JP5630254B2 - 複合繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、海島複合繊維に関するものであり、島成分の断面形状が異形でありながらも、その形状の均質性が優れたものである。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は力学的特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されており、産業上の価値は極めて高い。しかしながら、繊維の用途が多様化する現在において、その要求特性も多様なものとなり、しばしば、既存ポリマーでは、対応できない場合がある。これに対して、一からポリマーを分子設計するのでは、コスト的および時間的に課題があり、複数のポリマーの特性を兼ね備えた複合繊維の開発が選択される場合がある。このような複合繊維では、主となる成分を他方の成分が被覆するなどして、単独繊維では達成されない風合い、嵩高性などといった感性的効果、また、強度、弾性率、耐摩耗性などといった力学特性の付与が可能となる。複合繊維にはその形状も含めて、多種多様なものが存在し、その繊維が使われる用途に合わせて、様々な技術が提案されてきた。それらの複合繊維の中でも、海成分の中に多数の島成分を配した、いわゆる海島複合繊維に関する技術開発が盛んに行われている。
海島複合繊維の利用として代表的なものでは、繊維の極細化がある。この場合、易溶解成分の海成分に難溶解成分の島成分を配置しておき、繊維あるいは繊維製品とした後に、易溶解成分を除去することで、島成分からなる極細繊維を採取することができる。この場合、単独の紡糸技術では到達できないナノオーダーの極限的な細さを有した極細繊維を採取することも可能である。単繊維径が数百nmの極細繊維になると、一般の繊維では得ることができない柔軟なタッチやきめ細やかさを利用して、例えば、人工皮革や新触感テキスタイルとして展開される。その他にも、繊維間隔の緻密さを利用し、高密度織物とし、防風性や撥水性を必要とするスポーツ衣料にも使用されている。極細化された繊維は、細かい溝へ入り込み、かつ比表面積の増大や微細な繊維間空隙に汚れが捕捉される。このため、高い吸着性および塵埃捕集性を発現する。この特性を利用し、産業資材用途では、精密機器などのワイピングクロスや精密研磨布として利用されている。
極細繊維の出発原料となる海島複合繊維には、大きく2種類ある。1つにはポリマー同士を溶融混練するポリマーアロイ型、1つには複合口金を活用する複合紡糸型である。これらの複合繊維のうちで複合紡糸型は、口金を利用するため、複合断面を精密に制御できると言う点で優れた手法であると言える。
複合紡糸型の海島複合繊維に関する技術開示では、例えば、特許文献1や特許文献2のように複合口金に特徴がある技術の開示がある。
特許文献1では、難溶解成分の孔の下に、断面方向に拡張された易溶解成分のポリマー溜りを設置し、ここに難溶解成分を挿入することで、一旦芯鞘複合流として、その芯鞘複合流同士を合流後、圧縮して最終孔から吐出する。この技術においては、難溶解成分および易溶解成分ともに、分流流路と導入孔の間に設置された流路幅によって、圧力を制御し、挿入する圧力を均一化することによって、導入孔から吐出されるポリマー量を制御している。このように各導入孔を均一圧力とすることは、ポリマー流の制御という面では、優れたものであるが、最終的に島成分をナノオーダーとするには、少なくとも海成分側の導入孔毎のポリマー量が10−2〜10−3g/min/holeと極めて少なくなることから、ポリマー流量と壁間隔と比例関係にある圧損はほぼ0となり、海成分と島成分のポリマーを精密に制御することは非常に困難なことである。事実、実施例で得られた海島複合繊維から発生する極細糸は0.07〜0.08d程度(約2700nm)であり、ナノオーダーの極細繊維を得るには至っていない。
特許文献2では、易溶解成分と難溶解成分を比較的等間隔で配置した複合流を圧縮と合流を複数回組み合わせることで、最終的には微細な難溶解成分を複合繊維断面に配置した海島複合繊維を得ることが可能であると記載がある。この技術では、確かに海島複合繊維の断面において、内層部では、島成分が規則的に配列されたものとなる可能性がある。しかしながら、複合流を縮小させる際に、外層部には、口金孔壁によるせん断の影響を受けるために、縮小複合流断面方向で流速分布が生まれることとなり、複合流の外層と内層の難溶解成分では、繊維径や形状に大きな差が生まれることとなる。特許文献2の技術において、ナノオーダーの島成分とするためには、最終的な吐出までに、これを複数回繰り返す必要がある。このため、複合繊維断面方向で断面形状の分布が大きな差となる場合があり、島径および断面形状にバラツキが生まれることとなる。
一方、特許文献3においては、口金技術としては、従来公知のパイプ型海島複合口金を用いているものの、易溶解成分と難溶解成分の溶融粘度比を規定することで、断面形状が比較的制御された海島複合繊維を得ることが可能となる。また、易溶解成分を後工程で溶解させることにより、均質な繊維径を有した極細繊維を得ることができると記載されている。しかしながら、この技術においては、パイプ群によって微細に分割された難溶解成分を一旦芯鞘複合形成孔にて、芯鞘複合流とし、合流後縮小させることによって海島複合繊維を得ている。形成された芯鞘複合流は、形成孔吐出後に表面張力によって断面が真円になろうとするため、形状を積極的に制御することは非常に困難なこととなる。このため、島成分の断面形状制御には限界があり、真円かそれに類似した楕円が混在したものとなる。これは、パイプの中空部分の形状を変更したとしても、その効果は非常に小さい。特許文献3の技術においては、島成分の外接円のバラツキとしては、比較的均質なものとなるものの、異形度を有し、かつこの断面形状を均質化することは、至極困難なことであり、用途に合わせた極細繊維ならびにそれからなる繊維製品の設計には大きな制限があるものであった。
例えば、島成分が真円やそれに類似した断面形状であると、単純に製織し、脱海処理するだけでは、円形断面の極細繊維同士が接線で接するために、極細繊維間に繊維径に依存した空隙ができてしまい、さらには繊維径に応じて単純に柔軟性が増大していく。このため、スポーツ衣料の場合においては、ここから水が染み込むなどするため、防水性能には限界があり、かつ布帛が柔軟になるために、不快なベタツキ感や衣類が重くなるなどの問題となる場合があった。また、ワイピングクロスや研磨布用途においても、極細繊維が真円あるいはそれに類似した楕円であるために、汚れや研磨剤が繊維表面で滑ったり、表層にバフ加工などによりあえて立毛した極細繊維が軟弱なため、払拭性能や研磨性能に制限があったり、極細繊維の下に捕らえられた汚れや研磨剤を線(円の接線)で押さえ付けてしまう場合には、非研磨物等を不要に傷つけてしまう場合があった。
このため、ナノオーダーという極限的な細さを有した極細繊維を発生させることができる海島複合繊維において、島成分が異形度を有し、かつその断面形状が均質な海島複合繊維の開発が切望されていた。
特開平8−158144号公報(特許請求の範囲) 特開2007−39858号公報(第1、2頁) 特開2007−100243号公報(第1、2頁)
本発明は、海島複合繊維に関して、上記した課題を解決することを目的とするものであり、島成分が異形度を有し、かつその異形度が揃った海島複合繊維に関するものである。
上記目的は、以下の手段により達成される。すなわち、
(1)海島複合繊維において、島成分の外接円径が10〜1000nmの範囲であり、外接円径バラツキが1〜20%、異形度が1.2〜5.0および異形度バラツキが1〜10%であることを特徴とする海島複合繊維。
(2)島成分の繊維軸と垂直方向の断面において、断面の輪郭が少なくとも2箇所以上の直線部を有していることを特徴とする(1)に記載の海島複合繊維。
(3)直線部の交点の角度θが下記式を満たすことを特徴とする(2)に記載の海島複合繊維。
ここで、nは交点の数(n≧2)である。
(4)直線部の交点が3箇所以上存在することを特徴とする(2)または(3)に記載の海島複合繊維。
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の海島複合繊維を脱海処理することによって得られた極細繊維。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の繊維が少なくとも一部を構成する繊維製品。
である。
本発明の海島複合繊維は、ナノオーダーという極限的に縮小された異形断面の島成分を有し、その島成分の径および断面形状が均質なものである。
