JP4886938B2 - イミダゾリジノン誘導体の製法 - Google Patents
イミダゾリジノン誘導体の製法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4886938B2 JP4886938B2 JP2001170912A JP2001170912A JP4886938B2 JP 4886938 B2 JP4886938 B2 JP 4886938B2 JP 2001170912 A JP2001170912 A JP 2001170912A JP 2001170912 A JP2001170912 A JP 2001170912A JP 4886938 B2 JP4886938 B2 JP 4886938B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- cyanide
- salt
- carbon atoms
- formula
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
- YNPKORSHCOSDLZ-UHFFFAOYSA-N CC(CC1)CCC11NC2(CCC(C)CC2)NC1=O Chemical compound CC(CC1)CCC11NC2(CCC(C)CC2)NC1=O YNPKORSHCOSDLZ-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Landscapes
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、重合禁止剤、高分子化合物等の原料として有用なイミダゾリジノン誘導体の効率的かつ安全な製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下記式(2)
【0003】
【化3】
【0004】
(式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5およびR6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体の製法としては、特公昭45−34815号公報に、シクロヘキサノンやアセトン等のケトンと1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体から製造する方法が開示されている。
【0005】
また、J.Org.Chem.,28,3576〜3577(1963)に1−シアノシクロヘキシルアミン2分子から製造する方法が、Monatsh.Chem.,112(6〜7),853〜866(1981)に1−シアノシクロヘキサノールとシクロヘキサノンとグアニジンとから製造する方法が記載されている。WO9830601号公報には1−シアノシクロヘキシルアミンとシクロヘキサノンと硫化アンモニウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、原料となる1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体をあらかじめ製造しなければならない。
【0007】
シクロアルカンのα−アミノニトリル体を例にとると、製法はJ.Am.Chem.Soc.,118(11),2574〜2583(1996)や特開平11−335360号公報に記載されているが、油相と水相の二相系で反応後、塩酸等の酸を添加してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を塩として析出させたり、非水溶性溶媒を使用してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を抽出する等の煩雑な回収工程を必要とする。塩酸等の酸を添加する場合、多量の酸を使用しなければならない上に、耐蝕性の反応器が必要となる。また、酸性にするために青酸ガスの発生が避けられず、十分な安全対策が必要となる。一方、非水溶性溶媒を使用する場合、抽出後に溶媒を蒸発させる必要がある。また、これらの方法では、イミダゾリジノン誘導体はほとんど生成していない。
【0008】
1−シアノシクロヘキサノールの合成法は、Chem.Lett.,(2),375〜378(1993)やJ.Chem.Soc.Perkin Trans.II,(4),356〜366(1989)等に記載されているが、希土類のアルコキシドやピロ亜硫酸ナトリウム等の触媒を必要とする上に、非水溶性溶媒を使用して生成物を抽出しなけれなならない。この方法は、非水溶性溶媒を使用するので抽出後に溶媒を蒸発させる必要があり、また、触媒を使用するので廃触媒の処理が必要となる。
【0009】
しかも、これらのイミダゾリジノン誘導体の合成反応では収率が低く、大量の未反応シアン化物や副生シアン化物が反応液中に残るという問題もある。
【0010】
Ind.Eng.Chem.Res.,31(8),2046〜2050(1992)には、シクロヘキサノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法や、シクロペンタノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロペンチルイミダゾリジノンを合成する方法が記載されている。しかし、上記の方法やWO9830601号公報記載の方法は、下記式(3)
【0011】
【化4】
【0012】
で表されるようなチオン体を得て単離した後、それを過酸化水素で酸化する必要があり、安全対策に十分留意する必要がある上、煩雑な工程を必要とする。
【0013】
以上のように、従来のイミダゾリジノン誘導体の製造工程では、危険な操作を要する場合がある上、煩雑な操作が多く、各段階での取得ロス等によって高い収率を得るのは難しい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のイミダゾリジノン誘導体の製法は、α−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程、単離工程、イミダゾリジノンの製造工程、単離工程等に分かれていて工程が多い上に、発生した青酸ガスや大量に残るシアン化物などの処理、過酸化水素水の使用、非水溶性溶媒の溜去等をしなければならず、煩雑であり、安全性の点でも十分とはいえない。
【0015】
本発明はこのような課題を解決するものであり、本発明の目的は、安全性が高く、効率的なイミダゾリジノン誘導体の製法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機溶媒を主体とする反応媒体中で、塩基性条件でシアン化水素またはその塩と、下記式(1)
【0017】
【化5】
【0018】
(式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1およびR2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい)で表されるケトンとアンモニアまたはその塩を反応させることにより、式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物が選択的に生成したのち、式(1)で表されるケトンと逐次的に反応してイミダゾリジノン環を形成し、一段でイミダゾリジノン誘導体が効率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明の上記目的は以下の本発明により解決できる。すなわち本発明は、シアン化水素またはその塩と、該シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜10モルの下記式(1)
