JP4852206B2 - シクロブタンテトラカルボン酸二無水物化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(1)
【0002】
【化3】
【0003】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びハロゲン原子を表し、または、R1とR2及びR3とR4 は一緒になって炭素数4〜10のシクロアルキル基を表す。)
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物(CBDA化合物と略す。)の製造法に関する。
【0004】
本発明の化合物は、そのポリイミドが優れた透明性、耐熱性、疎水性及び電気特性等を有し、液晶デバイス等の光学材料分野で重要である。
【0005】
【従来の技術】
従来、代表的な1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(CBDA)の液相合成法としては、溶媒がジオキサンを用いる方法[J.Chem.Soc.,C12号,1111頁(1962年)]、溶媒が四塩化炭素を用いる方法[Tetrahedron Letters,11号,865頁(1976年)]が知られているが、CBDA収率が低い上に、又得られたCBDAの純度が重合には十分ではなく、更に極性の高い溶媒(酢酸エチル等)での洗浄が必要であった。 又、残余した無水マレイン酸純度が低くなり、回収再使用する際に煩雑な精製操作を施さねばならず実用的な方法ではなかった。
【0006】
又、酢酸エチルやエチレングリコールジアセテートを溶媒とする方法[特公平2−61956号公報]は、優れた収率でCBDAを与えているが、反応条件(光波長、溶媒の種類、光効率、反応時間等)の詳細な特定化は行って居らず、又未反応の無水マレイン酸の再反応の可否については、検討していなかった。
【0007】
酢酸エチルやエチレングリコールジアセテートを溶媒とする方法の優れた特徴は、原料の無水マレイン酸の溶解度が高いにも拘わらず、生成したCBDAの溶解度が低く結晶として析出するために、CBDAから無水マレイン酸への逆反応やオリゴマー生成等の副反応を抑制することができる。しかしその反面、反応時間が長くなり無水マレイン酸転化率が上がりCBDAの析出量が多くなると、生成したCBDAが光源冷却管の外壁(反応液側)に付着し始め、分解反応の併発による結晶の着色化、光効率(単位電力×時間当たりの収率)の低下がみられる。従って、無水マレイン酸の転化率を上げるために、1バッチで長時間をかけることは、実用上生産効率の低下を伴い好ましくなかった。
【0008】
さらに近年、環境保護面からの要請により工業廃棄物や二酸化炭素排出量を減らす必要性が出てきている。一方、従来からのCBDA合成法は、その製造過程において大量の有機溶媒を使用しなければならない。すなわち例示すれば1kgのCBDAを製造するためには40kgもの酢酸エチルが必要であり、使用した酢酸エチルは全て工業廃棄物として焼却される。これは環境保護のみならず経済性の面からも問題視されており、早晩の製造法変更が迫られていた。
【0009】
単位CBDA製造量当たりの消費溶媒量を減らすために容易に案出される改良法は、反応の転化率を増すために反応時間を延ばすことである。しかし前述のような問題から、この改良法もままならず、長らくジレンマを抱えていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、目的とするCBDA化合物を選択率高く、又高光効率を保持しながら反応させることができ、かつ工業廃棄物を劇的に減少させることができるCBDA化合物の製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、最適反応条件下で生成させたCBDAの結晶を濾過により除去した後、濾液中の未反応無水マレイン酸化合物に新たな無水マレイン酸を加えて再反応させることにより高い光効率を維持したままCBDA化合物を製造することができることを見出し本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、式(1)
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びハロゲン原子を表し、または、一緒になって炭素数4〜10のシクロアルキル基を表す。)
で表される無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、反応溶媒が、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸エステルを用いて、波長が300〜600nmの光源を用いて行うことを特徴とする式(2)
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びハロゲン原子を表し、同一でも相異なってもよく、または、R1とR2及びR3とR4は一緒になって炭素数4〜10のシクロアルキル基を表す。)
で表される置換1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物の製造法に関する。
【0017】
また、本発明は前記の式(1)で表される無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、反応溶媒として、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸エステルを用いて、波長が300〜600nmの光源を用い、反応温度が0〜20℃である、式(2)で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法であって、光効率が75%/(kW・h)より低下する直前で反応を停止し、生成した前記式(2)で表される置換1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物の結晶を濾過により除去した後、濾液中の未反応無水マレイン酸化合物に新たな無水マレイン酸化合物を加えて前記化合物を再反応させるという方法を、該濾液をそのまま再利用して為すことを特徴とするCBDA化合物の製造法に関する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のCBDA化合物の製造法は、下記の反応スキームで表される。
