JP3758346B2 - トルククラッチ付締付工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電動ドライバーのような締付工具であるとともに、締め付けトルクが設定値に達した時に動力伝達を遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの作動に伴ってモータをオフとするシャットオフスイッチとを備えているトルククラッチ付締付工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
締め付けトルクが設定値に達した時に動力伝達を遮断するトルククラッチを備えた工具は従来より種々のものが提供されているが、このトルククラッチの動作時に、モータの停止も行うようにしたもの、所謂オートシャットオフがなされるようにしたものがある。そして、このオートシャットオフを実現するにあたり、クラッチとモータ停止のためのシャットオフスイッチとを機械的に連係させたものが、特開平1−252369号公報に示されており、またこの公報に示されたものにおける問題点を改善したものを特願平5−213149号として出願している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記トルククラッチとしては、通常時は互いの係合によって一体に連結されている一対のクラッチ部材で構成されるとともに、負荷トルクが設定トルクより大きくなった時には、一方のクラッチ部材が他方のクラッチ部材における突起に乗り上げる動作を繰り返しつつ空転を行うことで動力伝達を遮断するものが用いられるが、このクラッチ動作とシャットオフ用スイッチのオフ動作とを機械的に連係させるにあたり、従来のものでは、動作速度がきわめて速い上記乗り上げ動作を行うクラッチ部材の移動ストローク及び移動力を利用して、シャットオフスイッチを作動させていたことから、力の点及びストロークの点並びに動作速度の点から、どうしてもシャットオフスイッチの動作が不安定になりがちであり、またシャットオフスイッチの動作制約が大きくて大電流遮断を安定して行うことができるものを用いにくいという問題を有しており、さらにはトルククラッチが回転慣性によって空転が持続した場合、機構破壊、特にトルククラッチとシャットオフスイッチとの連動部材の折損等が生じやすい。
【0004】
本発明はこのような点に鑑み為されたものであり、その目的とするところはトルククラッチとシャットオフスイッチとを連係させたものにおいて、安定したシャットオフ動作を得ることができるトルククラッチ付締付工具を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明は、モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの動作に連動してモータへの通電を遮断するシャットオフスイッチとを備えているトルククラッチ付締付工具において、トルククラッチの作動をシャットオフスイッチに伝達する動作伝達部と、ばねを動力源としているとともに上記動作伝達部の動きを受けて上記ばねに蓄積されたばね力でシャットオフスイッチに遮断動作を行わせる遮断動力部とを備えているとともに、シャットオフスイッチの導通状態への復帰及び遮断動力部の上記ばね部材にばね力が蓄積された初期状態への復帰は、モータへの通電制御用のスイッチにおけるトリガーレバーの復帰によってなされるものであることに第1の特徴を有しており、モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの動作に連動してモータへの通電を遮断するシャットオフスイッチとを備えているトルククラッチ付締付工具において、トルククラッチの作動をシャットオフスイッチに伝達する動作伝達部と、ばねを動力源としているとともに上記動作伝達部の動きを受けて上記ばねに蓄積されたばね力でシャットオフスイッチに遮断動作を行わせる遮断動力部とを備えているとともに、シャットオフスイッチの導通状態への復帰及び遮断動力部の上記ばね部材にばね力が蓄積された初期状態への復帰は、モータへの通電制御用のスイッチにおけるトリガーレバーの次回操作時の引き込み操作によってなされるものであることに第2の特徴を有している。トルククラッチの作動を動作伝達部によってシャットオフスイッチ側に伝達すれば、シャットオフスイッチ側の遮断動力部が遮断動作を行うようにしたものである。
【0006】
