JP6484948B2 - 海島複合繊維 - Google Patents

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Description

本発明は長期保管が可能で、高い高次加工通過性を有した生分解性要素を含んだ海島複合繊維に関するものである。
石油由来の高分子からなる合成繊維は寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性などに優れることから、様々な用途に展開されている。しかしながら、使用後に廃棄された際には自然環境下では容易に分解せず、半永久的に残存してしまう。このため、多くの製品は焼却により処分される。
一方、ポリ乳酸に代表される植物由来の高分子からなる生分解性繊維は自然環境下でバクテリア等により加水分解が進行し、土壌中での廃棄処分が可能となる。このため、石油由来の高分子と比較して、処分時に伴うエネルギーや二酸化炭素排出量を低減できる。
二酸化炭素を起因とした気象変動などの環境問題に注目が集まる中、上記の特性を有した生分解性繊維は、ディスポーザブルのワイピングクロスやマスクといった日用品、包装材やフィルターといった環境・産業資材など広く使用されはじめている。また、人体に埋め込んだ際に吸収されるなどの生体吸収性にも優れることから、縫合糸や人工血管、ドラッグデリバリーシステム基材などの医療用途への展開も進められている。この医薬医療現場での展開としては、近年、細胞や組織を培養するためのスキャフォールドなど再生医療の分野での活用が目立つようになり、ここでは、その対象が細胞などのミクロンオーダーの微細な物体になるため、生分解性繊維を極細化することで必要となる機能を高める場合が多く見受けられる。
生分解性極細繊維を得る手法としては、エレクトロスピニング法や海成分の中に多数の島成分を配した海島複合繊維の利用が挙げられる。
エレクトロスピニング法とは、ポリマーを溶媒に溶かし、ポリマー溶液と対極間に高電圧をかけることで発生する電界を利用して極細繊維からなるシート状物を得る手法である。このエレクトロスピニング法では、1ステップでシート状物を得ることができるという優れた特徴を有しているものの、高電圧の雰囲気下で溶媒を多量に使用する必要があり、設備面の安全性や環境負荷に懸念がある。また、実質的に希薄溶液を電界に頼って吹き飛ばすことになるため、製糸の安定性は高いとは言い難く、繊維径のバラツキが大きくなる他に、繊維径を小さくするのにも限界があった。
一方、海島複合繊維を利用する方法では、一般に海成分を易溶解成分、島成分を難溶解成分とし、繊維あるいは織編物等の繊維製品の状態で海成分を溶出させることにより極細繊維が得られる。この海島複合繊維は、異なるポリマーを溶融混練するポリマーアロイ型と複合口金を活用した複合紡糸型の2種類に分類でき、後者の複合紡糸型では、複合口金で2種類以上のポリマー流を精密に制御することが可能である。このため、複合紡糸型は、極細繊維の元となる島成分の径および複合断面形状を均質に制御できる点で優れた手法である。海島複合繊維を利用して生分解性極細繊維を得るには、島成分を生分解性ポリマーとし、海成分を溶剤等で除去する必要があるが、生分解性ポリマーはアルカリ水溶液などの一般的な溶剤に対する耐性が低く、熱水等で溶解するポリマーを海成分に使用する場合が多い。
特許文献1に島成分をポリ乳酸、海成分を熱水可溶性ポリエステルとした、複合紡糸型の海島複合繊維から極細繊維を得る方法が開示されている。特許文献1の技術においては、確かに、生分解性を示すポリ乳酸からなる極細繊維を製造できる可能性がある。しかしながら、特許文献1で開示されているような熱水可溶性のポリマーは、親水性の第3成分をポリエステルに共重合しているので、軟化点が低く、雰囲気中の水分を吸収し、可塑化する傾向がある。このため、例えば、延伸や仮撚りなどの高次加工において、加熱ローラーや熱板と接触させて100℃以上の加熱処理する場合には、海成分が半溶融して、工程通過性が著しく低下するという課題があった。
また、上記の通り特許文献1の海成分は雰囲気中の水分を吸収して可塑化(軟化)し、巻き糸の状態で糸張力を負荷した状態で放置すると、繊維同士が融着して解舒できなくなる場合がある。よって、一般的な環境雰囲気下での長期保管は極めて困難であり、特に船便などで輸送する場合が多い繊維製品において、この課題は無視できないものである。
以上の観点から、長期保管が可能で、高い高次加工性を有する生分解性要素を含んだ海島複合繊維が求められていた。
特開2011−58124号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決するものであり、本発明の海島複合繊維では、長期保管が可能でありながらも、高い高次加工通過性を有した生分解性の極細繊維を製造可能な複合繊維を提供することにある。
上記目的は以下の手段により達成される。すなわち、
(1)島成分が生分解性ポリマー、海成分が主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対する5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.0〜20.0mol%、およびイソフタル酸成分を0.1〜10.0mol%含み、ポリエステル組成物に対する分子量500〜2000のポリエチレングリコールの含有量が0.1〜20.0wt%であるポリエステル組成物からなり、tanδのピークトップ温度が90℃以上かつピーク値が0.35以下である海島複合繊維。
(2)島成分径が0.1〜10μm、島成分径バラツキが1.0〜20.0%である(1)記載の海島複合繊維。
(3)島成分断面の異形度が1.2〜5.0、異形度バラツキが1.0〜10.0%であることを特徴とする(1)、または(2)のいずれか1項に記載の海島複合繊維。
)(1)から()のいずれか1項に記載の繊維が少なくとも一部を構成する繊維製品。
である。
本発明の海島複合繊維においては、従来技術ではなし得なかった高温多湿の雰囲気下においても、長期間の保管が可能で、かつ、加工条件の制約が少なく高い通過性を持って高次加工が可能な生分解性樹脂を主成分とした海島複合繊維が得られる。
本発明の海島複合繊維を活用すれば、この高次加工性が大きく向上し、生産性が高まるとともに、製品形態の自由度が大きく広がるものである。また、付加的な要素として、この熱的な安定性を確保することにより、一般雰囲気条件下に放置した場合でも、海島複合繊維同士が融着せず良好な解舒性を有するため、長時間放置したサンプルでも加工性に問題はなく、自由に使用が可能となる。
海島複合繊維の島成分の一例の概要図。 本発明の極細繊維の製造方法を模式的に説明するための説明図であり、複合口金の一例であって、図2(a)は複合口金を構成する主要部分の正断面図であり、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの横断面図である。 分配プレートの一例の一部である。 分配プレートにおける分配溝および分配孔配置の一例である。 最終分配プレートにおける分配孔配置の実施形態例である。
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳述する。
本発明の海島複合繊維とは、2種類以上のポリマーが繊維軸に対して垂直方向の繊維断面を形成するものである。ここで、該複合繊維は、一方のポリマーからなる島成分が、他方のポリマーからなる海成分の中に点在する断面構造を有しているものである。
本発明の海島複合繊維は、島成分が生分解性ポリマーである必要がある。この生分解性ポリマーとは、微生物の作用により低分子化合物に分解されるものであり、最終的には水と二酸化炭素に分解される性質を有するポリマーである。