【0020】
【化6】
【0021】
(式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1およびR2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい)で表されるケトンと、アンモニアまたはその塩とを、有機溶媒を主体とする反応媒体中、均一系またはさらに不溶物が存在するスラリーの状態で、塩基性条件下に反応させ、下記式(2)
【0022】
【化7】
【0023】
(式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5およびR6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得ることを特徴とするイミダゾリジノン誘導体の製法である。
【0024】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製法は、一段でイミダゾリジノン誘導体を製造することができるので煩雑な操作を必要とせず、しかも、青酸ガスなどの有害性物質がほとんど発生せず、効率的かつ安全性の高いものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0026】
本発明は、上記式(1)で表されるケトンから上記式(2)で表されるイミダゾリジノン誘導体を一段で製造するものである。
【0027】
式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル基、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。
【0028】
式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5、R6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。
【0029】
上記アルキル基は直鎖状でも分岐を有していてもよい。また、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、反応溶媒への溶解性の観点からフェニル基が好ましい。
【0030】
これらのシクロアルキル環、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。これらの置換基は、イミダゾリジノン骨格に対していずれの位置にあってもよい。
【0031】
式(2)中のR3〜R6は、原料の式(1)で表されるケトンによって決まる。式(2)においてR3とR4が異なる場合、式(2)のイミダゾリジノン環が表示されている側を上面とすると、R3が上側にありR4が下側にある場合とR4が上側にありR3が下側にある場合とで異性体が存在する。R5とR6が異なる場合も同様にR5とR6の位置関係による異性体が存在し、R3とR4、R5とR6がシクロアルキル環を形成する場合も、シクロアルキル環の置換基の位置によっては、同様の異性体が存在する場合がある。式(2)におけるR3とR4、R5とR6の組み合わせは、式(1)におけるR1とR2またはその異性体となるR2とR1との組み合わせに相当する。これらの異性体は、蒸留や再結晶、カラム精製などの既知の操作で容易に単離できる。
【0032】
原料の式(1)で表されるケトンとしては、脂環式ケトン、芳香族ケトン、脂肪族ケトンなどが挙げられ、市販のもの、公知の製法で合成したものが使用できる。
【0033】
脂環式ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さから、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン等が好ましく、反応性の点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノンであることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−メチルシクロへキサノンが特に好ましい。
【0034】
芳香族ケトンとしては、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、p−メチルベンゾフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3’−エチルアセトフェノン、2’,4’−ジメチルアセトフェノン、3’,4’−ジメチルアセトフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さからアセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3’−エチルアセトフェノンが好ましく、反応性の点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノンであることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトフェノン、プロピオフェノンが特に好ましい。
【0035】
脂肪族ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、3−ヘプタノン、3−オクタノン、3−ノナノン、3−デカノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、3,5−ジメチル−4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘプタノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さの点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることが好ましく、反応性の点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトン、3−ペンタノンが特に好ましい。
【0036】
アンモニアまたはその塩としては、アンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、よう化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸との塩、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、アンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等が反応性の点から好ましく、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどがイミダゾリジノン誘導体選択性の点からより好ましい。アンモニアまたはその塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0037】