この場合、トリガーレバーの復帰によって遮断動力部における遮断動力としてのばね部材にばね力を蓄積するものであっても、トリガーレバーの引き込み操作によってばね部材にばね力を蓄積するものであってもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図示の実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図2に示す締付工具は、その出力部であるチャック90にドライバービットやドリルビットが選択的に取り付けられる電動ドリルドライバーであり、また本体1におけるハンドル部11に着脱自在に装着される蓄電池パック(図示せず)内の蓄電池を電源とするとともにトリガーハンドル15を引いた際にオンとなるスイッチユニット16を通じて給電されるモータ20を回転動力源とする電池電源型の電動式のもので、そのハウジング10の後端部には、トリガーハンドル15の引き具合に応じた出力を出す上記スイッチユニット16内のスピードコントロールモジュールの出力に応じて、モータ20の回転数をデューティ比の変化で制御するドライブ回路Dが収められており、さらにハウジング10内には締め付けトルクが設定値に達した時にモータ20への通電を遮断するシャットオフスイッチS、モータ20の回転方向を切り換えるための正逆切換スイッチ(これはスイッチユニット16内に組み込まれている)等が納められている。
【0009】
そして本体1内におけるモータ20と上記チャック90を備えた出力軸9との間には、ギアケース8と締め付けトルク設定用部材とが納められ、ギアケース8内には図3に示すように、モータ20の出力を減速する3段の遊星機構と、電動ドライバーとして使用する時のための締め付けトルク調整用クラッチと、手締め作業を行う場合に本体1に対して出力軸9をロックするロック機構とが納められている。
【0010】
上記モータ20の回転軸に設けられたサンギア21と、ギアケース8内面に固着されたリングギア23とにキャリア24で支持された複数個の遊星ギア22が噛み合っており、そしてキャリア24に一体に形成されているサンギア25と上記リングギア23における他の内歯車部とに複数個の遊星ギア26が噛み合っている。そし上記遊星ギア26を支持しているキャリア27は、3段目の遊星機構のサンギア28を一体に備えており、このサンギア28と、ギアケース8内に遊転自在に配されたリングギア31とに遊星ギア29が噛み合っている。遊星ギア29を支持しているキャリア30は、上記ロック機構におけるロック板60を介して出力軸9に連結されている。なお、手締め作業時のためのオートロックを行うロック機構については説明を省略する。
【0011】
締め付けトルク調整用のトルククラッチは上記3段目の遊星機構における遊転自在とされたリングギア31を利用しているもので、このリングギア31の軸方向端面に形成された突条32と、ギアケース8の段部を軸方向に貫通するものとして設けられている貫通孔に配設されて上記突条32と係合するボール33と、ギアケース8の小径とされた先端部外周面に配されている調整部材34と、調整部材34に一端を弾接するとともに他端をクリック板35とクラッチ板36とを介して上記ボール33に弾接させるクラッチばね37と、本体1の先端部に回動自在に取り付けられたクラッチハンドル3とからトルククラッチ及び締め付けトルク設定部が形成されており、調整部材34はギアケース8の小径部外周面に形成された雄ねじと螺合する雌ねじを内周面に備えるとともに、前記クラッチハンドル3の内面に形成されている軸方向の縦溝と摺動自在に係合する突起39を外周面に備えて、クラッチハンドル3の回転に伴なってギアケース8に対し、軸方向に螺進退するものとなっている。なお、クラッチハンドル3の回転に伴ってクリック板35も回転するようになっている。そしてクリック板35とボール33との間に位置する環状のクラッチ板36は、ギアケース8に対して回転不能に且つ軸方向移動自在に取り付けられるもので、連動レバー4の一端が連結されている。
【0012】
次に、トルククラッチの動作について説明する。モータ20の出力は、1段目及び2段目の遊星機構と、クラッチばね37による付勢でボール33が係止することにより回転が妨げられているリングギア31を備えた3段目の遊星機構とによって減速されて出力軸9に伝達される。そしてリングギア31にかかる負荷トルクが、クラッチばね37によって与えられたボール33とリングギア31の突条32との間の係合力よりも高くなれば、リングギア31がクラッチばね37に抗してボール33を押し出して空転を始める。リングギア31とボール33とからなるトルククラッチが滑るために、締め付けトルクの制限がなされるわけである。
【0013】
クラッチハンドル3を回転させることにより、調整部材34を図3中において下方に移動させてクラッチばね37を圧縮したならば、ボール33とリングギア31との係合力が大きくなるために、リングギア31が空転を始める負荷トルクが大きく、つまりは締め付けトルクが大きくなる。そして、調整部材34がクラッチ板36に接するところまで調整部材34を移動させれば、ボール33が突条32に押されて後退することができなくなるために、トルククラッチの滑り出しトルクが無限大となるものであり、電動ドリルとしての使用に適した状態となる。尚、クラッチばね37からリングギア31に加えられるスラスト力は、ギアケース8を貫通しているスラスト受け用ピン80によって受けている。
