JP4973304B2 - 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法 - Google Patents

1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱硬化性組成物の硬化剤として有用な1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法に関する。
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸やその無水物は、熱硬化性組成物の硬化剤として有用であり、得られる硬化物は、耐熱性、耐光性、透明性の点で優れている。このような理由から、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸やその無水物は、光半導体封止用樹脂組成物、レジスト材料、カラーフィルター用保護塗工液などの分野において広く用いられている。
一般的に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物の合成方法としては、無水マレイン酸の光環化二量化反応(特許文献1〜3)がよく知られている。しかしながら、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸については、原料となるマレイン酸が、無水マレイン酸と比較して反応性および有機溶剤への溶解性が悪く、光環化二量化反応が進行しにくいといった問題があった。また、マレイン酸の光環化二量化反応は、無水マレイン酸の場合と比較して、反応の際に大量の有機溶剤を必要とし、工業廃棄物や二酸化炭素排出量の削減といった環境負荷の問題からも好ましいものではなかった。すなわち、例示すれば、1kgの1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を製造するためには、概ね40kg以上の有機溶剤が必要であり、使用した有機溶剤でリサイクル利用されない分は、工業廃棄物として焼却されるし、リサイクルにもまた多大なエネルギーが必要となる。これは、環境保護のみならず、経済性の面からも問題であった。
したがって、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得るためには、(i)無水マレイン酸の光環化二量化反応による1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物の製造工程、(ii)1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物への水付加による1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造工程、を経由して製造されるのが一般的である。しかしながら、(i)の製造工程における1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物の収率は40〜60%程度であり、また、反応時間も非常に長いといった問題があった。さらに、生成した1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物が、光源冷却管の外壁等の反応器壁に付着し、分解反応の併発による着色や、光効率が低下するといった問題もあり、実用上生産効率は低いのが現状であった。
一方、(ii)の製造工程では、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得るために、水付加、脱水、再結晶といった工程を必要とし、製造工程が複雑になるといった問題があった。特に、脱水工程に関しては、多量の共沸溶剤を必要とし、環境面からも問題であった。
すなわち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造には、多くの製造工程を必要とし、かつ、収率や反応時間の問題から、製品自体が非常に高価となるといった問題があった。さらに、製造に使用する有機溶剤量が、非常に多く、環境負荷の観点からも問題であった。
特公平2−61956号公報 特開2003−192685号公報 特開2006−347931号公報
本発明の目的は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を高収率で製造することが可能であり、かつ、製造プロセスが容易で、工業廃棄物を劇的に減少させることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記問題に鑑み鋭意検討した結果、マレイン酸から光環化二量化反応によって1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得る際に、特定の構造を有するα−不飽和エーテルを用いてマレイン酸を保護化する工程を経ることによって、前記の課題を解決しうることの知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の〔1〕である。
〔1〕 次の工程I〜IIIを行うことを特徴とする、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法。
工程I:マレイン酸を下記式(1)で表されるα−不飽和エーテルにより保護化し、マレイン酸ジヘミアセタールエステルを得る工程。
工程II:前記工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを光環化二量化させ、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得る工程。
工程III:前記工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルから前記α−不飽和エーテルを脱保護して1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得る工程。
Figure 0004973304
(式中、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキル基であり、Rは、水素原子、メチル基、エチル基のいずれかを示す。RとRは、互いに、結合して環を形成してもよい。)
本発明によれば、短時間かつ高収率で1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が製造できる。また、反応溶媒としての有機溶剤の削減が可能となり、環境負荷低減に優れた製造方法が提供される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
