JP4892237B2 - 熱硬化性樹脂組成物の硬化物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物及びその製造方法に関する。より詳しくは、被覆材、床材、化粧板、家具材、防食材、防水材、繊維強化プラスチック材料、WPC、バスタブ、人工大理石、包装品等の様々な分野で好適に用いられる熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物及びその製造方法に関する。
熱硬化性樹脂は、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として用いられ、例えば、常温で硬化する常温硬化システムに適応できるものが広く採用されている。このような熱硬化性樹脂は、常温でラジカル重合が可能であり、熱硬化性樹脂に硬化剤、充填剤等を添加した熱硬化性樹脂組成物の硬化物が靱性、強度、耐久性等の性能を有することから、例えば、被覆材、床材、化粧板、家具材、防食材、防水材(防水ライニング材)、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)材料、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人工大理石、包装品等の様々な分野において広く用いられている。このような熱硬化性樹脂の中でも、建築材料としては、一般に不飽和ポリエステル樹脂が用いられ、不飽和ポリエステル樹脂に含まれる重合性単量体としては、成形性、硬化物物性及び価格の点から、スチレンが使用されることがほとんどである。
一方、住宅や車両の内装用部材に使用される塗料や接着剤等の熱硬化性樹脂組成物中に含まれるスチレン、トルエン等の揮発性有機物質(VOC;Volatile Organic Compounds)がシックハウス症候群の原因の1つと考えられ、室内におけるこれらVOCの放散を減少させることが強く求められている。例えば、厚生労働省が設定する13物質に対するガイドラインや、国土交通省による建築基準法の改正、文部科学省の学校施設の規制等があり、これら全てにおいてスチレンの使用制限がなされている。また、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出把握管理促進)法により、有害性ある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どのくらい環境中に排出されたか又は廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する義務が事業者に課されるようになっている。このような背景から、スチレン等のVOC放散量を充分に低減することによって、厚生労働省が設定する現在のガイドラインの総揮発性有機物質(TVOC;Volatile Organic Compounds)の指針値以下とすることができ、かつ、優れた物性を発揮できる樹脂組成物を得るための技術が求められている。
これに対しては、スチレンの代替原料として高沸点の(メタ)アクリレート系単量体を使用する技術が種々検討されている。しかしながら、高沸点の(メタ)アクリレート系単量体は酸素による重合阻害を受け易く、また、スチレンを用いた場合と比較して空気遮断材として一般に添加されるパラフィンワックス等が樹脂表面に造膜しにくいため、空気接触面の重合が充分に進行せず、表面にベタツキが残るという課題を有していた。
このような課題を克服するために、空気乾燥性を有するオリゴマーや単量体を用いる手法が数多く提案されており、例えば、多官能性イソシアネート化合物に、活性水素原子を有するアリルエーテル化合物及び活性水素原子とアクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタン化合物を、ジシクロペンテニルオキシアルキルアクリレート又はジシクロペンテニルオキシアルキルメタクリレートに溶解してなる空気乾燥性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの手法をもってしても未だ、樹脂表面を充分に乾燥させるには長時間を要しており、また、効果を上げるために、これら空気乾燥性物質を多量に樹脂に配合した場合には、樹脂を含んだ容器内でゲル物が発生し得るという現象を招いていた。このため、スチレン等の気体へのVOC放散量を充分に低減しつつ、硬化物物性や取扱性に充分に満足できる熱硬化性樹脂の開発が待望されている。
特開平08−059761号公報(第2頁等)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、スチレン、ビニルトルエン等の重合性単量体の放散量が充分に低減されることにより、気中VOC濃度も充分に低減され、厚生労働省が設定す現在のガイドイランのTVOCの指針値以下とすることができ、衛生上の支障を生じるおそれが低減されるとともに、靱性、耐久性、耐候性、耐熱性、機械的強度等の各種物性に優れていることから、建築分野における建築材料の仕上げ材等に有用な熱硬化性樹脂組成物の硬化物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、靱性、耐久性、耐候性、耐熱性、機械的強度等の性能を有し、建築分野における建築材料の仕上げ材等の様々な用途に好適な硬化物が得られる点で有用であることに着目し、熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合性単量体が、ビニルトルエンを全重合性単量体成分に対して特定量を含むこととし、これに起因し、重合性単量体の放散量が充分に低減されることとなり、また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物中の重合性単量体の含有量を特定量以下とすることにより、スチレンのみならず、ビニルトルエン等の重合性単量体の大気中への放散量を充分に低減することができることを見いだした。その結果、気中VOC濃度も充分に低減され、衛生上の支障を生じるおそれを充分に低減することができるとともに、靱性、耐久性、耐候性等の各種物性が優れた硬化物が得られることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物であって、上記重合性単量体は、ビニルトルエンを全重合性単量体成分に対して90質量%以上含み、上記硬化物の重合性単量体の含有量は、0.3質量%以下である熱硬化性樹脂組成物の硬化物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物から得られる。なお、重合性オリゴマー及び重合性単量体を合わせて熱硬化性樹脂という。