【0014】
上記トルククラッチの作動に連動して遮断動作を行うシャットオフスイッチSは、図4〜図6に示すように、共通端子板50によって一端が支持された接点板51と、この接点板51と夫々対向する一対の固定接点端子板52,53と、接点板51と固定接点端子板52,53との間に配されたスライド自在な切換板7とからなるもので、切換板7がスライドする時、切換板7に設けた接点部70は接点板51と固定接点端子板52とを導通させる状態と、接点板51と固定接点端子板53とを導通させる状態とを切り替える。もっとも切換板7は先端に突起72と係止片73とを備えた弾性アーム71が一体に設けられているとともに、シャットオフスイッチSの筐体54に形成されたガイド溝55に弾性アーム71及び突起72を位置させており、しかもガイド溝55に連設された一対の係止溝56,58に係止片73が係合自在となっていることから、係止溝56または係止溝58のいずれかに係止片73が嵌まり込んでいる時、図4〜図6において図中左方への切換板7の移動が阻止される。図中55は接点圧付与用のばねである。
【0015】
そして、上記切換板7における係止片73が係止溝58に嵌まりこんでいる時には、線材で形成されるとともに一端が前述のようにクラッチ板36に連結された連動レバー4の他端に設けられた引外し片41が切換板7の突起72と係合している状態にあり、この状態から連動レバー4が図6中で右方に移動する時、引外し片41によって突起72が押し込まれることで、弾性アーム71が撓んで係止片73が係止溝58から外れるようになっている。
【0016】
さらに、上記切換板7には接点駆動部材であるねじりコイルばね48の一片48aが連結されて、該ねじりコイルばね48によって図4及び図6中の左方に向けて切換板7が付勢されている。さらに、ねじりコイルばね48における切換板7に連結された一片48aには、図1にも示すように、前記トリガーレバー15における係合片45に一端を係合させたリセットバー46の他端が係合している。
【0017】
このように構成されたシャットオフスイッチSは、通常時、切換板7が図4中の右方にあって、弾性アーム71先端の突起72及び係止片73が係止溝58のところに位置することで、ねじりコイルばね48にばね力を蓄積している状態が保持されている。また、連動レバー4の引外し片41が図6に示すように突起72と係合している状態となっている。
【0018】
該締付工具を使用するためにトリガーレバー15を引けば、スイッチユニット16内のメインスイッチS1 がオンとなるために、モータ20は正逆切換スイッチS3 で設定された回転方向に回転を行う。図7中のS2 はスピードコントロールを無効とするためのスイッチであり、該スイッチS2 もスイッチユニット16内に設けられている。
【0019】
モータ20を回転させて作業を行っている際に、その負荷トルクが設定トルクより大きくなれば、前述のように、リングギア31が空転を始めるのであるが、この時、リングギア31の突条32によってボール33及びクラッチ板36がクラッチばね37に抗して押し出される。このために、クラッチ板36に一端を連結した連動レバー4も移動して突起72を押し込むために、係止片73が係止溝58から外れる。従って切換板7はねじりコイルばね48の付勢で図4中の左方に移動し、接点板51と固定接点端子板52との間の導通を遮断して、モータ20を電源から切り離すとともに、接点板51と固定接点端子板53との間を導通させることでモータ20の両極間を短絡してモータ20にブレーキをかける。
【0020】
ねじりコイルばね48の作動で、リセットバー46は図中左方に移動することになるが、この時点ではトリガーレバー15が引かれた状態にあるために、トリガーレバー15がねじりコイルばね48の動作を妨げることはない。
また、図中左方に移動した切換板7は、その突起72及び係止片73を係止溝56のところに位置させるために、上記トルククラッチの作動時の空転に伴ってクラッチ板36及び連動レバー4が移動を繰り返しても、引外し片41が突起72に当たることはなく、両者に損傷が生じるような衝撃が加わることはない。
【0021】
モータ20の停止がなされたならば、使用者はトリガーレバー15から指を外してトリガーレバー15をその復帰ばね(図示せず)のばね力によって復帰させることになるが、この時、トリガーレバー15の係合片45がリセットバー46を介してねじりコイルばね48の一片48aを引っ張ることで、切換板7を図4中の右方に移動させる。この時、切換板7の係止片73は係止溝56における傾斜縁57によって下方に沈み込み、係止溝58に達した時点で弾性アーム71の弾性で係止溝58に嵌まり込む。また、切換板7の移動で接点板51と固定接点端子板52とが導通した状態に復帰する。
