JP2020076193A - 繊維束および繊維製品 - Google Patents

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則雄 鈴木
紘佑 ▲はま▼田
紘佑 ▲はま▼田
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正人 増田
Masato Masuda
正人 増田
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Abstract

【課題】カジュアル用途から過酷な環境下で使用されるアウトドア用途まで幅広く対応が可能で、かつ着用快適性を兼ね備える軽量撥水素材に適した繊維を提供する。【解決手段】断面形態が異なる2種類以上の繊維からなる繊維束において、少なくとも1種類の繊維の断面に、繊維中心部に向けて広幅部を有した溝が複数個存在し、該溝の入口幅(SWmin)、溝の広幅部(SWmax)、溝の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たすことを特徴とする繊維束。(SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)【選択図】図1

Description

本発明は、繊維束内に構成する繊維の断面が織り成す特徴的な空隙を有する繊維束、およびその繊維製品に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から産業資材用途まで幅広く利用されている。近年の生活様式の変化や健康志向の高まりに伴い、人々が繊維製品に求める特性は多様化し、特に人間が身につける衣料用テキスタイルでは、優れた高機能な快適素材が求められ続けている。
これ等の高機能材料の中でも、衣料用テキスタイルにおいては、撥水剤の人的な影響が取り上げられているため、人的影響の少ない撥水剤への代替が進められ、非フッ素撥水素材等の高度化が求められている。
撥水機能を有した衣料用テキスタイルは、主に、繊維を織り・編み等して布帛に仕立てた後に、撥水剤により処理を行うことで、繊維あるいは繊維製品の表層に撥水皮膜の形成する撥水加工が行われることで製造されている。
この撥水加工の肝である撥水剤には、従来、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水剤(C8撥水剤)が用いられてきたが、環境や人体への蓄積性、有害性が指摘されるようになり、より安全な非フッ素系撥水剤等への代替が加速している。
一方、非フッ素系撥水剤等は、人体影響が小さいとされながらも、撥水機能に必要な撥水皮膜での分子の規則配列が乱れやすく、初期の撥水性能ならびにその耐久性が十分なものにならない場合がある。
このため、基本的に撥水機能の発現および耐久性に劣る非フッ素撥水剤を用いて、従来のC8撥水剤並の性能とするために、撥水剤を多く付着させ、繊維間空隙に多量の撥水剤を存在させることが必要になる。また、そもそも撥水素材には、水滴等を衣服内に染み込ませないようにするために、基材となる生地(織編物)の組織を高密度化するものが多く、素材として厚手で重量感があり、剛性が高いものとなりやすく、着用快適性という観点では改善の余地があるものであった。
以上のような背景のもと、撥水剤の代替が進む中で、撥水加工を施す基材(生地)の改良に関しても、盛んに進められており、撥水素材の軽量化を実現しようとした提案が存在する。
例えば特許文献1は、中空繊維断面の外周部に微細な凸部を多く有する異形断面中空繊維を用いた布帛を基材とすることで、繊維内部の中空部(中空率8〜45%)と繊維間の空隙により、撥水性と軽量性の両立を狙った素材に関する提案である。
また、特許文献2は、従来の中空繊維を改良し、撥水性能向上を目的とした中空部まで貫通する貫通溝を有する中空繊維(所謂C型中空繊維:中空率30〜50%)を50%以上の割合で基材に含有させ、繊維内部(中空部)に撥水剤を付着させることで、撥水機能の耐久性と軽量性を両立する素材を狙ったものである。
特開平7−138882号公報(特許請求の範囲) 特開平6−228820号公報(特許請求の範囲)
しかし、特許文献1は、繊維中心から放射状に伸びた凸部と繊維内部に設けた中空部をその機能発現のポイントとした技術であるが、一般の撥水素材で用いられる繊維を加熱雰囲気下で撚糸などする糸加工においては、特殊断面の繊維は非常に潰れやすく、非常に精密な加工条件で糸加工を行わなければ繊維間空隙等を確保することが困難となる。また、撥水機能の発現においても、実質的には布帛表面の凹凸の寄与が重要になるため、布帛の高次加工時や実使用時にこれを維持するためには、繊維を過剰に太くすることが必要になる場合があり、目的とした撥水性と軽量性を両立させるのは多くの制約を伴うものであり、昨今の非フッ素撥水剤では更にその困難さを極めるものであった。
また、特許文献2は、繊維内部の中空部の確保が技術のポイントとなるが、特に高中空率とした場合には、開口部があることで中空部の潰れやC型中空繊維同士が噛み混むことで、繊維束内部に含んだ空気量は大きく低下する場合があり、機能性の確保が困難な場合がある。また、特許文献1と同様に、使用時に中空部の潰れを抑制するには、中空率を低下させるか、繊維の太さを大きく増加させる必要があるため、特許文献2でも、昨今の非フッ素撥水剤では求められる撥水機能や着用快適性の達成は困難な場合があった。
このように従来提案されている技術では、昨今の非フッ素撥水剤等を用いた撥水処理を前提とした撥水素材の要求には対応が困難であり、カジュアル用途から過酷な環境下で使用されるアウトドア用途まで幅広く対応が可能で、かつ着用快適性を兼ね備える軽量撥水素材に適した繊維が求められていた。
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
(1)断面形態が異なる2種類以上の繊維からなる繊維束において、少なくとも1種類の繊維の断面に、広幅部を有し且つ繊維中心部に向けた溝が複数個存在し、該溝の入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、溝の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たすことを特徴とする繊維束。
(SWmax/SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
(2)繊維束を構成する繊維の少なくとも1種類以上が中空繊維であり、中空部の中空率が20%以上であることを特徴とする(1)に記載の繊維束。
(3)繊維束を構成する繊維の少なくとも1種類以上が繊維外周から繊維中心にある中空部に向けて貫通した溝を有するC型中空繊維であり、該中空部の中空率が20%以上であることを特徴とする(2)に記載の繊維束。
(4)該C型中空繊維が異形度の異なる2種類以上の断面形態を有したものであり、この最大異形度と最小異形度の比(最大異形度/最小異形度)が1.1以上であることを特徴とする(3)に記載の繊維束。
(5)嵩高度が1.2以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の繊維束。
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載の繊維束がポリアミドであることを特徴とする繊維束。
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載の繊維束が仮撚り加工糸であることを特徴とする繊維束。
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載の繊維束を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
である。
本発明によれば、耐久性に優れた撥水性能を発現すると共に、繊維束内に空隙を安定的に形成することができる繊維束、更には、繊維間空隙で繊維束が柔軟に変形することにより、軽量性に加え、心地よい柔軟な風合いを兼ね備えた、高度化が進む昨今の快適衣料に適した繊維束を提供できる。
すなわち、本発明の繊維束を基材として用いることで、非フッ素撥水剤等を使用した場合でも、使用時の曲げや擦れ等や繰り返し行われる洗濯や過酷な擦過が加わる使用環境下で、高い撥水機能を耐久性高く維持することができる。また、本発明の繊維束を用いた基材においては、撥水機能を発現するのに、繊維束間の空隙を利用するため、撥水剤を過剰に付着させる必要がなく、嵩高く、軽量性にも優れるものであり、繊維束が柔軟に変形するで、柔軟な触感をも有した撥水素材になる。
本発明の繊維束の各構成繊維の例の横断面の概略図である。 本発明の繊維束の特殊断面繊維の溝部および溝部の溝深さを説明するための拡大概略図である。 本発明の繊維束の特殊断面繊維の突起部を説明するための概略図である。 本発明の繊維束の特殊断面繊維の突起部を説明するための拡大概略図である。 本発明の繊維束の特殊断面繊維の突起部の角度を説明するための拡大概略図である。 本発明の繊維束の異型度の測定方法を説明するための一例である。 本発明の繊維束の前駆体繊維の製造方法を説明するための説明図であり、複合口金の形態の一例であって、複合口金を構成する主要部分の正断面図である。 本発明の繊維束の前駆体繊維の製造方法を説明するための説明図であり、分配プレートの一部の横断面図である。 本発明の繊維束の前駆体繊維の製造方法を説明するための説明図であり、吐出プレートの横断面図である。 最終分配プレートにおける分配孔配置の一実施形態の一部拡大図である。 本発明の繊維束の前駆体繊維の製造方法を説明するための説明図であり、最終分配プレートにおける異形断面配置の概略図である。 嵩高度を測定するための装置の斜視図である。 嵩高度の測定方法を示す見取り図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に記述する。