上記熱硬化性樹脂組成物において、重合性単量体としては、ビニルトルエンを必須とするものであるが、本発明の作用効果を損なわない範囲内でその他の単量体を含むことができる。
上記ビニルトルエンとは、o−、m−及びp−メチルスチレンの総称である。
上記硬化物中の重合性単量体の含有量は、0.3質量%以下である。0.3質量%を超えると、硬化物からの重合性単量体の大気中への放散量が多くなり、衛生上の支障を生じるおそれを充分に低減することができないおそれがある。好ましくは、0.2質量%以下であり、より好ましくは、0.1質量%以下である。
上記ビニルトルエンの使用量としては、全重合性単量体成分を100質量%とすると、90質量%以上であることが適当である。90質量%未満であると、熱硬化性樹脂組成物の硬化物中のスチレン、ビニルトルエン等の重合性単量体の大気中への放散量を充分に低減するという本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。好ましくは、93質量%以上であり、より好ましくは、95質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%、すなわちビニルトルエンのみで重合性単量体を構成することである。
上記重合性単量体が含んでもよいその他の単量体は、全単量体成分を100質量%とすると、10質量%以下であり、7質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えると、本発明の作用効果を損うおそれがある。より好ましくは、5質量%であり、更に好ましくは、0質量%である。
上記重合性単量体が含んでもよいその他の単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記重合性単量体としては、熱硬化性樹脂を100質量%とすると、20〜70質量%とすることが適当である。20質量%未満であると、粘度が高いために作業性に優れたものとはならないおそれがある。70質量%を超えると、硬化性を向上させることができないおそれがあり、また、残留する単量体量が増加し、これに起因して成形体からの放散量が増加し、建築基準法等の法規制に充分に対応できないおそれがある。好ましい下限は25質量%、上限は65質量%であり、より好ましい下限は30質量%、上限は60質量%である。
上記重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル等の分子内に重合性不飽和基を複数個有するオリゴマーが挙げられる。
上記不飽和ポリエステルは、酸成分(多塩基酸成分)と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを縮合反応して得ることができる。なお、酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分との反応モル比としては特に限定されず、例えば、酸成分:グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とした場合に、10:8〜10:12であることが好適である。
上記酸成分としては、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に含まれる水酸基及び/又はエポキシ基と反応してエステル結合を生成することができる置換基を2つ以上有する化合物であればよく、不飽和多塩基酸を必須とし、その一部を飽和多塩基酸に置き換えて使用してもよい。
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β―不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ―不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記飽和多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;ヘット酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を用いることが好ましい。この場合、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸の使用量としては、全酸成分100モル%に対して下限が30モル%であることが好適である。より好ましい下限は40モル%である。また、上限は70モル%であることが好ましい。より好ましい上限は60モル%であり、最も好ましい上限は50モル%である。イソフタル酸及び/又はテレフタル酸の使用量が全酸成分100モル%に対し30モル%未満であれば耐熱水性が充分とはならず、耐熱水性を特に必要とする用途に好適に使用できなくなるおそれがある。また、70モル%を超える場合、不飽和酸の使用量が低下し、硬化性や強度を向上することができないおそれがある。
