JP3744207B2 - トルククラッチ付き電動締付工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動ドライバーのような締付工具であるとともに、締付トルクが設定値に達した時に動力伝達を遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの作動に伴ってモータをオフとするシャットオフ装置とを備えているトルククラッチ付き電動締付工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
締付トルクが設定値に達した時に動力伝達を遮断するトルククラッチを備えた工具は従来より種々のものが提供されているが、このトルククラッチには通常時は互いの係合によって一体に連結されている一対のクラッチ部材で構成されるとともに、負荷トルクが設定値より大きくなった時には、一方のクラッチ部材が他方のクラッチ部材における突起に乗り上げる動作を繰り返しつつ空転を行うことで動力伝達を遮断するものが一般に用いられており、また、トルククラッチの動作時にモータの停止も行うようにしたもの、所謂オートシャットオフがなされるようにしたものが提供されている。
【0003】
図6及び図7にトルククラッチの一例を、図8に従来のシャットオフ回路を示す。モータの回転軸に設けられたサンギア21と、ギアケース8内面に固着されたリングギア23とにキャリア24で支持された複数個の遊星ギア22が噛み合っており、そしてキャリア24に一体に形成されているサンギア25と上記リングギア23における他の内歯車部とに複数個の遊星ギア26が噛み合っている。そし上記遊星ギア26を支持しているキャリア27は、3段目の遊星機構のサンギア28を一体に備えており、このサンギア28と、ギアケース8内に遊転自在に配されたリングギア31とに遊星ギア29が噛み合っている。遊星ギア29を支持しているキャリア30は、ロック機構におけるロック板60を介して出力軸9に連結されている。ここにおけるロック機構は手締め作業時のためにギアケース8に対して出力軸9のオートロックを行うためのものであるが、この機構については説明を省略する。
【0004】
締付トルク調整用のトルククラッチは上記3段目の遊星機構における遊転自在とされたリングギア31を利用したもので、リングギア31の軸方向端面に形成された突条32と、ギアケース8の段部を軸方向に貫通するものとして設けられている貫通孔に配設されて上記突条32と係合するボール33と、ギアケース8の小径とされた先端部外周面に配されている調整部材34と、調整部材34に一端を弾接するとともに他端をクリック板35とクラッチ板36とを介して上記ボール33に弾接させるクラッチばね37と、本体1の先端部に回動自在に取り付けられたクラッチハンドル3とによってトルククラッチ及び締付トルク設定部が形成されており、調整部材34はギアケース8の小径部外周面に形成された雄ねじと螺合する雌ねじを内周面に備えるとともに、前記クラッチハンドル3の内面に形成されている軸方向の縦溝と摺動自在に係合する突起39を外周面に備えて、クラッチハンドル3の回転に伴なってギアケース8に対し、軸方向に螺進退するものとなっている。
【0005】
モータの出力は、1段目及び2段目の遊星機構と、クラッチばね37による付勢でボール33が係止することにより回転が妨げられているリングギア31を備えた3段目の遊星機構とによって減速されて出力軸9に伝達される。そしてリングギア31にかかる負荷トルクが、クラッチばね37によって与えられたボール33とリングギア31の突条32との間の係合力よりも高くなれば、リングギア31がクラッチばね37に抗してボール33を押し出して空転を始める。リングギア31とボール33とからなるトルククラッチが滑るために、締付トルクの制限がなされるわけである。また、クラッチハンドル3を回転させることにより、調整部材34を図6中において下方に移動させてクラッチばね37を圧縮したならば、ボール33とリングギア31との係合力が大きくなるために、リングギア31が空転を始める負荷トルクが大きく、つまりは締付トルクが大きくなる。尚、クラッチばね37からリングギア31に加えられるスラスト力は、ギアケース8を貫通しているスラスト受け用ピン80によって受けている。
【0006】
シャットオフ回路は、図8に示すように、上記クラッチ板36の動きを検出するクラッチセンサーSと、クラッチセンサーSの出力電圧を所定電圧と比較する比較器Cと、作業開始直後の安定待ち時間のために比較器Cの出力と電源電圧との論理積をとる検出回路Dと、検出回路Dの出力を保持する保持回路Lと、保持回路Lからのモータ停止信号を受けてモータMを停止させるモータ制御回路Aとからなるもので、トルククラッチが作動した時、つまり、リングギア31が空転を始めるためにボール33を介してクラッチ板36を動かす時のクラッチ板36の動きを検出するクラッチセンサーSの出力が所定レベルを超えたために、比較器CがHレベル信号▲2▼を出力する時、保持回路Lがモータ制御回路Aにモータ停止信号▲5▼を出力してモータMを停止させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記トルククラッチは、上述のように、負荷トルクが設定トルクより大きくなった時、一方のクラッチ部材(ボール33)が他方のクラッチ部材(リングギア31)における突起(突条32)に乗り上げるわけであるが、モータMの停止により、トルククラッチが上記の状態、つまりボール33が突条32に乗り上げた状態で止まってしまうことがある。