本発明で使用可能な生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどおよび、これらを組み合わせた共重合ポリマーやブレンドポリマーが挙げられる。これらの生分解性ポリマーには、必要に応じて酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲でポリマー中に含んでいてもよい。
生分解性ポリマーは、アルカリ水溶液などの一般的な溶剤に対する耐性が低い。このため、生分解性極細繊維となる島成分を残すために、従来技術においては、ポリマー特性として熱水溶解が可能な共重合ポリエステル(熱水可溶ポリマー)を海成分に使用し、極細繊維を発生させる際には、海成分を熱水にて溶解し、生分解性ポリマーからなる極細繊維を発生させる処理を行っている。しかしながら、従来技術において使用される熱水可溶性ポリマーは、熱水可溶性を担保にするために、その組成に親水成分を含んでおり、結果、ポリマーの軟化点が低く、雰囲気中の水分を吸収して可塑化する特性の変化をともなう。よって、熱水可溶性ポリマーを海成分に使用した海島複合繊維は、仮撚りなどの高次加工において、加熱ローラーや熱板と接触させて高温加熱処理する場合、海成分が半溶融して、糸同士の融着や加熱ローラーへの巻き付きなどを起こし、工程通過性が著しく低下する場合がある。また、海成分が雰囲気中の水分を吸収して軟化するため、巻き糸の状態のような張力がかかった状態で長期間放置すると、繊維同士が融着して解舒できなくなる場合がある。このため、一般的な環境雰囲気下での長期保管が極めて困難となる。このように、従来の生分解性樹脂を主成分とした海島複合繊維においては大きな技術課題があり、その加工方法や保管を含めた取り扱い方法の制約が極めて大きいものであった。
これらの従来技術の課題を解消するべく、本発明者等は鋭意検討し、下記する特異な海成分を採用することで従来技術の課題が解消されることを見出したのである。
本発明では、島成分として生分解性ポリマー、海成分として主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対する5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.0〜20.0mol%、およびイソフタル酸成分を0.1〜20.0mol%含み、ポリエステル組成物に対するポリエチレングリコールの含有量が0.1〜20.0wt%であるポリエステル組成物を用いることが重要となる。
上記組成の内、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の求電子作用により、カルボニル炭素が正電荷を帯びるため、エステルの加水分解が進行する効果を有する。これは海島複合繊維において、後工程で脱海処理を施す場合には、海成分ポリマーを溶解除去する必要があり、海成分を溶解するためのトリガーとして導入するものである。本発明に用いる海成分ポリマーにおいては、下記する他の成分の効果を阻害せず、加水分解を十分に促進できる範囲として、1.0から20.0mol%共重合されていることが必要となる。
また、ポリエチレングリコールは親水性を高め、イソフタル酸が共存することによって、繊維非晶部の構造がルーズとなり、非晶部に水が浸透しやすくなる役割を担っている。但し、これらの成分を単純に組み合わせただけでは、本発明の目的を達成することが非常に難しく、特に、イソフタル酸およびポリエチレングルコールを上記範囲内とすることが重要であることを見出したのである。すなわち、イソフタル酸およびポリエチレングルコールが上記範囲内であれば、融着抑制に効果がある海成分の結晶性を失わない程度の繊維構造の乱れにとどまり、さらに水分の吸収を抑制し、可塑化・融着を抑制することができることを見出したのである。
本発明のイソフタル酸においては、主に脱海工程における海成分の溶出性に寄与し、この成分の効果によって海成分は溶出の妨げになるような粗大な結晶が形成することを抑制する効果を担っている。一方で、高次加工時の加熱処理においては、加熱ローラーへの融着を抑制するためには、ある程度の結晶性を維持していることが好適である。
このような技術思想のもとで、後述する通常想定される製糸条件範囲で形成される繊維構造を考慮すると、本発明の目的を満足するには、イソフタル酸が0.1から10.0mol%海成分の組成に組み込まれていることが必要になる。かかる範囲であれば、ポリマー組成の観点からも、結晶性は失われることがないため、製糸工程における伸長変形によって、配向結晶化等を起こし、脱海工程までを含めた高次加工で良好な工程通過性を有することとなる
本発明においては、通常の雰囲気下で、製糸、高次加工の工程通過性に加えて、長期保管を満足することを目的としており、海成分ポリマーは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびイソフタル酸の共重合成分に加えて、ポリエチレングリコールを0.1から20.0wt%含有していることが重要となる。
すなわち、本発明におけるポリエチレングリコールは、海成分ポリマーの親水性を高め、脱海工程における海成分の溶出を円滑に進める効果を発揮する。一般にポリエチレングリコールが共重合されたポリマーは、水系処理におけるポリマーの濡れ性を高める目的で共重合されるものであり、この観点に基づけば、ポリエチレングリコールの含有率は未反応部分が悪影響を及ぼさない程度に限界まで共重合率を高めることとなる。しかしながら、ポリエチレングリコールが含有されたポリマーは、通常の雰囲気においても、空気中の水分を吸着・吸収し、共重合されたポリマーを可塑化するのである。このため、製糸工程、加熱処理を伴う高次加工工程およびサンプルの長期保管を想定した場合には、このポリマーを海成分とした海島複合繊維は、雰囲気からの水分吸収による可塑化によって、複合繊維同士が融着して解舒性が悪化したり、巻取り後に配向緩和することによって巻き締まりを起こす場合があった。以上のような技術課題に対して、本発明者等は鋭意検討し、上記範囲としたイソフタル酸との併用による解消を試みたところ、ポリエチレングリコールの含有率をポリエステル組成物に対して0.1から20wt%とすることを見出したのである。かかる範囲においては、製糸工程中に海成分が配向結晶化することで、製糸工程中および繊維巻取り後にも、雰囲気からの吸湿を抑制し、海成分が可塑化・融着することなく、更に、製糸工程中に形成された結晶構造によって、熱に対する耐性も付与されることから、高次加工通過性の向上効果に繋がるのである。また、この際、巻取りパッケージにおける融着が抑制されることにより、高次加工時の糸解舒性が維持されることで、単糸切れ等が予防され、本発明の目的を満足する良好な高次加工通過性を達成することができる。
このような観点を推し進めると、本発明に用いる海成分ポリマーでは、ポリエチレングリコールが0.1から10.0wt%含有されていることが好ましく、この際にイソフタル酸は0.1から10.0mol%であることが好適である。また、共重合するマトリクスポリマーがポリエステルの場合には、本発明に用いるポリエチレングリコールは、数平均分子量が500から2000までの範囲で選択されることが好ましく、かかる範囲であれば、ポリエステル内にポリエチレングリコールが満遍なく分散し、ポリエチレングリコールに求める親水性の効果を十分に発揮することができる。更に、ポリエチレングリコールとポリエステルの分子的な相溶性が良である。更に、完全相溶および乾燥工程や紡糸工程におけるポリマーの取扱性という観点も良好である。かかる範囲であれば、ポリエチレングリコールがポリエステル中に完全に相溶しており、他の成分の効果を邪魔することなく存在するため、制約なく本発明の目的を十分に達成されることに加えて、乾燥時のポリマーペレットの融着等も起こりにくい。