上記グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2−ジエチルブタン−1,3−ジオール、4,5−ノナンジオール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、ネオペンチルグリコール(NPG)、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物及び水素化ビスフェノールA(HBPA)のうち少なくとも1種を用いることが好ましい。この場合、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物及び水素化ビスフェノールAの使用量としては、全グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分100モル%に対して下限が30モル%であることが好適である。より好ましい下限は40モル%である。また、上限は80モル%であることが好ましい。より好ましい上限は70モル%である。上記使用量が全グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分100モル%に対し30モル%未満であれば耐熱水性が充分とはならず、耐熱水性を特に必要とする用途に好適に使用できなくなるおそれがある。また、80モル%を超える場合、引張り伸び率が充分とはならず、ゲルコート等耐クラック性を特に必要とする用途に好適に使用できなくなるおそれがある。
上記エポキシ化合物成分としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、3,4−エポキシ−1−ブテン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記不飽和ポリエステルの原料の一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有する化合物に置き換えて製造してもよく、この場合には、いわゆる空気硬化型ポリエステルとすることができる。具体的には、少なくとも上述した多塩基酸成分の全量又は一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有する不飽和多塩基酸に置き換えるか、上述した通常のグリコール成分及び/若しくはエポキシ化合物成分の全量又は一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有するグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に置き換えればよい。
上記不飽和結合を有する不飽和多塩基酸成分としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、α−テルピネン−無水マレイン酸付加物、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物(エンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、ロジン、エステルガム、乾性油脂肪酸、半乾性油、脂肪酸等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記不飽和結合を有するグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分としては、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールエタンモノアリルエーテル、トリメチロールエタンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記不飽和ポリエステルの特に好適な形態としては、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を全酸成分100モル%に対して30モル%以上含む酸成分と、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物及び水素化ビスフェノールAのうち少なくとも1種を全グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分100モル%に対して30モル%以上含むグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを用いて得られるものである形態である。これにより、不飽和ポリエステル樹脂の硬化物において、耐熱水性を更に向上することが可能となり、例えば、防水パンやバスタブ、カウンターキッチン等の耐熱水性が特に要求される用途に好適に用いられることとなる。
上記ビニルエステル(エポキシ(メタ)アクリレート)に用いられるエポキシ(メタ)アクリレートは、通常、エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応により得られる重合体である。
上記エポキシ樹脂としては、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物が使用でき、具体的には、多価フェノールや多価アルコールのポリグリシジルエーテル、エポキシノボラック、エポキシ化ジオレフィン、脂肪酸のエポキシ化物、乾性油のエポキシ化物等が使用できる。
上記不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、それらの誘導体等が挙げられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。必要に応じて他の一塩基酸及び/又は多塩基酸を加えて変性することも可能である。
上記重合性オリゴマーの全部又は一部は、不飽和ポリエステルであることが好ましい。
上記熱硬化性樹脂組成物は、シリカを含有するものであることが好ましい。シリカは、熱硬化性樹脂組成物に揺変性を付与する作用効果を有するもの(揺変剤)であり、その形状は特に限定されないが、ヒュームドシリカが好適に用いられる。なお、本発明においては、シリカに加えて、その他の揺変剤を併用することもできる。
上記シリカとしては、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.5〜10質量部とすることが適当である。0.5質量部未満であると、揺変性を充分に付与することができず、施工時の作業を効率よく行うことができないおそれがあり、10質量部を超えると、粘度が高くなり過ぎて熱硬化性樹脂組成物を施工する際の作業性を向上することができないおそれがある。好ましい下限は1質量部、上限は5質量部であり、より好ましい下限は1.5質量部、上限は3質量部である。
