JP7415455B2 - 芯鞘複合繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、特徴的な空隙を有する繊維、およびその繊維製品に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から産業資材用途まで幅広く利用されている。近年の生活様式の変化や健康志向の高まりに伴い、人々が繊維製品に求める特性は多様化し、特に人間が身につける衣料用テキスタイルでは、優れた高機能な快適素材が求められ続けている。
これ等の高機能材料の中でも、衣料用テキスタイルにおいては、撥水剤の人的な影響が取り上げられているため、人的影響の少ない撥水剤への代替が進められ、非フッ素撥水素材等の高度化が求められている。
撥水機能を有した衣料用テキスタイルは、主に、繊維を織り・編み等して布帛に仕立てた後に、撥水剤により処理を行うことで、繊維あるいは繊維製品の表層に撥水皮膜の形成する撥水加工が行われることで製造されている。
この撥水加工の肝である撥水剤には、従来、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水剤(C8撥水剤)が用いられてきたが、環境や人体への蓄積性、有害性が指摘されるようになり、より安全な非フッ素系撥水剤等への代替が加速している。
一方、非フッ素系撥水剤等は、人体影響が小さいとされながらも、撥水機能に必要な撥水皮膜での分子の規則配列が乱れやすく、初期の撥水性能ならびにその耐久性が十分なものにならない場合がある。
このため、基本的に撥水機能の発現および耐久性に劣る非フッ素撥水剤を用いて、従来のC8撥水剤並の性能とするために、撥水剤を多く付着させ、繊維間空隙に多量の撥水剤を存在させることが必要になる。また、そもそも撥水素材には、水滴等を衣服内に染み込ませないようにするために、基材となる生地(織編物)の組織を高密度化するものが多く、素材として厚手で重量感があり、剛性が高いものとなりやすく、着用快適性という観点では改善の余地があるものであった。
以上のような背景のもと、撥水剤の代替が進む中で、撥水加工を施す基材(生地)の改良に関しても、盛んに進められており、従来の布帛設計で糸品種の組み合わせを工夫し、撥水素材の性能向上を実現しようとした提案が存在する。
例えば特許文献1は、細繊度と太繊度の繊維を組み合わせ混繊交絡糸とすることで表面部分において細繊度の繊維を突出させ、糸条の内部を太繊度の繊維で構成することにより、微細凹凸が形成され撥水性能を発揮する技術の提案である。さらに細繊度糸の絡み合った部分が、糸条の表面部分に多くの空気を保持できる層(空気保持層)を形成しており、この空気保持層が織編物の表面において水滴を遮断し、織編物の内部に水滴が移行することを効果的に抑制し、高い撥水性能を発揮する素材となる。
特開2015-98661号公報(特許請求の範囲)
特許文献1は、繊度の異なる繊維の組み合わせとその混合比率が微細な凹凸形成および機能発現のポイントとした技術である。しかし、衣服として使用する際は、擦れや圧迫等により布帛の微細な凹凸が消失したり、布帛の伸び縮み(伸長と圧縮)で布帛表面構造が乱れたりして、空気層の確保が困難となる場合がある。そのため、経時での撥水性能の低下を招き、耐久性の観点から快適な素材として満足できない場合があった。さらに、繊度の異なる高配向未延伸糸を複数必要とし、複合仮撚り工程や混繊交絡工程も必要であることから、布帛設計における制約が伴うものであり、用途展開における障害となる場合があった。さらに、布帛の高次加工時や実使用時にこれを維持するためには、目的とした撥水性を維持するためには多くの制約を伴うものであり、昨今の非フッ素撥水剤では更にその困難さを極めるものであった。
このように従来提案されている技術では、昨今の非フッ素撥水剤等を用いた撥水処理を前提とした撥水素材の要求には対応が困難であり、カジュアル用途から過酷な環境下で使用されるアウトドア用途まで幅広く対応が可能で、かつ着用快適性を兼ね備える撥水素材に適した繊維が求められていた。
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
(1)少なくとも2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯鞘界面に凹凸が複数個存在し、該凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たし、且つ嵩高度が20以上であることを特徴とする芯鞘複合繊維。
(SWmax/SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
(2)凹部の入口を形成する突起部分が鋭角であり、かつ隣り合う突起部間の幅(Pout)と凹部の入口幅(SWmin)および、隣り合う突起部間の幅(Pout)と隣り合う凹部の底面の幅(Pmin)が下記式を特徴とする(1)に記載の芯鞘複合繊維。
(Pout)/(SWmin)=2~10 ・・・(式3)
(Pout)/(Pmin)≧1.3 ・・・(式4)
(3)芯成分ポリマーに対する鞘成分ポリマーの溶出速度比が10倍以上であることを特徴とする(1)または(2)のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維。
(4)繊維の横断面形状に凹部が複数個存在し、該凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および繊維径(D)が下記式を満たし、且つ嵩高度が20以上であることを特徴とする特殊断面繊維。
(SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維、または(4)に記載の特殊断面繊維を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
である。
本発明によれば、耐久性に優れた撥水性能を発現すると共に、繊維束内に空隙を安定的に形成することができる芯鞘複合繊維または特殊断面繊維であり、更には、繊維間空隙の存在によって繊維が柔軟に変形することにより、心地よい柔軟な風合いを兼ね備えた、高度化が進む昨今の快適衣料に適した芯鞘複合繊維または特殊断面繊維を提供できる。
すなわち、本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維を基材として用いることで、非フッ素撥水剤等を使用した場合でも、使用時の曲げや擦れ等や繰り返し行われる洗濯や過酷な擦過が加わる使用環境下で、高い撥水機能を耐久性高く維持することができる。また、本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維を用いた基材においては、撥水機能を発現するのに繊維間の空隙を利用するため、撥水剤を過剰に付着させる必要がなく、嵩高性にも優れるものであり、繊維が柔軟に変形するので、柔軟な触感をも有した撥水素材になる。
本発明の芯鞘複合繊維と特殊断面繊維の例の横断面の概略図である。 本発明の芯鞘複合断面繊維および特殊断面繊維の凹部および凹部深さを説明するための拡大概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維および特殊断面繊維の凸部を説明するための概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維および特殊断面繊維の凸部を説明するための拡大概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維および特殊断面繊維の凸部の角度を説明するための拡大概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維および特殊断面繊維の異型度の測定方法を説明するための一例である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、複合口金の形態の一例であって、複合口金を構成する主要部分の正断面図である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、分配プレートの一部の横断面図である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、吐出プレートの横断面図である。 最終分配プレートにおける分配孔配置の一実施形態の一部拡大図である。 本発明の特殊断面繊維の布帛断面写真の一部である。 嵩高度を測定するための装置の斜視図である。 嵩高度の測定方法を示す見取り図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に記述する。
本発明で言う芯鞘複合繊維とは、2種類のポリマーから構成されており、芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯鞘界面に凹凸が複数個存在している特殊な断面形態を有する繊維を言う。
本発明で言う特殊断面繊維とは、上記芯鞘複合繊維の芯成分のみからなり、図1のAに例示するような断面形態を有する繊維である。
本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維は、繊維形成可能ポリマーよりなっている繊維であり、特殊な断面形態の繊維からなっていることを特徴とする。
