JP4957926B2 - 化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤 - Google Patents

化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、本願出願人が提案した特開2006−307124号の改良に関し、特にPタイルや塩ビシートなど化学床の保護を目的として可撓性及び密着性を向上させた無機塗料コーティング剤に関するものである。即ち、硬化時間が短縮でき、尚且つ特別な装置を必要とせず常温にて乾燥が可能で短時間に硬化させることができ、現場での作業性に優れた無機塗料であって、柔軟性を有する塩ビ系化学床材のコーティング剤としてある程度の柔軟性(可撓性)を向上させてコーティング膜のひび割れ、クラックを防止すると共に、前記公開特許に開示した高硬度、耐摩耗性、自己流動性、高光沢を向上させることのできる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供する。
従来、床の保護材としては市販のワックスが一般的で、このワックスは主成分が合成樹脂とロウから構成されているために、耐久性に乏しく直ぐに光沢が落ちて被膜がなくなると言った問題点があった。また、耐水性や耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性に乏しいために黒ずみや変色が発生しやすく、定期的な剥離が必要となり廃液処理が必要で環境にも不適な工法となる。近年、このワックスに代る工法として各種コーティング剤が注目を浴びており、シリコーン系コーティング剤やアルコキシシラン系コーティング剤、紫外線照射型樹脂コーティング剤、ワックス強化型コーティング剤などが多種にわたって商品化されている。しかしながら、いずれのコーティング剤においても下記に示すような問題点などが多くあり、実用化に至っていないのが現状である。
シリコーン系やアルコキシシラン系コーティング剤はシランの加水分解によってシラノールを生成し、このシラノールの縮合反応によってシロキサン結合を有し、ガラスに近い骨格の膜を形成する。この膜はシランの選定によって1H〜8H位の被膜を形成することができ、床用コーティング剤として高硬度で光沢のある仕様とすることができる。しかしながら、重歩行の床などに耐えうるコーティング仕様にするには少なくとも8Hを超える硬度が必要となる。これは歩行により土砂などを持ち込むためにその研磨に耐えうるだけの硬度が必要となるからで、シリコーンやアルコキシシラン単体で高硬度を得ることは、シランの選定などによりある程度は可能ではあるが、上記、8Hを超える硬度を得ることは困難となる。また、高硬度を得るために設計されたコーティング膜は柔軟性に乏しく、曲げや衝撃に対して割れが発生し易くなる傾向にある。従って塩ビタイル特有の変形に追従できずにコーティング膜にクラックが発生したり、架橋収縮によりタイルなどの反りが発生しやすくなる。反面、このような問題を解決するために硬度を低くするとクラックやタイルの反りの問題点は解消されるが、重歩行に耐えられずに著しい塗膜の劣化、例えば黒ずみや歩行による深傷の侵入などが発生して美観を著しく損ねて修復困難な状態になる可能性がある。更にシリコーン単体やアルコキシシラン単体の場合にはコーティング膜の帯電抵抗値が1×1015Ωと高いために、歩行により静電気が発生しやすくなるなどの問題もあった。
また、紫外線照射型樹脂コーティング剤(UVコート)は、一般的にアクリル系樹脂などの硬度反応の促進を促すために紫外線を照射する。紫外線照射の方法は専用の器具を用いて現場にて処理しなけれればならず、作業にかなりの時間を要するために施工コストが高価になることや紫外線そのものが人体に有害なために完全防具にて作業をしなければならない。また、処理後の皮膜も4H〜6H程度の硬度であるため、重歩行の床においては耐久性に乏しいため、光沢が短時間に落ちて傷や黒ずみが発生し、修復困難となるなどの問題がある。
さらに、ワックス強化型コーティング剤は基本組成がワックスと同等なために高硬度を得ることが難しく、基本的にはワックスと同様な問題が発生する。
従来技術
例えば、特許文献1(本出願人が提案した上記特開2006−307124号公報)には、「常温硬化型無機質コーティング基本組成が、シリコーン、シロキサン、アルコキシド、メチルシリケート、エチルシリケート、珪酸ナトリウム、珪酸リチウムの1種若しくは2種以上の主成分100重量比に対して、A:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比と、B:バインダーとしてシランカップリング剤を0.02〜2重量比と、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比と、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上を0〜30重量比とを内添した基本組成からなる常温硬化型無機質コーティング剤」[請求項3]であり、その膜特性が「硬度が鉛筆硬度で8H以上、光沢が60以上であること」[請求項1]及び「コーティング後に熱処理を要さず、長くとも90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、塗膜後の光沢が60%以上の状態となること」[請求項2]が記載されている。
しかしながら、特許文献1においては、本発明の如く「コーティング剤全体の組成に対し、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%とを混合した主成分に、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%配合する」点が記載されていない。即ち、上記公報には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、したがって、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
また、特許文献1においては、本発明の如く「前記コーティング膜の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値も充分低くならず静電気の発生が問題となる。
また、特許文献2(特開平4−175388号公報)には、請求項1に記載の如く「(A)・・・オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液(A−3)(本願主成分及び硬度付与剤=シリカゾルに相当)と、(B)・・・分子中にシラノール基を含有するポリオルガノシロキサン(B−1)(本願主成分=シロキサンに相当)とを主成分」としたコーティング用組成物」が記載されている。
そして、この実施例4では「(A)−3(第15頁右上欄〜同頁左下欄)80重量部と、(B)−1(第16頁左下欄〜同頁右下欄)20重量部と、(C)N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(本発明のシランカップリング剤に相当)0.5重量部と、ジプチル錫ジラウレート0.2重量部とからなるコーティング用組成物であり、その硬度が鉛筆硬度で4Hである」旨説明されている。
また、この実施例4における塗装条件は第17頁右下欄に説明されているように「・・・スプレー塗装で硬化被膜厚約10μmとなるように塗布して、硬化温度140℃で30分間硬化させて被膜(塗膜)を形成し・・・」旨説明されている。
しかしながら、特許文献2は[課題を解決する手段]にも説明されているように、「有機溶媒或いは水に分散されたコロイダルシリカ中にアルコキシシランを部分加水分解したシリカ分散オリゴマーとシラノール基含有オルガノポリシロキサン及び触媒からなるコーティング用組成物」であり、一般的に水分散型コロイダルシリカなどにより加水分解が促進されてシラノールを生成するが、その際に増粘する傾向が生じ、低粘度のコーティング剤を得ることが困難となる。したがって、このような特許文献2の組成物により本願発明の目的とする3〜7μmの薄膜を形成すると、硬度不足となり剥がれやクラックの発生の原因となる。