上記熱硬化性樹脂組成物の揺変度としては1.1〜8.0が好適である。揺変度が1.1未満であれば縦面での樹脂だれが発生しやすく、成形品に厚みむらが起きやすい。揺変度が8.0を超えると粘度が高いため、作業がし難くなる。より好ましい揺変度は1.5〜7.0であり、更に好ましくは2.0〜6.0である。揺変度の測定方法及び計算方法はJIS K6901−1999に従う。
上記熱硬化性樹脂組成物は、金属石鹸を含有するものであることが好ましい。金属石鹸は、熱硬化性樹脂組成物の常温硬化を促進する効果を有するものであり、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト塩や、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸カルシウム等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、コバルト塩を必須とすることが好適である。
上記金属石鹸としては、熱硬化性樹脂を100質量部とすると、金属成分量として、0.01〜5質量部であることが適当である。0.01質量部未満であると、樹脂の硬化速度を向上することができず、また、充分に硬化できないおそれがあり、硬化物が持つ本来の強度物性が得られないおそれがある。5質量部を超えると、樹脂の硬化が速すぎるため、作業時間が取れず、また、硬化物の色調を良好なものとすることができないおそれがある。好ましい下限は0.1質量部、上限は2質量部であり、より好ましい下限は0.3質量部、上限は1質量部である。
なお、着色を重視する用途では、コバルト塩とアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩(好ましくはカリウム塩及び/又はカルシウム塩)とを併用することが好ましい。この場合、全金属石鹸中のコバルト塩の含有割合としては、金属石鹸の総量を100質量%とすると、コバルト塩が、金属成分量として20質量%以上であることが好ましく、これにより、硬化性をより充分に高めることが可能となる。より好ましくは、30質量%以上である。
上記熱硬化性樹脂組成物としては、必要に応じて着色剤を含むこともでき、上記熱硬化性樹脂組成物が更に着色剤を含有する形態は、本発明の好適な形態の1つである。着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、フタロシアニンブルー等の通常用いられる顔料が挙げられ、使用量としては、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、上限が30質量部であることが好ましい。より好ましい上限は20質量部である。なお、このような熱硬化性樹脂組成物は、透明性が高いものであるため、着色剤を使用しない場合には、無着色ゲルコート剤等として好適に用いられることとなる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物としてはまた、必要に応じて、樹脂の硬化を促進させるための促進助剤を含んでいてもよい。促進助剤としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、N−ピロジニノアセトアセタミド、N,Nジメチルアセトアセタミド等のβ−ジケトン類;ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリン等のアミン類等のβ−ケトエステル、β−ケトアミド類等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記促進助剤の使用割合としては、熱硬化性樹脂100質量部に対して、下限が0.005質量部、上限が1質量部であることが好ましい。より好ましい下限は0.01質量部、上限は0.5質量部である。
上記熱硬化性樹脂組成物としてはまた、本発明の作用効果を損なわない範囲内で空気乾燥性付与剤、充填剤、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、低収縮化剤、内部離型剤、柄剤、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤等の添加剤(材)を含むことができる。
上記空気乾燥性付与剤とは、樹脂が硬化する際に樹脂から形成される被膜や成形物の表面に析出し、空気との遮断層を該表面に形成することにより、空気中の酸素が樹脂のラジカル重合を阻害することを防止して樹脂の乾燥性を向上させる作用を有するものである。このような空気乾燥性付与剤としては、例えば、以下の(1)〜(3)に記載するワックス類等が挙げられる。
(1)天然ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックス;密蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス等が挙げられる。
(2)合成ワックスとしては、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;動物性油脂の誘導体;カルボキシル基含有単量体とオレフィンとの共重合体;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;ステアリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸オクタデシル等の炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;アルキルフェニールや高級アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類等が挙げられる。
(3)その他のものとしては、例えば、天然ワックスや合成ワックス等の配合ワックス等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記ワックス類に、他の成分を含んでもよい。
