JP4729159B2 - 手持ち式の電動複合ハンマ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、使用者の手動切替操作によりドリルハンマ又はチゼルハンマとして選択的に使用可能な手持ち式の電動型複合ハンマ装置に関し、特に、グリップ内に支持され、予圧力に抗して操作するオン・オフ電気スイッチのための操作部材と、ドリルモードおよびチゼルモードの両モード間で切替を行う切替機構と、チゼルモードの選択時にオン位置を占める操作部材を係止するための係止手段とを具える複合ハンマ装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
上述した構成のハンマドリル装置は、電気的なオン・オフスイッチを操作するための操作部材がグリップの片側に配置されており、この操作部材は、多くの場合には、モータの回転速度を無段階調節するためのポテンショメータ等の調整部材自体として、又はその調整部材に結合した部材として構成されている。そして、ユーザがグリップ内に配置されている操作部材を押し込むとハンマドリル装置のモータ駆動系がオン状態に切り替わり、操作部材を解放するとオフ状態に切り替わる。
【0003】
ドリル装置、ハンマドリル装置、振動グラインダ、電鋸等の手持ち式電動工具において、係止ノブによりスイッチ操作部材をそのオン位置に係止することは既知である。この係止ノブにより電動工具が連続運転状態に維持されるので、ユーザが操作部材を押し込み状態で保持する必要はなくなる。電動工具を停止させる場合、より大きな力をユーザが操作部材に及ぼすと係止ノブが解放される。
【0004】
上述した構成の電動工具とは別に、ハンマドリル装置においては、操作部材のオン位置での係止をチゼルモードのみで可能とし、ドリルモードでは不可能とすることが安全上の見地から望ましい。この問題を解決するため、ドイツ特許出願公開第19720947号公報に記載されている電動複合ハンマ装置では、ドリルモードとチゼルモードとの間での手動切替に用いる切替ノブに設けられているカムを、カムに向けてばね負荷されている旋回レバーに向けて回動させ、これにより旋回レバーに形成されている係止部を、オン・オフスイッチ用のラッチに固定した板ばねの遊端に形成されている保持部の移動経路まで到達させている。このような従来技術による解決策は、オン・オフスイッチ用の操作部材をチゼルモードにおいてオン位置に強制的に保持すると共に、切替ノブを180°回動させたドリルモードではカム作用を発現する旋回レバーを保持部の移動経路から退避させるため、ユーザによる操作部材の係止を不可能とするものである。
【0005】
上述した従来技術による解決策は、現実的な問題点および難点を有している。すなわち、チゼルモードにおいて係止機構に作用する部材として、旋回レバーに設けた保持部と、形状結合的に形成されたばねとは異なる圧力の作用下で磨耗し、係止ばねの疲労を生じさせる。さらに、切替部材を押し込んだ後にチゼルモードを選択した場合には、電動工具が常に強制的に連続運転状態とされる。したがって、ユーザがチゼルモードの中断を望む場合には、切替部材をその回動中心の下側で操作せねばならず、多くの場合には装置を別の手で持ち替える必要が生じる。チゼルモードでの連続運転が不所望であるにも関わらず、一連のチゼル加工過程が進行する。その一例は、いわゆるセパレーションであり、これは短時間に交互に繰り返されるチゼル加工過程によりコンクリート構造物のエッジが電動チゼルによる剥離を生じることである。一般的に、このような加工条件下でユーザは連続運転を望まない。
【0006】
【発明の課題】
したがって、本発明の課題は、操作部材のオン位置での係止をドリルモードでは阻止するも、チゼルモードでは選択的に、しかも長期にわたる高い信頼性をもって許容する手持ち式の電動複合ハンマ装置を提案することにある。
【0007】
【課題の解決手段】
このような課題を解決するため、本発明による電動複合ハンマ装置は、グリップ内に支持され、予圧力に抗して操作するオン・オフ電気スイッチのための操作部材と、ドリルモードおよびチゼルモードの両モード間で切替を行う切替機構と、チゼルモードの選択時に、オン位置を占める操作部材を係止するための係止手段とを具え、該係止手段が、第1の作動位置と第2の作動位置との間で変位可能な係止部材を含み、該係止部材が、チゼルモードの選択時に、第1の作動位置で操作部材をオン位置に維持し、該係止部材が第2の作動位置では係止手段の係止作用を無効として、ユーザが操作部材を解放する際に該操作部材を予圧力の作用下でオフ位置まで復帰させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明による電動型複合ハンマ装置は、上述した課題を解決するために、以下の機能を発揮するものである。