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、前記と同じ意味を表す。)
先ず、無水マレイン酸化合物の一例としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸、2−エチル無水マレイン酸、2,3−ジエチル無水マレイン酸、2−イソプロピル無水マレイン酸、2,3−ジイソプロピル無水マレイン酸、2−n−ブチル無水マレイン酸、2,3−ジ(n−ブチル)無水マレイン酸、2−t−ブチル無水マレイン酸、2,3−ジ(t−ブチル)無水マレイン酸、2−フェニル無水マレイン酸、2,3−ジフェニル無水マレイン酸、2−フルオロ無水マレイン酸、2,3−ジフルオロ無水マレイン酸、2−クロロ無水マレイン酸、2,3−ジクロロ無水マレイン酸、2−ブロモ無水マレイン酸、2,3−ジブロモ無水マレイン酸、2−ヨウド無水マレイン酸、2,3−ジヨウド無水マレイン酸、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラハイドロフタル酸無水物等が挙げられる。
【0021】
本反応で重要な役割を果たしているのが反応溶媒である。工業的に採用できる溶媒の要件としては、(1)反応の高い光増感効果を有するカルボニル化合物、(2)原料の無水マレイン酸化合物の溶解度が高く、生成したCBDA化合物の分解反応を抑制するためにCBDA化合物の溶解度が低い、(3)副生物の溶解度が高く、同一溶媒の洗浄のみでCBDA化合物を精製できること、(4)引火性の危険な低沸点でなく、且つCBDA化合物製品に残余させないために沸点が100℃前後の化合物、(5)環境に安全である、(6)光反応に安定、(7)安価等を満足させるものでなければならない。これらの観点から炭素数2〜10の脂肪族エステル類が特に好ましい。
【0022】
その具体例を挙げると、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸i−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、エチレングリコールジホルメート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート等を列記することができる。
【0023】
これらの中でより好ましい溶媒は、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸i−ブチル、エチレングリコールジホルメート、エチレングリコールジアセテート等であり、最も好ましい溶媒は、酢酸エチルである。
【0024】
酢酸エチルやエチレングリコールジアセテートを溶媒とする方法の優れた特徴は、原料の無水マレイン酸の溶解度が高いにも拘わらず、生成したCBDA化合物の溶解度が低く結晶として析出するために、CBDA化合物からの無水マレイン酸化合物への逆反応やオリゴマー生成等の副反応を抑制することができる。
【0025】
溶媒の使用量は、無水マレイン酸化合物に対し3〜50質量倍、より好ましくは5〜20質量倍である。
【0026】
本反応では、光の波長が重要である。低圧水銀灯(内部照射)、高圧水銀灯(内部照射)、超高圧水銀灯(外部照射)、キセノンランプ(外部照射)の中で高圧水銀灯が、特異的に高収率でCBDA化合物を与えた。更に、光源冷却管を石英ガラスからパイレックス(登録商標)ガラスに変えることにより、光源冷却管への着色ポリマー付着が減少し、CBDA化合物の収率改善が見られる。
【0027】
即ち、高圧水銀灯の300nm未満の領域の波長が、ポリマー生成や無水マレイン酸化合物への逆反応に関与し、300〜600nmの波長が好ましいことが判明した。更に、光効率上、内部照射型光源が、CBDA化合物生成に好ましい結果を与える。
【0028】
反応温度は、高温になると重合物が副生し、又低温になると無水マレイン酸化合物の溶解度が低下し生産効率が減少するところから、−20〜80℃で行うことが好ましい。更に好ましくは−10〜50℃であり、特に0〜20℃間では、副生物の生成が大幅に抑制され、高い選択率及び収率でCBDA化合物を与える。
【0029】
反応時間は、1〜50時間で行うことができ、通常5〜10時間で行うのが実用的である。反応時間が長くなり無水マレイン酸化合物の転化率が上がりCBDA化合物の析出量が多くなると、生成したCBDA化合物が光源冷却管の外壁(反応液側)に付着し始め、分解反応の併発による結晶の着色化、光効率(単位電力×時間当たりの収率)の低下がみられる。従って、無水マレイン酸の転化率を上げるために、1バッチで長時間かけることは、実用上生産効率の低下を伴い好ましくない。反応は、バッチ式又は流通式で行うことが出来、又常圧でも加圧でも行うことができる。
【0030】
反応後は、生成したCBDA化合物の結晶を濾過・溶媒洗浄により高純度のCBDA化合物の製品が得られる。濾液中の未反応無水マレイン酸化合物は、1回目の反応条件が、高選択率でCBDA化合物を与える上記のそれぞれの好ましい条件の場合は、精製することなく、濾液のまま再反応させることができる。
【0031】
本発明によれば、反応後の濾液を再反応に用いることができるため、単位CBDA製造量に消費する溶媒の量を大幅に減少させることができる。すなわち濾液の再利用回数を2回とすれば、溶媒消費量は従来法の3分の1に減少させることができる。一般的に本発明のような光二量化反応は、副生成物を多く生じるため、回収した反応溶媒をそのまま再利用すると生成物の純度が低下、反応速度の低下、着色、副反応の増加などさまざまな問題を生じる。すなわち一般に光二量化反応では、本発明のような溶媒再利用は不可能である。しかしながら本発明者らは、偶然にも特定の条件下において光二量化反応がほぼ副反応無く進行しすることを見出し、濾液の再利用を可能にすることができた。
【0032】
本反応では、無水マレイン酸化合物の仕込み量を低下させて転化率を高めることは、希薄な濃度になり生成CBDA化合物の溶解量が増加し、投与した光量当たりのCBDA化合物収量が少なくなり、工業生産性上得策ではない。製品のコスト上大きな割合を占める光量(電気代)を、出来るだけ有効に活用するためには、無水マレイン酸化合物転化率が低下しても仕込み量を上げることが、CBDA化合物の絶対収量を上げることになり好ましい。無論、光源のワット数に応じた無水マレイン酸化合物の仕込み量の限界がある。
【0033】
また、本反応は、前述した様に原料の無水マレイン酸化合物は溶媒に溶解しているが、生成CBDA化合物は溶媒系外に析出して来るところに特徴があり、高収率が得られている。反面、攪拌はしていても、反応時間が長くなり無水マレイン酸化合物転化率が上がると、生成CBDA化合物は、次第にスラリー濃度が上がり光源冷却管に付着し、反応効率を低下させる。高い光効率を維持しながら無水マレイン酸化合物をCBDA化合物に転化させるための一法として、光効率が低下する直前で一旦反応を終了させ、浮遊する生成CBDA化合物の結晶を分離した後未反応無水マレイン酸化合物を再反応させることが考えられる。その際、1回目の反応で消費した無水マレイン酸化合物分を補充し、常に再反応のスタート時に一定の無水マレイン酸化合物量から再反応を行うことにより単位光量当たりのCBDA化合物収量もほぼ一定に得られることが解った。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
尚、CBDA化合物光効率は、単位(仕込み無水マレイン酸化合物(MA化合物)重量×電力×照射時間)当たりのCBDA化合物重量百分率で表し、下記の式で算出した。
【0036】
【式1】
CBDA化合物光効率(%/(kW・h))=A×100/(B×C×T)
【0037】
(A=生成CBDA化合物(g),B=仕込みMA化合物(g),C=電力(kW),T=照射時間(h))
【0038】
実施例1
内容積200ml内部照射型パイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに無水マレイン酸10gと酢酸エチル100gを仕込み、反応器外壁をアルミ箔で被いながら室温で攪拌溶解させた。続いて攪拌しながら5℃に冷却したところでフラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始し、4時間照射を続けた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA3.0g(光効率75%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸6.9gが残余していた。
【0039】
続いて、前記光反応器に濾液と新たな無水マレイン酸3.1gを仕込み、第1回目と同様に5℃に冷却下で攪拌しながら、4時間照射した。反応終了後、再び濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA3.0g(光効率75%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸6.9gが残余していた。
【0040】
更に、前記光反応器に第2回目の濾液と新たな無水マレイン酸3.1gを仕込み、同様に5℃に冷却下で攪拌しながら、4時間照射した。反応終了後、再び濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA3.0g(光効率75%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸6.9gが残余していた。
【0041】
参考例1
溶媒をエチレングリコールジアセテートとした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA2.6g(光効率65%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸7.1gが残余していた。
【0042】
参考例2
溶媒を蟻酸エチルとした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、蟻酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA2.3g(光効率57%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸7.3gが残余していた。
【0043】
参考例3
溶媒をi−ブチルアセテートとした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、i−ブチルアセテートで洗浄後乾燥すると精製CBDA1.8g(光効率45%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸7.9gが残余していた。
【0044】
比較例1
反応時間を12時間とした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA4.7g(光効率39%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸4.0gが残余していた。
【0045】
比較例2
光源冷却管を石英ガラス製とした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDA1.5g(光効率37%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸7.7gが残余していた。
【0046】
比較例3