アンモニアまたはその塩は、一種または二種以上を水または有機溶媒に溶解または懸濁した状態で使用される。
【0038】
シアン化水素またはその塩としては、シアン化水素、シアン化ナトリウムやシアン化カリウム等のアルカリ金属塩、シアン化バリウム等のアルカリ土類金属塩、シアン化銀やシアン化銅等の重金属の塩、シアン化アンモニウム等が挙げられる。中でも、シアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化アンモニウムが反応性の点から好ましく、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムが取り扱いやすさの点からより好ましい。また、アセトンシアンヒドリンなどのシアノ化合物から上記のような塩を合成してもよい。
【0039】
シアン化水素またはその塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0040】
シアン化水素またはその塩は、一種または二種以上を、水や有機溶媒に溶解または懸濁した状態で使用される。
【0041】
式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量も十分少なくできるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して1.6モル以上が好ましく、より好ましくは1.8モル以上、特に2.0モル以上が好ましい。ケトンの使用量が、1.6モルより少ない場合、イミダゾリジノン誘導体の生成量は大幅に低下する。また、式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、未反応ケトンの量を十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して10モル以下が好ましく、より好ましくは5モル以下、特に3モル以下が好ましい。
【0042】
アンモニアまたはその塩の使用量は、通常、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量が十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して0.8モル以上が好ましく、より好ましくは1.0モル以上、特に1.2モル以上が好ましい。また、アンモニアまたはその塩の使用量は、シアン化水素またはその塩に対して大過剰存在すると、イミダゾリジノン環の形成が抑制され、収率が著しく低下する場合があるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して5モル以下が好ましく、特に3モル以下が好ましい。
【0043】
本発明において反応媒体に利用できる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、t−ブチルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ル、n−アミルアルコ−ル、イソアミルアルコ−ル、n−へキシルアルコ−ル、n−へプチルアルコ−ル、n一オクチルアルコ−ル、n−ノニルアルコ−ル、n−デシルアルコ−ル、ラウリルアルコ−ル、セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、ベンジルアルコ−ル、トリフェニルカルビノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、グリセリンアセトアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クレゾール、フェノール、キシレノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、トリエチルアミン等が挙げられる。中でも、反応系に水が存在する場合、反応液が油相と水相の二層に分離しない、100gの水へ5g以上溶解する水溶性アルコールの使用が反応を円滑に進行させる観点から好ましく、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、t−ブチルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル等の特に水溶性の高いアルコールを用いることがより好ましく、溶媒除去や溶媒回収の点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低沸点のアルコールを用いることが特に好ましい。
【0044】
溶媒は、一種または二種以上を混合して使用しても良い。
【0045】
有機溶媒として式(1)で表されるケトンを使用することもできるが、本反応系で水相が存在する場合には、ケトンは水相にほとんど溶解しないので、アルコールなど水溶性の高い溶媒と共に使用することが好ましい。
【0046】
有機溶媒の量は通常、質量で式(1)で表されるケトンに対して0.1〜1000倍とするのが好ましい。反応を円滑に進め、副生成物を抑制する点から有機溶媒の量は0.5倍以上が好ましく、特に1倍以上が好ましい。また、反応速度や廃溶媒量の点から有機溶媒の量は100倍以下が好ましく、特に50倍以下が好ましい。
【0047】
反応は、完全に溶解状態である均一系や、スラリーの状態で行うことができ、いずれの場合でも反応は進行する。反応液の状態は、式(1)で表されるケトンの融点、有機溶媒に対する溶解度、アンモニアまたはその塩およびシアン化水素またはその塩の有機溶媒に対する溶解度などにより異なる。例えば、有機溶媒への溶解度が低いアンモニアまたはシアン化水素の塩を使用した場合、反応液はアンモニアまたはシアン化水素の塩が不溶物として懸濁したスラリーになる。反応が円滑に進行する点から均一系が好ましい。反応液が二層に分離し、油相と水相の二相系になる場合、アミノニトリル化物は生成するが、水相の存在によりイミダゾリジノン環の形成が阻害され、イミダゾリジノン誘導体の収率が著しく低下するので好ましくない。
【0048】
反応媒体である有機溶媒は、他に水を含むことができる。許容される水の量は、有機溶媒や式(1)で表されるケトンにより異なるが、反応液が油相と水相の二層に分離しない量が好ましい。反応液の体積が増えることによる操作効率低下の点から有機溶媒に対し加わる水の量を質量で1.2倍以下にするのが好ましく、反応を円滑に進めるために1.0倍以下にするのがさらに好ましく、0.8倍以下にするのが特に好ましい。ここでいう許容される水の量には、原料に含まれる水、原料を溶解や懸濁するのに使用する水も含む。
【0049】
反応温度は、通常、十分短時間で反応が完結するので0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、特に20℃以上が好ましく、十分に副生成物の生成が抑制され、高収率が得られるので80℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以下、特に60℃以下が好ましい。
【0050】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、2〜48時間程度が好ましい。
本反応は反応が円滑に進行するのでpH12よりも高いpHで反応を行うのが好ましい。特にpH13以上が好ましい。pHが12より低い場合、イミダゾリジノン環の形成反応の反応速度が遅くなる傾向があり不利である。
