JP4509584B2 - ポリエステル繊維用非含水処理剤および高強度ポリエステル繊維 - Google Patents

ポリエステル繊維用非含水処理剤および高強度ポリエステル繊維 Download PDF

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Description

本発明は、産業資材用のポリエステル繊維用非含水処理剤および高強度ポリエステル繊維に関する。
さらに詳しくは、特に、シートベルト用ウェビング等に好適な、毛羽が少なく製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず均染性に優れたポリエステル繊維を実現することのできるポリエステル繊維処理剤および高強度ポリエステル繊維に関する。
産業資材用の高強度ポリエステル繊維は、シートベルト用ウェビング、ラッシングベルト、スリング、紐・テープ等の細幅織物、およびテント、ターポリン、重布、バッグ用基布等の広幅織物に広く用いられている。かかる用途においては、高強度、高タフネス、耐摩耗性等の機械的特性が要求され、同時に、高速で製織するために毛羽の少ない高品位の原糸が要求される。更に、シートベルトのように染色して商品とする用途では、染色の均一性、特にスポット状の染色欠点を含む染め斑の発生防止が重要な課題である。
産業用ポリエステル繊維用であって、原糸の毛羽が少なく、かつ染色時の強力低下や染め斑防止に有効な特定の油剤の適用を提案した例もある(特許文献1および特許文献2参照)。
しかしながら、これらは、達成し得る毛羽品位・染色安定性レベルは近年の要求に対しては不十分であるとともに、含水処理剤である。
特開平5−339875号公報 特開2000−17573号公報
本発明の課題は、毛羽が少なく、製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず染色均一性に優れた、特にシートベルト用ウェビング等に好適なポリエステル繊維用非含水処理剤および高強度ポリエステル繊維を提供することにある。
前記した課題は、以下(1)記載の構成を有する本発明のポリエステル繊維用非含水処理剤とすることによって解決できる。
(1)脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)40〜80重量部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)15〜50重量部およびアニオン性界面活性剤(C)3〜15重量部からなる油剤成分と、140〜240の数平均分子量を有する鉱物油からなる希釈剤成分を含有し、前記アニオン性界面活性剤(C)のうち50重量%以上がリン酸エステル化合物からなり、前記リン酸エステル化合物のうち30重量%以上が分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物であり、前記油剤成分の濃度が20〜80重量%であり、かつ25℃における粘度が5〜90センチポイズであることを特徴とするポリエステル繊維用非含水処理剤。
また、前記した課題を達成する本発明の高強度ポリエステル繊維は、以下の(2)のとおりの構成を有するものである。
(2)上記(1)に記載のポリエステル繊維用非含水処理剤が繊維重量に対して油剤成分として0.3〜0.8重量%付与されてなる高強度ポリエステル繊維。
さらに、本発明のポリエステル繊維の好ましい具体的態様は、以下の(3)または(4)のとおりである。
)繊度が250〜2500dtex、強度が6.5〜9.5cN/dtex、および伸度が9〜30%であることを特徴とする上記()記載の高強度ポリエステル繊維。
)ポリエステル繊維糸条の長さ10万m当たりの毛羽数が0.001〜3.0個の頻度で存在することを特徴とする上記()または()記載の高強度ポリエステル繊維。
また、本発明は、該本発明の高強度ポリエステル繊維を用いてなる、以下の(5)または(6)のとおりの新規な細幅ベルトと広幅織物を提供するものである。
)上記()〜()のいずれかに記載の高強度ポリエステル繊維からなることを特徴とする細幅ベルト。
)上記()〜()のいずれかに記載の高強度ポリエステル繊維からなることを特徴とする広幅織物。
本発明のポリエステル繊維用非含水処理剤で処理してなる高強度ポリエステル繊維は、毛羽品位に優れ、染め斑を発生しないものであり、シートベルト用ウェビングとして好適に用いることができる。
特に、毛羽が少ないため、高速での製織が可能であり、かつ合理化された効率的な染色処方を適用しても染め斑が発生せず、均一で高品位の製品が得られる。
また、シートベルト用ウェビングの他、スリング、ラッシングベルト、紐・テープ等の細幅ベルト、およびテント、ターポリン、重布、カバン地用基布等の広幅の織物からなる広幅ベルトなどにも好ましく用いることができる。
すなわち、本発明のポリエステル繊維用非含水処理剤は、そのような展開を可能にする高強度ポリエステル繊維を実現するのに効果のある処理剤である。
以下、さらに詳しく本発明について説明をする。
本発明にかかるポリエステル繊維用非含水処理剤は、油剤成分を希釈するための希釈剤成分に140〜240の数平均分子量を有する鉱物油を用い、油剤成分の濃度が20〜80重量%、希釈後の25℃における粘度が5〜90センチポイズになるよう油剤成分が希釈されてなることが必要である。
