JP4695277B2 - イミダゾリジノン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、重合禁止剤、高分子化合物等の原料として有用なイミダゾリジノン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下記一般式(2)
【0003】
【化3】
【0004】
(一般式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5、R6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体の製造方法としては、特公昭45−34815号公報に、シクロヘキサノンやアセトン等のケトンと1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体から製造する方法が開示されている。
【0005】
また、J.Org.Chem.,28,3576〜3577(1963)に1−シアノシクロヘキシルアミン2分子から製造する方法が、Monatsh.Chem.,112(6〜7),853〜866(1981)に1−シアノシクロヘキサノールとシクロヘキサノンとグアニジンとから製造する方法が記載されている。WO9830601号公報には1−シアノシクロヘキシルアミンとシクロヘキサノンと硫化アンモニウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、原料となる1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体をあらかじめ製造しなければならない。
【0007】
シクロアルカンのα−アミノニトリル体を例にとると、その製造方法はJ.Am.Chem.Soc.,118(11),2574〜2583(1996)や特開平11−335360号公報に記載されているが、合成後、塩酸等の酸を添加してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を塩として析出させたり、非水溶性溶媒を使用してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を抽出する等の煩雑な回収工程を必要とする。塩酸等の酸を添加する場合、多量の酸を使用しなければならない上に、耐蝕性の反応器が必要となる。また、酸性にするために青酸ガスの発生が避けられず、非常に危険である。一方、非水溶性溶媒を使用する場合、抽出後に溶媒を蒸発させる必要がある。
【0008】
1−シアノシクロヘキサノールの合成法は、Chem.Lett.,(2),375〜378(1993)やJ.Chem.Soc.Perkin Trans.II,(4),356〜366(1989)等に記載されているが、希土類のアルコキシドやピロ亜硫酸ナトリウム等の触媒を必要とする上に、非水溶性溶媒を使用して生成物を抽出しなけれなならない。この方法は、非水溶性溶媒を使用するので抽出後に溶媒を蒸発させる必要があり、また、触媒を使用するので廃触媒の処理が必要となる。
【0009】
しかも、これらのイミダゾリジノン誘導体の合成反応では収率が低く、大量の未反応シアン化物や副生シアン化物が反応液中に残るという問題もある。
【0010】
Ind.Eng.Chem.Res.,31(8),2046〜2050(1992)には、シクロヘキサノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法や、シクロペンタノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロペンチルイミダゾリジノンを合成する方法が記載されている。しかし、上記の方法やWO9830601号公報記載の方法は、下記式(3)
【0011】
【化4】
【0012】
で表されるようなチオン体を得て単離した後、それを過酸化水素で酸化する必要があり、安全性に問題がある上、煩雑な工程を必要とする。
【0013】
以上のように、従来のイミダゾリジノン誘導体の製造工程では、危険な操作を要する場合がある上、煩雑な操作が多く、各段階での取得ロス等によって高い収率を得るのは難しい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、α−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程、単離工程、イミダゾリジノンの製造工程、単離工程等に分かれていて工程が多い上に、発生した青酸ガスや大量に残るシアン化物などの処理、過酸化水素水の使用、非水溶性溶媒の溜去等をしなければならず、煩雑であり、安全性の点でも十分とはいえない。
【0015】
本発明はこのような課題を解決するものであり、本発明の目的は、安全性が高く、効率的なイミダゾリジノン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シアン化水素またはその塩と、過剰量の下記一般式(1)
【0017】
【化5】
【0018】
(一般式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい)
で表されるケトンとアンモニアの塩とを使用し、水を溶媒として不均一系でストレッカー反応を行なわせて得られるケトンのアミノニトリル化物が、過剰分の一般式(1)で表されるケトンに優先的に溶解すること、アミノニトリル化物が溶解することにより、水溶性の高いケトンの場合でも、一般式(1)で表されるケトンとアミノニトリル化物を含有する油相が水相と二相分離し、静置後水相のみを除去することにより効率よく一般式(1)で表されるケトンおよびそのアミノニトリル化物を回収できること、こうして回収されるアミノニトリル化物をそのまま精製せずに使用しても高収率でイミダゾリジノン誘導体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の上記目的は以下の本発明(I)により解決できる。
(I)(i)下記一般式(1)
【0020】
【化6】
【0021】
(一般式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい)
で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアの塩とを水の存在下に反応させ、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化する工程(一般式(1)で表されるケトンの使用量は、シアン化水素またはその塩1mol(シアンイオン換算)に対して1.6〜10molである)と、
(ii)一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物および未反応の一般式(1)で表されるケトンを含有する油相と水相に二相分離させて水相を除去する工程と、
(iii)油相に有機溶媒および塩基性物質を添加し、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、一般式(1)で表されるケトンとを反応させる工程を有することを特徴とする下記一般式(2)
【0022】
【化7】
【0023】
(一般式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5、R6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
【0024】
(i)の工程において、一般式(1)で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアの塩とを水の存在下に反応させ、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化する反応は、均一系で行なっても不均一系で行なってもよいが、最終的には油相と水相に分かれる不均一系となる。この反応は、pH5以上13未満の範囲で行なうことが好ましい。