これらの中でも、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂組成物を常温で硬化させる場合には、上記空気乾燥性付与剤としては、JIS K2235−1991に分類される融点が40〜80℃であるものを用いることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の施工において、硬化途中の熱硬化性樹脂組成物から形成される被膜や成形物の表面に析出しやすくなることから、空気との遮断層が充分に形成されることとなる。
上記空気乾燥性付与剤の使用が必要な場合、使用量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.001質量部(10ppm)以上、1質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01質量部以上、0.3質量部以下である。
上記充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂100質量部に対して、20質量部以上、300質量部以下であることが好ましい。
上記重合禁止剤は、可使時間、硬化反応の立ち上がりを調整するために用いられ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類;t−ブチルカテコール等のカテコール類;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール等のフェノール類;フェノチアジン、ナフテン酸銅等が好適である。
上記消泡剤としては、シリコン系等の他、市販の高分子系消飽剤その他添加剤を用いることができる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の多価金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の多価金属水酸化物;多官能イソシアネート等が好適である。
上記無機骨材としては、珪砂、シリカ、クレー、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム等の無機粉体等が好適である。不活性粉体としては、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂組成物の硬化物、ゴム、木材等の粉体及び/又は粉砕物等が好適である。
上記低収縮化剤は、成形収縮を調整するために用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル−ポリスチレンブロックコポリマー、アクリル/スチレン等の多相構造ポリマー、架橋/非架橋等の多相構造ポリマー、SBS(ゴム)等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂100質量部に対して、5質量部以上、50質量部以下であることが好ましい。低収縮化材は固体である場合が多く、その取り扱いを容易にするために、重合体単量体で希釈した溶液として用いることができる。この場合、希釈に用いた重合性単量体も本発明の重合性単量体として考慮される。
上記内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1質量部以上、10質量部以下であることが好適である。
上記柄剤としては、例えば、酸化アルミニウム、PETフィルム、マイカ、セラミック及びそれらを着色剤、表面処理剤等でコーティングしたもの、メッキ処理したもの、熱硬化性樹脂と無機フィラーと着色剤等とを熱硬化させて粉砕したもの等が挙げられる。
本発明はまた、重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物から得られ、50℃以上の荷重たわみ温度を有する硬化物を製造する方法であって、上記重合性単量体は、ビニルトルエンを全重合性単量体成分に対して90質量%以上含み、上記製造方法は、硬化物の荷重たわみ温度より5℃低い温度以上の硬化温度で硬化を行う工程を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法でもある。
上記荷重たわみ温度は、硬化物の熱耐性を示す指標での一つであり、JIS K 6911 (5.35;荷重たわみ温度、JISハンドブック プラスチック−2003)に準じて測定することが好ましい。
上記硬化を行う工程は、重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化物の荷重たわみ温度より5℃低い温度以上の硬化温度で硬化を行うものである。このように、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を製造することより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物中のスチレン、ビニルトルエン等の重合性単量体の含有量を充分に低減することができ、その結果、気中VOC濃度を低減することができ、厚生労働省が設定する現在のガイドラインである総揮発性有機物質(TVOC)の室内濃度指針値である暫定目標(400μg/m以下)に充分に対応することができる。より好ましくは、荷重たわみ温度より5℃低い温度以上であり、最も好ましくは、荷重たわみ温度以上である。
なお、気中VOC濃度は、後述する方法により測定することが好ましい。この場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物のVOC濃度は、400μg/m以下であることが好ましい。400μg/mを超えると、厚生労働省が設定した現在のガイドラインであるTVOCの指針値以下とすることができず、衛生上の支障を生じるおそれを充分に低減することができない。最も好ましくは、0μg/mである。
本発明はまた、上記製造方法は、熱硬化性樹脂組成物が上記硬化温度に到達してからは、一般式(1)で表される時間t(分)で硬化を行う工程を含む硬化物の製造方法でもある。