本発明の海島複合繊維の特徴は、まず、ナノオーダーの島成分の径および形状が非常に均質であることにある。このため、張力をかけた場合には繊維断面において全ての島成分が同一の張力を担うこととなり、繊維断面の応力分布を抑制することができる。この効果は、例えば、延伸工程、製織工程ならびに脱海処理工程など、比較的高張力がかかる後加工で、複合繊維および極細繊維の糸切れなどが起こりにくいことを意味し、高い生産性で繊維製品を得ることが可能となる。また、脱海処理の処理速度がどの島成分をとっても同一で進行する効果もある。このため、溶媒による部分的な島成分(極細繊維)の糸切れおよび脱落等を抑制することができる。特に繊維径がナノオーダーの場合には、微少な島成分径および形状のバラツキが処理速度に大きく影響するため、本発明の海島複合繊維の第一の特徴が効果的に作用する。
本発明の海島複合繊維の第二の特徴は、ナノオーダーである島成分が、異形度を有している点である。このため、該海島複合繊維から発生する極細繊維は、ナノオーダーの繊維径に加えて、均質に制御された異形断面となる。このため、該極細繊維を用いた繊維製品は、ナノオーダーの繊維が奏でる独特のタッチを有しつつも、極細繊維の断面形状によって、反発性や摩擦係数等といった布帛特性を自由に制御できる。この効果は、衣料用途においては、新感覚のテキスタイルとして活用されるのは言うまでもなく、過酷な使用条件のスポーツ衣料においても、優れた効果を発揮する。特に、本発明の海島複合繊維から得られた極細繊維は最密充填構造による優れた防水透湿性能に加え、部位によって極細繊維の断面形状を変更することにより、布帛が肌に不快に貼り付くのを抑制し、快適性が高い防水透湿衣料となる。また、ワイパークロスやIT用の精密研磨布などに本発明の海島複合繊維より発生した極細繊維は適している。これは、該極細繊維は異形断面であるため、断面のエッジを利用すれば、払拭性能、埃塵捕集性能および研磨特性を円形断面の極細繊維と比較して、飛躍的に向上させることが可能となるためである。また、該極細繊維は、繊維径ならびに断面形状の均質性が優れているために布帛の表面特性が非常に均一になり、不要な傷つけが抑制される。さらに、前述したように布帛の力学特性や表面特性を制御できることから、研磨特性を制御することも可能であり、例えば、押し付け圧などの研磨条件などを調整しなくても、過剰な研磨を抑制したりすることができるのである。
海島複合繊維の島成分の一例の概要図。 本発明の極細繊維の製造方法を説明するための説明図であり、複合口金の一例であって、図2(a)は複合口金を構成する主要部分の正断面図であり、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの横断面図である。 分配プレートの一例の一部である。 分配プレートにおける分配溝および分配孔配置の一例である。 最終分配プレートにおける分配孔配置の実施形態例である。 海島複合繊維断面の一例である。
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳述する。
本発明の海島複合繊維とは、2種類以上のポリマーが繊維軸に対して垂直方向の繊維断面を形成するものである。ここで、該複合繊維は、あるポリマーからなる島成分が、他方のポリマーからなる海成分の中に点在する断面構造を有しているものである。
本発明の海島複合繊維は、第一および第二の要素として、島成分の外接円径が10〜1000nmであり、該外接円径バラツキが1〜20%であることが重要である。
ここで言う外接円径は、以下のように求めるものである。
すなわち、海島複合繊維からなるマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で150本以上の島成分が観察できる倍率として10画像以上撮影する。この際、金属染色を施せば、島成分のコントラストをはっきりさせることができる。繊維断面が撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した150本の島成分の外接円径を測定する。ここで言う外接円径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを意味する。図1には本発明の島成分の概要図を示すが、図1中の破線(図1中の2)で示す円がここで言う外接円にあたる。また、外接円径の値に関しては、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。また、外接円径バラツキとは外接円径の測定結果をもとに外接円径バラツキ(外接円径CV%)=(外接円径の標準偏差/外接円径の平均値)×100(%)として算出される値であり、小数点第2位以下は四捨五入するものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、外接円径および外接円径バラツキとした。
本発明の海島複合繊維では、島成分の外接円径を10nm未満とすることも可能であるが、10nm以上とすることで、製造工程において、島成分が部分的に破断すること等を抑制し、かつ後工程で発生させる極細繊維が過剰に細くなることを予防することができる。一方、本発明の海島複合繊維の目的を達成するためには、島成分の外接円径は1000nm以下とする必要がある。従来技術に対して、払拭性能等を大きく向上させるという観点では、島成分の外接円径が100〜700nmである好ましく、係る範囲であれば、押し付け時に繊維が脱落することもなく、かつ良好に非払拭物の表面の汚れを掻き取る効果がでる。また、研磨性能向上ということも考慮すると、砥粒の粒径が100〜300nm程度であるため、島成分の外接円径は100〜500nmがさらに好ましい範囲であり、IT用途などの精密研磨などにも適したものとなる。また、係る範囲であれば、払拭性能も大きく向上することは言うまでもない。
また、島成分の外接円径バラツキは、1〜20%にする必要がある。係る範囲であれば、局所的に粗大な島成分が存在しないことを意味し、後加工工程における繊維断面内での応力分布が抑制されて、工程通過性が良好なものとなる。特に比較的張力の高い延伸工程や製織工程、更に脱海工程の通過性への効果は大きい。また、脱海処理後の極細繊維も同様に均質なものとなる。このため、極細繊維からなる繊維製品の表面特性や払拭性能の部分的な変化がなくなり、高性能ワイパーや研磨布に活用することができる。こういった観点から島成分の外接円径バラツキは小さいほど好ましく、1〜15%とすることが好ましい。また、高性能なスポーツ衣料やIT用の精密研磨のような更に高精度が必要となる用途には、外接円バラツキが小さいほうが発生させた極細繊維が高密度に集束するため、外接円バラツキが1〜7%とすることが好ましい。
本発明の海島複合繊維は、島成分の異形度が1.2〜5.0であり、さらにこのバラツキが1〜10%と、極めて小さいことが第三および第四の重要な要件である。
ここで言う異形度とは、前述した外接円径および外接円径バラツキと同様の方法で、島成分の断面を2次元的に10画像撮影する。各画像から、外接円径と内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点3桁目までを求め、小数点3桁目以下を四捨五入したものを異形度とした。ここで言う内接円とは図1中の一点鎖線(図1中の3)を示している。この異形度を同一画像内で無作為に抽出した150本の島成分について測定する。本発明の異形度バラツキとは、異形度の平均値および標準偏差から、異形度バラツキ(異形度CV%)=(異形度の標準偏差/異形度の平均値)×100(%)として算出される値であり、小数点2桁目以下は四捨五入するものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、異形度および異形度バラツキとした。
ちなみに、異形度は、島成分の切断面が真円あるいはそれに類似した楕円の場合には、1.1未満になるものである。また、従来公知の海島複合口金で紡糸した場合に、海島複合断面において、最外層の部分が、歪んだ楕円となり、異形度としては、1.2以上になる場合があるが、この場合には、異形度のバラツキが増加するため、本発明の極細繊維を満足しないのである。また、この場合には、外接円径バラツキが同様に増加することは言うまでもない。本発明の海島複合繊維の大きな特徴は、ナノオーダーの島成分径を有しつつも、異形度を有し、すなわち真円とは異なる断面形状であり、かつ島成分の1本1本がほぼ同じ断面形状を有していることに特徴がある。
本発明の海島複合繊維の島成分では、異形度が1.2〜5.0であることが重要である。