本発明の繊維束は、繊維形成可能ポリマーよりなっている繊維の集合体(束)であり、断面形態が異なる2種類以上の繊維からなっていることを特徴とする。
本発明で言う繊維形成可能ポリマーとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体が挙げられる。また、これらの繊維形成可能ポリマーには本発明の目的を損なわない範囲で酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の繊維束は、製糸後に種々の高次加工を経て、最終製品にされるものである。このため、これ等の工程での処理温度等を踏まえると、用いる繊維形成可能ポリマーは融点が165℃以上の耐熱性が良好なポリマーであることが好適であり、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマーやポリアミド系ポリマーが好ましい。
本発明の繊維束は撥水機能と軽量性を備えた素材である。このため、その用途分野は、幅広く展開が可能であるが、その素材特性を踏まえると撥水性能を訴求する高機能アパレル素材として用いられることが好適であり、タウンユースのカジュアルな衣料から過酷な環境下で使用されるアウトドア衣料等にまで、その特性は有効に作用するものである。特にスポーツ衣料やアウトドア衣料においては、その使用環境によっては湿潤状態で擦過される場合もあり、既存製品においても、耐磨耗性に優れるポリアミド系繊維が多用されている。また、染色や縫製等の高次ノウハウが多数存在することや縫い糸等他の部位と素材を統一し、簡易にリサイクル可能といった観点からも、スポーツ衣料やアウトドア衣料で使用する場合には、ポリアミド系ポリマーがより好ましく使用される。また、ポリアミド系ポリマーの場合には、ポリエステル系ポリマーと比較して、そのポリマー特性として比重が20%程度軽く、本発明の訴求点のひとつである軽量性という観点からも好適であることは言うまでもない。
本発明の繊維束は、その繊維束を構成する少なくとも1種類の繊維が、その断面に、繊維中心部に向けて広幅部を有した溝を複数個有し、かつその溝の入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、溝の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たす繊維(以下、特殊断面繊維とも言う)であることが必要である。
(SWmax/SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
上記の入口幅(SWmin)、溝の広幅部(SWmax)、溝の深さ(SH)および芯成分径(D)は以下の通り評価するものである。
すなわち、本発明の繊維束をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で溝部が10本以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影する。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の溝部に関して、それぞれ溝部入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)、溝深さ(SH)を単位μmで測定し、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
以上の操作を10回繰り返してそれぞれの値の単純な数平均値(n=100)とし、小数点第2位以下を四捨五入することでそれぞれの値を求めるものである。
図1〜5に例示した、繊維中心部に向けて広幅部を有した溝が複数個存在する繊維断面の概要図を用いて具体的に説明する。図1のとおり、当該繊維は溝部1と突起部2を有する。溝の入口幅(SWmin:図2の5)は、繊維軸に対して垂直方向の繊維断面の、溝部の中心線(図2の7)に直交する長さを中心線に沿って外周部に向けて測定した際の最小箇所であり、溝の広幅部幅(SWmax:図2の6)とは、溝部の中心線に直交する長さを中心線に沿って外周部より繊維中心に向けて測定した際の最大箇所を意味する。
突起部の外接円の直径を芯成分径(D)とする。また、溝深さ(SH:図2の7)は、溝部中心線において、突起部外接円および溝部内接円との交点間距離を意味する。ここで言う外接円とは、繊維の断面において突起部の先端に2点以上で最も多く外接する真円(図3の8)であり、内接円とは溝部の先端(底部)に2点以上で最も多く内接する真円(図3の9)を意味する。
この溝形状により、溝内部が外部からの擦過等を受けないことから溝内部に浸透した撥水加工剤などが脱落しにくく、撥水性能維持を実現できたのである。その形状について、以下で詳しく、説明する。
本発明の繊維束においては、溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が重要であり、第1の要件となる。
ここで、溝の広幅部幅(SWmax)と溝部入口幅(SWmin)の比(SWmax/SWmin)が1.3以上という特異的な空隙を繊維内に形成することで、水滴が繊維に接触した際、その空隙に水滴が入り込みにくく、さらには空隙内に取り込まれている空気が、水滴を押し上げようと作用するため繊維内に空気層を維持でき、撥水効果を得ることが出来るのである。このように空隙内に水滴の浸入を防ぎ、撥水性能を高めるために好ましくは、1.5以上で、さらには空隙内部の空気層を確保し耐久性を上げるためにより好ましくは、1.8以上である。
また、芯成分径(D)と溝深さ(SH)の比((SH)/D)が0.15以上必要である。これは、溝によって形成されている空隙内に侵入しようとする水滴の自重や水圧がかかったとしても、空隙の奥まで水滴が到達せず、撥水性能を維持するのである。
なお、水滴侵入の観点からは、この値が大きければ大きいほど良いのであるが、空隙を形成する突起部が外力を受けたときの空隙の変形や破壊が起こりにくく、撥水性能を維持できる範囲として、0.25以下であることが本発明における実質的な上限となる。本発明者らの検討によれば、繊維内の空隙への水滴の浸入の抑制と撥水性能の耐久性に最も優れるのは0.18以上0.22未満であり、本発明における特に好ましい範囲として挙げることができる。
さらに、溝深さ(SH)も撥水性能に寄与するものであり、絶対値として、2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
一般に、繊維の直径が10〜23μmであるのに対して、雨粒の大きさは、100〜1000μm程度と過大なものであり、繊維に付着した水滴は、その自重で空隙に入り込み、空隙の底面(底部)を含めた繊維表面が水滴に取り込まれると、その物体(繊維)が濡れたこととなり、撥水機能は働かなくなる。
一方、繊維表層に形成された微細な凹凸の深さが深い場合は、水滴自身の表面張力により押し上げられ、表面が濡れない状態になることが撥水機能を発現するメカニズムであり、ハスの葉等で見られる、いわゆるロータス効果はこのような現象により成り立っている。
上記した撥水現象を安定的に発現させるためには、溝深さ(SH)は2μm以上であることが好ましい。この場合、布帛の組織等に概ね依存せず良好は撥水機能を布帛に発現させることができる。
本発明の繊維束は、上記した構成繊維の表面凹凸に加えて、繊維間空隙を利用するため、断面形態が異なる2種類以上の繊維からなっていることを特徴とする。
この断面の異なるということは、例えば丸断面と三角断面のような組み合わせであり、撥水性能と軽量性を実現するために上述の特徴的な空隙を有した繊維と中空繊維との組み合わせでもよい。また、当該中空繊維の断面形状も異なる複数種の組み合わせとすることで、繊維同士の最密化が起こらずに繊維間空隙を良好に確保することが出来き、嵩高性が増して薄くて軽い柔らかな触感の布帛を得ることが出来る。
特に、本発明の繊維束において、繊維束内に繊維間空隙を確保して軽量性および柔軟性を高めた構成するためには、繊維束を構成する繊維の少なくとも1種以上が中空繊維であることが好ましい。
ここで言う中空繊維とは、繊維断面において、その中心部に空気層を形成した繊維のことをいい、繊維の見掛け重量を低下させることができ、軽量性を感じられることに加えて、繊維中心部が中抜きになっていることで繊維が柔軟に変形し、布帛が柔らかに変形することが可能となる。
本発明の繊維束に用いる中空繊維は、軽量感が実感できるようになる中空率20%以上の中空繊維であることがより好ましい。
この中空率は高めるほど、軽量性が高まることを意味し、この中空率を高めるほど、軽量感と柔軟性をより高めることが可能となるが、この訴求点を最大限有効に活用しつつ、高次加工時の負荷や実使用時の繰返しの圧縮変形においても、中空部が問題なく復元できる中空率30〜50%とすることが本発明における特に好ましい範囲として挙げることができる。
上記した中空繊維においては、種々の中空断面を採用することができるが、より多くの空気を繊維内部に取り込めるという観点から、繊維外周から繊維中心にある中空部に向けて貫通した溝を有するC型中空繊維であること好ましい。