すなわち、本発明は、マレイン酸から1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得るに際し、次の工程Iから工程IIIを行うことを特徴とする。
工程I:マレイン酸をα−不飽和エーテルにより保護化し、マレイン酸ジヘミアセタールエステルを得る工程。
工程II:前記工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを光環化二量化させ、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得る工程。
工程III:前記工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルから前記α−不飽和エーテルを脱保護して1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得る工程。
上記の保護化に用いるα−不飽和エーテルは、下記式(1)で表される構造を有する。
Figure 0004973304
前記式(1)において、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキル基であり、Rは、水素原子、メチル基、エチル基のいずれかを示す。RとRは、互いに、結合して環を形成してもよい。
の炭素数が6を上回ったり、Rが水素原子、メチル基、エチル基よりも大きな基になったりすると、工程IIにおける光環化二量化反応が進行しにくくなり、本願の目的を達することができない。
次に、各工程について具体的に説明する。
1.工程I
本発明における工程Iは、マレイン酸を前記式(1)で表されるα−不飽和エーテルにより保護化し、マレイン酸ジヘミアセタールエステルを得る工程である。保護化の反応は下記式で表される。
Figure 0004973304
ここで、式(2)中、R、Rは、前記式(1)におけるものと同じである。
前記式(1)で表されるα−不飽和エーテル化合物としては、より具体的には、下記式(3)で表されるアルキルビニルエーテル化合物、下記式(4)で表される3,4−ジヒドロ−2H−ピラン化合物、下記式(5)で表される2,3−ジヒドロフラン化合物が挙げられる。
Figure 0004973304
ここで、式(3)中、Rは、前記式(1)におけるものと同じである。
Figure 0004973304
ここで、式(4)中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。
Figure 0004973304
ここで、式(5)中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。
<アルキルビニルエーテル化合物>
本発明において、前記のα−不飽和エーテル化合物としてアルキルビニルエーテル化合物を用いることができ、この場合、前記式(3)においては、前記式(1)の置換基Rは、水素原子に相当する。
前記式(3)で表されるアルキルビニルエーテル化合物としては、具体的には、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等の直鎖状アルキルビニルエーテル;イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等の分岐状アルキルビニルエーテル;シクロへキシルビニルエーテル等の脂環式アルキルビニルエーテル化合物が挙げられる。
前記のアルキルビニルエーテル化合物の中でも、n−プロピルビニルエーテルが、入手性およびカルボキシル基との反応性の観点から好ましく挙げられる。
<2,3−ジヒドロフラン化合物>
本発明において、前記のα−不飽和エーテル化合物として2,3−ジヒドロフラン化合物を用いることができ、前記式(4)においては、前記式(1)の置換基Rがメチル基でありRと結合し環をなしメチレン基となり、Rがメチン基を有する場合に相当する。
前記式(4)で表される2,3−ジヒドロフラン化合物としては、具体的には、2,3−ジヒドロフラン、5−メチル−2,3−ジヒドロフラン等が挙げられる。
前記の2,3−ジヒドロフラン化合物の中でも、2,3−ジヒドロフランが、入手性およびカルボキシル基との反応性の観点から好ましく挙げられる。
<3,4−ジヒドロ−2H−ピラン化合物>
本発明において、前記のα−不飽和エーテル化合物として3,4−ジヒドロ−2H−ピラン化合物を用いることができ、前記式(5)においては、前記式(1)の置換基Rがエチル基であり末端部でRと結合し環をなしエチレン基となり、Rがメチン基を有する場合に相当する。
前記式(5)で表される3,4−ジヒドロ−2H−ピラン化合物としては、具体的には、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メチル−2H−ピラン等が挙げられる。
前記の3,4−ジヒドロ−2H−ピラン化合物の中でも、3,4−ジヒドロ−2H−ピランが、入手性およびカルボキシル基との反応性の観点から好ましく挙げられる。
本発明の工程Iにおける保護化は、マレイン酸1モルに対して、α−不飽和エーテル2モルを付加させる反応であり、マレイン酸に対して、α−不飽和エーテルをカルボキシル基/不飽和基=1モル/1〜3モルの比になるように混合、反応させる。好ましくは、カルボキシル基/不飽和基=1モル/1〜2モル、さらに好ましくは、カルボキシル基/不飽和基=1モル/1.5モルである。カルボキシル基/不飽和基=1モル/3モル以上であると、過剰なα−不飽和エーテル成分が残存することとなり、反応後にエバポレーター等で除去するとしても、コスト的に好ましくない。カルボキシル基/不飽和基=1モル/1モル未満であると、酸価が高くなり、反応溶媒に対する溶解性が低下するので好ましくない。
反応温度は、通常、室温ないし200℃の範囲の温度であればよく、好ましくは、50〜150℃である。また、反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定すればよいが、通常、1〜100時間でよい。この際、反応を促進させる目的で、酸触媒を使用することができる。具体的には、酸性リン酸エステル化合物などが挙げられる。より具体的には、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類が挙げられる。