上記ポリマーを用いることで高次加工性が向上するなどの熱的な耐性に優れたものになるという効果は、海島複合繊維の動的粘弾性から評価することが可能となる。この効果は上記ポリマーにより改善されるものの、製糸条件等によっても影響を受ける場合がある。このため、本発明の繊維が通常の繊維と同等の高次加工通過性を満足するためには、海島複合繊維のtanδがピークトップ温度90℃以上かつピーク値0.35以下であることが重要である。ここで言うtanδとは動的粘弾性の指標のひとつとして用いられる値であり、損失弾性率に対する貯蔵弾性率の比で表される。このtanδのピークトップ温度およびピーク値は以下のことを表している。すなわち、そのピークトップ温度は非晶領域の分子鎖の運動を拘束する力に対応しており、その温度が高温側へシフトするということは、その材料の分子鎖構造(繊維構造)が加熱雰囲気下で動きにくいことを意味する。また、tanδのピーク値はその温度において拘束されず移動が可能な要素の量に相当し、この値が小さいほど、その温度においてその材料は変形しにくく、可塑化が抑制されていることを意味する。このため、tanδは、実質的な高次加工プロセスにおける熱的安定性の指標として見る事ができ、高次加工通過性や加工の多様性を目的とした本発明の海島複合繊維においては、tanδがかかる範囲である必要がある。
ここで言うtanδとは、動的粘弾性自動測定器を用い、試料をチャック間距離30mmで挟み、0.07g/dtexの張力をかけ、昇温速度3℃/min、周波数110Hzの条件で測定したものである。
上記範囲のtanδのピークトップ温度およびピーク値は、海成分が配向結晶化することにより達成される。一般的な熱水可溶性ポリマーは結晶性が著しく低いことから、これを海成分とした海島複合繊維を延伸等により配向させても配向結晶化が起こらず、分子鎖を拘束する要素が発生しない。このため、上記範囲のtanδのピークトップ温度およびピーク値を達成するのは非常に困難なことである。一方、本発明に用いる共重合ポリエステルであればポリマー特性として結晶性を示すため、これを海成分として海島複合繊維とすることで、その製糸工程において、海成分の繊維構造も高配向化し、配向結晶化が起こる。このため、製糸工程中に生じた結晶により分子鎖が拘束されることで、熱的に安定な構造となり、上記範囲のtanδのピークトップ温度およびピーク値がはじめて達成されるのである。このように配向結晶化した海成分では、tanδによって表されるように熱力学的に非常に安定な構造となるため、例えば雰囲気中の水を吸収しにくく、海成分の軟化による繊維間融着が起こりにくくなる。また、比較的高温での処理となる高次加工においても海成分が半溶融することなく、単糸切れ等が起こりにくくなるため、工程通過性が大幅に向上することとなる。
また、本発明の大きな特長は、上記した海成分での繊維構造はある一定の温度以上で加熱すると、繊維構造が緩和し、熱水でも溶解可能になることにある。このため、従来技術とは異なり、一般雰囲気下での長期保管や多様な繊維形態への加工が可能でありながらも、島成分の生分解ポリマーを劣化させることなく海成分を除去し、極細繊維を発生させることが可能である。この現象を利用すれば、一旦海島複合繊維のまま、最終的な繊維製品の形態に加工しておいて保管しておき、出荷前に加熱処理を含めた脱海処理を行うことで最終製品とする場合には運輸方法やその製品の形態が限定されないなどの多くの工業的な利点も備えている。
本発明の海島複合繊維の島成分径は0.1から10.0μmであることが好ましく、繊維製品における極細化による表面特性や生分解性などの活用や取扱い性の観点から、0.2から5.0μmであることがより好ましい。
ここで言う島成分径とは次のように求めるものである。すなわち、海島複合繊維からなるマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で150本以上の島成分が観察できる倍率として画像を撮影する。1フィラメントで150本以上の島成分が配置されない場合は、数本フィラメントの繊維断面を撮影し、合計150本以上の島成分が観察されればよい。この際、金属染色を施せば、島成分のコントラストをはっきりさせることができる。撮影された繊維断面の各画像から無作為に抽出した150本の島成分の島成分径を測定する。ここで言う島成分径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを意味する。ちなみに、図1中の3は内接円である。図1には本発明の要件の説明を明確にするため、歪んだ島成分の一例を示すが、島成分(図1中の2)に2点以上で最も多く外接する真円(図1中の1)の径がここで言う島成分径にあたる。また、島成分径の値に関しては、μm単位で小数点第2位まで測定し、四捨五入により小数点第1位まで求めるものである。
また、島成分径バラツキは1.0〜20.0%であることが好ましい。係る範囲であれば、局所的に粗大な島成分が存在しないことを意味し、後加工工程における繊維断面内での応力分布が抑制されて、工程通過性が良好なものとなる。特に比較的張力の高い延伸工程や製織工程への効果が大きい。また、脱海処理後の極細繊維も同様に均質なものとなる。
また、環境中あるいは生体内で均一に分解が進行するため、極細繊維の繊維径により生分解速度を制御することができる。このため、生体内での適用部位によって生分解速度の制御が要求されるドラッグデリバリーシステム基材や組織培養スキャフォールド等へ活用することができる。こういった観点から島成分径バラツキは小さいほど好ましく、1.0〜15.0%とすることがより好ましい。ここで言う島成分径バラツキとは、島成分径の測定結果をもとに島成分径バラツキ(島成分径CV%)=(島成分径の標準偏差/島成分径の平均値)×100(%)として算出される値であり、小数点第2位以下は四捨五入するものである。以上の操作を、同様に撮影した10画像について行い、10画像の評価結果の単純な数平均値を島成分径および島成分径バラツキとして算出する。
本発明の海島複合繊維の島成分断面は丸断面であっても、上記した通り、極細繊維とした時に繊維径による生分解性の制御が十分可能であるが、島成分断面を扁平、Y形状、三角や多角形などの異形断面とすることで、極細繊維の表面積が変化するため、繊維径と併せてより細かな生分解性の制御が可能となる。島成分を異形断面とする場合、その異形度が1.2から5.0であり、異形度バラツキが1.0〜10.0%であることが好ましい。ここで言う異形度とは次のように求めるものである。上記した島成分径および島成分径バラツキと同様の方法で、海島複合繊維の断面を2次元的に撮影し、その画像から、島成分断面に外接する真円の径を外接円径(島成分径)とし、さらに、内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点3桁目までを求め、小数点3桁目以下を四捨五入したものを異形度とした。ここで言う内接円とは図1中の一点鎖線(図1中3)を示している。この異形度を同一画像内で無作為に抽出した150本の極細繊維について測定する。本発明で言う異形度バラツキとは、その平均値および標準偏差から、異形度バラツキ(異形度CV%)=(異形度の標準偏差/異形度の平均値)×100(%)として算出される値であり、小数点2桁目以下は四捨五入するものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、異形度および異形度バラツキとした。