【0025】
また、(iii)の工程において、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、一般式(1)で表されるケトンとを反応させ、イミダゾリジノン誘導体を製造する反応も、均一系で行なっても不均一系で行なってもよい。この反応は、pH12以上の範囲で行なうことが好ましい。
【0026】
一般式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して1.6〜10モルであり、1.8〜5モルが好ましく、2.0〜3モルがさらに好ましい。
【0027】
アンモニアの塩の使用量は、通常、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して0.8〜10モルであり、1.0〜5モルが好ましく、1.2〜3モルがさらに好ましい。
【0028】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、中間体を単離することなく連続した工程でイミダゾリジノン誘導体を製造することができるので煩雑な操作を必要とせず、しかも、青酸ガスなどの有害性物質がほとんど発生せず、効率的かつ安全性の高いものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0030】
本発明は、上記一般式(1)で表されるケトンから上記一般式(2)で表されるイミダゾリジノン誘導体を中間体を単離することなく、連続した工程で製造するものである。
【0031】
一般式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル基、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。なお、一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換とは、置換基としてメチル基とエチル基とを両方とも有する場合も含まれる。
【0032】
一般式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5、R6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。
【0033】
上記アルキル基は直鎖状でも分岐を有していてもよい。また、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
【0034】
これらのシクロアルキル環、アリール基は一つまたは二つのメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。これらの置換基は、イミダゾリジノン骨格に対していずれの位置にあってもよい。
【0035】
一般式(2)中のR3〜R6は、原料の一般式(1)で表されるケトンによって決まる。一般式(2)においてR3とR4、R5とR6の組み合わせは、一般式(1)におけるR1とR2またはR2とR1との組み合わせに相当する。
【0036】
原料の一般式(1)で表されるケトンとしては、脂環式ケトン、芳香族ケトン、脂肪族ケトンなどが挙げられ、市販のもの、公知の製法で合成したものが使用できる。
【0037】
脂環式ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン、4−tert−ブチルシクロへキサノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さから、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン等が好ましく、反応性の点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノンであることがさらに好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−メチルシクロへキサノンが特に好ましい。
【0038】
芳香族ケトンとしては、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルアセトフェノン、2−メチルアセトフェノン、p−メチルベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3−エチルアセトフェノン、2,4−ジメチルアセトフェノン、3,4−ジメチルアセトフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さから、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3−エチルアセトフェノンが好ましく、反応性の点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3−メチルアセトフェノンであることがさらに好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトフェノン、プロピオフェノンが特に好ましい。
【0039】
脂肪族ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、3−ヘプタノン、3−オクタノン、3−ノナノン、3−デカノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、3,5−ジメチル−4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘプタノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さの点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることが好ましく、反応性の点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることがさらに好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトン、3−ペンタノンが特に好ましい。
【0040】
また、上記ケトンの中で、水100gに対し1g以上溶解するものが、反応が効率よく進む点で好ましい。水への溶解度が大きいケトンでも、本反応条件において、アミノニトリル化物を含有することにより、水溶性が減少し、水と二相分離しやすくなる。
【0041】
本発明では、目的生成物に応じて、一般式(1)で表されるケトンを2種以上併用してもよい。
【0042】
アンモニアの塩としては、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、よう化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸との塩、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等が反応性の点から好ましく、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等の中性塩または酸性塩がアミノニトリル選択性の点からより好ましい。炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムなどの塩基性の塩も、塩酸や硫酸などの酸を添加することにより、アミノニトリル選択性を向上させることができる。また、アンモニアガスやアンモニア水を硫酸や塩酸等の酸と反応させて使用してもよい。