【0051】
pHの調整に用いる塩基性物質としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第三アミン、ピリジン等が挙げられる。中でも、水または有機溶媒への溶解度の点からアルカリ金属水酸化物、ピリジン、第三アミンが好ましい。なお、これらは一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0052】
以上の反応により、反応液中に目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体が生成する。
【0053】
反応終了後、冷却、水の添加等の操作によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別してイミダゾリジノン誘導体を回収することができる。また、生成するイミダゾリジノン誘導体や溶媒によっては、反応時からイミダゾリジノン誘導体が析出する場合がある。この場合も、さらに冷却、水の添加等の操作によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別して回収することができる。
【0054】
反応液中には、目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体の他に、未反応の出発原料、反応により副生する無機塩、中間生成物やその誘導体またはその塩等の挟雑物が微量含まれることがある。本発明においては、析出したイミダゾリジノン誘導体のろ別だけで十分に使用可能な純度のものが得られるが、必要に応じて水や有機溶媒による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製して用いてもよい。
【0055】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン54.0g(0.55モル)、メタノール160gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.5であった。
【0057】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄後、真空乾燥を行い、下記式(4)で表されるジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.7%で45.5g得た(シアンイオンベース収率 81.8%)。
【0058】
【化8】
【0059】
(実施例2〜5)
シクロヘキサノンおよびアンモニア水の使用量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成した。
【0060】
表1に、得られたジシクロヘキシルイミダゾリジノンの収量、純度、収率を示す。収率はシアンイオンベースで計算した。表1には、実施例1の結果も示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(比較例1)
窒素気流下、シアン化ナトリウム11.4g(シアンイオン 0.232モル)の水溶液28mlと29%アンモニア水120mlとの混合溶液に酢酸12.0mlをゆっくり滴下し、さらにシクロヘキサノン20.0ml(0.193モル)を滴下した。そして、6時間、40℃で加熱して反応させた。このとき反応液は二層に分離しており、水相のpHは12.4であった。反応液を分析した結果、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンは検出されなかった。
【0063】
得られた反応液を室温に戻してトルエンで抽出し、有機層をアンモニア水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。そして、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液の溶媒を留去して1−シアノシクロヘキシルアミン18.5g(シアンイオンベース収率 64.3%、シクロヘキサノンベース収率77.5%)を得た。
【0064】
次に、98.4%エタノール40mlにナトリウム1.4gを加えて調整したナトリウムエトキシド溶液にこの1−シアノシクロヘキシルアミン10.5g(0.085モル)を加え、室温で21時間撹拌した。そして、析出物をろ過し、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物を真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.2%で8.7g得た(1−シアノシクロヘキシルアミンベース収率 92.3%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、シアンイオンベース収率59.4%、シクロヘキサノンベース収率71.5%であった。
【0065】
(比較例2)
1Lフラスコにシクロヘキサノン103ml(1.0モル)と33mlのジエチルエーテルを入れて溶解させ、塩化アンモニウム60.4g(アンモニアイオン 1.13モル)を183mlの水に溶解させた水溶液を加え、さらに氷冷しながら、シアン化ナトリウム50.5g(シアンイオン 1.03モル)を133mlの水に溶解させた水溶液をゆっくり滴下し、23℃で一晩撹拌して反応させた。このとき反応液は二層に分離しており、水相のpHは10.4であった。反応液を分析した結果、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンは検出されなかった。反応液を塩酸でpH1に調整し、析出した1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩をろ過して集め、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩を1M水酸化ナトリウムに溶解し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。また、残った反応液からジエチルエーテルで未反応シクロヘキサノンを回収する操作を3回繰り返し、1M水酸化ナトリウムで水溶液のpHを12に調整し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。そして、1−シアノシクロヘキシルアミンを含むジエチルエーテル相を集め、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧してジエチルエーテルを溜去した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミンの収量は75.7g(シアンイオンベース収率 59.2%)であった。
【0066】
この1−シアノシクロヘキシルアミン12.4g(0.1モル)とシクロヘキサノン9.8g(0.1モル)とをメタノール50mlに加え、室温で撹拌しながらこの溶液に40%水酸化ナトリウム水溶液1mlを滴下し、室温で8時間撹拌反応させ、析出した結晶をろ取した。さらに、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物をエタノールで再結晶、真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.9%で18.7g得た(1−シアノヘキシルアミンベース収率 84.0%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、49.7%であった。