【0022】
シャットオフスイッチSの動作のうち、その接点切換動作はシャットオフスイッチSが内蔵するねじりコイルばね48のばね力によってなされるものであり、トルククラッチとシャットオフスイッチSとを連動させる連動レバー4は、単に接点切換のための引外し動作を担うだけのものとなっており、しかも連動レバー4とシャットオフスイッチSとにおける引外し動作のための係合部である引外し片41と突起72とは、いったん引外しを行えば、以降はリセットされるまで相互に係合したり衝突したりすることがないものである。
【0023】
図8〜図10に他例を示す。基本的形態は上記のものと同じであるために相違点だけ説明すると、ここではリセットバー46をトリガーレバー15に一体に設けるとともに、トリガーレバー15にねじりコイルばね48の他片48bを押圧する押圧片47を設けて、該押圧片47により、トリガーレバー15を引く時にねじりコイルばね48に接点切換動作のためのばね力が蓄積されるようにしている。
【0024】
つまり、図8(a)に示す通常状態からトリガーレバー15を引けば、図8(b)
及び図8(c)に示すように、切換板7は前述のようにその係止片73と係止溝58との係合で移動せず、これに伴ってねじりコイルばね48の一片48aも動かないが、トリガーレバー15の押圧片47で他片48bが押されることで、ねじりコイルばね48にばね力が蓄積される。トリガーレバー15を戻せば、ねじりコイルばね48に蓄積されたばね力も、他片48bの回動に伴って解放される。なお、他片48bの先端を曲げて最終的には押圧片47の上に乗り上げるようにしているのは、トリガーレバー15の引く量に応じたモータ20のスピードコントロールを容易に行えるようにするために、トリガーレバー15のストロークを大きくとっているためである。
【0025】
そして、トルククラッチが作動したことによるシャットオフスイッチSの遮断動作が引外し動作とねじりコイルばね48に蓄積されたばね力とによって図9に示すようになされた後、トリガーレバー15を戻す時には、図10に示すように、トリガーレバー15に付設されたリセットバー46がねじりコイルばね48の一片48aを引っ張ってねじりコイルばね48全体を回動させるものであり、この結果、図8(a)に示す状態に復帰する。
【0026】
図6に示したもののように、トリガーレバー15が戻る動作でねじりコイルばね48にばね力が蓄積されるようにした場合、トリガーレバー15を復帰させる復帰ばねには、ねじりコイルばね48にばね力を蓄積させることができるだけの強さを持つものを用いなくてはならず、この場合、ねじりコイルばね48にばね力を蓄積するのに必要な力をFとする時、Fを越える大きな力を復帰ばねに持たせねばならないものであり、これに伴ってトリガーレバー15を引くのに必要な力がかなり大きくなってしまうが、トリガーレバー15を引く力でねじりコイルばね48にばね力を蓄積する場合、上記のFの値が余計に必要となるもののFを越える力が余計に必要となることはなく、このために図6に示したものと比較すれば、トリガーレバー15を引くのに必要な力が少なくてすむものである。
【0027】
図11〜図18にシャットオフスイッチSの他例を示す。このシャットオフスイッチSでは、切換板7が筐体54に対して軸74の回りに回動自在とされているとともに、筐体54の外面には、ばね80によって付勢されたスライド自在なラッチ81が配されており、さらに切換板7にはリセットカム77が取り付けられている。上記ラッチ81は切換板7に形成された係合溝78にばね80の付勢を受けて嵌まり込むことで、切換板7の軸74を中心とする回動を阻止する。
【0028】
シャットオフスイッチSの内部には、固定接点端子板50によって一端が枢支された接点板51が配されており、該接点板51はその回動によって反転型のばね55の付勢を受けた状態で固定接点端子板52に接触する状態と、固定接点端子板53に接触する状態とを切り換える。そして、上記軸74に装着されたねじりコイルばね48の一片48aが切換板7に係合しているとともに、切換板7に付設された一対のボス76,76間に上記接点板51が位置しており、切換板7の回動に伴い、接点板51も回動して上記接点切換を行うものとなっている。
【0029】
図12は通常状態を示しており、トルククラッチに一端が連結されたばね弾性を有している連動レバー4の他端は、切換板7の回転を阻止している状態にあるラッチ81の側面に当接している。また、接点板51は固定接点端子板52に接触している状態にある。