本発明の繊維束にC型中空繊維を用いることで中空部による軽量性を確保する。また、C型であることが、上述した繊維中心部に向けて広幅部を有した溝の如く振る舞うため、繊維束内の繊維1本1本に空隙を確保し、空気層を抱き込むことで撥水性に寄与する。さらには、開口部から繊維内部に撥水剤が浸透することで、洗濯などの摩擦擦過による撥水剤の脱落を防ぐことが出来、撥水性の耐久性が向上する。
本発明の繊維束は、繊維間空隙を確保することで軽量性や柔軟性が担保される。そこで、繊維間空隙確保のために嵩高性を上げることが好ましく、繊維同士の密な充填を防ぐために断面形状が大きく異なるものが好適である。中空繊維が様々な繊維断面形状であることでランダムな状態となり、繊維間の空隙を確保できるのである。中空繊維の断面形状の異形度の最小と最大の異形度比が1.1以上であることが目安となり、異型度の効果を発揮させるためには異形度比が1.2〜2.0がより好ましい範囲として挙げることができる。
本発明の繊維束において、係る範囲の異形度比を持った少なくとも2種類以上の断面形状からなる中空繊維が混合されて集合体となることになる。このため、布帛状態での繊維同士の密な充填が避けられ、繊維間空隙を生むことから、布帛の軽量性と嵩高性に富んだ布帛となる。このような観点から、中空繊維の異形度比が1.1以上であれば、繊維間空隙が十分に確保され、本発明の目的とする軽量性が得られるとともに、繊維同士の拘束が弱く柔軟に変形することが出来るため、柔らかな良好な触感が発現するのである。これは、従来撥水加工などで布帛の剛性が上がってしまうが、本発明の繊維束では繊維間空隙を確保できていることから布帛の柔軟性も確保できるのである。
ここで言う異形度比とは、繊維束内に混在するそれぞれ異なる断面の中空繊維の異形度の比を意味し、繊維毎の各断面の外接円径と内接円径との比、つまり異形度=外接円径/内接円径により算出される。
すなわち、異形度は繊維束をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、各断面形状の中空繊維が10本以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の同一断面形状の中空繊維の外接円径および内接円径をμm単位で測定し、異形度=外接円径/内接円径から小数点第2位以下を四捨五入することにより算出する。ここでいう外接円径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを意味し、内接円径は、切断面に内接する真円の径を意味する。図6に四角状の中空繊維の場合の外周形状(実線12)の概要図を示すが、図6中の破線14で示す部分がここでいう外接円にあたり、破線13で示す部分が内接円にあたる。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、各断面の異形度とし、繊維束内に混在する断面形状の異なる単糸の、最大の異形度と最小の異形度の比を異形度比とした。
さらに、本発明の繊維束は、布帛形成時の繊維束内の繊維間空隙を確保し、布帛の軽量性および嵩高性を満足するためには、異形度が最大の中空繊維が総フィラメント数に対して10〜50%の数比率で含まれることが好ましい。係る範囲とすれば、同一中間層断面同士が最密充填状態になることがなく、繊維間空隙が良好な確保されることから、本発明の目的である軽量性および嵩高性を達成することができる。繊維束の取扱い性や、布帛にした際の剛性等の力学特性を考慮すると、20〜45%とすることでバランスがよく、より好ましい範囲となる。
ここで言う数比率は、繊維束をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を実体顕微鏡にて、1本の繊維束全体が観察できる倍率として2次元的に画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で同一断面繊維の本数を測定し、数比率=(同一断面繊維本数)/(繊維束内繊維本数)×100から、小数第2位を四捨五入することにより算出する。
上記した本発明の繊維束における繊維間空隙が確保され、布帛の軽量性および柔軟性が満足できる範囲として、本発明の繊維束の嵩高度は1.2以上であることが好ましい。
この嵩高度が高いほど繊維の束としての占有している断面積が大きく、布帛にした際に厚みが増して見えることから、見た目から想像できる重さよりも軽く感じ、軽量感が得られる布帛となる。さらに、繊維間空隙があることで近くにある繊維に邪魔されずに動くことが出来るため、布帛のしなやかな柔らかい風合いとなる。
本発明の繊維束の溝部を形成する特殊断面繊維では、その溝の形状を安定的に保持することで、耐久性のある撥水性能や軽量性を維持できるのである。この耐久性を突き詰めると、突起部の可動範囲が大きいことに起因しており、突起部先端の幅と溝部の幅との関係に依存するものであり、本発明の目的を満足する範囲として、突起部先端の幅(Pout)と溝の入口幅(SWmin)の比(Pout/SWmin)が2.0以上10.0以下が好ましい。係る範囲であれば、突起部は自立して存在するため、空隙に依存した機能発現には非常に有効に働き、様々な特性を発現させることが可能となる。このような観点を推し進めると、Pout/SWminの値は大きいほど空隙確保に有効で、耐久性に優れるものとなり、耐久性に優れた本発明の繊維束とすることを考えると、Pout/SWminは3.0以上10.0以下であることが好ましい。また、本発明の繊維束を比較的過酷な雰囲気下で使用されるスポーツのアウターや擦過が多いインナーに使用する場合には、Pout/SWminは4.0以上10.0以下であることが特に好ましく、係る範囲であれば空隙に起因した性能が耐久性高く維持されることとなる。ここで言うPoutとは、突起部を挟んで隣り合う溝部の外接円との接点に相当する部分の点の距離(図4の10)を意味する。
また、この自立した突起部は擦過などの応力を付与した場合にも、突起部がほとんど可動することなく存在するため、空隙をより安定的に確保できる。このため、突起部の力学的な劣化が起こりにくく、空隙を確保することが出来、実使用時の耐久性にも大きく影響するのである。繊維表層に溝形状を有した特殊な断面の繊維(またはスリット繊維)による空隙の活用は、いくつか提案がなされている。しかしながら、長期間の使用など実用には課題が見られるものであった。これらの従来技術では、繰り返しの擦過や圧縮変形に対する配慮がなされているとは言いがたく、使い捨てのワイピングクロス等には適用できる可能性があるものの、繰り返し使用する衣料用途等には適用困難であった。つまり、外力により発生した突起部の剥離が毛羽立ちとなって、微細な毛玉の発生による風合いの悪化や発色性の低下に繋がり、適用するのが困難なのである。そして、何よりこれ等の繊維の特性は、突起部または溝部形成による空隙の存在に依存したものであるため、期待した性能は大きく低下し、長期使用には耐えないものであった。
一方で、突起部形状という観点では、突起部の形状が先端に向け細くなった形状が好適であるが、空隙確保に着目した場合は溝部に空気層を取り込む必要があることから、突起部先端の幅(Pout)と突起部底面の幅(Pmin)の比(Pout/Pmin)は1.3以上が好ましい。より多くの空隙を確保するために好ましくは、2.3以上でありさらに好ましくは、2.8以上である。ここで言うPminとは突起部を挟んで隣り合う溝部の内接円との接点に相当する部分の点の距離(図4の11)を意味する。Pout/Pminは、空気を取り込む空隙確保や撥水性能の観点から大きい方が好ましいが、耐久性の観点で不利となることから、本発明においては、実施可能な上限値を5.0未満が好ましい。スポーツ用途など過酷な環境下で使用する衣料などの場合は、大きな外力が加わるためにより好ましくは、4.5未満である。
本発明の繊維束における溝部を形成する特殊断面繊維の空隙(溝部)の数は、2個から16個の範囲であれば、安定的に空隙を確保することが出来るため耐久性のある撥水性能と軽量性が得られ、好ましい。スポーツ用途など過酷な環境下で使用する衣料などの場合は、大きな外力が加わるために空隙を確保するためにもより好ましくは、2個から8個である。
本発明の繊維束は、上述のとおり特殊断面繊維の特殊な溝形状により安定的な空隙を確保するものであり、その空隙により軽量性や撥水性能を発揮するのであり、該溝形状を維持することが必要な要件である。この形状を維持することは撥水性の維持にも大きく寄与し、空隙(溝)の入口を形成する突起部分が鋭角であることが好ましい。ここで言う鋭角とは、数学上の鋭角と同義で突起部の繊維表面の辺と溝部の辺の成す角(図5のE)が90度以下のことをいう。溝内部への水滴の浸入を防ぐために好ましくは80度以下である。このように突起部分が鋭角となっていることで、空隙(溝部)に水滴の侵入を抑制できると考えられる。 本発明の繊維束における溝部を形成する特殊断面繊維では、繊維内の空隙(溝部)の光学的な効果による防透け効果も得ることが出来るのである。
このような繊維の特性制御等は繊維に形成した特異的な空隙形状によるものである。このため、空隙形状が安定した状態で存在することが重要であり、本発明の繊維束では、特殊断面繊維の空隙いわゆる溝幅のバラツキ(CV%)が1.0%から20.0%であることが好ましい。さらには、溝深さ(SH)のバラツキ(CV%)が1.0%から20.0%であることが好ましい。