ちなみに、異形度は、島成分の切断面が真円あるいはそれに類似した楕円の場合には、1.1未満になるものである。また、従来公知の海島複合口金で紡糸した場合に、海島複合断面において、最外層の部分が、歪んだ楕円となり、異形度としては、1.2以上になる場合があるが、この場合には、異形度バラツキが10.0%を超え、断面形状の均一性が低下することとなる。極細繊維の断面形状が異形であれば、真円と比較して比表面積が異なり、かつ形状のバラツキが小さいため、断面形状の選択により比表面積が変化し、生分解速度を制御することも可能である。このような観点から、異形度が1.5〜5.0であることがより好ましい。また、脱海することで得られた極細繊維はこの異形度が大きくなるほど、真円の極細繊維と比較して、表面特性などが変化する。このため、上記した生分解速度の制御といった観点では、異形度が2.0〜5.0であることが特に好ましい。
また、組織培養スキャフォールドや縫合糸などは適用部位が修復されるまで形態を維持する必要があり、均一な分解性が求められる。また、人工血管等の用途においては、細胞が均一に癒着する必要があり、表面の均質性が重要となる。このような観点から島成分の異形度バラツキが1〜10.0%であることが好ましい。係る範囲にあれば、島成分はほぼ同じ形状を有していることを表す。この断面形状の均質化は、後加工工程でかかる応力を海島複合繊維の断面が均等に担うことを意味している。すなわち、延伸工程において高倍率延伸などして、高い力学特性を付与することが可能となり、また後加工における糸切れや布帛の破れといった工程トラブルを防止することが可能になる。また、発生した極細繊維からなる繊維製品の表面特性は均質となる。
なお、本発明の海島複合繊維では、5.0よりも大きい異形度とすることも可能である。しかしながら、異形度バラツキを抑制するという観点から、実質的に製造可能な異形度は5.0である。
本発明の海島複合繊維は、破断強度が0.5〜10cN/dtexであり、伸度が5〜700%であることが好ましい。ここで言う、強度とは、JIS L1013(1999年)に示される条件でマルチフィラメントの荷重−伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期の繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。また、初期の繊度とは、求めた繊維径、フィラメント数および密度から算出した値、もしくは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。本発明の海島複合繊維の破断強度は、後加工工程の工程通過性や実使用に耐えうるものとするためには、0.5cN/dtex以上とすることが好ましく、実施可能な上限値は10cN/dtexである。また、伸度についても、後加工工程の工程通過性も考慮すれば、5%以上であることが好ましく、実施可能な上限値は700%である。破断強度および伸度は、目的とする用途に応じて、製造工程における条件を制御することにより、調整が可能である。
本発明の海島複合繊維を紡糸する複合口金は、パイプ群が配置された一般の海島複合口金や特開2011−174215号公報に記載の図2〜4に示す部材で構成される複合口金にて溶融紡糸して製造することができる。いずれの場合においても、本発明の海島複合繊維を製造することは可能であるが、用途展開に応じて異形断面の極細繊維や極めて繊維径が縮小化された極細繊維を得るためには、特開2011−174215号公報に記載の複合口金を用いることが好ましい。本発明に用いる複合口金の一例として、図2〜4に示す部材で構成される複合口金について説明する。図2(a)〜(c)は、本発明に用いる海島複合口金の一例を模式的に説明するための説明図であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図であり、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの一部の横断面図である。図2(b)および図2(c)は図2(a)を構成する分配プレート、および吐出プレートであって、図3は分配プレートの平面図、図4は本発明に係る分配プレートの一部の拡大図であり、それぞれが一つの吐出孔に関わる溝および孔として記載したものである。
以下、複合ポリマー流が計量プレート、分配プレートを経て形成され、吐出プレートの吐出孔から吐出されるまでの過程を説明する。
紡糸パック上流からポリマーA(島成分)とポリマーB(海成分)とが、図2の計量プレートのポリマーA用計量孔(7−(a))およびポリマーB用計量孔(7−(b))に流入し、下端に穿設された孔絞りによって、計量された後、分配プレートに流入される。分配プレートでは、計量孔7から流入したポリマーを合流するための分配溝8(図3 8−(a)および8−(b))とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔9(図4 9−(a)および9−(b))が穿設されている。また、複合ポリマー流の最外層に海成分であるポリマーBから構成される層を形成するため、図3に示すような分配孔を底面に穿設した環状溝13が設置される。
この分配プレートから吐出されたポリマーAおよびポリマーBによって構成された複合ポリマー流は、吐出導入孔10から吐出プレート6に流入される。次に、複合ポリマー流は、所望の径を有した吐出孔に導入する間に縮小孔11によって、ポリマー流に沿って断面方向に縮小され、分配プレートで形成された断面形態を維持して、吐出孔12から紡糸線に吐出される。
本発明の海島複合繊維を紡糸する際に用いる生分解性ポリマーと上記した組成の共重合ポリエステル成分の比率は、吐出量を基準に海/島比率で5/95〜95/5の範囲で選択することができる。この海/島比率のうち、島比率を高めると極細繊維の生産性という観点から、好ましいと言える。但し、海島複合断面の長期安定性という観点から、本発明の極細繊維を効率的に、かつ安定性を維持しつつ製造する範囲として、この海島比率は、10/90〜50/50が好ましい。
本発明の海島複合繊維における島数は、実質的に実施可能な範囲として、2〜10000島が好ましい範囲である。本発明の海島複合繊維を無理なく満足する範囲としては、100〜10000島が更に好ましい範囲であり、島充填密度は、0.1〜20島/mmの範囲であれば良い。この島充填密度という観点では、1〜20島/mmが好ましい範囲である。ここで言う島充填密度とは、単位面積当たりの島数を表すものであり、この値が大きい程多島の海島複合繊維の製造が可能であることを示す。ここで言う島充填密度は、1吐出孔から吐出される島数を吐出導入孔の面積で除することによって求めた値である。
本発明の海島複合繊維を紡糸する際の紡糸温度は、2種類以上のポリマーのうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため、好ましい。
本発明の海島複合繊維を紡糸する際の海島複合ポリマーの吐出量は、安定して吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/hole〜20g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa〜40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
このように吐出された海島複合ポリマー流は、冷却固化されて、油剤を付与されて周速が規定されたローラーによって引き取られることにより、海島複合繊維となる。この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定すればよいが、本発明の海島複合繊維を安定に製造するには、引取速度100〜7000m/minの範囲とすることが好ましい。本発明の海島複合繊維の海成分ポリマーは親水成分を含むため、紡糸工程において繊維構造をより配向させることが好ましく、引取速度1000m/min以上で引き取ることがより好ましい。かかる範囲であれば、海成分の構造が高配向化することで結晶化が促進され、引取中に大気中の水分を吸収する等の可塑化効果が予防されることで、従来の課題であった海島複合繊維同士の融着による解舒不良等は大幅に抑制されることとなる。また、本発明者等の検討において、以上の効果と製糸性(紡糸の安定性)のバランスが良好な範囲は、引取速度1000〜4000m/minの範囲であり、本発明においては、特に好ましい範囲として挙げることができる。