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で、有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソ♯100(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル等のエステルおよびエーテルエステル類:メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体;炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの炭酸エステル類が挙げられる
有機溶剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの溶媒量としては、特に、限定されないが、反応原料100重量部に対して、通常、5〜95重量部、好ましくは、20〜80重量部である。
2.工程II
工程IIは、前記工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを光環化二量化させ、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得る工程である。光環化二量化の反応は下記式で表される。
Figure 0004973304
ここで、式(6)中、R、Rは、前記式(1)におけるものと同じである。
工程IIの光環化二量化は、反応を容易にする目的で有機溶媒を使用することができる。そのような有機溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート等のエステル類;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジイソブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジオクチル、炭酸メチルエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、ビス(炭酸メチル)エチレングリコール等の炭酸エステル類などが挙げられる。
前記の有機溶媒の中でも、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルが、入手性および毒性の観点から好ましい。また、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルは、反応物であるマレイン酸ジヘミアセタールエステルと相互作用することで、二重結合の活性化を促進させ、生成物である1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルの収率を向上させることからも好ましい。
これらの溶媒量としては、特に限定されないが、マレイン酸ジヘミアセタールエステル100重量部に対して、通常、50〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部である。50重量部未満では、副反応が進行しやすくなり、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルの純度が低下するので好ましくない。1000重量部を超えると、反応時間が長くなり、生産効率が悪くなるので好ましくない。
光環化二量化反応の光源としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプなどが挙げられ、これらの中では、高圧水銀ランプが、収率の点から好ましく挙げられる。
また、光源を収納するジャケット材質をホウケイ酸ガラスとすれば、光源からの発生光の低波長側成分を除去して副反応を抑制できるので、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルの純度を上げることができる。
マレイン酸ジヘミアセタールエステルを用いた光環化二量化は、反応の経過とともに生成物が析出することはないので、反応生成物が、反応器壁に付着し、分解反応の併発による着色や、光効率が低下するといった問題が生じない。すなわち、初期の光効率を維持することが可能であり、生産効率が低下しない。
光環化二量化反応の反応温度は、通常、−40〜70℃、好ましくは、−30〜30℃、さらに好ましくは、−20〜10℃の温度範囲で行う。反応温度が低すぎると、反応が進行しにくく収率が低下するので好ましくない。また、反応温度が高すぎると、重合物などの副反応が進行し、収率、純度共に低下してしまう場合がある。
光環化二量化反応の反応時間は、通常、1〜100時間で行うことができ、通常、5〜50時間で行うのが実用的である。100時間を越えて反応を行っても、収率自体は向上せず、不飽和基の重合など副反応が進行し始めるので好ましくない。また、反応は、バッチ式または流通式で行うことができ、また常圧でも加圧でも行うことができる。
光環化二量化反応のガス雰囲気は、通常の空気存在下にて同様の反応を実施した場合と比較して、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルの収率が向上する点で不活性ガスの雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられるが、取扱いの容易性から窒素が好ましい。
3.工程III
工程IIIは、前記工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルから前記α−不飽和エーテルを脱保護して1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得る工程である。脱保護の反応は下記式で表される。
Figure 0004973304
ここで、式(7)中、R、Rは、前記式(1)におけるものと同じである。
脱保護の方法としては、以下の方法が挙げられる。
(i)加熱による熱分解
(ii)水やアルコール系溶剤を使用した加水分解
(iii)酸触媒による化学分解
<加熱による熱分解方法>
加熱温度としては、70〜200℃の範囲が好ましく挙げられる。加熱温度が70℃未満だと、ヘミアセタールエステル基の分解効率が低下し、目的とする1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の収率が低下するので好ましくない。一方、加熱温度が200℃を超えると、分解して揮発するはずの、α−不飽和エーテルが、カチオン重合し、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が着色することがあるので好ましくない。
