JP2005232645A - ポリ乳酸繊維およびその製造方法、並びにそのポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体 - Google Patents

ポリ乳酸繊維およびその製造方法、並びにそのポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、生分解性と共に、軽量性や保温性を有し、更には耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された高中空率のポリ乳酸繊維及びその製造方法、並びにそれからなる産業資材用繊維構造体を提供することにある。
【解決手段】
マルチフィラメントのストレートヤーンからなるポリ乳酸繊維であって、中空率が11〜70%であることを特徴とするポリ乳酸繊維、並びにそれからなる産業資材用繊維構造体である。
また、かかるポリ乳酸繊維の製造方法は、中空率が11〜70%のポリ乳酸繊維を溶融紡糸して製造する方法において、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことを特徴とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、高中空率のポリ乳酸繊維およびその製造方法、並びにそのポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体に関する。更に詳しくは、生分解性と共に、軽量性および保温性を有し、更には耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された高中空率ポリ乳酸繊維およびその製造方法、並びにそのポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体に関する。
ポリ乳酸繊維は、生分解性を有し、かつ非石油系原料から得られる繊維であるため、土中で自然分解させたり、コンポスト化分解が可能であり、しかも分解しても有害物質を生成しないことから、廃棄しても環境負荷の小さい繊維として注目され、広く用途開発が進められている。
例えば、水切りごみ袋、ティーバッグ、タオル、ナプキン等の家庭用製品、ブラウス、シャツ、スカーフ、ハンカチーフ、裏地等の衣料用製品、オプションマット、ロールカーペットやラグ等のインテリヤ用製品、建築工事用ネット、建築工事用シート、陸上ネット、土嚢袋、テント、ターポリン、育苗マット、植生用防草シート等の資材用途で一部実用化が進んでいる。
水切りゴミ袋やティーバッグ、および土嚢袋や育苗マット等は、ポリ乳酸繊維の生分解性をそのまま活かせる用途として実用化が進んでいる。しかし、その他の用途、特に資材用途の大部分は、製品使用後の廃棄に関しては、環境負荷が少ないことをメリットとして活かせるものの、製品使用中は既存の資材用繊維が有している機能、例えば、強度、強靱性、弾性率、耐熱性等の初期特性や、耐摩耗性、耐ヘタリ性、耐疲労性等の耐久特性について、遜色ないレベルであることが求められている。従って、ポリ乳酸繊維の資材用途開発にあたっては、既存繊維と比較して、ポリ乳酸繊維の物性が劣る部分の改善に主に注力されてきた。ポリ乳酸繊維は、生分解性以外の機能については、既存繊維のレベルに達しないものが殆どであり、その結果、用途開発が進んでいなかったというのが実状である。
そこで、本発明者らは、むしろポリ乳酸繊維の生分解性以外の特徴を活かした新製品の開発に取り組むことを試みた。すなわち、ポリ乳酸ポリマーの特徴、ポテンシャルを十分活かした新規製糸技術を開発することにより、既存繊維では達成できなかった軽量性、嵩高性、クッション性および保温性等に優れたポリ乳酸繊維製品を開発しようと取り組んできた。
ポリ乳酸繊維の製造においては、ポリマーが高分子量であり、従って紡糸時のポリマーは高い溶融粘度であり、かつ比較的低い融点の割には高いガラス転移温度を有すること等の特徴を有する結果、例えば、異型断面繊維を製糸すると、変形度の高い断面の繊維が得られることが知られている。しかしながら、変形度の高すぎる異型断面繊維は、風合いが粗硬であったり、耐摩耗性や耐ヘタリ性が劣る等の欠点があり、むしろ従来の繊維の特性に合わせようとして改良が進められてた。
しかるに本発明者らは、上記変形度の高い異型断面繊維が得やすいというポリ乳酸繊維の製糸の特徴を活かし、従来にない高中空率の繊維を得ることに鋭意努力し、本発明に到達した。そして、該中空ポリ乳酸繊維を用いて産業資材用繊維構造体とすることにより、従来存在しなかった軽量性や保温性に優れ、更には耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された産業資材用繊維構造体を得るに至ったのである。
ポリ乳酸繊維および脂肪族ポリエステル繊維等の生分解性繊維からなる中空繊維、或いはそれらからなる産業資材用繊維構造体に関し、関連する従来技術として、特許文献1〜4がある。以下に本発明技術との相違を述べる。
特許文献1は、「バルキー性と摩耗耐久性にすぐれ、かつ良好なカバーリング性によって軽量化を可能としたカーペットを与え得る脂肪族ポリエステル糸、およびこの脂肪族ポリエステル糸をフェースヤーンとして用いてなるカーペット等、特に自動車用としての優れた性能を有するカーペットを提供する」ことを課題とし、「融点145℃以上の脂肪族ポリエステルを溶融紡糸してなる中空断面単糸の集合体であって、総繊度が500〜5000デシテックスの脂肪族ポリエステルマルチフィラメントより構成され、前記中空断面単糸は、その外輪郭と中空部輪郭との間隔よりなる厚さが3μm以上であることを特徴とするカーペット用脂肪族ポリエステル糸および、この脂肪族ポリエステル糸をフェースヤーンとして用いるカーペット」が提案されている。しかしながら、この技術は、カーペット用途に限定した脂肪族ポリエステル糸に関するものであり、また、その中空率は実質的に高々9%(実施例2および実施例3:Y型中空)や10%(実施例1:Y型中空、実施例4:田型中空)のものしか得ることができなかった。
特許文献2は、「良好な物理特性を有しながらソフトな風合いを有すると共に、生分解性を有するポリエステル中入れ綿を提供する」ことを課題とし、「融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維からなる嵩高度が50以上、圧縮率が45%以上の中入れ綿であって、該中入れ綿を構成する繊維の捲縮数が6山/25mm、捲縮度が10%以上であるポリエステル中入れ綿であって、繊維の断面形状は中空形状であることが好ましい。」とすることによって達成されるとしている。しかしながら、この技術は、中入れ綿用途に限定したポリエステル系繊維に関するものであり、また、高中空率とした場合には、捲縮工程において、中空が潰れてしまい、実質的に中空率が低下するという問題があった。
特許文献3は、「生分解性を有し、かつ紡出糸条の冷却性および機械的性能に優れ、また熱接着性を有する長繊維を提供する」ことを課題とし、特定の特性を有する「脂肪族ポリエステルからなる中空断面の糸あるいは多葉断面の糸、およびそれを得るための特定した製造方法」によって達成されるとしている。しかしながら、この技術における長繊維は、実質的にポリブチレンサクシネートであって、ポリマー気質が大きく異なるポリ乳酸の中空繊維に関する記載は全くない。
特許文献4は、「ポリエステル繊維とポリアミド繊維の本質的な欠点を解消し、薄く、軽く、強いハリのある風合いを持ち、且つ生分解できる資材織物を提供する」ことを課題とし、該課題は、「織物の少なくとも経糸又は緯糸の一方がポリ乳酸繊維で構成され、織物の構成糸の密度の和が180本/吋以上、織物の目付が40〜200g/平方メートルであって、かつ乾熱温度150〜180℃で熱処理されることを特徴とするポリ乳酸繊維からなる織物」によって解決されるとしている。しかしながら、該従来技術には、本発明技術の産業資材用繊維構造体として重要な軽量性や保温性については、満足できるものではなく、また、ポリ乳酸繊維の耐久性に係る強度、耐摩耗性等についての記述もないことから、本発明技術とは全く相違する。