本発明の海島複合繊維は、海成分の配向結晶化を進行させるという観点から、一旦巻き取られた後で延伸を行うことも良いし、一旦、巻き取ることなく、引き続き延伸を行うことも良い。この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラーからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下の温度に設定された第1ローラーと結晶化温度相当とした第2ローラーの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、複合繊維の動的粘弾性測定を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として、選択すればよい。ここで、本発明の海島複合繊維では、海成分の配向を維持させることが必要であり、こうした観点から、熱セット温度は120℃以下であることが好ましい。また、延伸倍率を高め、力学物性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
本発明の海島複合繊維では、海成分を配向結晶化させることが必要であり、こうした観点から、海島複合ポリマー流が口金吐出孔から吐出されてから、引き取られるまでの紡糸ドラフト率と延伸倍率を掛け合わせた総ドラフト率(紡糸ドラフト率×延伸倍率)が450以上であることが好ましい。ここで、延伸工程を経ず、紡糸引き取り工程のみの場合は延伸倍率を1として総ドラフト率を算出する。
本発明の海島複合繊維および本発明の海島複合繊維から得られる極細繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な中間体として、様々な繊維製品とすることが可能である。ここで言う繊維製品は、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、マスク、ワイピングクロスや健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や縫合糸、スキャフォールド、ドラッグデリバリーシステム基材、人工血管、血液フィルターなどの医療用途である。
以下実施例を挙げて、本発明の海島複合繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s−1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
海島複合繊維の100mの重量を測定し、100倍することで繊度を算出した。これを10回繰り返し、その単純平均値の小数点第2位を四捨五入した値を繊度とした。
C.繊維の力学特性
海島複合繊維をJIS L1013(1999年)に示される条件でオリエンテック社製引張試験機 テンシロン UCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/minの条件で応力−歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで破断強度を算出し、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。また、得られた応力−歪曲線の初期立ち上がり部分を直線近似し、その傾きから弾性率を求めた。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、小数点第2位を四捨五入した値である。
D.動的粘弾性測定(tanδ)
オリエンテック社製レオバイブロン DOV−II−EPを使用し、海島複合繊維の動的粘弾性測定を実施した。チャック間距離30mmで試料を挟み、0.07g/dtexの張力をかけ、昇温速度3℃/min、周波数110Hzの条件で測定したときのtanδのピークトップ温度およびピーク値を評価した。
E.島成分径、島成分径バラツキ(CV%)
海島複合繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)日立製作所製 H−7100FA型透過型電子顕微鏡(TEM)にて島成分が150本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に選定した150本の島成分を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて全ての島成分径を測定する。測定は、全て10ヶ所の各写真について行い、10ヶ所の平均値とし、μm単位で小数点第2位まで測定し、四捨五入により小数点第1位まで求めたものである。
島成分径バラツキは、島成分径の平均値および標準偏差から、島成分径バラツキ(島成分径CV%)=(島成分径の標準偏差/島成分径の平均値)×100(%)として小数点以下は四捨五入算出する。
F.異形度および異形度バラツキ(CV%)
上記した島成分径および島成分径バラツキと同様の方法で、海島複合繊維の断面を撮影し、その画像から、切断面の各島成分に外接する真円の径を外接円径(島成分径)とし、さらに、内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点3桁目までを求め、小数点3桁目以下を四捨五入したものを異形度として求めた。この異形度を同一画像内で無作為に抽出した150本の極細繊維について測定し、その平均値および標準偏差から、下記式に基づき異形度バラツキ(CV%)を算出した。この異形度バラツキについては、小数点2桁目以下は四捨五入するものである。
異形度バラツキ(CV%)=(異形度の標準偏差/異形度の平均)×100(%)。
G.高次加工性(加熱加工における糸切れ回数)
海島複合繊維の高次加工性は3kg巻きパーンを加熱加工したときの糸切れ回数により3段階評価した。加熱加工条件は、加工速度500m/min、速度比1.05倍とした一対のローラー間に、走行糸条に押し当てるように設置した熱板温度130℃(熱板長2.0m)にて加熱処理した際の単糸切れを含めた糸切れ回数から高次加工性を評価した。
仮撚り加工の操業への支障を最小限に抑えられる範囲として、加工時の糸切れ回数が4回以下となることを好適な範囲とした。さらにこの糸切れ回数が1回以下であれば、仮撚り加工の操業への支障がないと言えるので、優れた高次加工通過性を有すると判定した。
◎:優(糸切れ回数0〜1回)
○:良(糸切れ回数2〜4回)
×:不可(糸切れ回数5回以上) 。
H.長期保管性評価(解舒での糸切れ回数)
海島複合繊維の長期保管性は、延伸後に25℃、60%RHの環境で1週間保管した3kg巻きパーンを500m/minで解舒した時の糸切れ回数から解舒性を3段階評価した。1週間保管した海島複合繊維の解舒時の糸切れ回数が4回以下であれば、作製後1週間経過した海島複合繊維を使用しても、高次加工での解舒要因による操業への支障を最小限に抑えられることとなり、本発明で言う良好な長期保管性を有すると判定した。さらに、この糸切れ回数が1回以下であれば、作製後1週間経過した海島複合繊維を使用しても、高次加工での解舒要因による操業への支障がないといえ、本発明で言う優れた長期保管性を有することとなる。
◎:優(糸切れ回数0〜1回)
○:良(糸切れ回数2〜4回)
×:不可(糸切れ回数5回以上) 。
I.熱処理後の熱水可溶性評価(熱処理後の熱水処理による海成分の重量減量率)