島成分の断面が真円あるいはそれに類似した楕円の場合には、脱海処理した際に円の接線で極細繊維同士が接触する。このため、繊維束においては、単繊維間に繊維径に依存した空隙が形成されてしまう。よって、脱海処理の際に海成分の残渣がこの空隙に捉えられてしまう場合がある。この影響で、ナノオーダーの極細繊維を発生させる場合には、比表面積の増大も手伝い、しばしば極細繊維の開繊性が悪化する場合がある。一方、本発明の海島複合繊維は、島成分の異形度が1.2以上である。このため、単繊維が面で接触することが可能となる。結果、不要な空隙ができることなく、海成分の残渣が極細繊維間に残ることが極めて少ない。また、本発明の海島複合繊維の島成分は、後述するように凸部分を有していることも手伝い、ナノオーダーの繊維径を有しつつも、極細繊維の開繊性が優れたものとなるのである。こういった観点では、異形度が1.5〜5.0であることが好ましい。また、発生させた極細繊維はこの異形度が大きくなるほど、従来の真円の極細繊維と比較して、布帛の表面特性や力学特性が変化する。このため、前述した布帛特性の制御といった観点では、異形度が2.0〜5.0であることが特に好ましい。
本発明の海島複合繊維では、5.0よりも大きい異形度とすることも可能である。しかしながら、異形度バラツキを抑制するという観点から、実質的に製造可能な異形度は5.0である。
本発明の海島複合繊維の島成分は、断面形状の輪郭が、少なくとも2箇所以上の直線部を有していることが好ましい。すなわち、脱海処理して極細繊維をワイピングクロスや研磨布等に用いる場合、汚れを良好に掻き取る性能が向上するためである。これは、表層部の極細繊維の断面に直線部が存在すると、被研磨物の表面に極細繊維が密着するようになるためである。また、繊維構造体に押し付けなどの外力が加えられた場合に、丸断面の場合には、極細繊維が転がりやすいが、直線部を有した極細繊維では、極細繊維同士が固定されやすくなる。このため、押し付け圧などが拡散することが抑制され、対象物に繊維製品を過剰に押し付ける必要がなくなる。よって、断面の輪郭に直線部を持たない従来の極細繊維と比較して、被研磨物などに不要な傷つけをすることを抑制することができる。また、より高度な性能が必要となるIT用途などのドライワイプや高性能研磨布に用いるには、この直線部が3箇所以上あることが特に好ましい。
ここで言う断面形状における直線部とは、単繊維の繊維軸に対する垂直方向の断面の輪郭において、2つの端点を持った線分が直線である部分を意味する。ここで言う直線部は、外接円径の10%以上の長さを有した線分であり、以下のように評価する。
すなわち、前述した方法と同様に複合繊維の断面を10画像撮影し、各画像から同一画像内で無作為に抽出した150本の島成分ついて、この切断面の輪郭について評価する。図1には三角形断面を有した島成分を例示しているが、ここでは、本発明で言う直線部を3箇所有していることになる。ちなみに、断面形状が円形かそれに類似した楕円の場合には、直線部はないことになる。150本の島成分について、直線部の数をカウントし、その総和を島成分の本数で割り返すことで島成分1本当たりの直線部の数を算出し、小数点第2位以下は四捨五入して示すものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、直線部の本数とした。
また、島成分の断面形状は、隣り合う2箇所の直線部を延長した線がなす交点の角度θが下記式を満たすことが好ましい。
ここで、nは交点の数(n≧2)である。
これは、該断面に存在する凸部がシャープ、すなわちエッジを持っていることを意味する。θが170°以下であれば、発生する極細繊維のエッジ部が汚れを掻き取りやすくなり、払拭性能および研磨性能がさらに向上する。一方、押し付け等の外力が加わった場合でも、凸部が形状を維持できるという観点から、θを25(5n−9)/n以上とすることが好ましい。また、θが25(5n−9)/n以上であることは、実質的に島成分が正多角形であることを意味し、島成分の直線部分が同じであるため、島成分あるいは発生した極細繊維間に不要な空隙ができにくく、極細繊維とした際に最密充填構造を形成しやすくなる。また、どの面も均一であることから発生した極細繊維の曲げ特性、およびそれからなる布帛の表面特性が制御しやすくなるといった効果を奏でる。前述した観点では、θが50°〜150°の範囲であることが特に好ましい。
ここで言うθは、前述した方法で150本の島成分の断面の輪郭に存在する直線部から図1の5のように延長線を引き、隣り合った2本の延長線の交点4の角度を測定する。各島成分の交点の中から最も鋭角の交点について記録していく。記録した角度の総和を島数で割り返し、小数点以下を四捨五入した値が交点の角度とした。同様の操作を10画像について行い、単純な数平均をθとした。
なお、前述した交点は、その数が多く存在するほど、すなわち凸部が多いほど、本発明の目的を達成するためには好ましい。具体的には3箇所以上存在することが好ましい範囲である。すなわち、凸部が3箇所以上存在することで、脱海処理の際には、島成分同士が反発するし、前述した残渣の影響を受けることがない。このため、ナノオーダーの極細繊維であっても良好な開繊性を付与することができる。また、本発明の海島複合繊維から得た極細繊維の繊維製品では表層に凸部が存在しやすい。このため、掻き取り性能を発揮しやすくなるのである。更に、交点が3箇所以上存在するということは、実質的にその島成分は多角形であることを意味する。すなわち、単繊維同士の側面で接することから、繊維製品の表層で繊維が転がることが抑制される。特に、本発明の海島複合繊維のように、均質な断面形状を有している場合には、発生した極細繊維が最密充填構造を形成しやすいといった相乗効果も奏でるようになる。細密充填構造を形成させると言った観点では、交点の数が10個以下であることが特に好ましい範囲である。
本発明の海島複合繊維は、従来にはない断面形状のため、前述した効果を奏でる。しかしながら、島成分間で形状のバラツキが大きい場合には、本発明の有する効果が大きく損なわれる場合がある。というのは、形状バラツキのため、島成分毎で脱海の処理速度が変化してしまい、得られた極細繊維では、そのバラツキがより助長されることとなるためである。さらに、過剰に脱海が進んだ部分の力学特性が低下してしまい、後加工で極細繊維の脱落が問題となる場合がある。該極細繊維を繊維製品とした場合でも、前述した空隙の形成抑制、繊維製品の部分的なタッチの変化、防水性能、研磨性能等多くの性能に斑ができてしまう。このように島成分の断面形状にバラツキがある場合には、本発明の目的を達成するのが困難な場合がある。
以上の観点から本発明の目的を達成するためには、島成分の異形度バラツキが1〜10%であることが重要となる。係る範囲にあれば、島成分はほぼ同じ形状を有していることを表す。この断面形状の均質化は、後加工工程でかかる応力を海島複合繊維の断面が均等に担うことを意味している。すなわち、延伸工程において高倍率延伸などして、高い力学特性を付与することができたり、後加工における糸切れや布帛のやぶれといった工程トラブルを予防することが可能になる。また、発生した極細繊維からなる繊維製品の表面特性は均質となる。よって、最密充填構造による防水性能の向上、払拭性能、研磨性能および塵埃捕集性能の向上が達成されることとなる。特に好ましくは、異形度バラツキが1〜7%の範囲であることであり、前述した性能が格段に向上させることができる。
本発明の海島複合繊維は、破断強度が0.5〜10cN/dtexであり、伸度が5〜700%であることが好ましい。ここで言う、強度とは、JIS L1013(1999年)に示される条件でマルチフィラメントの荷重−伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期の繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。また、初期の繊度とは、求めた繊維径、フィラメント数および密度から算出した値、もしくは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。本発明の海島複合繊維の破断強度は、後加工工程の工程通過性や実使用に耐えうるものとするためには、0.5cN/dtex以上とすることが好ましく、実施可能な上限値は10cN/dtexである。また、伸度についても、後加工工程の工程通過性も考慮すれば、5%以上であることが好ましく、実施可能な上限値は700%である。破断強度および伸度は、目的とする用途に応じて、製造工程における条件を制御することにより、調整が可能である。