本発明で言う繊維形成可能ポリマーとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体が挙げられる。また、これらの繊維形成可能ポリマーには本発明の目的を損なわない範囲で酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維は、製糸後に種々の高次加工を経て、最終製品にされるものである。このため、これ等の工程での処理温度等を踏まえると、用いる繊維形成可能ポリマーは融点が165℃以上の耐熱性が良好なポリマーであることが好適であり、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマーやポリアミド系ポリマーが好ましい。
このような本発明の芯鞘複合繊維は、溶出操作前に織り編み等の高次加工を施した後、鞘成分を溶出することで本発明の特殊断面繊維を得ることができる。この鞘成分の溶出に用いる溶剤に対して、芯成分が難溶出、鞘成分が易溶出となることが好ましく、用途に応じて芯成分を選定しておき、そこから用いることができる溶剤を鑑みて前述のポリマーの中から鞘成分を選定すると好適である。
芯鞘複合繊維の難溶出成分(芯成分)と易溶出成分(鞘成分)の溶剤に対する溶出速度比が大きいほど好適な組み合わせと言え、溶出速度比は10倍以上が好ましく、3000倍までの範囲を目安にポリマーを選択すると良い。より好ましくは100倍以上で、さらに好ましくは1000倍以上である。鞘成分としては、例えば、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶出性を示すポリマーから選択することが好適である。特に鞘成分の溶出工程を簡易化するという観点では、鞘成分は、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが取扱性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。
また、本発明者らの検討では、水系溶剤に対する溶出性および溶出の際に発生する廃液の処理の簡易化という観点では、ポリ乳酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい。特に、前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸単独および5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えてポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルにおいては、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶出性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚り加工等においても、複合繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性という観点から好適である。
本発明の特殊断面繊維は撥水機能と嵩高性や柔軟性を備えた素材である。このため、その用途分野は、幅広く展開が可能であるが、その素材特性を踏まえると撥水性能を訴求する高機能アパレル素材として用いられることが好適であり、タウンユースのカジュアルな衣料から過酷な環境下で使用されるアウトドア衣料等にまで、その特性は有効に作用するものである。特にスポーツ衣料やアウトドア衣料においては、その使用環境によっては湿潤状態で擦過される場合もあり、既存製品においても、耐磨耗性に優れるポリアミド系繊維が多用されている。また、染色や縫製等の高次ノウハウが多数存在することや縫い糸等他の部位と素材を統一し、簡易にリサイクル可能といった観点からも、本発明の繊維をスポーツ衣料やアウトドア衣料で使用する場合には、芯成分ポリマーとしてポリアミド系ポリマーがより好ましく使用される。また、ポリアミド系ポリマーの場合には、ポリエステル系ポリマーと比較して、そのポリマー特性として柔らかさの指標である弾性率が半分以下程度と低く、本発明の訴求点のひとつである柔軟性という観点からも好適であることは言うまでもない。
本発明の芯鞘複合繊維は、その繊維を構成する少なくとも2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯鞘界面に凹凸が複数個存在し、該凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たし、且つ嵩高度が20以上であることが必要である。
(SWmax/SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
上記の凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および芯成分径(D)は以下の通り評価するものである。
すなわち、本発明の芯鞘複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で凹部が10個以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影する。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10個の凹部に関して、それぞれ凹部入口幅(SWmin)、凹部の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)、凹部深さ(SH)を単位μmで測定し、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
以上の操作を10回繰り返してそれぞれの値の単純な数平均値(n=100)とし、小数点第2位以下を四捨五入することでそれぞれの値を求めるものである。
ここでいう凹部とは、芯成分と鞘成分の境界部分において、芯成分の内側に鞘成分が入り込んだ部分である。
図1~5に例示した、本発明の特殊断面繊維の繊維断面の概要図を用いて具体的に説明する。なお、説明は一例として丸断面にて行うが、本発明では様々な断面形態が存在していても問題はないものである。
図1のとおり、当該繊維は凹部1と凸部2を有する。凹部の入口幅(SWmin:図2の3)は、繊維軸に対して垂直方向の繊維断面の、凹部の中心線(図2の5)に直交する長さを中心線に沿って外周部に向けて測定した際の最小箇所であり、凹部の広幅部幅(SWmax:図2の4)とは、凹部の中心線に直交する長さを中心線に沿って外周部より繊維中心に向けて測定した際の最大箇所を意味する。
凸部の外接円の直径を芯成分径(D)とする。また、凹部深さ(SH:図2の5)は、凹部中心線において、凸部外接円および凹部内接円との交点間距離を意味する。ここで言う外接円とは、繊維の断面において凸部の先端に2点以上で最も多く外接する真円(図3の6)であり、内接円とは凹部の先端(底部)に2点以上で最も多く内接する真円(図3の7)を意味する。なお、多角形の場合は、芯成分径(D)については、上記外接円とするが、凹部深さ(SH)の場合は、次のとおりである。外接円相当として、凸部の輪郭に接する線同士をつないで外接線として、内接円相当として、凹部の芯成分の中心に近い側の頂点同士をつないで内接線とする。
この凹部形状により、凹部内部が外部からの擦過等を受けないことから凹部内部に浸透した撥水加工剤などが脱落しにくく、撥水性能維持を実現できたのである。その形状について、以下で詳しく、説明する。
本発明の芯鞘複合繊維においては、凹部入口幅(SWmin)と凹部の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する凹部深さ(SH)が重要であり、第1の要件となる。
ここで、凹部の広幅部幅(SWmax)と凹部入口幅(SWmin)の比(SWmax/SWmin)が1.3以上という特異的な空隙を繊維内に形成することで、水滴が繊維に接触した際、その空隙に水滴が入り込みにくく、さらには空隙内に取り込まれている空気が、水滴を押し上げようと作用するため繊維内に空気層を維持でき、撥水効果を得ることが出来るのである。このように空隙内に水滴の浸入を防ぎ、撥水性能を高めるために好ましくは、1.5以上で、さらには空隙内部の空気層を確保し耐久性を上げるためにより好ましくは、1.8以上である。
また、芯成分径(D)と凹部深さ(SH)の比((SH)/D)が0.15以上必要である。これは、凹部によって形成されている空隙内に侵入しようとする水滴の自重や水圧がかかったとしても、空隙の奥まで水滴が到達せず、撥水性能を維持するのである。なお、水滴侵入の観点からは、この値が大きければ大きいほど良いのであるが、空隙を形成する凸部が外力を受けたときの空隙の変形や破壊が起こりにくく、撥水性能を維持できる範囲として、0.25以下であることが本発明における実質的な上限となる。本発明者らの検討によれば、繊維内の空隙への水滴の浸入の抑制と撥水性能の耐久性に最も優れるのは0.18以上0.22未満であり、本発明における特に好ましい範囲として挙げることができる。
さらに、凹部深さ(SH)も撥水性能に寄与するものであり、絶対値として、2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