加熱分解後は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗生成物をアルコール系溶剤で洗浄することで、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の純度を向上させることができる。そのときのアルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜5の第1級アルコール、イソプロパノール、イソブタノールなどの炭素数1〜5の第2級アルコールが好ましい。
<水やアルコール系溶剤を使用した加水分解方法>
水としては、脱イオン水、蒸留水のいずれかが好ましい。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノールなどの炭素数1〜5の第1級アルコール、イソプロパノール、sec−ブタノールなどの炭素数1〜5の第2級アルコールが好適に使用できる。炭素数6以上の第1級アルコール、第2級アルコールは、その沸点が高く、加水分解後に除去しにくいので好ましくない。また、第3級アルコールは、ヘミアセタールエステル基の加水分解速度が非常に遅くなるので好ましくない。
水とアルコール系溶剤は、混合して使用するとヘミアセタールエステル基の加水分解が非常に早くなるので効果的である。これは、工程Iで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルが、疎水性であり、水単独では溶解しにくく、アルコール系溶剤を混合することで、均一に溶解するためである。
加水分解を行う温度としては、40〜90℃の範囲が好ましく挙げられる。40℃未満であると加水分解が遅く、生産性の観点から好ましくない。一方、90℃を越えると、アルコール系溶剤の揮発により反応系が懸濁し、加水分解速度が低下するので好ましくない。
<酸触媒による分解方法>
酸触媒としては、プロトン酸やルイス酸などが挙げられる。
プロトン酸としては、0.1モル/L以下の濃度の塩酸水溶液や硫酸水溶液が好適に使用できる。濃度が、0.1モル/Lを超える塩酸水溶液や硫酸水溶液を使用すると、分解したα−不飽和エーテルが、カチオン重合し、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が着色するので好ましくない。
ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、塩化鉄、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化鉄、臭化スズ、臭化アルミニウム、臭化亜鉛などが挙げられる。
酸触媒の添加量としては、工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。酸触媒の添加量が、0.01重量部未満だと、ヘミアセタールエステル基の分解効率が低下し、目的とする1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の収率が低下するので好ましくない。一方、10重量部を超えると、分解するはずのα−不飽和エーテルがカチオン重合し、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が着色することがあるので好ましくない。
本発明において、マレイン酸のカルボキシル基をヘミアセタールエステル基に変換することで、反応溶媒への溶解性が向上し、有機溶剤量の削減が可能となった。また、反応時間が短縮でき、高収率で目的とする1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得ることが可能となった。さらに、得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルのヘミアセタールエステル構造をカルボキシル基に変換する方法を見出すことで、製造工程を短縮化、簡略化することが可能となり、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の簡便な製造方法が確立された。
本発明の光環化二量化反応における保護化によって反応効率が向上するのは、溶媒和効果による量子収率の向上や、光吸収波長領域の変化に伴う光吸収の効率化や、溶解性向上による反応器壁付着の絶無のためであることが考えられるが、それだけでは、これほどの効果の説明が付かない。機構が証明されたわけではないが、本発明における特定のα−不飽和エーテルによる保護化によって、光反応に関与するマレイン酸不飽和結合を挟むヘミアセタール置換基を本発明の範囲ととして適度な嵩高さにすることによって、マレイン酸ジヘミアセタールエステルが光環化二量化反応に有利な立体配置をとるために2分子間反応が極めて有利に進むためであると推測される。
本発明の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造において、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤などの添加剤を配合することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに制限されない。
なお、光源としては、400W高圧水銀灯(理工科学産業(株)製)を用い、それを収納した円筒型ジャケット(ホウケイ酸ガラスからなり、−7℃の冷却媒を反応中通じている。ジャケットの外径:50mm)を1000mL体積の平底円筒型フラスコ(内径:150mm)の中央に1cm浮かせた状態で設置し、このフラスコを氷水中に置いて内容物を冷却した。収率は、液体クロマトグラフィーにより定量し換算した。純度は、プロトン核磁気共鳴スペクトル測定での積分値から求めた。
また、例中の酸価はJIS K 0070−3(1992)の方法に準じて、テトラヒドロフラン(THF)溶液に、一定量の樹脂を溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、KOH/エタノール溶液にて滴定し、測定を行った。
次に、用いた分析方法、評価方法を示す。
1.<IRの測定条件>
機種;日本分光(株)製、FT/IR−600、
セル;臭化カリウムを用いた錠剤法、
分解;4cm-1
積算回数;16回。
2.<13C−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)製、400MHzのアドバンス400型、
積算回数;128、
溶媒;CDCl、TMS基準。
3.<液体クロマトグラフィーの測定条件>