本発明の海島複合繊維から発生させた極細繊維をインナーやアウターなどの一般衣料用途に用いる場合には、破断強度が1〜4cN/dtex、伸度が20〜30%とすることが好ましい。また、比較的使用状況が過酷になる、スポーツ衣料用途などでは、破断強度が3〜5cN/dtex、伸度が10〜40%とすることが好ましい。該極細繊維は非衣料用途では、ワイピングクロスや研磨布としての使用が考えられる。これらの用途では、繊維製品が、加重下で引っ張られながら対象物に擦りつけられることになる。このため、破断強度が1cN/dtex以上、伸度10%以上であることが好適である。係る範囲の力学特性とすることで、例えば、拭き取り中などに極細繊維が切れて脱落などすることなくなる。
本発明の海島複合繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な中間体とし、脱海処理するなどして極細繊維を発生させ、様々な繊維製品とすることが可能である。また、本発明の海島複合繊維は、未処理のまま、部分的に海成分を除去させる、あるいは脱島処理をするなどして繊維製品とすることも可能である。ここで言う繊維製品は、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途に使用することができる。
以下に本発明の海島複合繊維の製造方法の一例を詳述する。
本発明の海島複合繊維は、2種類以上のポリマーからなる海島複合繊維を製糸することにより製造可能である。ここで、海島複合繊維を製糸する方法としては、溶融紡糸による海島複合紡糸が生産性を高めるという観点から好適である。当然、溶液紡糸などして、本発明の海島複合繊維を得ることも可能である。ただし、本発明の海島複合紡糸を製糸する方法としては、繊維径および断面形状の制御に優れるという観点で、海島複合口金を用いる方法とすることが好ましい。
本発明の海島複合繊維は、従来公知のパイプ型の海島複合口金を用いて製造してもよい。しかしながら、パイプ型口金で島成分の断面形状を制御することは、その設計や口金自体の作製が非常に困難である。それは、島成分の異形度および異形度バラツキの制御のためには、海成分の制御も必要となるためであり、図2に例示するような海島複合口金を用いた方法が好適に用いられる。
図2に示した複合口金は、上から計量プレート6、分配プレート7および吐出プレート8の大きく3種類の部材が積層された状態で紡糸パック内に組み込まれ、紡糸に供される。ちなみに図2は、ポリマーA(島成分)およびポリマーB(海成分)といった2種類のポリマーを用いた例である。ここで、本発明の海島複合繊維は、脱海処理による極細繊維の発生を目的とする場合には、島成分を難溶解成分、海成分を易溶解成分とすれば良い。また、必要であれば、前記難溶解成分と易溶解成分以外のポリマーを含めた3種類以上のポリマーを用いて製糸しても良い。溶媒に対する溶解速度が異なる易溶解成分を2種類用意し、難溶解成分からなる島成分の周りを溶解速度が遅い易溶解成分で覆い、その他の海の部分を溶解速度が速い易溶解成分で形成させる。その結果、溶解速度が遅い易溶解成分が島成分の保護層となり、脱海時の溶媒の影響を抑制することができる。また、特性の異なる難溶解成分を使用することで、単独ポリマーからなる極細繊維では得ることができない特性を、島成分にあらかじめ付与することもできる。以上の異形複合化技術では、特に従来のパイプ型の複合口金では、達成することが困難であり、図2に例示したような分配型の口金を用いることが好ましい。
図2に例示した口金部材では、計量プレート6が各吐出孔14および海と島の両成分の分配孔当たりのポリマー量を計量して流入し、分配プレート7によって、単(海島複合)繊維の断面における海島複合断面および島成分の断面形状を制御、吐出プレート8によって、分配プレート7で形成された複合ポリマー流を圧縮して、吐出するという役割を担っている。複合口金の説明が錯綜するのを避けるために、図示されていないが、計量プレートより上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いれば良い。ちなみに、計量プレートを、既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。このため、特に該複合口金のために紡糸機を専有化する必要はない。また、実際には流路−計量プレート間あるいは計量プレート6−分配プレート7間に複数枚の流路プレート((図示せず)を積層すると良い。これは、口金断面方向および単繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート7に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート8より吐出された複合ポリマー流は、従来の溶融紡糸法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラで引き取られて、海島複合繊維となる。
本発明に用いる複合口金の一例について、図面(図2〜図4)を用いて更に詳述する。
図2(a)〜(c)は、本発明に用いる海島複合口金の一例を模式的に説明するための説明図であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図であり、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの一部の横断面図である。図2(b)および図2(c)は図2(a)を構成する分配プレート、および吐出プレートであって、図3は分配プレートの平面図、図4は本発明に係る分配プレートの一部の拡大図であり、それぞれが一つの吐出孔に関わる溝および孔として記載したものである。
以下、図2に例示した複合口金を計量プレート、分配プレートを経て、複合ポリマー流となし、この複合ポリマー流が吐出プレートの吐出孔から吐出されるまでを複合口金の上流から下流へとポリマーの流れに沿って順次説明する。
紡糸パック上流からポリマーAとポリマーBとが、計量プレートのポリマーA用計量孔(9−(a))およびポリマーB用計量孔(9−(b))に流入し、下端に穿設された孔絞りによって、計量された後、分配プレートに流入される。ここで、ポリマーAおよびポリマーBは、各計量孔に具備する絞りによる圧力損失によって計量される。この絞りの設計の目安は、圧力損失が0.1MPa以上となることである。一方、この圧力損失が過剰になって、部材が歪むのを抑制するために、30MPa以下となる設計とすることが好ましい。この圧力損失は計量孔毎のポリマーの流入量および粘度によって決定される。例えば、温度280℃、歪速度1000s−1での粘度で、100〜200Pa・sのポリマーを用い、紡糸温度280〜290℃、計量孔毎の吐出量が0.1〜5g/minで溶融紡糸する場合には、計量孔の絞りは、孔径0.01〜1.0mm、L/D(孔長/孔径)0.1〜5.0であれば、計量性よく吐出することが可能である。ポリマーの溶融粘度が上記粘度範囲より小さくなる場合や各孔の吐出量が低下する場合には、孔径を上記範囲の下限に近づくように縮小あるいは/または孔長を上記範囲の上限に近づくように延長すれば良い。逆に高粘度、あるいは吐出量が増加する場合には、孔径および孔長をそれぞれ逆の操作を行えばよい。また、この計量プレートを複数枚積層して、段階的にポリマー量を計量することが好ましく、2段階から3段階に分けて計量孔を設けることがより好ましい。
各計量孔9(9−(a)および9−(b))から吐出されたポリマーは、分配プレート7の分配溝10に流入される。ここで、計量プレート6と分配プレート7との間には、計量孔9と同数の溝を配置して、この溝長を下流に沿って断面方向に徐々に延長していくような流路を設け、分配プレートに流入する以前にポリマーAおよびポリマーBを断面方向に拡張しておくと、海島複合断面の安定性が向上するという点で好ましい。ここで、前述したように流路毎に計量孔を設けておくと、より好ましい。