海島複合繊維を150℃で巻返し熱セットした後、浴比100とした脱海浴にて、90℃の熱水で30分間処理した時の溶解性を処理前後の試料重量を測定し、以下の式から海成分の重量減量率を算出し、熱水可溶の可否を判定した。
○:可(海成分の減量率が90.0%以上)
×:不可(海成分の減量率が90.0%未満)
海成分の重量減量率=(処理前の試料重量−処理後の試料重量)/(処理前の試料重量×海成分比率)×100(%) 。
J.極細繊維(島成分)の開繊性
極細繊維の開繊性を確認するため、下記の評価を行った。150℃で巻返し熱セットした海島複合繊維からなる編地を90℃の熱水で浴比100とした脱海浴にて海成分を99%以上溶解除去し、その編地の断面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率1000倍で撮影した。編地の断面を10ヶ所撮影し、その画像から極細繊維の状態を観察した。
極細繊維同士が単独で存在し、バラケタ状態にある場合を開繊性良好「○」とし、画像あたりバンドル(束)が5本未満の場合は「△」、バンドルが5本以上の場合は開繊性が悪い「×」とした。
○:良(開繊性)
△:可(開繊性)
×:不可(開繊性) 。
実施例1
島成分として、ポリ乳酸(PLA 溶融粘度:90Pa・s)と、海成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8.0mol%、イソフタル酸を7.0mol%共重合し、かつポリエステル組成物に対して数平均分子量が1000のポリエチレングリコールを6.0wt%を含有したPET(共重合PET1 溶融粘度:175Pa・s)を260℃で別々に溶融後、計量し、特開2011−174215号公報に記載の図2〜4に示す部材で構成される複合口金を組み込んだ紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、吐出プレート直上の分配プレートには、1つの吐出孔当たり島成分用として、2000の分配孔が穿設されており、孔の配列パターンとしては、図5(c)の配列とした。図3の13に示している海成分用の環状溝には円周方向1°毎に分配孔が穿設されたものを使用した。また、吐出導入孔長は5mm、縮小孔の角度は60°、吐出孔径0.5mm、吐出孔長/吐出孔径は1.5のものである。海/島成分の複合比は40/60とし、吐出された複合ポリマー流を冷却固化後油剤付与し、紡糸速度1250m/minで巻き取り、200dtex−15フィラメント(総吐出量26.0g/min)の未延伸繊維を採取した。巻き取った未延伸繊維を90℃と100℃に加熱したローラー間で延伸速度600m/minとし、3.75倍延伸を行った。得られた海島複合繊維は、53dtex−15フィラメントであった。
該海島複合繊維の力学特性は、強度3.0cN/dtex、伸度27%、弾性率44cN/dtexであった。tanδのピークトップ温度は95℃であり、そのピーク値は0.34であった。また、該海島複合繊維の断面を観察したところ、島成分径は0.3μm、島成分径バラツキは4.1%、異形度は、1.2、異形度バラツキは、3.7%であり、島成分は形状が非常に均質性なものであった。
該海島複合繊維の高次加工通過性評価では、単糸切れおよび全糸切れを起こすことなく、優れた工程通過性を有することがわかった(高次加工性:◎)
また、実施例1で採取した海島複合繊維を延伸後、25℃、60%RHの環境で1週間保管した3kg巻きパーンを500m/minで解舒したところ、複合繊維同士の融着はみられず、通常繊維同等の解舒性を有しており、長期保管性に優れたものであった(長期保管性:◎)。
実施例1で採取した海島複合繊維を150℃で巻返し熱セットしたものを90℃の熱水に30分間浸し、同様に海成分の重量減量率を測定したところ、98.0%と熱水に可溶であった。実施例1で採取した海島複合繊維を150℃で巻返し熱セットしたものを脱海処理したところ、開繊性は良好であった(開繊性判定:○)。結果を表1に示す。
実施例2および実施例3
ポリエチレングリコールの含有率を0.1wt%(共重合PET2 実施例2)、20.0wt%(共重合PET3 実施例3)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例2の海島複合繊維は、実施例1と同様に島成分径および形状の均質性に優れ、高次加工性および長期保管性に優れたものであった(高次加工性:◎、長期保管性:◎)。また、極細繊維の開繊性についても良好なものであった(開繊性判定:○)。
実施例3の海島複合繊維は、実施例1と同様の優れた高次加工性を有していた(高次加工性:◎)が、長期保管後のサンプルは少し風合いが硬化したものであった。複合繊維を観察したところ、マルチフィラメント束で単糸同士が若干融着したものであった。但し、解舒性には問題なく、長期保管評価における糸切れが2回と問題のないレベルであった(長期保管性:○)。結果を表1に示す。
実施例4および参考実施例5
イソフタル酸共重合率を0.1mol%(共重合PET4 実施例4)、20.0mol%(共重合PET5 参考実施例5)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例4の海島複合繊維は、実施例1と同様に島成分径および形状の均質性に優れ、高次加工性および長期保管性に優れたものであった(高次加工性:◎、長期保管性:◎)。また、極細繊維の開繊性についても良好なものであった(開繊性判定:○)。
参考実施例5の海島複合繊維は、高次加工性評価での糸切れが2回あったものの、問題のないレベル(高次加工性:○)であり、長期保管性については優れたものであった(長期保管性:◎)。結果を表1に示す。
参考実施例6
イソフタル酸共重合率を20.0mol%、ポリエチレングリコール含有率を20.0wt%(共重合PET6)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
参考実施例6の海島複合繊維は、高次加工性評価での糸切れが3回あったものの、許容できるレベルであった(高次加工性:○)。長期保管後のサンプルは少し風合が硬化したものであり、マルチフィラメント束で単糸同士が若干融着したものであることを確認した。但し、解舒性に問題なく、長期保管性評価における糸切れが3回と許容できるレベルであった(長期保管性:○)。結果を表1に示す。
Figure 0006484948
比較例1
ポリエチレングリコール含有率を25.0wt%に変更した海成分ポリマー(共重合PET7)を用い、延伸倍率を4.00倍に変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。
比較例1の海島複合繊維は、ポリエチレングリコールの共重合比率を高めたため、軟化点が低下し、tanδピークトップ温度が80℃、そのピーク値も0.36であり、実施例1と比較して耐熱性が大きく低下するものであった。このため、高次加工性評価において、糸切れが10回と多発し、高次加工性の評価は不可(×)であった。また、長期保管性に関しては、過剰に添加したポリエチレングルコールが悪影響を及ぼし、解舒性が悪く、糸切れが8回と多発した(不可:×)。結果を表2に示す。
比較例2
イソフタル酸共重合率を25.0mol%に変更した海成分ポリマー(共重合PET8)を用い、延伸倍率を2.00倍に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
比較例2の海島複合繊維は、イソフタル酸を過剰に共重合したために、海成分ポリマーの力学特性が大幅に低下し、海島複合繊維の力学特性は大きく低下したものであった。このため、実施例1と比較して大幅に延伸倍率を低下させ、採取した海島複合繊維の耐熱性は低く、高次加工性評価では糸切れが多発するものであった(不可:×)。結果を表2に示す。