t≧5×4((10+T)/10) (1)
T(℃)=荷重たわみ温度−硬化温度
t(分)=上記硬化温度に到達してからの時間
上記硬化温度は、硬化物の荷重たわみ温度より5℃低い温度以上の温度である。好ましくは、荷重たわみ温度以上である。なお、上記硬化温度は、熱硬化性樹脂組成物中の重合性単量体におけるビニルトルエンの含有量、その他の重合性単量体の種類及びその含有量、目的とする硬化物中の重合性単量体の含有量等により、適宜設定することが好ましい。
上記硬化温度は、以下の方法により測定することが好ましい。
本発明の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を所定の温度に到達してから、所定時間以上保持して硬化することにより、重合性単量体の残留量の極めて少ない硬化物を得ることから、上記一般式(1)において、硬化温度は、硬化物中の重合性単量体残留量を極めて少なくするために必要な所定温度とし、硬化温度に到達してからの時間は、硬化温度に保持する時間とする。
上記硬化温度は、熱硬化性樹脂組成物の硬化時の温度を表すが、硬化剤を混合し加熱硬化させるときの温度であってもよいし、低い温度で硬化させた後に、より高い温度で後硬化させるときの温度であってもよい。なお、厚みのある熱硬化性樹脂組成物の硬化温度は、硬化させる熱硬化性樹脂組成物に予め熱伝対温度計を挿入して、加熱硬化又は後硬化させることにより測定することができる。熱伝対温度計による硬化温度の測定は、硬化中の熱硬化性樹脂組成物各部の温度を同時測定して最も温度の低い部分を求めればよいが、一般的には、熱硬化性樹脂組成物の厚みが一番厚いところの厚み中央部と一番薄いところの表面部を同時に測定して、その低い方の温度として決めることができる。
上記硬化温度に到達してからの時間は、連続した時間であってもよいし、2つ以上の積算時間であってもよい。硬化温度に到達した時点は、上記硬化温度の測定において、温度上昇の遅い部分が硬化温度に到達した時点として決めることができる。
上記硬化温度に到達してからの時間(t(分))は、加熱対象物である熱硬化性樹脂組成物の表面温度が上記硬化温度になってからではなく、硬化前・後に関わらず、内部まで硬化温度に到達してからの時間とする。
このように、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を製造することより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物中のスチレン、ビニルトルエン等の重合性単量体の含有量を充分に低減することができ、その結果、気中のVOC濃度を低減し、厚生労働省が設定するガイドラインであるTVOCの指針値以下に充分に対応することができる。
上記熱硬化性樹脂組成物により硬化物(塗膜、皮膜)を形成する方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物に硬化剤を混合し、基材に塗布した後硬化させることにより被膜を成形する方法;マット状の繊維強化材を用いる場合には、熱硬化性樹脂組成物に硬化剤を混合し、ハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより被膜を形成する方法等が挙げられる。
上記硬化剤としては、通常使用されるものを用いることができ、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセトアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、キュメンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1−ジブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、アミルパーオキシ−p−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−へキシルパーオキシベンゾエート等の1種又は2種以上を使用することができる。使用量としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.5質量部以上、5質量部以下であることが好適である。
上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、本発明の樹脂組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
上記熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布する方法及び硬化方法としては、上記熱硬化性樹脂組成物が用いられる用途により適宜設定すればよいが、塗装方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等による塗装法等により行うことができる。
硬化方法としては、例えば、施工直前に、硬化剤を樹脂組成物に混合し硬化させることができる。
本発明は更に、上記製造方法により製造された熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、上記硬化物の重合性単量体の含有量は、0.3質量%以下である熱硬化性樹脂組成物の硬化物でもある。これにより、化学物質の放散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に低減されるとともに、靱性、耐久性、耐候性、耐熱性、機械的強度等の各種物性に優れていることから、建築分野における建築材料の仕上げ材等に有用な熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、上述の構成よりなり、スチレン、ビニルトルエン等の重合性単量体の放散量が充分に低減されることにより、気中の揮発性有機物質(VOC)濃度を充分に低減することができ、厚生労働省が設定する現在のガイドラインの総揮発性有機物質(TVOC)の指針値以下とすることができ、その結果、衛生上の支障を生じるおそれが充分に低減されるとともに、靱性、耐久性、耐候性、耐熱性、機械的強度等の各種物性に優れていることから、建築分野における建築材料の仕上げ材等に有用なものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