特開2002−227036号公報 特開2000−234252号公報 特開平8−158154号公報 特開2002−339190号公報
本発明は、生分解性と共に、軽量性や保温性を有し、更には耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された高中空率のポリ乳酸繊維及びその製造方法、並びにそれからなる産業資材用繊維構造体を提供することにある。
本発明の課題は、以下の手段によって達成できる。
1.マルチフィラメントのストレートヤーンからなるポリ乳酸繊維であって、中空率が11〜70%であることを特徴とするポリ乳酸繊維。
2.該ポリ乳酸繊維の単糸繊度が1〜25dtex、総繊度が30〜5000dtex、強度が3〜9cN/dtex、および伸度が15〜40%であることを特徴とする1項に記載のポリ乳酸繊維。
3.該ポリ乳酸繊維が、原着糸であることを特徴とする1項または2項に記載のポリ乳酸繊維。
4.該ポリ乳酸繊維が、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有することを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載のポリ乳酸繊維。
5.中空率が11〜70%のポリ乳酸繊維を溶融紡糸して製造する方法において、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法。
6.該加熱筒および/または断熱筒を通過した紡出糸条を、環状型吹き出しタイプの空冷装置にて10〜50℃の冷却風を風速10〜50m/分で吹き付けることによって冷却固化させることを特徴とする5項に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
7.溶融紡糸工程前または溶融紡糸工程において、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤をポリ乳酸ポリマーに混合することを特徴とする5項または6項に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
8.1〜4項のいずれかのポリ乳酸繊維からなることを特徴とする産業資材用繊維構造体。
9.袋物、テント、ターポリン、帆布もしくは土木用シート用途の織布であることを特徴とする8項記載の産業資材用繊維構造体。
10.前記織布のカバーファクターが600〜5000、目付が40〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3であることを特徴とする9項記載の産業資材用繊維構造体。
11.安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、護岸吸い出し防止ネット、スポーツ用ネット、漁網のいずれか1種であることを特徴とする請8項記載の産業資材用繊維構造体。
12.ネットの目合いが5〜200mmであることを特徴とする11項記載の産業資材用繊維構造体。
本発明によれば、生分解性と共に、軽量性や保温性を有し、更には耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された高中空率のポリ乳酸繊維及びその製造方法、並びにそれからなる産業資材用繊維構造体を得ることができる。
本発明産業資材用繊維構造体は、特に袋物、テント、ターポリン、帆布もしくは土木用シート用途の織布や安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、護岸吸い出し防止ネット、スポーツ用ネット、漁網に好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸繊維の原料とするポリ乳酸ポリマーは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものを言い、ポリマー内の乳酸のL体比率あるいはD体比率は95%以上であると、融点が高く好ましい。L体比率あるいはD体比率は、より好ましくは98.5%以上である。また、L体比率95%以上のポリ乳酸とD体比率95%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するため好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても良く、また、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、着色顔料等の添加物を必要に応じて含有させても良い。ポリ乳酸以外のポリマーとして、例えば、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを可塑剤として用いることもできる。
しかし、本発明におけるポリ乳酸繊維は、生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、廃棄しても環境負荷の小さい製品として用いるため、石油系ポリマーのブレンド、該成分の共重合等は極力避け、また各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないことがより好ましい。
本発明のポリ乳酸繊維は、マルチフィラメントのストレートヤーンからなり、各フィラメントの断面の中空率が11〜70%の高中空率を有する中空繊維である。中空率は、好ましくは21〜60%、より好ましくは31〜50%である。中空率は繊維フィラメントの断面において、中空部分が占める面積の割合である。11%未満では従来のポリ乳酸繊維と大差なく、本発明の軽量性および保温性等の特徴が十分得られない。70%を超える中空率は、通常の溶融紡糸法では得ることが困難であり、また、仮に得ることができたとしても、製品使用時に中空が潰れることによって、本発明の軽量性および保温性等の特徴が十分得られない。
本発明のポリ乳酸繊維の中空部は、通常、フィラメントの断面に中空部を1個有するが、2個以上の中空部を有していても良い。1個の場合は高中空率が製造し易く、2個以上の場合は、中空部がつぶれにくいという特徴を有するので、用途に合わせて選ぶことが必要である。高中空率と中空の潰れにくさのバランスを考えた場合には、例えば中空部が4つの田型中空が好ましい。また、繊維断面の外形は、丸型の他、三葉型等の多葉型やその他の異形でも良いが、耐摩耗性や耐ヘタリ性の観点からは、丸形が好ましい。
本発明で言うストレートヤーンとは、仮撚法やスタッフィング法、エアジェット法等で代表されるような嵩高・伸縮加工が施されていない長繊維を意味する。嵩高・伸縮加工を施した糸は、その加工工程においてポリ乳酸繊維の中空が潰れてしまい、本発明の軽量性および保温性等の特徴が十分得られないことがある。
本発明のポリ乳酸繊維は、強度が3〜9cN/dtex、好ましくは4〜8cN/dtex、より好ましくは5〜8cN/dtexである。3cN/dtex未満では産業資材用繊維構造体としての強度が不足することがある。一方、強度は高いほど好ましいが、9cN/dtexを超えるものを工業的に生産することは現時点では困難である。本発明のポリ乳酸繊維は従来にない高中空率と高強度を達成した新規繊維であり、本発明の特異な製造方法によって得られる。
また、本発明のポリ乳酸繊維は伸度が15〜40%であることが好ましい。例えば15%未満になると、優れた耐摩耗性が得られなくなり、伸度が40%を越えると高強度が得られなくなる。