機種;東ソー(株)製「SC−8010」
カラム;ジーエルサイエンス(株)製「イナートシルODS−3」
溶離液;アセトニトリル
検出器;UV
実施例1
<工程I>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、マレイン酸146g、2,3−ジヒドロフラン354g、メチルエチルケトン500gをそれぞれ仕込み、55℃で5時間反応を行った。その後、反応物の酸価が5.0mgKOH/g以下になったことを確認して反応を終了した。この後、ロータリーエバポレーターを用い、反応物から反応溶剤と未反応の2,3−ジヒドロフランを留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、酸価1.1mgKOH/gのマレイン酸ジヘミアセタールエステル300gを得た。
<工程II>
窒素雰囲気下、工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステル200.0gと炭酸ジエチル1000.0gをフラスコ中に加えた後、光環化二量化反応を反応温度5℃で12時間、マグネットスターラーを用いて撹拌しながら行った。反応後にサンプリングし、液体クロマトグラフィーにより分析した。マレイン酸ジヘミアセタールエステルと反応物の面積比は、マレイン酸ジヘミアセタールエステル/反応物=3/97であった。その後、反応液と10wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液500.0gを分液ロートに投入し、充分に攪拌した後、有機層を抽出した。さらに、有機層に無水硫酸マグネシウム30gを加え、室温にて1時間撹拌して乾燥した後、ポリフロンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、No.PF100)によりろ過し、無水硫酸マグネシウム残分を除去した。ろ液からエバボレーターにより炭酸ジエチルを除去し、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得た。(収率92.0%、純度98.1%)
<工程III>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル50g、脱イオン水10g、メタノール90gを仕込み、温度を60℃に昇温し、同温度を維持しながら4時間反応を続けた。放冷後、ロータリーエバポレーターを用いて、反応系中の脱イオン水とメタノールを除去することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗結晶を得た。粗結晶をメタノールで3回洗浄し、ろ過後に、80℃のオーブン中で2時間乾燥することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率93,4%、純度98.3%)
実施例2
<工程I>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、マレイン酸126g、ノルマルプロピルビニルエーテル374g、メチルエチルケトン500gをそれぞれ仕込み、65℃で5時間反応を行った。その後、反応物の酸価が5.0mgKOH/g以下になったことを確認して反応を終了した。この後、ロータリーエバポレーターを用い、反応物から反応溶剤と未反応のノルマルプロピルビニルエーテルを留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、酸価1.5mgKOH/gのマレイン酸ジヘミアセタールエステル300gを得た。
<工程II>
工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを使用し、反応溶媒を炭酸ジエチルから炭酸ジメチルに変更した。また、光環化二量化反応は、0℃で20時間行った。その他の製造条件は、実施例1と同様にして、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得た。(収率90.4%、純度97.9%)
<工程III>
工程Iで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル50gを、150℃のオーブン中に3時間放置することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗結晶を得た。粗結晶をメタノールで3回洗浄し、ろ過後に、80℃のオーブン中で2時間乾燥することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率92,1%、純度99.0%)
実施例3
<工程I>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、マレイン酸128g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン372g、メチルエチルケトン500g、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェート0.5gをそれぞれ仕込み、70℃で7時間反応を行った。その後、反応物の酸価が5.0mgKOH/g以下になったことを確認して反応を終了した。この後、ロータリーエバポレーターを用い、反応物から反応溶剤と未反応の3,4−ジヒドロ−2H−ピランを留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、酸価3.5mgKOH/gのマレイン酸ジヘミアセタールエステル290gを得た。
<工程II>
工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを使用し、反応溶媒を炭酸ジエチルから炭酸ジメチルに変更した。また、光環化二量化反応は、10℃で8時間行った。その他の製造条件は、実施例1と同様にして、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得た。(収率91.2%、純度96.9%)
<工程III>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、工程Iで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル50g、脱イオン水5g、メタノール90g、0.1モル/Lの塩酸水溶液5gを仕込み、温度を40℃に昇温し、同温度を維持しながら2時間反応を続けた。放冷後、ロータリーエバポレーターを用いて、反応系中の脱イオン水とメタノールを除去することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗結晶を得た。粗結晶をメタノールで3回洗浄し、ろ過後に、80℃のオーブン中で2時間乾燥することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率93,4%、純度99.3%)
