JP4872215B2 - 高強度ポリエステル繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、産業資材用の高強度ポリエステル繊維に関する。さらに詳しくは、毛羽が少なく製織性および製品品位に優れると共に、染め斑が発生せず均染性に優れ、特に、シートベルト用ウェビング等に好適な高強度ポリエステル繊維に関する。
産業資材用の高強度ポリエステル繊維は、シートベルト用ウェビング、ラッシングベルト、スリング、紐・テープ等の細幅織物、およびテント、ターポリン、重布、バッグ用基布等の広幅織物に広く用いられている。かかる用途においては、高強度、高タフネス、耐摩耗性等の機械的特性が要求され、同時に、高速で製織するために毛羽の少ない高品位の原糸が要求される。さらに、シートベルトのように染色して商品とする用途では、染色の均一性、特にスポット状の染色欠点を含む染め斑の発生防止が重要な課題である。かかる用途で問題となる染め斑とは、染浴中に生成した染料凝集物が基布に付着したり、あるいは非染性物質が基布に付着してその部分への染料の染み込みが阻害されたりすることにより基布に濃染部あるいは不染部が生じ、斑点状あるいは浸み状の染め斑となるものである。特にシートベルト用ウェビング等の高強度ベルトの染色に用いられる、染液へのベルトの浸漬/乾燥のみで発色させるサーモゾル染色法においては、これら凝集物による染色斑が生じやすく、染色斑の回避が重要な課題になっている。このような染料凝集物の付着あるいは染色を阻害する非染性凝集物の基布への付着は、染浴中で直接生ずる場合、および凝集物が一旦ロールやガイド等に付着し、その後凝集物が蓄積したロールやガイドから基布に転移付着する場合とがある。
上記染め斑は、染料の選択・調整濃度等の染液レシピ、染液に添加する染色助剤およびph調整剤等の染液の組成と染色機の条件に主に左右されるが、染色時に繊維表面から脱落した紡糸処理剤(油剤)の影響を受けることもある。特に細幅織物の染色においては、精練による油剤除去なしに直接生機を染液にディップして乾燥発色させるケースも多く、このようなケースでは繊維に付着している紡糸処理剤が染色の安定性に少なからぬ影響を与える。このことから、従来より染料レシピの選択、染浴の調整とともに繊維処理剤の選択も合わせて検討が図られてきた。
しかしながら、近年の各製造工程における効率化、例えば、染色工程では、精練の省略、高速短時間染色および高温短時間乾燥の採用、また、製織工程では、整径および製織の高速化等が図られてきたことを受け、原糸の毛羽品位と染色安定性はさらに格段に高いレベルで両立することが求められている。
すなわち、特に染色用途に供される高強度ポリエステル繊維が優れた製糸時・高次加工時の工程通過性・毛羽品位と優れた染色安定性を具備するためには、使用される処理剤は以下の特性a〜gを満足することが必要であるとされていた。
a.平滑性に優れていること、即ち、動摩擦係数が低いこと、
b.極圧性に優れていること、即ち油膜強度が高いこと、
c.処理剤の安定性に優れていること、
d.耐熱性に優れていること、即ち、200〜250℃の高温ロール上でも熱酸化し難く、かつ熱酸化劣化しても固化し難いこと、
e.糸ー糸間摩擦が比較的高く、単糸間交絡がかかり易く、集束性に優れていること、 f.製糸工程の高温熱履歴を経ても糸条に付着している処理剤が組成として安定なこと、g.染浴中に処理剤の成分が溶解・脱落しても、染浴のバランスを崩さないこと、即ち、染料の一部を凝集させたり、処理剤自身が非水溶性凝集物を生成して、凝集染料の付着または非染性凝集物の付着等が生じないこと。
シートベルト等のような製織および染色して製品とされる用途を想定した産業用ポリエステル繊維であって、原糸の毛羽が少なく、かつ染色時の強力低下や染め斑防止に有効な特定の処理剤の適用に言及した具体的な従来例としては、例えば「常温で液状を呈し分子量が550〜750の脂肪族一価エステル化合物(A)を主成分とし、水酸基を有するグリセライドのアルキレンオキシド付加物と二塩基酸成分との反応生成物(B)を1〜10重量%含有する油剤組成物が、繊維重量に対して0.3〜1重量%付着しており、且つ該油剤の水中脱落率が30〜60%である合成繊維。」(例えば、特許文献1参照)が知られており、この合成繊維によれば、「品位に優れ且つ液浴加工を施しても強力低下の少ない織物が得られ、産業資材織物用として好適である。」という効果が得られるとされている。すなわち、当該技術は、処理剤の設計・選択により毛羽品位の改善および染色時の染め斑の発生を防止するという課題を解決しているものであるが、同技術において唯一非含水処理剤を用いた実験結果(比較例:実験No.12)では、原糸毛羽、織り毛羽とも○(他の良好な含水処理剤と同レベル)となっているものの、染斑の評価が×、総合判定も×となっていることから、非含水処理剤を用いる場合の染め斑および均染性の改善については言及していない。ようするに、当該技術はあくまで水系エマルジョンを前提に油剤組成を特定し、最適な処方を提案しているものに過ぎず、非含水処理剤を用いて更に改善された毛羽品位を達成するための方法、および非含水処理剤を用いてシートベルトの染め斑を回避するための方法については、開示も示唆もしていない。