【0008】
この場合、図9(b)に示すように、シャットオフ回路は、その作業開始時から安定待ちの時間が経過した時点でモータ停止信号を保持回路Lより出力してしまい、モータMを正常に起動させることができない。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところはオートシャットオフ機能を得ることができると同時にトルククラッチの状態にかかわらずモータを正常に起動させることができるトルククラッチ付き電動締付工具を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明は、モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、負荷トルクの増大で可動部材が移動することで動力伝達の遮断を行う上記トルククラッチにおける可動部材の動作を検出してトルククラッチ動作信号を出力するクラッチセンサーと、該クラッチセンサーの出力でモータを停止させるシャットオフ回路とを備えているトルククラッチ付き電動締付工具において、シャットオフ回路はクラッチセンサーのトルククラッチ動作信号の変化をもとにモータを停止させるものであることに特徴を有している。
【0011】
トルククラッチが作動して動力伝達を遮断した時のモータ停止動作を行わせることができると同時に、トルククラッチの可動部材が移動した状態でモータが停止してしまっても、次のモータ起動に支障が生じることはない。
【0012】
ここにおけるシャットオフ回路は、クラッチセンサーのクラッチ動作信号とその反転信号との論理積から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものとしたり、クラッチセンサーのクラッチ動作信号の微分から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものとしたりすることができるほか、クラッチセンサーのクラッチ動作信号をパルスとして検出して該パルスをもとにモータを停止させるものやパルスの複数回検知をもとにモータを停止させるものとすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述する。トルククラッチの機構としては上記従来例で示したものと同じものを用いることができる。ただし、上記の構成に限定されるものではなく、負荷トルクの増大で可動部材が移動してクラッチの切り離しを行うものであれば、どのような構造のものであってもよい。
【0014】
そして、本発明においては、上記トルククラッチにおける可動部材(クラッチ板36)の動きを検出するクラッチセンサーSの出力をもとにモータ停止信号を出力してモータを停止させるシャットオフ回路として、図1に示すものを用いている。すなわち、可動部材(クラッチ板36)の動きを光学的に検出する上記クラッチセンサーSの出力電圧を所定電圧と比較する比較器Cの出力信号を2つに分けて、一方を遅延反転回路D1で遅延反転させた後、両信号▲3▼▲4▼の論理積をとることでクラッチセンサーSの出力信号の立ち上がりを検出するものとし、この出力▲5▼を作業開始直後の安定待ち時間のための検出回路D2を通じて保持回路Lに送り、保持回路Lからモータ停止信号▲8▼を出力させるようにしている。
【0015】
クラッチセンサーSのトルククラッチ動作検出信号のHレベル出力でモータMを停止させるのではなく、トルククラッチ動作検出信号の立ち上がりでモータMを停止させるものであり、このために正常動作時におけるトルククラッチの作動時にモータ停止信号▲8▼が図2(a)に示すように適切に出力されるのはもちろん、モータ停止時に可動部材(クラッチ板36)が乗り上げたままとなったためにクラッチセンサーSのトルククラッチ動作検出信号がHレベルを保ってしまっている時には、図2(b)に示すように、トルククラッチ動作検出信号の立ち上がりが無いためにモータ停止信号▲8▼はLレベルのままとなり、モータMを停止させてしまうことはなく、従って電動締付工具におけるトリガースイッチ(図示せず)の操作によるモータMの駆動に支障が生じることはない。
【0016】
図3はシャットオフ回路の他例を示しており、ここではクラッチセンサーSの出力信号を微分回路Bで微分することで、トルククラッチ動作検出信号の立ち上がりを検出し、この立ち上がりによって保持回路Lからモータ停止信号を出力させるようにしている。この場合、抵抗とコンデンサとダイオードの3点の部品で立ち上がりの検出することができるために、低コストですむ。
【0017】
図4はシャットオフ回路の更に他例を示しており、ここではクラッチセンサーSの出力信号の立ち上がりと立下りとからなる1パルスを計数するバイナリカウンタEを用いて、1パルスもしくは複数パルス(図示例では2パルス)が入った時に保持回路Lを通じてモータ停止信号を出力させている。この場合も、モータ停止時に可動部材(クラッチ板36)が乗り上げたままとなっても次のモータ起動時にモータ停止信号が出力されてしまうことがない。