本発明のポリ乳酸繊維は、単糸繊度が1〜25dtexであることが好ましい。本発明のポリ乳酸繊維において、単糸繊度が1dtex未満では耐摩耗性が十分でなかったり、産業資材用繊維構造体のハリ・腰が十分でないことがある。一方、単糸繊度が25dtexを越えると、産業資材用繊維構造体の表面が粗硬となり、柔軟性やしなやかさが十分得られないことがある。
また、総繊度は30〜5000dtexであることが好ましい。30dtex未満では産業資材用繊維構造体としての厚みが十分でなく、かつ強度も不足する。一方、5000dtexを超えると厚い産業資材用繊維構造体となり、通常の方法で使いこなすことが困難である。
また、一般にポリ乳酸繊維は、染色工程において加水分解が起こり、ポリマーの分子量が低下するため、繊維強度が低下することが知られている。よって、それを避けるために染色工程を適用しない原着糸として用いることが行われる。本発明のポリ乳酸繊維も原着糸として用いることが好ましい。
原着のポリ乳酸繊維に用いる着色剤は、ポリ乳酸繊維に適切な特定の無機、有機顔料および染料である。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものである。
例えば、無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−鉄系ブラック等の酸化物、紺青のようなフェロシアン化物、郡青のような珪酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、マンガンバイオレットのような燐酸塩、カーボンブラック、アルミニウム粉やブロンズ粉、およびチタン粉末被覆雲母等が用いられるが、鉛、クロムおよびカドミウム等の重金属を含む無機顔料は用いない。
また、有機顔料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーンおよび臭素化銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、ペリレンスカーレット、ペリレンレァ、ペリレンマルーン等のペリレン系、イソインドリノン系等が用いられる。また、染料としては、アンスラキノン系、例えば、Solvent R.50、Solvent R.111、Solvent B.94、Solvent V.50、Solvent G.3、複素環系、例えば、Solvent Y.33、Solvent Y.111、Solvent Y.54、ヘリノン系、例えば、Solvent O.60、Solvent R.135、Solvent R.179、ペリレン系、例えば、Solvent G.5、チオインジオ系、例えばVat R. 1が用いられる。
本発明の原着のポリ乳酸繊維に用いられる着色剤は、上記無機顔料、有機顔料および染料から選ばれた1種または2種以上を組み合わせて用いる。
該着色剤の添加濃度は、ポリマー重量当たり100〜30000ppm、好ましくは500〜10000ppmである。また、着色剤は通常用いられる分散剤と併用して用いることもできる。
次に、本発明ポリ乳酸繊維は、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有することが好ましい。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有するポリ乳酸繊維は、前記従来にない高中空率と高強度を兼備すると共に、資材用途として重要な耐摩耗性や耐屈曲疲労性等の耐久性に優れるという特徴を付加することができる。更に、繊維の表面がしっとりとした触感となり、かつ透明感と深みのある色調を有する等の特徴も得られる。
本発明にかかる脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等である。
また、本発明でいうアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含む。
本発明では脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましく用いることができる。
本発明ポリ乳酸繊維は、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドが繊維全体に対して好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%含有する。0.1重量%未満では耐摩耗性や耐屈曲疲労性等の耐久性が十分に得られず、一方、5重量%を超えると、またポリ乳酸繊維の強度が低下し、また製糸工程で糸切れが多発し、生産収率が低下するため好ましくない。
上記脂肪酸アミドは単一で添加しても良いし、また複数の成分を混合して用いても良い。混合して用いる場合も、その混合物全体として0.1〜5重量%含有させれば良い。
また、本発明におけるポリ乳酸繊維には、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含む油剤が付与されていることが好ましい。好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤である。該油剤の付与によって、ポリ乳酸繊維の表面摩擦係数が低減し、産業資材用繊維構造体としたとき更なる耐摩耗性の向上が可能となる。
かかる特徴を有する本発明のポリ乳酸繊維は、種々の繊維構造体、特に産業資材用繊維構造体として、軽量性、嵩高性、クッション性および保温性等を活かした用途に好適に用いることができる。
本発明で言う産業資材用繊維構造体とは、産業資材に用いられる繊維構造体であってその形態は特に限定されるものではなく、用途に応じて、織布、編織布、不織布やそれらの積層体、あるいは織布、編織布、不織布と紙、フィルム、発泡体、樹脂等との積層体、更には、ネット、ロープ、紐等、いずれの形態であっても良く、施工性を阻害しない範囲で構造体を自由に設計することができる。

例えば、織布の場合には、その形態は特に制約されず、用途に応じて、平織り、綾織り、サテン織り、絡み織り等を適用できるが、通常、平織りか絡み織りが採用される。また、産業資材用繊維構造体を織布のみで構成する場合、該織布は、カバーファクターが600〜5000であることが好ましい。この範囲内であれば、袋物、テント、ターポリン、帆布、土木用シート等に要求される防水性や防風性、軽量性や保温性、ハリ・腰といった特性が良好となる。カバーファクターが600未満の場合は、目ズレを起こし易く、また、繊維密度が低いためにテントや帆布、土木用シート等の防水性や防風性が特に求められる用途には使えない。一方、カバーファクターが5000を超えると、繊維密度が高すぎて、製織工程での工程通過性、及び各種織物製品としての取り扱い性が不良となる。