【0043】
アンモニアの塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0044】
アンモニアの塩は、一種または二種以上を水や有機溶媒に溶解または懸濁した状態で使用される。反応性の点から、一種または二種以上を水に溶解または懸濁した状態で使用することが好ましい。
【0045】
シアン化水素またはその塩としては、シアン化水素、シアン化ナトリウムやシアン化カリウム等のアルカリ金属塩、シアン化バリウム等のアルカリ土類金属塩、シアン化銀やシアン化銅等の重金属の塩、シアン化アンモニウム等が挙げられる。中でも、シアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化アンモニウムが反応性の点から好ましく、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムが取り扱いやすさの点からより好ましい。また、アセトンシアンヒドリンなどのシアノ化合物から上記のような塩を合成してもよい。
【0046】
シアン化水素またはその塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0047】
シアン化水素またはその塩は、一種または二種以上を水や有機溶媒に溶解または懸濁した状態で使用される。反応性の点から、一種または二種以上を水に溶解または懸濁した状態で使用することが好ましい。
【0048】
一般式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量も十分少なくできるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して1.6モル以上、好ましくは1.8モル以上、特に2.0モル以上が好ましい。また、一般式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、未反応ケトンの量を十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して10モル以下、好ましくは5モル以下、特に3モル以下が好ましい。
【0049】
アンモニアの塩の使用量は、通常、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量が十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して0.8モル以上、好ましくは1.0モル以上、特に1.2モル以上が好ましい。また、アンモニアの塩の使用量は、通常、副反応を十分に抑制でき、十分な収率が得られるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して10モル以下、好ましくは5モル以下、特に3モル以下が好ましい。
【0050】
本発明において、アミノニトリル合成反応時に用いる溶媒としては、主に水が使用されるが、原料に含まれる有機溶媒、原料を溶解するのに使用する有機溶媒などが含まれていてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン中に不純物として含まれるシクロヘキサノール等が挙げられる。水の量は、通常、質量で一般式(1)で表されるケトンに対して0.1〜100倍であり、0.3倍以上、特に0.5倍以上が好ましく、50倍以下、特に10倍以下が好ましい。
【0051】
アミノニトリル合成時の反応温度は、通常、十分短時間で反応が完結するので0℃以上、好ましくは10℃以上、特に20℃以上が好ましく、十分に副生成物の生成が抑制され、高収率が得られるので80℃以下、好ましくは70℃以下、特に60℃以下が好ましい。
【0052】
アミノニトリル合成は、青酸ガスの発生が十分抑制されるのでpHが5以上、特に6以上、さらには7以上で行なうことが好ましく、十分なアミノニトリルの収率が得られるのでpHが13未満、特に12以下で行なうことが好ましい。
【0053】
pHの調整には、塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸、酢酸やクエン酸などの有機酸、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、第三アミン、ピリジンなどの塩基性物質等を使用してもよい。なお、これらは一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0054】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、2〜48時間程度である。
【0055】
本発明においては、このようにして一般式(1)で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアの塩とを水の存在下に反応させ、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化した後、静置することにより、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物および未反応の一般式(1)で表されるケトンを含有する油相と水相に二相分離させる。そして、水相を取り除き、残った油相に有機溶媒および塩基性物質を添加し、均一系または不均一系で一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、未反応の一般式(1)で表されるケトンとを反応させてイミダリジノン誘導体を得る。
【0056】
二相分離によって除去される水相には、一般式(1)で表されるケトンやそのアミノニトリル化物などはほとんど含まれていない。
【0057】
本発明において、イミダリジノン誘導体合成反応時に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−へキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、トリフェニルカルビノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンアセトアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クレゾール、フェノール、キシレノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、トリエチルアミン等が挙げられる。中でも、反応を円滑に進行させるので、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール、特に水溶性の高いアルコールを用いることが好ましく、中でも、溶媒除去や溶媒回収の点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低沸点のアルコールを用いることが好ましい。
【0058】
有機溶媒は、一種を用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
有機溶媒の量は、通常、質量で一般式(1)で表されるケトンに対して0.1〜100倍であり、0.4倍以上、特に0.7倍以上が好ましく、50倍以下、特に10倍以下が好ましい。
【0060】
また、このとき、溶媒の他に、原料の一般式(1)で表されるケトンを添加してもよい。
【0061】
イミダゾリジノン誘導体合成は、反応が円滑に進行するのでpHが12以上で反応を行うことが好ましい。特にpH13以上が好ましい。
【0062】