一般に、繊維の直径が10~23μmであるのに対して、雨粒の大きさは、100~1000μm程度と過大なものであり、繊維に付着した水滴は、その自重で空隙に入り込み、空隙の底面(底部)を含めた繊維表面が水滴に取り込まれると、その物体(繊維)が濡れたこととなり、撥水機能は働かなくなる。
一方、繊維表層に形成された微細な凹部の深さが深い場合は、水滴自身の表面張力により押し上げられ、表面が濡れない状態になることが撥水機能を発現するメカニズムであり、ハスの葉等で見られる、いわゆるロータス効果はこのような現象により成り立っている。
上記した撥水現象を安定的に発現させるためには、凹部深さ(SH)は2μm以上であることが好ましい。この場合、布帛の組織等に概ね依存せず良好は撥水機能を布帛に発現させることができる。
本発明の芯鞘複合繊維もしくは特殊断面繊維における凹部の数は、2個から16個の範囲であれば、安定的に空隙を確保することが出来るため耐久性のある撥水性能と柔軟性が得られ、好ましい。スポーツ用途など過酷な環境下で使用する衣料などの場合は、大きな外力が加わるために空隙を確保するためにもより好ましくは、2個から8個である。
本発明の特殊断面繊維は、上述のとおり特殊な凹部形状により安定的な空隙を確保するものであり、その空隙により撥水性能や柔軟性を発揮するのであり、該凹部形状を維持することが必要な要件である。この形状を維持することは撥水性の維持にも大きく寄与し、空隙(凹部)の入口を形成する凸部分が鋭角であることが好ましい。ここで言う鋭角とは、数学上の鋭角と同義で凸部の繊維表面の辺と凹部の辺の成す角(図5のC)が90度以下のことをいう。凹部内部への水滴の浸入を防ぐために好ましくは80度以下である。このように凸部分が鋭角となっていることで、空隙(凹部)に水滴の侵入を抑制できると考えられる。本発明の特殊断面繊維における凹部は、繊維内の空隙(溝部)の光学的な効果による防透け効果も得ることが出来るのである。さらには、凹部内部は外部からの干渉が少ないことから撥水剤を保持することから、長期使用においても高い撥水性能を維持できるのである。なお、撥水剤以外の消臭、抗菌等の機能材についても同様であり、その効果を長く維持できるのである。
本発明の特殊断面繊維では、その機能発現の重要な要素のひとつである凹部の形状は、使用時等において安定的に保持されることが好適であるが、これを達成するためには、凸部先端の幅(Pout)と凹部の入口幅(SWmin)の比(Pout/SWmin)が2.0以上10.0以下が好ましい。
係る範囲であれば、凸部が自立して存在し、空隙に依存した機能発現には非常に有効に働き、様々な特性を発現させることが可能となる。
このような観点を推し進めると、Pout/SWminの値は大きいほど空隙確保に有効で、耐久性に優れるものとなり、Pout/SWminは3.0以上10.0以下であることが好ましい。
また、本発明の特殊断面繊維を比較的過酷な雰囲気下で使用されるスポーツのアウターや擦過が多いインナーに使用する場合には、Pout/SWminは4.0以上10.0以下であることが特に好ましく、係る範囲であれば空隙に起因した性能が耐久性高く維持されることとなる。ここで言うPoutとは、突起部を挟んで隣り合う凹部との接点に相当する部分の点の距離(図4の8)を意味する。
また、突起部形状という観点では、突起部(または凸部)の形状が先端に向け細くなった形状が好適であるが、空隙確保に着目した場合は凹部に空気層を取り込む必要があることから、凸部先端の幅(Pout)と凸部底面の幅(Pmin)の比(Pout/Pmin)は1.3以上が好ましい。より多くの空隙を確保するために好ましくは、2.3以上でありさらに好ましくは、2.8以上である。
ここで言うPminとは凸部を挟んで隣り合う凹部の繊維中心方向の頂点との接点に相当する部分の点の距離(図4の9)を意味する。Pout/Pminは、空気を取り込む空隙確保や撥水性能の観点から大きい方が好ましいが、本発明においては、実施可能な上限値は5.0未満である。
本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維は、上記した繊維表層に形成される凹凸の効果に加え、糸束間に含まれる空気層を利用するものであり、本発明では繊維の嵩高度が20以上である必要がある。
本発明で言う嵩高度とは、単位重量当たりの糸束の占める体積であり、以下のような方法で測定する。
すなわち、図12に示すような嵩高度を測定する装置において、試料台22の上面に2本の切り込み27を設け、その外側縁部間の間隔を6mmとし、この切り込みに巾2.5cmのPETフィルム23を掛け渡し、その下に指針付き金具24および荷重25を結合する。金具24の指針は、試料を装着しない場合に目盛26のゼロ位を示すようにセットする。試料は周長1mの検尺機を用いて表示繊度50000dtex、糸長50cmになるようにする。例えば50dtexの糸ならば50000÷50÷2=500なので、500mの糸を検尺機(周長1m)で500回巻して表示繊度50000dtexのカセを作る。次いで得られたカセ28を図13の正面図(a)および断面図(b)に示すようにPETフィルム23と試料台22との間に差し入れ、縮んでいる試料を引張り、カセ長25cmになるようにカセを固定する。荷重25は指針付き金具24と合計して50gになるようにし、指針の示すL(cm)を読みとる。測定は3回行い、平均のL値から次式によって嵩高度Mを算出する。
M(cc/g)=フィルム中の体積V/フィルム中の糸重量W
V(cc)=L/π×2.5
W(g)=50000×(マルチフィラメント本数)×(0.025/10000) 。
この嵩高度は単位重量当たりの糸束の占める体積の指標であり、値が高ければその繊維は嵩高く、膨らみがある状態であると見ることができ、その糸束として構成する繊維間に多くの空気層を有していることを意味する。
本発明の特殊断面繊維は、嵩高度を20以上とすることで、繊維表層に形成された凹部に加えて、繊維間空隙による空気層が形成され、大小様々なサイズの空気層を、糸束の間により多く含んだものとなる。
このようなサイズの異なる空気層を形成するものは、自然界にも存在し、例えば、ハスの葉に見られる優れた撥水現象がそれにあたる。これは素材と水滴の間に空気層が形成されることによるものであるが、本発明の芯鞘複合繊維を出発原料とした特殊断面繊維からなる布帛においても、この機能が如何なく発揮され、本発明の繊維からなる布帛表面に滴下された水滴は、布帛と水滴の間に、細かな空気層が形成されることにより、接触角の高い細かな水滴に分散されるとともに、布帛を傾けた場合には、布帛表面を転がるように排出されるといった極めて優れた撥水機能を発現するものである。また、布帛表面だけではなく、布帛の断面方向にも十分な空気層が存在することにより、水滴は布帛内部に侵入することができず、優れた防水機能を発揮し、本発明の目的である優れた撥水機能を達成することができる。
また、この繊維が嵩高性を有していることにより、布帛を構成する繊維は糸束中で比較的自由に移動することができるため、しなやかな柔らかい風合いとなる。従来技術の場合は、高密度に織編みすることで、布帛の目開きを小さくし、衣服内部に水を浸入させない防水機能を付与するものであるが、本発明の場合には、上記した糸束間の空気層による防水機能に加え、繊維の可動による柔軟な風合いを有するものであり、撥水剤等の機能剤でコーティングした布帛においても、高い撥水機能としなやかな風合いを兼備できることは本発明の特筆すべき特徴である。
以上の観点から、本発明において、撥水機能および風合いの良化に寄与する嵩高度は高いほど好適であると考えることができ、嵩高度は30以上であることが好ましい。また、空気はその伝熱低さが一般的に知られており、より多くの空気を含む素材は保温性にも優れることになる。本発明の繊維からなる布帛にも多くの空気層を含むため、保温性にも優れたものであり、この観点から言えば嵩高度は40以上であることがより好ましく、その撥水機能を加味すると寒冷地等でのウィンドブレーカーやダウンジャケットの側地等として好適に活用できる素材になる。
本発明の目的を達成する技術ポイントとして、嵩高性を有した糸束であることが重要であり、糸束を構成する繊維同士が密な充填になることを抑制するために、隣り合う繊維同士等の繊維断面の形状が大きく異なるものが好適である。糸束で繊維間空隙が良好に確保でき、更に実際に使用する際にも嵩高性が維持できる目安は、繊維の異形度の最小と最大の異形度比が1.1以上であることであり、本発明においては、好ましい範囲として挙げることができる。
ここで言う異形度とは、繊維の断面形状においての外接円と内接円の比等で評価するものであり、繊維の断面が真円の場合は1.0である。本発明で言う異形度比とは、繊維束を構成する繊維の断面異形度の最大と最小の比を表し、この値が大きいほど、多種の形状の繊維が混在していることを意味し、異形度は以下の通り評価するものである。
すなわち、異形度は繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、各断面形状の繊維が10本以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の繊維の外接円径および内接円径をμm単位で測定し、異形度=外接円径/内接円径から小数点第2位以下を四捨五入することにより算出する。ここでいう外接円径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを意味し、内接円径は、切断面に内接する真円の径を意味する。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、各断面の異形度とし、繊維束内に混在する断面形状の異なる単糸の、最大の異形度と最小の異形度の比を異形度比とした。
