JP2007238460A - シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸化合物の製造方法 - Google Patents
シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸化合物を選択率高く、さらに極めて高い光反応効率を保持しながら、有機溶剤を反応媒質として全く使用せずに水に分散させて反応させることができ、かつ産業廃棄物をほとんど出すことのない製造方法を提供する。
【解決手段】ジアルキルフマレートの光二量化反応において、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸化合物を得るに際し、反応媒質として水を用いることを特徴とする製造法。
【選択図】 なし
【解決手段】ジアルキルフマレートの光二量化反応において、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸化合物を得るに際し、反応媒質として水を用いることを特徴とする製造法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光二量化反応によってフマル酸化合物からシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸(以下、CBTCと略称する)化合物を得るに際し、反応媒質として水を用いることを特徴とする、CBTCの製造方法に関する。
かかるテトラカルボン酸類は、そのポリイミドが透明性、耐熱性、疎水性及び電気特性を有するため、バッファーコート等の電子材料、反射防止フィルム、液晶デバイス等の光学材料分野で重要である。
従来、光二量化反応によるCBTC化合物の製造方法としては、例えば、ガラス管内部にジメチルフマレートの単分子膜を塗布し、低圧水銀ランプで1〜5日間光照射することで約60%の収量で得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法は反応時間が長く、また反応後ベンゼンによる抽出、再結晶を必要とするなど環境問題の観点からも実用的な方法ではない。
また置換1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物を製造する技術として、無水マレイン酸化合物の光二量化反応による方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法もまた、反応溶媒として酢酸エチルなどを用いたり、反応途中で原料の無水マレイン酸化合物を追加したりしなければならない。さらに副生成物の発生が認められるため、精製工程を要するなど、操作が煩雑で改良すべき課題は多い。
J. Am. Chem. Soc., 83, 2725-2728 (1961)
特開2003−192685公報
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決すること、すなわち、光二量化反応によるCBTC化合物の製造方法において、反応効率を高めると共に、有機溶剤を使わず、且つろ過するだけで高純度の目的物を単離することが可能な方法を提供することである。
本発明者は、光二量化反応によるフマル酸化合物からのCBTC化合物の製造において、反応媒質として水を用いることにより、高純度、高収率、且つ比較的短時間にCBTC化合物を製造し得ることを見出した。また、かかる光二量化反応において、最適条件下定量的に生成したCBTC化合物は、媒質である水に不溶であるため、これをろ過により回収することで、効率良く得ることができることも見出し、本発明を完成させた。
本発明の光二量化反応によるフマル酸化合物からのCBTC化合物の製造方法は、目的とするCBTC化合物の、高選択的、高光効率合成を可能にするものである。また、反応媒質として水を用い、且つろ過するだけで高純度の目的物を単離することができるため、環境に有害な産業廃棄物をほとんど出すことがない。したがって、環境問題の点のみならず、作業性や経済性にも優れており、工業的な製法としても有利である。
本発明のCBTC化合物の製造方法は、下記の反応式1で表される。
式中、R2は、−CO2R1を表し、R1は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、シクロへキシル基又はフェニル基を表す。
R1における炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。R1は、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられる。R1は、より好ましくはメチルである。
本発明の製造方法で重要な役割を果たしているのが反応媒質である。一般に、工業的に採用できる反応溶媒、すなわち反応媒質としては、(1)反応廃液として環境基準を守れること、(2)引火性が低いなどの安全性が確保できること、(3)安価であること、(4)原料を溶解すること、(5)副生成物を溶解すること、そして(6)生成物を固体として分けることができるものが望ましいが、本発明の製造方法で使用する水は、これらをほぼ充たす、工業的に優れた反応媒質である。
反応媒質としての水は、特に限定されないが、水道水、河川水、工業用水、蒸留水若しくは精製水、又は塩類の溶解した水、例えば海水、海洋深層水などが挙げられるが、蒸留水の使用が好ましい。
反応媒質としての水の使用量には特に制限はないが、フマル酸化合物に対して50倍量(重量)以下で行ことが好ましい。本発明の製造方法では、出発原料を水に溶解させる必要はなく、水に分散させて反応させればよい。均一に分散させるために、反応混合物を攪拌することが好ましい。
本発明の製造方法は、紫外及び可視光を含む光源を用いた光二量化反応により行うことができるが、例えば、紫外領域の波長、特に、波長が200〜300nmの領域にある光を利用することが好ましい。したがって、波長が200〜300nmの領域にある光を通す石英ガラス容器等を用いることが好ましい。光源としては、低圧水銀灯(内部照射)、高圧水銀灯(内部照射)、キセノンランプ(外部照射)等が挙げられるが、高圧水銀灯が好ましい。さらに石英製光源冷却管を用い反応容器の温度を保ち、また反応容器をアルミホイルのような光を反射するもので包むことにより、短時間で反応を終わらせ、収率を高めることができる。
反応温度は、水が凍らない温度であればよく、0〜50℃で行うことが望ましい。さらに40℃以下の温度で行えば、特に外部冷却装置など必用とせずにも高収率でCBTC化合物を得ることができるため好ましい。
反応時間は、反応材の量によるが、通常1〜50時間で行うことができるが、原料がなくなるまで行うのが実用的である。例えば、後述する実施例の条件では1〜5時間で行うことができ、経済的にも優れている。反応はバッチ式又は流通式で行うことができ、また常圧でも高圧でも行うことができる。