【0009】
先ず、ドリルモードの選択時には、操作部材を係止不能とすることである。そして、係止状態が事前に選択されている場合には、ドリルモードへの切り替えと同時に操作部材の係止を解除する。
【0010】
さらに、チゼルモードの選択時には、オン・オフスイッチ用の操作部材を係止可能とする。この係止状態はユーザにより事前に選択できるものとし、電動装置の作動中でも選択可能とし、又は選択を解除可能とする。
【0011】
【最良の実施形態】
以下、本発明を図示の好適な実施形態について更に詳述する。なお、各図において、対応する構成要素には同一の参照数字が付されている。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る手持ち式複合ハンマ装置のハウジングを示すものである。このハウジングは実質的に二部分から構成され、その一方の部分はハウジングシェル1を形成し、他方の部分はその後側に位置するグリップ2を形成する。ハウジングシェル1の左側面に開口部が設けられ、この開口部において、複合ハンマ装置の動作モードをドリルモードおよびチゼルモードの間で切り替えるためのセレクタ部材3を回動可能に支持する。セレクタ部材3は、ドリルモードおよびチゼルモードを選択するため、所定の角度(例えば180°)に亙って回動させるものである。グリップ2の後部には、図示しないオン・オフスイッチ用の操作部材17の上側で、係止部材15が装置の中心軸線に対して横方向に、第1の作動位置(図5,6)と第2の作動位置(図3,4)との間で進退変位可能に配置されている。
【0013】
図2は、チゼルモードの選択時にスイッチ操作部材17を係止可能とした本発明による切替機構を示す斜視図である。ハウジングシェル1内に支持されるセレクタ部材3の内側には偏心カム4が配置されている。この偏心カム4は、セレクタ部材3を図2、図5および図6に示す「チゼルモード」位置まで回動させたときにセレクタロッド5を、複合ハンマ装置の中心軸線に対し、圧縮ばね13a, 13bの合成ばね力に抗して後方に、すなわち操作部材17に向けて変位させるものである。セレクタロッド5の上側には所定形状を有するガイドが、また側方には下向きに突出するアーム6が設けられている。さらに、アーム6の下側には、セレクタロッド5と共に軸線方向に変位可能なマグネットホルダ7が形成されている。セレクタロッド5、ガイド8、アーム6およびマグネットホルダ7は、適宜のプラスチック材料を射出成形してなる一体の構造体として形成するのが望ましい。セレクタロッド5のガイド8はフレーム状のスライダ9と協働させ、このスライダ9はガイド8に対向するキャップ状または半円状の突部11を有し、この突部11はスライダ9と対向するガイド8の端部に設けた略V字形状の垂直溝10と係合する。これにより、スライダ9は、溝10および突部11の形状により定められる旋回中心の周りで、複合ハンマ装置の垂直軸線と直交する面内を旋回するものである。その旋回角度は僅かな角度、一般的には1°〜6°の範囲内であり、後述する理由から特に2.7°とするのが好適である。スライダ9の旋回角度は、その下側に形成した突部20により限定する。すなわち、これらの突部20は、前端部に丸みを付けたガイド8と当接することによりスライダ9の旋回範囲を両方向に制限するものである。さらに、図2に明示するように、スライダ9とセレクタロッド5の両者を偏心カム4に向けて押圧する予圧用の圧縮ばね13a, 13bは保持プレート14により保持されている。保持プレート14は、複合ハンマ装置の垂直軸線および中心軸線に対して直交する方向に変位可能な係止部材15に、圧縮ばね13a, 13bの作用下で所定の押圧力を及ぼすものであり、当接突部16により係止部材の一方向または逆方向への移動範囲を限定する。当接突部16は、係止部材15の下側と係合する操作部材17の延長部19における、上向きに突出する一対の側壁と協働する。
【0014】
スライダ9には、旋回中心12に対向する係止素子としてフック状またはラグ状に形成されたウェブ21(図3および図5を参照)が下側に設けられている。このウェブ21は、スライダ9により、スライダ9と一体的に、旋回中心12の周りで、複合ハンマ装置の垂直軸線および中心軸線に対して直交する方向に旋回可能とされている。したがって、ウェブ21は延長部19における垂直側壁の内側に位置決めされるものである。ドリルモード、すなわち圧縮ばね13a, 13bの作用下で係止部材15により押圧されるスライダ9および係止部材15の位置において、ウェブ21は、操作部材17側の係止部材として操作部材17の延長部19内に形成されている係止突部22の移動経路から外れている。さらに、ドリルモードにおいて係止部材15は図3に示す第2の作動位置を占め、この作動位置ではスライダ9が複合ハンマ装置の中心軸線から左方に旋回した終端位置を占め、一方の突部20(図3の右上に位置する突部)がガイド8に当接し、ウェブ21と共に数mm程度のスペース、例えば2.7°の旋回角度とした場合には4 mmのスペースを形成する。その結果、操作部材17を解放し、図示しない圧縮ばねの作用下で旋回軸線18の周りでオフ位置まで旋回させる際に、操作部材17の係止突部22は何ら妨害されることなく摺動させることが可能である。
【0015】
上述した溝10および突部11により旋回継手を形成する代わりに、スライダ9およびガイド8自体に可撓性を持たせ、ウェブ21の所要の移動経路を確保するためにスライダ9に必要とされる左右への僅かな旋回可能性を付与することも可能である。ウェブ21は、材料を適切に選択することにより、または弾性的な接続構造とすることにより、スライダ9に対して可撓性を発現する構成とすることができ、これにより特に支障を伴うことなく係止突部22の作用範囲に到達させることが可能である。
【0016】
他方、チゼルモード(図5および図6参照)では、スライダ9およびウェブ21が図5に示す左方に変位した第1の作動位置を占める。図5に示すように、係止部材15が「係止状態」に押圧され、複合ハンマ装置の中心軸線に関して右方に、そしてスライダ9の旋回に伴って他方の終端位置まで旋回すると、他方の突部20(図5における下側の突部)がガイド8に当接し、係止素子として機能するウェブ21が、操作部材17の延長部19に形成した係止突部22の復帰経路内に位置する。したがって、オン・オフスイッチ用の操作部材17が複合ハンマ装置の中心軸線方向において係止され、装置は選択されたチゼルモードで連続運転される。
【0017】
複合ハンマ装置の連続運転状態が一方ではチゼルモードのみにおいて維持可能とされ、他方ではチゼルモードにおける連続運転状態が係止部材15の作動によるチゼルモードへの切替の前後を問わずに選択および遮断可能とされた構成は、本発明の重要な特徴である。例えば、チゼルモードにおいて係止部材15は依然として図5に示す係止位置に押圧されているため、ユーザが操作部材17を解放すると係止突部22がウェブ21と共に解放され、複合ハンマ装置の作動が遮断される。
【0018】
また、ユーザが、複合ハンマ装置のチゼルモードでの運転開始後に装置の連続運転を望むに至った場合には、係止部材15を装置の中心軸線に対して図5に示す作動位置まで右向きに変位させる。その時点で操作部材17を解放することが可能である。操作部材17の復帰移動と装置駆動系のオフ状態への転換は阻止されるからである。これに対して、ユーザがチゼルモードからドリルモードに切り替え、または係止部材15を装置の中心軸線に対して図3に示す作動位置まで左向きに変位させると、係止突部22の移動経路が自由に接近可能となり、操作部材17は解放された際に常にオフ位置まで弾性的に移動する。
【0019】
アーム6を介してセレクタロッド5と一体的に結合したマグネットホルダ7は、その遊端(図2参照)に取り付けたスイッチ用のマグネット、特に永久磁石を保持すると共にガイドする機能を発揮する。なお、このマグネットの代わりに、装置の電子回路をドリルモードとチゼルモードとの間で切り替えるに適当なスイッチング素子、例えば光学的または電磁的なスイッチング素子を使用することも可能である。このようなスイッチング素子は複合機能を有する構成部材の相対変位に基づいてスイッチング機能を発現するものである。スイッチング素子としてマグネットを使用する場合には、マグネットホルダにより保持されて複合ハンマ装置の中心軸線方向に相対変位するマグネットをホール素子(図示せず)と協働させ、これにより複合ハンマ装置の電子回路をチゼルモードとハンマドリルモードとの間で切り替え可能とするのが簡便である。
【0020】
上述したところから明らかなとおり、本発明は、一般的に過酷な条件下で使用される複合ハンマ装置用の、作動特性が安定しており、かつ、長期の耐用寿命を達成することのできる切替機構を実現するものである。本発明に係る切替機構によれば、ドリルモードの選択時にユーザが操作部材を解放するだけで複合ハンマ装置を直ちに停止させることができ、他方、チゼルモードの選択時には、係止部材15の位置が作動前に選択されたか作動中に選択されたかに応じて、操作部材の解放により複合ハンマ装置をチゼルモードでの連続運転状態に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る、作動モードを選択可能とした電動複合ハンマ装置をその左側から示す斜視図である。
【図2】 電動複合ハンマ装置用の作動モード切替機構を示す斜視図である。
【図3】 ドリルモード選択時における作動モード切替機構の平面図である。
【図4】 ドリルモード選択時における作動モード切替機構の側面図である。
【図5】 チゼルモード選択時における作動モード切替機構の平面図である。
【図6】 チゼルモード選択時における作動モード切替機構の平面図である。
【符号の説明】
2 グリップ
3, 4 切替機構
5 セレクタロッド
7 マグネットホルダ
9 スライダ
10, 11, 12 旋回継手
12 旋回中心
13a, 13b 圧縮ばね
14 保持部材
15 係止部材
17 操作部材
21 係止素子
22 係止突部

Claims (9)

  1. 使用者の手動切替操作によりドリルハンマ又はチゼルハンマとして選択的に使用可能な手持ち式の電動複合ハンマ・ドリル装置であって、
    グリップ(2)内に支持され、予圧力に抗して操作するオン・オフ電気スイッチのための操作部材(17)と、
    ドリルモードおよびチゼルモードの両モード間で切替を行う切替機構(3, 4)と、
    チゼルモードの選択時に、オン位置を占める操作部材(17)を係止するための係止手段とを具え、
    該係止手段が、第1の作動位置(図5,6)と第2の作動位置(図3,4)との間で変位可能な係止部材(15)を含み、該係止部材(15)が、チゼルモードの選択時に、第1の作動位置で操作部材(17)をオン位置に維持し、該係止部材(15)が第2の作動位置では係止手段の係止作用を無効として、ユーザが操作部材(17)を解放する際に該操作部材(17)を予圧力の作用下でオフ位置まで復帰させることを特徴とする電動複合ハンマ装置。
  2. 請求項1記載の複合ハンマ装置において、前記係止手段が、切替機構(3, 4)により操作可能としたセレクタロッド(5)を具え、該セレクタロッド(5)は、これに対して旋回可能に結合され、かつ、グリップ(2)に対するセレクタロッド(5)の相対変位により変位可能とされたスライダ(9)と協働し、該スライダ(9)にはセレクタロッド(5)と対向する側に係止素子(21)が設けられ、該係止素子(21)は、チゼルモードが選択されているときに第1の作動位置を占める前記係止部材(15)がスライダ(9)を旋回させることにより、オン・オフスイッチ用のばね負荷された前記操作部材(17)に設けた係止突部(22)の移動経路まで到達可能であり、その切替位置で操作部材のオフ位置までの復帰を阻止することを特徴とする複合ハンマ装置。
  3. 請求項2記載の複合ハンマ装置において、セレクタロッド(5)とスライダ(9)との間に、旋回継手(10, 11, 12)が配置されていることを特徴とする複合ハンマ装置。
  4. 請求項2記載の複合ハンマ装置において、前記係止素子(21)が、フック状またはラグ状に形成されたウェブからなり、該ウェブ(21)は、チゼルモードの選択時に操作部材(17)を係止する前記係止部材(15)を、前記ウェブ(21)と選択的に係合できるように操作部材(17)に設けられた係止突部(22)の復帰経路まで到達させることを特徴とする複合ハンマ装置。
  5. 請求項3又は4記載の複合ハンマ装置において、係止部材(15)に関連して設けられた保持部材(14)を具え、該保持部材により両側から操作可能な前記係止部材(15)の往復移動を両端位置で規制することを特徴とする複合ハンマ装置。
  6. 請求項4記載の複合ハンマ装置において、ドリルモードおよびチゼルモードの切替機構(3, 4)に偏心カム(4)が設けられ、該偏心カム(4)は、チゼルモードの選択時にセレクタロッド(5)を介して前記スライダ(9)を、該スライダ(9)に作用するばね(13a, 13b)の復元力に抗し、装置ハウジング(1, 2)に対して操作部材(17)に近接する方向に変位させることを特徴とする複合ハンマ装置。
  7. 請求項6記載の複合ハンマ装置において、前記スライダ(9)に及ぼされる復元力は、互いに平行に同一の作用面内に配置された2本の圧縮ばね(13a, 13b)が生じさせることを特徴とする複合ハンマ装置。
  8. 請求項7記載の複合ハンマ装置において、前記圧縮ばね(13a, 13b)は、前記スライダ(9)の旋回中心(12)から離れた側に位置する前記スライダ(9)の表面に作用するものであって、係止部材(15)の保持プレート(14)により保持されることを特徴とする複合ハンマ装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載された複合ハンマ装置において、セレクタロッド(5)は装置ハウジング(1, 2)の内部でガイドされるマグネットホルダ(7)に結合され、該マグネットホルダ(7)により保持されたスイッチング素子が切替機構(3, 4)の切替位置に応じてYes / Noの論理切替信号を複合ハンマ装置の電子制御回路に供給することを特徴とする複合ハンマ装置。
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