pHの調整に用いる塩基性物質としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第三アミン、ピリジン等が挙げられる。中でも、水への溶解度の点からアルカリ金属水酸化物、ピリジン、第三アミンが好ましい。これらは一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0063】
イミダゾリジノン誘導体合成時の反応温度は、通常、十分短時間で反応が完結するので0℃以上、好ましくは10℃以上、特に20℃以上が好ましく、生成したイミダゾリジノン誘導体の分解が十分抑制されるので120℃以下、好ましくは100℃以下、特に80℃以下が好ましい。
【0064】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、2〜48時間程度である。
【0065】
以上の反応により、反応液中に目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体が生成する。
【0066】
反応終了後、冷却、水の添加等の操作によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別してイミダゾリジノン誘導体を回収することができる。また、生成するイミダゾリジノン誘導体や溶媒によっては、反応時からイミダゾリジノン誘導体が析出する場合がある。この場合も、さらに冷却、水の添加等の操作によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別して回収することができる。
【0067】
反応液中には、目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体の他に、未反応の出発原料、反応により副生する無機塩、中間生成物やその誘導体またはその塩等の挟雑物が微量含まれることがある。本発明においては、析出したイミダゾリジノン誘導体のろ別だけで十分に使用可能な純度のものが得られるが、必要に応じて水や有機溶媒による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製して用いてもよい。
【0068】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン54.0g(0.55モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の塩化アンモニウム水溶液64.2g(アンモニウムイオン 0.30モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.8であった。
【0070】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、40%水酸化ナトリウム水溶液10g(0.1モル)を加え、50℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0071】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(4)で表されるジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.8%で44.6g得た(シアンイオンベース収率 80.1%)。
【0072】
【化8】
【0073】
(実施例2〜5)
シクロヘキサノンおよび塩化アンモニウムの使用量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成した。
【0074】
表1に、得られたジシクロヘキシルイミダゾリジノンの収量、純度、収率を示す。収率はシアンイオンベースで計算した。表1には、実施例1の結果も示す。
【0075】
【表1】
【0076】
(比較例1)
窒素気流下、シアン化ナトリウム11.4g(シアンイオン 0.232モル)の水溶液28mlと29%アンモニア水120mlとの混合溶液に酢酸12.0mlをゆっくり滴下し、さらにシクロヘキサノン20.0ml(0.193モル)を滴下した。そして、6時間、40℃で加熱して反応させた。得られた反応液を室温に戻してトルエンで抽出し、有機層をアンモニア水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。そして、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液の溶媒を留去して1−シアノシクロヘキシルアミン18.5g(シアンイオンベース収率 64.3%) を得た。
【0077】
次に、98.4%エタノール40mlにナトリウム1.4gを加えて調整したナトリウムエトキシド溶液にこの1−シアノシクロヘキシルアミン10.5g(0.085モル) を加え、室温で21時間撹拌した。そして、析出物をろ過し、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物を真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.2%で8.7g得た(1−シアノシクロヘキシルアミンベース収率 92.3%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、59.4%であった。
【0078】
(比較例2)
1Lフラスコにシクロヘキサノン103ml(1.0モル)と33mlのジエチルエーテルを入れて溶解させ、塩化アンモニウム60.4g(アンモニアイオン 1.13モル)を183mlの水に溶解させた水溶液を加え、さらに氷冷しながら、シアン化ナトリウム50.5g(シアンイオン 1.03モル)を133mlの水に溶解させた水溶液をゆっくり滴下した。そして、23℃で一晩撹拌した後、反応液を塩酸でpH1に調整した。析出した1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩をろ過して集め、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩を1M水酸化ナトリウムに溶解し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。また、残った反応液からジエチルエーテルで未反応シクロヘキサノンを回収する操作を3回繰り返し、1M水酸化ナトリウムで水溶液のpHを12に調整し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。そして、1−シアノシクロヘキシルアミンを含むジエチルエーテル相を集め、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧してジエチルエーテルを溜去した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミンの収量は75.7g(シアンイオンベース収率 59.2%)であった。
【0079】
この1−シアノシクロヘキシルアミン12.4g(0.1モル)とシクロヘキサノン9.8g(0.1モル)とをメタノール50mlに加え、室温で撹拌しながらこの溶液に40%水酸化ナトリウム水溶液1mlを滴下し、室温で8時間撹拌反応させ、析出した結晶をろ取した。さらに、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物をエタノールで再結晶、真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.9%で18.7g得た(1−シアノヘキシルアミンベース収率 84.0%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、49.7%であった。
【0080】