該油剤成分は、脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)40〜80重量部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)15〜50重量部およびアニオン性界面活性剤(C)3〜15重量部からなるものである。そして、該アニオン性界面活性剤(C)のうち50重量%以上がリン酸エステル化合物からなり、前記リン酸エステル化合物のうち30重量%以上が分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物であるものである。
処理剤中での該油剤成分の濃度が80%を超える場合、あるいは粘度が90センチポイズを超える場合には、給油ローラーあるいは給油ノズルを用いて処理剤を付与する際に糸が処理剤にとられて製糸が不安定になりやすく、製糸性改善の効果が得られにくいことから好ましくない。
逆に、油剤成分の濃度が20%未満の場合、あるいは粘度が5センチポイズ未満の場合には、延伸前ローラー(フィードローラー)上で処理剤が飛散しやすくなり、油剤成分付着効率、防災上の両面から好ましくないものである。
処理剤の濃度および粘度を上記のように調整することにより、従来の含水処理剤では得られなかった顕著に改善された製糸性、毛羽品位の向上を達成することができる。
ポリエステル繊維では、水との相互作用がないにもかかわらず、適度に調整された非含水処理剤を使用することにより製糸性が大幅に改善する理由としては、非含水処理剤はエマルジョン処理剤のように表面張力の大きな水の代わりに表面張力の小さな有機溶剤を希釈剤として用いるため、ポリエステル繊維の各単糸の表面に油剤成分が薄く均一に付着しやすくなるためと考えている。
本発明の非含水処理剤は、水分の含有量は通常5重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下である。水分の含有量は、カールフィッシャー法で測定することができる。
非含水処理剤は、水系エマルジョン処理剤と異なり、乳化を必要としないことから、一般に界面活性剤を少なくし、平滑性成分を多量に配合することができるため、かかる油剤成分構成とすることより動摩擦係数を低くすることが可能である。しかしながら、本発明者らは、染色工程においてこのような非含水処理剤中の油剤成分が脱落したときには、染浴中で油剤成分と染料成分の相互作用が生じ、染料成分の凝集、または非染性成分の凝集を引き起こし、染め斑を発生しやすいという欠点を有しているということを見出した。
本発明者らは、製糸性に優れた特長を保持しつつ、かつ、染め斑を生じない非含水処理剤について鋭意検討した結果、本発明のもう一つの構成要件である油剤成分組成、すなわち、油剤成分が、脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)40〜80重量部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)15〜50重量部、およびアニオン性界面活性剤(C)3〜15重量部を含むことが必要であるとの知見を得たのである。
特に、シートベルトの染色に用いられるようなサーモゾル染色を行う場合には(C)の選定と配合量の特定が重要である。
本発明における脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)は、通常、平滑性を付与する成分である。
脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)は、脂肪族カルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物または低級(炭素数1〜4)アルコールエステル]と炭素数8〜32の高級アルコールから得られるエステルである。
該脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)を構成する脂肪族カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。
(a1)炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸[脂肪族飽和モノカルボン酸(ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸など)、脂肪族不飽和モノカルボン酸(オレイン酸、エルシン酸など)];
(a2)炭素数4〜24の脂肪族ジカルボン酸[脂肪族炭化水素系飽和ジカルボン酸(アジピン酸、エライジン酸など)、硫黄原子を含有する脂肪族飽和ジカルボン酸(チオジプロピオン酸、チオジヘキサン酸など)]。
また、該脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)を構成する炭素数8〜32の高級アルコールとしては、以下のものが挙げられる。
(x1)炭素数8〜32の脂肪族1価アルコール[脂肪族飽和1価アルコール(ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、脂肪族不飽和1価アルコール(オレイルアルコールなど)];