【0067】
(実施例6)
密閉型耐圧容器に、シクロペンタノン46.3g(0.55モル)、メタノール100gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の炭酸アンモニウム水溶液を48.1g(アンモニウムイオン 0.40モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.4であった。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0068】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄した後、真空乾燥を行い、下記式(5)で表されるジシクロペンチルイミダゾリジノンを純度99.2%で36.8g得た(シアンイオンベース収率
75.3%)。
【0069】
【化9】
【0070】
(実施例7)
密閉型耐圧容器に、シクロへプタノン78.5g(0.70モル)、エタノール150gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を45.4g(アンモニウムイオン 0.40モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.6であった。
【0071】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄した後、真空乾燥を行い、下記式(6)で表されるジシクロヘプチルイミダゾリジノンを純度94.8%で36.1g得た(シアンベース収率 60.9%)。
【0072】
【化10】
【0073】
(実施例8)
密閉型耐圧容器に、4−メチルシクロへキサノン67.3g(0.6モル)、エタノール160gを入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の炭酸水素アンモニウム−懸濁液を113.8g(アンモニウムイオン 0.36モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.5であった。
【0074】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄した後、真空乾燥を行い、下記式(7)で表されるジ(4−メチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度99.4%で46.2g得た(シアンベース収率 73.4%)。
【0075】
【化11】
【0076】
(実施例9)
密閉型耐圧容器に、3,5−ジメチルシクロへキサノン94.7g(0.75モル)、イソプロピルアルコール120gを入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム13.2g(アンモニウムイオン 0.10モル)及び15質量%のアンモニア水を22.7g(アンモニウムイオン 0.20モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を50℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は完全に混じり合っていたが若干の白色不溶物が見られた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.5であった。
【0077】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄した後、真空乾燥を行い、下記式(8)で表されるジ(3,5−ジメチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度98.1%で50.7g得た(シアンベース収率 71.4%)。
【0078】
【化12】
【0079】
(実施例10)
密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン68.6g(0.70モル)、メタノール180gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の水酸化ナトリウム水溶液を2.5g(0.025モル)及び25質量%の塩化アンモニウム水溶液を85.6g(アンモニウムイオン 0.40モル)入れた。密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を20℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0080】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄した後、真空乾燥を行い、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.5%で41.4g得た(シアンイオンベース収率 74.0%)。
【0081】
(実施例11〜13)
40質量%の水酸化ナトリウムの使用量を表2に示すように変えた以外は実施例10と同様にしてジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成した。
【0082】
表2に、得られたジシクロヘキシルイミダゾリジノンの収量、純度、収率を示す。収率はシアンイオンベースで計算した。表2には、実施例10の結果も示す。
【0083】
【表2】
【0084】
(比較例3)
密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン68.6g(0.70モル)、メタノール180gを入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の塩化アンモニウム水溶液を160.5g(アンモニウムイオン 0.75モル)入れた。密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を20℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であった。反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、6.8であった。
【0085】
得られた反応液を分析した結果、1−シアノシクロヘキシルアミン(収率:約75%)が検出されたが、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンは検出されなかった。
【0086】
(実施例14)
密閉型耐圧容器に、プロピオフェノン73.8g(0.55モル)、メタノール120gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.4であった。
【0087】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、50gの水で洗浄後、真空乾燥を行い、下記式(9)で表される2,5−ジフェニル−2,5−ジエチルイミダゾリジノン(ラセミ体)を純度99.0%で39.2g得た(シアンイオンベース収率 52.8%)。