また、加水分解性オルガノシランは、これ自体がシランカップリング剤同様に水によって加水分解される。したがって、前述の通り加水分解によりシラノールを生成するので、粘度が上昇する傾向となる。一般的に時間の経過とともに増粘(粘度の上昇)が発生するので、いずれにしても、加水分解された加水分解性オルガノシランにより、本願発明の如く、粘度を極めて低く(動粘度3cSt(mm/s)以下)することができ、膜厚が3〜7μに自己平滑化して90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、コーティング膜の硬度も鉛筆硬度で8Hを越える特性を有するコーティング剤を得ることは極めて困難であると思われる。
また、特許文献2の実施例4では、「(A)−3(第15頁右上欄〜同頁左下欄)80重量部と、(B)−1(第16頁左下欄〜同頁右下欄)20重量部と、(C)N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(本発明のシランカップリング剤に相当)0.5重量部と、ジプチル錫ジラウレート0.2重量部とからなるコーティング用組成物であり、主成分(A)−3及び(B)−1の100重量部に対する、(C)N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(本発明のシランカップリング剤に相当)の添加量が0.5重量部と極めて少なく、特許文献2の実施例4におけるコーティング膜の硬度が鉛筆硬度で4Hと極めて低いことが理解される。
また、特許文献2には、本発明の如く高硬度付与剤であるシリカゾルの超微粒シリカ(5nm〜10nm程度)が使用されておらず、A−3等の実施例で使用されるシリカゾルのシリカ粒子径は10〜20mμと粗く、また、極めて高粘度であるので自己平滑性により膜厚が3〜7μの超薄膜は形成できず、尚且つコーティング膜の鉛筆硬度8Hを超える硬度が得られるコーティング剤ではない。
また、特許文献2は、(9)頁左下欄には「本発明のコーティング組成物は通常の塗布方法でコーティングすることができ、例えば刷毛塗り、スプレー、浸漬、フロー、ロール、カーテン、ナイフコート等の各種塗布方法を選択することができる」旨説明されているが、上記「フロー」を除いては粘度の極めて高いコーティング剤の工法である。また、「フロー」と説明されていても、実施例ではほとんどスプレー塗装であり、これらコーティング剤の粘度も記載されておらず、床面に塗布したのみで自己平滑化する旨の記載はない。
また、上記のように実施例1〜9、比較例1〜3(第1表)における塗装条件は引用文献2の第17頁右下欄に説明されているように「・・・スプレー塗装で硬化被膜厚約10μmになるように塗布して、硬化温度140℃で30分間硬化させて被膜(塗膜)を形成し・・・」旨説明されており、これらはすべて常温硬化型無機質コーティング剤に相当するものではない。実施例21〜28、参考実施例1〜4(第4表、第5表)も100℃×20分、実施例30〜35、参考実施例7は実施例1と同様の塗装条件である。
また、特許文献2の実施例10〜16、比較例4(第2表)、実施例17〜20(第3表)は室温で1週間放置とあるが、スプレー塗装で約20μm、実施例36〜41、比較例7(第12表)は室温で1週間放置とあるが、エアースプレー塗装で約10μmである。したがって、本願発明のように床面に塗布して常温で膜厚が3〜7μmに自己平滑化してコーティング膜の硬度が鉛筆硬度8Hを超えるコーティング剤ではない。
また、特許文献2の発明は、(3)頁左上に「・・・ステンレスなどの鋼板;アルミニウムなどの非鉄金属;コンクリート、スレートなどの無機建材;またはプラスティック基材などの表面にコート・・」することが目的であり、本願発明のように床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合でも、その流動性により自己平滑化が安定して得られることを目的としていない。
また、特許文献2は、本発明のごとく「コーティング剤全体の組成に対し、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%とを混合したものを主成分に対し、化学床用として可性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%配合する」点が記載されていない。即ち、上記文献には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、したがって、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
また、特許文献2は、本発明の如く「前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値が充分低くならず静電気の発生が問題となる。
また、特許文献3(特開平8−12761号公報)には、その請求項1に記載の如く「RSiO3/2単位(ここでRは互いに同一または異種の置換または非置換の1価炭化水素基を示す)およびRSiO2/2単位(ここでRは前記の同様の基を示す)からなり、末端が(RO)(3−a) SiO1/2単位(ここでRは前記と同様の基、Rは、互いに同一または異種の置換または非置換の1価炭化水素基、aは2または3の整数を示す)で封止されたアルコキシ末端ポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とするシリコーン樹脂組成物」が記載されている。
そして、特許文献3は段落[0005]に説明されるように、この「アルコキシ末端ポリオルガノシロキサンは、3官能シロキサン単位(RSiO3/2 単位)と2官能シロキサン単位(RSiO2/2 単位)からなり、末端に2個または3個のアルコキシ基を有するシロキサン単位((R(3−a)SiO1/2 単位)で封止されたポリオルガノシロキサンであり、本発明のシリコーン樹脂組成物の主成分となるものである」旨説明されている。
そして、特許文献3の実施例5では、このような「主成分に100部に対し、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.0部と、ジプチル錫ジラウレート0.8部と、酸化チタン10部とからなるコーティング剤組成物が示され、その鉛筆硬度は3Hである」旨、また特許文献3の実施例6では、前記「主成分に70部に対し、オルガノシロキサンオリゴマー30部と、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.0部と、ジプチル錫ジラウレート0.8部と、酸化チタン10部とからなるコーティング剤組成物が示され、その鉛筆硬度は3Hである」旨説明されている。
さらに、特許文献3の上記実施例5、6における主成分であるA−1成分の粘度が「720cPと、B−1成分の粘度が60cP」である旨説明されている。
しかしながら、特許文献3は、アルコキシ末端ポリオルガノシロキサンを含有するコーティング剤であり、この仕様だとシリコーン樹脂組成物となるために、コーティング膜の硬度をシリコーン樹脂組成物に依存するしかない。したがって、シリコーン樹脂によって硬度を上げて行くしかないので、高硬度にすると当然のことながらクラックの発生や剥がれの発生の原因となる。故に、本願発明の如く、3〜7μmの薄膜を得ようとすると、当然のことながらクラックの発生や剥がれが発生する。
また、特許文献3の実施例5及び6では、主成分100部に対し、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(本願発明のシランカップリング剤)が4.0部、ジプチル錫ジラウレート0.8部及び酸化チタン10部、合計10.8部(本願発明の内添硬化促進触媒)と、本願発明と比較してかなり添加量が多く、本願発明の上記特性を充分に得ることができない。
また、特許文献3の実施例5及び実施例6におけるコーティング剤の鉛筆硬度は3Hと本願発明の鉛筆硬度8H以上と比べ極めて低く、また上記実施例5、6における主成分であるA−1成分の粘度も「720cPと、B−1成分の粘度が60cPと極めて高粘度である。(本発明の動粘度単位cSt(mm/s)と引用文献3の粘度単位cPの各単位はほぼ同程度である)
また、特許文献3には、本発明の如く高硬度付与剤であるシリカゾルの超微粒シリカ(5nm〜20nm程度)が使用されておらず、また、極めて高粘度であるので自己平滑性により膜厚が3〜7μmの超薄膜は形成できず、尚且つ鉛筆硬度8Hを超える硬度のコーティング膜が得られるコーティング剤ではない。
また、引用文献3は、[0012]に説明されていますように、コーティング剤の粘度が高いためにスプレーやローラーなどにより基材に塗布しなければならない。
さらに、特許文献3においては、本発明の如く「コーティング剤全体の組成に対し、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%とを混合した主成分に、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%配合する」点が記載されていない。即ち、上記公報には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
特許文献3は、本発明の如く「前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値も充分低くならず静電気の発生が問題となる。
また、特許文献4(特開2005−97332号公報)には、請求項1に記載の如く「(A)一般式(1):・・・で示されるオルガノポリシロキサン及び/又は一般式(2):で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)組成式(3):で示される分岐状オルガノポリシロキサン:5〜3質量部、(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に平均2個以上有するシラン化合物、その部分加水分解物又はこれらの混合物:0.1〜30質量部、(D)シランカップリング剤:0〜10質量部を含有してなることを特徴とする非汚染性に優れた硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物」が記載されている。
そして、上記のように、特許文献4の実施例6には、「ポリマーA(粘度70,000mPa・sの両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン)100質量部、ポリマーD(粘度10mPa・sのポリシロキサン)30質量部、乾式シリカ(R972)10質量部、メチルトリメトキシシラン6質量部、ジイソプロピルチタンビスアセチルアセトネート2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を減圧下で均一になるまで混合した組成物」が記載されている。
また、この実施例8には「ポリマーD(粘度10mPa・sのポリシロキサン)30質量部、ポリマーF(粘度75,000mPa・sの両端末トリメトキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン)100質量部、乾式シリカ(R972)10質量部、メチルトリメトキシシラン3質量部、ジイソプロピルチタンビスアセチルアセトネート2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を減圧下で均一になるまで混合した組成物」が記載されている。
また、この比較例7には「ポリマーF(粘度75,000mPa・sの両端末トリメトキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン)100質量部、乾式シリカ(R972)10質量部、メチルトリメトキシシラン3質量部、ジイソプロピルチタンビスアセチルアセトネート2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を減圧下で均一になるまで混合した組成物」が記載されている。
さらに、この比較例8には「ポリマーB(粘度6mPa・sのポリシロキサン、ケイ素結合炭化水素基中のビニル基含有量0モル%)30質量部、ポリマーF(粘度75,000mPa・sの両端末トリメトキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン)100質量部、乾式シリカ(R972)10質量部、メチルトリメトキシシラン3質量部、ジイソプロピルチタンビスアセチルアセトネート2.5質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部を減圧下で均一になるまで混合した組成物」が記載されている。
したがって、特許文献4は、疎水化処理したシリカを含有しており、この疎水化処理シリカを使用すると、コーティング剤の帯電抵抗値が上がり、床用に仕様した場合には静電気の発生が問題となる。
また、特許文献4は、本来の目的が防汚を目的としたシーリング剤として使用するために硬度、光沢、自己平滑性は必要とせず、むしろ酸化チタンなどを含有させることにより防汚染を改善しようとするものである。
また、特許文献4の実施例6及び8、比較例7及び8では、各主成分に対するジイソプロピルチタンビスアセチルアセトネート(本願発明のシランカップリング剤)2.5質量部、乾式シリカ(本願発明の内添硬化促進触媒)10質量部と本願発明と比較してこれらの添加量がかなり多く、本願発明の上記特性を充分に得ることができません。
また、特許文献4の実施例6におけるポリマーA成分の粘度が70,000mPa・s、ポリマーD成分の粘度が10mPa・s、実施例8におけるポリマーD成分の粘度が10mPa・s、ポリマーF成分の粘度が75,000mPa・s、比較例7におけるポリマーF成分の粘度が75,000mPa・s、比較例8におけるポリマーB成分の粘度が6mPa・s、ポリマーF成分の粘度が75,000mPa・sのこれら各組成の主成分が極めて高粘度のものを使用している。
また、特許文献4には、高硬度付与剤であるシリカゾルの超微粒シリカ(5nm〜20nm程度)が使用されておらず、また、極めて高粘度であるので自己平滑性により膜厚が3〜7μmの超薄膜は形成できず、尚且つコーティング膜の硬度が鉛筆硬度8Hを超えるコーティング剤ではない。
また、特許文献4は、[0001]に説明されているように「建築用シーリング材、コーティング材等の建築用ゴム部材に好適に使用される」もので、また[0010]に説明されているように「シール性が良好で、このためコーティング、目地への充填に使用した場合、建物、目地、及び目地周辺の汚染を起こさず、ゴム自体も汚染されにくく、また耐候性にも優れる」という効果を追求するものである。したがって、表1、2に示されるように、組成物の評価が「伸び(%)」や「引張強さ(MPa)」等が対象とされている。故に、極めて高粘度であるので自己平滑性(レベリング性)がなく、とても自己平滑性により膜厚が3〜7μmの超薄膜は形成できるものではない。
さらに、特許文献4においては、本発明の如く「コーティング剤全体の組成に対し、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%と、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%とを配合する」点が記載されていない。即ち、上記公報には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、したがって、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
また、特許文献4においては、本発明の如く「前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値も充分低くならず静電気が問題となる。
また、特許文献5(特開2006−265557号公報)には、「所定のオルガノアルコキシシラン1〜40重量%、コロイド酸化物0.5〜20重量%、脂肪族低級アルコール0.1〜70重量%、有機酸又は無機酸0.1〜3重量%、無機充填剤0.01〜20重量%、無機顔料0.01〜40重量%、アルカリ溶液、緩衝溶液を単独又は併用したpH安定剤0.1〜3重量%を含む常温乾燥無機塗料組成物が記載され、特に指触乾燥時間が31分の塗料組成物を常温で硬化させて鉛筆硬度9H、光沢61の塗膜を得た例(実施例q)」が記載されている。
しかしながら、特許文献5には、上記本発明と同一の組成物及びその組成範囲及びその効果「粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合、その流動性により自己平滑性が安定して得られる」旨の記載は一切ありません。
また、特許文献5は、確かに鉛筆硬度9H(光沢61)の塗膜を得た実施例qが記載されているが、表3の実施例qは無機顔料も多く含むと共に、塩ビタイル・Pタイル等の化学床保護用以外の被塗物[0047]に塗装するものであり、塗装方法もスプレーやローラーなどによるため、粘度が極めて高いコーティング剤であるものと推察される。
また、特許文献5においては、本発明の如く「コーティング剤全体の組成に対し、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%と、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%とを配合する」点が記載されていない。即ち、上記公報には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、したがって、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
また、特許文献5においては、本発明の如く「前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値も充分低くならず静電気の発生が問題となる。
また、特許文献6(特開昭63−117074号公報)には、「(a)一般式RSi(OR‘)(式中、Rは炭素数1〜89の有機基、R’は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの縮合物であって、そのポリスチレン換算重量平均分子量が500〜5,000のオルガノポリシロキサンをオルガノアルコキシシラン換算で100重量部に対し、(b)親水性有機溶媒に分散されたコロイド状シリカを固形分換算で5〜50重量部、(c)水0.1〜50重量部、および(d)親水性有機溶媒(ただし、(b)成分に存在する親水性有機溶媒を含む)100〜1,000重量部を含有することを特徴とするコーティング用組成物」が記載されている。
そして、「常温もしくは100℃以下の低温で塗膜を硬化させることができる」旨及び「20〜100℃程度の温度で5分〜24時間程度乾燥することにより、1回塗りで乾燥膜圧1〜30μm、好ましくは3〜20μm程度の塗膜を形成でき・・・」旨説明されているが、試験例1〜4では「150℃で30分加熱処理」又は「100℃で10分加熱処理」して硬化塗膜とした旨記載されている。
しかしながら、どのような組成及び組成比率によって上記「常温・・・」で硬化するのか記載がない。また、本発明のように粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合、その流動性により自己平滑性が安定して得られるかどうかの記載がない。さらに、シリカゾル中に分散するシリカの平均粒径が5〜30μmと大きく、硬度(鉛筆硬度)もH〜5Hと極めて低い(第3表、第5表、第6表)。
また、特許文献6においては、本発明の如く「コーティング剤全体の組成に対し、少なくとも、4官能及び3官能のアルコキシシランの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%と、化学床用 として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%とを配合する」点が記載されていない。即ち、上記公報には平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを使用した点が記載されておらず、したがって、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
さらに、特許文献6においては、本発明の如く「前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加する」点が記載されていない。したがって、帯電抵抗値も充分低くならず静電気の発生が問題となる。
また、特許文献7(特開2000−219845号公報)には、「・・・第2層として(A)コロイダルシリカ、(B)トリアルコキシシランの加水分解縮合物および(C)テトラアルコキシシランの加水分解縮合物からなるオルガノシロキサン樹脂を熱硬化した塗膜層を第1層に積層してなることを特徴とする表面保護された透明プラスティック成形体」が記載されている。
しかしながら、上記コロイダルシリカとしては直径5〜200nm、好ましくは5〜40nmのシリカ微粒子が水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである」[0045]旨の記載はあるが、第2層の組成は「・・・かかる熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することが好ましい。なお、常温では熱硬化が進まず、硬化被膜を得ることができない。・・・熱硬化は好ましくは50℃〜200℃の範囲、より好ましくは80℃〜160℃の範囲、さらに100℃〜140℃で、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間加熱硬化する」旨説明されており、本発明のような化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤に相当するものではない。
また、特許文献8(特開平10−251599号公報)には、「(1)アルコキシシラン、エポキシ基を有するシオランカップリング剤、水、有機溶媒及び触媒を含有する組成物であり、かつ水の含有量がアルコキシシランを理論上40〜75%加水分解縮合可能な量である硬化性組成物。及び(2)カルボキシ基、1−アルコキシアルキルオキシカルボニル基、またはアミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアクリル樹脂、及び(3)金属酸化物及び/またはシリカを配合してなることを特徴とするコーティング剤」[請求項1]が記載されている。
また、(1)の硬化性組成物が、予めエポキシ基を有するシランカップリング剤に水を添加し加水分解した後、アルコキシシランを配合してなることを特徴とする請求項1記載のコーティング剤」[請求項2]が記載されている。
そして、[発明を解決しようとする課題]において「以上のような事情に鑑み、本発明では・・・柔軟性に優れたコーティング用組成物を提供することを目的とする」[0003]旨説明されている。
しかしながら、この発明のコーティング剤は、「150℃、1時間」の高温乾燥処理を必要とし、塗膜厚は「25μm」と厚く、鉛筆硬度も「4H」と低い[0019]。
また、特許文献9(WO00−077105号公報)には、「(A)成分として、表面疎水化シリカがアルコール分散媒中に分散し、かつ固形分中のシリカの含有量が80重量%以上であるアルコール分散液、(B)成分として、アルコキシシランと水の反応により得られる平均構造単位R SiOx/2(OH)(OR(ただし、式中、Rは炭素集1〜3のアルキル基、フェニル基又はビニル基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、0.8≦n≦1.7であり、2<x<3.2であり、y>0、z>0、かつy+z=4−n−xである。)を有するシリコーンオリゴマーを含有する溶液及び(C)成分として、硬化剤を含有することを特徴とするコーティング組成物。本発明のコーティング組成物は、硬化剤を添加したのちの保存安定性に優れ、スプレーコート工程でシリカ微粒子の凝集が起こりにくく、耐候性、耐水性、耐薬品性、密着性に優れ、硬度の高い塗膜を形成し得る」旨記載されている。