また、「分子量400〜1000のエステル化合物からなる平滑剤成分(A)40〜90重量%および分子量500〜10000の非イオン活性剤からなる乳化剤成分(B)10〜60重量%の混合物を主たる油剤成分とし、高速液流微粒子により乳化された合成繊維用処理剤であって、前記処理剤成分の平均粒径が1μm以下の水系エマルジョンであることを特徴とする合成繊維処理剤、およびかかる合成繊維処理剤が付与されてなる合成繊維。」(例えば、特許文献2参照)が知られており、この合成繊維によれば、「水系エマルジョンとして合成繊維に対する付与量を減少しても繊維表面上に均一に付与することができ、安定性と、製糸時の平滑性、延伸性と後加工時の工程通過性とがすぐれた合成繊維用処理剤、および品位にすぐれ、製織時や染色加工時などに脱落した油剤により基布汚れや染め斑を起こすことがなく、特にシートベルトや重布などの産業資材織物に適した合成繊維が得られる。」という効果が記載されている。すなわち、当該技術は、毛羽品位の改善と染め斑を起こさない油剤組成およびそれを付与してなる合成繊維について開示するものであるが、上記特許文献1に記載の技術と同様に、水エマルジョン型の処理剤についてその改善の方法を述べているに留まるものであり、達成し得る毛羽品位・染色安定性レベルは近年の要求に対しては不十分であるとともに、非含水処理剤の使用については言及がない。
一方、非含水処理剤をポリエステル繊維に適用する試み(例えば、特許文献3参照)についても既に提案されているが、当該技術の目的・構成は、エポキシ化合物を含有させた処理剤を用いることによりゴムとの接着性の改善された原糸を得るに当たり、処理剤の希釈媒体として水よりもポリエステルに対する拡展性に優れるノルマルパラフィンを使用した非含水処理剤とすることでゴムとの接着性をより高めることにある。すなわち、当該技術は、原糸の用途として染色を行わず、毛羽品位に対する要求も高くないゴム補強用途のみを想定しているものであり、染色斑および染色斑を回避するための技術思想や特に毛羽品位のよい原糸を得るための処理剤設計に関しては言及していない。
さらに、素材をポリエステルではなくポリアミドに限定すれば、非含水処理剤を用いて染色性の改善が図れること(例えば、特許文献4参照)が知られており、当該技術には、「ポリアミドの直接紡糸延伸において水性エマルジョンを用いると、繊維の結晶配向状態が不均一になり、これが染めむら等の糸質低下の原因となるため、一般的に非含水系の処理剤剤が使用されている」と記載されている。しかし、含水処理剤使用時のポリアミドの染色斑は、当該技術に記載されている通り、ポリアミドが未延伸時において水と接触すると結晶性が大きく変動し、結晶部には染料が浸透しにくいことから、水(エマルジョン処理剤)との接触が直接染色斑の原因となることによるものであり、ポリアミドで非含水処理剤を用いる目的は、未延伸状態での水との接触による結晶化を回避することにある。したがって、当該技術は、産業用ポリエステル繊維製品の染料凝集物等に起因する染色斑発生の機構改善、および毛羽品位の改善については、何ら言及するものではない。
以上のように、シートベルト用ウェビング等の用途分野で益々高まる毛羽品位と染色安定性の要求に対し、現状の高強度ポリエステル繊維は上述の通り十分に満足し得るものではなく、また、水との相互作用の小さい高強度ポリエステル繊維の毛羽品位と染色安定性の改善に当たり、非含水処理剤という手段を用いて上記a〜gの特性を高めようとする試みも行われていないのが現状であった。
特開平5−339875号公報 特開2000−17573号公報 特開2002−38376号公報 特公昭60−37222号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、毛羽が少なく、製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず染色均一性に優れ、特にシートベルト用ウェビング等に好適な高強度ポリエステル繊維の提供を目的とするものである。
上記目的を達成するため本発明によれば、40〜80重量部の脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)と、15〜50重量部のポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、3〜15重量部のアニオン性界面活性剤(C)とからなる油剤成分と、有機溶剤からなる希釈剤成分を含有し、前記油剤成分の濃度が20〜80重量%であり、かつ25℃における粘度が5〜90センチポイズである非含水処理剤が付与されたポリエチレンテレフタレート系ポリエステル繊維であって、アニオン性界面活性剤(C)のうち、50重量%以上がリン酸エステル化合物からなり、リン酸エステル化合物のうち、30重量%以上が分子中にアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物であり、繊維中に含有される添加物の量が0.01〜0.1重量%であり、強度が8.5〜10.0cN/dtex、伸度が8〜20%であることを特徴とする高強度ポリエステル繊維が提供される。
なお、本発明の高強度ポリエステル繊維においては
記有機溶剤が、140〜240の数平均分子量を有する鉱物油であること、
前記非含水処理剤が、繊維重量に対して油剤成分として0.3〜0.8重量%付与されていることを、
ポリエステル繊維糸条の長さ10万m当たりに毛羽数が0.1〜50個の頻度で存在すること、および
シートベルト用ウェビング、スリング、ラッシングベルト、紐・テープ等の細幅ベルト、およびテント、ターポリン、重布、バッグ用基布等の広幅織物に用いること
が、いずれも好ましい形態として挙げられる。
本発明によれば、以下に説明するとおり、毛羽が少なく、製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず染色均一性に優れ、特にシートベルト用ウェビング等に好適な高強度ポリエステル繊維を得ることができる。すなわち、本発明の高強度ポリエステル繊維は、特に、毛羽が少ないため、高速での製織が可能であり、かつ合理化された効率的な染色処方を適用しても染め斑が発生せず均一で高品位の製品が得られる。
また、本発明の高強度ポリエステル繊維は、シートベルト用ウェビングの他、スリング、ラッシングベルト、紐・テープ等の細幅ベルト、およびテント、ターポリン、重布、カバン時用基布等の広幅ベルトにも好ましく適用することができる。
