については、以下の実施例の項に説
明するとおりである。
【0039】上記で得られる極細繊維束を所定の長さに
カットすることにより、本発明の極細短繊維が得られ
る。この極細短繊維は、極細繊維を上記した95〜10
0%という極めて高い率で含有している。極細短繊維の
繊維長は、極細短繊維の用途などに応じて決めることが
できるが、一般的には1〜15mm程度であることが、
不織布などを製造する際の取り扱い性、得られる不織布
の物性などの点から好ましく、2〜10mm程度である
ことがより好ましい。また、極細短繊維は、繊維長L
(mm)と極細繊維の繊維直径D(mm)の比(L/
D)(アスペクト比)が100〜5,000の範囲にあ
ることが好ましく、300〜2,000の範囲にあるこ
とがより好ましい。極細短繊維のアスペクト比が100
未満であると、極細短繊維を用いて不織布シートを形成
した際に引張強力が低くなり、工程通過中にシートの破
断が生じ易くなる。一方、極細短繊維のアスペクト比が
5,000を超えると、湿式不織布などを製造する際の
工程性が不良になり易く、しかも得られる湿式不織布の
加工性が低下し易い。なお、極細短繊維が円形断面を有
しておらず、異形断面である場合は、該異形断面繊維の
繊維横断面積と同じ面積を有する円の直径をもって前記
した繊維直径Dとし、アスペクト比(L/D)を求め
る。
【0040】本発明の極細短繊維は、極細繊維の含有率
が極めて高いことにより、空隙サイズの極めて小さく、
厚さが薄く、しかも吸液量の大きな不織布を製造するこ
とができる。本発明の極細短繊維から製造される不織布
は、例えば電池やキャパシターのセパレーター用不織
布、人工皮革用不織布、クリーニング用不織布、衣料用
不織布、フィルター、孔版印刷用原紙などの種々の用途
に有効に使用することができる。特に、本発明の極細短
繊維を用いて湿式不織布を製造すると、空隙サイズ(ポ
アサイズ)が極めて小さく、厚さが薄く、高い密度を有
し、しかも適度な通気性を有する湿式不織布を得ること
ができる。その湿式不織布は、ポアサイズが小さいこ
と、厚さが薄くて高い吸液量(保液量)を有することが
要求される電池またはキャパシターのセパレーターとし
て有効に使用できる。
【0041】本発明の極細短繊維を用いて得られる湿式
不織布では、単位面積当たりの繊維数など用途や使用目
的等に応じて調整できるが、例えば、電池またはキャパ
シターのセパレーターとして用いる場合は、湿式不織布
の厚さ方向の断面における1mm2当たりの繊維総数
(極細繊維と極細繊維化されていない繊維の合計本数)
が5,000本以上、特に7,000本以上であること
が、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さくなり、し
かも高い保液性を確保できることから好ましい。湿式不
織布における厚さ方向の断面における繊維総数は、以下
の実施例の項に記載した方法で求めたものである。ま
た、湿式不織布は、その厚さ方向の断面において、極細
繊維:非極細繊維の比率が95:5〜100:0である
ことが好ましい。なお、ここでいう「非極細繊維」と
は、極細繊維束の場合と同様に、極細繊維化が全く生じ
ていない極細繊維形成性繊維のままの繊維、極細繊維形
成性繊維を溶剤または薬剤で処理した際に、溶剤溶解性
または薬剤分解性の大きなポリマーが十分に溶解または
分解しなかったことにより極細繊維が複数本まとまった
状態の繊維、或いは極細繊維形成性繊維を形成している
複数のポリマー間に分割剥離を生じる際に分割剥離が不
十分であったことにより極細繊維が複数本まとまった状
態の繊維をいう。
【0042】湿式不織布は、本発明の極細短繊維を用い
て水性スラリーを調製し、その水性スラリーを網抄紙
機、通液性金型などを使用して抄造し、脱液、乾燥する
ことによって製造することができる。湿式不織布の製造
に当たっては、本発明の極細短繊維と共にバインダーを
用いることが好ましい。バインダーは、繊維状、粉末
状、液状などのいずれでもよく、そのうちでも本発明の
極細短繊維よりも低温で溶融または軟化する熱接着性繊
維状バインダー(熱接着性バインダー繊維)が好ましく
用いられる。熱接着性バインダー繊維の種類は、極細短
繊維を構成するポリマーの種類などに応じて適宜選択す
ることができるが、極細短繊維を構成するポリマーと近
縁のポリマーからなる熱接着性短繊維が好ましく用いら
れ、その場合は湿式不織布の主体をなす極細短繊維と熱
接着性バインダー繊維との親和性が高く、力学的特性に
優れる湿式不織布を得ることができる。具体的には、例
えば、ポリプロピレン極細短繊維に対してはバインダー
繊維としてポリプロピレンを芯成分としポリエチレンを
鞘成分とする芯鞘型複合短繊維などを、ポリエチレンテ
レフタレート極細短繊維に対してはバインダー繊維とし
てポリエチレンテレフタレートよりも融点の低いポリエ
ステル系短繊維や融点を持たない非晶性ポリエステル系
短繊維などを、エチレン−ビニルアルコール共重合体極
細短繊維に対してはバインダー繊維としてポリプロピレ
ンを芯成分としポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合
短繊維やポリビニルアルコール系短繊維などを用いるこ
とができる。バインダー繊維も単繊維繊度が1dtex
未満の極細の短繊維であることが好ましい。
【0043】バインダーの使用量は、湿式不織布の主体
をなす極細短繊維を構成するポリマーの種類、バインダ
ーの種類、湿式不織布の用途などに応じて調整できる
が、一般的には、極細短繊維100質量部に対して10
〜40質量部程度であることが好ましい。また、湿式不
織布を製造する際の極細短繊維を含有する水性スラリー
における固形分濃度、抄造後の乾燥温度などは、極細短
繊維の種類、バインダーの種類、抄造物の厚さなどに応
じて調整することができ、一般的には水性スラリーでの
固形分濃度は0.01〜0.3質量%程度であることが
好ましい。さらに、湿式不織布の製造に当たっては、極
細短繊維およびバインダーの他に、必要に応じて、天然
または合成の他の短繊維や、分散安定剤、紙力増強剤な
どの添加剤を用いてもよい。
【0044】
【実施例】以下に実施例により本発明について具体的に
説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるも
のではない。以下の例において、極細繊維束における極
細繊維の含有率、湿式不織布の厚さ方向断面における1
mm2当たりの繊維総数、湿式不織布における空隙サイ
ズ(ポアサイズ)および湿式不織布の吸液量は、以下の
ようにして測定した。
【0045】(1)極細繊維束における極細繊維の含有
率;極細繊維束を長さ方向に直角に切断した横断面を電
子顕微鏡(500倍)にて観察して、極細繊維の本数
(N1)および極細繊維化されていない繊維の本数
(N2)をそれぞれ数えて、下記の数式(iv)により極
細繊維の含有率(%)を求めた。極細繊維束の任意の横
断面5カ所について前記した方法で極細繊維の含有率を
求め、5カ所の平均値を採って、極細繊維束における極
細繊維の含有率とした。