比較例3
5−ナトリウムスルホイソフタル酸8.0mol%、イソフタル酸7.0mol%を共重合したPET(共重合PET9 溶融粘度178Pa・s)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。比較例3の海島複合繊維は、tanδピークトップ温度が83℃、そのピーク値も0.25であり、耐熱性に優れたものであるため、高次加工通過性および長期保管性には問題な見られないものの、海成分が全く溶解せず開繊性は不可(×)であった。このため、追加実験として、0.5wt%水酸化ナトリウム水溶液にて90℃処理を実施し、海成分の除去を試みたものの、生分解性ポリマーからなる極細繊維は、ほぼ繊維の形態を有しておらず、比較例3の海島複合繊維から生分解性の極細繊維を製造することは非常に困難なものであることが分かった。結果を表2に示す。
比較例4
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8.0mol%共重合し、ポリエチレングリコールを6.0wt%含有したPET(共重合PET10 溶融粘度176Pa・s)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。比較例4の海島複合繊維は、tanδピークトップ温度が85℃、そのピーク値も0.27であり、耐熱性に優れたものであるため、高次加工通過性および長期保管性には問題な見られないものの、海成分が全く溶解せず開繊性は不可(×)であった。このため、追加実験として、0.5wt%水酸化ナトリウム水溶液にて90℃処理を実施し、海成分の除去を試みたものの、生分解性ポリマーからなる極細繊維は、ほぼ繊維の形態を有しておらず、比較例3の海島複合繊維から生分解性の極細繊維を製造することは非常に困難なものであることが分かった。結果を表2に示す。
比較例5
5−ナトリウムスルホイソフタル酸8.0mol%を共重合したPET(共重合PET11 溶融粘度:188Pa・s)に変更し、延伸倍率を2.70倍としたこと以外は実施例1に従い実施した。比較例5の複合繊維において、実施例1と同様に延伸倍率3.75倍では延伸工程での糸切れが多発したため、比較的安定に延伸が可能となる延伸倍率を2.7倍に設定して実施した。
比較例5で得られた海島複合繊維は、海成分が結晶性であるため、tanδピークトップ温度が87℃、そのピーク値も0.28であり、耐熱性に優れたものであるため、高次加工通過性および長期保管性には問題な見られないものの、海成分が全く溶解せず開繊性は不可(×)であった。このため、追加実験として、0.5wt%水酸化ナトリウム水溶液にて90℃処理を実施し、海成分の除去を試みたものの、生分解性ポリマーからなる極細繊維は、ほぼ繊維の形態を有しておらず、比較例5の海島複合繊維から生分解性の極細繊維を製造することは非常に困難なものであることが分かった。結果を表2に示す。
Figure 0006484948
参考実施例7、実施例8〜9、参考実施例10〜11
海成分に共重合するポリエチレングリコールの数平均分子量を100(共重合PET12 参考実施例7)、500(共重合PET13 実施例8)、2000(共重合PET14 実施例9)、5000(共重合PET15 参考実施例10)、10000(共重合PET16 参考実施例11)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
参考実施例7の海島複合繊維は、高次加工性評価での糸切れが2回と問題のないレベルであった(高次加工性:○)。長期保管後のサンプルは少し風合いが硬化したものであった。複合繊維を観察したところ、マルチフィラメント束で単糸同士が若干融着したものであった。但し、解舒性には問題なく、長期保管評価における糸切れが2回と問題のないレベルであった(長期保管性:○)。
実施例8の海島複合繊維は、実施例1と同様に優れた高次加工性を有し、長期保管性評価においても糸切れが1回と優れたものであった(高次加工性:◎、長期保管性:◎)。
実施例9の海島複合繊維は、実施例1と同様に高次加工性および長期保管性に優れたものであった(高次加工性:◎、長期保管性:◎)。
参考実施例10の海島複合繊維は、実施例1と同様の優れた高次加工性を有していた(高次加工性:◎)が、長期保管後のサンプルは少し風合いが硬化したものであった。複合繊維を観察したところ、マルチフィラメント束で単糸同士が若干融着したものであった。但し、解舒性には問題なく、長期保管評価における糸切れが2回と問題のないレベルであった(長期保管性:○)。
参考実施例11の海島複合繊維は、高次加工性評価において糸切れが2回と問題のないレベルであった(高次加工性:○)。複合繊維同士が若干の融着を起こしていたものの、手で簡単に解舒できる範囲であり、長期保管性において単糸切れが見られたが、問題のないレベルであった(長期保管性:○)。結果を表3に示す。
参考実施例12およ13
海成分に共重合するポリエチレングリコールの数平均分子量を90(共重合PET17 参考実施例12)、12000(共重合PET18 参考実施例13)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
参考実施例12の海島複合繊維は、高次加工性評価において糸切れが3回あったものの、許容できるレベルであった(高次加工性:○)。長期保管後のサンプルは単糸同士が若干融着していたものの、解舒できる範囲であり、長期保管性評価での糸切れが4回と許容できるものであった(長期保管性:○)。
参考実施例13の海島複合繊維は、高次加工性評価において糸切れが3回であり、長期保管性評価での糸切れが4回と、いずれの評価においても許容できるレベルであった(高次加工性:○、長期保管性:○)。結果を表3に示す。
Figure 0006484948
実施例14および実施例15
複合繊維のフィラメント数を100(実施例14)または36(実施例15)に変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。
実施例14の海島複合繊維は、tanδピークトップ温度が95℃、そのピーク値も0.34であり、耐熱性に優れるものであり、高次加工通過性は良好なものであった(◎ 糸切れ回数:2回)。また、解舒性においても、糸切れが1回みられたものの、ほぼ実施例1と同様の特性を有したものであった。
実施例15の海島複合繊維は、高次加工および長期保管性のいずれの評価においても、糸切れがなく、実施例1同様に優れた特性を有するものであった。
また、実施例15では僅かにバンドルの存在を確認したが、いずれの海島複合繊維も後加工性が良好なものであった。結果を表4に示す。
実施例16
吐出プレート直上の分配プレートにおいて、1つの吐出孔当たり島成分用として、200の分配孔に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例16の海島複合繊維においては、高次加工性および長期保管性に優れるものであった。また、極細繊維の開繊性についても良好なものであった。結果を表4に示す。
実施例17および実施例18
実施例1に記載される方法から、総吐出量を40g/min、フィラメント数を18に変更し、吐出プレート直上の分配プレートにおいて、1つの吐出孔当たり島成分用として、12(実施例17)または3(実施例18)の分配孔に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例17の海島複合繊維は、実施例1と同様に高次加工性および長期保管性に優れるものであった。
実施例18の海島複合繊維は、高次加工性評価において、糸切れが1回見られたが、問題のないレベルにあり、作製1週間後の解舒においては糸切れ回数が2回と長期保管性についても良好なものであった。結果を表4に示す。