分配プレートでは、計量孔9から流入したポリマーを合流するための分配溝10(10−(a)および10−(b))とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔11(11−(a)および11−(b))が穿設されている。分配溝10には、2孔以上の複数の分配孔が穿設されていることが好ましい。また、分配プレート7は、複数枚積層されることで、一部で各ポリマーが個別に合流−分配が繰り返されることが好ましい。これは、複数の分配孔−分配溝−複数の分配孔といった繰り返しを行う流路設計としておくと、部分的に分配孔が閉塞しても、ポリマー流は他の分配孔に流入することができる。このため、仮に分配孔が閉塞した場合でも、下流の分配溝で欠落した部分が充填されるためである。また、同一の分配溝に複数の分配孔が穿設され、これが繰り返されることで、閉塞した分配孔のポリマーが他の孔に流入しても、その影響は実質的に皆無となる。さらに、この分配溝を設けた効果は、様々な流路を経た、すなわち熱履歴を得たポリマーが複数回合流し、粘度バラツキの抑制という点でも大きい。このような分配孔−分配溝−分配孔の繰り返しを行う設計をする場合、上流の分配溝に対して、下流の分配溝を円周方向に1〜179°の角度をもって配置させ、異なる分配溝から流入するポリマーを合流させる構造とすると、異なる熱履歴等を受けたポリマーが複数回合流されるという点から好適であり、海島複合断面の制御に効果的である。また、この合流と分配の機構は、前述の目的からすると、より上流部から採用することが好ましく、計量プレートやその上流の部材にも施すことが好ましい。
このような構造を有した複合口金は、前述したようにポリマーの流れが常に安定化したものであり、本発明に必要となる高精度な超多島の海島複合繊維の製造が可能になるのである。ここでポリマーAの分配孔11−(a)(島数)は、理論的には2本からスペースの許す範囲で無限に作製することは可能である。実質的に実施可能な範囲として、2〜10000島が好ましい範囲である。本発明の海島複合繊維を無理なく満足する範囲としては、100〜10000島が更に好ましい範囲であり、島充填密度は、0.1〜20島/mmの範囲であれば良い。この島充填密度という観点では、1〜20島/mmが好ましい範囲である。ここで言う島充填密度とは、単位面積当たりの島数を表すものであり、この値が大きい程多島の海島複合繊維の製造が可能であることを示す。ここで言う島充填密度は、1吐出孔から吐出される島数を吐出導入孔の面積で除することによって求めた値である。この島充填密度は各吐出孔によって変更することも可能である。
複合繊維の断面形態ならびに島成分の断面形状は、吐出プレート8直上の分配プレート7におけるポリマーAおよびポリマーBの分配孔11の配置により制御することができる。具体的には、ポリマーAの分配孔11−(a)とポリマーBの分配孔11−(b)を断面方向に交互に配置する、いわゆる千鳥格子型配置とすることが好ましい。例えば、図3に示すように、ポリマーAおよびポリマーBの分配溝(10−(a)および10−(b))を断面方向に交互に配置し、等間隔に配置されたポリマーAの分配孔の間にポリマーBの分配孔を穿設するように設計すれば、図5(a)および(b)に示した方形格子状あるいは三角格子にポリマーAおよびポリマーBが配置されるようになる。また、ポリマーAの分配溝の間にポリマーBの分配溝を2溝配置するようにし、断面方向(図中縦方向)に見てポリマーがBBABBとなるように分配孔を穿設すれば、図5(c)に示した六角格子状になる。
ここで、この複合口金においては、海島複合断面において、ポリマーAとポリマーBの両者をドット(点)配置させ、従来の口金では行われていなかった海成分を直接配置することが本発明の海島複合繊維を得るためには、好適なことなのである。というのは、分配プレートで構成された海島複合断面は、相似的に圧縮されて吐出されることとなる。この時、図5に例示したような配置にすれば、吐出孔毎のポリマー量に対して各分配孔から吐出されるポリマー量が海島複合断面に対する占有率となり、ポリマーAの拡張範囲は図5中に示した点線の範囲に制限される。これによって、例えば、図5(a)に示した分配孔の配置にした場合には、ポリマーAは基本的に四角断面となるし、図5(b)では三角断面、図5(c)では六角形断面になる。事実、図5(c)のように分配孔を配置した場合には、図6のように島成分は六角形断面形状16となる。
上記例示した規則的な配置に加えて、複数のポリマーBの分配孔によって複数のポリマーAの分配孔を囲い込む配置やポリマーBの分配孔の間に小径のポリマーB用分配孔を追加することやポリマーBの分配孔を円形だけでなく、場所によって楕円形や長方形とすることも、本発明の高異形の島成分を有した海島複合繊維を製造するという観点では好適な手段といえる。
該島成分の断面形状は、前述した分配孔の配置を含めて、ポリマーAおよびポリマーBの粘度比(ポリマーA/ポリマーB)を0.5〜10.0と変化させることで、用途に合わせた異形度および断面形状を制御することができる。基本的には分配孔の配置によって、島成分の拡張範囲は制御されるものの、吐出プレートの縮小孔13によって、合流し、断面方向に縮小されるため、その時のポリマーAおよびポリマーBの溶融粘度比、すなわち、溶融時の剛性比が断面の形成に影響を与える。このため、島成分の断面形状が直線的な辺を持った多角形とするためには、ポリマーA/ポリマーB=0.5〜1.3とすることが良く、高異形度をもった楕円とするためには、3.0〜10.0とするのが良い。
分配プレートから吐出されたポリマーAおよびポリマーBによって構成された複合ポリマー流は、吐出導入孔12から吐出プレート8に流入される。ここで、吐出プレート8には、吐出導入孔12を設けることが好ましい。吐出導入孔12とは、分配プレート7から吐出された複合ポリマー流を一定距離の間、吐出面に対して垂直に流すためのものである。これは、ポリマーAおよびポリマーBの流速差を緩和させるととともに、複合ポリマー流の断面方向での流速分布を低減させることを目的としている。この流速分布の抑制という点においては、分配孔11(11−(a)および11−(b))における吐出量、孔径および孔数によって、ポリマーの流速自体を制御することが好ましい。但し、これを口金の設計に組み入れると、島数等を制限する場合がある。このため、ポリマー分子量を考慮する必要はあるものの、流速比の緩和がほぼ完了するという観点から、複合ポリマー流が縮小孔13に導入されるまでに10−1〜10秒(=吐出導入孔長/ポリマー流速)を目安として吐出導入孔を設計することが好ましい。係る範囲であれば、流速の分布は十分に緩和され、断面の安定性向上に効果を発揮する。
次に、複合ポリマー流は、所望の径を有した吐出孔に導入する間に縮小孔13によって、ポリマー流に沿って断面方向に縮小される。ここで、複合ポリマー流の中層の流線はほぼ直線状であるが、外層に近づくにつれ、大きく屈曲されることとなる。本発明の海島複合繊維を得るためには、ポリマーAおよびポリマーBを合わせると無数のポリマー流によって構成された複合ポリマー流の断面形態を崩さないまま、縮小させることが好ましい。このため、この縮小孔の孔壁の角度は、吐出面に対して、30°〜90°の範囲に設定することが好ましい。
この縮小孔における断面形態の維持という観点では、吐出プレート直上の分配プレートに、図3に示すような分配孔を底面に穿設した環状溝15を設置することが好ましい。分配プレートから吐出された複合ポリマー流は機械的な制御を受けることなく、縮小孔によって断面方向に大きく縮小される。その際、複合ポリマー流の外層部では大きく流れが屈曲されることに加えて、孔壁とのせん断を受けることとなる。この孔壁−ポリマー流外層の詳細を見ると、孔壁との接触面においては、せん断応力によって流速が遅く、内層に行くにつれ流速が増加するというような流速分布に傾斜が生じる場合がある。このため、Bポリマーが流入するための環状溝15および分配孔11を吐出プレート8直上の分配プレート7に設けることが好ましい。これは、この環状溝15および分配孔を設置することで、複合ポリマー流の最外層に後で溶解してしまうBポリマーから構成される層が形成されるためである。すなわち、上記した孔壁とのせん断応力は、Bポリマーからなる層に担わせることができるため、最外層部分の流速分布は円周方向で均一になり、複合ポリマー流の安定するのである。特に複合繊維となった際のAポリマー(島成分)の繊維径や繊維形状の均質性は格段に向上する。この環状溝15の底面に穿設した分配孔は、同分配プレートの分配溝数および吐出量を考慮することが望ましい。目安としては、円周方向に3°当たり1孔設ければ良く、好ましくは1°当たり1孔設けることである。この環状溝15にポリマーを流入させる方法は、上流の分配プレートにおいて、内1成分のポリマーの分配溝を断面方向に延長しておき、この両端に分配孔を穿設するなどすれば、無理なく環状溝15にポリマーを流入させることができる。図3では環状溝を1環配置した分配プレートを例示しているが、この環状溝は2環以上であっても良く、この環状溝間で異なるポリマーを流入させても良い。