本発明のポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体は、最も重要な特性である軽量性を満足させるため、該織布の目付が40〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3であることが好ましい。目付は好ましくは、100〜1000g/m2、更に好ましくは、150〜450g/m2である。40g/m2未満の場合は、嵩高性やハリ・腰に欠けると共に、産業資材用繊維構造体としての強度や耐久性が十分得られない。一方、2000g/m2を超えると、軽量性を狙った産業資材用繊維構造体として活かすことができない。見かけ密度は好ましくは、0.5〜0.8g/cm3である。見かけ密度は低いほど軽量で保温性や嵩高性に優れた産業資材用繊維構造体が得られるが、0.4g/cm3未満では強度および耐久性等が不十分なものとなる。一方、見かけ密度が1.0g/cm3を超えたものは、従来の産業資材用繊維構造体と比べ特別軽量であるとは言えない。産業資材用繊維構造体の見かけ密度を0.4〜1.0g/cm3とするには、軽量性を有する高中空率のポリ乳酸繊維を用いることが非常に重要である。即ち、本発明において、中空率11〜70%の中空ポリ乳酸繊維を用いることによって、中実のポリ乳酸繊維(密度1.27g/cm3)に対し、見かけ密度は0.38〜1.13g/cm3と軽量化が可能となる。さらに、中空率が31%ともなれば見かけ密度は0.88g/cm3となり、水に浮くことは勿論、汎用の樹脂からなる繊維で最も軽量とされるポリプロピレン繊維よりも軽量となる。また、見かけ体積は1.12〜3.33倍となるため、嵩高性を大きくすることができ、同時に、産業資材用繊維構造体とした場合には、繊維構造体の内部には熱伝導率の小さい空気層(繊維の中空部)の割合が多いことから、保温性も格段に向上させることができる。特に保温性を活かせる用途としては、テント用途が挙げられるが、中でも携帯用テントは軽量性と保温性の両方が高いレベルで要求される用途であることから、本発明産業資材用繊維構造体を好適に用いることができる。
また、本発明の産業資材用繊維構造体に織布を用いる場合には、必ずしも織布のみで構成される必要はなく、例えば、防水性や防風性を付与する場合には、塩化ビニルやエチレンビニルアルコール(EVA)、ポリウレタン等の樹脂でコーティングやラミネート、ディッピングを行うこともできる。また、完全生分解型の産業資材用繊維構造体とするには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような生分解性樹脂を用いて、コーティングやラミネート、ディッピングすることも好適である。
本発明における袋物とは、袋状形態の繊維構造体全般を意味し、例えば、土嚢袋やフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)、コンポスト用バッグ、買い物用バッグ等が挙げられる。また、本発明における帆布とは、目付227g/m2以上の厚布全般を意味し、例えば、帆船の帆や、気球、パラグライダー、ハンググライダー用材料、建築材料、家具材料、前掛け等が挙げられる。また、本発明における土木用シートとは、各種土木工事において使用されるシート状の繊維構造体全般を意味し、例えば、被覆材料、フィルター材料、透水材料、保護材料、基礎材料、擁壁材料、地盤改良材料等が挙げられる。
本発明の産業資材用繊維構造体は、ネットの形態の場合には、特に限定されず用途によって編網設計を異にするが、横編、トリコット編、ラッセル編、無結節網や蛙又網等を適宜用いることができる。また、編目の形状も、特に限定されず、通常は四角形、六角形および菱形等が用いられる。この場合、目合いは5〜200mmであることが好ましい。5mm未満では、軽量性が不足すると同時に、製品の使用の際に目詰まりを起こしやすい。また、200mmを越える場合には、土砂や落下物、飛来物の捕捉といったネットとして性能が不十分となる。
ネットの形態としては、特に、軽量性が求められる安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、護岸吸い出し防止ネット、スポーツ用ネット、漁網の用途に好適に用いることができる。更に、難燃性の求められる安全ネット、養生ネット等の建設工事用ネットに用いる場合は、ポリ乳酸繊維中に2官能性リン化合物を0.1〜1.5重量%含有させることが好ましい。或いは、ネットの形態にした後で、塩化ビニルや尿素系等の難燃性の樹脂でコーティングやラミネート、ディッピングを行うこともできる。また、完全生分解型のネットとするには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような生分解性樹脂を用いて、コーティングやラミネート、ディッピングすることも好適である。
本発明の産業資材用繊維構造体を用いた場合には、特に軽量性に優れることから、運搬性や施工時の作業性が従来の産業資材用繊維構造体に比べて格段に向上する。更に、その他の性能面でも、高中空率のポリ乳酸繊維によって嵩高性や保温性に優れる、或いは、耐摩耗性の優れたポリ乳酸繊維を用いることによって、繊維同士の擦れはもちろんのこと、例えば土砂や石、岩、コンクリート、その他落下物や飛来物等との擦れや重機等による踏みつけによる損傷を受けにくく、極めて優れた耐久性を有するといった特徴が挙げられる。また、その一方で、一定の使用期間を過ぎた後は、土中に埋められたまま、あるいは回収しコンポスト化すれば生分解され、最終的にはほぼ完全に分解するため、環境負荷の少ない産業資材用繊維構造体として各種用途で有用される。本発明の産業資材用繊維構造体は、上記特徴から、例えば、袋物、テント、ターポリン、帆布もしくは土木用シート用途の織布、安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、護岸吸い出し防止ネット、スポーツ用ネット、漁網等に好適に用いられる。
次に、本発明のポリ乳酸繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸繊維の製造方法は、中空率が11〜70%のポリ乳酸繊維を溶融紡糸して製造する方法において、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことを特徴とする。
上記本発明にかかるポリ乳酸繊維の製造プロセスを詳述するため、典型的な直接紡糸延伸装置の一例を図1に示した。
まず、本発明のポリ乳酸繊維の原料となるポリ乳酸ポリマーは、公知の方法を用いて合成できるが、ポリ乳酸自体の色調が良好で、しかもラクチド等の残存オリゴマーやモノマーを減じるようにすることが好ましい。具体的手法は例えば特表平7−504939号公報記載のように、金属不活性化剤や酸化防止剤等を使用したり、重合温度の低温化、触媒添加率の抑制を行うことが好ましい。また、ポリマーを減圧処理したり、クロロホルム等で抽出することにより、残存オリゴマー、モノマー量を大幅に低減することもできる。
本発明におけるポリ乳酸繊維の製造に用いるポリ乳酸は、相対粘度が好ましくは2.5〜5、より好ましくは、3.5〜4.5の範囲の高粘度ポリマーを用いる。相対粘度が2.5未満のポリマーを用いた場合は、本発明の高強度で耐摩耗性に優れたポリ乳酸繊維を安定して得ることができないことがある。一方、相対粘度が5を超える高粘度のポリマーを用いると、安定した製糸が困難であり、均一性に優れたポリ乳酸繊維が得られないことがある。ポリ乳酸ポリマーは、ポリマー中の水分が0.1重量%以下として溶融紡糸に供するため、通常80〜130℃で5時間以上乾燥して水分を除去する。
本発明におけるポリ乳酸繊維に脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を含有させる方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法を採用することができる。まず、混練工程として、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を乾燥した後、窒素シールされた混練用エクストルーダに供給して混練チップを作製する。次に、この混練チップをエクストルーダに供することによって溶融紡糸を行う。混練工程では、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を高比率で含有した混練チップを作製し(マスターチップ化)、これを紡糸機に供する際に脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤が所望の含有量になるように通常のポリ乳酸チップをブレンドして希釈する方法を用いることができる。また、溶融紡糸工程では、エクストルーダとパックの間、またはパック内に静止混練器を設置することにより、ポリ乳酸と脂肪酸アミドや原着糸用着色剤をさらに微細に混練させることも可能である。脂肪酸アミドや原着糸用着色剤の凝集や、繊維表面へのブリードアウトはガイド類やローラーの汚れによる操業性の低下を引き起こしたり、繊維製品の物性斑や染色斑を引き起こすため、混練工程や溶融紡糸工程では、脂肪酸アミドや原着糸用着色剤をポリ乳酸に微分散させることが好ましい。