該異形度比が1.1以上であれば、繊維間空隙が十分に確保され、本発明の目的とする嵩高性が得られるものであり、この異形度比が高いほど、繊維間空隙を維持しやすくなるため、より好ましくは異形度が1.2~2.0の範囲にあることである。係る範囲であれば、隣接する繊維同士も密接した状態にはなりにくく、例えば、繊維の拘束力の高い織物等の組織においても、糸束内で繊維が動きやすくなる。このため、より軽い力でも変形することが出来る布帛となり柔軟な触感や風合いが得られる。
以下に本発明の繊維の製造方法の一例を詳述する。
本発明の特殊断面繊維は、2種類以上のポリマーを用い、特殊断面繊維の前駆体繊維である芯鞘複合繊維を製糸し、芯鞘複合繊維とすることにより製造可能である。ここで、本発明の芯鞘複合繊維を製糸する方法としては、溶融紡糸による複合紡糸が生産性を高めるという観点から好適である。
本発明の特殊断面繊維の繊維間空隙を確保するためには、織編等の高次加工を施し布帛とした後、鞘部分の易溶解成分を溶解除去するなどする芯鞘複合繊維を用いることが好適である。これは、一旦布帛に成形した後に、鞘成分の易溶解成分を除去することで、易溶解成分がもともとあった場所に、本発明の効果を助長する好適な空隙が生まれるためである。
この際、本発明の特殊断面繊維は、ある溶剤に対して、鞘部分が易溶解性のポリマー、芯部分が難溶解性のポリマーにより構成されていることが好ましい。
このように、繊維1本の外周部(鞘部分)に溶出除去できる成分を配置することで繊維断面の特徴的な空隙と、繊維間の空隙確保で耐久性のある撥水性能と柔軟性を兼ね備えた快適な繊維を得ることが出来る。
ここで言う易溶解性ポリマーとは、溶解処理に用いる溶剤に対して難溶解性ポリマーを基準とした際に、溶解速度比(易溶解性/難溶解性)が100以上であることを意味する。
高次加工における溶解処理の簡略化や時間短縮を考慮すると、この溶解速度比は大きいことが好適であり、本発明においては、溶解速度比が1000以上であることが好ましく、更に好ましくは10000以上とすることである。係る範囲においては、溶解処理を短時間で終了することができるため、工程速度を高めることに加えて、難溶解成分を不要に劣化させることなく、より品位の高い布帛を得ることができる。
本発明に用いる易溶解性ポリマーとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体から選択される。特に、鞘部分の溶出工程を簡便化するという観点では、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが取扱性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。
また、本発明者らの検討では、水系溶剤に対する溶解性および溶解の際に発生する廃液処理の簡易化という観点では、ポリ乳酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい。特に、前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸単独および5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えてポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルにおいては、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶解性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚り加工などにおいても、繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性という観点から好適である。
一方、アルカリ水溶液での鞘部分溶解除去の場合には、芯部分は耐アルカリ性に優れるポリアミドとすることが好ましい。ここでいうポリアミドとは、力学特性に優れ、テキスタイルとしての展開が容易なポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が好ましく、製糸過程でのゲル化を起こしにくく、製糸性も優れるという観点ではポリカプロアミド(ナイロン6)がより好ましい。その他の成分としては、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を挙げることができる。
ここで、本発明の芯鞘複合繊維を製糸する場合には、断面形状の制御に優れるという観点で、後述する複合口金を用いる方法とすることが好ましく、本発明の目的を達成できる特殊な溝形状を得るために有効である。従来公知の複合口金でも原理的には製糸可能といえるが、本発明の重要な要件である特異的な空隙を形成する凸部分の間隔や溝深さを制御するには緻密な制御や非常に複雑な構造を有した口金を採用する必要がある。
すなわち、従来公知の複合口金技術では、従来技術に見られる溝部(または凹部)が繊維内層まで入り込んだ形状となりやすく、開口部および凹部深さ方向の制御が不安定になったり、高次加工通過性や溶出後の耐久性に優れた特異的な空隙形成が困難になるため、後述の複合口金が好適に用いられる。
本発明者らは芯鞘複合繊維の製造方法について鋭意検討し、図7に例示するような複合口金を用いた方法が、本発明の目的を達成するには好適であることを見出したのである。
本発明の芯鞘複合繊維を製造するのに適した複合口金を図7に例示している。図7は、上から計量プレート13、分配プレート14および吐出プレート15の大きく3種類の部材が積層されたものであり、ポリマーA、ポリマーBといった2種類のポリマーを用いるものを例示している。本発明の製造方法では、必要に応じて、3種類以上のポリマーを用いて製糸しても良く、3種類以上のポリマーを複合化することを想定すると、やはり図7に例示したような微細流路を利用した複合口金を用いることが好ましい。
図7に例示した口金部材では、計量プレート13が各吐出孔および各ポリマー成分の分配孔当たりのポリマーの量を計量し流入させ、分配プレート14が繊維の断面形状を制御する。次いで、吐出プレート15によって、分配プレート14で形成された複合ポリマー流が圧縮され、吐出されるという役割を担っている。複合口金の説明が錯綜するのを避けるため、図示されていないが、計量プレートより上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いればよい。ちなみに、計量プレート13を既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。このため、特に該複合口金のために紡糸機を専用化する必要はない。
また、実際には流路-計量プレート間あるいは計量プレート13-分配プレート14間に複数枚の流路プレートを積層すると良い。これは、口金断面方向および繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート14に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート15により吐出された複合ポリマー流は、従来の溶融紡糸法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られて、本発明の繊維束の前駆体となる。
本発明の芯鞘複合繊維を達成するには、前述のような複合口金を採用することに加え、断面の長時間安定性という観点では、ポリマーAの溶融密度ηとポリマーBの溶融粘度ηとの溶融粘度比(η/η)が0.1から2.0であることが好ましい。
ここでいう溶融粘度とは、チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、キャピラリーレオメーターによって、測定できる溶融粘度を指し、紡糸温度での同剪断速度の際の溶融粘度を意味する。
本発明では繊維断面の形態は、基本的に分配孔の配置により制御される。ただし、各ポリマーが合流し、複合ポリマー流を形成した後に縮小孔によって断面方向に大幅に縮小されることとなるため、長時間の製造を想定した場合には、ポリマーの吸湿による粘度変化等の経時的な変動を加味する必要があり、溶融粘度比を係る範囲にすれば、これ等の変動が影響を与える可能性は小さく、安定に製造が可能となる。
なお、以上のポリマーの溶融粘度に関しては、同種のポリマーであっても、分子量や共重合成分を調整することで、比較的自由に制御できるため、溶融粘度をポリマー組み合わせや紡糸条件設定の指標にしている。
吐出導入孔および縮小孔を経て複合ポリマー流は、分配孔の配置の通りの断面形態を維持して、吐出孔から紡糸線に吐出される。この吐出孔は、複合ポリマー流の流量、すなわち吐出量を再度計量する点と紡糸線上のドラフト(=引取速度/吐出線速度)を制御する目的がある。吐出孔の孔径および孔長は、ポリマーの粘度および吐出量を考慮して決定するのが好適である。本発明の芯鞘複合繊維を製造する際には、吐出孔径Dは0.1~2.0mm、L/D(吐出孔長/吐出孔径)は0.1から5.0の範囲で選択することが好適である。
溶融紡糸を選択する場合、ポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