比較例1
窒素雰囲気下、マレイン酸100.00gと酢酸エチル3000.0gをフラスコ中に加えた後、光環化二量化反応を反応温度5℃で72時間、マグネットスターラーを用いて撹拌しながら行った。反応後に反応液中に生成析出している白色結晶を、ろ紙で濾過し、減圧乾燥(50℃、10mmHg)することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率23.0%、純度98.1%)。
比較例2
<工程I>
窒素雰囲気下、無水マレイン酸100.0gと酢酸エチル1000.0gをフラスコ中に加えた後、光環化反応を反応温度5℃で33時間、マグネットスターラーを用いて撹拌しながら行った。反応後に反応液中に生成析出している微褐色結晶を、ろ紙で濾過し、減圧乾燥(50℃、10mmHg)することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物を得た。(収率48.4%、純度98.1%)。
<工程II>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、工程Iで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物10g、脱イオン水300gを仕込み、温度を95℃に昇温し、同温度を維持しながら5時間反応を続けた。放冷後、イソプロパノール3000gを共沸溶剤として使用し、ロータリーエバポレーターにより反応系中の脱イオン水を除去した。得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗結晶をメタノールで3回洗浄し、ろ過後に、80℃のオーブン中で2時間乾燥することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率73,4%、純度87.3%)
比較例3
<工程I>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、マレイン酸78g、2−エチルへキシルビニルエーテル422g、メチルエチルケトン500g、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェート0.5gをそれぞれ仕込み、70℃で7時間反応を行った。その後、反応物の酸価が5.0mgKOH/g以下になったことを確認して反応を終了した。この後、ロータリーエバポレーターを用い、反応物から反応溶剤と未反応の2−エチルへキシルビニルエーテルを留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、酸価2.1mgKOH/gのマレイン酸ジヘミアセタールエステル250gを得た。
<工程II>
窒素雰囲気下、工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステル200.0gと炭酸ジエチル1000.0gをフラスコ中に加えた後、光環化二量化反応を反応温度5℃で12時間、マグネットスターラーを用いて撹拌しながら行った。反応後にサンプリングし、液体クロマトグラフィーにより分析した。マレイン酸ジヘミアセタールエステルと反応物の面積比は、マレイン酸ジヘミアセタールエステル/反応物=5/95であった。その後、反応液と10wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液500.0gを分液ロートに投入し、充分に攪拌した後、有機層を抽出した。さらに、有機層に無水硫酸マグネシウム30gを加え、室温にて1時間撹拌して乾燥した後、ポリフロンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、No.PF100)によりろ過し、無水硫酸マグネシウム残分を除去した。ろ液からエバボレーターにより炭酸ジエチルを除去し、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得た。(収率92.0%、純度98.1%)
<工程III>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル50g、脱イオン水10g、メタノール90gを仕込み、温度を60℃に昇温し、同温度を維持しながら4時間反応を続けた。放冷後、ロータリーエバポレーターを用いて、反応系中の脱イオン水とメタノールを除去することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の粗結晶を得た。粗結晶をメタノールで3回洗浄し、ろ過後に、80℃のオーブン中で2時間乾燥することで、目的の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得た。(収率33,4%、純度98.3%)
実施例1の工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルについて赤外線吸収スペクトル測定(IRスペクトル)を行ったところ、マレイン酸のカルボキシル基に由来する2500〜3500cm−1付近のブロードな吸収は観察されず、へミアセタールエステル基に由来する1728cm−1の吸収が観測された。また、13C−NMRの測定も行い、同化合物の構造を確認した。すなわち、下記式(8)に示す構造を有していることが確認できた。得られたスペクトル値を以下に示す。
13C−NMR spectrum(CDCl):δ/ppm
20.5、30.9、62.4、103.5(フラン環)
135.6(−OOC=OO−)
165.0(C=O)
Figure 0004973304
実施例1の工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルについて赤外線吸収スペクトル測定(IRスペクトル)を行ったところ、2500〜3500cm−1付近にブロードな吸収は観察されず、へミアセタールエステル基に由来する1728cm−1の吸収が観測された。また、13C−NMRの測定も行い、同化合物の構造を確認した。すなわち、下記式(9)に示す構造を有していることが確認できた。得られたスペクトル値を以下に示す。