この状態からトリガーレバー15を引けば、スイッチユニット16内のメインスイッチS1がオンとなるために、モータ20は正逆切換スイッチS3で設定された回転方向に回転を行う。また、図13に示すように、トリガーレバー15における係合片45がねじりコイルばね48の他片48bを押してねじりコイルばね48にばね力を蓄積する。
【0030】
そして、モータ20を回転させて作業を行っている際に、その負荷トルクが設定トルクより大きくなれば、前述のように、リングギア31が空転を始めるのであるが、この時のクラッチ板36の突条32で押し出されることによる前進移動によって連動レバー4は図14に示すように、ラッチ81の先端側に移動し、さらにクラッチ板36がクラッチばね37の付勢で戻る時、連動レバー4は図15に示すようにラッチ81をばね80に抗して押し戻す。このラッチ81の移動によって、ラッチ81が係合溝78から外れると、図16及び図17に示すように、ねじりコイルばね48の付勢で切換板7が回動し、これに伴って接点板51も回動して接点を切り換えるために、モータ20への通電が遮断されるとともにモータ20にブレーキがかかる。また、切換板7の回動に伴い、切換板7に付設されたリセットカム77は筐体54におけるガイド壁83によるガイドを受けることで回転して向きを変える。
【0031】
この状態からトリガーレバー15に加えていた力を解放して、トリガーレバー15をその復帰ばねのばね力で復帰させると、トリガーレバー15の係合片45が切換板7のリセット片79を押して、切換板7を先程と逆方向に回動させるものであり、この回動に伴い、接点板51が復帰するとともに、リセットカム77が連動レバー4を押してラッチ81の移動経路から退去させることで、ラッチ81が切換板7の係合溝78に侵入することを許すものであり、ラッチ81と係合溝78との係合で切換板7は再度初期位置に固定される。また、ラッチ81によってリセットカム77が押されることによって、リセットカム77も初期状態に戻る。
【0032】
このものにおいても、トルククラッチの作動で連動レバー4が引外し動作を行うだけで、接点の切換動作そのものはシャットオフスイッチSが内蔵するねじりコイルばね48によってなされるものであり、またねじりコイルばね48へのばね力の蓄積は、トリガーレバー15を引く動作によってなされるものとなっている。
【0033】
なお、クラッチの動作に伴うシャットオフスイッチSの切り換えを、ボール33及びクラッチ板36がリングギア31の突条32に乗り上げる際の動きではなく、乗り上げた後の復帰動作で行うようにしているのは、スピードコントロール付きであって、モータ20の回転速度が低速に設定されている時に、上記乗り上げ動作でモータ20を停止させてしまうと、ボール33が突条32に乗り上げた状態のままでモータ20が完全に停止してしまい、再始動させることができなくなるおそれを有しているからであり、このおそれを排除するためである。
【0034】
図19及び図20に示すものは、切換板7にリセットカム77を設けることに代えて、先端に凸部85を備えた弾性片84を切換板7に一体に設けている。通常時、連動レバー4は図19(a)に示すように凸部85と係合しているが、トルククラッチが作動すれば、図20(a)(b)に示すようにラッチ81の先端側に移動してラッチ81を押し戻し、図20(c)(d)に示すように、切換板7の回転によるところの接点の切り換えを行わせる。そして、切換板7の該回転によって、凸部85は連動レバー4の下方側を潜りながら移動して、連動レバー4に凸部85を係合させるものであり、このために切換板7がトリガーレバー15の復帰に伴って初期位置に復帰する際、連動レバー4も凸部85に押されて復帰する。
【0035】
トルククラッチの形態は上記のものに限るものではない。また、シャットオフスイッチSの接点切換動作の動力としてねじりコイルばね48を用いたものを示したが、該動力にはねじりコイルばね以外のばねを用いてもよいのはもちろん、磁石の吸引力あるいは反発力などを用いてもよく、さらにはソレノイド等のアクチュエータを上記動力として用いてもよいものである。ソレノイドによってシャットオフスイッチSの接点切換を行う場合は、ソレノイドと電源との間に配した補助スイッチをトルククラッチの可動部の動きで切り換えることで、シャットオフスイッチSに接点切換動作を開始させる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、トルククラッチの作動をシャットオフスイッチに伝達する動作伝達部と、ばねを動力源としているとともに上記動作伝達部の動きを受けて上記ばねに蓄積されたばね力でシャットオフスイッチに遮断動作を行わせる遮断動力部とを備えたものとし、トルククラッチの作動を動作伝達部によってシャットオフスイッチ側に伝達すれば、シャットオフスイッチ側の遮断動力部が遮断動作を行うようにしたものであり、トルククラッチにはシャットオフスイッチに遮断動作を行わせるために必要な力が発生しなくてもよく、また動作伝達部もこのような力の伝達に耐え得るものを必要としないものであり、機械的ストレスが生じないものとなっているとともに、確実で且つ安定したシャットオフ動作を得ることができる。