(実施例6)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、シクロペンタノン46.3g(0.55モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム52.8g(アンモニウムイオン 0.40モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を50℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.5であった。
【0081】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、30%水酸化カリウム水溶液28.1g(0.15モル)を加え、40℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0082】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(5)で表されるジシクロペンチルイミダゾリジノンを純度99.5%で38.8g得た(シアンベース収率 79.6%)。
【0083】
【化9】
【0084】
(実施例7)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、シクロヘプタノン72.9g(0.65モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の硫酸水素アンモニウム水溶液184.1g(アンモニウムイオン 0.40モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g (シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは7.7であった。
【0085】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にエタノール100g、40%水酸化ナトリウム水溶液10g(0.1モル)を加え、60℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0086】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(6)で表されるジシクロヘプチルイミダゾリジノンを純度95.3%で36.1g得た(シアンベース収率 55.0%)。
【0087】
【化10】
【0088】
(実施例8)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、4−メチルシクロへキサノン67.3g(0.6モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム47.5g(アンモニウムイオン 0.36モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.3であった。
【0089】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、40%水酸化ナトリウム水溶液20g(0.2モル)を加え、40℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0090】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(8)で表されるジ(4−メチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度99.3%で48.9g得た(シアンベース収率
77.6%)。
【0091】
【化11】
【0092】
(実施例9)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、3,5−ジメチルシクロへキサノン94.7g(0.75モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム39.6g(アンモニウムイオン 0.3モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.5であった。
【0093】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にイソプロピルアルコール120g、40%水酸化ナトリウム水溶液5g(0.05モル)を加え、70℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0094】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(8)で表されるジ(3、5−ジメチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度99.5%で49.0g得た(シアンベース収率 70.1%)。
【0095】
【化12】
【0096】
(実施例10)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、プロピオフェノン73.8g(0.55モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の塩化アンモニウム水溶液64.2g(アンモニウムイオン 0.30モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、5時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.6であった。
【0097】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、40%水酸化ナトリウム水溶液10g(0.1モル)を加え、30℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0098】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(9)で表される2,5−ジフェニル−2,5−ジエチルイミダゾリジノンを純度99.3%で41.9g得た(シアンイオンベース収率 57.3%)。
【0099】
【化13】
【0100】
(実施例11)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、アセトン29.0g(0.50モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、25質量%の塩化アンモニウム水溶液64.2g(アンモニウムイオン 0.30モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30質量%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このときの反応液のpHは11.4であった。
【0101】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、40%水酸化ナトリウム水溶液10g(0.1モル)を加え、50℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0102】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(10)で表される2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジノンを純度99.6%で28.4g得た(シアンイオンベース収率 79.6%)。
【0103】
【化14】
【0104】
(実施例12)