(x2)炭素数8〜24の脂肪族多価(2〜6価)アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)、脂肪族飽和3〜6価アルコール(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)]。
脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)の具体例としては(a1)と(x1)からなるエステル、例えば、イソステアリルオレート、イソエイコシルステアレート、イソエイコシルオレート、イソテトラコシルオレート、イソアラキジルオレート、イソステアリルパルミテート、オレイルオレート等;(a2)と(x1)からなるエステル、例えば、ジオレイルアジペート、ジイソステアリネルアジペート等のアジピン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジイソステアリルチオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸エステル;が挙げられる。
脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)のうち、好ましいのは、イソエイコシルステアレート、炭素数16〜24のイソアルキルアルコールオレート[イソステアリルオレート、イソエイコシルオレートおよびイソテトラコシルオレートなど]、ジオレイルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジオレイルチオジプロピオネート、並びにジイソステアリルチオジプロピオネートなどである。
脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、好ましくは400〜1,000、さらに好ましくは500〜800の範囲である。Mnが400以上である場合、平滑剤成分としての耐熱性または油膜強度が特に優れるため、十分な製糸性が得られやすく、一方、Mnが1,000以下であれば、繊維と金属間の動摩擦係数が低くなり製糸性が向上するため好ましい。
なお、本発明において、数平均分子量Mnは、単一組成の化合物の場合は分子構造からの計算値であり、混合物の場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値である。
本発明におけるポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)は、ポリアルキレングリコール鎖を有する非イオン性界面活性剤であり、ポリアルキレングリコール鎖は炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下、AOと略記)の付加により得られる。
AOとしては、エチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)およびブチレンオキシドなどが挙げられる。
好ましいポリアルキレングリコール鎖は、EO単独、およびEOとPOの併用(ランダム付加またはブロック付加)の付加物であり、併用の場合はEOの重量割合が少なくとも50%であることが好ましい。
該ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(b1)高級アルコールAO付加物:
炭素数8〜32の高級アルコール[上記の(x1)]のEO2〜100モルもしくはEO/PO付加物[例えばオレイルアルコールEO5〜25モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物など];
(b2)高級アルコールAO付加物のカルボン酸エステル:
上記の(b1)と(a1)から得られる脂肪族カルボン酸エーテルエステルであって、例えばイソステアリルアルコールEO2〜20モル付加物のオレイン酸エステルなど;
(b3)アルキルフェノールのAO付加物:
アルキル基の炭素数6〜24のアルキルフェノール(オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなど)のEO4〜100モル付加物;
(b4)脂肪酸のAO付加物:
炭素数8〜24の脂肪酸のEO5〜100モル付加物;
(b5)多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物:
2〜8価の多価アルコール[上記の(x2)]の炭素数8〜24のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステルのEO4〜100モル付加物、および2〜8価の多価アルコール[上記の(x2)]のEO4〜50モル付加物のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステル、例えば、トリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物トリオレート、ソルビトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリステアレートなど;
(b6)油脂のAO付加物:
ヒマシ油および硬化ヒマシ油のEO5〜50モル付加物など;
(b7)油脂のAO付加物の脂肪酸エステル:
上記(b6)を、さらに炭素数8〜24の脂肪酸[上記の(a1)]でエステル化したもの、例えば、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物トリオレート、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジオレート、ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジステアリート、ヒマシ油EO5〜25モル付加物トリスステアレート、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物マレイン酸ステアリン酸エステルなど。
ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)のうち、好ましいのは(b1)、特にオレイルアルコールEO5〜25モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物、とりわけオレイルアルコールEO7モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物でMn=1,400のもの、(b5)、特にトリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物ジステアレートおよびソルビトールEO30〜40モル付加物ペンタオレート、並びに(b6)、特に硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物、とりわけ硬化ひまし油EO10モル付加物である。
ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)の数平均分子量Mnは、好ましくは500〜10,000、さらに好ましくは600〜8,000の範囲である。Mnが500以上であれば、延伸時の繊維の集束性が良好で、単糸が分離する現象が少なく、延伸性が向上する傾向にある。一方、Mnが10,000以下であれば、処理剤の安定性に優れ、均一な溶液が得られやすい。
本発明の処理剤の主成分は、前述脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)が40〜80部(以下、部は重量部を表す)、およびポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)が15〜50部からなる。
脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)が40部未満では十分な平滑性が得られず、一方、80部を越えると染色性に問題を生じやすくなる。同様に、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)が15部未満では染色性に問題を生じやすく、50部を越えると平滑性が不十分となる。好ましい使用比率は、脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)が55〜75部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)が25〜45部である。
上記(A)と(B)を適切に選び、かつ両成分の配合比率を適切に選ぶことによって、高強度ポリエステル繊維用処理剤に求められる下記の(イ)〜(ト)の各要求特性のうちの(イ)〜(ヘ)までを概ね満足させることができるものである。
(イ)平滑性に優れていること、すなわち、動摩擦係数が低いこと、
(ロ)極圧性に優れていること、すなわち、油膜強度が高いこと、
(ハ)油剤溶液の安定性に優れていること、
(ニ)耐熱性に優れていること、すなわち、200〜250℃の高温ロール上でも熱酸化し難く、かつ熱酸化劣化しても固化し難いこと、
(ホ)糸−糸間摩擦が比較的高く、単糸間交絡がかかりやすく、集束性に優れていること、
(ヘ)製糸工程の高温熱履歴を経ても糸条に付着している油剤が組成として安定なこと、
(ト)染浴中に油剤成分が溶解・脱落しても、染浴のバランスを崩さないこと、すなわち、染料の一部を凝集させたり、非水性凝集物を生成して、凝集染料の付着または非染性凝集物の付着等が生じないこと、
しかし、このうちの(ロ)、(ヘ)を更に向上させて、かつ(ト)の効果を得るため、それも十分に得るために、アニオン性界面活性剤(C)を処理剤全体の3〜15部加えることが重要である。アニオン性界面活性剤(C)が3部未満であると、染液と混合された脱落油剤成分の分散安定性が不十分となり、その結果、染色浴に脱落した油剤成分が染料と相互作用し、染め斑を引き起こすことがあり、好ましくない。また、アニオン性界面活性剤(C)が15部を超える場合には、油剤成分の分散安定性が低下し、長時間連続して均一に分散された非含水処理剤を製糸工程に供給することが困難になる場合があり、好ましくない。好ましいアニオン性界面活性剤(C)の添加量は4〜10部である。
本発明の処理剤に用いられるかかるアニオン性界面活性剤(C)としては、以下のものが挙げられる。
(c1)脂肪酸石鹸:
炭素数8〜24の脂肪酸[上記の(a1)]石鹸(オレイン酸塩、エルシン酸塩等)であり、塩としてはアルカリ金属(K、Naなど)、アルカノールアミンおよびアルキルアミンEO付加物等が挙げられる。好ましいのはオレイン酸カリウムである。
(c2)高級アルコールのリン酸エステル塩:
炭素数8〜24の高級アルコール[上記の(x1)など]のリン酸エステル塩;