このように外層にBポリマーからなる層が形成された複合ポリマー流は、前述したように導入孔長、縮小孔壁の角度を考慮することで、分配プレートで形成された断面形態を維持して、吐出孔14から紡糸線に吐出される。この吐出孔14は、複合ポリマー流の流量、すなわち吐出量を再度計量する点と紡糸線上のドラフト(=引取速度/吐出線速度)を制御する目的がある。吐出孔14の孔経および孔長は、ポリマーの粘度および吐出量を考慮して決定するのが好適である。本発明の海島複合繊維を製造する際には、吐出孔径は0.1〜2.0mm、吐出孔長/吐出孔径は0.1〜5.0の範囲で選択することができる。
以上のような複合口金を用いて、本発明の海島複合繊維を製造することができる。ちなみに、該複合口金を使用すれば、溶液紡糸のような溶媒を使用する紡糸方法でも、この海島複合繊維を製造することが可能であることは言うまでもない。
溶融紡糸を選択する場合、島成分および海成分として、例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーが挙げられる。特にポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高く、より好ましい。ポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。また、脱海あるいは脱島処理を想定した場合には、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶解性を示すポリマーから選択することができる。易溶解成分としては、水系溶媒あるいは熱水などに易溶解性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが紡糸性および低濃度の水系溶媒に簡単に溶解するという観点から好ましい。また、脱海性および発生する極細繊維の開繊性という観点では、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独で共重合されたポリエステルが特に好ましい。
以上例示した難溶解成分および易溶解成分の組み合わせは、目的とする用途に応じて難溶解成分を選択し、難溶解成分の融点を基準に同紡糸温度で紡糸可能な易溶解成分を選択すれば良い。ここで前述した溶融粘度比を考慮して、各成分の分子量等を調整すると海島複合繊維の島成分の繊維径および断面形状といった均質性を向上させるという観点から好ましい。また、本発明の海島複合繊維から極細繊維を発生させる場合には、極細繊維の断面形状の安定性および力学物性保持という観点から、脱海に使用する溶媒に対する難溶解成分と易溶解成分の溶解速度差が大きいほど好ましく、3000倍までの範囲を目安に前述したポリマーから組み合わせを選択すると良い。本発明の海島複合繊維から極細繊維を採取するのに好適なポリマーの組み合わせとしては、融点の関係から海成分を5−ナトリウムスルホイソフタル酸が1〜10モル%共重合されたポリエチレンテレフタレート、島成分をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、海成分をポリ乳酸、島成分をナイロン6、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好適な例として挙げられる。特に、高エッジを有した多角形の島成分を形成するという観点では、前述した組み合わせのうち、島成分をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6とすることが好ましく、海成分の溶融粘度との関係から溶融粘度比が0.3〜1.3となるように分子量を調整すると良い。
本発明に用いる海島複合繊維を紡糸する際の紡糸温度は、2種類以上のポリマーのうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため、好ましい。
本発明に用いる海島複合繊維を紡糸する際の吐出量は、安定して、吐出できる範囲としては、吐出孔当たり0.1g/min/hole〜20g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa〜40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
本発明に用いる海島複合繊維を紡糸する際の難溶解成分と易溶解成分の比率は、吐出量を基準に海/島比率で5/95〜95/5の範囲で選択することができる。この海/島比率のうち、島比率を高めると極細繊維の生産性という観点から、好ましいこと言える。但し、海島複合断面の長期安定性という観点から、本発明の極細繊維を効率的に、かつ安定性を維持しつつ製造する範囲として、この海島比率は、10/90〜50/50が好ましい。
このように吐出された海島複合ポリマー流は、冷却固化されて、油剤を付与されて周速が規定されたローラによって引き取られることにより、海島複合繊維となる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定すればよいが、本発明に用いる海島複合繊維を安定に製造するには、100〜7000m/minの範囲とすることが好ましい。この海島複合繊維は、高配向とし力学特性を向上させるという観点から、一旦巻き取られた後で延伸を行うことも良いし、一旦、巻き取ることなく、引き続き延伸を行うことも良い。
この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下温度に設定された第1ローラと結晶化温度相当とした第2ローラの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、複合繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として、選択すればよい。ここで、延伸倍率を高め、力学物性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
このようにして得られた本発明の海島複合繊維から極細繊維を得るには、易溶解成分が溶解可能な溶媒などに複合繊維を浸漬して易溶解成分を除去することで、難溶解成分からなる極細繊維を得ることができる。易溶出成分が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが共重合された共重合PETやポリ乳酸(PLA)等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。本発明の複合繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、複合繊維あるいはそれからなる繊維構造体とした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用し、処理すれば、一度に大量に処理をすることができるため、生産性もよく、工業的な観点から好ましいことである。
以上のように、本発明の極細繊維の製造方法を一般の溶融紡糸法に基づいて説明したが、メルトブロー法およびスパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
以下実施例を挙げて、本発明の極細繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s−1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
海島複合繊維の100mの重量を測定し、100倍することで繊度を算出した。これを10回繰り返し、その単純平均値の小数点第2位を四捨五入した値を繊度とした。
C.繊維の力学特性
海島複合繊維をオリエンテック社製引張試験機 テンシロン UCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/分条件で応力−歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで破断強度を算出し、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、小数点第2位を四捨五入した値である。
D.島成分の外接円径および外接円径バラツキ(CV%)
海島複合繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面をT(株)日立製作所製 H−7100FA型透過型電子顕微鏡(TEM)にて倍率5000倍で撮影した。得られた写真から無作為に選定した150本の島成分を抽出し、写真について画像処理ソフト(WINROOF)を用いて全ての外接円径を測定し、平均値および標準偏差を求めた。これらの結果から下記式を基づき繊維径CV%を算出した。
外接円径バラツキ(CV%)=(標準偏差/平均値)×100