本発明の高強度ポリエステル繊維は、非含水処理剤が付与されたポリエチレンテレフタレート系ポリエステル繊維であって、繊維中に含有される添加物の量が0.01〜0.1重量%からなり、強度が8.5〜10.0cN/dtex、伸度が8〜20%であることが必須である。
ポリエステル繊維では、水との相互作用がないにもかかわらず、適度に調整された非含水処理剤を使用することにより製糸性が大幅に改善する理由としては、非含水処理剤ではエマルジョン処理剤で使用される表面張力の大きな水の替わりに表面張力の小さな有機溶剤又は鉱物油を希釈剤として用いるため、ポリエステル繊維の各単糸の表面に油剤が薄く均一に付着し易くなるためと考えている。
水系エマルジョン処理剤では非含水処理剤と異なり乳化を必要とするため、乳化安定性を考慮する必要がある。そのため、一般に平滑剤成分を少なくし界面活性剤成分を多量に配合する手法が用いられる。しかし、このように乳化性の強い界面活性剤成分を多量に配合すると繊維の動摩擦係数が高くなるため、製糸安定性の悪化に繋がりやすい。また、含水処理剤で逆に平滑剤成分を多量に配合すると、染色工程において脱落した平滑剤成分が単独で、あるいは染浴中の染料成分など凝集し、染め斑を発生させ易いという欠点を有している。すなわち、水系エマルジョン処理剤では添加剤に制約があるだけでなく、製糸安定性と染色安定性が相反する特性となり両立することは困難である。
本発明の非含水処理剤では、乳化安定性を考慮する必要がないため使用される界面活性剤成分に対する制約が少なくなる。また、本発明者らの知見によると、界面活性の強い活性剤の使用が製糸安定性を損ねる原因は延伸工程中で分散媒として使用している水分が蒸発する過程でおこる増粘による部分が大きく、非含水処理剤ではこの増粘が小さいために水エマルジョン系では製糸性を損なう界面活性剤を使用しても製糸に対する悪影響は極めて軽微に抑えられることが判った。上記のように非含水処理剤を使用する場合においては染色安定性を考慮した界面活性剤の選択が可能となるとともに、平滑剤成分の選択、配合比率についても自由度が高まること、さらには油剤が薄く均一に付着する等の効果により染色安定性と製糸安定性を両立させることができるという事実を見いだした。
本発明の高強度ポリステル繊維では、より安定した製糸を可能にするために繊維中に含有される添加物の量が0.01〜0.1重量%である必要がある。より好ましくは0.05〜0.08重量%である。
繊維中に含有される添加物の量が0.1重量%を越えると、本発明の高強度ポリステル繊維の目的とする優れた品位を達成することは困難であり、毛羽が少なく品位の優れた原糸を安定に得るためには0.1重量%以下とする必要がある。
ポリエステルポリマを重合するに際し、安定的な触媒活性を得るためには、繊維中に含有される触媒を含む添加物の量を0.01重量%以上とする必要がある。
本発明の高強度ポリステル繊維での添加物とは、ポリマ重合時に用いる重合触媒および添加剤として用いる無機微粒子等であり、例えば重合触媒としては、三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸コバルト、酢酸亜鉛等が挙げられるがこれに限定されるものではない。また、添加剤として用いる無機微粒子としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
ポリエステル繊維においては触媒以外にダル化を目的に酸化チタンが添加される場合がある。酸化チタンの添加有無、またその添加量は8.5cN/dtex以下の強度域では得られる繊維の品位に大きな影響は及ぼさない。しかしながら、本発明の高強度ポリステル繊維が狙いとする8.5cN/dtex以上の高強度領域では酸化チタンの添加量は得られる繊維の品位に顕著な影響を及ぼし、0.1%を超える量を添加した場合には良好な品位の繊維が得られないこと、すなわちかかる高強度の繊維として品位の良好なものを得るためには酸化チタンなどの添加量を0.1%以下に抑えることが決定的に重要であることを本発明者らは見出したのである。過去商業的な生産に成功していない高強力で品位の良好な繊維はかかる低粒子のポリマと、通常ポリエステルに適用されることは極めて稀な非含水処理剤よってのみ達成することが可能になるのである。
特に強度の高い領域でのみ添加粒子が製糸性や繊維の品位に大きな影響を及ぼすメカニズムについては明確ではないが、高応力延伸時のボイドに起因するものと考えられる。
強度8.5cN/dtex未満は、本発明の方法に依らずとも十分達成できるレベルであり、例えば、水系エマルジョン処理剤を用い公知の方法により慎重に製糸をおこなえば良好な品位のものが得られるように、本発明が意図する目的とは相違がある。強度が10.0cN/dtexを越え、かつ毛羽が少なく品位の優れた原糸を安定に工業的に生産することは、現状本技術を持ってしても困難である。また、伸度9%未満では、毛羽が少なく品位の優れた繊維を安定して得ることは難しく、一方、20%を越える伸度では8.5cN/dtexの強度を得ることが困難である。
高強度ポリエステル繊維の製糸に当たって、その延伸倍率を上げることでより高強度の繊維を得ようとすれば、それに従って得られる繊維の品位が悪化し、毛羽の発生が増大することは従来の水系エマルジョン処理剤においても、本発明の高強度ポリエステル繊維用非含水処理剤においても同じであるが、本発明の高強度ポリエステル繊維は、従来の水系エマルジョン処理剤を用いて同条件で得られた高強度ポリエステル繊維と較べて毛羽の発生が極めて少なく、高品位であることが特長である。
本発明で用いるポリエステル繊維用非含水処理剤は、有機溶剤からなる希釈剤成分を有し、油剤成分の濃度が20〜80重量%であり、かつ25℃における粘度が5〜90センチポイズであることが重要である。