例えば、オレイルアルコールリン酸エステル塩、イソステアリルアルコールリン酸エステル塩およびイソセチルアルコールリン酸エステル塩など、好ましいのはオレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩およびイソステアリルアルコールリン酸エステルナトリウム塩である。
(c3)高級アルコールAO付加物のリン酸エステル塩:
炭素数8〜24の高級アルコール[上記の(x1)など]のAO2〜50モル付加物のリン酸エステル塩が挙げられ、AOとしては前述のものが挙げられる。
具体的には、ラウリルアルコールEO3〜20モル付加物リン酸エステル塩、オクチルアルコールEO3〜20モル付加物リン酸エステル塩、炭素数12および13の混合アルコールPO3〜10モルEO5〜10モル(ブロック付加物)リン酸エステル塩など、好ましいのはラウリルアルコールEO3モル付加物リン酸エステルカリウム塩およびラウリルアルコールEO5モル付加物リン酸エステルカリウム塩である。
(c4)アルキルフェノールのリン酸エステル塩:
上記の(b2)で挙げたアルキルフェノールのリン酸エステル塩などが挙げられる。
(c5)アルキルスルホン酸エステル塩:
炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩(ラウリルスルホン酸塩など)が挙げられる。
アニオン性界面活性剤(C)は、上記のうち好ましいのは、リン酸エステル化合物である(c2)〜(c4)であり、(C)のうち50%以上がこれらリン酸エステル化合物であることがさらに好ましく、重要である
すなわち、アニオン性界面活性剤(C)として(c1)を使用する場合は、(c1)を多量に配合すると、非含水処理剤の分散安定性を損ねるばかりでなく、(c1)が高温の加熱ロール上に付着し、劣化固化してロールの表面摩擦を高めることにより製糸性が低下するため、(c1)の配合は(C)のうちの50%未満とし、リン酸エステル化合物[(c2)〜(c4)]を(C)の50%以上とすることが重要なのである。より好ましくは、前者を40%未満、後者を60%以上とすることである。
さらに、前述したリン酸エステル化合物のうち、30%以上を分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物[上記の(c3)]とすることが重要である。(c3)を用いることにより非含水処理剤中への分散性をさらに高めることができ、安定的かつ効率的に所望のアニオン性界面活性剤(C)を非含水処理剤中に均一に分散させることが可能になる。
本発明にかかる非含水処理剤は、上記脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)、およびアニオン性界面活性剤(C)を含有し、それらの配合割合を必須とするが、必要に応じ下記の添加剤を配合することができる。
(1)脂肪酸(炭素数10〜24)アルカノールアミド(ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等)、
(2)脂肪族アミン(炭素数10〜24)EO付加物系カチオン性界面活性剤(ラウリルアミンEO付加物、オレイルアミンEO付加物等)、
(3)酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤、
(4)シリコーン化合物:ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンおよびポリエステル変性シリコーン、
(5)アルキルイミダゾリン系界面活性剤。
上記添加剤は、必要に応じて5部未満の範囲で配合される。上記添加剤は、前記非含水処理剤の性能に求められる(イ)〜(ト)項のいずれかの向上に寄与し、かつマイナス効果がないことを確認して採用をすることが重要である。
本発明の非含水処理剤おいては、希釈剤としてMn140〜240を有する鉱物油が用いられる。
鉱物油の数平均分子量Mnが140以上である場合には、揮発性が低いので、処理剤調合や製糸時の処理剤供給時、延伸前予備加熱時の蒸散が少なくなり、安定な製糸が容易になること、また、防災上からも好ましい。また、該Mnが240以下であると製糸の延伸、熱セット工程で完全に蒸散し易く、糸表面に残留することは少なく、染色性に問題を引き起こすことが少なくなるので好ましい。より好ましい鉱物油のMnは160〜200である。
上記油剤成分および添加剤は、希釈剤中に均一に分散溶解し、濁りや沈殿物を生じず、実質的に透明な状態であることが好ましい。好ましい状態においては希釈剤として使用される鉱物油は製糸工程の高温加熱ローラに接触してほぼ全量が揮発蒸散し、繊維表面には油剤成分のみが残る。
本発明にかかる高強度ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリマからなるポリエステル繊維である。また、ポリエチレンテレフタレートと共重合可能なエステル形成性成分を含む共重合ポリエステルからなる繊維、あるいはポリエチレンテレフタレートとブレンド可能な他種ポリマとのブレンドポリマからなるポリエステル繊維でも良い。
本発明の高強度ポリエステル繊維において、一般には共重合あるいはブレンド可能な範囲は、ポリエチレンテレフタレート繊維の特徴が損なわれない範囲であり、通常は、5重量%以下であるのが良い。また、ポリマ原料には色調調整のために酸化チタン、カーボンブラックなどの無機・有機の顔料を通常の範囲で添加してもよい。