また、混練と溶融紡糸を同一工程で行っても良く、例えば次のような方法を用いることもできる。第1の方法は、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を乾燥した後、窒素でシールされたエクストルーダに供給し、エクストルーダにより混練されたポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤の混練ポリマー融液を、静止混練器によりさらに微細に混練し、吐出孔から吐出し溶融紡糸する方法である。また、第2の方法は、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を別々に溶融し、融液を静止混練器により微細に混練し、吐出孔から吐出し溶融紡糸する方法である。
脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは、ブレンドポリマーの全量に対して、好ましくは0.1〜5重量%含有させる。該脂肪酸アミドの含有量を0.1重量%未満では、繊維の表面摩擦係数を低減することができず、製織や製編工程での工程通過性を向上させることができにくくなる。また、該脂肪酸アミドの含有量が5重量%を超えると、混練や紡糸の際に、過剰の脂肪酸アミドが溶融ポリマーからブリードアウトし、これが昇華或いは分解して発煙を引き起こすといった作業環境の悪化や、過剰の脂肪酸アミドの昇華物あるいは分解物によって押し出し混練機や溶融紡糸機が汚れる等の操業性の低下を防ぐことができなくなる。また、該脂肪酸アミドの含有量が5重量%を超えると、紡糸工程で、脂肪酸アミドの溶融ポリマーからのブリードアウトが抑制されず、それによって、吐出孔からのポリマーの吐出が不安定となり、均一な物性の繊維が得られにくくなる。該脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは0.5〜3重量%である。なお、本発明では、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらは従来技術の脂肪酸モノアミドに比べて、昇華しにくく、また耐熱性に優れるため、好ましい滑剤である。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから好ましく用いることができる。
また、原着糸用着色剤は、ブレンドポリマーの全量に対して、好ましくは100〜30000ppm、より好ましくは500〜10000ppm含有させれば良い。原着糸用着色剤の含有量を100ppm以上とすることで、斑が無く、且つ所望の色に着色された繊維を製造することができる。また、30000ppm以下とすることで、着色剤の凝集によって生じる溶融紡糸・延伸、或いは製織、製編工程での糸切れによる工程不安定化を回避することができる。また、着色剤の凝集を抑制するために、着色剤を通常用いられる分散剤と併用して用いることもできる。
本発明におけるポリ乳酸繊維を溶融紡糸・延伸して製造するに際して、紡糸温度は、190〜260℃、好ましくは200〜240℃である。
また、本発明のポリ乳酸繊維用口金は、例えば、図2に示した口金孔を有する口金を用いることによって達せられる。口金孔の形状は、図2に示したものに限定されず、ポリ乳酸ポリマーの溶融粘度、紡糸温度、口金下の徐冷条件および冷却固化条件を考慮し、目的とする中空率が得られるよう設計したものを用いる。高中空率の観点から、スリット幅/スリット直径の比は小さいものが好ましく、好ましくは0.05〜0.40、より好ましくは0.05〜0.25が良い。スリット幅/スリット直径の比が0.05未満であると中空率が高くなり過ぎて、延伸工程や製織、製編工程で中空が潰れる場合があり好ましくない。また、0.40を超えると十分な中空率とならないため本発明の効果が得られず好ましくない。スリット幅は、好ましくは0.1〜0.6mm、より好ましくは0.2〜0.5mm、スリット直径は好ましくは0.5〜4.0mm、より好ましくは1.0〜3.0mmとすれば良い。さらに、前述の通りポリ乳酸はそのポリマー気質により変形度が高いため、スリットから吐出されたポリマーは熱緩和が少なくそのままの形状を保とうとする傾向にある。このことから、スリット数が2や3の場合には、丸形中空を取りにくく、高中空率を達成できないことがある。従って、好ましいスリット数は4以上、或いは1(C型孔)である。スリット数が10以上では、口金設計が煩雑となり、工業的観点から現実的でない。
口金孔の形状は、図2に示したものに限定されず、ポリ乳酸ポリマーの溶融粘度、紡糸温度、口金下の徐冷条件および冷却固化条件を考慮し、目的とする中空率が得られるよう設計したものを用いれば良い。例えば、Y型中空断面糸、田型中空断面糸の場合には、それぞれ図3、4のような口金設計にすれば良い。
本発明のポリ乳酸繊維の製造方法においては、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことが必要である。発明者らは、下記の通りの観点から、該工程が本発明の特徴とする高強度と高中空率を兼備したポリ乳酸繊維を製造するに際し、必要不可欠であると考える。
一般に、溶融紡糸によって中空繊維を製造するにあたり、結晶性高分子を使用した場合には、紡糸口金孔より紡出された中空の糸条は、分子鎖の熱緩和によって徐々に中空部が埋まってしまうことが知られている。よって、高い中空率を得ようとすると、直ちに冷風を吹きつけて急冷固化することが必要である。しかしながら、紡出糸条を急冷すると溶融状態から固化するまでの領域が狭くなり、その狭い領域で紡糸張力を受け持つため、糸条の細化変形が急激に起こる。その結果、分子鎖が高度に配向し、未延伸糸は配向・結晶化の進んだものしか得られない。このような未延伸糸の場合、高倍率延伸ができず、高配向で高強度の延伸糸は得られない。また、口金直下での急激な冷却は、冷却の不均一を生じる原因ともなり、これによっても高倍率延伸による高強度化が困難となる。従って、高中空率と高強度を兼備するポリ乳酸繊維は通常のポリ乳酸の製造方法では到底得ることができないものであった。しかるに、本発明のポリ乳酸繊維は、紡糸口金の直下を前記の通り高温雰囲気に保ち、紡出糸条を通過させることによって、糸条は徐々に冷却されるため分子鎖の急激な配向は起こらず、低配向の未延伸糸が得られ、その結果高倍率延伸ができ、高強度繊維が得られる。本発明のポリ乳酸繊維は、かかる口金直下に徐冷ゾーンを設けて徐々に冷却しても、十分中空率が保持できることが特徴である。ポリ乳酸ポリマーが比較的高重合度で、本発明の紡糸温度では高溶融粘度であること、および紡糸温度と融点との差(約20〜90℃)が比較的大きいこと、および融点が低いにも拘わらずガラス転移温度が比較的高く、比較的繊維構造が固定され易いこと等、ポリ乳酸ポリマーの特徴を活かして紡糸条件を設定することによって達成されるものと考える。
本発明の高中空のポリ乳酸繊維は非常に軽量であるため、中空でない通常のポリ乳酸繊維に比べると、紡糸工程において外気の影響を受けやすく、特に口金直下から冷却固化されるまでの紡出糸条の走行性が不安定である。そして、これによって糸揺れや糸切れが発生し、得られる繊維に物性斑が生じたり、操業性が悪くなることがある。しかるに、本発明においては、紡出糸条の走行安定性を保つために、紡出糸条をある一方向からではなく、周囲全体から均一に、また最適化された温度と速度の冷却風で冷却するという観点から、紡出糸条に対して、環状型吹き出しタイプの空冷装置にて10〜50℃の冷却風を風速10〜50m/分で吹き付けることによって、冷却固化させることが好ましい。