不飽和ポリエステルの製造例1
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器及び攪拌機を備えた4つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、イソフタル酸45モル、ジエチレングリコール25モル、プロピレングリコール10モル、ネオペンチルグリコール65モルを仕込んだ。次に上記の内容物を窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、200〜220℃の温度範囲で反応させるとともに、反応物の酸価を、JIS K6911−1995 4.3に記載の方法に準拠して随時測定した。そして酸価が10mgKOH/gとなった時点で、上記反応物に、無水マレイン酸55モルを添加混合し、200〜220℃に昇温し、8時間反応させた。これにより、不飽和ポリエステル(a)を得た。この不飽和ポリエステル(a)の酸価は15.0mgKOH/gであった。
不飽和ポリエステルの製造例2
製造例2と同様の反応器に無水マレイン酸100モル、ジシクロペンタジエン90モル、脱イオン水90モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、130℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次にエチレングリコール5モル、ジエチレングリコール50モルを添加混合し、200℃で8時間反応させた。これにより、ジシクロペンタジエン骨格を含む不飽和ポリエステル(b)を得た。この不飽和ポリエステル(b)の酸価は15.0mgKOH/gであった。
熱硬化性樹脂の合成
上記不飽和ポリエステル(a)を表1〜9に記載の単独モノマー又は混合モノマーに80℃で溶解し、モノマー含有率40%の熱硬化性樹脂(A)、(B)、(C)、(F)、(G)及び(I)を得た。上記不飽和ポリエステル(b)を80℃で単独モノマー又は混合モノマーに80℃で溶解し、モノマー含有率30%の熱硬化性樹脂(D)、(E)、(H)及び(J)を得た。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物の製造
上記熱硬化性樹脂(A)〜(J)100質量部に、金属分8%のオクテン酸コバルトを0.3質量部添加し、フィルム上に硬化剤MEKPO(メチルエチルケトンパーオキサイド)を1.0質量部添加し、攪拌混合した。フィルム上にこの硬化剤入り樹脂を垂らし、上面もフィルムで覆った。
室温(約25℃)で硬化し、硬化発熱終了後、後述するそれぞれの温度としたオーブン中で一定時間後硬化を行った。この時、熱硬化性樹脂組成物の中心までが雰囲気温度になるのに1分を要した。硬化後、フィルムを剥がし厚さ約1.0mmの熱硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物における残存モノマー含有量の測定方法
上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を粉砕し、塩化メチレン中に24時間浸漬し、残存モノマー(重合性単量体)の抽出を行った。
残存モノマーが抽出された塩化メチレン溶液をガスクロマトグラフィー(カラム充填剤:BX−10、カラム長さ3m、キャリアガス:窒素、島津GC−2014、C−R8A)で測定した。
なお、荷重たわみ温度については、JIS K 6911(5.35:荷重たわみ温度、JISハンドブックプラスチック−2003)に準じて測定した。
気中VOC濃度(μg/m)の測定方法
JIS A1901(2003年)(小型チャンバー法−建築材料の揮発性有機化合物)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定法)の(付属書2(参考)小型チャンバーの例(20L))に記載されている手順に基づき、測定温度28℃、湿度50%、換気回数0.5回/hr、資料負荷率2.2m/mの条件下で、固相吸着−溶媒抽出−GC−MS法にて試験片からの気中VOC濃度(μg/m)を測定した。
実施例1〜7
熱硬化性樹脂(A)〜(D)及び(E)を用いて、表1に示す各条件で、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を製造し、各硬化物中の残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004892237
比較例1〜8
熱硬化性樹脂(A)、(D)、(F)、(G)、(H)及び(I)を用いて、表2に示す各条件で熱硬化性樹脂組成物の各硬化物を製造し、硬化物中の残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004892237
実施例8
硬化物の荷重たわみ温度が65℃である熱硬化性樹脂(D)を用いて、表3に示すように、硬化温度を20〜80℃まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表3に示す。なお、硬化温度が20〜50℃については、荷重たわみ温度(65℃)より5℃を超える温度以下で硬化を行っているため、比較例となる。
Figure 0004892237
比較例9
硬化物の荷重たわみ温度が65℃である熱硬化性樹脂(J)を用いて、表4に示すように、硬化温度を20〜80℃まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0004892237
実施例9