【0037】
しかもシャットオフスイッチの導通状態への復帰及び遮断動力部の上記ばね部材にばね力が蓄積された初期状態への復帰は、モータへの通電制御用のスイッチにおけるトリガーレバーの復帰によって、もしくはトリガーレバーの次回操作時の引き込み操作によってなされるために、シャットオフスイッチ及び遮断動力部を有するものであるとはいえ、モータの通電制御のためのトリガーレバーを戻すだけで、シャットオフスイッチ及び遮断動力部が自動的にリセットされるものであり、シャットオフ動作がなされたからといって使用者はリセット操作を意識する必要がないものである。
この時、トリガーレバーの復帰動作を利用する場合は、トリガーレバーによるリセット操作を簡便な構造で実現することができ、トリガーレバーの次回操作時の引き込み操作を利用するものでは、上記の場合よりもトリガーレバーを引くのに要する力を軽減することができて、使い勝手のよいものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の破断分解斜視図である。
【図2】同上の断面図である。
【図3】同上のギア部の断面図である。
【図4】同上のシャットオフスイッチの水平断面図である。
【図5】同上のシャットオフスイッチの平面図である。
【図6】同上のシャットオフスイッチの縦断面図である。
【図7】同上の回路図である。
【図8】他例を示すもので、(a)〜(c)は動作を示す断面図である。
【図9】同上の動作を示す断面図である。
【図10】 (a)(b)(c)は同上の動作を示す断面図である。
【図11】シャットオフスイッチの他例の斜視図である。
【図12】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図13】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図14】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図15】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図16】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図17】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図18】同上の動作を示すもので、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図19】シャットオフスイッチのさらに他例を示すもので、(a)は平面図、(b)は切換板の斜視図である。
【図20】同上の動作を示すもので、(a)(b)(c)(d)は平面図である。
【符号の説明】
S シャットオフスイッチ
4 連動レバー
7 切換板
48 ねじりコイルばね
Claims (2)
- モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの動作に連動してモータへの通電を遮断するシャットオフスイッチとを備えているトルククラッチ付締付工具において、トルククラッチの作動をシャットオフスイッチに伝達する動作伝達部と、ばねを動力源としているとともに上記動作伝達部の動きを受けて上記ばねに蓄積されたばね力でシャットオフスイッチに遮断動作を行わせる遮断動力部とを備えているとともに、シャットオフスイッチの導通状態への復帰及び遮断動力部の上記ばね部材にばね力が蓄積された初期状態への復帰は、モータへの通電制御用のスイッチにおけるトリガーレバーの引き込み操作後の復帰ばねによる復帰によってなされるものであることを特徴とするトルククラッチ付締付工具。
- モータの回転軸から出力軸に至る動力伝達を所定の負荷トルクによって遮断するトルククラッチと、このトルククラッチの動作に連動してモータへの通電を遮断するシャットオフスイッチとを備えているトルククラッチ付締付工具において、トルククラッチの作動をシャットオフスイッチに伝達する動作伝達部と、ばねを動力源としているとともに上記動作伝達部の動きを受けて上記ばねに蓄積されたばね力でシャットオフスイッチに遮断動作を行わせる遮断動力部とを備えているとともに、シャットオフスイッチの導通状態への復帰及び遮断動力部の上記ばね部材にばね力が蓄積された初期状態への復帰は、モータへの通電制御用のスイッチにおけるトリガーレバーの次回操作時の引き込み操作によってなされるものであることを特徴とするトルククラッチ付締付工具。
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