本発明におけるポリマーの吐出量は、安定性を維持しつつ溶融吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/holeから20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa~40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
吐出孔から溶融吐出された糸条は、冷却固化され、油剤等を付与することにより収束し、周速が規定されたローラーによって引き取られる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定するものであるが、本発明では、繊維を安定に製造するという観点から、100m/minから7000m/minが好ましい範囲として挙げられる。この紡糸された繊維は、熱安定性や力学特性を向上させるという観点から、延伸を行うことが好ましく、紡糸した繊維を一旦巻き取った後に延伸を施すことも良いし、巻き取ることなく紡糸に引き続いて延伸を行っても良い。
この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラーからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下の温度に設定された第1ローラーと結晶化温度相当とした第2ローラーの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として選択すればよい。ここで、延伸倍率を高め、力学特性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
本発明の特殊断面繊維を得るためには、易溶解成分を溶解可能な溶剤などに本発明の芯鞘複合繊維を浸漬して鞘成分を除去すればよい。易溶解成分が、5-ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。本発明の芯鞘複合繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、繊維構造体とした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の速度を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用すれば、一度に大量に処理することができるため、生産性もよく、工業的な観点から好ましい。
以上のように、本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を一般の溶融紡糸法に基づいて説明したが、メルトブロー法、スパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
本発明の芯鞘複合繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよく、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。特に仮撚り加工を行うことで、断面形状が多様化し、繊維間の空隙確保する上でも有利である。
仮撚加工を活用して本発明の芯鞘複合繊維を安定的に製造するには、加撚領域での糸束の実撚数により加工糸の捲縮発現をコントロールすることが好適である。
すなわち、加撚領域での糸束の撚数である仮撚数T(単位はT(ターン)/m)が、仮撚加工後の糸束の総繊度Df(単位はdtex)に応じて決定される、以下の条件を満たすように、加撚機構の回転数や加工速度等の仮撚条件を設定することが好ましい。
20000/Df0.5≦T≦40000/Df0.5
ここで、仮撚数Tは、仮撚工程の加撚領域で走行している糸束を、ツイスター直前で、撚りをほどかないよう、50cm以上の長さで採取する。採取した糸サンプルについて、撚りをほどかないよう検撚機に取り付け、JIS1013(2010)8.13に記載の方法にて実撚数を測定したものが仮撚数である。仮撚数が上述の条件を満たすことで、得られた糸束では捲縮の状態を微細に制御でき、本発明の芯鞘複合繊維の特徴的な嵩高性を達成するのである。
また、上記の仮撚条件において、糸束中の繊維全体に均一な捲縮を付与し、品位良く本発明の加工糸を得るためには、加撚領域での延伸倍率を調整するとよい。ここで言う延伸倍率とは加撚領域に糸を供給するローラーの周速V0と加撚機構の直後に設置されたローラーの周速Vdを用い、Vd/V0として算出されるものであり、供給する糸の特性に応じて決定することが好ましい。
供給糸に延伸を施した芯鞘複合繊維を使用する場合には、Vd/V0を0.9~1.4倍とすれば良く、供給糸に未延伸の芯鞘複合繊維を使用する場合には、Vd/V0を1.2~2.0倍として、仮撚加工と同時に延伸を行うこともよい。延伸倍率を係る範囲とすることで、加撚領域では過張力となったり、糸束のたるみが発生したりすることなることなく、糸束中の繊維全体に均一な捲縮を付与できる。
さらに、捲縮を強固に固定する観点から、仮撚温度は、芯成分ポリマーのガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+50~Tg+150℃の範囲から決定することが好ましい。ここで言う仮撚温度とは、加撚領域に設置されたヒーターの温度を意味する。仮撚温度を係る範囲とすることで、繊維断面内で大きく捻り変形した芯成分を十分に構造固定できるため、捲縮の寸法安定性は良好となり、シボやスジなく品位の良い布帛を得ることができる。ここで言う芯成分のTgとは、芯成分に使用したポリマーのチップを示差走査熱量測定(DSC)することで測定されるものである。なお、本発明の芯鞘複合繊維では、捲縮を固定し、本発明の嵩高性を達成するためにも、加撚領域にのみヒーターを配置する1ヒーター法を用いることが好ましい。
上記条件にて仮撚加工を実施することで、品位が良く、嵩高い繊維を得ることが出来、本発明の芯鞘複合繊維を製造できる。
そのため、本発明の芯鞘複合繊維で布帛状態とした後、溶出操作をすることで繊維同士の密な充填が避けられ、繊維間空隙を生むことから、布帛の嵩高性、さらには柔らかさに富んだ布帛となる。
本発明における芯鞘複合繊維は、高次加工における工程通過性や実質的な使用を考えると、一定以上の靭性を持つことが好適であり、繊維の強度と伸度を指標とすることができる。ここで言う、強度とは、JIS L1013(2010年)に示される条件で繊維の荷重-伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。ここで、初期繊度とは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。
本発明の芯鞘複合または特殊断面繊維の強度は、0.5~10.0cN/dtex、伸度は5~700%であることが好ましい。本発明の繊維において、強度の実施可能な上限値は10.0cN/dtexであり、伸度の実施可能な上限値は700%である。また、本発明の繊維をインナーやアウターなどの一般衣料用途に用いる場合には、強度が1.0~4.0cN/dtex、伸度が20~40%とすることが好ましい。また、使用環境が過酷であるスポーツ衣料用途などでは、強度が3.0~6.0cN/dtex、伸度が10~40%とすることが好ましい。産業資材用途、例えば、ワイピングクロスや研磨布としての使用を考えた場合には、加重下で引っ張られながら対象物に擦りつけられることになる。このため、強度が1.0cN/dtex以上、伸度10%以上とすれば、拭き取り中などに繊維が切れて脱落などすることなくなるため、好適である。
以上のように本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維では、その強度および伸度を目的とする用途等に応じて、製造工程の条件を制御することにより、調整することが好適である。
本発明の特殊断面繊維を繊維製品として使用する場合、本発明の芯鞘複合繊維を溶出操作した後、撥水加工を施し、さらに必要に応じて、制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ、その他公知の後加工を併用することができる。また、これら制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げなどの機能加工剤の洗濯耐久性を向上させることも出来る。
本発明の繊維製品は本発明の芯鞘複合繊維または特殊断面繊維を一部または全部に含むものであるが、撥水度を4級以上とするのが好ましく、この撥水度は、主に撥水剤を施すことにより達成される。繊維製品に施す撥水剤は、シリコーン系、フッ素系、非フッ素系、炭化水素系等その他任意の撥水剤を用いることができる。撥水加工工程は、パディング法、スプレー法、コーティング法など特に限定されるものではない。
なお、撥水性能の耐久性を向上させるために、撥水剤に架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系樹脂、ブロックイソシアネート系化合物(重合)、グリオキザール系樹脂およびイミン系樹脂などの少なくとも1種使用することができ、その架橋剤は特に限定されるものではない。
