JP4626163B2 - ポリ乳酸繊維及びそれを用いた繊維製品並びにその製造方法 - Google Patents

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本発明はポリ乳酸繊維及びそれを用いた繊維製品とその製造方法に関するものであり、詳しくは幅広い温度領域における力学特性に優れたポリ乳酸繊維及びそれを用いた繊維製品と、製造方法に関するものである。
ポリ乳酸繊維は生分解性を有し、かつ非石油系原料から得られるため、燃焼や廃棄を行っても環境負荷の小さい繊維として近年注目されている。ポリ乳酸繊維は独特の光沢を有し、染色した時の発色性や触感が良く、独特の風合いを有することから、ブラウス、シャツ、スカーフ、ハンカチ、裏地用等の衣料用や車用オプションマット、カーテン、家庭用ロールカーペットやラグ等のインテリヤ用途、さらには水切りゴミ袋、育苗マット、土木用織編物、植生用防草シート、安全ネット、建築用ネット等の産業用途等、各種の繊維製品として実用化に向けた検討が進められている。
上記の如く各種用途に展開されているポリ乳酸繊維であるが、その原料となるポリ乳酸樹脂は、従来より前記用途に用いられてきたポリエチレンテレフタレートやポリアミド等の汎用樹脂と比較すると耐熱性が弱いため、そのポリ乳酸樹脂よりなる繊維および繊維製品も耐熱性に劣るという問題点があり、耐熱性に優れたポリ乳酸繊維の開発が熱望されている。
従来技術の中で、繊維分野のみならず、特に高温時の力学特性に優れたポリ乳酸成形物が得られるとして提案されているものに、特許文献1〜6等がある。
特許文献1及び2は、合成フィラメント等のポリ乳酸成形品に結晶化促進剤や層状珪酸塩等を含有させることでポリ乳酸成形品に耐熱性を付与する技術に関するものである。しかしながらこれらの方法を用いて耐熱性に優れたポリ乳酸繊維を製造する場合には、繊維中に結晶核剤や層状珪酸塩が混合されている為に強度の高い繊維を得難い、また得られたとしても製糸性が悪化してしまうという問題や、得られた製品の価格が高くなってしまうという問題を有していた。
特許文献3には特定の温度及び加湿雰囲気下において生分解性樹脂組成物を一定時間処理することにより、高温時の弾性率を向上する技術が開示されている。しかしながら、該方法を繊維に適用した場合には、加湿により加水分解が進行するために繊維強度が低化するという懸念があるばかりか、通常の製造条件よりも工程が増加してしまうという問題を有している。
特許文献4にはポリL−乳酸、ポリD−乳酸のブレンド物を用いてステレオコンプレックスを形成させることで高温時の力学特性を向上させる方法が記載されている。該方法を用いると高温時にも高い強度を有する繊維が出来るものの現状ではD−乳酸が高価なため、得られる繊維も高価になってしまうという問題を有している。
特許文献5には、高速紡糸によって得た(200)面の結晶サイズが6nm以上の未延伸糸を延伸する方法や、ポリ乳酸に共重合ポリエチレンテレフタレートをブレンドする方法によって、90℃における0.5cN/dtexの応力下での伸びが15%以下の繊維を得る方法が記載されている。しかしながら、該公報記載の実施例によると、得られる繊維の25℃における強度は3.8cN/dtexが最高であり、本発明者らの知見と合わせて考えても該方法では常温において強度の高い繊維を得ることが困難である。
上記の様にポリ乳酸繊維の耐熱性を向上させるための技術が開示されているものの、特に繊維分野においてはコスト、生産性、期待されているレベルの耐熱性の全てを満足している技術は開発されていないのが現状である。
特開平11−106628号公報 特開2003−183934号公報 特開2002−88161号公報 特開2003−293220号公報 特開2003−41433号公報
本発明は特に産業用として好適に使用できるポリ乳酸繊維であって、常温における強度は勿論のこと、高温下での強度及び弾性率に優れ、廃棄しても環境負荷が小さいポリ乳酸繊維とそれを用いた繊維製品、及び本発明のポリ乳酸繊維と繊維製品を効率的かつ安定に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らが繊維構造に関する種々の要因を検討した結果、動的粘弾性の温度依存性試験におけるtanδの最大値(tanδmax)が0.05〜0.35、およびtanδが最大値を示す際の温度(Tmax)が88〜120℃であって、30℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.1〜50GPa、120℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.08〜10GPaであるポリ乳酸繊維が上述の課題を解決する為に好適であることを見出した。さらに、本発明のポリ乳酸繊維は以下の(1)〜(5)を好ましい形態とする
)単繊維繊度が3〜15dtex、強度が4〜8.5cN/dtex、伸度が15〜45%、複屈折率が23×10 −3 〜40×10 −3 であること。
(2)強度が4.23〜8.5cN/dtexであること。
(3)120℃で測定した乾熱収縮率が1〜9%であること
(4)少なくとも1種類以上の着色剤を含有していること。
(5)脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有すること。
また、本発明のポリ乳酸繊維の製造方法は、溶融紡糸した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、次いでローラ間で糸条の延伸を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、少なくとも1箇所のドローポイントがフロントローラ上にあることを特徴とする。延伸段数は2〜5段の多段延伸が好ましく、なかでも1段目の延伸においてドローポイントがフロントローラ上にあることが好ましい。