【0088】
【化13】
【0089】
(実施例15)
密閉型耐圧容器に、アセトン29.0g(0.50モル)、エタノール150gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30質量%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.7であった。
【0090】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(10)で表される2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジノンを純度99.7%で28.6g得た(シアンイオンベース収率 80.2%)。
【0091】
【化14】
【0092】
(実施例16)
密閉型耐圧容器に、3−ペンタノン47.4g(0.55モル)、メタノール180gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25重量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。反応開始時の反応液は均一であったが、反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、12.8であった。
【0093】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(11)で表される2,2,5,5−テトラエチルイミダゾリジノンを純度99.5%で39.3g得た(シアンベース収率 78.6%)。
【0094】
【化15】
【0095】
以上のように、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製法は、比較例1および2に代表される従来法よりも高収率であり、しかも、残留シアン化物が少なくてより安全性が高い。また、従来法はいくつかの工程から成り立っているのに対し、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製法は、一段の簡易な操作によりイミダゾリジノン誘導体を製造でき、簡便かつ効率的な製法である。
【0096】
【発明の効果】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製法は、式(1)で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアまたはその塩とを有機溶媒を主体とする反応媒体中で、塩基性条件下、反応させるものである。1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程と精製工程、イミダゾリジノン誘導体の製造工程と精製工程等に分かれている従来の製法に対し、本発明は前述の簡便な操作によりイミダゾリジノン誘導体を製造できる効率的な方法である。しかも、本発明は、残留シアン化物が少なく、青酸ガス等の有害性物質の発生も殆どなく従来の製法よりも安全性が高い。
Claims (10)
- シアン化水素またはその塩と、該シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜10モルの下記式(1)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得る方法であって、
前記有機溶媒が、100gの水へ5g以上溶解する水溶性アルコールである
イミダゾリジノン誘導体の製法。 - シアン化水素またはその塩と、該シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜10モルの下記式(1)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得る方法であって、
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、t−ブチルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ルおよび1,4−ブタンジオ−ルからなる群から選ばれる一種以上である
イミダゾリジノン誘導体の製法。 - 塩基性条件がpH12以上である請求項1または2記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、式(1)で表されるケトンを1.8〜10モル使用する請求項1〜3の何れか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニアまたはその塩をアンモニウムイオン換算で0.8〜5モル使用する請求項1〜4のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- 式(1)で表されるケトンが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノンおよび3,5−ジメチルシクロへキサノンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- 式(1)で表されるケトンが、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノンおよび3’−エチルアセトフェノンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- 式(1)で表されるケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノンおよび2,6−ジメチル−4−ヘプタノンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- アンモニアまたはその塩がアンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硫酸水素アンモニウムから選ばれる一種以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
- シアン化水素またはその塩がシアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムおよびシアン化アンモニウムからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜9のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001170912A JP4886938B2 (ja) | 2001-06-06 | 2001-06-06 | イミダゾリジノン誘導体の製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001170912A JP4886938B2 (ja) | 2001-06-06 | 2001-06-06 | イミダゾリジノン誘導体の製法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002363166A JP2002363166A (ja) | 2002-12-18 |