【0018】
クラッチセンサーSの出力を図5に示すようにマイクロコンピュータからなる制御回路Fに入力して、該制御回路Fの出力でモータ停止信号を出力させるようにしてもよく、この場合には制御回路Fにおけるプログラムにより、クラッチセンサーSの出力信号の立ち上がりでモータ停止信号が出力されるようにすることができるのはもちろん、立ち上がりと立下りの順次入力(パルス入力)でモータ停止信号が出力されるようにしたりすることができる。
【0019】
なお、ねじの締め付けに関して言えば、端子ねじのように、ねじの着座と同時に負荷が一気に増大するような時には、立ち上がり検知でモータを停止させるのが好ましく、木ねじのように負荷がねじの着座直前から漸次増大するような時には、パルス検知でモータを停止させるのが好ましい。従って、上記マイクロコンピュータからなる制御回路Fを用いる場合には、トルククラッチ動作検出信号の立ち上がりでモータを停止させるか、立下りを待ってモータを停止させるかを切り換えることができるようにしておいてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、負荷トルクの増大で可動部材が移動することで動力伝達の遮断を行う上記トルククラッチにおける可動部材の動作を検出してトルククラッチ動作信号を出力するクラッチセンサーと、該クラッチセンサーの出力でモータを停止させるシャットオフ回路とを備えているトルククラッチ付き電動締付工具において、シャットオフ回路はクラッチセンサーのトルククラッチ動作信号の変化をもとにモータを停止させるために、トルククラッチが作動して動力伝達を遮断した時のモータ停止動作を的確に行わせることができるのはもちろん、トルククラッチの可動部材が移動した状態でモータが停止してしまっても、次のモータ起動時にモータ停止出力を出すことがないために、モータ起動を支障なく行うことができる。
【0021】
そして、上記シャットオフ回路として、クラッチセンサーのクラッチ動作信号とその反転信号との論理積から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものとすれば、確実な動作を得ることができ、クラッチセンサーのクラッチ動作信号の微分から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものとすれば、低コストで上記動作を得ることができ、クラッチセンサーのクラッチ動作信号をパルスとして検出して該パルスをもとにモータを停止させるものやパルスの複数回検知をもとにモータを停止させるものとすれば、より確実なトルククラッチ動作検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の回路図である。
【図2】同上の動作を示す説明図であって、(a)は通常時のタイムチャート、(b)は異常時のタイムチャートである。
【図3】同上の他例の回路図である。
【図4】同上のさらに他例の回路図である。
【図5】同上の別の例の回路図である。
【図6】トルククラッチの一例の断面図である。
【図7】同上の分解斜視図である。
【図8】従来例の回路図である。
【図9】同上の動作を示す説明図であって、(a)は通常時のタイムチャート、(b)は異常時のタイムチャートである。
【符号の説明】
S クラッチセンサー
C 比較器
D1 遅延反転回路
D2 検出回路
L 保持回路

Claims (5)

  1. モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、負荷トルクの増大で可動部材が移動することで動力伝達の遮断を行う上記トルククラッチにおける可動部材の動作を検出してトルククラッチ動作信号を出力するクラッチセンサーと、該クラッチセンサーの出力でモータを停止させるシャットオフ回路とを備えているトルククラッチ付き電動締付工具において、シャットオフ回路はクラッチセンサーのトルククラッチ動作信号の変化をもとにモータを停止させるものであることを特徴とするトルククラッチ付き電動締付工具。
  2. シャットオフ回路は、クラッチセンサーのクラッチ動作信号とその反転信号との論理積から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものであることを特徴とする請求項1記載のトルククラッチ付き電動締付工具。
  3. シャットオフ回路は、クラッチセンサーのクラッチ動作信号の微分から求めた信号の立ち上がりをもとにモータを停止させるものであることを特徴とする請求項1記載のトルククラッチ付き電動締付工具。
  4. シャットオフ回路は、クラッチセンサーのクラッチ動作信号をパルスとして検出して該パルスをもとにモータを停止させるものであることを特徴とする請求項1記載のトルククラッチ付き電動締付工具。
  5. シャットオフ回路は、クラッチセンサーのクラッチ動作信号をパルスとして検出して該パルスの複数回検知をもとにモータを停止させるものであることを特徴とする請求項1または4記載のトルククラッチ付き電動締付工具。
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