硬化物の荷重たわみ温度が90℃である熱硬化性樹脂(A)を用いて、表5に示すように、硬化温度を60〜100℃まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表5に示す。なお、硬化温度が60〜80℃については、荷重たわみ温度(90℃)より5℃を超える温度以下で硬化を行っているため、比較例となる。
Figure 0004892237
比較例10
硬化物の荷重たわみ温度が95℃である熱硬化性樹脂(I)を用いて、表6に示すように、硬化温度を60〜100℃まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0004892237
比較例11
硬化物の荷重たわみ温度が80℃である熱硬化性樹脂(A)を用いて、硬化温度を80℃、硬化時間を5〜60分まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表7に示す。
Figure 0004892237
実施例10
硬化物の荷重たわみ温度が90℃である熱硬化性樹脂(A)を用いて、硬化温度を85℃、硬化時間を10〜60分まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表8に示す。なお、硬化温度が20〜50℃については、荷重たわみ温度(65℃よ)より5℃を超える温度以下で硬化を行っているため、比較例となる。
Figure 0004892237
実施例11
熱硬化性樹脂(A)を用いて、硬化温度を90℃、硬化時間を5〜60分まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量、及び、気中VOC濃度を測定した。結果を表9に示す。なお、硬化時間5分及び10分については、残存モノマー量が0.3質量%を超えるため、比較例となる。
Figure 0004892237
実施例12
熱硬化性樹脂(A)を用いて、硬化温度を100℃、硬化時間を5〜60分まで変化させて製造した熱硬化性樹脂組成物の各硬化物における残存モノマー含有量を測定した。結果を表10に示す。
Figure 0004892237

Claims (7)

  1. 重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物であって、
    該重合性オリゴマーは、分子内に重合性不飽和基を複数個有する、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルであり、
    該重合性単量体は、ビニルトルエンを全重合性単量体成分100質量%に対して90質量%以上含み、
    該熱硬化性樹脂組成物は、重合性オリゴマーと重合性単量体との総量100質量%に対し、重合性単量体を20〜70質量%含み、
    該硬化物の重合性単量体の含有量は、0.3質量%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  2. 前記不飽和ポリエステルは、多塩基酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分との縮合反応により得られたものであることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  3. 前記不飽和ポリエステルは、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を全酸成分100モル%に対して30モル%以上含む酸成分と、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物及び水素化ビスフェノールAのうち少なくとも1種を全グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分100モル%に対して30モル%以上含むグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを用いて得られるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  4. 前記重合性単量体は、その総量100質量%に対し、スチレン及び/又はメチル(メタ)アクリレートを0〜10質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  5. 重合性オリゴマー及び重合性単量体を含む熱硬化性樹脂組成物から得られ、50℃以上の荷重たわみ温度を有する硬化物を製造する方法であって、
    該重合性オリゴマーは、分子内に重合性不飽和基を複数個有する、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルであり、
    該重合性単量体は、ビニルトルエンを全重合性単量体成分100質量%に対して90質量%以上含み、
    該熱硬化性樹脂組成物は、重合性オリゴマーと重合性単量体との総量100質量%に対し、重合性単量体を20〜70質量%含み、
    該製造方法は、硬化物の荷重たわみ温度より5℃低い温度以上の硬化温度で硬化を行う工程を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法。
  6. 前記製造方法は、熱硬化性樹脂組成物が前記硬化温度に到達してからは、計算式(1)で表される時間t(分)で硬化を行う工程を含むことを特徴とする請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法。
    t≧5×4((10+T)/10) (1)
    T(℃)=荷重たわみ温度−硬化温度
    t(分)=前記硬化温度に到達してからの時間
  7. 請求項5又は6記載の製造方法により製造された熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、
    該硬化物の重合性単量体の含有量は、0.3質量%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
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