Figure 0006484948
実施例19
実施例1に記載される方法から吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(c)の配列としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例19の海島複合繊維の島成分は断面形状が真円であった(異形度:1.0)。高次加工性および長期保管性に優れたものであり、脱海後の極細繊維について、僅かにバンドルが確認されたものの、問題のないレベルであった。結果を表5に示す。
実施例20
実施例1に記載される方法から吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(a)の配列としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例20の海島複合繊維の島成分は断面形状が正方形であった(異形度:1.5)。高次加工性および長期保管性に優れたものであり、脱海後の極細繊維の開繊性も良好なものであった。結果を表5に示す。
実施例21
実施例1に記載される方法から吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(b)の配列としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例21の海島複合繊維の島成分は断面形状が正三角形であった(異形度:2.0)。高次加工性および長期保管性に優れたものであ、脱海後の極細繊維の開繊性も良好なものであった。結果を表5に示す。
実施例22
実施例1に記載される方法から吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(d)の配列としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例22の海島複合繊維の島成分は断面形状がY形であった(異形度:5.0)。高次加工性および長期保管性に優れたものであり、脱海後の極細繊維の開繊性も良好なものであった。結果を表5に示す。
実施例23
特開2001−192924号公報で記載される従来公知のパイプ型海島複合口金(島数2000)を使用し、実施例1に記載の条件で製糸を行った。
実施例23の海島複合繊維では、高次加工性および長期保管性に優れたものであり、脱海後の極細繊維の開繊性も良好なものであった。但し、実施例12の海島複合繊維においては、島成分径バラツキおよび異形度バラツキが実施例1と比較すると大きいため、脱海加工時に極細繊維の若干脱落しているのが確認されたが、問題のないレベルであった。結果を表5に示す。
Figure 0006484948
実施例24
紡糸速度を3000m/minとし、延伸倍率を2.30倍に変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。実施例24においては、実施例1と同様に島成分径および形状の均質性に優れ、高次加工性および長期保管性に優れたものであった。また、極細繊維の開繊性についても良好なものであった。結果を表6に示す。
比較例6
海成分ポリマーを、5−ナトリウムスルホイソフタル酸13.0mol%およびイソフタル酸26mol%を共重合したPET(共重合PET19 溶融粘度:196Pa・s)としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
比較例6の海島複合繊維は、複合断面の形成や紡糸性には問題がないものの、比較例6のポリマーは非晶性であるため、海島複合繊維のtanδのピークトップ温度が83℃と低く、そのピーク値も0.41と大きいものであった。このため、耐熱性および分子運動性という観点で実施例1と比較して大きく低下したものであり、高次加工通過性の評価においては、熱板によって軟化した繊維がローラーに巻きつくなどして糸切れが多発するものであった(高次加工判定:× 糸切れ回数:20回)。また、巻取り繊維を巻きパッケージのまま1週間放置したサンプルにおいては、複合繊維同士が融着しており、手で繊維を引き出すのも困難な程解舒性が悪いものであった。このため、長期保管性評価においては、糸切れが多発し、判定は不可(×)であった(糸切れ:20回以上)。結果を表6に示す。
比較例7
紡糸速度を3000m/minとし、延伸倍率を2.30倍に変更したこと以外は、比較例6に従い実施した(海成分:共重合PET19)。
比較例7の海島複合繊維は、tanδのピークトップ温度が85℃、そのピーク値も0.40と比較例6と比較すると、耐熱性等の安定性に若干の改善が見られるものの、高次加工性は満足のいくものではなく、更に繊維の解舒性は、比較例6と同様に悪く、長期保管性は依然低いものであった。結果を表6に示す。
実施例25および実施例26
総吐出量は変更せず、海成分/島成分の複合比を20/80(実施例25)と50/50(実施例26)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例25および実施例26の海島複合繊維は、高次加工性および長期保管性に優れるものであった。また、脱海後の極細繊維の開繊性においては、実施例26(島比率50%)は良好な開繊性であり、実施例25(島比率80%)にて若干のバンドルが確認されたが、問題のないレベルであった。結果を表6に示す。
実施例27
島成分をポリグリコール酸(PGA 溶融粘度:240Pa・s)に変更したこと以外は実施例1に従い実施した。
実施例27の海島複合繊維は、実施例1と同等の優れた高次加工性および長期保管性にも優れたものであった。また、脱海後の開繊性に関しても良好なものであった。結果を表6に示す。
Figure 0006484948
本発明の海島複合繊維により、環境負荷が小さい生分解性の極細繊維が得られ、衣料用途やインテリア用途、また、紙や不織布の形態にして、フィルター、絶縁紙、ワイパー、包装材、衛材等の用途に有用である。また、生体適合性にも優れるため、スキャフォールドや縫合糸、人工血管などの医療用途にも有用である。
1 島成分の外接円
2 島成分
3 島成分の内接円
4 計量プレート
5 分配プレート
6 吐出プレート
7−(a) 計量孔1
7−(b) 計量孔2
8−(a) 分配溝1
8−(b) 分配溝2
9−(a) 分配孔1
9−(b) 分配孔2
10 吐出導入孔
11 縮小孔
12 吐出孔
13 環状溝

Claims (4)

  1. 島成分が生分解性ポリマー、海成分が主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対する5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.0〜20.0mol%、およびイソフタル酸成分を0.1〜10.0mol%含み、ポリエステル組成物に対する分子量500〜2000のポリエチレングリコールの含有量が0.1〜20.0wt%であるポリエステル組成物からなり、tanδのピークトップ温度が90℃以上かつピーク値が0.35以下である海島複合繊維。
  2. 島成分径が0.1〜10.0μm、島成分径バラツキが1.0〜20.0%である請求項1記載の海島複合繊維。
  3. 島成分断面の異形度が1.2〜5.0、異形度バラツキが1.0〜10.0%であることを特徴とする請求項1、または請求項2のいずれか1項に記載の海島複合繊維。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の繊維が少なくとも一部を構成する繊維製品。
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