本発明の芯鞘複合繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な中間体とし、溶出成分を溶出して特徴的な空隙である凹部を有する特殊断面繊維を発生させ、様々な繊維製品とすることが可能である。また、本発明の芯鞘複合繊維は、未処理のままや部分的に溶出させるなどして空隙をコントロールして繊維製品とすることも可能である。ここで言う繊維製品は、ジャケット、スカート、パンツ、下着、スポーツ衣料、などの一般衣料用途の他、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途にも使用することができる。
このような繊維製品とする場合、基本的には、繊維に対して溶出操作をすることとなるが、本発明の芯鞘複合繊維においては、該繊維の断面において難溶出成分の面積比率を50%~90%とすることが好ましい。係る範囲であれば、例えば、織物とした場合でも、繊維間の空隙が適度となり、他の繊維と混繊するなどする必要なく使用することが可能となる。また、溶出処理時間を短縮するという観点では、溶出成分の面積比率を低くすることが好適であり、この観点では、難溶出成分の面積比率が70%~90%であることがより好ましく、80%~90%が特に好ましい。
本発明の芯鞘複合繊維においては、芯成分の面積比率が90%を超えたものとすることも可能であるが、実質的に鞘成分が空隙を安定的に形成できる範囲として、比率の上限値は90%であることが好ましい。
以下実施例を挙げて、本発明の芯鞘複合繊維および特殊断面繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s-1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
繊度を測定する繊維は、温度25℃湿度55%RHの雰囲気下で単位長さ当たりの重量を測定し、その値から10000mに相当する重量を算出する。これを10回繰り返して測定し、その単純平均値の小数点以下を四捨五入した値を繊度とした。
C.繊維の力学特性
繊維をオリエンテック社製引張試験機 テンシロン UCT-100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/minの条件で応力-歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで強度を算出し、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、強度は小数点第2位、伸度は小数点以下を四捨五入した値である。
D.凹部を複数個有した繊維断面の断面パラメータ
各紡糸条件で採取した芯鞘複合繊維からなる編地(下記L項の編地サンプルと同様に作製)を鞘成分が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。その繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)キーエンス社製 VHX-D500型走査型電子顕微鏡(SEM)にて繊維表層に溝を有した繊維断面が10本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に選定した10本を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、芯成分径(D)を測定した。また、その繊維の凹部に関して、10箇所の凹部入口幅(SWmin)、凹部の広幅部幅(SWmax)、凹部深さ(SH)、を測定した。さらに、その繊維の凸部に関して、凸部先端の幅(Pout)、凸部底面の幅(Pmin)についても同様に測定した。同じ操作を10画像について行い、10画像の平均値をそれぞれの値とした。なお、これらの値はμm単位で小数点第2位まで求め、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
E.溶出処理時の脱落評価
各紡糸条件で採取した芯鞘複合繊維からなる編地(下記L項の編地サンプルと同様に作製)を鞘成分が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。
凸部の脱落の有無を確認するため、下記の評価を行った。
溶出処理に用いた溶剤を100ml採取し、この溶剤を保留粒子径0.5μmのガラス繊維ろ紙に通した。ろ紙の処理前後の乾燥重量差から突起部の脱落の有無を判断した。重量差が10mg以上の場合には、脱落多として「×」、10mg未満5mg以上の場合には、脱落中「△」、5mg未満の場合には、脱落なし「○」とした。
F.撥水性能
撥水加工を施した編地サンプル(下記L項の編地サンプルと同様に作製)を20cm×20cmのサンプルサイズになるように10枚切り出し、評価サンプルを準備した。各サンプルについて、中央に直径11.2cmの円を描き、該円の面積が80%拡大されるように伸張し、撥水度試験(JIS L 1092)に使用する試験片保持枠に取り付け、スプレー試験(JIS L 1092(2009)「繊維製品の防水性試験方法」)を行い、級判定を行った。撥水性能を5段階評価し、10サンプルの級判定結果の平均値を撥水性能とした。
<撥水加工>
対象の布帛を、ネオシードNR-158(日華化学社製)を5重量%、ベッカミンM-3(DIC社製)を0.3重量%、キャタリストACX(DIC社製)を0.3重量%、イソプロプルアルコール1重量%、水93.5重量%で混合した処理液に浸漬し、マングルにて絞り率60%で絞液後、130℃×1分で乾燥、170℃×35秒でキュアリングして、撥水加工布帛サンプルを得た。なお、溶出後の繊維がナイロンの場合は、フィックス処理を行った。フィックス処理は、ナイロンフィックス501(センカ社製)を5%owfで使用し、反応条件は80℃×30分、浴比は生地:水を1:20で行った。
G.撥水加工の洗濯耐久性
上記Fで撥水加工を施した布帛サンプルを洗濯後、撥水性能を評価した。布帛の洗濯方法については、JIS L 0217(1995)「繊維製品の取扱い表示記号及びその表示方法」に記載の103法を用いた。洗濯回数は0回、10回で評価を行った。なお、撥水性能は上記Hの方法で行った。ここで、洗濯回数10回の級判定において、2級未満を不可として「×」、3級未満を可として「△」、3級以上を良として「○」とした。
H.耐磨耗性評価
撥水加工を施していない布帛サンプルで評価した。摩耗方法についてはJIS L 1076(2012)「織物及び編物のピリング試験方法」に記載のアピアランス・リテンション形試験機を用い、上部ホルダー底面積を約13平方cm、摩擦回数を90rpm、押圧荷重を7.36Nに設定し、上部ホルダー及び下部摩擦板の上に織物を固定し、10分間摩耗した。摩耗後、上部ホルダーにセットした織物の単繊維のフィブリル化の様子を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX-6000にて50倍で観察した。この際、磨耗処理前後のサンプル表面変化を確認し、フィブリル化の様子を3段階評価した。処理前後にてサンプル表面全体にフィブリル化が発生した場合は、不可として「×」、一部に発生が認められる場合は可として「△」、発生が認められない場合は良として「○」とした。
I.異形度
芯鞘複合繊維の溶出成分を溶解除去した繊維束を繊維軸方向の任意の位置で切断し、その繊維断面を(株)キーエンス社製 VHX-D500型走査型電子顕微鏡(SEM)にて、各断面形状の繊維が10本以上観察できる倍率として撮影し、各断面の切断面に外接する真円の径(図6では破線12)を外接円径、内接する真円の径(図6では点線11)を内接円径として、異形度=外接円径/内接円径から算出した。この操作を各断面について10ヶ所行い、得られた結果の平均値を各断面の異形度とした。
J.異形度比
上記で求めた異形度から、最大の異形度と最小の異形度の比を求め、小数第2位を四捨五入した値を異形度比とした。
K.繊維束の嵩高度M
図12は繊維束の嵩高度Mを測定する装置の斜視図であり、図13はこの装置による測定方法を説明するための見取り図である。試料台22の上面に2本の切り込み27を設け、その外側縁部間の間隔を6mmとし、この切り込みに巾2.5cmのPETフィルム23を掛け渡し、その下に指針付き金具24および荷重25を結合する。金具24の指針は、試料を装着しない場合に目盛27のゼロ位を示すようにセットする。試料は周長1mの検尺機を用いて表示繊度50000dtex、糸長50cmになるようにする。次いで得られたカセ28を図13の正面図(a)および断面図(b)に示すようにPETフィルム23と試料台22との間に差し入れ、縮んでいる試料を引張り、カセ長25cmになるようにカセを固定する。荷重25は指針付き金具24と合計して50gになるようにし、指針の示すL(cm)を読みとる。測定は3回行い、平均のL値から次式によって嵩高度Mを算出する。さらに、上記繊維束をアルカリ溶液により易溶解性分を溶解除去し、同様の手法により嵩高度を算出することで、芯成分のみからなる繊維束(特殊断面繊維の繊維束)の嵩高度を評価した。
M(cc/g)=フィルム中の体積V/フィルム中の糸重量W
V(cc)=L/π×2.5
W(g)=50000×(マルチフィラメント本数)×(0.025/10000) 。
L.編地の官能評価
総繊度が100dtex以上となるようにした芯鞘複合糸を28ゲージ編み機にて目標目付100g/m2程度になるように筒編み地を作成し、それを開いて編地サンプルとした。ついで、アルカリ溶液による易溶解成分の溶解除去後の編地を手に持ち、ナイロン中実糸からなる編地との相対評価で編地の風合い(触感、柔軟性、軽量感を総合して)を、熟練した検査者(5人)による官能評価で3段階評価した。風合いが最も優れると感じる場合は「A」、風合いが良いと感じる場合は「B」、風合いが劣ると感じる場合は「C」とした。