ここで言う溝幅とは、溝部入口幅(SWmin)であり、特殊断面繊維の側面を走査型電子顕微鏡(SEM)で溝部が10本以上観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の特殊断面繊維の側面に形成された溝幅を測定した値が本発明で言う溝幅である。ここで、1本の特殊断面繊維で、10本以上の溝部が観察できない場合には、他の特殊断面繊維を含めて合計で10本以上の溝部を観察すればよい。これら溝幅については、単位をμmとして測定し、小数点第2位以下を四捨五入するものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求める。この溝幅のバラツキとは、測定した100本の溝部について測定した溝幅の値から求めるものであり、溝幅の平均値および標準偏差から、溝幅バラツキ(溝幅CV%)=(溝幅の標準偏差/溝幅の平均値)×100(%)として算出される。以上の操作で測定した値を溝幅バラツキとし、小数点第2位以下を四捨五入するものである。なお、溝深さについては、前述の溝深さ(SH)の測定で測定した値を使用し、上述の溝幅バラツキ同様に算出する。
該溝幅のバラツキおよび溝深さのバラツキは、本発明の特殊断面繊維の特異的な空隙形状を起因とした性能のバラツキを担保するものである。本発明の特殊断面繊維に関しては、このバラツキの範囲が1.0%から20.0%であることが好ましく、係る範囲であれば安定して機能を発現することができる。特に、空隙形状による性能発揮を目的とする場合には、部分的に溝幅や溝深さが異なると、性能が変化するため、このバラツキが1.0%から15.0%とすることがより好ましい。
以下に本発明の繊維束の製造方法の一例を詳述する。
本発明の繊維束は、2種類以上のポリマーを用い、特殊断面繊維の前駆体繊維である芯鞘複合繊維と、中空繊維の前駆体繊維である最外層、中間層、最内層の3層に積層され繊維を製糸し、繊維束とすることにより製造可能である。ここで、本発明の繊維束の前駆体を製糸する方法としては、溶融紡糸による複合紡糸が生産性を高めるという観点から好適である。
本発明の繊維束の繊維間空隙を確保するためには、織編等の高次加工を施し布帛とした後、最外層または鞘部分の易溶解成分を溶解除去するなどする前駆体を用いることが好適である。これは、一旦布帛に成形した後に、鞘成分等の易溶解成分を除去することで、易溶解成分がもともとあった場所に、本発明の効果を助長する好適な空隙が生まれるためである。
この際、本発明の繊維束の前駆体繊維は、ある溶剤に対して、最外層または鞘部分が易溶解性のポリマー、中間層または芯部分が難溶解性のポリマーにより構成されていることが好ましい。
本発明の繊維束は、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーから構成された芯鞘複合繊維で、芯成分の断面において、広幅部を有した溝が複数存在している特殊な断面形態を有する前駆体繊維と、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが断面方向に積層されて最外層、中間層、最内層から形成される繊維断面を有している前駆体繊維からなっていることが好ましい。なお、鞘成分または最外層を形成するポリマーが易溶解性ポリマー、芯成分または中間層を形成するポリマーが難溶解性ポリマーであって、断面形状が異なる繊維が2種類以上混在している前駆体繊維を用いるのが好ましい。
このように、繊維1本の外周部(最外層・鞘部分)に溶出除去できる成分を配置することで繊維断面の特徴的な空隙と、繊維間の空隙確保で耐久性のある撥水性能と軽量性や柔軟性を兼ね備えた快適な繊維束を得ることが出来る。
ここで言う易溶解性ポリマーとは、溶解処理に用いる溶剤に対して難溶解性ポリマーを基準とした際に、溶解速度比(易溶解性/難溶解性)が100以上であることを意味する。高次加工における溶解処理の簡略化や時間短縮を考慮すると、この溶解速度比は大きいことが好適であり、本発明においては、溶解速度比が1000以上であることが好ましく、更に好ましくは10000以上とすることである。係る範囲においては、溶解処理を短時間で終了することができるため、工程速度を高めることに加えて、難溶解成分を不要に劣化させることなく、より品位の高い布帛を得ることができる。
本発明に用いる易溶解性ポリマーとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体から選択される。特に、最外層または鞘部分の溶出工程を簡便化するという観点では、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが取扱性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。
また、本発明者らの検討では、水系溶剤に対する溶解性および溶解の際に発生する廃液処理の簡易化という観点では、ポリ乳酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい。特に、前述した5−ナトリウムスルホイソフタル酸単独および5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加えてポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルにおいては、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶解性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚り加工などにおいても、前駆体繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性という観点から好適である。
一方、アルカリ水溶液での最外層または鞘部分溶解除去の場合には、中間層または芯部分は耐アルカリ性に優れるポリアミドとすることが好ましい。ここでいうポリアミドとは、力学特性に優れ、テキスタイルとしての展開が容易なポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が好ましく、製糸過程でのゲル化を起こしにくく、製糸性も優れるという観点ではポリカプロアミド(ナイロン6)がより好ましい。その他の成分としては、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を挙げることができる。
さらに、本発明の繊維束を構成する前駆体繊維のうち、最外層、中間層、最内層から形成される前駆体繊維の最内層成分は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体であれば限定されるものではないが、最内層成分に易溶解成分を選定することで、易溶解成分除去後に中間層成分からなる中空繊維が得られ、布帛としての嵩高性、軽量性の観点からすると好ましい。
特に、最内層成分がポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの溶融成形可能で、中間層成分よりも易溶解性を示すポリマーから選択することが好ましく、さらにはポリ乳酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい。
本発明の繊維束を構成する前駆体繊維のうち、最外層、中間層、最内層から形成される前駆体繊維の最内層成分に易溶解性ポリマーを配置することにより、溶解除去を経ることで中空繊維を得ることができる。つまり、繊維束に空隙を形成することで軽量性および嵩高性に優れる布帛を提供することができることから、最内層成分は易溶解性ポリマーを配置することが好ましい。易溶解成分の溶剤による溶解除去は、繊維表面つまり最外層成分から除去されるが、最内層までの連通部を設けることにより、易溶解性ポリマーの溶解に要する時間を格段に短縮することができる。この連通幅を繊維直径の1%以上にすることにより、大幅な時間の短縮が可能であり、繊維直径の10%以下にすることにより、連通幅が過剰に大きすぎることによる繊維同士の噛み込みにより、空隙の低下に伴う嵩高性および軽量性を損ねることを予防することができる。以上の観点から、連通幅を繊維直径の4〜8%であることが好ましい。
ここで言う連通幅は、異形度の評価方法と同様に、最外層除去後の繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、各断面形状の繊維が10本以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の同一断面形状の繊維直径および連通幅をμm単位で測定し、繊維直径に対する連通幅の比率として、小数第2位を四捨五入することにより算出する。図1に本発明の繊維束の構成繊維の一例を示すが、図1中の中空繊維BまたはCにおける破線3で示す部分がここでいう繊維直径にあたり、破線4で示す部分が連通幅にあたる。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求め、連通幅とした。
ここで、本発明の繊維束の前駆体繊維を製糸する場合には、断面形状の制御に優れるという観点で、後述する複合口金を用いる方法とすることが好ましく、この場合、特殊な溝形状を得るためと、中間層の断面形状、特に異形度の大きい断面を制御する点で有効である。