非含水処理剤中での油剤成分の濃度が80%を超える場合、あるいは粘度が90センチポイズを超える場合には、給油ローラーあるいは給油ノズルを用いて処理剤を付与する際に糸が処理剤にとられて製糸が不安定になりやすく、製糸性改善の効果が得られにくいという好ましくない傾向が招かれることがある。逆に、油剤成分の濃度が20%未満の場合、あるいは動粘度が5センチポイズ未満の場合には、処理剤の延伸前ローラー(フィードローラー)上で処理剤が飛散しやすい傾向となり、油剤付着効率、防災上の両面から好ましくない。
非含水処理剤の希釈濃度、粘度を上記のように調整することにより、従来の含水処理剤では得られなかった顕著に改善された製糸性、毛羽品位の向上を達成することができる。
さらに、製糸性に優れた特長を保持しつつ、かつ染め斑を生じない非含水処理剤としては、脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)40〜80重量部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)15〜50重量部およびアニオン性界面活性剤(C)3〜15重量部を含む油剤組成とすることが望ましい。
特に、シートベルトの染色に用いられるようなサーモゾル染色を行う場合には、上記(C)成分の選定と配合量の特定が重要である。
上記(A)成分は、通常、平滑性を付与する成分であり、脂肪族カルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物または低級(炭素数1〜4)アルコールエステル]と炭素数8〜32の高級アルコールから得られるエステルである。
(A)を構成する脂肪族カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。
(a1)炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸[脂肪族飽和モノカルボン酸(ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸など)、脂肪族不飽和モノカルボン酸(オレイン酸、エルシン酸など)];
(a2)炭素数4〜24の脂肪族ジカルボン酸[脂肪族炭化水素系飽和ジカルボン酸(アジピン酸、エライジン酸など)、硫黄原子を含有する脂肪族飽和ジカルボン酸(チオジプロピオン酸、チオジヘキサン酸など)]。
また、(A)成分を構成する炭素数8〜32の高級アルコールとしては以下のものが挙げられる。
(x1)炭素数8〜32の脂肪族1価アルコ−ル[脂肪族飽和1価アルコール(ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、脂肪族不飽和1価アルコール(オレイルアルコールなど)];
(x2)炭素数8〜24の脂肪族多価(2〜6価)アルコ−ル[脂肪族飽和2価アルコール(1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)、脂肪族飽和3〜6価アルコール(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)]。
(A)成分の具体例としては(a1)と(x1)からなるエステル、例えば、イソステアリルオレート、イソエイコシルステアレート、イソエイコシルオレート、イソテトラコシルオレート、イソアラキジルオレート、イソステアリルパルミテート、オレイルオレート等;(a2)と(x1)からなるエステル、例えば、ジオレイルアジペート、ジイソステアリネルアジペート等のアジピン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジイソステアリルチオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸エステル;が挙げられる。
(A)成分のうち、特に好ましいのは、イソエイコシルステアレート、炭素数16〜24のイソアルキルアルコールオレート[イソステアリルオレート、イソエイコシルオレートおよびイソテトラコシルオレートなど]、ジオレイルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジオレイルチオジプロピオネート、並びにジイソステアリルチオジプロピオネートなどである。
(A)成分の数平均分子量(以下において、Mnと略記する)は、好ましくは400〜1,000、さらに好ましくは500〜800の範囲である。Mnが400以上であると、平滑剤成分としての耐熱性または油膜強度が特に優れるため、十分な製糸性が得られ易く、一方、Mnが1,000以下であれば、繊維と金属間の動摩擦係数が低くなり製糸性が向上するため好ましい。
なお、本発明において、Mnは単一組成の化合物の場合は分子構造からの計算値であり、混合物の場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値である。
本発明の高強度ポリエステル繊維用非含水処理剤におけるポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)は、ポリアルキレングリコール鎖を有する非イオン性界面活性剤であり、ポリアルキレングリコール鎖は炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下、AOと略記)の付加により得られる。
AOとしては、エチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)およびブチレンオキシドなどが挙げられる。
好ましいポリアルキレングリコール鎖は、EO単独、およびEOとPOの併用(ランダム付加またはブロック付加)の付加物であり、併用の場合はEOの重量割合が少なくとも50%であることが好ましい。
(B)成分の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(b1)高級アルコールAO付加物:
炭素数8〜32の高級アルコール[上記の(x1)]のEO2〜100モルもしくはEO/PO付加物[例えばオレイルアルコールEO5〜25モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物など];
(b2)高級アルコールAO付加物のカルボン酸エステル:
上記の(b1)と(a1)から得られる脂肪族カルボン酸エーテルエステルであって、例えばイソステアリルアルコールEO2〜20モル付加物のオレイン酸エステルなど;
(b3)アルキルフェノールのAO付加物:
アルキル基の炭素数6〜24のアルキルフェノール(オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなど)のEO4〜100モル付加物;
(b4)脂肪酸のAO付加物:
炭素数8〜24の脂肪酸のEO5〜100モル付加物;
(b5)多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物:
2〜8価の多価アルコール[上記の(x2)]の炭素数8〜24のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステルのEO4〜100モル付加物、および2〜8価の多価アルコール[上記の(x2)]のEO4〜50モル付加物のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステル、例えばトリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物トリオレート、ソルビトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリステアレートなど;
(b6)油脂のAO付加物:
ヒマシ油および硬化ヒマシ油のEO5〜50モル付加物など;
(b7)油脂のAO付加物の脂肪酸エステル:
上記(b6)を、さらに炭素数8〜24の脂肪酸[上記の(a1)]でエステル化したもの、例えば、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物トリオレート、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジオレート、ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジステアリート、ヒマシ油EO5〜25モル付加物トリスステアレート、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物マレイン酸ステアリン酸エステルなど。
(B)成分のうち、特に好ましいのは(b1)、特にオレイルアルコールEO5〜25モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物、とりわけオレイルアルコールEO7モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物でMn=1,400のもの、(b5)、特にトリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物ジステアレートおよびソルビトールEO30〜40モル付加物ペンタオレート、並びに(b6)、特に硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物、とりわけ硬化ひまし油EO10モル付加物である。
(B)成分のMnは、好ましくは500〜10,000、さらに好ましくは600〜8,000の範囲である。Mnが500以上であれば、延伸時の繊維の集束性が良好で、単糸が分離する現象が少なく、延伸性が向上する傾向にある。一方、Mnが10,000以下であれば、処理剤の安定性に優れ、均一な溶液が得られ易い。
本発明の処理剤の主成分は、(A)成分が40〜80部(以下、部は重量部を表す)、および(B)成分が15〜50部からなる。(A)成分が40部未満では十分な平滑性が得られず、一方、80部を越えると染色性に問題を生じやすくなる。同様に、(B)成分が15部未満では染色性に問題を生じやすく、50部を越えると平滑性が不十分となる。好ましい使用比率は(A)成分が55〜75部、(B)成分が25〜45部である。
上記(A)成分と(B)成分とを適切に選び、かつ両成分の配合比率を適切に選ぶことによって、前記高強度ポリエステル繊維用処理剤に求められる要求特性のa〜g迄を概ね満足させることができる。しかし、b、f項を更に向上させ、かつg項の効果を十分に得るために、アニオン性界面活性剤(C)を処理剤全体の3〜15部加えることが必要である。(C)成分が3部未満であると、染液と混合された脱落油剤成分の分散安定性が不十分となり、その結果染色浴に脱落した油剤成分が染料と相互作用し、染め斑を引き起こすことがある。(C)成分が15部を超える場合には油剤成分の分散安定性が低下し、長時間連続して均一に分散された非含水処理剤を製糸工程に供給することが困難になる。好ましい(C)成分の添加量は4〜10部である。
本発明の高強力ポリエステル繊維用非含水処理剤に用いられる(C)成分としては以下のものが挙げられる。
(c1)脂肪酸石鹸:
炭素数8〜24の脂肪酸[上記の(a1)]石鹸(オレイン酸塩、エルシン酸塩等)であり、塩としてはアルカリ金属(K、Naなど)、アルカノールアミンおよびアルキルアミンEO付加物等が挙げられる。好ましいのはオレイン酸カリウムである。
(c2)高級アルコールのリン酸エステル塩:
炭素数8〜24の高級アルコール[上記の(x1)など]のリン酸エステル塩;
例えば、オレイルアルコールリン酸エステル塩、イソステアリルアルコールリン酸エステル塩およびイソセチルアルコールリン酸エステル塩など、好ましいのはオレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩およびイソステアリルアルコールリン酸エステルナトリウム塩である。