13C−NMR spectrum(CDCl):δ/ppm
34.6(シクロブタン環)
20.5、30.8、62.4(フラン環)
103.7(−COO−H(R)O−)
174.5(C=O)
Figure 0004973304
実施例1の工程IIIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸について赤外線吸収スペクトル測定(IRスペクトル)を行ったところ、へミアセタールエステル基に由来する1728cm−1の吸収は観測されず、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸のカルボキシル基に由来する2500〜3500cm−1付近のブロードな吸収が観察された。また、13C−NMRの測定も行い、同化合物の構造を確認した。すなわち、下記式(10)に示す構造を有していることが確認できた。得られたスペクトル値を以下に示す。
13C−NMR spectrum(CDCl):δ/ppm
35.9(シクロブタン環)
179.5(C=O)
Figure 0004973304
なお、実施例2、3、比較例1〜3で得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステル、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物についても、実施例1と同様に、その構造を確認した。
実施例1〜3より、工程Iに関して、マレイン酸とα−不飽和エーテルとの付加反応は、穏和な条件下で進行し、マレイン酸ジヘミアセタールエステルが高収率で得られることが確認された。
工程IIに関しては、工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを光環化二量化反応の原料として使用することで、短時間の反応において、高収率で1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルが得られることが確認できた。このとき、生成した1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルが反応器壁に付着し、光効率を低下させるといった問題は確認されなかった。さらに、使用する反応溶媒に関しても、大幅に削減できることが確認できた。
工程IIIに関しては、工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルのヘミアセタールエステル構造を効率よく分解させることで、高収率で1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を製造できることが確認できた。
一方、比較例1では、マレイン酸の溶解性の問題から多量の有機溶剤を必要とした。また、長時間の反応を実施したにもかかわらず、反応は進行しにくく、得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸は低収率であった。また、比較例2では、工程Iにおいて、長時間の反応時間を必要とし、得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物は低収率であった。また、生成した1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物が、反応器壁に付着し、光効率を低下させるといった問題が発生した。さらに、得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物の着色も見られた。反応溶媒に関しても、溶解性の問題から多量の有機溶剤を必要とした。工程IIに関しては、水を脱水するのに、多くの時間を費やし、多量の共沸溶剤を必要とした。また、精製後も、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物の着色が消えず、純度は低いものであった。比較例3では、工程I、工程IIまでは、実施例1〜3と同様の結果であったが、工程IIIにおいて、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルのブロック剤である2−エチルへキシルビニルエーテルが分解されず、結果的に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の収率は低かった。
以上の結果より、本発明の製造方法は、製造プロセスが非常に容易であり、高収率で、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が得られることがわかった。また、反応溶媒としての有機溶剤使用量が非常に少なくて済み、結果的に、環境負荷の観点からも優れた製造方法であることがわかった。さらに、比較例2と比較すると、本発明の製造方法は、反応時に、生成物が反応器壁に付着し光効率を低下させることはない。また、生成物が着色する問題も回避することができ、純度の高い1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が得られることがわかった。

Claims (1)

  1. 次の工程I〜IIIを行うことを特徴とする、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法。
    工程I:マレイン酸を下記式(1)で表されるα−不飽和エーテルにより保護化し、マレイン酸ジヘミアセタールエステルを得る工程。
    工程II:前記工程Iで得られたマレイン酸ジヘミアセタールエステルを光環化二量化させ、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルを得る工程。
    工程III:前記工程IIで得られた1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラヘミアセタールエステルから前記α−不飽和エーテルを脱保護して1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を得る工程。
    Figure 0004973304
    (式中、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキル基であり、Rは、水素原子、メチル基、エチル基のいずれかを示す。RとRは、互いに、結合して環を形成してもよい。)
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