JP4886938B2 true JP4886938B2 (ja) | 2012-02-29 |
Family
ID=19012762
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001170912A Expired - Fee Related JP4886938B2 (ja) | 2001-06-06 | 2001-06-06 | イミダゾリジノン誘導体の製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4886938B2 (ja) |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US3532703A (en) * | 1966-06-15 | 1970-10-06 | Sankyo Co | 2,2,5,5-tetrasubstituted-4-oxoimidazolidine-1-oxides |
US3645965A (en) * | 1967-10-23 | 1972-02-29 | Sankyo Co | Stabilization of synthetic polymers with imidazolidine compounds |
JP4244398B2 (ja) * | 1998-05-21 | 2009-03-25 | 住友化学株式会社 | キナゾリン誘導体 |
-
2001
- 2001-06-06 JP JP2001170912A patent/JP4886938B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002363166A (ja) | 2002-12-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1770084B1 (en) | Method for producing (z)-1-phenyl-1-diethylaminocarbonyl-2-aminomethyl cyclopropane hydrochloride | |
WO2007105793A1 (ja) | イソ尿素類のニトロ化方法 | |
JPS6042337A (ja) | モノメチル−置換されたメチレン化合物類の製造方法 | |
JP4886938B2 (ja) | イミダゾリジノン誘導体の製法 | |
JP2006188449A (ja) | 環式ジスルホン酸エステルの製造方法 | |
JP4917721B2 (ja) | イミダゾリジノン誘導体の製造方法 | |
JP4695277B2 (ja) | イミダゾリジノン誘導体の製造方法 | |
JP3885497B2 (ja) | 1,2,4−ブタントリオールの製造方法 | |
JP2018505179A (ja) | メデトミジンの合成に有用な3−アリールブタナールなどの化合物の調製方法 | |
JPH0240365A (ja) | N‐ヒドロキシピラゾールの製法 | |
AU2008358758A1 (en) | A process for preparing atovaquone and associate intermediates | |
EP1970369B1 (en) | Method for producing purified formylcyclopropane compound and intermediate of such formylcyclopropane compound | |
JP3950422B2 (ja) | アザディールス・アルダー反応方法 | |
JP4032861B2 (ja) | β−オキソニトリル誘導体又はそのアルカリ金属塩の製法 | |
JP4568824B2 (ja) | ジアリールスルホン酸誘導体の製造方法 | |
JP2011074061A (ja) | スルホニウム塩の製造方法およびそれによって製造されたスルホニウム塩 | |
WO2004106314A1 (ja) | オキセタン環含有ビフェニル化合物の製造方法 | |
JP3743867B2 (ja) | 2−フルオロシクロプロパンカルボン酸類の製造法 | |
WO2013061999A1 (ja) | 光学活性アルコールの製造方法 | |
JP2003171327A (ja) | 光学活性1,1’−ビ−2−ナフトール類の製造方法 | |
JP4825969B2 (ja) | 第3級アルコールの製造方法 | |
JP4339074B2 (ja) | 光学活性な1,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,2−エタンジアミンの製造方法 | |
JP2006290753A (ja) | 2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の製造方法 | |
JP2007106757A (ja) | α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトンの製造法 | |
JP2006265106A (ja) | アルコラート化合物の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080520 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20080905 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110622 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110803 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20110831 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20111019 |
|
RD13 | Notification of appointment of power of sub attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433 Effective date: 20111020 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20111020 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20111114 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20111206 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20111212 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216 Year of fee payment: 3 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216 Year of fee payment: 3 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |