JP4894102B2 - 布シートの車体への取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の乗員頭部保護用エアバッグなどの布シートを車体に取り付けた構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の乗員頭部保護用エアバッグとして、WO96/26087には2枚のシートを重ね合わせ、それらを縫合することによりシート同士の間に空室を形成したものが記載されている。ガスジェネレータからのガスが該空室内に供給されることによりエアバッグが乗員頭部の側方で膨らむ。
【0003】
このエアバッグは自動車のドア開口の上辺に沿って配置されるのであるが、WO96/26087にはエアバッグを車体にどのように留め付けるかについての記載はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エアバッグの上縁部を車体にしっかりと留め付けるには、ボルト等のねじ部材を必要に応じワッシャを介してエアバッグの上縁部の開口に通して車体の孔にねじ込むことが考えられる。この場合、ボルトの頭や、ワッシャがエアバッグに直接に当たるため、ねじ込んでいくとエアバッグがねじ部材と共回りしてしまい、エアバッグの姿勢が設計姿勢からずれることになる。
【0005】
本発明は、ボルト等のねじ部材によって乗員頭部保護用エアバッグ等の布シートを車体に留め付けるに際し、布シートがねじ部材と共回りすることが防止される布シートの車体への取付構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)の布シートの車体への取付構造は、乗員頭部保護用エアバッグ(1)の縁部(6)を構成する布シートの開口(8)に挿通されたねじ部材(34)が、車体に設けられたねじ部材用の孔(36)にねじ込まれることによって該布シートが車体に留め付けられた布シートの車体への取付構造において、該開口(8)に、該開口(8)よりも小径の筒状部(12)を有したスペーサ(10)の該筒状部(12)が挿入され、該筒状部(12)に前記ねじ部材(34)が挿通されており、該スペーサ(10)の一端側が車体に当接し、該スペーサ(10)の他端側には、該開口(8)よりも大径のフランジ部(16)が配置されており、該フランジ部(16)が該筒状部(12)と一体となっており、該スペーサ(10)は、車体に当接するスペーサ後部体(18)と、該スペーサ後部体(18)に結合されたスペーサ前部体(20)とを備えており、該スペーサ後部体(18)及びスペーサ前部体(20)は、それぞれ、前記筒状部(12)の筒軸方向の一半側と他半側とを構成する小筒状部(22,24)を有しており、該スペーサ前部体(20)の該小筒状部(24)の前記他端側に前記フランジ部(16)(以下、第1のフランジ部(16)という。)が一体に設けられており、該スペーサ後部体(18)の該小筒状部(22)の前記一端側に、前記開口(8)よりも大径の第2のフランジ部(14)が一体に設けられており、該スペーサ後部体(18)において、該第2フランジ部(14)の該小筒状部(22)との角隅部付近には、該小筒状部(22)を挟んで該小筒状部(22)の直径方向に対峙した1対のフック(26)が設けられており、各フック(26)は、該小筒状部(22)の筒軸方向に沿って該小筒状部(22)の前記他端側よりも該小筒状部(22)の延長方向に延出しており、各フック(26)の先端には爪(26a)が設けられており、各フック(26)の爪(26a)同士は、該小筒状部(22)を挟んで互いに離反方向に突設されており、該スペーサ前部体(20)において、該第1フランジ部(16)の該小筒状部(24)との角隅部付近には、該スペーサ後部体(18)の該フック(26)の爪(26a)がそれぞれ係合する1対の係合孔(28)が設けられており、各係合孔(28)は、該小筒状部(24)を挟んで該小筒状部(24)の直径方向に対峙した位置に配置されており、該スペーサ前部体(20)において、該第1フランジ部(16)の該小筒状部(24)との角隅部付近には、さらに、該小筒状部(24)を挟んで該小筒状部(24)の直径方向に対峙した1対のフック(30)が設けられており、該フック(30)同士は、前記係合孔(28)同士が対峙する方向と直交方向に対峙しており、各フック(30)は、該小筒状部(24)の筒軸方向に沿って該小筒状部(24)の前記一端側よりも該小筒状部(24)の延長方向に延出しており、各フック(30)の先端には爪(30a)が設けられており、各フック(30)の爪(30a)同士は、該小筒状部(24)を挟んで互いに離反方向に突設されており、該スペーサ後部体(18)において、該第2フランジ部(14)の該小筒状部(22)との角隅部付近には、さらに、該スペーサ前部体(20)の該フック(30)の爪(30a)がそれぞれ係合する1対の係合孔(32)が設けられており、該係合孔(32)同士は、該スペーサ後部体(18)において前記フック(26)同士が対峙する方向と直交方向に該小筒状部(22)を挟んで対峙しており、該第1フランジ部(16)と第2フランジ部(14)との間における、該フック(26,30)を含むスペーサ(10)の太さは、前記開口(8)の内径よりも小さなものとなっており、該スペーサ(10)を該開口(8)に嵌装するに当っては、前記布シートの車体側から該スペーサ後部体(18)の小筒状部(22)及び各フック(26)を挿入し、該布シートの車体と反対側から該スペーサ前部体(20)の小筒状部(24)及び各フック(30)を挿入し、該スペーサ後部体(18)の該小筒状部(22)の前記他端側と該スペーサ前部体(20)の該小筒状部(24)の前記一端側とを付き合わせ、該スペーサ後部体(18)の各フック(26)を該スペーサ前部体(20)の各係合孔(28)に係合させ、且つ該スペーサ前部体(20)の各フック(30)を該スペーサ後部体(18)の各係合孔(32)に係合させることにより、該スペーサ後部体(18)と該スペーサ前部体(20)とを連結することを特徴とするものである。
本発明(請求項2)の布シートの車体への取付構造は、乗員頭部保護用エアバッグ(1)の縁部(6)を構成する布シートの開口(8)に挿通されたねじ部材(34)が、車体に設けられたねじ部材用の孔(36)にねじ込まれることによって該布シートが車体に留め付けられた布シートの車体への取付構造において、該開口(8)に、該開口(8)よりも小径の筒状部(64,66)を有したスペーサ(50)の該筒状部(64,66)が挿入され、該筒状部(64,66)に前記ねじ部材(34)が挿通されており、該スペーサ(50)の一端側が車体に当接し、該スペーサ(50)の他端側には、該開口よりも大径のフランジ部(62)が配置されており、該スペーサ(50)は、車体に当接するスペーサ後部体(56)と、該スペーサ後部体(56)に結合されたスペーサ前部体(58)とを備えており、該スペーサ前部体(58)に前記フランジ部(62)が設けられており、該スペーサ後部体(56)は、該布シートよりも車体側に配置された、前記開口(8)よりも大きい拡大部(60)を有しており、該拡大部(60)から車体側に向って、該スペーサ後部体(56)を車体に仮留めするための係止突起(52)が設けられており、該車体には、該係止突起(52)が係合した係合孔(54)が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
かかる布シートの車体への取付構造にあっては、スペーサが布シートの開口に挿通され、このスペーサにねじ部材が挿通されており、ねじ部材が布シートとほぼ非接触になっているので、ねじ部材を車体にねじ込む際に布シートがねじ部材と共回りすることがない。
【0008】
請求項1の布シートの車体への取付構造においては、フランジ部が前記筒状部と一体となっている。フランジ部が前記筒状部と一体となっていると、ねじ部材のスペーサへの挿通及び車体へのねじ込み作業が行ない易い。
【0009】
請求項1,2の布シートの車体への取付構造においては、スペーサは、車体に当接するスペーサ後部体と、該スペーサ後部体に結合されたスペーサ前部体とを備えており、該スペーサ前部体にフランジ部(請求項1では第1フランジ部)が設けられており、該スペーサ後部体は、該布シートよりも車体側に配置された、前記開口よりも大きい拡大部(請求項1では第2フランジ部)を有する。
【0010】
このように構成したことにより、布シートを車体に取り付けるに当たり、スペーサ後部体とスペーサ前部体とを布シートに予め装着しておくことができ、また、スペーサが布シートから脱落しないので、作業性が良い。
【0011】
請求項2の布シートの車体への取付構造においては、スペーサ後部体を車体に仮留めするための係止部材が設けられており、該車体には、該係止部材が係合した係合孔が設けられている。
【0012】
このように構成したことにより、布シートを車体へ取り付ける際にスペーサを車体に仮留めして布シートを予め位置決めしておくことができるので、作業効率が著しく高いものとなる。
【0013】
本発明の布シートの車体への取付構造は、自動車乗員の頭部保護用エアバッグの縁部を車体に取り付ける構造である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は本発明の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の斜視図、第2図(a)は第1図のII−II線に沿う断面図、第2図(b)はスペーサの分解斜視図、第3図はこの布シートの車体への取付構造の分解斜視図である。
【0015】
この実施の形態では、自動車の乗員頭部保護用エアバッグ1が自動車の車体のルーフサイドレール2に取り付けられている。このエアバッグ1は、2枚の布シートを重ね合わせ、その周縁部を縫糸4や接着剤等により接合して袋状としたものである。このエアバッグ1の上縁部に沿って耳部6が上方に突設されており、この耳部6に該ルーフサイドレール2への留付用の開口8が設けられている。
【0016】
この開口8に略円筒状のスペーサ10が嵌装されている。このスペーサ10は、ボルト等のねじ部材が挿通される筒状部12と、この筒状部12の筒軸方向両端側からそれぞれ側方に張り出した1対のフランジ14,16を有している。このフランジ14,16の外径は該開口8の内径よりも十分に大きなものとなっている。該筒状部12は該開口8に挿通され、フランジ14,16は、それぞれ耳部6の裏側(ルーフサイドレール2と対面する側)と表側(該裏側と反対側)とから該耳部6の開口8の周縁部に対峙しており、これにより、スペーサ10は開口8内に抜け出し不能に保持されている。
【0017】
なお、このフランジ14,16同士の間隔即ち筒状部12の筒軸方向の長さは耳部6の厚さよりも十分に大きく、且つ筒状部12の太さ(後述のフック26,30を含む太さ)は開口8の内径よりも十分に小さいものとなっている。そのため、このフランジ14,16同士の間に耳部6が挟み付けられることはなく、ねじ部材のねじ込みに際し該ねじ部材からスペーサ10に回転トルクが加えられても、該スペーサ10は開口8内で空転し、耳部6が該スペーサ10と共回りすることはない。
【0018】
この実施の形態では、第2図(b)及び第3図に示す通り、スペーサ10は、耳部6の裏側から開口8に嵌装されるスペーサ後部体としてのスペーサ半体18と、耳部6の表側から開口8に嵌装されるスペーサ前部体としてのスペーサ半体20とからなっている。このスペーサ半体18,20は、それぞれ前記筒状部12の筒軸方向の中間部分から一半側(又は他半側)をなす小筒状部22,24を有しており、各小筒状部22,24の一端側にそれぞれ前記フランジ14,16が配置されている。
【0019】
フランジ14の小筒状部22との角隅部付近には、該小筒状部22を挟んでその直径方向に対峙した1対のフック26が設けられている。このフック26は、小筒状部22の筒軸方向に沿って該小筒状部22の他端側から延長方向に延出しており、各々の先端には爪26aが設けられている。各爪26aは、互いに離反する方向に突設されている。フランジ16の小筒状部24との角隅部付近には、このフック26が係合する1対の係合孔28が設けられている。この係合孔28は、小筒状部24を挟んでその直径方向に対峙した位置に配置されている。
【0020】
また、このフランジ16の小筒状部24との角隅部付近には、該フック26と同様の1対のフック30が設けられている。このフック30は、上記係合孔28同士が対峙する方向と直交方向に小筒状部24を挟んで対峙しており、小筒状部24の筒軸方向に沿って該小筒状部24の他端側(該フランジ16が配置された小筒状部24の前記一端側とは反対側)から延長方向に延出している。各フック30の先端には、互いに離反する方向に爪30aが突設されている。そして、フランジ14の小筒状部22との角隅部付近には、このフック30が係合する1対の係合孔32が設けられており、この係合孔32は、上記フック26同士が対峙する方向と直交方向に小筒状部22を挟んで対峙している。
【0021】
スペーサ10を耳部6の開口8に嵌装するには、該耳部6の裏側及び表側からそれぞれスペーサ半体18,20の小筒状部22,24を該小筒状部22,24の上記他端側同士が対面するように開口8内に挿入し、互いに突き合わせる。すると、各フック26,30がそれぞれ対応する係合孔28,32に係合し、第1図(b)に示す如く、該小筒状部22,24同士が同軸状に連結される。
【0022】
なお、この係合孔28,32内には、それぞれ対応するフック26,30が差し込まれるとその先端の爪26a,30aが引っ掛かる段差部が設けられている(符号32aは爪30aが引っ掛かる段差部を示す。図示はしないが、爪26aが引っ掛かる段差部も該段差部32aと同様の形状となっている。)。この段差部にそれぞれ爪26a,30aが引っ掛かることにより、各フック26,30が該係合孔28,32内に係止され、スペーサ半体18,20同士が分離不能に接合される。
【0023】
前述した筒状部12の太さとは、このフック26,30等を含むスペーサ10の開口8内での最大径を指している。
【0024】
エアバッグ1の耳部6は、このスペーサ10を介してボルト34によりルーフサイドレール2に固定されている。即ち、ボルト34は、該耳部6の開口8に嵌装されたスペーサ10の筒状部12内に挿通されており、このボルト34がルーフサイドレール2のボルト孔36にねじ込まれることにより該耳部6はルーフサイドレール2に固定されている。
【0025】
耳部6をルーフサイドレール2に固定するに際し、スペーサ10のフランジ14がルーフサイドレール2に当接し、フランジ16がボルト34の頭部(該ボルト34のねじ込み方向後端側の拡大部分)34aを受承する。このため、エアバッグ1の耳部6にこのボルト34の頭部34aは接触せず、ボルト34を該ボルト孔36にねじ込むときに該耳部6がボルト34と共回りすることがない。このとき、ボルト34のねじ込みによりスペーサ10に回転トルクが加えられても、スペーサ10は前記の通り開口8内で空転し、耳部6にこのトルクが伝わらず、耳部6がよじれない。
【0026】
第4図(a)は本発明の別の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の分解斜視図であり、第4図(b)は第4図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第4図中、第1〜3図と同一の符号は同一の部分を示している。
【0027】
この実施の形態では、エアバッグ1の耳部6は、開口8に挿通された略筒状のスペーサ40を介してボルト34によりルーフサイドレール2に固定されている。
【0028】
このスペーサ40は、ボルト34が挿通される筒状部42を有しており、この筒状部42の筒軸方向一端側には、該ボルト34の頭部34aを受承するためのフランジ44が配置されている。なお、この筒状部42の筒軸方向の長さは該耳部6の厚さよりも十分に大きく、フランジ44の外径は該開口8の内径よりも大きいものとなっている。また、この筒状部42の太さは、該開口8の内径よりも十分に小さなものとなっている。
【0029】
このスペーサ40で耳部6をルーフサイドレール2に固定するに当たっては、該耳部6の表側から上記筒状部42の筒軸方向他端側(該フランジ44が配置された筒状部42の前記一端側とは反対側)を開口8内に挿通し、該筒状部42内にボルト34を挿通してルーフサイドレール2のボルト孔36にねじ込む。
【0030】
この際、スペーサ40は、筒状部42の該他端側がルーフサイドレール2に当接し、フランジ44がボルト34の頭部34aを受承する。このため、エアバッグ1の耳部6にボルト34の該頭部34aは接触せず、ボルト34を該ボルト孔36にねじ込むときに該耳部6がボルト34と共回りすることがない。このとき、ボルト34のねじ込みによりスペーサ40に回転トルクが加えられても、前記の通り筒状部42の太さが開口8の内径よりも十分に小さいので、スペーサ40は開口8内で空転し、耳部6にこのトルクが伝わらず、耳部6がよじれない。
【0031】
エアバッグ1のルーフサイドレール2への取付手順としては、ボルト34のねじ込み作業と同工程でスペーサ40を開口8に挿通し、ボルト34を筒状部42に挿通してルーフサイドレール2のボルト孔36にねじ込んでもよいが、この実施の形態では、スペーサ40を予め開口8に嵌装しておいてからボルト34のねじ込み作業を行う。この場合には、ボルト34をボルト孔36にねじ込むまでスペーサ40が開口8から抜け落ちないようにしておく。
【0032】
スペーサ40が開口8から抜け落ちないように、スペーサ40を開口8に挿通したときに筒状部42にボルト34を挿通し、このボルト34の先端に開口8よりも大径のツースドワッシャを仮付けしてスペーサ40が開口8から抜け出さないようにしておく。このようにすることにより、スペーサ40が開口8から抜け出さないばかりか、筒状部42に予めボルト34が挿通されているので、耳部6をルーフサイドレール2に固定するに際し、該耳部6を所定位置に配置してこのボルト34をルーフサイドレール2のボルト孔36にねじ込むだけで済み、作業効率が著しく高いものとなる。
【0033】
第5図(a)は本発明のさらに別の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の分解斜視図であり、第5図(b)は第5図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第5図(a),(b)において、第1〜3図と同一の符号は同一の部分を示している。
【0034】
この実施の形態では,エアバッグ1の耳部6は開口8に嵌装されたスペーサ50を介してボルト34によりルーフサイドレール2に固定されている。このスペーサ50には、耳部6をルーフサイドレール2に仮留めするための係止部材としての係止突起52が設けられており、ルーフサイドレール2には、この係止突起52が係合する係合孔54が設けられている。
【0035】
このスペーサ50は、スペーサ後部体としてのスペーサ半体56と、スペーサ前部体としてのスペーサ半体58とからなっている。このスペーサ半体56,58は、それぞれ耳部6の裏側と表側とに配置される略長方形状のプレート60,62と、このプレート60,62を貫通する筒状部64,66を有している。
【0036】
この筒状部64,66は、それぞれ該プレート60,62の長辺方向の一半側に配置されている。各筒状部64,66の一端側は、それぞれプレート60,62の耳部6と対面しない側の面と面一になっており、他端側は、それぞれプレート60,62の耳部6と対面する側の面から突出している。各筒状部64,66の筒軸方向は各プレート60,62の法線方向と平行となっている。
【0037】
プレート60には、1対のフック68が設けられている。このフック68は、筒状部64の基端部付近からその筒軸方向に沿って延在し、該筒状部64の該他端側から延長方向に延出しており、互いに筒状部64を挟んで該筒状部64の直径方向に対峙している。各フック68の先端には爪68aが設けられている。各爪68aは、互いに離反する方向に突設されている。プレート62には、このフック68が係合する1対の係合孔70が設けられている。この係合孔70は、筒状部66を挟んでその直径方向に対峙するよう該筒状部66の基端部付近に配置されている。
【0038】
また、プレート62には、筒状部66の基端部付近から該フック68と同様の1対のフック72が立設されている。このフック72は、上記係合孔70同士が対峙する方向と直交方向に筒状部66を挟んで対峙しており、筒状部66の筒軸方向に沿って該筒状部66の該他端側から延長方向に延出している。各フック72の先端には互いに離反する方向に爪72aが突設されている。そして、プレート60には、このフック72が係合する1対の係合孔74が設けられており、この係合孔74は、上記フック68同士が対峙する方向と直交方向に筒状部64を挟んで対峙している。
【0039】
スペーサ50を耳部6の開口8に嵌装するには、該耳部6の裏側と表側とからそれぞれスペーサ半体56,58の筒状部64,66を該筒状部64,66の上記他端側同士が対面するように開口8内に挿入し、互いに突き合わせる。すると、各フック68,72がそれぞれ対応する係合孔70,74に係合し、該筒状部64,66同士が同軸状に連結される。
【0040】
なお、この係合孔70,74内には、それぞれ対応するフック68,72が差し込まれるとその先端の爪68a,72aが引っ掛かる段差部(図示略)が設けられている。この段差部にそれぞれ爪68a,72aが引っ掛かることにより、各フック68,72が該係合孔70,74内に係止され、スペーサ半体56,58同士が分離不能に接合される。
【0041】
このようにスペーサ半体56,58同士が接合された状態にあっては、開口8内のフック68,72等を含む筒状部64,66部分の太さは、該開口8の内径よりも十分に小さく、また、プレート60,62同士の間隔即ち連結された筒状部64,66の筒軸方向の長さは、耳部6の厚さよりも十分に大きなものとなっている。
【0042】
前記係止突起52は、耳部6の裏側に配置されたプレート60のルーフサイドレール2と対面する側の面に突設されている。この実施の形態では、該係止突起52は、湾曲面を互いに離反する方向に向けて隣接した1対の略半円筒形状のフック76からなっている。このフック76は、互いに接離する方向に弾性的に変位可能なものとなっている。各フック76の長手方向の途中部分には拡大部分76aが設けられており、この拡大部分76aから先端側は先細のテーパ形状となっている。
【0043】
エアバッグ1の耳部6をルーフサイドレール2に固定するに当たっては、まず、この係止突起52をルーフサイドレール2の係合孔54に差し込む。この際、係止突起52の各フック76は、その先端側のテーパ面が該係合孔54の縁に沿って摺動するのに伴い、拡大部分76aが該係合孔54を通り抜けられるよう互いに接近方向に撓む。そして、この拡大部分76aが該係合孔54を通り抜けると、各フック76がその復元力により互いに離反し、元の位置関係に弾性的に復帰する。これにより、該拡大部分76aが係合孔54の縁部に引っ掛かって係止突起52が該係合孔54内に係止され、耳部6がこのスペーサ50を介してルーフサイドレール2に仮留めされる。この後、ボルト34を筒状部66,64に挿通してルーフサイドレール2のボルト孔36にねじ込み、耳部6を固定する。
【0044】
このスペーサ50を用いた布シートの車体への取付構造にあっては、耳部6をルーフサイドレール2に固定するに当たり、該耳部6がスペーサによって仮留めされ、予め位置決めされるので、作業効率が非常に高い。
【0045】
なお、上記第5図の実施の形態及び第1〜3図に示した実施の形態において、スペーサ後部体及びスペーサ前部体同士の接合構造は前述したもの以外の各種の接合構造を用いることができる。また、スペーサの細部の構成は図示のものに限られるものではない。例えば、次の第6図に示すスペーサ50Aの如き構成を有していてもよい。
【0046】
第6図(a)は実施の形態に係るスペーサ50Aの表側からの斜視図であり、第6図(b)はこのスペーサ50Aの裏側からの斜視図である。
【0047】
このスペーサ50Aは、第5図に示した上記スペーサ50の一方のスペーサ半体58に代えて肉厚の薄いプレート62Aを有したスペーサ半体58Aを備えている。このプレート62Aの板面にはリブ78,80が設けられており、該プレート62aの強度は必要にして且つ十分なものとなっている。このスペーサ50Aのその他の構成は前記スペーサ50と同様であり、第6図中、第5図と同一の符号は同一の部分を示している。
【0048】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の布シートの車体への取付構造にあっては、スペーサが布シートの開口に挿通され、このスペーサにねじ部材が挿通されており、ねじ部材が布シートとほぼ非接触になっているので、ねじ部材を車体にねじ込む際に布シートがねじ部材と共回りすることがなく、布シートを極めて精度よく車体に取り付けることができる。
【0049】
本発明の布シートの車体への取付構造においては、ボルト後端側の頭部などねじ部材の拡大部分を受けるフランジ部を前記筒状部と一体とすることにより、ねじ部材のスペーサへの挿通及び車体へのねじ込み作業が行ない易いものとなる。
【0050】
また、本発明の布シートの車体への取付構造においては、スペーサ後部体とスペーサ前部体とを布シートに予め装着しておくと、布シートの取付作業中にスペーサが布シートから脱落しないので、作業性が良い。
【0051】
さらに、本発明の布シートの車体への取付構造においては、スペーサ後部体を車体に仮留めするための係止突起を設けることにより、布シートを車体へ取り付ける際にスペーサを車体に仮留めして布シートを予め位置決めしておくことができ、作業効率が著しく高いものとなる。
【0052】
本発明の布シートの車体への取付構造は、自動車乗員の頭部保護用エアバッグを車体に取り付ける構造である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の斜視図である。
【図2】 第1図の布シートの車体への取付構造の断面図及び要部分解斜視図である。
【図3】 第1図の布シートの車体への取付構造の分解斜視図である。
【図4】 本発明の別の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の分解斜視図及び断面図である。
【図5】 本発明のさらに別の実施の形態に係る布シートの車体への取付構造の分解斜視図及び断面図である。
【図6】 本発明の他の実施の形態に係るスペーサの斜視図である。
【符号の説明】
1 エアバッグ
2 ルーフサイドレール
6 耳部
8 開口
10,40,50,50A スペーサ
12,22,24,42,64,66 筒状部
14,16,44 フランジ
18,20,56,58 スペーサ半体
34 ボルト
36 ボルト孔
52 係止突起
54 係合孔
60,62 プレート
Claims (3)
- 乗員頭部保護用エアバッグ(1)の縁部(6)を構成する布シートの開口(8)に挿通されたねじ部材(34)が、車体に設けられたねじ部材用の孔(36)にねじ込まれることによって該布シートが車体に留め付けられた布シートの車体への取付構造において、
該開口(8)に、該開口(8)よりも小径の筒状部(12)を有したスペーサ(10)の該筒状部(12)が挿入され、
該筒状部(12)に前記ねじ部材(34)が挿通されており、
該スペーサ(10)の一端側が車体に当接し、該スペーサ(10)の他端側には、該開口(8)よりも大径のフランジ部(16)が配置されており、
該フランジ部(16)が該筒状部(12)と一体となっており、
該スペーサ(10)は、車体に当接するスペーサ後部体(18)と、該スペーサ後部体(18)に結合されたスペーサ前部体(20)とを備えており、
該スペーサ後部体(18)及びスペーサ前部体(20)は、それぞれ、前記筒状部(12)の筒軸方向の一半側と他半側とを構成する小筒状部(22,24)を有しており、
該スペーサ前部体(20)の該小筒状部(24)の前記他端側に前記フランジ部(16)(以下、第1のフランジ部(16)という。)が一体に設けられており、
該スペーサ後部体(18)の該小筒状部(22)の前記一端側に、前記開口(8)よりも大径の第2のフランジ部(14)が一体に設けられており、
該スペーサ後部体(18)において、該第2フランジ部(14)の該小筒状部(22)との角隅部付近には、該小筒状部(22)を挟んで該小筒状部(22)の直径方向に対峙した1対のフック(26)が設けられており、各フック(26)は、該小筒状部(22)の筒軸方向に沿って該小筒状部(22)の前記他端側よりも該小筒状部(22)の延長方向に延出しており、各フック(26)の先端には爪(26a)が設けられており、各フック(26)の爪(26a)同士は、該小筒状部(22)を挟んで互いに離反方向に突設されており、
該スペーサ前部体(20)において、該第1フランジ部(16)の該小筒状部(24)との角隅部付近には、該スペーサ後部体(18)の該フック(26)の爪(26a)がそれぞれ係合する1対の係合孔(28)が設けられており、各係合孔(28)は、該小筒状部(24)を挟んで該小筒状部(24)の直径方向に対峙した位置に配置されており、
該スペーサ前部体(20)において、該第1フランジ部(16)の該小筒状部(24)との角隅部付近には、さらに、該小筒状部(24)を挟んで該小筒状部(24)の直径方向に対峙した1対のフック(30)が設けられており、該フック(30)同士は、前記係合孔(28)同士が対峙する方向と直交方向に対峙しており、各フック(30)は、該小筒状部(24)の筒軸方向に沿って該小筒状部(24)の前記一端側よりも該小筒状部(24)の延長方向に延出しており、各フック(30)の先端には爪(30a)が設けられており、各フック(30)の爪(30a)同士は、該小筒状部(24)を挟んで互いに離反方向に突設されており、
該スペーサ後部体(18)において、該第2フランジ部(14)の該小筒状部(22)との角隅部付近には、さらに、該スペーサ前部体(20)の該フック(30)の爪(30a)がそれぞれ係合する1対の係合孔(32)が設けられており、該係合孔(32)同士は、該スペーサ後部体(18)において前記フック(26)同士が対峙する方向と直交方向に該小筒状部(22)を挟んで対峙しており、
該第1フランジ部(16)と第2フランジ部(14)との間における、該フック(26,30)を含むスペーサ(10)の太さは、前記開口(8)の内径よりも小さなものとなっており、
該スペーサ(10)を該開口(8)に嵌装するに当っては、前記布シートの車体側から該スペーサ後部体(18)の小筒状部(22)及び各フック(26)を挿入し、該布シートの車体と反対側から該スペーサ前部体(20)の小筒状部(24)及び各フック(30)を挿入し、該スペーサ後部体(18)の該小筒状部(22)の前記他端側と該スペーサ前部体(20)の該小筒状部(24)の前記一端側とを付き合わせ、該スペーサ後部体(18)の各フック(26)を該スペーサ前部体(20)の各係合孔(28)に係合させ、且つ該スペーサ前部体(20)の各フック(30)を該スペーサ後部体(18)の各係合孔(32)に係合させることにより、該スペーサ後部体(18)と該スペーサ前部体(20)とを連結することを特徴とする布シートの車体への取付構造。 - 乗員頭部保護用エアバッグ(1)の縁部(6)を構成する布シートの開口(8)に挿通されたねじ部材(34)が、車体に設けられたねじ部材用の孔(36)にねじ込まれることによって該布シートが車体に留め付けられた布シートの車体への取付構造において、
該開口(8)に、該開口(8)よりも小径の筒状部(64,66)を有したスペーサ(50)の該筒状部(64,66)が挿入され、
該筒状部(64,66)に前記ねじ部材(34)が挿通されており、
該スペーサ(50)の一端側が車体に当接し、該スペーサ(50)の他端側には、該開口よりも大径のフランジ部(62)が配置されており、
該スペーサ(50)は、車体に当接するスペーサ後部体(56)と、該スペーサ後部体(56)に結合されたスペーサ前部体(58)とを備えており、該スペーサ前部体(58)に前記フランジ部(62)が設けられており、
該スペーサ後部体(56)は、該布シートよりも車体側に配置された、前記開口(8)よりも大きい拡大部(60)を有しており、
該拡大部(60)から車体側に向って、該スペーサ後部体(56)を車体に仮留めするための係止突起(52)が設けられており、該車体には、該係止突起(52)が係合した係合孔(54)が設けられていることを特徴とする布シートの車体への取付構造。 - 請求項2において、前記係止突起(52)は、前記拡大部(60)からの突出方向の途中部が、前記係合孔(54)よりも大きい拡大部分(76a)となっており、該拡大部分(76a)よりも先端側は、先細のテーパ形状となっており、
該係止突起(52)は、該係合孔(54)に差し込まれたときには、該拡大部分(76a)が該係合孔(54)を通り抜けられるように弾性変形し、該拡大部分(76a)が該係合孔(54)を通り抜けたときには、弾性的に元の形状に復帰して該拡大部分(76a)が該係合孔(54)の縁部に引っ掛かるように構成されていることを特徴とする布シートの車体への取付構造。
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