さらに、使用する油剤が、少なくともアルキルエーテルエステル、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、有機ホスフェート塩を含有する非水系油剤であることが好ましい。
また、本発明の繊維製品は前記ポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とし、ネット、ロープ、編物、織物のうちの少なくとも一つであることが好ましい。
本発明の繊維製品の製造方法は、本発明のポリ乳酸繊維を少なくとも構成要素の一部とする繊維製品の製造方法であって、撚糸をした後、もしくは製網、製織および製編のうちいずれかをした後に、60〜160℃の温度で熱セットを施すことを特徴とする。
本発明の製造方法によって高品位且つ高効率に得ることが出来る本発明のポリ乳酸繊維は、常温および高温下における十分な強度と弾性率を有する一方、使用後は生分解性の特徴によって、廃棄しても環境負荷が小さいポリ乳酸繊維であり、特に高い強力の求められる産業資材用途に好適である。また、本発明のポリ乳酸繊維を用いた繊維製品も高温下において優れた力学特性を有する。
本発明のポリ乳酸繊維が原料とするポリ乳酸ポリマは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主成分とする乳酸を重合してなるポリ乳酸である。ここでL−乳酸を主成分とするとは、構成成分の60重量%以上がL−乳酸よりなっていることを意味しており、これはD−乳酸を主成分とする場合も同様である。
本発明のポリ乳酸繊維はポリ乳酸ポリマと共重合可能な成分との共重合体、またはブレンド可能な他の熱可塑性ポリマとのブレンド物などからなる繊維であってもよい。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、前記乳酸と、例えばε―カプロラクトン等の環状ラクトン類、α―ヒドロキシイソ酪酸、α―ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジンオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種または二種以上とを共重合したもの等を例示することができる。中でもポリマーの重合特性から、環状ラクトン類およびグリコール類が好ましい。共重合の割合としては特に限定されないが、乳酸100重量部に対して、共重合させるモノマーは100重量部以下が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。ブレンド可能な熱可塑性ポリマーとしては、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを例示することができる。
また、上記生分解性樹脂が水酸基を持つ化合物によって該生分解性樹脂中のカルボキシル基をエステル化されてなるものであっても良い。水酸基を持つ化合物としては、例えばオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数が6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類が挙げられる。水酸基を持つ化合物でポリ乳酸分子末端のカルボキシル基をエステル化処理することにより、溶融紡糸時の熱安定性および溶融紡糸後の繊維の経時安定性を改善することができる。中でも延伸性の観点から、炭素数6〜18の高級アルコールが好ましい。また、同様の効果を得る目的でカルボキシル基にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物を反応させても良い。また、本発明に用いるポリ乳酸繊維は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤などを含むことができる。
また、本発明のポリ乳酸繊維は、染色工程による強度低化や環境汚染を避けるために予め、少なくとも1種類以上の着色剤を含有させることが好ましい。本発明におけるポリ乳酸繊維に添加される着色剤は、ポリ乳酸繊維に適切な特定の無機、有機顔料および染料であり、具体的には酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、アンスラキノン系、ベリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系等を例示することができるが、これらに限られるものではない。着色剤の含有量としては0.01〜4重量%含有していることが好ましい。着色剤の添加量が0.01重量%以下の場合は色調が不足し、4重量%を超える場合は必要な強度を得ることが困難になる。着色剤の添加量は、ポリマーに対し0.1〜0.6重量%であることがより好ましく0.3〜0.5%の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸系繊維には耐磨耗性を向上させるために脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを0.1〜5重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%含有させても良い。0.1重量%未満では耐磨耗性向上効果が十分に得られず、5重量%を超える場合には必要な強度を得ることが困難となる。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量を上記範囲とすることで、繊維表面の滑り性が向上し、優れた耐摩耗性を付与することができる。脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等であり、アルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチローラステアリン酸アミド、メチローラベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。なかでも、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く昇華しにくいことから、より好ましく用いることができる。上記脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは単一で添加しても良いし、また複数の成分を混合して用いても良い。