(c3)高級アルコールAO付加物のリン酸エステル塩:
炭素数8〜24の高級アルコール[上記の(x1)など]のAO2〜50モル付加物のリン酸エステル塩が挙げられ、AOとしては前述のものが挙げられる。
具体的には、ラウリルアルコールEO3〜20モル付加物リン酸エステル塩、オクチルアルコールEO3〜20モル付加物リン酸エステル塩、炭素数12および13の混合アルコールPO3〜10モルEO5〜10モル(ブロック付加物)リン酸エステル塩など、好ましいのはラウリルアルコールEO3モル付加物リン酸エステルカリウム塩およびラウリルアルコールEO5モル付加物リン酸エステルカリウム塩である。
(c4)アルキルフェノールのリン酸エステル塩:
上記の(b2)で挙げたアルキルフェノールのリン酸エステル塩などが挙げられる。
(c5)アルキルスルホン酸エステル塩:
炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩(ラウリルスルホン酸塩など)が挙げられる。
(C)成分のうち特に好ましいのは、(c2)〜(c4)であり、(C)成分のうち50%(以下、%部は重量%を表す)以上がこれらリン酸エステル化合物であることがさらに好ましい。
(C)成分として(c1)を使用する場合は、(c1)を多量に配合すると、非含水処理剤の分散安定性を損ねるばかりでなく、(c1)が高温の加熱ロール上に付着し、劣化固化してロールの表面摩擦を高めることにより製糸性が低下するため、(c1)の配合は(C)成分のうちの50%未満とし、リン酸エステル化合物[(c2)〜(c4)]を(C)成分の50%以上とすることが好ましい。より好ましくは、前者を40%未満、後者を60%以上とすることである。
さらに好ましくは、リン酸エステル化合物のうち、30%以上を分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物[上記の(c3)]とすることである。 (c3)を用いることにより非含水処理剤中への分散性をさらに高めることができ、安定的かつ効率的に所望の(C)成分を非含水処理剤中に均一に分散させることが可能になる。
本発明の高強度ポリエステル繊維用非含水処理剤は、上記(A)、(B)および(C)の各成分を含有し、その配合割合を必須とするが、必要に応じ下記の添加剤を配合することができる。
(1)脂肪酸(炭素数10〜24)アルカノールアミド(ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等)、
(2)脂肪族アミン(炭素数10〜24)EO付加物系カチオン性界面活性剤(ラウリルアミンEO付加物、オレイルアミンEO付加物等)、
(3)酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤、
(4)シリコーン化合物:ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンおよびポリエステル変性シリコーン、
(5)アルキルイミダゾリン系界面活性剤。
上記添加剤は、必要に応じて5部未満の範囲で配合される。上記添加剤は、前記非含水処理剤の性能に求められるa〜g項のいずれかの向上に寄与し、かつマイナス効果がないことを確認して採用することが必要である。
本発明の非含水処理剤では、希釈剤として有機溶剤を用いるが、好ましくはMn140〜240を有する鉱物油が用いられる。
鉱物油のMnが140以上である場合には揮発性が低いので、処理剤調合や製糸時の処理剤供給時、延伸前予備加熱時の蒸散が少なくなり、安定な製糸が容易になること、また、防災上からも好ましい。Mnが240以下であると、製糸の延伸、熱セット工程で完全に蒸散し易く、糸表面に残留することは少なく、染色性に問題を引き起こすことが少なくなるので好ましい。より好ましい鉱物油のMnは160〜200である。
上記油剤成分および添加剤は希釈剤中に均一に分散溶解し、濁りや沈殿物を生じず、実質的に透明な状態であることが好ましい。好ましい状態においては希釈剤として使用される鉱物油は製糸工程の高温加熱ローラーに接触してほぼ全量揮発蒸散し、繊維表面には油剤成分のみが残る。
上記、本発明にかかる非含水処理剤を適用した高強度ポリエステル繊維は、本発明の非含水処理剤が、希釈剤としての有機溶剤又は鉱物油蒸散後の油剤成分として0.3〜0.8%付与されていることが必要である。
油分付着量が0.3%未満の場合には、平滑性が十分に得られず製糸性が悪化するばかりか、染色条件によっては処理剤中のアニオンによる染色安定性の改善効果が十分に得られない場合があるので好ましくない。逆に、油分付着量が0.8%を超える場合には、処理剤中のアニオンによる染色安定性の改善効果は飽和し、逆に過剰な油分付着による製糸性の悪化、織機の汚れ等の不具合を生じることがある。
本発明における高強度ポリエステル繊維糸条中の毛羽の頻度は、長さ10万m当たり0.1〜50個である。毛羽が50個/10万mを越えると、高速製織での生産効率が低下し、かつ製品に毛羽が目立ち品位が低下する。毛羽は少ないほど好ましいが、高強度ポリエステル繊維で0.1個/10万m未満とすることは現行技術では困難である。
上記優れた繊維特性および毛羽品位を有し、優れた製糸性と高速製織性が可能で、かつ染め斑を発生することのない非含水処理剤を適用した本発明の高強度ポリエステル繊維は、以下の方法で製造することができる。
すなわち、高分子量のポリエステルポリマを溶融紡糸し、次いで熱延伸して製造するが、以下の(1)〜(9)の各ステップを順次行うことが特長である。
(1)固有粘度(IV)0.90〜1.50 のポリエステルポリマを用いること。
(2)紡糸温度280〜320で溶融し、紡糸すること。
(4)紡糸口金の直下100〜500mmの範囲を加熱筒で囲み、その間紡出糸条を250〜350℃の高温雰囲気中を通過させること。
(5)上記高温雰囲気中を通過した糸条に、10〜50℃の風を吹きつけて冷却固化すること。