しかしながら、この発明においては、第1表(28頁)に示されるように、鉛筆引っかけ値(鉛筆硬度)が室温においてはH〜4Hと低く、熱処理を施しても3H〜7Hと低い。これは使用されるシリカゾルのシリカ粒子径が0.5μm以下(8頁下から4行目)、0.1μm以下(19頁下から11行目)と大きいためと考えられる。
また、特許文献10(特開平8−277379号公報)には、「ポリカーボネート用、もしくはポリカーボネートを主成分とするポリマーアロイ用、またはシクロ環を含むポリオレフィン用のシリカ系コーティング材であって、前処理で使用されるシラン系カップリング剤と、その処理後に使用されるアルコキシシラン加水分解物、フッ素系ポリマー、無機酸化物及び無機系ポリ酸誘導体とを有することを特徴とするシリカ系コーティング材」が記載されている。
しかしながら、この発明においては、「被膜を形成する方法としては、浸漬、スプレー、はけ塗りあるいはスピンコートなどの一般塗装方法を用いることができる。形成される被膜の厚さは通常10〜500μmであるが、本発明のコーティング材の成分比を適宜変えることにより、さらに約2000μmまでの厚さを得ることができる」[0013]旨説明されが、膜厚はかなり厚いため、本発明の目的である床に塗布して3〜7μmの薄いコーティング膜を形成するには粘度が高く、自己平滑化が安定せず60%以上の表面光沢度が得られない。皮膜の硬度も8Hを超えて安定しない。また、コーティング膜の可撓性付与がいまだ充分でなく、柔軟な化学床面に対する密着性に劣りクラックやひび割れが発生し易い。
また、この発明においては、「・・・この溶液をスピンコートを用いて塗布した後、室温の下で1時間静置し、さらに1時間かけて130℃まで昇温させ、その温度に20分保つことにより被膜を形成した」旨説明されている。したがって、塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、コーティング膜の硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、光沢が60%以上、帯電抵抗値が1×1010Ω以下であるコーティング膜が得られる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤ではない。
また、特許文献11(特開2003−41148号公報)には、「(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン部分縮合物を縮合させることにより得られるシリカ粒子、当該シリカ粒子を含有してなる硬化性組成物および当該硬化性組成物を含有してなるコーティング剤組成物」が記載されている。
そして、この発明では、「このようにして得られた粒子の粒子径は10〜250nm程度であり、好ましくは10nm〜100nmである。粒子径を100nm以下とすることにより、シリカ粒子が溶媒中で沈降せず、均一に分散した透明溶液となり、さらに硬化組成物の透明性が向上するため特に好ましい」旨説明されている。
しかしながら、この発明においては、「表4及び表5の配合例においては、基材上にバーコーターNo.9〜30を用いて、乾燥膜厚5μmになるように塗装した後、コンベア式水銀ランプを用いて140mJ/cmの光量で照射後、評価した」旨説明されており、したがって、本発明の如く、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合、その流動性により自己平滑性が安定して得られる点、及び塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥する常温硬化型である点、硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、光沢が60%以上、帯電抵抗値が1×1010Ω以下である点が記載されていない。
さらに、特許文献12(特開2002−285084号公報)には、「アルコキシシランと帯電防止剤を含む防汚用コーティング剤。帯電防止剤を含有するため、コーティング直後であってもコーティング膜が帯電せず、塵の付着を防止する」旨が記載されている。
そして、この発明の実施例1においては、調整した防汚用コーティング剤は、(重量部で)メトキシシラン:100、ポリエチエングリコール:10、コロイダルシリカ:10、リン酸トリエチル:0.2であり[0021]、表1に示すごとく、帯電試験の結果「・・・墨汁の汚れを簡単に拭き取ることができる上に、静電気が起きにくく、塵が付着しにくい」旨説明されている。
しかしながら、この実施例での帯電防止剤はメトキシシラン:100重量部に対して、ポリエチエングリコール:10及びリン酸トリエチル:0.2で、合計10.2重量%と比確的多く添加されており、また帯電試験方法が本発明の帯電抵抗値と異なり比較することができない。さらに、本発明のごとく、複数の官能基を含むアルコキシシランと、平均粒径5〜20nmの超微粒シリカを分散したシリカゾルとを混合したコーティング剤であって、粘度が3cSt/mm/s以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合、その流動性により自己平滑性が安定して得られる点、塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥する常温硬化型である点、コーティング膜の硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、光沢が60%以上となる点が記載されていない。
特開2006−307124号公報 特開平4−175388号公報 特開平8−12761号公報 特開2005−97332号公報 特開2006−265557号公報 特開昭63−117074号公報 特開2000−219845号公報 特開平10−251599号公報 WO00−077105号公報 特開平8−277379号公報 特開2003−41148号公報 特開2002−285084号公報
発明が解決しようとする課題
本発明においては、コーティング後に全く熱処理を施さなくても充分な硬化が短時間に促進され、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合、その流動性により自己平滑性が安定して得られると共に、塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、柔軟性を有する塩ビ系化学床のためコーティング剤としてある程度の柔軟性(可撓性)を向上させてひび割れやクラックを防止させ、さらに光沢が60%以上、帯電抵抗値が1×1010Ω以下である化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
発明の作用
▲1▼塗膜の厚みについて;
一般に塗膜の厚みと硬度の関係は、塗膜が厚いほど硬度測定値は高くなり、逆に塗膜が薄いほど硬度測定値は低い数値を示す。本願発明は、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布してその流動性により自己平滑性が安定して得られ、3〜7μmと薄いコーティング膜であるにも係らず、硬度が8Hを超える数値が得られるため、例えば、前記各引用文献と比べても、低粘度で硬度の高いコーティング膜である。
▲2▼薄膜で高硬度、高光沢、高自己流動性が必要な理由;
塩ビ系タイルなどに使用する場合にはコーティング膜に可撓性を付与さなければならないが、そのためには可撓性付与剤を添加する方法と、もう一つの方法はコーティング剤の薄膜化を図ることで可とう性を付与させる方法がある。一般的に膜厚が薄いほど塩ビタイルなどの変形に追従しやすくなる傾向にある。しかしながら薄膜化を図ると硬度が犠牲となるために、これを補うべく超微粒コロイダルシリカを使用して、薄膜にて高硬度の特性を有する材料とすることが可能となる。また、石材や塩ビタイルなどに塗布する場合、既に鏡面仕上げや光沢のある塩ビタイルなどに塗布する場合が多く、そのような場合にはコーティング剤の塗膜が厚くなりすぎ、かえって鏡面度や光沢値を落としてしまうことがある。従って超薄膜で自己流動性に優れ、尚且つ高硬度のコーティング剤が必要となる。また、塩ビタイルなどに塗布した場合、塗膜が厚いコーティング膜だと硬化収縮(架橋収縮)によりタイルの反りやクラックなどが発生し易くなる。また、塩ビタイルそのものに柔軟性(可撓性)があるために、その変形にある程度、追従できるような材料設計にしなければならない。
▲3▼アルコキシシランと超微粒シリカとのハイブリッド構造;
また、前述した通り、薄膜で高硬度、自己流動性に優れた材料とするため、アルコキシシランの混合物から生成したポリオルガノシロキサンだけで塗膜を形成した場合には、3官能、4官能のアルコキシシランの組合せにより、高硬度材料のコーティング膜を作ることは可能であるが、柔軟性がないために軟らかい塩ビタイルなどの変形によりクラックが発生してしまうことがある。高硬度でありながら、ある程度柔軟性(可撓性)を付与させる材料設計にしなければならない。従って、高硬度を得るために平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカを加え、柔軟性を付与させるために可撓性用添加剤としてシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能アルコキシシランを加えて、尚且つ薄膜の仕様としている。分かりやすく言うならば、パチンコ玉をボンドで固めているような構造で、パチンコ玉が超微粒シリカで、隙間を埋めているボンド役がシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能アルコキシシランと考えてよい。さらに、選ばれる3官能、4官能のアルコキシシランの組み合わせにより、低粘度化(高自己流動性)が可能となる。
▲4▼超微粒コロイダルシリカによる高硬度化及び低粘度化;
また、本発明で使用しているコロイダルシリカ中のシリカ粒子は5nm〜20nm程度と超微粒であり、このような超微粒シリカ粒子の隙間をボンド役のアルコキシシランなどが埋めるような構造となっている。旧来粒子径の大きいシリカを使用すると、この隙間の割合が大きく、アルコキシシランによってコーティング膜の硬度特性が決定される。
しかしながら超微粒のシリカ粒子を使用するとこの隙間の割合が狭くなり、シリカ粒子の硬度によって高硬度化が可能となる。床用として使用する場合には圧縮荷重が主な荷重となるためにシリカの占める割合が大きくなる程、コーティング膜の高硬度化が可能となる。一般的にこのシリカはモース硬度にすると6〜7程度で石英などと同じ位の硬度を有するために、シリカ粒子の占める割合が大きくなるにつれ、本コーティング膜の硬度は上昇する傾向にある。また、超微粒コロイダルシリカは粘度が低く、この超微粒コロイダルシリカをさらに水やアルコールなどで希釈して使用すると、さらに膜厚が3〜5μmと薄いにも係らず高硬度で超薄膜のコーティング剤が得られる。
▲5▼自己平滑性について;
一般的に使用されるウレタン樹脂やアクリル樹脂などを主原料にしたコーティング剤や高重合体のシリコーンなどは、コーティング剤の粘度が高いためにスプレーやローラーなどで基材に塗布しなければならない。しかしながら、本発明のコーティング剤はPタイルや塩ビシートなどの床用を主な目的としているために、市販のワックス用モップなどで塗布する仕様としなければならない。したがって、一般的なコーティング剤に比べて低粘度で自己平滑性(レベリング性)に優れていることが必要不可欠となる。本発明に使用されるアルコキシシランは分子量の小さい低粘度の材料を主原料としており、尚且つ超微粒コロイダルシリカを使用しているため、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布した時に3〜7μmと薄膜に自己平滑するため自己平滑性(レベリング性)に優れている。
また、上記先行特許文献に示したように、一般的な保護コーティング剤の場合には、基材の保護、光沢、汚れ防止を目的として使用されるものが多く、そのような場合には余り高硬度である必要がないために3H〜4H位のものが多いと思われる。このようなものは高重合体のシリコーンやシリコーンオリゴマーを使用することが多く、特性として粘度が高く、自己平滑性に余り優れていない。しかしながら、本発明のコーティング剤は床用を主な用途としているために歩行や砂などの影響によって、光沢の劣化や塗膜の磨耗が考えられるために、耐摩耗性に優れた仕様でなければならない。したがって、高硬度、低粘度で自己平滑性(レベリング性)を有するなどの特性に優れていることが必要不可欠となる。このような特性を得るべく選ばれる3官能、4官能のアルコキシシランの混合成分に、可撓性付与剤としてシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランと、超微粒コロイダルシリカとを使用して、結果的に一般的コーティング剤に比べて粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布した時に3〜7μmの薄膜に自己平滑し、柔軟性を有するPタイルや塩ビシートなどの化学床保護用基材面への密着性が良好で柔軟性(可撓性)に優れると共に、超薄膜でありながら硬度が鉛筆硬度で8Hを超えるようにしている。このような低粘度のコーティング剤であれば自己流動性が優れているために、刷毛、ローラー、スプレーにより塗布する必要がなく、市販のワックスモップなどで軽く塗布しても勝手にレベリング(均一な仕上がり面)される。
課題を解決する手段
請求項1の発明は、コーティング剤全体の組成に対し、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種以上の4官能アルコキシシランと、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種以上の3官能アルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%と、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%と、前記超微粒コロイダルシリ カとアルコキシシランとの結合剤として官能基がビニル基、エポキシ基、アミノ基の何れかを使用したシランカップリング剤0.5〜2.0wt%と、前記アルコキシシランの加水分解によって生成されるシラノールの縮合反応を促進させる触媒としてリン酸系触媒又はチタン系触媒を0.5〜5wt%とを配合してなる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
この発明においては、超微粒コロイダルシリカを使用することによりシリカ粒子の硬度によって高硬度化が可能となる。床用として使用する場合には圧縮荷重が主な荷重となるためにシリカ粒子の占める割合が多くなる程、コーティング剤の高硬度化が可能となる。また、化学床保護用被膜の可撓性付与が充分で密着性が良好であってクラックやひび割れが発生しない。また、超微粒コロイダルシリカは粘度が低く、この超微粒コロイダルシリカを4官能及び3官能のアルコキシシランの混合成分と混合して使用すると、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合でも、その流動性により自己平滑化が安定して得られ、光沢度が60%以上であって、高硬度で超薄膜のコーティング膜が得られる。さらに、塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、光沢が60%以上のコーティング膜が得られる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供することができる
4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物が10wt%未満であるとコーティング剤として塗膜を形成することが困難となり、尚且つ充分な光沢も得られない。45wt%を超えるとシランリッチとなり、床用としての十分な硬度や帯電抵抗値も得にくくなる。また、クラックやタイルの反りも発生しやすくなる。4官能:3官能のアルコキシシランの混合比は5:30〜10:25が好ましい。
また、超微粒コロイダルシリカのシリカ平均粒子径が5nm未満はいまだ市販されておらず、20nmを超えると分散性が不良となりやすく、自己流動性が劣化して均一な塗布や仕上がりが得られにくくなる。また、粒子径が大きくなると充分高い硬度が得られにくくなる。
また、超微粒コロイダルシリカのシリカ固形分が20wt未満であると所望の皮膜硬度が得られず、十分な光沢も得られない。また、50wt%を超えるとシリカ粒子の均一分散が困難となり、ゲル化などの不都合を招来する。
また、シリカ微粒子を固形分として20〜50wt%分散した超微粒コロイダルシリカが10未満であると,上記同様所望の被膜硬度が得られず、充分な光沢も得られない。50wt%を超えるとシリカ粒子の均一分散が困難となり、自己流動性が不良となりやすい。
また、可撓性付与剤としてシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能アルコキシシランが2wt%未満であると高硬度の材料設計の仕様となりやすく、可撓性を付与させることが困難となり、クラックやタイルの反りが発生しやすくなる。また、20wt%を超えると9H以上の高硬度の材料にすることが難しくなる。
また、前記超微粒コロイダルシリカとアルコキシシランとの結合剤としてシランカップリング剤が0.5wt%未満であると、アルコキシシランとシリカ粒子との化学的結合度が不十分となり、コーティング剤の白濁や塗布後に光沢不良などを引き起こす。2.0wt%を超えるとコーティング膜の特性劣化が懸念される。
さらに、アルコキシシランの加水分解によって生成されるシラノールの縮合反応を促進させる触媒が0.5未満であると、触媒としての機能が不十分で乾燥不良を引き起こし、5wt%を超えると触媒リッチとなり、急激に反応が促進されるために乾燥が急激に促進されて、コーティング膜の特性不良やクラック、密着不良の原因となる。
請求項2の発明は、前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加した請求項1に記載の化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
この発明においては、前記請求項1記載のコーティング組成において、帯電抵抗値1×1010Ω以下である化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング膜を提供することができる。
イオン伝導剤や超微粒子の導電性酸化錫粉末と導電性酸化インジウム粉末及びを分散した塗料が0.1wt%未満であると静電気対策が不十分であり、コーティング剤の帯電抵抗値が1×1010Ωを超えて静電気の発生が問題となる。また、5.0wt%を超えると帯電抵抗値は問題ないがコーティング被膜の硬度不足が懸念される。
請求項3の発明は、粘度が3cSt(mm/s)以下の請求項1又は2いずれかに記載の化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
この発明においては、床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とする場合、その流動性により自己平滑化が安定して得られ、膜厚が薄いため塩ビタイルなどの変形に追従しやすくなり、Pタイルや塩ビシートなどの床用として提供でき、市販のワックス用モップなどで塗布する仕様に適している。
本発明に用いられる4官能のアルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3官能のアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランなどを使用する。
また、可撓性を付与させるために使用する2官能アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどを使用する。また、シリコーンアルコキシオリゴマーとしては高分子量体や可とう性付与単位を導入したメチル系オリゴマーを使用した方が望ましい。高分子量体のメチル系オリゴマーは添加量を増やすと粘度の上昇を招く恐れがあるために、少量の添加でなければならない。
シランカップリング剤としては、官能基がビニル基、エポキシ基、アミノ基などのものを使用して主にビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3.4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトシキシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを使用する。
高硬度を保有させるために使用するコロイダルシリカは有機溶剤に分散したタイプ、例えば分散媒としてメタノール系、イソプロパノール系、エチレングリコール系、ジメチルアセトアミド系、メチルエチルケトン系、メチルエチル系、キシレンn−ブタノール系、メチルイソブチル系を使用する。また水分散型コロイダルシリカも使用する。いずれも粒子径が5nm〜20nmである。
触媒としてはリン酸系やチタン系触媒(有機チタネート)などを使用する。リン酸系はアルコール(イソプロピルアルコールなど)で希釈されたもので固形分の割合が20〜30%のものを使用する。また、チタン系触媒としては有機チタネートなどを使用し、主にテトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−プトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコート、チタニウムステアレートなどをアルコールなどで50%位に希釈したものを使用し、いずれも重量比で0.1wt%〜5.0wt%添加する。
本発明の実施例では、4官能のアルコキシシランと3官能のアルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均粒径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%とを混合した。
この混合組成に、可撓性付与剤としてシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能アルコキシシランを2〜20wt%と、前記シリカ粒子とアルコキシシランとの結合剤としてシランカップリング剤0.5〜2.0wt%と、アルコキシシランの加水分解によって生成されるシラノールの縮合反応を促進させる触媒を0.5〜5wt%とを配合した。前記シリコーンアルコキシオリゴマーは分子末端がアルコキシシリル基(=Si−OR)で封鎖された低分子のアルコキシオリゴマーである。このような低分子のアルコキシオリゴマーを使用することによりコーティング剤の粘度上昇を防ぐメリットがある。
さらに、前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤や超微粒子の導電性酸化錫粉末と導電性酸化インジウム粉末及びこれを分散した塗料を0.1wt%〜5.0wt%添加することが出来る。これらの配合割合は後記第3表に示す。
尚、可撓性付与剤として、前記シリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能アルコキシシランを使用するが、特にメチル及びメチル・フェニル有機置換基シリコーンアルコキシオリゴマーが望ましい。シリコーンアルコキシオリゴマーは、特に有機置換基がメチル基やメチルフェニル基のものが良好である。メチル基を有機置換基とするシリコーンレンジは光やオゾンによる劣化を受けにくく、加水分解反応性に優れているために、触媒を併用すれば耐候性に優れた仕様とすることができる。被膜に柔軟性や可撓性を持たせるには高分子量体や可撓性付与単位を導入したメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーが望ましい。また、フェニル基を含有するメチルフェニルオリゴマーは硬さ調整剤として使用されることが多く、いろいろな樹脂との相溶性も良い。従ってこのようなシリコーンアルコキシオリゴマーが特に望ましい。
Figure 0004957926
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Figure 0004957926
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上記第1表の試料1〜18のコーティング剤を塩ビ系タイルに塗布して、以下の方法により塗膜評価を行いない第2表に示す。
(1)流動性(粘度;cSt(mm /s);粘度の測定方法JIS K5600−2−2のフローカップ法に準じて行った。
(2)指触乾燥性(時間);JIS K5400に準ずる。塩ビシート面に塗布された後、塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態に塗膜が形成されるまでの乾燥時間を示した。
(3)光沢度;JIS K5400に準ずる。鏡面光沢測定装置を用い、入射角と反射角とが60度の時の反射率を測定し、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100とした場合の百分率で示した。
(4)鉛筆強度;JIS K−5400に準ずる。試験片を水平な台の上に塗膜面を上向きにして固定して約45度の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度に出来るだけ強く塗膜面に押し付けながら、試験者の前方に均一な速さで約1cm位押し出して塗膜面を引っ掻く。塗膜面の破れに生じない最も硬い鉛筆の硬度記号を示した。
(5)塗布厚;試験片の施工前後の厚みをマイクロメーターか三次元測定機にて測定した。尚、測定は塗布後、約1日経過後のものについて行った。
(6)密着性;JIS K5400記載の碁盤目法に準じ、試験片の塗面に対し1cm中に1mmの碁盤目を100個切り、これにセロファンテープを圧着してから剥離し、100個のうちの残存数から、JIS K5400に示す10を最良評価点数に基づき判定した。
(7)クラックの有無;塩ビタイルに塗布後、常温25℃で約1週間放置して塩ビタイルの表面にクラックの発生があるかどうかを観察する。
Figure 0004957926
Figure 0004957926
第2表から理解されるように、試料1〜3のものは4官能及び3官能アルコキシシランのみによる結果で、流動性(粘度)が1.3〜1.4cSt(mm/s)と3cSt(mm/s)以下で低く自己平滑性に優れているために表面光沢度も80を越える値が得られるが、可撓性が付与させていないためにタイルの反りが激しく、試料1〜3についてはクラック又は微クラックが発生した。
それに比較して試料4〜5につては、可撓性としてシリコーンアルコキシオリゴマーをパラメーターにして評価を行った。その結果、シリコーンアルコキシオリゴマーの添加量を5%から10%に増やしていくと、可撓性は改善されてクラックの発生が抑制することが出来たが多少粘度は上昇した。また、硬度は8H位と硬度劣化を起こすことが分かった。
試料6〜9については、2官能のアルコキシシランをパラメーターにして評価したところ、流動性、光沢値、硬度、塗膜厚み、密着性とも良好な結果が得られた。但し、試料9の硬度は8Hまで劣化してしまうことが分かった。
試料10から14はコロイダルシリカをパラメーターにして評価した時の結果である。水溶性タイプのコロイダルシリカを20〜50%に増やした結果では多少の流動性や光沢度の差はあるものの、良好な結果が得られた。溶剤系のコロイダルシリカについても良好な結果が得られた。
試料15〜18については、硬化触媒とシランカップリング剤の添加量をパラメーターにして評価した結果である。触媒としてリン酸系の添加量を増やしていくと、指触乾燥が大幅に短縮することが可能で、5%の添加量においては約20分位で指触乾燥することができる。一方、有機チタネートの場合も同様に添加量を増やしていくことで指触乾燥を短縮出来る。また、シランカップリング剤を2%から0.5%の範囲で添加量を変えてテストしたが特に粘度、硬度、光沢度などに顕著な差は見られなかった。
実験例2
第1表の試料16の基本組成に対し、静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末及び導電性酸化インジウム粉末を加えて一般帯電物の表面電位の測定により帯電抵抗値の測定を行った。
Figure 0004957926
上記第3表の試料20〜29について、コーティング層の帯電抵抗値を上記一般帯電物の表面電位の測定により測定した。イオン導電剤、導電性酸化錫粉末、導電性インジウム粉末とも添加量0.5%では1×1010Ωであったが、添加量を1.0%以上に増やすと1×10Ωと帯電抵抗値が低くなることが理解される。
発明の効果
本発明においては、超微粒コロイダルシリカを使用することによりシリカ粒子の硬度によって高硬度化が可能となる。また、超微粒子シリカを含むコロイダルシリカは粘度が低く、このコロイダルシリカを4官能及び3官能のアルコキシシランの混合物と混合して使用すると、粘度が3cSt(mm/s)以下で床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とした場合でも、その流動性により自己平滑化が安定して得られ、塗膜後90分若しくはそれ以内に指触乾燥して超薄膜のコーティング膜が得られ、硬度が鉛筆硬度で8Hを越え、光沢が60%以上のコーティング膜が得られる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を提供することができる。
また、上記混合成分に対し、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを混合するため皮膜の可撓性付与が充分で、柔軟性を有する化学床保護用基材への密着性が良好で、クラックやひび割れが発生しないコーティング膜が得られる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を得ることができる。
また、上記混合成分に対して、前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加するため、帯電抵抗値1×10 10 Ω以下であるコーティング膜が得られる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤を得ることができる。
さらに、床面に塗布して3〜7μmと薄いコーティング膜とするた場合、その流動性により自己平滑化が安定して得られ、膜厚が薄いため塩ビタイルなどの変形に追従しやすくなり、Pタイルや塩ビシートなどの床用として提供でき、市販のワックス用モップなどで塗布する仕様に適している。

Claims (3)

  1. コーティング剤全体の組成に対し、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種以上の4官能アルコキシシランと、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種以上の3官能アルコキシシランとの混合物を10〜45wt%と、平均径5〜20nmの超微粒コロイダルシリカ10〜50wt%と、化学床用として可撓性を付与させるためにシリコーンアルコキシオリゴマー及び/又は2官能のアルコキシシランを2〜20wt%と、前記超微粒コロイダルシリカとアルコキシシランとの結合剤として官能基がビニル基、エポキシ基、アミノ基の何れかを使用したシランカップリング剤0.5〜2.0wt%と、前記アルコキシシランの加水分解によって生成されるシラノールの縮合反応を促進させる触媒としてリン酸系触媒又はチタン系触媒を0.5〜5wt%とを配合してなる化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤。
  2. 前記コーティング剤の静電気特性を改善するためにイオン伝導剤、超微粒子の導電性酸化錫粉末、導電性酸化インジウム粉末及びそれを分散した 塗料から選ばれる少なくとも1種以上を0.1wt%〜5.0wt%添加した請求項1に記載の化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤。
  3. 粘度が3cSt(mm /s)以下の請求項1又は2いずれかに記載の化学床保護用可撓性付与常温硬化型無機質コーティング剤。
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