【0046】
【数4】 極細繊維束における極細繊維の含有率(%)={N1/(N1+N2)}×100 (iv)
【0047】(2)湿式不織布の厚さ方向断面における
1mm2当たりの繊維総数:湿式不織布を厚さ方向に切
断し、その断面を電子顕微鏡(500倍)にて観察し、
その断面の全面積(S)(mm2)を測定すると共に、
該面積中に存在する極細繊維の本数(x)および非極細
繊維の繊維の本数(y)を数えて、式:(x+y)/S
から1mm2あたりの繊維本数を求めた。
【0048】(3)湿式不織布における空隙サイズ(ポ
アサイズ):コールター・エレクトロニクス社製「Co
lter POROMETER II」により測定した。
【0049】(4)湿式不織布の吸液量:湿式不織布か
ら試験片(縦×横=50mm×50mm)[質量W
0(g)]を切り取り、それを35質量%水酸化カリウ
ム水溶液中に、浴比1/100で、温度20℃にて30
分間浸漬した後、ピンセットにて取り出して30秒間自
然液切りし、その時の質量(W1)(g)を測定して、
下記の数式(v)から吸液量を求めた。
【0050】
【数5】 湿式不織布の吸液量(g/g)=(W1−W0)/W0 (v)
【0051】また、以下の例で用いたポリオレフィン系
バインダー繊維の内容は、次のとおりである。 ○ポリオレフィン系バインダー繊維:芯成分がポリプロ
ピレンおよび鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合
紡糸繊維(芯:鞘の質量比=50:50、単繊維繊度=
0.8dtex)を繊維長5mmにカットした短繊維。
【0052】《製造例1》[アルカリ易分解性ポリエス
テルの製造] テレフタル酸182質量部、エチレングリコール97質
量部および三酸化アンチモン350ppmをエステル化
反応器に仕込み、温度260℃、圧力2.4kg/cm
2の条件下に2時間エステル化反応させた後、その全量
を重縮合器に移した。重縮合器に5−ナトリウムスルホ
イソフタル酸ジメチル17質量部とエチレングリコール
28質量部で調製したスラリー全量を添加し、引き続き
分子量2000のポリエチレングリコール10質量部、
および下記の化学式で表されるポリオキシエチレングリ
シジルエーテル10質量部を添加した。
【0053】
【化1】
【0054】さらに、ポリエチレングリコールとポリオ
キシエチレングリシジルエーテルの合計100質量部に
対して、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒ
ドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−
トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリ
オキサンを5質量部の割合で添加して、温度を240℃
から280℃まで45分間かけて昇温しながら徐々に1
3.3Pa(0.1mmHg)まで減圧し、以後280
℃で系の溶融粘度が極限粘度0.7dl/gとなる時点
まで重縮合反応を行って、易アルカリ分解性ポリエステ
ルを製造した。これにより得られたアルカリ易分解性ポ
リエステルは、温度98℃の水酸化ナトリウム水溶液
(水1dm3中に水酸化ナトリウム20g)中に浴比
1:500で撹拌下に浸漬したときに30分以内で完全
に溶解した。
【0055】《実施例1》 (1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポ
リエステルおよびポリプロピレンを別々の押出機で溶融
した後、アルカリ易分解性ポリエステルを海成分とし、
ポリプロピレンを島成分として、前者:後者=45:5
5の質量比で海島型複合紡糸装置に供給して、常法によ
って円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、
海島型複合紡糸繊維(島数16、単繊維繊度2.8dt
ex)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約
20万本集めて56万dtexの繊維束(トウ)にし
た。これを図1に示す枠体1(ポリプロピレン製、枠体
1におけるA1=100cmおよびB1=100cm)
に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き付
けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側の
隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=12
4.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠体
1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(3
0.8kg)gであり、前記の繊維密度0.08g/c
3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して
求めた。 (3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温
度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間
浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水
洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄し
た後、枠体から外して、30.8万dtexの極細繊維
束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した
方法で測定したところ100%であり、アルカリ易分解
性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピ
レン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成す
るポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.08d
texであった。
【0056】(4) 上記(3)で得られたポリプロピ
レン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmに
カットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L
/D=約900)。 (5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊
維70質量部および上記したポリオレフィン系バインダ
ー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製
した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温