以上の値は全て10ヶ所の各写真について測定を行い、10ヶ所の平均値とし、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。
E.島成分の異形度および異形度バラツキ(CV%)
前述した外接円径および外接円径バラツキと同様の方法で、島成分の断面を撮影し、その画像から、切断面に外接する真円の径を外接円径とし、さらに、内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点3桁目までを求め、小数点3桁目以下を四捨五入したものを異形度として求めた。この異形度を同一画像内で無作為に抽出した150本の島成分について測定し、その平均値および標準偏差から、下記式に基づき異形度バラツキ(CV%)を算出した。
異形度バラツキ(CV%)=(異形度の標準偏差/異形度の平均値)×100(%)
この異形度バラツキについては、10ヶ所の各写真について測定を行い、10ヶ所の平均値とし、小数点2桁目以下は四捨五入するものである。
F.島成分の断面形状評価
前述した外接円径および外接円径バラツキと同様の方法で、島成分の断面を撮影し、その画像から、断面の輪郭にある2つの端点を持った線分が直線である部分の数をカウントした。対象該画像から同一画像内で無作為に抽出した150本の島成分の断面について評価した。150本の島成分について、直線部の数をカウントし、その総和を島成分の本数で割り返すことで島成分1本当たりの直線部の数を算出し、小数点第2位以下は四捨五入して示すものである。
また、断面の輪郭に存在する直線部から図1の5のように延長した線を引く。隣り合った2本の線の交点の数をカウントするとともに、その角度を測定し、各島成分で最も鋭角な交点の角度を記録していく。記録した角度の総和を島の数で割り返し、小数点以下を四捨五入した値を交点の角度とした。同様の操作を10画像について測定を行い、10ヶ所の単純な数平均値を交点の角度として示すものである。
G.脱海処理時の極細繊維(島成分)の脱落評価
各紡糸条件で採取した海島複合繊維からなる編地を100℃に加熱した3重量%の水酸化ナトリウム水溶液にて、浴比100とした脱海浴にて海成分を99%以上溶解除去した。
極細繊維の脱落の有無を確認するため、下記の評価を行った。
脱海後の水酸化ナトリウム水溶液を100ml採取し、この水溶液を保留粒子径0.5μmのガラス繊維ろ紙に通す。ろ紙の処理前後の乾燥重量差から極細繊維の脱落の有無を判断した。重量差が10mg以上の場合には、脱海有りとして「×」、10mg未満の場合には、脱落なし「○」とした。
H.極細繊維の開繊性
前述した脱海条件で海島複合繊維からなる編地を脱海し、その編地の断面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率1000倍で撮影した。編地の断面を10ヶ所撮影し、その画像から極細繊維の状態を観察した。
極細繊維同士が単独で存在し、バラケタ状態にある場合を開繊性良好「○」とし、画像あたりバンドル(束)が5本未満の場合は「△」、バンドルが5本以上の場合は開繊性が悪い「×」とした。
実施例1
島成分として、ポリエチレンテレフタレート(PET1 溶融粘度:120Pa・s)と、海成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸5.0モル%共重合したPET(共重合PET1 溶融粘度:140Pa・s)を290℃で別々に溶融後、計量し、図2に示した本発明の複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、吐出プレート直上の分配プレートには、島成分用として、1000の分配孔が穿設されており、孔の配列パターンとしては、図5(c)の配列とした。図3の15に示している海成分用の環状溝には円周方向1°毎に分配孔が穿設されたものを使用した。また、吐出導入孔長は5mm、縮小孔の角度は60°、吐出孔径0.5mm、吐出孔長/吐出孔径は1.5のものである。海/島成分の複合比は、30/70とし、吐出された複合ポリマー流を冷却固化後油剤付与し、紡糸速度1500m/minで巻き取り、150dtex−15フィラメント(総吐出量22.5g/min)の未延伸繊維を採取した。巻き取った未延伸繊維を90℃と130℃に加熱したローラ間で延伸速度800m/minにとし、3.0倍延伸を行った。得られた海島複合繊維は、50dtex−15フィラメントであった。なお、この延伸繊維の採取は、10錘の延伸機で4.5時間サンプリングをおこなったが、糸切れ錘は0錘であった。
該海島複合繊維の力学特性は、破断強度4.2cN/dtex、伸度35%であった。
また、該海島複合繊維の断面を観察したところ、直線部が6箇所、交点の角度が120°の正六角断面の島成分をしていることが確認できた。島成分の外接円径は465nm、外接円径バラツキは5.9%、異形度は、1.23、異形度バラツキは、3.9%であり、島成分は径および形状がいずれも均質性なものであった。この海島複合繊維を脱海処理したところ、脱海時の極細繊維の脱落はなく(脱落判定:○)、開繊性に関しても良好なものであった(開繊性判定:○)。結果を表1に示す。
実施例2〜4
実施例1に記載される方法から、海/島成分の複合比を20/80(実施例2)、50/50(実施例3)、70/30(実施例4)と段階的に変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。これらの海島複合繊維の評価結果は、表1に示す通りであるが、実施例1と同様に島成分の外接円径および形状の均質性に優れ、後加工性(極細繊維の脱落、開繊性)についても良好なものであった。
比較例1
特開2001−192924号公報で記載される従来公知のパイプ型海島複合口金(島数1000)を使用し、実施例1に記載の条件で、製糸を行った。紡糸性に関しては、問題がなかったものの、延伸工程では、2錘で糸切れがあった。
比較例1で得られた海島複合繊維の評価結果は、表1に示すとおりであるが、繊維径は比較的バラツキが小さいものの、真円(異形度1.05)であり、断面形状の均質性においては、本発明の海島複合繊維と比較して、劣るものであった。ちなみに、島成分の断面においては、直線部は存在しなかった。後加工性においては、極細繊維の脱落はなかったものの、真円の断面であるため、極細繊維同士がバンドル状態になっている部分が多く、開繊性が×であった。
比較例2
特開2007−39858号公報に記載される流路の縮小を複数回繰り返す海島複合口金を用いたこと以外は、全て実施例1に従い実施した。実施例1と島数を合わせるためには、流路縮小が4回必要であった。紡糸中1回の単糸流れ(切れ)、延伸工程においては、4錘の糸切れ錘があった。
比較例2で得られた海島複合繊維の評価結果は、表1に示すとおりであるが、島成分の外接円径は縮小されるものの、海島複合繊維の断面の外層部に位置する島成分は真円から大きく歪んだものであり、外接円径バラツキおよび異形度バラツキの点で、本発明の海島複合繊維と比較して、劣るものであった。また、ちなみに、島成分の断面においては、直線部は存在しなかった。後加工性においては、開繊性については△であり、島成分のバラツキに起因すると考えられる極細繊維の脱落があった(脱落判定:×)。
実施例5
島成分としてポリエチレンテレフタレート(PET2 溶融粘度:110Pa・s)、海成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%共重合したPET(共重合PET2 溶融粘度:110Pa・s)を用い、延伸倍率を4.0倍としたこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
この海島複合繊維は高倍率延伸が可能であったため、比較的強度を高くすることができた。他の評価結果は、表2に示す通りであるが、実施例1と同様に島成分の外接円径および形状の均質性に優れたものであった。また、後加工性においても、良好なものであり、特に開繊性においては、極細繊維同士が非常にばらけた状態にあり、実施例1〜4と比較しても優れたものであった。
実施例6
総吐出量を90g/minとし、口金の吐出孔数を増やしてフィラメント数を75本としたこと以外は全て実施例5に従い、実施した。
この海島複合繊維の評価結果は、表2に示す通りであるが、実施例5と同様に島成分の外接円径および形状の均質性に優れたものであった。また、開繊性は、実施例5と同様に優れたものであった。
実施例7
紡糸速度を3000m/min、延伸倍率を2.5倍としたこと以外は全て実施例5に従い実施した。前述のように、製糸速度を高めた場合でも、糸切れすることなく良好にサンプリングすることができた。得られた海島複合繊維の評価結果は、表2に示す通りである。