実施例1
芯成分として、ナイロン6(N6 溶融粘度:120Pa・s)、鞘成分として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%および分子量1000のポリエチレングリコール10wt%が共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET1 溶融粘度:45Pa・s)を280℃で別々に溶融後、計量し、図7に示した本発明の複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、吐出プレート直上の分配プレートは、芯成分と鞘成分の界面に位置する部分が図10に示す配列パターンとし、芯成分用分配孔群と鞘成分用分配孔群が交互に配置することで、1本の芯鞘複合繊維に8箇所の溝部が形成するようにした孔を36孔配置した。また、吐出プレートは、吐出導入孔長5mm、縮小孔の角度60°、吐出孔径0.3mm、吐出孔長/吐出孔径1.5のものを用いた。
ポリマーの総吐出量は39.2g/minとし、芯鞘複合比は、重量比で80/20となるように調整した。溶融吐出した糸条を冷却固化した後油剤付与し、紡糸速度1200m/minで巻き取ることで未延伸繊維を得た。
さらに、得られた未延伸糸(芯鞘複合繊維)を、50℃と130℃に加熱したローラー間で3.0倍延伸を行い(延伸速度800m/min)、延伸糸を得た(110dtex-36フィラメント)。
次いで、得られた延伸糸を、加工速度を250m/分、延伸倍率を1.0倍としたローラー間で、170℃に設定したヒーターにて加熱しながら、フリクションディスク(ディスク構成:1C-6U-1C/1.0)を用い、仮撚数が2600T/mとなるよう、D/Y比を1.55として仮撚加工を施し、110dtex-36フィラメントの本発明の芯鞘複合繊維を得た。
ここで得た芯鞘複合繊維の力学特性は、強度3.5cN/dtex、伸度23%と高次加工を行うのに十分な力学特性を有しており、嵩高度は43であった。また、織物や編物に加工した場合でも、糸切れ等が全く発生しないものであった。
この芯鞘複合繊維を編物とした試験片を90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:100)にて、溶出成分を99%以上脱海した。この際、鞘成分は溶出処理を開始して10分間以内に鞘成分が速やかに溶出されるものであり、鞘成分を溶出した溶剤を目視観察しても、凸部の脱落は認めらなかった。この鞘成分が溶出した溶剤を利用して脱落評価したが、ろ紙の重量変化が3mg未満であり、脱落なし(判定:○)であり、凹部、凸部いずれの劣化がなく、高次加工通過性に優れるものであった。ちなみに、溶出後の特殊断面繊維を追加で10分間90℃に加熱したアルカリ水溶液で処理しても、依然凸部の脱落は認められないものであった。
前述した操作にて採取した特殊断面繊維の繊維断面は、図3のとおり、図面上方を0degとした場合、凹部位置角度が、0deg、45deg、90deg、135deg、180deg、225deg、270deg、315degの8カ所であった。
また、凹部入口幅が1.0μmで凹部の広幅部幅が1.6μmであり(SWmax/SWmin:1.6)、凹部の入口が狭く繊維断面中心方向に広くなっていた。また、芯成分径は、16.8μmで凹部深さは、3.1μmであり(SH/D:0.18)、繊維断面内に空気層を十分に維持できる所望の形状となっていた。次いで、耐磨耗性評価を実施したところ、強制的な磨耗を加えた場合でも、凸部の剥離や崩壊は認められず、サンプル表面にフィブリル化の発生は認められなかった(耐磨耗性判定:良(○))。
次いで、この繊維における嵩高度を評価したところ、仮撚り加工による嵩高に加え、溶解除去による空隙の発生のため、嵩高度が56と優れたものであった。
撥水性評価について、特殊断面繊維に撥水加工を施すと、凹部による繊維断面内の空気層確保と嵩高による布帛内に十分な空気層の確保に起因して水の静的接触角が130°を超え、実使用に用いる際に重要となる動的な撥水性能の級判定が平均で5.0級であり、さらに洗濯耐久性評価においても級判定は平均3.5級であり、水滴の転がりが速く、耐久性のある良好な撥水性能を発現することがわかった(洗濯耐久判定:良(○))。結果を表1に示す。
この繊維を観察したところ、断面形状がランダムな状態で混在し、異形度比は1.22であった。
さらに、編地の官能評価について、嵩高により柔軟性に優れる他、軽量感およびふくらみ感に優れたものであった。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1に従い、吐出量を44.5g/min、紡糸速度を3500m/minとし、高配向未延伸糸を得た。ついで、延伸操作を行わず、仮撚加工を延伸倍率1.15倍、D/Y比を1.63として、110dtex-36フィラメントの本発明の芯鞘複合繊維を得た。芯鞘複合繊維の溶出処理は実施例1と同様に行った。この芯鞘複合繊維、さらには特殊断面繊維について実施例1と同様に評価を行った。
実施例2においては、延伸と同時に仮撚り加工を施すことで、断面形状がよりランダムな状態となり異型度比が高く、嵩高度も高い値となっており、布帛内部に大小様々な空気層を確保することでの撥水性発現と、繊維同士の動きやすさとが相まって、柔軟性のある布帛となっており、満足の出来る素材となっている。
実施例3
仮撚加工条件において、2ndヒーター温度を190℃、2ndオーバーフィード率15%とした以外は、実施例1に従い本発明の芯鞘複合糸を得た。芯鞘複合繊維の溶出処理は実施例1と同様に行った。得られた芯鞘複合繊維、さらには特殊断面繊維について、実施例1と同様に評価を行った。 実施例3において、実施例1よりも嵩高度が低くなったが、繊維断面の凹凸形状が形成および嵩高による布帛内部の空気層形成の相乗効果により、撥水性能が維持できており柔軟性のある布帛となっており、満足の出来る素材となっている。
実施例4、5
芯鞘複合繊維の複合比は80/20に固定し、芯成分の凹部の本数を4箇所(凹部位置角度:0deg、90deg、180deg、270deg)(実施例4)、16箇所(凹部位置角度:0deg、22.5deg、45deg、67.5deg、90deg、112.5deg、135deg、157.5deg、180deg、202.5deg、225deg、247.5deg、270deg、292.5deg、315deg、337.5deg)(実施例5)と変更したこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
いずれも嵩高く布帛内部にも空気層が確保されており、繊維断面における凹部も所望の形状で構造が安定して存在するものであり、本発明の要件を満足しており、実施例5においては、凸部の幅が凹部数を増加させた影響で薄くなったが、それに伴い凸部高さが減少したが、空気層を十分に確保出来ており、撥水性能においても問題のないものであった。ただ、耐磨耗性評価において、フィブリルが観察されたが、軽微なものであり実使用に問題のないものであった。結果を表1に示す。
実施例6、7
芯鞘複合繊維の複合比を70/30(実施例6)、90/10(実施例7)に変更したこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
実施例6においては、芯比率を減少させたため、実施例1と比較して凹部全体が大きくなったものの、凹部の入口が狭く、繊維断面中心方向に広い部分がある形状を維持しており、耐久性のある良好な撥水性能を発揮している。さらに、凸部の動きが制限されており、脱落及び耐磨耗性ともに良好なものであった。実施例7においては、芯比率を増加させたため、凹部全体が小さくなったものの、凹部入口が狭くなっており凹部に空気層を維持できる形状となっている。凹部が小さくなっていることで撥水初期性能が実施例1と比較すると低下するが、嵩高であることで布帛内部に空気層を確保できており、洗濯耐久判定も良「○」で良好な撥水性能発揮している。さらに、凸部が増加し、実施例1対比摩擦耐久性が優れるものであった。結果を表1に示す。
比較例1
特開2015-98661号公報に従い、細繊度であるポリエステル高配向未延伸糸Aを単糸繊度0.64dtex、トータル繊度92dtex144f(伸度132%、酸化チタン0.025%)とし、太繊度であるポリエステル高配向未延伸糸Bを単糸繊度4.06dtex、トータル繊度195dtex48f(伸度164%、酸化チタン2.2%)とし、複合混繊仮撚を行い、167dtex192fの混繊交絡糸を得た。この加工条件においては、特開2015-98661号公報の実施例1に従った。引き続き、溶出成分を使用していないため溶出操作は行わず、実施例1と同様に布帛形成を行い、撥水素材を得た。その素材について、撥水性能評価及び官能評価を実施したところ、初期撥水性能はあるが、洗濯耐久評価において、性能低下があり、満足できる素材となっていなかった。この撥水性能の洗濯耐久評価結果については、比較例1で用いた繊維は丸断面であり、本発明のように凹部が形成されていないことから、洗濯により撥水剤が脱落し性能低下が起こったと考える。結果を表2に示す。
比較例2