上記した本発明にかかる非含水処理剤を用いて処理した高強度ポリエステル繊維は、本発明の上述した非含水処理剤が、希釈剤としての鉱物油が蒸散した後の油剤成分(有効成分)として0.3〜0.8重量%(対繊維重量)付与されていることが必要である。
油剤成分付着量が0.3重量%未満の場合には、平滑性が十分に得られず、また、染色条件によっては油剤中のアニオンによる染色安定性の改善効果が十分に得られない場合があるので好ましくない。逆に、油剤成分付着量が0.8%を超える場合には、油剤中のアニオンによる染色安定性の改善効果は飽和し、過剰な油剤成分付着による製糸性の悪化、織機の汚れ等の不具合を生じることがあるので採用できない。
さらに、本発明の高強度ポリエステル繊維は、一般に、繊度が250〜2,500dtex、強度が6.5〜9.5cN/dtex、伸度が9〜30%の優れた特性を有する。
繊度が250dtex未満のときあるいは2,500dtexを越えても製造することはできるが、本発明の目的とする用途には、一般的に上述した範囲がより適切である。
強度は、6.5cN/dtex以上であれば、本発明の目的とする用途には十分であり、一方、9.5cN/dtex以下であれば、毛羽が少なく品位の優れた原糸を安定に得ることが、現状の技術をもってしても十分に可能である。また、伸度9%以上ならば、毛羽が少なく品位の優れた繊維を安定して得ることができ、一方、30%を以下の伸度ならば6.5cN/dtexの強度を得ることが容易に可能である。
高強度ポリエステル繊維の製糸に当たって、その延伸倍率を上げることによって、より高強度の繊維を得ようとすれば、それに伴って、得られる繊維の品位が悪化し、毛羽頻度が増大する傾向があることは従来の水系エマルジョン処理剤においても、本発明の非含水処理剤においても同じであるが、本発明の非含水処理剤を用いた高強度ポリエステル繊維は、従来の水系エマルジョン油剤を用いて同条件で得られた高強度ポリエステル繊維と比べて毛羽の発生が極めて少なく、高品位であることが特長である。これは本発明にかかる非含水処理剤の適用によって初めて達成することができるものである。
本発明の高強度ポリエステル繊維糸条中の毛羽の頻度は、長さ10万m当たり、0.001〜3.0個である。毛羽が3.0個/10万mを越えると、高速製織での生産効率が低下し、かつ製品に毛羽が目立ち品位が低下する。毛羽は少ないほど好ましいが、高強度ポリエステル繊維で0.001個/10万m未満とすることは現行技術では一般的には困難である。
上述した優れた繊維特性および毛羽品位を有し、優れた製糸性と高速製織性が可能で、かつ染め斑を発生することのない非含水処理剤を用いて処理した本発明にかかる高強度ポリエステル繊維は、以下の方法で製造することができる。
すなわち、高分子量のポリエステルポリマを溶融紡糸し、次いで、熱延伸して製造するが、以下の(1)〜(8)の各要件を満たすことが特長である。
(1)固有粘度(IV)0.90〜1.50のポリエステルポリマを用いること。
(2)紡糸温度280〜320℃で溶融し、紡糸すること。
(3)紡糸口金の直下100〜500mmの範囲を加熱筒で囲み、その間において、紡出糸条を、250〜350℃の高温雰囲気の中を通過させること。
(4)上記高温雰囲気中を通過した糸条に、10〜50℃の風を吹きつけて冷却固化すること。
(5)冷却固化した糸条に、本発明にかかる非含水処理剤を付与すること。
(6)紡糸速度300〜3000m/分で引き取ること。
(7)引き取り糸条を、いったん巻き取った後、あるいはいったん巻き取ることなく連続して熱延伸すること。
(8)熱延伸は50〜260℃の加熱ロールを用い、多段で行うこと。
ポリエステルポリマは、前述した通り、ポリエチレンテレフタレートを主成分として、5重量未満の共重合成分または異種ポリマとのブレンドポリマを用いることができる。
本発明の高強度ポリエステル繊維を製造するためには、高分子量ポリマを用いることが必要であり、固有粘度(IV)0.90〜1.50の高粘度ポリマを用いる。
高粘度ポリマの製造は、液相重合のフィニシャー工程で高粘度化したり、いったん低粘度ポリマのままチップ化し、次いで固相重合することによって行われるが、ここでは、後者の固相重合チップを用いた製糸法を例にとって説明する。
固相重合した高粘度チップをホッパーに供給し、エクストルーダー型紡糸機で該チップを溶融紡糸する。紡糸温度は、280〜320℃、好ましくは290〜310℃である。紡糸口金の直下は、100〜500mmの範囲を加熱筒で囲み、その間紡出糸条を250〜350℃の高温雰囲気中を通過させることが好ましい。紡出した糸条を直ちに冷却せず、上記加熱筒で囲まれた高温雰囲気中を通して徐冷することにより、紡出されたフィラメントの配向が緩和され、かつフィラメント間の均一性を高めることができ、高強度のポリエステル繊維が得られる。
高温雰囲気中を通過した未延伸糸条は、次いで10〜50℃、好ましくは15〜30℃の風を吹きつけられ冷却固化される。空冷装置は横吹き出しタイプでも良いし、環状型吹き出しタイプを用いても良い。
冷却固化された未延伸糸条に、次いで、処理剤が付与される。処理剤は、前記本発明の非含水処理剤を用い、製糸工程を通過し、希釈剤が蒸散した後巻き取られた原糸に対する油剤成分量として前記特定した範囲になるよう付与する。処理剤の付与方法は、ロール給油、ガイド給油、ミスト給油等いずれの方法でも良い。