実施例8
吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(b)の配列とし、島数を2000本としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
得られた海島複合繊維の断面を観察したところ、島成分は325nmの外接円径であり、正三角形(異形度2.46 直線部3箇所 交点の角度60°)の形状を有していた。後加工性においては、良好なものであり、開繊性にも優れていた。結果を表3に示す。
実施例9
島数を1000本としたこと以外は、全て実施例8に従い実施した。海島複合繊維の評価結果を表3に示す。
実施例10
島数を450本、総吐出量を45g/minとしたこと以外は全て実施例8に従い、実施した。海島複合繊維の評価結果を表3に示す。
実施例11
吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(a)の配列としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
得られた海島複合繊維の断面を観察したところ、島成分の外接円径は460nmで、正四角形(異形度1.71 直線部4箇所 交点の角度90°)の断面を形成していることが確認できた。後加工性についても、問題のないものであった。評価結果を表3に示す。
実施例12
吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(a)とし、分配孔1の数は1000孔としたまま、隣り合う4孔の分配孔1−分配孔1の間隔を実施例6比較して1/2とし、総吐出量を海/島複合比を50/50としたこと以外は全て実施例1に従い実施した。
得られた海島複合繊維の島成分は、異形度が4.85と大幅に増加したものであった。島成分は4個が1体になっており、海島複合繊維1本当たり250個のシャープエッジの凸を有した扁平断面の島成分を確認することができた。外接円径および異形度のバラツキは表3に示したように均質なものであった。後加工性に関しても、良好なものであった。
実施例13
島成分をナイロン6(N6 溶融粘度145Pa・s)、海成分をポリ乳酸(PLA 溶融粘度100Pa・s)、紡糸温度を240℃としたこと以外は全て実施例9に従い実施した。実施例13で得られた海島複合繊維では三角断面であり、異形度が1.20であった。島成分の外接円径および異形度のバラツキは表4に示したように均質なものであった。
実施例14
海成分を実施例5でも使用した共重合PET2とし、紡糸温度260℃、延伸倍率4.0倍としたこと以外は全て実施例13に従い実施した。得られた海島複合繊維の評価結果を表4に示す。
比較例3
特開2001−192924号公報に記載された従来公知のパイプ型海島複合口金(島数1000)を使用し、海成分をナイロン6(N6 溶融粘度55Pa・s)、島成分をポリエチレンテレフタレート(PET1 溶融粘度:135Pa・s)、紡糸温度を285℃、延伸倍率2.3倍としたこと以外は実施例1に従い実施した。
比較例3では、N6の融点(225℃)に対して、紡糸温度が高すぎたため、複合流とした際の海成分の流動が不安定になり、島成分は、部分的には、ナノオーダーの極細繊維が存在するものの、断面形状がランダムに歪んだものが多く、かつ部分的に融着した粗大なものが存在した。後加工性においても、極細繊維の脱落が目立った。評価結果を表4に示す。
実施例15、16
島成分としてポリトリメチレンテレフタレート(実施例15 3GT 溶融粘度180Pa・s)、ポリブチレンテレフタレート(実施例16 PBT 溶融粘度120Pa・s)をとし、紡糸温度を255℃、延伸倍率は表5にしたとしたこと以外は、全て実施例14に従い実施した。得られた海島複合繊維の評価結果は表4に示す。
実施例17
フィラメント数が200フィラメント、1フィラメント当たり500の島成分用分配孔が図5(b)の配置で穿設された分配プレートを用いて、島比率20%(総吐出量22.5g/min)、紡糸速度3000m/min、延伸倍率2.3倍としたこと以外は全て実施例5に従い実施した。
得られた海島複合繊維の断面を観察したところ、島成分は80nmの外接円径であり、極めて細い島成分が得られた。実施例17で得られた海島複合繊維では、島成分が極めて細いものの、島成分の断面形状は、正三角形(異形度2.25 直線部3箇所 交点の角度62°)の形状を有していた。結果を表5に示す。
実施例18
フィラメント数が150フィラメント、1フィラメント当たり600の島成分用分配孔が穿設された分配プレートを用いて、島比率50%(総吐出量22.5g/min)、紡糸速度2000m/min、延伸倍率2.5倍としたこと以外は全て実施例8に従い実施した。
得られた海島複合繊維の断面を観察したところ、島成分は161nmの外接円径であった。結果を表5に示す。
実施例19
吐出プレート直上の分配プレートの孔の配列パターンを図5(b)とし、分配孔1の数は1000孔としたまま、隣り合う4孔の分配孔1−分配孔1の間隔を実施例6比較して1/3とした分配プレートを実施例19では用いた。島成分および海成分は実施例5で用いたPET2および共重合PET2とし、紡糸温度や吐出条件に関しては実施例5に従い実施した。
得られた海島複合繊維の断面では、島成分同士が規則正しく合流しており、外接円径が990nmの三角形が連結した扁平状になった島成分が1フィラメント当たり200個観察することができた。得られた扁平断面の直線部の交点を測定すると、88°であった。結果を表5に示す。
実施例20
海/島比率を80/20とし、延伸倍率を4.2倍としたこと以外は全て実施例19に従い実施した。
得られた海島複合繊維には外接円径が481nmの扁平状の島成分を観察することができた。結果を表5に示す。
実施例21
島成分として高分子量PET(PET3 溶融粘度285Pa・s)とし、海成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸5.0モル%共重合した高分子量PET(共重合PET3 溶融粘度:270Pa・s)を紡糸温度300℃、紡糸速度600m/minとしたこと以外は全て実施例1に従い紡糸した。未延伸糸を90℃−140℃−230℃に加熱された2対の加熱ローラにて4.2倍延伸し、海島複合繊維を得た。
得られた海島複合繊維の力学特性は破断強度が8.6cN/dtex、伸度15%であり、非常に優れたものであった。また、海島複合繊維の断面には、外接円径が639nmの正六角形の島成分が存在しており、形状は非常に安定したものであった。結果を表6に示す。
実施例22
紡糸速度を1200m/minとし、延伸を行わないこと以外は全て実施例21に従い実施した。得られた海島複合繊維の断面には、外接円径が922nmの正六角形の島成分が存在していた。結果を表6に示す。
1 海島複合繊維の島成分
2 外接円
3 内接円
4 交点
5 延長線
6 計量プレート
7 分配プレート
8 吐出プレート
9 計量孔
9−(a) 計量孔1
9−(b) 計量孔2
10 分配溝
10−(a)分配溝1
10−(b)分配溝2
11 分配孔
11−(a)分配孔1
11−(b)分配孔2
12 吐出導入孔
13 縮小孔
14 吐出孔
15 環状溝
16 海島複合繊維の島成分の例

Claims (6)

  1. 海島複合繊維において、島成分の外接円径が10〜1000nmの範囲であり、外接円径バラツキが1〜20%、異形度が1.2〜5.0および異形度バラツキが1〜10%であることを特徴とする海島複合繊維。
  2. 島成分の繊維軸と垂直方向の断面において、断面の輪郭が少なくとも2箇所以上の直線部を有していることを特徴とする請求項1に記載の海島複合繊維。
  3. 直線部の交点の角度θが下記式を満たすことを特徴とする請求項2に記載の海島複合繊維。
    ここで、nは交点の数(n≧2)である。
  4. 直線部の交点が3箇所以上存在することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の海島複合繊維。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の海島複合繊維を脱海処理することによって得られた極細繊維。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の繊維が少なくとも一部を構成する繊維製品。
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