度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダ
ー処理を施して、目付35g/m2および厚さ0.1m
mの湿式不織布を製造した。、 (6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は97/3であり、また繊維総数
は9,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイ
ズ)は17μm、吸液量は4.8g/gであり、二次電
池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有する
ものであった。
【0057】《実施例2》 (1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポ
リエステルとエチレン−ビニルアルコール共重合体を別
々に押出機で溶融した後、アルカリ易分解性ポリエステ
ルを海成分とし、エチレン−ビニルアルコール共重合体
(エチレンの含有量44モル%)を島成分として、前
者:後者=50:50の質量比で海島型複合紡糸装置に
供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次
いで延伸を施して、海島型複合紡糸繊維(島数16、単
繊維繊度4.8dtex)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約
10万本集めて48万dtexの繊維束(トウ)にし
た。これを実施例1で使用したのと同じ図1に示す枠体
1に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き
付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側
の隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=1
24.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠
体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(3
0.8kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm
3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して求
めた。 (3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温
度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間
浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水
洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄し
た後、枠体から外して、24万dtexの極細繊維束を
得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法
で測定したところ100%であり、アルカリ易分解性ポ
リエステルはほぼ完全に溶解除去され、エチレン−ビニ
ルアルコール共重合体極細繊維のみからなっていた。極
細繊維束を構成するエチレン−ビニルアルコール共重合
体極細繊維の単繊維繊度は約0.15dtexであっ
た。
【0058】(4) 上記(3)で得られたエチレン−
ビニルアルコール共重合体極細繊維束(トウ)をギロチ
ンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細
短繊維を製造した(L/D=約750)。 (5) 上記(4)で得られたエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体極細短繊維60質量部および上記したポリ
オレフィン系バインダー繊維40質量部を水に分散させ
て水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式
抄造し、ドライヤー温度135℃で乾燥を行い、その後
135℃にてカレンダー処理を施して、目付40g/m
2および厚さ0.12mmの湿式不織布を製造した。 (6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は99/1であり、繊維総数は
7,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は
20μm、吸液量は4.1g/gであり、二次電池のセ
パレーターとして十分に使用可能な性能を有するもので
あった。
【0059】《実施例3》 (1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポ
リエステルと、ポリプロピレンを別々に押出機で溶融し
た後、各々の成分が多層状になるように、前者:後者=
33:67の質量比で、11層積層型複合紡糸装置に供
給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次い
で延伸を施して、積層数11の多層積層型複合紡糸繊維
(単繊維繊度3.3dtex)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約
15万本集めて50万dtexの繊維束(トウ)にし
た。これを実施例1で使用したのと同じ図1に示す枠体
1に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き
付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側
の隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=1
24.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠
体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(3
0.8kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm
3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して求
めた。 (3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温
度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間
浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水
洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄し
た後、枠体から外して、33.2万dtexの極細繊維
束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した
方法で測定したところ100%であり、アルカリ易分解
性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピ
レン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成す
るポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.37d
texであった。
【0060】(4) 上記(3)で得られたポリプロピ
レン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmに
カットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L
/D=約200)。 (5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊
維50質量部、単繊維繊度が0.5dtexのポリプロ
ピレン短繊維20質量部および上記したポリオレフィン
系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラ
リーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ド
ライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃に
てカレンダー処理を施し、目付35g/m2および厚さ
0.1mmの湿式不織布を製造した。、 (6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は99/1であり、繊維総数は
6,500本/mm 2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)
は13μm、吸液量は3.6g/gであり、二次電池の
セパレーターとして十分に使用可能な性能を有するもの
であった。
【0061】《実施例4》 (1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポ
リエステルおよびポリプロピレンを別々の押出機で溶融
した後、アルカリ易分解性ポリエステルを海成分とし、
ポリプロピレンを島成分として、前者:後者=50:5
0の質量比で海島型複合紡糸装置に供給して、常法によ
って円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、
海島型複合紡糸繊維(島数50、単繊維繊度4.0dt
ex)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約
15万本集めて60万dtexの繊維束(トウ)にし
た。これを図2に示す枠体1(ポリプロピレン製、E1
=130cm)に、繊維密度が0.08g/cm3とな
るように巻き付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付け
た後の外径E2=154.5cm、巻き付け幅F=70
cmであり、また枠体1に巻き付けた繊維束の質量W=
30,640g(30.64kg)であり、前記の繊維
密度0.08g/cm3は、それらの数値を上記した数
式(ii)に代入して求めた。 (3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温
度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間
浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水
洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄し
た後、枠体から外して、30万dtexの極細繊維束を
得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法
で測定したところ99%であり、アルカリ易分解性ポリ
エステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極
細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するポリ
プロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.04dtex
であった。
【0062】(4) 上記(3)で得られたポリプロピ
レン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmに
カットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L
/D=約850)。 (5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊
維70質量部および上記したポリオレフィン系バインダ
ー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製
した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温
度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダ
ー処理を施し、目付25g/m2および厚さ0.08m
mの湿式不織布を製造した。、 (6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は97/3であり、繊維総数は
9,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は
17μm、吸液量は4.8g/gであり、二次電池のセ
パレーターとして十分に使用可能な性能を有するもので
あった。
【0063】《実施例5》 (1) 実施例1の(1)と同じ操作を行って、海島型
複合紡糸繊維(島数16、単繊維繊度2.8dtex)
を製造した。 (2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約
20万本集めた56万dtexの繊維束(トウ)を、図
3に示すように、繊維束を構成する繊維を横方向に並列
させた状態で、非イオン系浸透剤(北広ケミカル社製
「ペレックスTS−410」)を液1dm3当たり1g
の割合で含有する、温度80℃の10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を入れたアルカリ浴中に連続的に導入して、ア
ルカリ浴中を5m/分の速度で連続的に移動させながら
極細繊維化処理を行った(アルカリ浴中での浸漬時間5
分)。この実施例5では、図3に示した繊維束2の幅J
1=20cm、長さJ2=30cmおよび厚さJ3=0.
5cmであり、上記の数式(iii)に従って算出したア
ルカリ浴に導入する直前での繊維束の見掛密度は0.0
6g/cm3であった。 (3) 極細繊維化処理後の繊維束をアルカリ浴から連
続的に取り出し、湯洗槽(温度80℃)、中和槽(濃度
2.0g/dm3の酢酸水溶液、常温)および水洗槽
(常温)の順に連続的に通して、洗浄および中和処理を
行って、38.5万dtexの極細繊維束を得た。極細
繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定した
ところ98%であり、アルカリ易分解性ポリエステルは
ほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極細繊維のみ
からなっていた。極細繊維束を構成するポリプロピレン
極細繊維の単繊維繊度は約0.08dtexであった。
【0064】(4) 上記(3)で得られたポリプロピ
レン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmに
カットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L
/D=約900)。 (5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊
維30質量部、単繊維繊度が0.5dtexのポリプロ
ピレン短繊維40質量部および上記したポリオレフィン
系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラ
リーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ド
ライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃に
てカレンダー処理を施して、目付40g/m2および厚
さ0.12mmの湿式不織布を製造した。 (6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は、97/3であり、繊維総数は
5,500本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)
は22μm、吸液量は4.5g/gであり、二次電池の
セパレーターとして十分に使用可能な性能を有するもの
であった。
【0065】《比較例1》 (1) ポリエチレンと、ポリプロピレンを別々に押出
機で溶融した後、各々の成分が多層状になるように、前
者:後者=33:67の質量比で、11層積層型複合紡
糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡
糸し、次いで延伸を施して、積層数11の多層積層型複
合紡糸繊維(単繊維繊度3.3dtex)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた多層積層型複合紡糸繊維
を約15万本集めて50万dtexの繊維束(トウ)と
し、それをギロチンカッターで5mmにカットして短繊
維を製造した(L/D=約287)。 (3) 上記(2)で得られた短繊維50質量部、ポリ
プロピレン短繊維(単繊維繊度0.8dtex、繊維長
5mm)30質量部および上記したポリオレフィン系バ
インダー繊維20質量部を水に分散させて水性スラリー
を調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造して不織布
を製造した後、水流絡合により多層積層型複合紡糸繊維
におけるポリマー間の分割剥離を行わせ、乾燥した後、
135℃にてカレンダー処理を施して、極細繊維よりな
る湿式不織布(目付40g/m2、厚さ0.12mm)
を得た。 (4) 上記(3)で得られた湿式不織布における厚さ
方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)
および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊
維:非極細繊維の比率は61/39であり、繊維総数は
2,700本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)
は46μm、吸液量は2.5g/gであり、二次電池の
セパレーターとして必要な性能を備えていなかった。
【0066】
【発明の効果】本発明の極細繊維束は、極細繊維の含有
率が95〜100%と極めて高い。そのため、本発明の
極細繊維束を所定長さにカットして得られる本発明の極
細短繊維を用いて湿式抄造すると、空隙サイズが極めて
小さく、厚さが薄く、しかも吸液量および保液量が大き
く、電池やキャパシターのセパレーターなどの用途に極
めて有用な高機能の湿式不織布が得ることができる。溶
剤溶解性の異なる複数のポリマーまたは薬液分解性の異
なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性繊維よりな
る繊維束を、繊維密度0.01〜0.1g/cm3の状
態で、溶剤または薬液を用いて極細繊維化する本発明の
方法による場合は、極細繊維の含有率の極めて高い上記
した本発明の極細繊維束を、円滑に効率よく製造するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の極細繊維束の製造方法の一例を示す図
である。
【図2】本発明の極細繊維束の製造方法の別の例を示す
図である。
【図3】本発明の極細繊維束の製造方法の更に別の例を
示す図である。
【符号の説明】
1 枠体 2 繊維束 3 処理浴 4 溶剤または薬液 5a 移送用ローラー 5b 移送用ローラー 5c 移送用ローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 2/16 D06M 9/02 Z // D01F 8/04 H01G 9/00 301C (72)発明者 大前 好信 岡山県岡山市海岸通1丁目2番1号 株式 会社クラレ内 (72)発明者 平松 憲二 大阪府大阪市北区梅田1丁目12番39号 株 式会社クラレ内 (72)発明者 潮田 英一 福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレ ン株式会社内 (72)発明者 吉村 富巳雄 福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレ ン株式会社内 Fターム(参考) 4L031 AA13 AA16 AA18 AB04 BA11 CA01 DA08 4L041 AA07 BA05 BA09 BA16 CA05 CA38 DD11 4L055 AF17 AF21 AF33 AF47 EA15 EA19 EA32 FA23 FA30 GA01 GA39 GA50 5H021 BB13 CC02 EE02 EE23 HH01 HH03 HH05