反応後は、生成したCBTC化合物の結晶をろ過により回収するのみで、高純度の製品が得られる。反応後のろ液を、特に精製することなく、再利用することも可能である。
本発明の製造方法の特徴の一つは、出発原料である式(1)の化合物としてジアルキルフマレートを用いた場合、反応媒体である水にジアルキルフマレートは若干溶けるが、CBTC化合物に変化すると、溶解性が抑えられるため、原料であるジアルキルフマレートが反応直後にろ別したCBTC化合物にほとんど混入しないように制御できる点にある。特に、ジメチルフマレートを用いることが好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例におけるCBTC化合物の収率は、以下の式に従って算出した。
CBTCの収率% = P・100/A
Pは生成物(g)、Aはフマル酸化合物(g)。
Pは生成物(g)、Aはフマル酸化合物(g)。
実施例1
内容積500mlの内部照射型パイレックスガラス製三つ口フラスコに、ジメチルフマレート3g、蒸留水500mlを仕込み、攪拌しながら5分間窒素ガスを通じ、フラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始、3時間照射後、反応混合物をろ過することにより、cis, trans, cis−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラメチルエステル(以下、TMCBと略す)の結晶を約1.5g回収した。乾燥後1.1g(収率36.7%)の結晶を得た。
内容積500mlの内部照射型パイレックスガラス製三つ口フラスコに、ジメチルフマレート3g、蒸留水500mlを仕込み、攪拌しながら5分間窒素ガスを通じ、フラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始、3時間照射後、反応混合物をろ過することにより、cis, trans, cis−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラメチルエステル(以下、TMCBと略す)の結晶を約1.5g回収した。乾燥後1.1g(収率36.7%)の結晶を得た。
実施例2
内容積500mlの内部照射型石英ガラス製三つ口フラスコに、ジメチルフマレート10g、蒸留水500mlを仕込み、攪拌しながら5分間窒素ガスを通じ、フラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始、3時間照射後、反応混合物をろ過することにより、cis, trans, cis−TMCB結晶粉末を回収した。乾燥後8.5g(収率85%)の結晶を得た。一方、原料ほぼ1.5gを水層から回収した。
内容積500mlの内部照射型石英ガラス製三つ口フラスコに、ジメチルフマレート10g、蒸留水500mlを仕込み、攪拌しながら5分間窒素ガスを通じ、フラスコ中央部の光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始、3時間照射後、反応混合物をろ過することにより、cis, trans, cis−TMCB結晶粉末を回収した。乾燥後8.5g(収率85%)の結晶を得た。一方、原料ほぼ1.5gを水層から回収した。
実施例1及び2で得られた結晶の構造が、下記の融点、1H-NMRを文献値と比較することにより、下記式:
(式中、R1は、メチルである)で表される、cis, trans, cis−TMCBであることを確認した。
mp. 145〜147℃([J. Am. Chem. Soc., 83, 2725-2728 (1961) には144-145℃とある]);
1H-NMR (CDCl3, ppm)δ:3.778(s, 4H), 3.712(s, 12H)。
1H-NMR (CDCl3, ppm)δ:3.778(s, 4H), 3.712(s, 12H)。
参考実施例1
実施例1及び2で得られたTMBCを、塩酸水溶液中、100℃で加水分解し、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸とし、これを220〜225℃で加熱することにより、下記式:
実施例1及び2で得られたTMBCを、塩酸水溶液中、100℃で加水分解し、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸とし、これを220〜225℃で加熱することにより、下記式:
で表される無水マレイン酸化合物への定量的な脱水反応が起こった。
本発明の製造方法は、目的とするCBTC化合物を効率良く得ることを可能にするものである。また、反応媒質として水を用い、且つろ過するだけで高純度の目的物を単離することができるため、環境に有害な有機溶剤のような産業廃棄物をほとんど出すことがない。したがって、環境問題の点のみならず、作業性や経済性にも優れており、工業的な製法としても極めて有用である。
Claims (3)
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JP2006058987A JP2007238460A (ja) | 2006-03-06 | 2006-03-06 | シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸化合物の製造方法 |
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JP2006058987A JP2007238460A (ja) | 2006-03-06 | 2006-03-06 | シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸化合物の製造方法 |
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JP2007238460A true JP2007238460A (ja) | 2007-09-20 |
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JP (1) | JP2007238460A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008273876A (ja) * | 2007-04-27 | 2008-11-13 | Nof Corp | 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法 |
-
2006
- 2006-03-06 JP JP2006058987A patent/JP2007238460A/ja active Pending
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