JP4906236B2 - 締付工具 - Google Patents
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Description
しかしながら、上述した方法では、作業中に何らかの原因(例えば、クラッチの損傷)で締付トルクが設定値からずれたとしても、その時点では締付トルクが設定値からずれたことが判断できず、作業終了後の計測によって知ることとなる。このため、その作業期間中に行われた全ての締付作業について再検査等を行わなければならないといった問題が生じる。
なお、締付工具の中には、主軸にトルクセンサを設け、締付作業毎に締付トルクを検出するものもある。しかしながら、トルクセンサは高価であって、作業中にクラッチの損傷等によって締付トルクが変化するという可能性の低い事態に対応するものとしては、費用対効果の面から採用することができないものであった。
この締付工具では、モータに流れる電流が設定値を超えた時からトルク伝達遮断時までのネジ類の回転角によってネジ類の締付トルクを判断する。すなわち、設定値を適宜設定することで、ネジ類の着座以降のネジ類の回転角度が測定される。被締付部材に着座した以降のネジ類の回転角度は、ネジ類の締め付けトルクと相関があるため、その回転角度によってネジ類の締付トルクが正常か否かを判断することができる。
なお、本願第1の締付工具で行われるトルク伝達遮断時のモータ電流値による締付トルクの判定と、本願第2の締付工具で行われる着座以降のネジ類の回転角度による締付トルクの判定の両者を同時に行うようにしてもよい。両者を同時に行うことで、締付トルクの判定精度を高めることができる。
このような構成によると、ネジ類の締付トルクが正常でないと、作業者にその旨の警告が行われるので、作業者は直ちに対応することができる。
この管理システムでは、締付工具を用いてネジ類の締付作業が行われると、締付作業毎に締付工具自身によってネジ類の締付トルクが正常であったか否かの判断が行われ、その判断結果は管理装置にも送信され、管理装置のメモリに格納される。したがって、管理装置のメモリに格納された情報から、締付工具の作業回数やクラッチの磨耗の程度が判断でき、メンテナンスの要否を判断することができる。
なお、締付工具と管理装置との通信は有線又は無線のいずれによって行うようにしてもよい。また、締付工具から管理装置への判断結果の送信は、締付作業毎に行ってもよいし、一定の作業期間毎にその作業期間内に行われた締付作業の判断結果を纏めて送信するようにしてもよい。例えば、工場等の生産ラインで作業を行っている間は締付工具に判断結果を順次格納し、作業終了後にその日の作業結果を纏めて管理装置に送信するように構成することができる。
このような構成によると、特定情報から締付トルクが正常ではなかったネジ類が特定でき、当該ネジ類の再締付等の対応を円滑に行うことができる。
(形態1)モータの回転が機械式クラッチ機構を介して主軸に伝達される。主軸はネジ類と係合し、主軸が回転することでネジ類が被締付部材に締付けられる。
(形態2)クラッチ機構は、対向する一対のクラッチ板と、それら一対のクラッチ板の一方を他方に押圧する付勢手段(例えば、圧縮バネ)を備える。主軸に作用する負荷が設定値未満であると、それらクラッチ板は機械的に係合し、モータのトルクが主軸に伝達される。主軸に作用する負荷が設定値以上となると、一方のクラッチ板は他方のクラッチ板に対して空転し、モータから主軸へのトルク伝達が遮断される。付勢手段の押圧力は調整可能となっており、押圧力を調整することでクラッチ機構が作動する設定値を調整できる。
(形態3)クラッチ機構がトルク伝達を遮断したことを検出するクラッチ作動検出手段(例えば、スイッチ)と、モータに流れる電流を計測する電流計を備える。クラッチ作動検出手段からの出力と電流計からの出力は、制御装置(例えば、マイクロコンピュータ)に入力される。
(形態4)制御装置は、クラッチ作動検出手段からの出力に基づいてクラッチが作動したと判断すると、電流計の出力からモータに流れる電流値を読取り、同時に、モータへの電流の供給を停止する。制御装置は、読取った電流値が設定範囲内(例えば、設定電流値以上)であるとネジ類の締付トルクが正常であると判断し、一方、読取った電流値が設定範囲外(例えば、設定電流値未満)であるとネジ類の締付トルクが異常であると判断する。
(形態5)主軸には、主軸の回転角を検出する回転角検出手段(例えば、ロータリーエンコーダ)が設けられる。回転角検出手段の出力は制御装置に入力される。制御装置は、モータに流れる電流が所定の電流値を超えたときから、クラッチ機構が作動するまでの主軸の回転角度を計測する。そして、制御装置は、計測された回転角度が設定角度範囲内(例えば、設定角度以上)であるとネジ類の締付トルクが正常であると判断し、一方、計測された回転角度が設定角度範囲外(例えば、設定角度未満)であるとネジ類の締付トルクが異常であると判断する。
(形態6)モータは永久磁石式同期モータ(例えば、ブラシレスDCモータ)を用いることができる。永久磁石式同期モータは、ロータの機械的慣性力(イナーシャ)を小さくすることが好ましい。ロータの機械的慣性力を小さくすることで、ネジ類の締付トルクとモータ電流値との相関関係を高めることができる。
(形態7)制御装置は、作業種類毎(例えば、締付部位のターゲット・トルクと被締付部材の種類(鉄などの硬い部材(以下、ハードジョイント材という)又は木材などの軟らかい部材(以下、ソフトジョイント材という)))にモータ電流の設定範囲及び/又は主軸回転角の設定角度範囲を記憶する。特に、モータ電流の設定範囲はクラッチの設定トルクに応じた値を設定することが好ましい。作業管理者等は締付工具と有線又は無線にて接続された外部入力装置(例えば、パソコン)を操作して、作業種類に応じてモータ電流の設定範囲及び/又は主軸回転角の設定角度範囲を設定することができる。あるいは、簡易的に締付部位のターゲット・トルクに応じてクラッチ調整を施した工具にて、トルクテスタあるいは実際の締付部位を数十回程度締付け、各締付毎のクラッチ作動時のモータ電流を記憶する。そして、それら記憶した電流値の平均値等の統計処理された値をモータ電流設定値とし、そのモータ電流設定値から設定範囲(例えば、設定電流値の±10%以内)を自動的に設定し、その設定範囲をモータ電流の設定範囲とすることができる。
(形態8)制御装置は、ネジ類の着座後のモータ電流値の経時変化から作業種類を決定し、その決定された作業種類に対応する締付トルク判定条件(モータ電流の設定範囲及び/又は主軸回転角の設定角度範囲)を選択することができる。
図2,3に示すようにクラッチ機構14は一対のクラッチ板22,24を備える。クラッチ板22の下面には、遊星歯車機構12を介してモータM(図1参照)が接続される。クラッチ板22の上面(クラッチ板24と対向する面)には突起22aが形成されている。一方、クラッチ板24の下面(クラッチ板22側の面)には突起24aが形成されている。クラッチ板22の突起22aとクラッチ板24の突起24aは、ボール26を介して係合するようになっている。
座板31は、クラッチ板24から所定の距離だけ離れた位置で、ハウジング11に対して連結棒32の軸方向に移動不能で、かつ、ハウジング11に対して回転可能に支持される。座板31の上面には上方に突出する連結部33が形成され、その連結部33に回転軸16が固定されている。座板31とクラッチ板24との間には圧縮バネ28が圧縮された状態で介装される。したがって、クラッチ板24は圧縮バネ28によってクラッチ板22の方向(下方)に付勢される。なお、圧縮バネ28の圧縮量(すなわち、クラッチ板24から座板31までの距離)は調整可能となっており、圧縮バネ28の圧縮量を調整することでクラッチ板24に作用する付勢力が調整可能となっている。
外筒44の図面右端には、円筒状のセンサ取付部材46が固定される。センサ取付部材46の内壁面上で磁石52と対向する部位には回転角検出センサ48が配設されている。回転角検出センサ48は、磁界の変化を検出して出力信号の状態を切替えるラッチ型のホールICである。回転角検出センサ48の出力信号は、S極側の磁界が作用するとLOWレベルとなり、N極側の磁界が作用するとHIGHレベルとなる。
したがって、回転軸16が回転し、回転角検出センサ48と対向する位置にS極側が外周側となる磁石52が位置すると回転角検出センサ48の出力信号はLOWレベルとなり、N極側が外周側となる磁石52が位置すると回転角検出センサ48の出力信号はHIGHレベルとなる。このため、回転軸16の回転に応じて回転角検出センサ48からパルス信号が出力され、このパルス信号の数をカウントすることで回転軸16の回転角を検出することができる。
また、マイクロコンピュータ62には表示装置54が接続されている。表示装置54はLED等によって構成され、締付トルクが正常であったか否かを作業者に報知する。例えば、表示装置54は、二色のLED(赤色LEDと緑色LED)によって構成することができる。そして、締付トルクが正常であった場合は緑色LEDが点灯され、締付トルクが異常であった場合は赤色LEDが点灯される。なお、表示装置54はハウジング11内に収容され、ハウジング11に形成された表示窓(図1で図示省略)を介して作業者が視認できるようになっている。
図6に示すように、マイクロコンピュータ62は、まず、トリガスイッチSWがONされたか否かを判断する(S10)。トリガスイッチSWがONされているとステップS12に進み、トリガスイッチSWがONされていないとトリガスイッチSWがONされるまで待機する。
ステップS12に進むとマイクロコンピュータ62はモータMの回転を開始し、次いで、電流検出部64からの出力に基づいてモータMに流れる電流値を計測する(S14)。そして、ステップS14で計測されたモータ電流値が第1設定値以上となるか否かを判定する(S16)。「第1設定値」は、ネジSが被締付部材Wに着座したか否かを判断するために設定された設定値である。
計測されたモータ電流値が第1設定値未満の場合〔ステップS16でNO〕は、ネジSが被締付部材Wに着座していないと判断し、ステップS14に戻ってステップS14からの処理を繰り返す。逆に、計測されたモータ電流値が第1設定値以上の場合〔ステップS16でYES〕は、ネジSが被締付部材Wに着座したと判断し、ステップS18に進む。
ステップS24では回転角検出センサ48からの検出信号(パルス波)を検出したか否かを判断する。パルス波を検出している場合〔ステップS24でYES〕はカウンタの値を1インクリメントし(S26)、パルス波を検出していない場合〔ステップS24でNO〕はステップS26をスキップする。
ステップS28では、検出スイッチ36からの検出信号に基づいてクラッチ機構14が作動(すなわち、モータMから回転軸16へのトルク伝達の遮断)したか否かを判断する。クラッチ機構14が作動していない場合〔ステップS28でNO〕は、ステップS20に戻って、ステップS20からの処理を繰り返す。したがって、マイクロコンピュータ62のRAMには処理毎にモータ電流値が上書きされていき、また、回転角検出センサ48からの検出信号に基づいてカウンタの値が増加してゆく。
また、本実施例の締付工具10では、モータMにブラシレスDCモータを用いることでロータのイナーシャを小さくし、検出されるモータ電流値やネジSの回転角に対するロータのイナーシャの影響を小さくしている。このため、モータ電流値やネジSの回転角に基づいて、ネジSの締付トルクを精度良く判断することができる。
図8から明らかなように、ハードジョイント材にネジを締付けた場合は、ネジが着座してからの電流増加率は大きいが、クラッチ作動時のモータ電流値IHは低くなる。一方、ソフトジョイント材にネジを締付けた場合は、ネジが着座してからの電流増加率は小さいが、クラッチ作動時のモータ電流値IS(IS>IH)は高くなる。したがって、ハードジョイント材にネジを締付けるときの「第1設定値」は、ソフトジョイント材にネジを締付けるときの「第1設定値」より低めの値に設定されることとなる。ただし、モータ回転数を下げ、遊星ギヤのギヤ比を小さくすることで、モータ・イナーシャの影響を極力低減することが可能である。このため、そのように構成した場合はIHとISとの差を小さくすることができ(IH≒IS)、簡易的に両者を同一の値とすることもできる。
かかる場合において「第2設定値」の変更は、作業者がスイッチ等を操作して行うようにしてもよいが、マイクロコンピュータ62によって判断するようにしてもよい。例えば、被締付部材の種類毎にモータ電流値の経時変化のパターンをマイクロコンピュータ62に記憶し、その記憶した経時変化のパターンとネジ締め作業時に計測されるモータ電流値の経時変化から被締付部材の種類を特定するようにしてもよい。例えば、ネジ着座後のモータ電流値の電流増加率の大きさから判断するようにしてもよい。あるいは、ネジ着座後のネジの回転角度の変化率によって判断することもできる。すなわち、ハードジョイント材にネジを締付ける場合におけるネジ着座後のネジの回転角度変化は、ソフトジョイント材に締付ける場合におけるネジ着座後のネジの回転角度変化より小さくなる。したがって、この相違を利用して被締付部材の種類を特定することもできる。
例えば、上述した実施例においては、モータMにブラシレスDCモータを用いたが、締付工具のモータには永久磁石式ブラシモータ(例えば、ブラシ付きDCモータ)を用いることもできる。図9にブラシ付きDCモータを用いた場合の締付工具の制御構成を示している。図9から明らかなように、この締付工具では回転軸の回転角度を検出する回転角検出センサが設けられておらず、クラッチ作動時のモータ電流値のみによって締付トルクが正常か否かの判定が行われている。