本発明の繊維束を得るための前駆体繊維の一つである芯鞘複合繊維は、従来公知の複合口金を用いて製造することは、特異的な空隙を確保するべく繊維の特殊な断面形状とするための断面制御の点で非常に困難なことである。確かに、従来公知の分割複合繊維用口金を用いることでも原理的には製糸可能であるといえるが、本発明の重要な要件である特異的な空隙を形成する突起部分の間隔や溝深さを制御することは困難である。すなわち、従来公知の複合口金技術では、従来技術に見られる溝部が繊維内層まで入り込んだ形状となったり、開口部および溝深さ方向の安定的な制御が困難となったり、本発明の高次加工通過性や溶出後の耐久性に優れた特異的な空隙形成の達成は難しく、本発明の目的を満足するには至らない場合が多い。
本発明者らは芯鞘複合繊維の製造方法について鋭意検討し、図7に例示するような複合口金を用いた方法が、本発明の目的を達成するには好適であることを見出したのである。
本発明の繊維束の前駆体繊維を製造するのに適した複合口金を図7に例示している。図7は、上から計量プレート15、分配プレート16および吐出プレート17の大きく3種類の部材が積層されたものであり、ポリマーA、ポリマーBといった2種類のポリマーを用いるものを例示している。本発明の製造方法では、必要に応じて、3種類以上のポリマーを用いて製糸しても良く、3種類以上のポリマーを複合化することを想定すると、やはり図7に例示したような微細流路を利用した複合口金を用いることが好ましい。
図7に例示した口金部材では、計量プレート15が各吐出孔および各ポリマー成分の分配孔当たりのポリマーの量を計量し流入させ、分配プレート16が繊維の断面における中間層断面形状を制御する。次いで、吐出プレート17によって、分配プレート16で形成された複合ポリマー流が圧縮され、吐出されるという役割を担っている。複合口金の説明が錯綜するのを避けるため、図示されていないが、計量プレートより上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いればよい。ちなみに、計量プレート15を既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。このため、特に該複合口金のために紡糸機を専用化する必要はない。
また、実際には流路−計量プレート間あるいは計量プレート15−分配プレート16間に複数枚の流路プレートを積層すると良い。これは、口金断面方向および繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート16に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート17により吐出された複合ポリマー流は、従来の溶融紡糸法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られて、本発明の繊維束の前駆体となる。
本発明の繊維束の前駆体繊維を達成するには、前述のような複合口金を採用することに加え、断面の長時間安定性という観点では、ポリマーAの溶融密度ηAとポリマーBの溶融粘度ηBとの溶融粘度比(ηB/ηA)が0.1から2.0であることが好ましい。
ここでいう溶融粘度とは、チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200rpm以下とし、キャピラリーレオメーターによって、測定できる溶融粘度を指し、紡糸温度での同剪断速度の際の溶融粘度を意味する。
本発明では繊維断面の形態は、基本的に分配孔の配置により制御される。ただし、各ポリマーが合流し、複合ポリマー流を形成した後に縮小孔によって断面方向に大幅に縮小されることとなるため、長時間の製造を想定した場合には、ポリマーの吸湿による粘度変化等の経時的な変動を加味する必要があり、溶融粘度比を係る範囲にすれば、これ等の変動が影響を与える可能性は小さく、安定に製造が可能となる。
なお、以上のポリマーの溶融粘度に関しては、同種のポリマーであっても、分子量や共重合成分を調整することで、比較的自由に制御できるため、溶融粘度をポリマー組み合わせや紡糸条件設定の指標にしている。
吐出導入孔および縮小孔を経て複合ポリマー流は、分配孔の配置の通りの断面形態を維持して、吐出孔から紡糸線に吐出される。この吐出孔は、複合ポリマー流の流量、すなわち吐出量を再度計量する点と紡糸線上のドラフト(=引取速度/吐出線速度)を制御する目的がある。吐出孔の孔径および孔長は、ポリマーの粘度および吐出量を考慮して決定するのが好適である。本発明の繊維束の前駆体繊維を製造する際には、吐出孔径Dは0.1〜2.0mm、L/D(吐出孔長/吐出孔径)は0.1から5.0の範囲で選択することが好適である。
溶融紡糸を選択する場合、ポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
本発明の繊維束を構成する前駆体繊維のうち、最外層、中間層、最内層から形成される前駆体繊維を紡糸するための最外層成分、中間層成分、最内層成分の好適な組み合わせは、目的とする用途に応じて中間層成分を選択し、中間層成分の融点を基準に同紡糸温度で紡糸可能な最外層成分および最内層成分を選択すれば良い。ここで前述した溶融粘度比を考慮して、各成分の分子量等を調整すると、中間層成分の断面形状および繊維径といった均質性を向上させるという観点から好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドをポリマーAとポリマーBで分子量を変更して使用したり、一方をホモポリマーとして、他方を共重合ポリマーとしたりして使用することが好ましい。さらに、最外層成分は他の成分よりも易溶解性を示すポリマーから選択することが好適であり、最外層成分の溶解除去に使用する溶剤に対する難溶解成分との溶解速度差が10000以上を目安としたポリマーからの組み合わせを選択すると良い。
また、最内層成分は、目的とする機能を付与することができるポリマーを選択することができ、例えば、嵩高性および軽量性といった機能を付与するには、最内層成分に易溶解成分を選択すると良い。以上の観点から、本発明の繊維束を採取するのに好適なポリマーの組み合わせとしては、易溶解成分を5−ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合され、かつ重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステル、難溶解成分をナイロン6、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートとすることが好適な例として挙げられる。
本発明における紡糸温度は、前述した観点から決定した使用ポリマーのうち、主に高融点や高粘度のポリマーが流動性を示す温度とすることが好適である。この流動性を示す温度とは、ポリマー特性やその分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。この温度であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制され、良好に本発明の繊維束を構成する前駆体繊維のうち、最外層、中間層、最内層から形成される前駆体繊維を製造することができる。
本発明におけるポリマーの吐出量は、安定性を維持しつつ溶融吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/holeから20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa〜40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
本発明に用いる前駆体繊維のうち、最外層、中間層、最内層から形成される前駆体繊維を紡糸する際の最外層成分の比率は、最外層成分、中間層成分および最内層成分の合計吐出量を基準に重量比で5〜40%の範囲であることが好ましい。ただし、最外層成分の重量比が小さいほど、溶解除去後に繊維径が痩せ細ることに起因する、目開きや目ズレによる布帛としての性能の低下を予防することができ、且つ、最外層成分の重量比が大きいほど、溶解除去後に繊維間空隙が生まれ、良好な嵩高性および軽量性を得ることが出来る。以上の観点から、最外層成分の重量比が10〜30%であることがより好ましい。
また、最内層成分に易溶解性ポリマーを配置する場合の最内層成分の比率は、中間層成分と最内層成分の合計吐出量を基準に重量比で20〜40%の範囲であることが好ましい。最内層成分の重量比を係る範囲とすれば、最内層成分除去後に中空繊維として嵩高性および軽量性を有しつつ、布帛としての実使用時の中空部潰れにより軽量性を損ねることを予防することができる。
吐出孔から溶融吐出された糸条は、冷却固化され、油剤等を付与することにより収束し、周速が規定されたローラーによって引き取られる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定するものであるが、本発明では、繊維束を構成する前駆体繊維を安定に製造するという観点から、100m/minから7000m/minが好ましい範囲として挙げられる。この紡糸された繊維は、熱安定性や力学特性を向上させるという観点から、延伸を行うことが好ましく、紡糸した繊維を一旦巻き取った後に延伸を施すことも良いし、巻き取ることなく紡糸に引き続いて延伸を行っても良い。
この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラーからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下の温度に設定された第1ローラーと結晶化温度相当とした第2ローラーの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として選択すればよい。ここで、延伸倍率を高め、力学特性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