(6)冷却固化した糸条に、本発明で特定した処理剤を付与すること。
(7)紡糸速度300〜3000m/分で引き取ること。
(8)引き取り糸条を一旦巻き取ることなく連続して熱延伸すること。
(9)熱延伸は80〜260℃の加熱ロールを用い、多段で行うこと。
次に、上記本発明にかかる製糸プロセスを、典型的な直接紡糸延伸プロセスの一例である「プレストレッチ−2段延伸−リラックス」法に基づいて詳細に説明する。
ポリエステルポリマは、前記した通り、ポリエチレンテレフタレートを主成分とし、5重量%未満の共重合成分または異種ポリマとのブレンドポリマを用いることができる。本発明の高強度ポリエステル繊維を製造するためには、高分子量ポリマを用いることが必要であり、固有粘度(IV)0.90〜1.50の高粘度ポリマを用いる。
高粘度ポリマの製造は、液相重合のフィニシャー工程で高粘度化したり、一旦低粘度ポリマのままチップ化し、次いで固相重合することによって行われるが、ここでは、後者の固相重合チップを用いた製糸法を例にとってについて記述する。
固相重合した高粘度チップをホッパーに供給し、エクストルーダー型紡糸機で該チップを溶融紡糸する。紡糸温度は、280〜320℃、好ましくは290〜310℃である。紡糸口金の直下は100〜500mmの範囲を加熱筒で囲み、その間紡出糸条を250〜350℃の高温雰囲気中を通過させることが好ましい。紡出した糸条を直ちに冷却せず、上記加熱筒で囲まれた高温雰囲気中を通して徐冷することにより、紡出されたフィラメントの配向が緩和され、かつフィラメント間の均一性を高めることができ、高強度のポリエステル繊維が得られる。
高温雰囲気中を通過した未延伸糸条は、次いで10〜50℃、好ましくは15〜30℃の風を吹きつけられ冷却固化される。空冷装置は横吹き出しタイプでも良いし、環状型吹きだしタイプを用いても良い。
冷却固化された未延伸糸条に、次いで処理剤が付与される。処理剤は、前記本発明で特定した非含水処理剤を用い、製糸工程を通過し、希釈剤が蒸散した後巻き取られた原糸の油分量として本発明で特定した範囲になるよう付与する。処理剤の付与方法は、ロール給油、ガイド給油、ミスト給油等いずれの方法でも良い。
処理剤を付与された未延伸糸条は、引き取りロール(1FR)に捲回して引き取る。引き取りロールの速度、即ち紡糸速度は300〜3000m/分、好ましくは400〜2500m/分である。300m/分未満の紡糸速度でも本発明ポリエステル繊維の物性は得られるが、生産効率が低いため、工業的には不利である。一方、3000m/分を越える紡糸速度では、本発明の高強度ポリエステル繊維は安定して得ることが困難である。
上記紡糸速度で引き取られた未延伸糸条は一旦巻き取られることなく連続して延伸する。引き取りロール(1FR)と同様に、2個のロールを1ユニットとするネルソン型ロールを、給糸ロール(2FR)、第1延伸ロール(1DR)、第2延伸ロール(2DR)および弛緩ロール(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では1〜10%、好ましくは2〜8%程度のストレッチを行い糸条を集束させる。1FRは50〜120℃に加熱することにより引き取り糸条を予熱して次の延伸工程に送ることが好ましい。2FRと1DR間で1段目の延伸を行うが、この時ドローポイント、即ちネッキングポイントが2FRのロール出口部近くになるように、2FRと1DRの温度および1段めの延伸倍率を設定する。但しこれらの条件は、未延伸糸の配向の程度を考慮して変化させる必要がある。通常、2FRの温度は80〜140℃、好ましくは90〜120℃とし、1DRの温度を100〜190℃とし、かつ1段目の延伸倍率を、総合延伸倍率の60〜90%、好ましくは70〜85%に設定する。
2段目の延伸は1DRと2DRの間で行うが、2DRの表面温度は180〜260℃、好ましくは200〜240℃である。2段延伸を終った糸条には2DRと150℃以下のRRとの間で0.5〜15%の弛緩処理が施される。これにより熱延伸によって生じた歪みを取り、また延伸によって達成された高配向構造を固定することができる。
かくして、特定の非含水処理剤を適当量付与されてなる、製糸性に優れ、毛羽が少なく製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず均染性に優れた本発明の高強度ポリエステル繊維が得られる。
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明するが、明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
[固有粘度(IV)]
ポリマ量として8gの試料を、オルソクロロフェノール100mlに溶解し、25℃における溶液比粘度ηrをオストワルド粘度計を用いて測定し、次の近似式より極限粘度を算出した。
IV=0.0242ηr+0.2634
ここで、ηr=(t×d)/(t0×d0)
t:溶液の落下時間
t0:オルソクロロフェノールの落下時間
d:溶液の密度
d0:オルソクロロフェノールの密度
[油分付着量]
糸10gにnヘキサン120mlを添加、室温で10分間振盪することにより油剤をnヘキサン中に抽出する。油剤抽出後のnヘキサン100mlを秤量後真空下で蒸発させ、不揮発分の重量から油剤付着量を求めた。
[繊度]
JIS L1090により測定した。
[強度・伸度]
オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定した。
強度は強力を測定したサンプルに対応するそれぞれの総繊度で除した値である。
[毛羽発生頻度]
製糸によって得られた糸について200m/分の速度で解舒しつつ、大広(株)製光感知式毛羽検知装置で糸条に含まれる毛羽(単糸破断)を検知し、糸条の長さ10万m当たりの毛羽数から次の基準により評価した。