処理剤を付与された未延伸糸条は、引き取りロール(1FR)に捲回して引き取る。引き取りロールの速度、すなわち、紡糸速度は300〜3000m/分、好ましくは400〜2500m/分である。300m/分未満の紡糸速度でも本発明のポリエステル繊維の物性は得られるが、300m/分以上とすれば生産効率の点から工業的に有利である。一方、3000m/分以下の紡糸速度であれば、本発明の高強度ポリエステル繊維を安定して得ることができる。
上記紡糸速度で引き取られた未延伸糸条は、いったん巻き取られることなく連続して延伸する。引き取りロール(1FR)と同様に、2個のロールを1ユニットとするネルソン型ロールを、給糸ロール(2FR)、第1延伸ロール(1DR)、第2延伸ロール(2DR)および弛緩ロール(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では1〜10%、好ましくは2〜8%程度のストレッチを行い糸条を集束させる。1FRは50〜120℃に加熱することにより引き取り糸条を予熱して次の延伸工程に送ることが好ましい。
2FRと1DR間で1段目の延伸を行うが、このときドローポイント、すなわち、ネッキングポイントが2FRのロール出口部近くになるように、2FRと1DRの温度および1段めの延伸倍率を設定する。ただし、これらの条件は、未延伸糸の配向の程度を考慮して変化させる必要がある。通常、2FRの温度は80〜140℃、好ましくは90〜120℃とし、1DRの温度を100〜190℃とし、かつ1段目の延伸倍率を、総合延伸倍率の60〜90%、好ましくは70〜85%に設定する。
2段目の延伸は1DRと2DRの間で行うが、2DRの表面温度は180〜260℃、好ましくは200〜240℃である。2段延伸を終った糸条には2DRと150℃以下のRRとの間で0.5〜15%の弛緩処理が施される。これにより熱延伸によって生じた歪みを取り、また延伸によって達成された高配向構造を固定することができる。
かくして、特定の非含水処理剤を適当量付与されてなる、製糸性に優れ、毛羽が少なく製織性および製品品位に優れ、かつ染め斑が発生せず均染性に優れた高強度ポリエステル繊維が得られる。
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明の説明において用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
[固有粘度(IV)]
ポリマー量として8gの試料をオルソクロロフェノール100mlに溶解し、25℃における溶液比粘度ηrをオストワルド粘度計を用いて測定し、次の近似式より極限粘度を算出した。
IV=0.0242ηr+0.2634
ここで、ηr=(t×d)/(t0×d0)
t:溶液の落下時間
t0:オルソクロロフェノールの落下時間
d:溶液の密度
d0:オルソクロロフェノールの密度
[油剤成分付着量]
糸10gにn−ヘキサン120mlを添加、室温で10分間振盪することにより、油剤成分をn−ヘキサン中に抽出する。油剤成分抽出後のn−ヘキサン100mlを秤量後真空下で蒸発させ、不揮発分の重量から油剤成分付着量を求めた。
[繊度]
JIS L1090により測定した。
[強度・伸度]
オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定した。
強度は、強力を測定したサンプルに対応するそれぞれの総繊度で除した値である。
[毛羽発生頻度]
製糸によって得られた糸について200m/分の速度で解舒しつつ、大広(株)製光感知式毛羽検知装置で糸条に含まれる毛羽(単糸破断)を検知し、糸条の長さ10万m当たりの毛羽数から次の基準により評価した。
毛羽の検知は、具体的には検出器の光軸を走行糸条から7mmの位置に設定し、毛羽が光軸を横切った際に生じる受光量変化からカウントした。
毛羽発生頻度についての評価は、毛羽数(回/10万m)が、「0〜0.30未満」の範囲を「◎(最も優秀)」、「0.30以上1.0未満」の範囲を「○(優れている)」、「1.0以上3.0未満」の範囲を「△(普通)」、「3.0以上」の範囲を「×(不良)」として、4段階での評価を行った。
[染色性]
得られた繊維360本を経糸とし、緯糸として560dtex−96フィラメントのポリエステル糸を用いて、緯糸密度21本/インチで51mm幅のシートベルト用生機を製織した。
この生機を用い、精練することなしに以下の染液に浸漬させ、連続して220℃の発色槽で2分間の処理を行うことにより染色を行った。
このときの染色欠点数から以下の基準により染色性を評価した。なお、目視で判別できる1mm程度以上の濃染・淡染スポット欠点、および「にじみ」状の染色斑を染色欠点とした。
・使用した染液(水1リットルに対する染料の添加量):
チバスペシャルティケミカル社 Teratop Yellow HL-G :7g
住化ケムテックス社 Sumikaron Red GX :5g
〃 Sumikaron Blue GX:9g
染色性についての評価は、ベルト2,000m当たり染色欠点数が、「0〜1未満」の範囲を「◎(最も優秀)」、「1以上3未満」の範囲を「○(優れている)」、「3以上10未満」の範囲を「△(普通)」、「10以上」の範囲を「×(不良)」として、4段階での評価を行った。
実施例1〜実施例3、実施例5〜6、参考例1および比較例1〜8〈処理剤の製造〉