図11に示すように締付工具10a,10b・・10nは、それぞれ通信装置56a,56b・・56nを備える。各締付工具10a,10b・・10nの通信装置56a,56b・・56nは、当該締付工具に装備されたマイクロコンピュータ(図5参照)と接続され、このマイクロコンピュータによって制御される。
管理装置80はパソコン等によって構成され、締付工具10a,10b・・10nと通信可能に接続されている。また、管理装置80には外部記憶装置90が接続される。外部記憶装置90には、締付工具10a,10b・・10n毎に作業管理情報が格納される。
一方、管理装置80は、締付工具10a,10b・・10nからの作業管理情報を受信すると、その受信した作業管理情報を外部記憶装置90に格納する。作業管理情報は、締付工具毎(すなわち、締付工具のID番号毎)に作業結果(締付トルクの正常/異常、クラッチ作動時のモータ電流値、回転軸の回転角度等)と特定情報(作業完了時刻等)が格納される。
11:ハウジング
12:遊星歯車機構
14:クラッチ機構
16:回転軸
18:軸受装置
20:スピンドル
60:制御ユニット
M:モータ
Claims (5)
- モータと、
モータを起動するトリガスイッチと、
ネジ類に係合する主軸と、
モータと主軸との間に介装され、主軸に作用する負荷が所定値未満のときはモータからのトルクを主軸に伝達して主軸を回転させ、主軸に作用する負荷が所定値以上となるとモータから主軸へのトルク伝達を遮断するクラッチと、
クラッチがモータから主軸へのトルク伝達を遮断したことを検出するスイッチと、
作業者によってトリガスイッチが操作されるとモータへの電流供給を開始し、その電流供給中にモータから主軸へのトルク伝達が遮断されたことをスイッチにより検出したときに、モータへの電流供給を常に停止する電流供給手段と、
モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
モータから主軸へのトルク伝達が遮断されたことをスイッチにより検出したときに、その遮断時に電流検出手段で検出されたモータ電流値からネジ類の締付トルクが正常か否かを判断する判断手段と、
を有する締付工具。 - モータと、
モータを起動するトリガスイッチと、
ネジ類に係合する主軸と、
モータと主軸との間に介装され、主軸に作用する負荷が所定値未満のときはモータからのトルクを主軸に伝達して主軸を回転させ、主軸に作用する負荷が所定値以上となるとモータから主軸へのトルク伝達を遮断するクラッチと、
クラッチがモータから主軸へのトルク伝達を遮断したことを検出するスイッチと、
作業者によってトリガスイッチが操作されるとモータへの電流供給を開始し、その電流供給中にモータから主軸へのトルク伝達が遮断されたことをスイッチにより検出したときに、モータへの電流供給を常に停止する電流供給手段と、
モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
主軸又はモータの回転角度を検出する回転角度検出手段と、
(1)電流検出手段で検出される電流値が予め設定された設定値を超えたときから(2)モータから主軸へのトルク伝達が遮断されたことをスイッチにより検出するまでの間に、前記回転角度検出手段で検出される主軸又はモータの回転角度からネジ類の締付トルクが正常か否かを判断する判断手段と、
を有する締付工具。 - 前記判断手段によってネジ類の締付トルクが正常でないと判断されたときに、その旨を作業者に警告する手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の締付工具。
- 請求項1又は2に記載の締付工具と、その締付工具と通信可能に接続された管理装置とを有する管理システムであって、
締付工具は、管理装置と通信するための手段をさらに有し、
管理装置は、締付工具と通信するための手段と、作業管理情報を記憶するメモリとを有し、
締付工具の通信手段は、前記判断手段で判断された判断結果を管理装置に送信し、
管理装置のメモリには、締付工具の通信手段から送信された判断結果が格納されることを特徴とする締付工具の管理システム。 - 締付工具の通信手段は、管理装置に判断結果を送信する際にその判断結果に係るネジ類を特定するための特定情報を併せて送信し、管理装置のメモリには受信した判断結果と特定情報が関連付けられて格納されることを特徴とする請求項4に記載の締付工具の管理システム。
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