冷却固化された未延伸フィラメントは、次いで油剤が付与される。油剤は、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含むが、ポリ乳酸繊維に活性な成分を除いた油剤組成とすることが必要である。好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤である。
油剤を付与された未延伸フィラメント糸条は、引き取りロール(1FR)に捲回して引き取る。引き取りロールの速度、即ち紡糸速度は好ましくは300〜3000m/分である。300m/分未満の紡糸速度でも本発明ポリ乳酸繊維の物性は得られるが、生産効率が低いため、工業的には採用し難い。一方、3000m/分を超える紡糸速度では、本発明における高強度のポリ乳酸繊維は安定して得られない。
上記紡糸速度で引き取られた未延伸糸は一旦巻き取られることなく連続して延伸する。引き取りロール(1FR)と同様に、2個のロールを1ユニットとするネルソン型ロールを、給糸ロール(2FR)、第1延伸ロール(1DR)、第2延伸ロール(2DR)、第3延伸ロール(3DR)および弛緩ロール(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%程度のストレッチを行い糸条を集束させる。1FRは好ましくは50〜80℃、より好ましくは55〜70℃に加熱して、引き取り糸条を予熱して次の延伸工程に送る。1DRと2DR間で1段目の延伸を行うが、この時ドローポイント、即ちネッキングポイントは1DRのロール上で、ロールから離れる直前数cm以内に安定して位置するように、2FRと1DRの温度および1段めの延伸倍率を設定する。但しこれらの条件は、未延伸糸の配向の程度を考慮して変化させる必要がある。通常、2FRの温度は好ましくは60〜120℃、より好ましくは90〜110℃とし、1DRの温度を好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜120℃とし、かつ1段目の延伸倍率を、総合延伸倍率の好ましくは10〜70%、より好ましくは20〜50%に設定する。上記条件の範囲でドローポイントが2FRのロール上出口近傍に位置するように設定する。更に、ドローポイントを2FRのロール上出口に位置するように設定するためには該ロールは摩擦の低い梨地ロールであることが好ましい。
2段目の延伸は1DRと2DR間で行うが、2DRは好ましくは110〜150℃、より好ましくは115〜145℃である。2段延伸の場合は総合延伸倍率に対し、1段目の延伸倍率の残りの延伸をこの間で行う。3段延伸の場合は、残りの延伸倍率を2段に分けて行う。3段延伸を行う場合の3DRの温度は好ましくは120〜150℃、より好ましくは125〜145℃である。2段延伸または3段延伸を終った糸条はRRとの間で好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜7%の弛緩処理を行い、熱延伸によって生じた歪みを取るだけで無く、延伸によって達成された高配向構造を固定したり、非晶領域の配向を緩和させ熱収縮率を下げたりすることができる。RRは無加熱ロールまたは、150℃以下に加熱したロールを用いる。通常、熱延伸時に加熱された糸条の持ち込む熱によって、RRは加熱の有無にかかわらず90〜150℃の温度となる。
また、本発明のポリ乳酸繊維の製造方法において、延伸段数は好ましくは2〜5段、より好ましくは3〜5段の多段延伸とすることがよい。延伸段数が1段の場合には高倍率に延伸することができないため、高強度の繊維が得られにくい。また、延伸段数が5段以上となる場合には設備の大型化や製造工程が複雑化するため好ましくない。また、本発明において、トータル延伸倍率は紡糸速度にもよるが、2〜10倍であることが必要である。延伸倍率が2倍未満であると、所望の強度が得られず、また、10倍を超えると、糸切れが多発し工程通過性が悪くなるため好ましくない。
かくして、高強度と高中空率を兼備した本発明のポリ乳酸繊維が得られる。
次に、本発明の産業資材用繊維構造体の一例として、織布を用いた産業資材用繊維構造体の製造方法について説明する。
まず、上記ポリ乳酸繊維を用いて、従来公知の方法で織布を作製する。織布の形態としては、特に限定されないが、平織り、綾織り、サテン織り、絡み織り等、従来公知の形態を適宜採用できる。この時、用途によっても異なるが、織布のカバーファクターが600〜5000、目付が40〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3となるように織り密度を設定すれば良い。その後、得られた織布に対して、必要に応じて不織布との張り合わせや、コーティングやラミネート、ディッピング等の加工を施す。張り合わせる不織布としては、平均繊度1〜20dtex、目付40〜500g/m2の範囲のものが好適である。この不織布を、ニードルパンチ等の公知の方法で織布の片面又は両面に積層する。コーティングやラミネート、ディッピング等の加工についても、従来公知の方法が採用でき、使用する樹脂も用途や要求特性に応じて適宜採用できる。例えば、防水性シートとしては、塩化ビニルやエチレンビニルアルコール(EVA)、ポリウレタンを、また、完全生分解型シートとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような生分解性樹脂を好適に用いることができる。かくして、本発明の織布を用いた産業資材用繊維構造体が得られる。
本発明の産業資材用繊維構造体の一例として、ネット形態の産業資材用繊維構造体の製造方法について説明する。
本発明のネット形態の産業資材用繊維構造体の製造は、用途によって編網設計を異にするが、例えば製網機やラッセル編機等を用いて製造される。具体的には、無結節網や蛙又網機等の製網機を用いて製網する方法や、ラッセル編機によって鎖編糸および挿入糸を用いて編網する方法がある。ネットの編目の形状は、特に限定されず、通常は四角形、六角形および菱形等が用いられる。この時、目合いが5〜200mmとなるように編網設計すれば良い。
例えば、安全ネットの場合、総繊度1100dtexのポリ乳酸繊維を、2〜6本合わせ、下撚りを施し、次に該下撚り糸を2〜8本合糸して下撚りとは反対方向に撚りを施し、合撚糸とする。次いで得られた合撚糸をラッセル編機で編網して、ネットとする。該ネットは熱セットされて用いられるが、通常、110〜130℃で30秒〜3分、好ましくは、115〜125℃で1〜2分間の熱セットが行われる。かくして、本発明のネット形態の産業資材用繊維構造体が得られる。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、本文および実施例中に記述した特性の定義およびの測定方法は以下の通りである。
A.相対粘度
0.5gのサンプルに対し25mLのクロロホルムを加え、5時間かけて攪拌してポリマーを溶解させた後、クロロホルムを加えて50mLに希釈した。希釈溶液を試験温度30℃でSchott AVS500auto viscometerを用いて測定し、下記式に基づいて相対粘度ηrを求めた。
ηr=t/t0
t:溶液の流下秒数
0:溶媒(クロロホルムのみ)の流下秒数
なお、測定は3回行い、その平均値とした。
B.繊度
JIS L1090に準じて測定した。
C.強度、伸度