芯成分および鞘成分として、実施例1で用いたN6と共重合PET1を用い、特開平5-287613号公報に記載されている芯鞘複合繊維を形成する従来技術の紡糸口金にて紡糸を行った。この際、凸部の数が8個とし、実施例1に従い延伸糸を得て、評価を実施した。(仮撚り加工は実施していない。)
比較例2で採取した芯鞘複合繊維の断面では、原理的に芯成分の凸部を被覆するように凹部を形成し、鞘成分を繊維断面方向に流しこむため、凹部形状を制御することは困難であり、凸部の高さは不揃いであった(芯成分の外接円径:15.8μm 突起部高さ:平均4μm)。なお、凹部の広い部分が存在せず、凹部の幅が繊維断面中心方向に向かうにつれて狭くなっており(SWmax/SWmin:1.0)、凸部の幅は5μm、凸部の底面部が2.5μmであった(Pout/Pmin:2.0)。このような芯鞘複合繊維を実施例1と同様の方法で鞘成分の溶出を実施し、耐摩耗性試験を行った。次いで撥水加工を施し、撥水評価および、洗濯耐久試験を行った。磨耗処理前後でサンプル表層にフィブリルが明らかに増加するものであり、触感もガサガサをした風合いになった(耐磨耗性:不可(×))。これは、突起部の可動範囲が大きいことにより、摩擦により突起部が崩壊し、脱落したと予想する。撥水評価においては、嵩高性が低く布帛内部に取り込まれる空気量が少ないことが少なく、撥水剤そのものによる初期性能はあるが、洗濯することで性能低下が著しい結果であった(洗濯耐久性判定:不可(×))。また、布帛の官能評価においても柔軟性が劣位であり、結果を表2に示す。
比較例3
芯成分および鞘成分として、実施例1で用いたN6と共重合PET1を用い、特開2013-204196号公報に記載されている芯鞘複合繊維を形成する従来技術の紡糸口金にて紡糸を行った。この際、凸部の数が18個とし、その他の条件は実施例1に従い実施した。
比較例2と同様に、比較例3も本発明の要件を満足しない芯鞘複合繊維もしくは特殊断面繊維であり、このような繊維断面形状では、空気層を維持できなく、撥水性能が低く、洗濯耐久性判定においても不可「×」で耐磨耗性評価においても、フィブリル化が起こり、この凸部の劣化により、耐久性の高い撥水性能を発現するには至らなかった。結果を表2に示す。
実施例8
芯成分をポリエチレンテレフタレート(PET 溶融粘度:140Pa・s)、海成分は実施例1で使用した共重合PET1(溶融粘度:55Pa・s)として290℃で別々に溶融後、計量し、図10に示す分配孔の配置パターンを活用して、1本の芯鞘複合繊維に8箇所の溝部が形成されるようにし、24ホールから総吐出量50g/min、芯鞘比率80/20で吐出した。その他の条件は、全て実施例1に従い実施した。
実施例8の芯鞘複合繊維では、繊維断面外周部の凹部入口幅が0.7μmで繊維断面中心方向に広い部分が1.8μmであり(SWmax/SWmin:2.6)、凹部の入口が狭く繊維断面中心方向に広くなっていた。また、繊維径は、15.9μmで凹部深さは、3.0μmであり(SH/D:0.19)、繊維断面内に空気層を十分に維持できる所望の形状となっていた。また、嵩高性も高く、布帛内部に空気層を多く確保できることに起因し、高い撥水性能を発揮し、洗濯耐久性にも優れた性能を発現するものであった。さらに、布帛の官能評価において、風合いが良好で満足出来る素材であった。その結果を表2に示す。
実施例9
芯成分をポリブチレンテレフタレート(PBT 溶融粘度:160Pa・s)に変更して紡糸したこと以外は全て実施例8に従い実施した。
実施例8で得られた芯鞘複合繊維に関しても、実施例8と同様の嵩高性に加え撥水性能における耐久性及び優れた性能を有し、嵩高性により柔軟な風合いであった。結果を表2に示す。
実施例10
芯成分をポリプロピレン(PP 溶融粘度:150Pa・s)に変更して紡糸したこと以外は全て実施例8に従い実施した。
実施例10で得られた芯鞘複合繊維に関しても、実施例7と同様の嵩高性、優れた耐久性を有したものであった。実施例10では、芯鞘複合繊維が疎水性を示すPPからなっており、撥水性能に関しては、撥水加工なしで良好な動的な撥水性を示すことがわかった。PPは密度が0.91g/cmであり、軽量性も有するため、インナーやアウターなどの快適衣料用のテキスタイルに幅広く適用可能であると考える。結果を表2に示す。
実施例11
芯成分をナイロン610(N610 溶融粘度:160Pa・s)に変更して紡糸したこと以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例11で得られた芯鞘複合繊維に関しても実施例1と同様に嵩高性を有し、優れた耐久撥水性能を示す素材であった。なお、ナイロン610は原料の一部が植物由来となっているため環境負荷低減にも寄与できる素材であり、スポーツアウターなどの衣料用テキスタイルに幅広く適用可能であると考える。
実施例12、13
芯鞘複合繊維の複合比は80/20に固定し、芯成分の凹部の本数を2箇所(凹部位置角度:0deg、180deg)(実施例12)、3箇所(凹部位置角度:0deg、120deg、240deg)(実施例13)と変更したこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
いずれも嵩高く布帛内部にも空気層が確保されており、繊維断面における凹部も所望の形状で構造が安定して存在するものであり、本発明の要件を満足している。なお、凹部数が減少しているが、凹部の広幅部幅(SWmax)が増加し、空気層を十分に確保出来ており、撥水性能においても問題のないものであった。結果を表2に示す。
Figure 0007415455000001
Figure 0007415455000002
A:本発明の特殊断面繊維の一例
B:本発明の芯鞘複合繊維の一例
C:凸部の角度を示す一例
1:凹部
2:凸部
3:凹部入口幅(SWmin
4:凹部の広幅部幅(SWmax
5:凹部の中心線および溝深さ(SH)
6:凸部外接円(芯成分径(D))
7:凹部内接円
8:凸部先端の幅(Pout
9:凸部底面の幅(Pmin
10:異型度計測における対象特殊断面繊維
11:異型度計測における内接円
12:異型度計測における外接円
13:計量プレート
14:分配プレート
15:吐出プレート
16:計量孔
16-1:芯成分用計量孔
16-2:鞘成分用計量孔
17:分配溝
18:分配孔
18-1:芯成分用分配孔
18-2:鞘成分用分配孔
19:吐出導入孔
20:縮小孔
21:吐出孔
22:試料台
23:PETフィルム
24:指針付き金具
25:荷重
26:目盛
27:切り込み
28:糸カセ
d:凹部位置角度

Claims (7)

  1. 繊維の横断面形状に凹部が複数個存在し、該凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および繊維径(D)が下記式を満たし、且つ嵩高度が20以上であることを特徴とする特殊断面繊維。
    (SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
    0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
  2. 凹部の入口を形成する突起部分が鋭角であり、かつ隣り合う突起部間の幅(Pout)と凹部の入口幅(SWmin)および、隣り合う突起部間の幅(Pout)と隣り合う凹部の底面の幅(Pmin)が下記式を特徴とする請求項1に記載の特殊断面繊維。
    (Pout)/(SWmin)=2~10 ・・・(式3)
    (Pout)/(Pmin)≧1.3 ・・・(式4)
  3. ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびそれらの共重合体のいずれかの繊維形成可能ポリマーから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の特殊断面繊維。
  4. 撥水加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の特殊断面繊維。
  5. 請求項1請求項4のいずれか1項に記載の特殊断面繊維を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
  6. 少なくとも2種類以上のポリマーからなり、芯成分が難溶解性のポリマー、鞘成分が易溶解性のポリマーで構成されている芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯鞘界面に凹凸が複数個存在し、該凹部の入口幅(SWmin)、凹部の広幅部(SWmax)、凹部の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たし、且つ嵩高度が20以上である芯鞘複合繊維を、鞘成分の易溶解性のポリマーを溶解可能な溶剤に浸漬して鞘成分を除去することを特徴とする特殊断面繊維の製造方法。。
    (SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
    0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
  7. 鞘成分の易溶解性のポリマーを溶解可能な溶剤が、50℃以上に加熱されたアルカリ水溶液であることを特徴とする請求項6に記載の特殊断面繊維の製造方法。
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