溶媒を1,4−ジオキサンとした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、1,4−ジオキサンで洗浄後乾燥すると精製CBDA0.88g(光効率22%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸8.2gが残余していた。
【0047】
比較例4
溶媒を四塩化炭素とした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、四塩化炭素で洗浄後乾燥すると精製CBDA0.61g(光効率15%/(kW・h))が得られた。又濾液を分析の結果、無水マレイン酸8.3gが残余していた。
【0048】
比較例5
光源を100W低圧水銀灯(内部照射型)とした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗CBDA結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製CBDAは痕跡であった。
【0049】
参考例4
内容積200ml内部照射型パイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに2,3−ジメチル無水マレイン酸15gと酢酸エチル150gを仕込み、反応器外壁をアルミ箔で被い攪拌しながら10〜15℃に冷却したところでフラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始し、8時間30分照射を続けた。反応終了後、濾過により結晶を分離した。この結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物14.1g(収率94%)が得られた。この構造は、下記のMASS,1H−NMR
,13C−NMRから確認した。
【0050】
MASS(FAB+,m/e(%)):253([M+H]+,16).
1H-NMR(d6-DMSO,δppm):1.2555(s,12H).
13C-NMR(d6-DMSO,δppm):12.4950(4C),50.5922(4C),171.6137(4C).
【0051】
参考例5
原料を3,4,5,6−テトラハイドロフタル酸無水物15gとした他は、参考例4と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗結晶と濾液を分離した。粗結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製1,2:3,4−ジシクロヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物11.1g(収率73%)が得られた。この構造は、下記のMASS,1H−NMR,13C−NMRから確認した。
MASS(FAB+,m/e(%)):305([M+H]+,16).
1H-NMR(d6-DMSO,δppm):1.2555(s,12H).
13C-NMR(d6-DMSO,δppm):12.4950(4C),50.5922(4C),171.6137(4C).
【0052】
参考例6
内容積200ml内部照射型パイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに3,4,5,6−テトラハイドロフタル酸無水物20gと酢酸エチル120gを仕込み、反応器外壁をアルミ箔で被いながら室温で攪拌溶解させた。続いて攪拌しながら20℃に冷却したところでフラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始し、10時間照射を続けた。反応終了後、濾過により粗結晶と濾液を分離した。粗結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製1,2:3,4−ジシクロヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物13.1g(収率66%)が得られた。
【0053】
参考例7
原料を2,3−ジフェニル無水マレイン酸とした他は、実施例1の第1回目と同様に反応させた。反応終了後、濾過により粗結晶と濾液を分離した。粗CBDA結晶は、酢酸エチルで洗浄後乾燥すると精製1,2,3,4−テトラフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物0.8g(収率20%)が得られた。
【0054】
【発明の効果】
本発明方法は無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、目的とするCBDA化合物を選択率高く、また高光効率を保持しながら反応させることができる。 更に、生成したCBDA化合物の結晶を濾過により除去した後、濾液中の未反応無水マレイン酸化合物に新たな無水マレイン酸化合物を加えて再反応させることにより、高い光効率を維持したままCBDA化合物を製造することができる。
Claims (1)
- 式(1)で表される無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、反応溶媒として炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸エステルを用いて、波長が300〜600nmの光源を用い、反応温度が0〜20℃である、式(2)で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法であって、
光効率が75%/(kW・h)より低下する直前で反応を停止し、生成した結晶を濾過により除去した後、濾液中の未反応無水マレイン酸化合物に新たな無水マレイン酸化合物を加えて前記化合物を再反応させるという方法を、該濾液をそのまま再利用して為すことを特徴とする、前記式(2)で表される化合物の製造法。
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