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまた
    は薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維
    形成性繊維よりなる繊維束を、溶剤または薬液で処理し
    て、極細繊維形成性繊維中の溶剤溶解性の大きなポリマ
    ーを溶解除去するかまたは薬液分解性の大きなポリマー
    を分解除去するか、或いは極細繊維形成性繊維を構成し
    ている複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることに
    より得られた極細繊維束であって、極細繊維束を構成す
    る全繊維の本数に対する極細繊維の本数が95〜100
    %であることを特徴とする極細繊維束。
  2. 【請求項2】 極細繊維束を構成している極細繊維の単
    繊維繊度が0.4dtex以下である請求項1に記載の
    極細繊維束。
  3. 【請求項3】 極細繊維形成性繊維が、溶剤溶解性の異
    なる複数のポリマーまたは薬液分解性の異なる複数のポ
    リマーからなる極細繊維形成性の複合紡糸繊維である請
    求項1または2に記載の極細繊維束。
  4. 【請求項4】 極細繊維形成性繊維が; ・溶剤溶解性の大きいポリマーを海成分とし溶剤溶解性
    の小さいポリマーを島成分とするか、または薬液分解性
    の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリ
    マーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面
    形状を有する複合紡糸繊維; ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
    分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層
    以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有
    する複合紡糸繊維;或いは、 ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
    分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分
    割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸
    繊維; である請求項3に記載の極細繊維束。
  5. 【請求項5】 溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまた
    は薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維
    形成性繊維よりなる繊維束を、繊維束の繊維密度を0.
    01〜0.1g/cm3にした状態で、溶剤または薬液
    で処理して、極細繊維形成性繊維中の溶剤溶解性の大き
    なポリマーを溶解除去するかまたは薬液分解性の大きな
    ポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性繊維
    を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせ
    ることを特徴とする極細繊維束の製造方法。
  6. 【請求項6】 極細繊維形成性繊維が、溶剤溶解性の異
    なる複数のポリマーまたは薬液分解性の異なる複数のポ
    リマーからなる極細繊維形成性の複合紡糸繊維である請
    求項5に記載の極細繊維束の製造方法。
  7. 【請求項7】 極細繊維形成性繊維が; ・溶剤溶解性の大きいポリマーを海成分とし溶剤溶解性
    の小さいポリマーを島成分とするか、または薬液分解性
    の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリ
    マーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面
    形状を有する複合紡糸繊維; ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
    分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層
    以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有
    する複合紡糸繊維;或いは、 ・溶剤溶解性の異なる2種類以上のポリマーまたは薬液
    分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分
    割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸
    繊維; である請求項6に記載の極細繊維束の製造方法。
  8. 【請求項8】 極細繊維形成性よりなる繊維束を、繊維
    密度が0.01〜0.1g/cm3となるように、枠体
    内外間の通液が可能な枠体に巻き付けた状態で、溶剤ま
    たは薬液で処理する請求項5〜7のいずれか1項に記載
    の極細繊維束の製造方法。
  9. 【請求項9】 極細繊維形成性繊維よりなる繊維束を、
    繊維密度が0.01〜0.1g/cm3となる状態にし
    て、溶剤または薬液中を連続的に移動させながら溶剤ま
    た薬液で処理する請求項5〜7のいずれか1項に記載の
    極細繊維束の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    極細繊維束を所定の繊維長にカットしてなる極細短繊
    維。
  11. 【請求項11】 極細短繊維の繊維長L(mm)と極細
    繊維の繊維直径D(mm)の比(L/D)が100〜
    5,000の範囲にある請求項10に記載の極細短繊維
    維。
  12. 【請求項12】 請求項10または11に記載の極細短
    繊維を用いて形成した湿式不織布。
  13. 【請求項13】 湿式不織布の厚さ方向断面における1
    mm2当たりの繊維総数が5,000本以上であり且つ
    極細短繊維数と非極細短繊維数の比率が95/5〜10
    0/0である請求項12に記載の湿式不織布。
  14. 【請求項14】 電池またはキャパシターのセパレータ
    ー用である請求項12または13に記載の湿式不織布。
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