JIS L1013に準じて測定した。オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で強力を測定した。強度は強力を測定した試料の総繊度で除した値である。
D.乾熱収縮率
JIS L1013に準じて、120℃で測定した。同一試料から3検体採取して測定し、その平均値を求めた。
E.中空率
単糸断面を切断して、光学顕微鏡で100倍の拡大写真を撮り、中空部を含む単糸全体の断面積Sと中空部の断面積Tを求め、下記式にて算出した。
中空率(%)=100×T/S
なお、同一試料5検体の平均値をその試料の中空率とした。
F.カバーファクター
織布のカバーファクターKを下記式によって求めた。
カバーファクターK=D1/2×N+E1/2×M
(ただし、D:経糸繊度(dtex)、N:経糸密度(本/インチ)、E:緯糸繊度(dtex)、M:緯糸密度(本/インチ))
G.見かけ密度
織布の目付(g/m2)及び厚さ(mm)を測定し、下記式にて算出した。厚さは5箇所の平均値を用いた。
見かけ密度(g/cm3)=(目付/厚さ)×10-3
H.軽量性
10人の試験者が、縦2m×横2mの織布またはネットを8つ折りにした状態で両手で持ち上げ、次の指標で官能評価した。
◎:織布またはネットの厚みからは想像がつかない程に非常に軽い。
○:織布またはネットの厚みに反して非常に軽い。
△:織布またはネットの厚みに反してまずまず軽い。
×:織布またはネットの厚みから想像できる通りの重さ。
I.保温性
350mm立方の金属枠を、縦2m×横2mの織布で隙間なく覆い、その内部温度(立方体の中心の温度)を測定できるように温度計を差し込んだ。この内部温度が室温(25℃)で安定するのを確認した後、これを5℃で保たれた冷蔵庫に入れ、3分後の内部温度から、次の指標で評価した。
○:15℃以上20℃未満。
△:10℃以上15℃未満。
×:5℃以上10℃未満。
J.耐摩耗性
織布から直径120mmの試験片を切り出し、ASTM D1175に規定されるテーバー摩耗試験機に取り付け、摩耗輪CS#10、荷重500gとして、500回転摩耗を行った。その後、この試験片の表面摩耗状態を観察し、次の指標で耐摩耗性を評価した。
◎:全く摩耗していない。
○:殆ど摩耗していない。
△:少し摩耗している。
×:かなり摩耗している。
[製造例1](ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で200分間重合を行いポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の相対粘度は4.0であった。
[製造例2](EBAを5重量%含有したポリ乳酸の製造)
P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=95:5(重量比)となるようにEBAを計量して連続的にP1に添加しながらシリンダー温度200℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを5重量%含有したポリ乳酸P2を得た。
[製造例3](SAを5重量%含有したポリ乳酸の製造)
EBAをモノアミドのステアリン酸アミド(SA)[日本油脂社製「アルフローS−10」]に変える以外は製造例2と同様にして、SAを5重量%含有したポリ乳酸P3を得た。
[製造例4](着色剤を15重量%含有したポリ乳酸の製造)
P1:着色剤(カーボンブラック)=85:15(重量比)として、製造例2と同様にして、着色剤を15重量%含有したポリ乳酸P4を得た。
実施例1
真空下100℃×12時間乾燥したP1をホッパー(1)に仕込み、このチップをエクストルーダー(2)で220℃で溶融した後、220℃に加熱されたスピンブロック(3)に設置された紡糸パック(4)に溶融ポリマーを導き、スリット幅(18)0.35mm、スリット直径(19)1.8mm、スリット数4の細孔を192ホ−ル有する口金(5)から紡出した。
口金の直下は、口金面より5cmを上端とし、その上端から30cmの加熱筒(6)とその下に20cmの断熱筒(7)を取り付け、口金直下温度(口金面から20cm下、加熱筒中央部の空気層温度)が230℃となるように加熱筒を加熱した。
断熱筒の直下には環状吹き出し型チムニー(8)を取付け、糸条に30℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け冷却固化した後、油剤を付与した。油剤は、イソC24アルコール/チオジプロピオン酸エステル(40重量%)、C11〜15アルコールAOA/チオジプロピオン酸エステル(30重量%)、トリメチロールプロパンAOAジステアレート(10重量%)、C8アルコールAOA(10重量%)、硬化ヒマシ油(7重量%)、ステアリルアミンEO15(3重量%)を鉱物油で20重量%に希釈した非水系油剤を用いた。
給油装置(9)にて油剤を付与された未延伸糸条は、500m/分の速度で回転する引き取りロ−ル(1FR)(10)に捲回して引取った。次いで、引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りロ−ルと給糸ロ−ル(2FR)(11)との間で1.5%のストレッチをかけた後、引き続いて3段熱延伸を行った後、3.0%の弛緩を与えてから巻き取った。1FRは60℃、、2FRは100℃、第1延伸ロ−ル(1DR)(12)は115℃、第2延伸ロール(2DR)(13)は140℃、第3延伸ロール(3DR)(14)は140℃とし、弛緩ロ−ル(RR)(15)は非加熱とした。
なお、弛緩ロールと巻き取り機(17)の間には交絡ノズル(16)を取り付け、0.2MPaの圧空を噴射することによって繊維に交絡を付与した。1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の34%、2段目、3段目の延伸倍率はともに33%に設定して、トータル延伸倍率7倍として延伸した(図1,2参照)。かくして、丸型中空断面を有する1100dtex−192filのポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維は、中空率が38%と高中空であり、強度5.5cN/dtex、伸度33.3%、乾熱収縮率2.5%と良好な糸物性を示した。
この繊維を4本合糸して4400dtex−768filとし、これを用いて経糸・緯糸ともに9本/インチ、カバーファクター1194、目付320g/m2の平織物を作製した。得られた織布は、見かけ密度0.73g/cm3であり、軽量性に非常に優れていた。
実施例2、3
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。実施例2の繊維は中空率27%、実施例3の繊維は中空率16%と実施例1に比べるとやや低かったが、軽量性、保温性はまずまず優れたものであった。
実施例4
加熱筒の温度を下げて、口金直下温度を100℃に変更し、また、延伸倍率を4.5倍に変更したこと以外は実施例2と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は、強度は2.8cN/dtexとやや低いものの、中空率35%と高中空であり、また織布は軽量性と保温性に優れていた。なお、延伸倍率を5倍以上にすると、毛羽や糸切れが発生し、工程通過性が悪くなった。
実施例5、6
重量比でP1:P2=4:1となるようにチップブレンド(実施例5:EBA1重量%)、または、重量比でP1:P2=1:4となるようにチップブレンド(実施例6:EBAは4重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率で、さらに織布の耐摩耗性は実施例1の織布より優れたものであった。
実施例7
実施例5で得られた織布に次の条件で染色加工を施した。染色加工後の織布の一部から繊維を解き、強度を測定したところ、4.2cN/dtexと染色加工前(5.3cN/dtex)に比べて強度低下が認められたが、耐摩耗性については、良好な結果であった。