毛羽数(回/10万m)
0〜0.5 ◎ ( 優良 )
1〜5 ○ ( 良 )
5〜50 △ (やや良)
50以上 × ( 不良 )
[染色性]
得られた繊維360本を経糸とし、緯糸として560dtex−96filのポリエステル糸を用いて緯糸密度21本/インチで51mm幅のシートベルト用生機を製織した。この生機を用い、精練することなしに以下の染液に浸漬させ、連続して220℃の発色槽で2分間の処理を行うことにより染色を行った。この時の染色欠点数から以下の基準により染色性を評価した。
・使用した染液(水1リットルに対する染料の添加量):
チバスペシャルティケミカル社Teratop Yellow HL−G :7g
住化ケムテックス社Sumikaron Red GX :5g
住化ケムテックス社Sumikaron Blue GX :9g
・染色性評価はシートベルト2,000m当たり染色欠点数を次の基準により評価した。
染色欠点数
0〜1 ◎ ( 優良 )
1〜3 ○ ( 良 )
3〜10 △ (やや良)
10以上 × ( 不良 )
[実施例1〜7、比較例1〜3]
固有粘度(IV)1.35のポリエチレンテレフタレートチップをエクストルーダー型紡糸機を用いて310℃で溶融紡糸した。溶融ポリマは、紡糸パック中で15μの不織布フィルターで濾過した後、孔経0.5φで192ホールを有する口金から紡出した。
口金直下には長さ400mmの加熱筒を取付け、筒内雰囲気温度が330℃となるように加熱した。ここで筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
加熱筒の直下にはユニフロー型チムニーを取付け、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け糸条を冷却固化した。固化した糸条に給油ローラーにより処理剤を付与した後引取りロール(1FR)に捲回して引取った後一旦巻き取ることなく引き続いて延伸を行い、1400dtex-192fil.のポリエステル繊維を得た。紡糸、延伸条件を表1に、三酸化Sb量、酸化チタン含有量、強伸度、毛羽発生頻度、染色性および油剤付着量、処理剤組成、処理剤特性を表2および表3に記載した。
Figure 0004872215
Figure 0004872215
Figure 0004872215
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の方法により毛羽発生が少なく、染色欠点も少ない良好な結果が得られた。一方、本発明の方法の範囲から外れた条件では毛羽の発生頻度が多く、満足できる結果が得られなかった。
[比較例4〜6]
比較例4〜6は、表2に記載の油剤組成にて、鉱物油で希釈する代わりに水中に乳化分散させ、濃度20wt%のエマルジョン処理剤を得た。処理剤以外は同様の装置にて、表1の延伸条件で製糸を行い1400dtex-192fil.のポリエステル繊維を得た。得られた繊維の強伸度、毛羽発生頻度、染色性を表3に併記した。
比較例5、6では、鉱物油希釈から水希釈エマルジョンの形態で付与することにより毛羽の発生頻度が大幅に悪化する結果となった。染色欠点頻度も実施例に較べ増加した。
比較例4では、強度が低すぎるため、毛羽発生頻度の少ない結果であった。
本発明の高強度ポリエステル繊維は、毛羽が少なく、製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず染色均一性に優れるため、特にシートベルト用ウェビング等に好適である。
また、本発明の高強度ポリエステル繊維は、シートベルト用ウェビングの他、スリング、ラッシングベルト、紐・テープ等の細幅ベルト、およびテント、ターポリン、重布、カバン時用基布等の広幅ベルトにも好ましく適用することができる。

Claims (5)

  1. 40〜80重量部の脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)と、15〜50重量部のポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、3〜15重量部のアニオン性界面活性剤(C)とからなる油剤成分と、有機溶剤からなる希釈剤成分を含有し、前記油剤成分の濃度が20〜80重量%であり、かつ25℃における粘度が5〜90センチポイズである非含水処理剤が付与されたポリエチレンテレフタレート系ポリエステル繊維であって、アニオン性界面活性剤(C)のうち、50重量%以上がリン酸エステル化合物からなり、リン酸エステル化合物のうち、30重量%以上が分子中にアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物であり、繊維中に含有される添加物の量が0.01〜0.1重量%であり、強度が8.5〜10.0cN/dtex、伸度が8〜20%であることを特徴とする高強度ポリエステル繊維。
  2. 前記有機溶剤が、140〜240の数平均分子量を有する鉱物油であることを特徴とする請求項記載の高強度ポリエステル繊維。
  3. 前記非含水処理剤が、繊維重量に対して油剤成分として0.3〜0.8重量%付与されていることを特徴とする請求項1または2記載の高強度ポリエステル繊維。
  4. ポリエステル繊維糸条の長さ10万m当たりに毛羽数が0.1〜50個の頻度で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高強度ポリエステル繊維。
  5. シートベルト用ウェビング、スリング、ラッシングベルト、紐・テープ等の細幅ベルト、およびテント、ターポリン、重布、バッグ用基布等の広幅織物に用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高強度ポリエステル繊維。
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