表1および表2に記載の成分を配合して、実施例1〜実施例3の油剤X1〜X3、実施例5〜6の油剤X5〜X6、参考例1の油剤X4および比較例の油剤Y1〜Y8を得た。
なお、表1に併記した実施例等で使用した(C)成分C1〜C5のうち、「リン酸エステル化合物」に該当するのはC2〜C5であり、さらに、「分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物」に該当するのはC4、C5である。したがって、参考例1の油剤X4は、オレイン酸K塩(C1)2部、リン酸エステル化合物であるラウリルアルコールEO5ホスフェートK塩(C5)1.5部からなるので、アニオン性界面活性剤(C)のうちリン酸エステル化合物の割合は43重量%であり、本発明の実施例に該当しない。この油剤X4は参考例2でも使用している。
なお、比較例7および比較例8は、実施例3または参考例1と同じ組成の油剤成分を鉱物油で希釈する代わりに、水中に該油剤成分を乳化分散させ、濃度20wt%のエマルジョン処理剤としたものである。
実施例7〜9、11〜13、参考例2および比較例9〜17〈ポリエステル繊維の製造〉
固有粘度(IV)1.20で酸化チタン粒子を0.1wt%含むポリエチレンテレフタレートチップをエクストルーダー型紡糸機を用いて305℃で溶融紡糸した。溶融ポリマは、紡糸パック中で15μmの不織布フィルターで濾過した後、孔径0.5φmmで108ホールを有する口金から紡出した。
口金直下には長さ400mmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度が300℃となるように加熱した。ここで筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
加熱筒の直下にはユニフロー型チムニーを取付け、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け糸条を冷却固化した。
固化した糸条に給油ローラーにより鉱物油で希釈した処理剤を付与した後、引取りロール(1FR)に捲回して引取った後、いったん巻き取ることなく引き続いて延伸を行い、1,400dtex−108フィラメントのポリエステル繊維を得た。紡糸、延伸条件を表3に、油剤成分付着量、得られた繊維の強伸度、毛羽発生頻度、染色性を表4および表5に示した。
表4および表5からわかるように、本発明の非含水処理剤を用いることにより毛羽発生が少なく、染色欠点も少ない良好な結果が得られる。
一方、本発明の構成要件から外れた条件では処理剤が懸濁分離してしまうか、あるいは外観上良好な処理剤が得られても製糸性、染色性のいずれか、あるいは両方に問題があるか、あるいは油分付着量が多すぎる場合には油剤により織機が汚れるという別の問題が発生してしまい、満足できる結果を得ることはできない。
表5からわかるように、アニオン量の多い処理剤をエマルジョンの形態(比較例7のY7)で付与することにより毛羽の発生頻度が大幅に悪化する結果(比較例15)となっている
また、表5からわかるように、アニオン量の比較的少ない処理剤をエマルジョンの形態(比較例8のY8)で付与することにより染色欠点の発生頻度が大幅に悪化する結果(比較例16)となることがわかる。毛羽の発生頻度も実施例(実施例12)に比べて増加していることがわかる。
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Claims (6)

  1. 脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A)40〜80重量部、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)15〜50重量部およびアニオン性界面活性剤(C)3〜15重量部からなる油剤成分と、140〜240の数平均分子量を有する鉱物油からなる希釈剤成分を含有し、前記アニオン性界面活性剤(C)のうち50重量%以上がリン酸エステル化合物からなり、前記リン酸エステル化合物のうち30重量%以上が分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するリン酸エステル化合物であり、前記油剤成分の濃度が20〜80重量%であり、かつ25℃における粘度が5〜90センチポイズであることを特徴とするポリエステル繊維用非含水処理剤。
  2. 請求項に記載のポリエステル繊維用非含水処理剤が、繊維重量に対して油剤成分として0.3〜0.8重量%付与されてなることを特徴とする高強度ポリエステル繊維。
  3. 繊度が250〜2500dtex、強度が6.5〜9.5cN/dtex、および伸度が9〜30%であることを特徴とする請求項記載の高強度ポリエステル繊維。
  4. ポリエステル繊維糸条の長さ10万m当たりの毛羽数が0.001〜3.0個の頻度で存在することを特徴とする請求項2または3記載の高強度ポリエステル繊維。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の高強度ポリエステル繊維からなることを特徴とする細幅ベルト。
  6. 請求項2〜4のいずれかに記載の高強度ポリエステル繊維からなることを特徴とする広幅織物。
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