しかしながら、本発明のポリ乳酸繊維は、生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、廃棄しても環境負荷の小さい製品として用いるため、石油系ポリマのブレンド、該成分の共重合等は極力避け、また各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないものであることが好ましい。
本発明のポリ乳酸繊維はモノフィラメントであってもマルチフィラメントであっても、短繊維や長繊維であっても良く、円形断面は勿論のこと、扁平、三角、中空、星型等の異型断面や中空部を有するものであっても、芯鞘複合や海島型等の複合繊維であってもよい。また、ポリ乳酸繊維の繊度や単繊維繊度に関してもなんら制限は無い。しかしながら、本発明のポリ乳酸繊維を用いた繊維製品の耐磨耗性を向上させるためには単繊維繊度は3〜15dtexであることが好ましい。
本発明のポリ乳酸繊維は動的粘弾性の温度依存性試験におけるtanδ(損失角正接)の最大値(tanδmax)が0.05〜0.35、およびtanδが最大値を示す際の温度(Tmax)が88〜120℃であることが必要であり、好ましくは、tanδ(損失角正接)の最大値(tanδmax)が0.075〜0.3、tanδが最大値を示す際の温度(Tmax)が90〜110℃である。動的粘断性の温度依存性試験で得られるtanδmaxおよびTmaxは、それぞれ試験温度における分子の非拘束領域量、分子鎖の運動拘束力に対応し、tanδmaxは低いほど非拘束領域量が少なく、Tmaxは高いほど分子鎖の運動拘束力が大きいことを示す。tanδmaxが0.35以上、またはTmaxが88℃以下の場合には本発明の如き優れた高温力学特性を有する繊維を得ることができない。また、tanδmaxが0.05未満、またはTmaxが120℃以上の繊維を製糸性良く得ることは現状困難である。
また、本発明のポリ乳酸繊維は動的粘弾性の温度依存性試験において、30℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.1〜50GPaである。E’が0.1GPa未満の場合には弾性率が低いため、特に産業用として用いる場合に好ましくない。また、E’が50GPaを超えるような高弾性率の繊維を製糸性良く得ることは現状困難である。
また、本発明のポリ乳酸繊維は動的粘弾性の温度依存性試験において、120℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.08〜10GPaであり、好ましい範囲は0.5〜10GPaである。E’が前記範囲を満足する場合には、染色、熱セット等の加熱工程における製品の伸長や強力低下を防ぐことができる。
本発明のポリ乳酸繊維は、高配向、高強度であり、強度が4〜8.5cN/dtexであることが好ましく、さらに好ましい強度は5.5〜8.5cN/dtexである。配向度は複屈折(Δn)によって表すことができるが、本発明のポリ乳酸繊維のΔnは23×10 −3 〜40×10 −3 の範囲であることが好ましく、さらに好ましい範囲は29×10 −3 〜40×10 −3 である。複屈折が23×10 −3 未満では分子鎖の配向が十分ではなく、4cN/dtex以上の高強度が得られないことがあるため、本発明で目的とする高強度で高温力学特性に優れたポリ乳酸繊維を得ることが出来ない場合がある。一方、複屈折や強度は高ければ高いほど好ましいが、40×10 −3 を越える高い複屈折を有するポリ乳酸繊維や8.5cN/dtexを越える高強度のポリ乳酸繊維を現在の技術で達成することは困難である。
また、本発明のポリ乳酸繊維は、熱収縮率が低く、熱寸法安定性に優れていることも特徴である。120℃で測定した乾熱収縮率が1〜10%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜8%である。かかる特徴は、布帛やネットの製造工程やフィルム等をラミネートするような熱処理をした時に、皺の発生が無く、均一な熱固定ができ、均一な製品が得られるというメリットを生じる。
上記のごとき機械特性に優れた本発明のポリ乳酸繊維は、以下に説明する本発明のポリ乳酸の製造方法によって製造することができる。
本発明のポリ乳酸繊維の製造方法は、溶融紡糸した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、次いでローラ間で糸条の延伸を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、少なくとも1箇所のドローポイントが、2個のローラ間で延伸する際に糸条を送り出すローラ(フロントローラ)上にあることが必須である。
上記本発明のポリ乳酸繊維の製造方法を詳述するため、典型的な直接紡糸延伸プロセスの一例を図1に示した。図1のプロセスは、「プレストレッチ−3段延伸−リラックス」法であるが、もちろん上記要件を満足する限り本発明のポリ乳酸繊維の製造方法はこのプロセスに限定されるものではない。なお、高強度繊維を得るためには、2〜5段の多段延伸法を採用することが好ましい。
本発明のポリ乳酸繊維の製造に用いるポリ乳酸ポリマーは前記した特徴を有するが、相対粘度が2.6〜4.5の高粘度ポリマーを用いることが好ましく、より好ましくは、3〜4.5、さらに好ましくは3.5〜4.5の範囲である。相対粘度が2.6未満のポリマーを用いた場合は、本発明の高強度で耐熱性に優れたポリ乳酸繊維を安定して得ることができない可能性がある。一方、4.5を越える高粘度のポリマーを用いると、安定した製糸が困難となる可能性がある。また、溶融紡糸に供するポリ乳酸ポリマの水分率としてはポリマの加水分解を抑制するために0〜200ppmであることが好ましい。
紡糸温度は、用いるポリ乳酸ポリマーの融点に左右され、これは共重合成分の有無等によって変化させることができるものの、通常はは190〜250℃、より好ましくは200〜240℃に設定される。190℃未満で紡糸すると、ポリマーの溶融時に十分な流動性が得られない可能性がある。一方、250℃を越える温度では、高強度で耐熱性に優れたポリ乳酸繊維を安定して得るのが困難となる可能性がある。
紡糸口金の直下は、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲み、紡出糸条を200〜280℃の高温雰囲気中を通過させることが本発明の製造方法の好ましい形態である。
紡出した糸条を直ちに冷却せず、上記加熱筒および/または断熱筒で囲まれた高温雰囲気中を通して徐冷することにより、紡出された糸条の配向が緩和され、かつ単繊維間の分子配向均一性を高めることができる。一方、高温雰囲気中を通過させることなく直ちに冷却すると、未延伸糸の配向が高まり、かつ単繊維間の配向度分布が大きくなる。かかる未延伸糸条を熱延伸すると、結果として高強度で耐熱性に優れたポリ乳酸繊維が得られない可能性がある。
高温雰囲気中を通過した未延伸糸条は、次いで10〜100℃、好ましくは15〜75℃の風を吹きつけて冷却固化することが好ましい。冷却風が10℃未満の場合には通常装置とは別に大型の冷却装置が必要となるため好ましくない。また、冷却風が100℃を超える場合には紡糸時の単繊維揺れが大きくなるため、単繊維同士の衝突等が発生し製糸性良く繊維を製造することが困難となる。空冷装置は横吹き出しタイプでも良いし、環状型吹きだしタイプを用いても良い。
冷却固化された未延伸糸条は、次いで油剤が付与される。油剤は、水系であっても非水系であっても良いが、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含み、ポリ乳酸繊維に活性な成分を除いた油剤組成とすることが好ましい。例えば、水エマルジョンに含まれる乳化成分は、ポリ乳酸繊維の繊維構造を変化させる作用があり、延伸時に表面凹凸を生成し易く働く。従って、非水系油剤を用いることが好ましい。更に、好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤成分としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤成分として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤成分として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤である。
油剤を付与された未延伸糸条は、引取りローラ(1FR)に捲回して引き取る。1FRの表面速度、即ち引取り速度は300m/分以上が好ましく、さらに好ましくは500m/分以上である。300m/分未満の引取り速度でも本発明ポリ乳酸繊維の物性は得られるが、生産効率が低いため採用し難い。引取り速度に特に上限は無いものの、工業的に安定して生産する場合には引取り速度は5000m/分以下が好ましく、より好ましくは3000m/分以下である。
上記引取り速度で引き取られた未延伸糸条は一旦巻き取った後、若しくは一旦巻き取ることなく連続して延伸する。1FRと同様に、2ケのローラを1ユニットとするネルソン型ローラを、2FR、1DR、2DR、3DRおよび弛緩ローラ(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では糸条を集束させるためにストレッチを行う。好ましいストレッチ率は1〜7%、さらに好ましくは1〜5%の範囲である。1FRは50〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱して、引き取り糸条を予熱して次の延伸工程に送る。
延伸は2FRと1DR間、及び1DRと2DR間、及び2DRと3DR間で行うが、このうち少なくとも1箇所のドローポイント、即ち延伸により糸条が急激に細化する点、が図2に示す如くフロントローラ上にあることが必要である。特に望ましいドローポイントの位置はフロントローラから離れる直前の0〜15cm、好ましくは0.1〜10cm、さらに好ましくは0.1〜5cmの範囲である。中でも、2〜5段の多段延伸を採用する場合には少なくとも1段目の延伸においてドローポイントがフロントローラ上にあることが望ましい。ドローポイントの位置を上述の範囲とすることで、均一延伸による高度な分子配向と結晶成長が可能となり、結果としてポリ乳酸繊維内における分子の非拘束領域量が減少、分子鎖の運動拘束力が増大することで本発明の動的粘弾性の範囲を満足し、高温時の力学特性が向上すると考えられる。ドローポイントが本発明の範囲を外れた場合には高度に配向した本発明のポリ乳酸繊維を製糸性良く得ることが困難となる。
ドローポイントの位置は繊維の配向度に応じて、延伸倍率、ローラ温度、ローラ表面摩擦を変更することで調節することが可能である。更に、ドローポイントを本発明の位置、即ちフロントローラ上となるように設定するためには該ローラは摩擦の低い梨地ローラであることが好ましく、ローラ表面の粗さがRa=0.3〜5μm、好ましくはRa=0.5〜3μmのクロムメッキされたものを好適に使用することができる。
1段目の延伸は2FRと1DR間で行い、2FRの温度は80〜120℃、好ましくは80〜110℃とし、1DRの温度を90〜120℃、好ましくは100〜120℃とし、例えば、総延伸段数が3段の場合には1段目の延伸倍率を総合延伸倍率の20〜90%、好ましくは20〜50%に、総合延伸段数が2段の場合には1段目の延伸倍率を総合延伸倍率の30〜90%、好ましくは50〜90%の範囲に設定する。
2段めの延伸は1DRと2DR間で行うが、2DRは110〜160℃、好ましくは115〜145℃である。2段延伸の場合は総合延伸倍率に対し、1段目の延伸倍率の残りの延伸をこの間で行う。3段延伸の場合は、残りの延伸倍率を2段に分けて行う。3段延伸を行う場合の3DRの温度は120〜160℃、好ましくは130〜150℃である。2段延伸または3段延伸を終えた糸条はRRとの間で0〜10%、好ましくは0〜7%、さらに好ましくは0.5〜5%の弛緩処理を行い、熱延伸によって生じた歪みを取るだけで無く、延伸によって達成された高配向構造を固定したり、非晶領域の配向を緩和させ熱収縮率を下げたりすることができる。RRは非加熱ローラまたは、160℃以下に加熱したローラを用いる。通常、熱延伸時に加熱された糸条の持ち込む熱によって、RRは加熱の有無にかかわらず90〜150℃の温度となる。
本発明の産業資材に適した高強度、高タフネスのポリ乳酸繊維は、上記方法によって基本的な物性は得られる。しかし、毛羽の発生を少なくして高品位のポリ乳酸繊維を得るために、1段延伸が行われる2FRと1DRの間に、繊維糸条に高圧流体を吹き付けて、該繊維を構成する糸条に交絡を付与し、糸条を集束させながら延伸を行っても良い。糸条を交絡、集束させるための装置は、通常糸条を巻き取る直前に糸条に交絡を付与し、集束させるために用いられる交絡ノズルを用いることができる。該交絡装置は1段めの延伸時に行うのが効果的であるが、1段めに加え、2段めおよび3段めの延伸時にも行っても良い。ポリ乳酸繊維に施す交絡度(CF値)としては5〜70であることが好ましく、10〜60であることがより好ましい。
本発明の繊維製品は、本発明のポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなることが必要であり、本発明のポリ乳酸繊維を用いることで、高温力学特性、熱寸法安定性に優れた繊維製品を得ることが可能となる。本発明でいう繊維製品とは、特に、衣料や産業用資材であって、繊維単独で使用してもロープ、織物、編物、不織布等として使用しても良い。なかでも、自然環境下等の厳しい条件下で使用されたり、高温下において長期に渡る保管等の多い産業資材用のネット、ロープ、織物、編物等として好適である。
ネットとして用いる場合には、菱目、亀甲目、角目、千鳥目、六角目等の網目形状を用いることができ、網地種としては蛙又、本目のような結節網、無結節網、ラッセル網、もじ網、織網等を利用することができ、なかでも結節を形成しない網地種を採用するほうが応力分散により破断し難いため好ましい。目合いは5〜200mmであること好ましく、好ましくは10〜150mm、さらに好ましくは15〜100mmである。目合いが5mm未満の場合には目詰まりを起こすという問題や細かい網構造となるためにコストが高くなるという問題があり、目合いが200mmを超える場合には所望の物体の捕捉が困難となる。前記構成を有するネットは、安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、スポーツ用ネット、護岸ネット、植生ネット、漁網、蛇篭、布団篭等として好適に使用することができる。なかでも、コンクリート塊や割栗石等の中詰材を充填する際に発生する摩擦熱に対する耐性が高い為、蛇篭、布団篭等の袋状ネットとして優れた特性を有する。
また、織編物として用いる場合にも織組織や編組織になんら制限は無く、織物の場合には平組織、斜文組織、朱子組織やそれらの応用組織、編物の場合には平編、リブ編、両面編、パール編等の緯編組織や、デンビー編、コード編、チェイン編、アトラス編等の経編等、通常用いられる織編組織を採用することができ、その使用用途に関してもなんら制限されるものではない。
前記の如き本発明の繊維製品は網地または織物または編物または撚糸品のみで構成される必要は無く、本発明の効果を損なわない範囲であれば樹脂やフィルム等が被覆されていても良いし、多重になっていても不織布等が積層してあっても良い。
次に本発明の繊維製品の製造方法をネット(無結節網)を例にとって示すが、本発明の効果を損ねない範囲であれば、以下の方法に限定されるものではない。
ポリ乳酸よりなるマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントを数本引き揃え、網糸として必要な繊度とする。引き揃えた糸は、下撚りをかけ下撚糸となし、下撚糸2本を合わせて中撚りをかけ、中撚糸を2本合わせて撚って上撚りをかけることにより網糸を構成しながら、網糸を互いに組み合わせて結節部を形成し、同時に網目を作っていく無結節編網機によって無結節のネットとする方法やラッセル編機を用いて編みこんでいく方法を採用することができる。
なお、得られたネット、布帛等はテンター等によって60〜160℃の範囲内で熱処理に供して繊維製品とすることが好ましい。熱処理温度が160℃以下であればポリ乳酸繊維間での融着が発生することなく品位の良い繊維製品を得ることができ、60℃以上であれば目的とする熱セット効果を得ることできる。好ましい熱セット温度の範囲としては80〜150℃、更に好ましくは100〜140℃である。なお、熱セットは製織、製網等する前の、撚糸をする際に行ってもかまわない。
熱セット時に繊維製品に与える張力については、好ましい範囲として0.05〜2cN/dtexが例示できるが、特に制限されるものでは無く、織物、編物、ネット、ロープ等の各種製品特性に応じて適宜最適な張力を付与すれば良い。
かくして得られた本発明のポリ乳酸繊維及びそれを用いた繊維製品は生分解性を有するため環境負荷が小さいばかりか、幅広い温度領域において優れた力学特性を有する。
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明するが、明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
[動的粘弾性試験]:(株)オリエンテック製 RHEOVIBRONを用いて、糸長3cm、560dtexとなるように引き揃えた試料を、初荷重0.8826cN/dtex、周波数110Hzの条件で室温から150℃までの範囲について3℃/分の昇温速度で測定し、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、tanδmaxを求めた。但し、tanδ=E’’/E’、Tmaxはtanδmax時の温度とした。各サンプルに対して2回の測定を行い、平均値を求めた。
[複屈折(Δn)]:D線を光源として用い、ベレックコンペンセーター法によってレターデーションと糸径を測定し、下記式に従って求めた。
Δn=(レターデーション/糸径)
10フィラメントについて測定し、その平均値をΔnとした。
[総繊度およびフィラメントの繊度]:JIS L1090により測定した。
[単繊維繊度]JIS L1090に準じて測定した繊度を、ポリ乳酸繊維を構成する単繊維数で割り返した値を採用した。
[25℃における強度、伸度]:JIS L1013の方法で測定した。オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で測定した。各サンプルについて測定を5回行い、その平均値を求めた。
[90℃における強度]:90℃に加熱した恒温炉中にサンプルをセットした状態で測定すること以外は25℃での強度測定条件と同様に求めた。
[乾熱収縮率]: JIS L1013の方法に従って、120℃、30分で測定した。同一試料から2検体採取して測定し、その平均値を求めた。
[相対粘度]:0.5gのサンプルに対し25mLのクロロホルムを加え、5時間かけて攪拌してポリマーを溶解させた後、クロロホルムを加えて50mLに希釈した。希釈溶液を試験温度30℃でスコットAVS500自動粘度計(Schott AVS500auto viscometer)を用いて測定し、下記式に基づいて相対粘度ηrを求めた。測定は2回行い、その平均値とした。
ηr=t/t0
t:溶液の落下秒数
0:溶媒(クロロホルムのみ)の落下秒数
[ドローポイント]:第1段目の延伸時におけるドローポイントの位置を測定し、ドローポイントが2FRから離れる直前の0〜15cmの範囲内にあるものを○、それ以外のものを×と評価した。なお、ドローポイントはレーザードップラー速度計(TSI社製 LS−50M)を用いて2FR上から1DRまでの糸速度を測定し、速度が急激に1DR表面速度近くまで上昇する点をドローポイントとした。
[目合い]:JIS L1043準じて測定した。
[交絡度(CF値)]:1m試長の試料に100gの荷重をかけ、6gのフックを下降速度1〜2cm/秒で下降させ、式:交絡度(CF値)=100(cm)/下降距離(cm)により計算して求めた。試行回数10回の平均値を採用した。
[ネットのコシ評価]:作製したネットのコシを当業技術者5人の触手による官能試験で以下の2段階で評価した。
A:実用に供する適切なコシを有する。
B:コシが強い、または弱いため、実用に供することが困難である。
[製造例1](ポリ乳酸ポリマーの製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10,000:1)を存在させてチッソ雰囲気下180℃で220分間重合を行い相対粘度4.1のポリ乳酸樹脂P1を得た。また、同様に重合時間を調整することで相対粘度2.5のポリ乳酸樹脂P2を得た。
[製造例2](原着ポリ乳酸樹脂の製造)
ポリ乳酸樹脂P1と平均粒径0.1μmのカーボンブラックを、P1:カーボンブラック=80:20(重量比)となるように計量して連続的にP1に添加しながらシリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、カーボンブラックを20重量%含有したポリ乳酸P3を得た。
[製造例3](EBAを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=96:4(重量比)となるようにEBAを計量して連続的にP1に添加しながらシリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを4重量%含有したポリ乳酸P4を得た。
[ポリ乳酸繊維]
(実施例1)
P1を、エクストルーダー型紡糸機を用いて220℃で溶融紡糸した。溶融ポリマは、紡糸パック中で20μの金属不織布フィルターで濾過した後、孔経0.6φで96ホールの口金から紡出した。
口金面より3cm下には15cmの加熱筒および15cmの断熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度が250℃となるように加熱した。ここで筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
加熱筒の直下には環状吹きだし型チムニーを取付け、糸条に30℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け冷却固化した後、糸条に油剤を付与した。油剤は、イソC24アルコール/チオジプロピオン酸エステル(40重量%)、C11〜15アルコールAOA/チオジプロピオン酸エステル(30重量%)、トリメチローラプロパンAOAジステアレート(10重量%)、C8アルコールAOA(10重量%)硬化ヒマシ油(7重量%)、ステアリルアミンEO15(3重量%)を鉱物油で20%に希釈した非水系油剤を用いた。
油剤を付与された未延伸糸条は、表面速度375m/分の速度で回転する1FRに捲回して引取った。次いで、引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りローラと2FRとの間で1.5%のストレッチをかけた後、引き続いて3段熱延伸を行ない、1.5%の弛緩を与えてから3000m/分の速度で巻き取った。直接紡糸延伸は図1に示したプロセスを用いて行った。1FRは60℃、2FRは100℃、1DRは115℃、2DRは140℃、3DRは140℃とし、RRは非加熱とした。ローラへの糸条の捲周回数はそれぞれ、3回、4回、4回、4回、5回、4回とした。RRと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。交絡は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に3kg/cm2の高圧空気を噴射することにより行い、560dtex、96フィラメントのポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維物性を評価して表1に、動的粘弾性試験の結果を図3および図4に示した。なお、1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の34%、2段めの延伸倍率は33%、3段目の延伸倍率を33%に設定して延伸した。
(実施例2)
冷却固化工程までは実施例1と同様に紡出した後、固化した糸条に油剤を付与した。油剤は、イソC24アルコール/チオジプロピオン酸エステル(40重量%)、C11〜15アルコールAOA/チオジプロピオン酸エステル(30重量%)、トリメチローラプロパンAOAジステアレート(10重量%)、C8アルコールAOA(10重量%)硬化ヒマシ油(7重量%)、ステアリルアミンEO15(3重量%)を50℃の温水を用いて20%に希釈、攪拌して得られた水系エマルジョンを用いた。
油剤を付与された未延伸糸条は、700m/分の表面速度で回転する1FRに捲回して引取った。次いで、引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りローラと2FRとの間で1.5%のストレッチをかけた後、引き続いて2段熱延伸を行ない、1.5%の弛緩を与えてから3000m/分の速度で巻き取った。1FRは60℃、2FRは100℃、1DRは120℃、2DRは140℃とし、RRは非加熱とした。ローラへの糸条の捲周回数はそれぞれ、3回、4回、4回、5回、4回とした。RRと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。交絡は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に3kg/cm2の高圧空気を噴射することにより行い、560dtex、96フィラメントのポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維物性を評価して表1に示した。なお、1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の65%、2段めの延伸倍率は35%に設定して延伸した。
(実施例3)
ポリ乳酸樹脂としてP1とP3およびP4を最終カーボンブラック濃度が0.3重量%、EBA濃度が0.5重量%となるように混合した原料を用いて紡出し、油剤を付与された未延伸糸条を、450m/分の表面速度で回転する1FRに捲回して引取り、3段熱延伸を行なった後、3%の弛緩を与えてから3300m/分の速度で巻き取ったこと、および3DR温度を150℃としたこと以外は実施例1と同様に行い、得られた繊維物性を評価して表1に示した。
(実施例4)
油剤を付与された未延伸糸条を、330m/分の表面速度で回転する1FRに捲回して引取ったこと、および1FR温度を65℃としたこと以外は実施例1と同様に行い、得られた繊維物性を評価して表1に示した。
(比較例1)
油剤付与工程までは、原料ポリマとしてP2を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。油剤を付与した糸条を860m/分の表面速度で回転する1FRに捲回して引取り、一旦巻き取ることなく連続して2FRとの間で1.5%のストレッチをかけた後、2FRと1DR間で1段熱延伸を行い、1.5%の弛緩を与えてから3000m/分の速度で巻き取った。1FRは60℃、2FRは115℃、1DRは130℃とした。ローラへの糸条の捲周回数はそれぞれ、4回、4回、6回、4回とした。RRと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。交絡は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に3kg/cm2の高圧空気を噴射することにより行い、560dtex、96フィラメントのポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維物性を評価して表1に、動的粘弾性試験の結果を図3および図4に示した。
表1および図3、図4より明らかな様に、実施例1から実施例4により得られた本発明のポリ乳酸繊維は常温における強度、弾性率は勿論のこと、高温時における強度、弾性率にも非常に優れるものであった。しかしながら、本発明の範囲を外れた比較例1に示したポリ乳酸繊維は、高温時における弾性率および強度が低く、耐熱性に問題を有するものであった。
Figure 0004626163
[繊維製品]
(実施例5)
実施例1で得られたポリ乳酸繊維をラッセル編機によってフロント7,000dtex、バック4,700dtexの編み地とし、目合い25mmのネットを作製した。得られたネットはテンターにおいて、熱セット温度130℃で2分間の処理に供したのち、特性を評価し、その結果を表2に示した。
(実施例6)
熱セット温度を110℃にしたこと以外は実施例5と同様に行った。
表2より明らかな様に、本発明の製造方法を用いて製造した繊維製品は適度な熱セットが施されたものであり、実使用時における適切なコシを有するものであった。
(比較例2)
熱セット温度を90℃にしたこと以外は実施例5と同様に行った。熱セット温度が本発明の範囲を下回る比較例2の製造方法においては、熱セット効果が小さくコシの弱い製品しか得ることができなかった。
(比較例3)
熱セット温度を180℃にしたこと以外は実施例5と同様に行った。熱セット温度が本発明の範囲を超える比較例3の製造方法においては、熱セット時に繊維同士の融着が認められ、非常に固く実用に供せる製品を得ることができなかった。
(比較例4)
比較例1で得られたポリ乳酸繊維を用いたこと以外は実施例5と同様に行った。ポリ乳酸繊維の乾熱収縮率およびE’が本発明の範囲を外れる製造方法においては、熱による収縮が大きく、コシの強いネットしか得ることができなかった。
Figure 0004626163
本発明の実施態様の一例の延伸工程図である。 一段目の延伸を例にとって、本発明のドローポイントの位置を示したものである。 実施例1及び比較例1のtanδ測定結果である。 実施例1及び比較例1のE’測定結果である。
符号の説明
1:紡糸口金
2:除冷ゾーン
3:冷却装置
4:給油装置
5:1FR
6:2FR
7:1DR
8:2DR
9:3DR
10:RR
11:交絡付与装置
12:巻き取り装置
13:ストレッチ
14:延伸(1段目)
15:延伸(2段目)
16:延伸(3段目)
17:リラックス
18:本発明のドローポイントの範囲
19a:ローラと糸条の接点
19b:ローラと糸条の接点(糸条がローラから離れる点)
20:糸条の巻き取り方向

Claims (13)

  1. 動的粘弾性の温度依存性試験におけるtanδの最大値(tanδmax)が0.05〜0.35、およびtanδが最大値を示す際の温度(Tmax)が88〜120℃であって、30℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.1〜50GPa、120℃時おける貯蔵弾性率(E’)が0.08〜10GPaであることを特徴とするポリ乳酸繊維。
  2. 単繊維繊度が3〜15dtex、強度が4〜8.5cN/dtex、伸度が15〜45%、複屈折率が23×10 −3 〜40×10 −3 、あることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸繊維。
  3. 強度が4.23〜8.5cN/dtexであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸繊維。
  4. 120℃で測定した乾熱収縮率が0.5〜10%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸繊維。
  5. 少なくとも1種類以上の着色剤を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸繊維。
  6. 脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸繊維。
  7. 溶融紡糸した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、次いでローラ間で糸条の延伸を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、少なくとも1箇所のドローポイントがフロントローラ上にあることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法。
  8. 前記糸条の延伸が2〜5段の多段延伸であり、少なくとも1段目の延伸におけるドローポイントがフロントローラ上にあることを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
  9. 油剤が少なくともアルキルエーテルエステル、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、有機ホスフェート塩を含有する非水系油剤であることを特徴とする請求項7または8に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維製品。
  11. ネット、ロープ、編物、織物の群より選ばれた一つである請求項10に記載の繊維製品。
  12. 繊維製品がネットであり、該ネットが袋状であることを特徴とする請求項11記載の繊維製品。
  13. 請求項10〜12のいずれかに記載の繊維製品の製造方法であって、撚糸をした後、もしくは製網、製織および製編のうちいずれかをした後に、60〜160℃の温度で熱セットを施すことを特徴とする繊維製品の製造方法。
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