本発明の繊維束を構成する特異的な空隙を形成する溝形状を有した繊維および中空繊維を得るためには、易溶解成分を溶解可能な溶剤などに前駆体繊維を浸漬して鞘成分、最外層成分、かつ最内層成分を除去すればよい。易溶解成分が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。本発明の繊維束を構成する前駆体繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、繊維構造体とした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の速度を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用すれば、一度に大量に処理することができるため、生産性もよく、工業的な観点から好ましい。
以上のように、本発明の繊維束を得るための前駆体繊維の製造方法を一般の溶融紡糸法に基づいて説明したが、メルトブロー法、スパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
本発明の繊維束の前駆体繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよく、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。特に仮撚り加工を行うことで、断面形状が多様化し、繊維間の空隙確保する上でも有利である。そのため、本発明の繊維束の前駆体繊維で布帛状態とした後、溶出操作をすることで繊維同士の密な充填が避けられ、繊維間空隙を生むことから、布帛の軽量性と嵩高性、さらには柔らかさに富んだ布帛となる。
本発明における繊維束の前駆体繊維は、高次加工における工程通過性や実質的な使用を考えると、一定以上の靭性を持つことが好適であり、繊維の強度と伸度を指標とすることができる。ここで言う、強度とは、JIS L1013(2010年)に示される条件で繊維の荷重−伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。ここで、初期繊度とは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。
本発明の繊維束の構成繊維の強度は、0.5〜10.0cN/dtex、伸度は5〜700%であることが好ましい。本発明の繊維において、強度の実施可能な上限値は10.0cN/dtexであり、伸度の実施可能な上限値は700%である。また、本発明の繊維束をインナーやアウターなどの一般衣料用途に用いる場合には、強度が1.0〜4.0cN/dtex、伸度が20〜40%とすることが好ましい。また、使用環境が過酷であるスポーツ衣料用途などでは、強度が3.0〜6.0cN/dtex、伸度が10〜40%とすることが好ましい。産業資材用途、例えば、ワイピングクロスや研磨布としての使用を考えた場合には、加重下で引っ張られながら対象物に擦りつけられることになる。このため、強度が1.0cN/dtex以上、伸度10%以上とすれば、拭き取り中などに繊維が切れて脱落などすることなくなるため、好適である。
以上のように本発明の繊維束の構成繊維では、その強度および伸度を目的とする用途等に応じて、製造工程の条件を制御することにより、調整することが好適である。
本発明の繊維束の前駆体繊維を溶出操作した後、繊維製品として使用する場合、撥水加工を施し、さらに必要に応じて、制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ、その他公知の後加工を併用することができ、これら制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ剤などの機能加工剤の洗濯耐久性を向上させることも出来る。
本発明の繊維製品は本発明の繊維束を一部または全部に含むものであるが、撥水度を4級以上とするのが好ましく、この撥水度は、主に撥水剤を施すことにより達成される。繊維製品に施す撥水剤は、シリコーン系、フッ素系等その他任意の撥水剤を用いることができる。撥水加工工程は、パディング法、スプレー法、コーティング法など特に限定されるものではない。
なお、撥水性能の耐久性を向上させるために、撥水剤に架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系樹脂、ブロックイソシアネート系化合物(重合)、グリオキザール系樹脂およびイミン系樹脂などの少なくとも1種使用することができ、その架橋剤は特に限定されるものではない。
本発明の繊維束の前駆体繊維は、図1に例示される構成となるように、中間層の断面形状が異なる前駆体繊維が2種類以上混在していることが好ましい。
本発明の繊維束の前駆体繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な中間体とし、溶出成分を溶出して特徴的な空隙である溝部を有する特殊断面繊維と断面の異なるC型中空繊維とを発生させ、様々な繊維製品とすることが可能である。また、本発明の繊維束の前駆体繊維は、未処理のままや部分的に溶出させるなどして空隙をコントロールして繊維製品とすることも可能である。ここで言う繊維製品は、ジャケット、スカート、パンツ、下着、スポーツ衣料、などの一般衣料用途の他、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途にも使用することができる。
このような繊維製品へ適用する場合、基本的には繊維に対して、溶出操作をすることとなる。このため、本発明の繊維束の前駆体繊維においては、該繊維の断面において難溶出成分の面積比率が50%から90%とすることが好ましい。係る範囲であれば、例えば、織物とした場合でも、繊維間の空隙が適度となり、他の繊維と混繊するなどする必要なく使用することが可能となる。また、溶出処理時間を短縮するという観点では、溶出成分の面積比率を低くすることが好適であり、この観点では、難溶出成分の面積比率が70%から90%であることがより好ましく、80%から90%が特に好ましい。
本発明の繊維束の前駆体繊維における芯鞘複合繊維においては、芯成分の面積比率が90%を超えたものとすることも可能であるが、実質的に鞘成分が空隙を安定的に形成できる範囲として、比率の上限値を90%とした。
以下実施例を挙げて、本発明の繊維束ついて具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s−1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
繊度を測定する繊維は、温度25℃湿度55%RHの雰囲気下で単位長さ当たりの重量を測定し、その値から10000mに相当する重量を算出する。これを10回繰り返して測定し、その単純平均値の小数点以下を四捨五入した値を繊度とした。
C.繊維の力学特性
前駆体繊維をオリエンテック社製引張試験機 テンシロン UCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/minの条件で応力−歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで強度を算出し、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、強度は小数点第2位、伸度は小数点以下を四捨五入した値である。
D.断面に繊維中心部に向けて広幅部を有した溝を複数個有した繊維断面の断面パラメータ
各紡糸条件で採取した芯鞘複合繊維からなる編地を鞘成分が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。その繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)キーエンス社製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて繊維表層に溝を有した繊維断面が10本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に選定した10本を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、芯成分径(D)を測定した。また、その繊維の溝部に関して、10箇所の溝部入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、溝深さ(SH)、を測定した。さらに、その繊維の突起部に関して、突起部先端の幅(Pout)、突起部底面の幅(Pmin)についても同様に測定した。同じ操作を10画像について行い、10画像の平均値をそれぞれの値とした。なお、これらの値はμm単位で小数点第2位まで求め、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
E.溶出処理時の脱落評価
各紡糸条件で採取した前駆体繊維からなる編地を鞘成分および最外層、最内層が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。
突起部の脱落の有無を確認するため、下記の評価を行った。
溶出処理に用いた溶剤を100ml採取し、この溶剤を保留粒子径0.5μmのガラス繊維ろ紙に通す。ろ紙の処理前後の乾燥重量差から突起部の脱落の有無を判断した。重量差が10mg以上の場合には、脱落多として「×」、10mg未満5mg以上の場合には、脱落中「△」、5mg未満の場合には、脱落なし「○」とした。
F.溝幅および溝幅バラツキ(CV%)
繊維束を観察台に横方向に貼り付け、(株)キーエンス社製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて繊維表層に形成された溝部が10本以上観察できる倍率として撮影し、この画像から無作為に選定した10本の溝部を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、溝幅(SWmax、SWmin)を求めた。なお、溝幅はμm単位で小数点第2位まで求め、小数点第2位以下を四捨五入するものである。同じ操作を10画像について行い、10画像の平均値および標準偏差を求めた。これらの結果(溝部入口幅(SWmin)の平均値及び標準偏差)から下記式に基づき溝幅バラツキ(CV%)を算出した。
溝幅バラツキ(CV%)=(標準偏差/平均値)×100
溝幅バラツキは小数点第2位まで計算して、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
G.撥水性能
撥水加工を施した布帛サンプルを20cm×20cmのサンプルサイズになるように10枚切り出し、評価サンプルを準備した。各サンプルについて、中央に直径11.2cmの円を描き、該円の面積が80%拡大されるように伸張し、撥水度試験(JIS L 1092)に使用する試験片保持枠に取り付け、スプレー試験(JIS L 1092(2009)「繊維製品の防水性試験方法」)を行い、級判定を行った。撥水性能を5段階評価し、10サンプルの級判定結果の平均値を撥水性能とした。
H.撥水加工の洗濯耐久性
布帛の洗濯方法については、JIS L 0217(1995)「繊維製品の取扱い表示記号及びその表示方法」に記載の103法を用いた。洗濯回数は0回、10回で評価を行った。なお、撥水性能は上記Hで行った。ここで、洗濯回数10回の級判定において、2級未満を不可として「×」、3級未満を可として「△」、3級以上を良として「○」とした。
I.耐磨耗性評価
摩耗方法についてはJIS L 1076(2012)「織物及び編物のピリング試験方法」に記載のアピアランス・リテンション形試験機を用い、上部ホルダー底面積を約13平方cm、摩擦回数を90rpm、押圧荷重を7.36Nに設定し、上部ホルダー及び下部摩擦板の上に織物を固定し、10分間摩耗した。摩耗後、上部ホルダーにセットした織物の単繊維のフィブリル化の様子を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX−2000にて50倍で観察した。この際、磨耗処理前後のサンプル表面変化を確認し、フィブリル化の様子を3段階評価した。処理前後にてサンプル表面全体にフィブリル化が発生した場合は、不可として「×」、一部に発生が認められる場合は可として「△」、発生が認められない場合は良として「○」とした。
撥水加工例
対象の布帛を、ネオシードNR−158(日華化学社製)を5重量%、ベッカミンM−3(DIC社製)を0.3重量%、キャタリストACX(DIC社製)を0.3重量%、イソプロプルアルコール1重量%、水93.5重量%で混合した処理液に浸漬し、マングルにて絞り率60%で絞液後、130℃×1分で乾燥、170℃×35秒でキュアリングして、撥水加工布帛サンプルを得る。なお、溶出後の繊維がナイロンの場合は、フィックス処理を行う。フィックス処理は、ナイロンフィックス501(センカ社製)を5%owfで使用し、反応条件は80℃×30分、浴比は生地:水を1:20で行う。
D.異形度
前駆体繊維の溶出成分を溶解除去した繊維束を繊維軸方向の任意の位置で切断し、その繊維断面を(株)キーエンス社製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて、各断面形状の繊維が10本以上観察できる倍率として撮影し、各断面の切断面に外接する真円の径(図6の破線14)を外接円径、内接する真円の径(図6の破線13)を内接円径として、異形度=外接円径/内接円径から算出した。この操作を各断面について10ヶ所行い、得られた結果の平均値を各断面の異形度とした。
E.異形度比
上記で求めた異形度から、繊維束内に混在する断面形状の異なる中空繊維の、最大の異形度と最小の異形度の比を求め、小数第2位を四捨五入した値を異形度比とした。
F.数比率
繊維束横断面を実体顕微鏡にて、1本の繊維束全体が観察できる倍率として撮影し、上記で求めた同異形度の繊維の本数をカウントし、数比率=(同異形度の繊維本数)/(繊維束内繊維本数)×100から、小数第2位を四捨五入することにより算出した値を数比率とした。
G.連通幅
前駆体繊維から溶出成分を溶解除去した繊維束を走査型電子顕微鏡(SEM)の繊維が10本以上観察できる倍率として撮影し、繊維直径(図1の破線3)および連通幅(図1の破線4)を測定し、繊維直径に対する連通幅の比率(%)を算出した。この操作を各断面について10ヶ所行い、得られた結果の平均値を各断面の連通幅とした。
H.繊維束の嵩高度M
図12は繊維束の嵩高度Mを測定する装置の斜視図であり、図13はこの装置による測定方法を説明するための見取り図である。試料台24の上面に2本の切り込み29を設け、その外側縁部間の間隔を6mmとし、この切り込みに巾2.5cmのPETフィルム25を掛け渡し、その下に指針付き金具26および荷重27を結合する。金具26の指針は、試料を装着しない場合に目盛28のゼロ位を示すようにセットする。試料は周長1mの検尺機を用いて表示繊度50000dtex、糸長50cmになるようにする。次いで得られたカセ30を図13の正面図(a)および断面図(b)に示すようにPETフィルム25と試料台24との間に差し入れ、縮んでいる試料を引張り、カセ長25cmになるようにカセを固定する。荷重27は指針付き金具26と合計して50gになるようにし、指針の示すL(cm)を読みとる。測定は3回行い、平均のL値から次式によって嵩高度Mを算出する。上記マルチフィラメントをアルカリ溶液により易溶解性分を溶解除去し、同様の手法により嵩高度を算出することで、中間層のみからなるマルチフィラメントの嵩高度を評価した。
M(cc/g)=フィルム中の体積V/フィルム中の糸重量W
V(cc)=L/π×2.5
W(g)=50000×(マルチフィラメント本数)×(0.025/10000) 。
J.編地の軽量感
繊維束を編み機にて編地サンプルとし、アルカリ溶液による易溶解成分の溶解除去後の編地を手に持ち、熟練した検査者(5人)の触感によって編地の軽量感を、ナイロン中実からなる編地との相対評価として官能評価で3段階評価した。軽量感を大きく感じる場合は「A」、軽量感を感じる場合は「B」、軽量感を感じない場合は「C」とした。
実施例1
芯成分として、ナイロン6(N6 溶融粘度:120Pa・s)、鞘成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%および分子量1000のポリエチレングリコール10wt%が共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET1 溶融粘度:45Pa・s)を280℃で別々に溶融後、計量し、図7に示した本発明の複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、吐出プレート直上の分配プレートは、芯成分と鞘成分の界面に位置する部分が図10に示す配列パターンとし、芯成分用分配孔群と鞘成分用分配孔群が交互に配置することで、1本の芯鞘複合繊維に8箇所の溝部が形成するようにした孔を18孔配置した。また、吐出プレートは、吐出導入孔長5mm、縮小孔の角度60°、吐出孔径0.3mm、吐出孔長/吐出孔径1.5のものを用いた。
ポリマーの総吐出量は19.6g/minとし、芯鞘複合比は、重量比で80/20となるように調整した。溶融吐出した糸条を冷却固化した後油剤付与し、紡糸速度1200m/minで巻き取ることで未延伸繊維を得た。
一方、ポリマー組み合わせ(最外層・最内層と鞘部分、中間層と芯部分の組み合わせ)および溶融条件は同一で吐出量および口金を変更し、吐出プレート直上の分配プレートは、中間層断面形状が円形C型、四角形C型となるようにし、図11に示すような口金(F)に円形C型9孔(G:鎖線枠内)、四角形C型9孔(H:一点鎖線枠内)を配置したものを使用して、溶融紡糸した。なお、吐出プレートは吐出孔径0.3mm、吐出孔長/吐出孔径は1.8のものを用いた。
ポリマーの総吐出量は19.8g/minとし、最外層成分の比率は、最外層成分、中間層成分および最内層成分の合計吐出量を基準に重量比で20%、最内層成分の比率は、中間層成分と最内層成分の合計吐出量を基準に重量比で30%となるように調整した。溶融吐出した糸条を冷却固化した後油剤付与し、紡糸速度900m/minで巻き取ることで未延伸糸を得た。
さらに、得られた2種類の未延伸糸(前駆体繊維)の合糸延伸を行うべく、50℃と130℃に加熱したローラー間で3.0倍延伸を行い(延伸速度800m/min)、延伸糸を得た(110dtex−36フィラメント)。
ここで得た複合繊維の力学特性は、強度4.5cN/dtex、伸度41%と高次加工を行うのに十分な力学特性を有しており、織物や編物に加工した場合でも、糸切れ等が全く発生しないものであった。
この複合繊維を編物とした試験片を90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:100)にて、溶出成分を99%以上脱海した。この際、鞘成分は溶出処理を開始して10分間以内に鞘成分が速やかに溶出されるものであり、鞘成分を溶出した溶剤を目視観察しても、突起部の脱落は認めらなかった。この鞘成分が溶出した溶剤を利用して脱落評価したが、ろ紙の重量変化が3mg未満であり、脱落なし(判定:○)であり、溝部、突起部いずれの劣化がなく、高次加工通過性に優れるものであった。ちなみに、溶出後の特殊断面繊維を追加で10分間90℃に加熱したアルカリ水溶液で処理しても、依然突起部の脱落は認められないものであった。
前述した操作にて採取した特殊断面繊維の繊維断面は、図3のとおり、図面上方を0degとした場合、溝部位置角度が、0deg、45deg、90deg、135deg、180deg、225deg、270deg、315degの8カ所であった。
また、溝部入口幅が0.9μmで溝の広幅部幅が1.6μmであり(SWmax/SWmin:1.8)、溝部の入口が狭く繊維断面中心方向に広くなっていた。また、芯成分径は、15.9μmで溝深さは、3.1μmであり(SH/D:0.19)、空気層を十分に維持できる所望の形状となっていた。溝幅バラツキは、5.3%であり、観察画像内ではいずれも0.9μmの溝部を維持しながら自立している突起部を確認することができた。次いで、耐磨耗性評価を実施したところ、強制的な磨耗を加えた場合でも、突起部の剥離や崩壊は認められず、サンプル表面にフィブリル化の発生は認められなかった(耐磨耗性判定:良(○))。
この耐久性に優れる特殊断面繊維に撥水加工を施すと、水の静的接触角が130°を超え、実使用に用いる際に重要となる動的な撥水性能の級判定が平均で5.0級であり、さらに洗濯耐久性評価においても級判定は平均3.5級であり、水滴の転がりが速く、耐久性のある良好な撥水性能を発現することがわかった(洗濯耐久判定:良(○))。結果を表1に示す。
また、以上の操作にて採取した繊維は、四角形C型が数比率で25%混在されており、その異形度比は表1に示したとおり、本発明の繊維束の要件を満たすものであった。
この繊維束を観察したところ、異形度の大きい四角形C型断面は局所的に存在することなく、円形C型断面中にランダムな状態で混在するものであった。さらに、連通部は6.8%と狭いものであり、C型繊維同士の噛み込みが全く確認されないものであった。
次いで、この繊維束における嵩高度を評価したところ、最外層成分および最内層成分の溶解除去による空隙の発生のため、嵩高度が2.3と優れたものであった。さらに、編地の軽量感およびふくらみ感は優れたものであった。結果を表2に示す。
実施例2および3
実施例2は、実施例1で用いている特殊断面繊維と最外層と最内層に易溶解性ポリマー、中間層に難溶解性ポリマーを用いた中空繊維を用い、実施例3は、丸形C型を用いた以外は、実施例1同様な方法で評価まで行った。その結果、表1、2のとおり撥水性、軽量性、柔軟性に優れた物であった。
実施例4
実施例1で得られた延伸糸で、延伸倍率1.1倍、1stヒーター温度170℃で仮撚り加工を施し、仮撚り加工糸を得た。それ以外は実施例1同様に評価を行った。仮撚り加工にて繊維断面が不定型となり嵩高性が上がり、表1のとおり撥水性、軽量性とも満足のいくものであった。
実施例5および6
実施例1の特殊断面繊維の鞘成分ポリマーの比率を表1のとおりと以外は、実施例1同様に行った。表2のとおり、いずれも撥水性能にやや差があるものの満足いくものであった。
実施例7および8
実施例1の円形C型および四角形C型の易溶解ポリマーの比率を表1のとおりとした以外は、実施例1同様に行った。表2のとおり、いずれも軽量性や柔軟性においてやや差があるものの満足いくものであった。
実施例9
実施例1の特殊断面繊維の溝部を4にした以外は、実施例1同様に評価した。この際の溝部位置角度は、0deg、90deg、180deg、270degであった。表3、4のとおり、良好な撥水性能、軽量性、柔軟性が得られた。
実施例10および11
実施例1の四角形C型を実施例10では八角形C型、実施例11では三角形C型とした以外は、実施例1同様に評価した。表3、4のとおり、いずれも嵩高性が良好で満足のいくものであった。
実施例12
実施例1の特殊断面繊維の芯成分ポリマーをポリプロピレン(PP 溶融粘度:150Pa・s)とした以外は、実施例1同様な方法で評価した。表2のとおり、実施例12では、特殊断面繊維が疎水性を示すPPからなっており、撥水性能に関して良好であり、さらにPPは密度が0.91g/cmであり、ナイロンやポリエステルに比べ軽量であることから、軽量性にも優れるため、インナーやアウターなどの快適衣料用のテキスタイルに幅広く適用可能であると考える。
実施例13および14
実施例1の特殊断面繊維の溝部を実施例13は2(溝部位置角度:0deg、180deg)に、実施例14は3(溝部位置角度:0deg、120deg、240deg)にした以外は、実施例1同様に評価した。表3、4のとおり、溝部の数を少なくしているが、実施例1同等の良好な撥水性能を維持できており、軽量性、柔軟性の面でも良好で有り、快適衣料用テキスタイルとして幅広く適用できる可能性がある。
比較例1
実施例1の特殊断面繊維のみとし、実施例1同様に評価を行った。表3、4のとおり、撥水性能は良好であるが、軽量性に劣るものであった。
比較例2
実施例1で構成する繊維をナイロン6(N6 溶融粘度:120Pa・s)のみで構成し、溶出処理を行っていない以外は、実施例1同様に評価した。表3、4のとおり、嵩高性、軽量性が劣り、撥水加工を施すことで布帛が固くなり、快適衣料用途には向かないものであった。
比較例3
特開平7−138882号公報に記載の製造方法に従いナイロン6の井型中空繊維を用いた布帛を得た。それを実施例1同様の方法で撥水加工を施し、実施例1同様に評価した。表4のとおり、軽量性は得られるが、撥水性能の耐久性が劣るものであり満足できるものでは無かった。その布帛を観察したところ突起部分が脱落していたり、つぶれて大きく変形していたりしており、これが原因で耐久性に劣るものとなっていると考えられる。
A:断面に繊維中心部に向けて広幅部を有した溝が複数個存在する繊維(特殊断面繊維)
B:中空繊維
C:中空繊維
E:突起部の角度を示す一例
F:中間層断面形状が円形C型、四角形C型となる口金の一例
G:円形C型の孔群
H:四角形C型9孔の孔群
1:溝部
2:突起部
3:繊維直径
4:連通部の幅長
5:溝部入口幅(SWmin)
6:溝の広幅部幅(SWmax)
7:溝部の中心線および溝深さ(SH)
8:突起部外接円(芯成分径(D))
9:溝部内接円
10:突起部先端の幅(Pout)
11:突起部底面の幅(Pmin)
12:異型度計測における中間層成分の外周形状
13:異型度計測における内接円
14:異型度計測における外接円
15:計量プレート
16:分配プレート
17:吐出プレート
18:計量孔
18−1:芯成分用計量孔
18−2:鞘成分用計量孔
19:分配溝
20:分配孔
20−1:芯成分用分配孔
20−2:鞘成分用分配孔
21:吐出導入孔
22:縮小孔
23:吐出孔
24:試料台
25:PETフィルム
26:指針付き金具
27:荷重
28:目盛
29:切り込み
30:糸カセ
d:溝部位置角度

Claims (8)

  1. 断面形態が異なる2種類以上の繊維からなる繊維束において、少なくとも1種類の繊維の断面に、広幅部を有し且つ繊維中心部に向けた溝が複数個存在し、該溝の入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、溝の深さ(SH)および芯成分径(D)が下記式を満たすことを特徴とする繊維束。
    (SWmax/SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
    0.15≦((SH)/D)≦0.25 ・・・(式2)
  2. 繊維束を構成する繊維の少なくとも1種類以上が中空繊維であり、中空部の中空率が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維束。
  3. 繊維束を構成する繊維の少なくとも1種類以上が繊維外周から繊維中心にある中空部に向けて貫通した溝を有するC型中空繊維であり、該中空部の中空率が20%以上であることを特徴とする請求項2に記載の繊維束。
  4. 該C型中空繊維が異形度の異なる2種類以上の断面形態を有したものであり、この最大異形度と最小異形度の比(最大異形度/最小異形度)が1.1以上であることを特徴とする請求項3に記載の繊維束。
  5. 嵩高度が1.2以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の繊維束。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の繊維束がポリアミドであることを特徴とする繊維束。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の繊維束が仮撚り加工糸であることを特徴とする繊維束。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の繊維束を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
    である。
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