<染色加工条件>
・染料:Dianix Navy Blue ERFS 200(2%owf)
・助剤:pH調整剤(0.2g/l)
・温度×時間:110℃×40分
実施例8
重量比でP1:P2:P4=4:1:0.1となるようにチップブレンド(EBA1重量%、着色剤0.3重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率で、織布は軽量性、保温性に非常に優れたものであった。また、耐摩耗性も良好であった。
実施例9
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は中空率15%と実施例8に比べるとやや低く、織布の軽量性と保温性はまずまずの結果であった。
実施例10
重量比でP1:P4=1:0.02となるようにチップブレンド(着色剤0.3重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率、さらに均一に黒色着色されたものであった。
実施例11
重量比でP1:P3=4:1となるようにチップブレンド(SA1重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は強度がやや低いものの高中空率の繊維であった。この低強度化は、脂肪酸モノアミドであるステアリン酸アミドによるポリ乳酸の分子量低下に起因するものと示唆される。
実施例12
実施例1で得られた繊維を4本合糸して4400dtex−768filとし、これを用いて経糸・緯糸ともに4本/インチ、カバーファクター531、目付142g/m2の平織物を作製した。得られた織布は、見かけ密度0.39g/cm3であり、軽量性に非常に優れていたが、実施例1に比べて保温性と耐摩耗性は劣っていた。
比較例1
中実断面用の細孔(孔径0.6mm)を192ホール有する口金を用いたこと以外は実施例1と同様にして、丸型中実断面の1100dtex−192filのポリ乳酸繊維及びその4本合糸からなる織布を得た。得られた織布は、見かけ密度が大きく、軽量性と保温性は悪かった。
比較例2
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は、中空率が5%と低いため、見かけ密度が大きく、織布の軽量性と保温性は向上しなかった。
比較例3
口金直下温度を300℃に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ポリ乳酸繊維及び織布を得た。得られた繊維は、中空率が8%と低いため、見かけ密度が大きく、織布の軽量性と保温性は不十分であった。
比較例4
吐出量を変更したこと以外は比較例1と同様にして、1775dtex−192filのポリ乳酸繊維及びその4本合糸からなる織布を得た。なお、この繊維の単糸断面積は、光学顕微鏡で確認したところ、実施例1の繊維の中空を含む単糸全体の断面積Sとほぼ同じであった。得られた織布の軽量性と保温性は、見かけ密度が大きく、軽量性と保温性は悪かった。
Figure 2005232645
実施例13
実施例1で得られた1100dtex−192filのポリ乳酸繊維をラッセル編機によってフロント7000dtex、バック4700dtexの編み地とし、目付300g/m2、目合い15mmのネットを作製した。得られたネットは、軽量性に非常に優れたものであった。
実施例14
実施例6で得られたポリ乳酸繊維を実施例13と同様にしてネットを作成した。得られたネットは、軽量性に非常に優れたものであった。また、耐摩耗性も良好であった。
実施例15
実施例8で得られたポリ乳酸繊維を実施例13と同様にしてネットを作成した。得られたネットは、軽量性に非常に優れたものであった。また、耐摩耗性も良好であった。
実施例16
目付1250g/m2、目合い4mmに変更したこと以外は、実施例13と同様にしてネットを作成した。得られたネットは、実施例13のネットに比べて軽量性が劣っていた。
比較例5
比較例1で得られたポリ乳酸繊維を実施例13と同様にしてネットを作成した。得られたネットは、従来のネット同様で軽量性に劣るものであった。
Figure 2005232645
この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する直接紡糸延伸装置を示す概略図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。
符号の説明
1:ホッパー
2:押出混練機(エクストルーダー)
3:スピンブロック
4:紡糸パック
5:口金
6:加熱筒
7:断熱筒
8:チムニー
9:給油装置(オイリングローラー)
10:引き取りロール(1FR)
11:給糸ロール(2FR)
12:第1延伸ロール(1DR)
13:第2延伸ロール(2DR)
14:第3延伸ロール(3DR)
15:弛緩ロール(RR)
16:交絡ノズル
17:巻き取り機
18:スリット幅
19:スリット直径

Claims (12)

  1. マルチフィラメントのストレートヤーンからなるポリ乳酸繊維であって、中空率が11〜70%であることを特徴とするポリ乳酸繊維。
  2. 該ポリ乳酸繊維の単糸繊度が1〜25dtex、総繊度が30〜5000dtex、強度が3〜9cN/dtex、および伸度が15〜40%であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸繊維。
  3. 該ポリ乳酸繊維が、原着糸であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸繊維。
  4. 該ポリ乳酸繊維が、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリ乳酸繊維。
  5. 中空率が11〜70%のポリ乳酸繊維を溶融紡糸して製造する方法において、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法。
  6. 該加熱筒および/または断熱筒を通過した紡出糸条を、環状型吹き出しタイプの空冷装置にて10〜50℃の冷却風を風速10〜50m/分で吹き付けることによって冷却固化させることを特徴とする請求項5に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
  7. 溶融紡糸工程前または溶融紡糸工程において、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤をポリ乳酸ポリマーに混合することを特徴とする請求項5または6に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸繊維からなることを特徴とする産業資材用繊維構造体。
  9. 袋物、テント、ターポリン、帆布もしくは土木用シート用途の織布であることを特徴とする請求項8記載の産業資材用繊維構造体。
  10. 前記織布のカバーファクターが600〜5000、目付が40〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3であることを特徴とする請求項9記載の産業資材用繊維構造体。
  11. 安全ネット、養生ネット、落石防止用ネット、防雪ネット、法面保護ネット、護岸吸い出し防止ネット、スポーツ用ネット、漁網のいずれか1種であることを特徴とする請求項8記載の産業資材用繊維構造体。
  12. ネットの目合いが5〜200mmであることを特徴とする請求項11記載の産業資材用繊維構造体。
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