底部に抜き出し口のついた密閉型耐圧容器に、3−ペンタノン47.4g(0.55モル)を入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム52.8g(アンモニウムイオン 0.40モル)を入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口からフィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を50℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。
このときの反応液のpHは11.1であった。
【0105】
反応終了後、30分間静置して二相に分離させ、底部の抜き出し口より水相を抜き出した。そして、残った油相にメタノール80g、30%水酸化カリウム水溶液28.1g(0.15モル)を加え、40℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。なお、反応後の液の一部を5倍に希釈し、pH計でpHを測定したところ、14付近であった。
【0106】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。そして、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(11)で表される2,2,5,5−テトラエチルイミダゾリジノンを純度99.3%で39.0g得た(シアンベース収率 78.2%)。
【0107】
【化15】
【0108】
以上のように、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、比較例1および2に代表される従来法よりも高収率であり、しかも、残留シアン化物が少なくてより安全性が高い。また、従来法はいくつかの工程から成り立っているのに対し、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、中間体を単離することなくイミダゾリジノン誘導体を製造でき、簡便かつ効率的な製造方法である。
【0109】
【発明の効果】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、(i)一般式(1)で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアの塩とを水の存在下に反応させ、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化する工程と、(ii)一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物および未反応の一般式(1)で表されるケトンを含有する油相と水相に二相分離させて水相を除去する工程と、(iii)油相に有機溶媒および塩基性物質を添加し、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、一般式(1)で表されるケトンとを反応させる工程を有するものである。1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程と精製工程、イミダゾリジノン誘導体の製造工程と精製工程等に分かれている従来の製造方法に対し、本発明は前述の一連の簡易な工程によりイミダゾリジノン誘導体を製造できる効率的な方法である。しかも、本発明は、残留シアン化物が少なく、従来の製造方法よりも安全性が高い。
Claims (11)
- (i)下記一般式(1)
で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアの塩とを水の存在下に反応させ、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化する工程(一般式(1)で表されるケトンの使用量は、シアン化水素またはその塩1mol(シアンイオン換算)に対して1.6〜10molである)と、
(ii)一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物および未反応の一般式(1)で表されるケトンを含有する油相と水相に二相分離させて水相を除去する工程と、
(iii)油相に有機溶媒および塩基性物質を添加し、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、一般式(1)で表されるケトンとを反応させる工程を有することを特徴とする下記一般式(2)
で表されるイミダゾリジノン誘導体の製造方法。 - 前記(i)の工程において、pHが5以上13未満の範囲で、一般式(1)で表されるケトンをアミノニトリル化する請求項1に記載イミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 前記(iii)の工程において、pHが12以上の範囲で、一般式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物と、一般式(1)で表されるケトンとを反応させる請求項1または2に記載イミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- アンモニアの塩の使用量が、シアン化水素またはその塩1mol(シアンイオン換算)に対して0.8〜10mol(アンモニウムイオン換算)である請求項1〜3のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)で表されるケトンが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノンまたは3,5−ジメチルシクロへキサノンのいずれか一種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)で表されるケトンが、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタフェノン、p−メチルアセトフェノン、2'−メチルアセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2'−エチルアセトフェノンまたは3−エチルアセトフェノンのいずれか一種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)で表されるケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノンまたは2,6−ジメチル−4−ヘプタノンのいずれか一種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- アンモニアの塩が、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムのいずれか一種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- シアン化水素またはその塩が、シアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムまたはシアン化アンモニウムのいずれか一種以上である請求項1〜8のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 有機溶媒が一種以上のアルコールである請求項1〜9のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 塩基性物質が、アルカリ金属水酸化物、ピリジンまたは第三アミンのいずれか一種以上である請求項1〜10のいずれかに記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
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