JP4917721B2 - イミダゾリジノン誘導体の製造方法 - Google Patents
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- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、重合禁止剤、高分子化合物等の原料として有用なイミダゾリジノン誘導体の効率的かつ安全な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下記式(2)
【0003】
【化3】
【0004】
(式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5およびR6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体の製造方法としては、特公昭45−34815号公報に、シクロヘキサノンやアセトン等のケトンと1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体から製造する方法が開示されている。
【0005】
また、J.Org.Chem.,28,3576〜3577(1963)に1−シアノシクロヘキシルアミン2分子から製造する方法が、Monatsh.Chem.,112(6〜7),853〜866(1981)に1−シアノシクロヘキサノールとシクロヘキサノンとグアニジンとから製造する方法が記載されている。WO9830601号公報には1−シアノシクロヘキシルアミンとシクロヘキサノンと硫化アンモニウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、原料となる1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体をあらかじめ製造しなければならない。
【0007】
シクロアルカンのα−アミノニトリル体を例にとると、製造方法はJ.Am.Chem.Soc.,118(11),2574〜2583(1996)や特開平11−335360号公報に記載されているが、油相と水相の二相系で反応後、塩酸等の酸を添加してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を塩として析出させたり、非水溶性溶媒を使用してシクロアルカンのα−アミノニトリル体を抽出する等の煩雑な回収工程を必要とする。塩酸等の酸を添加する場合、多量の酸を使用しなければならない上に、耐蝕性の反応器が必要となる。また、酸性にするために青酸ガスの発生が避けられず、十分な安全対策が必要となる。一方、非水溶性溶媒を使用する場合、抽出後に溶媒を蒸発させる必要がある。また、これらの方法では、イミダゾリジノン誘導体はほとんど生成していない。
【0008】
1−シアノシクロヘキサノールの合成法は、Chem.Lett.,(2),375〜378(1993)やJ.Chem.Soc.Perkin Trans.II,(4),356〜366(1989)等に記載されているが、希土類のアルコキシドやピロ亜硫酸ナトリウム等の触媒を必要とする上に、非水溶性溶媒を使用して生成物を抽出しなけれなならない。この方法は、非水溶性溶媒を使用するので抽出後に溶媒を蒸発させる必要があり、また、触媒を使用するので廃触媒の処理が必要となる。
【0009】
しかも、これらのイミダゾリジノン誘導体の合成反応では収率が低く、大量の未反応シアン化物や副生シアン化物が反応液中に残るという問題もある。
【0010】
Ind.Eng.Chem.Res.,31(8),2046〜2050(1992)には、シクロヘキサノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成する方法や、シクロペンタノンと塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、シアン化ナトリウムとからジシクロペンチルイミダゾリジノンを合成する方法が記載されている。しかし、上記の方法やWO9830601号公報記載の方法は、有機溶媒を使用して下記式(3)
【0011】
【化4】
【0012】
で表されるようなチオン体を合成し、単離した後、それを過酸化水素で酸化する必要があり、安全対策に十分留意する必要がある上、煩雑な工程を必要とする。
【0013】
以上の方法では、いずれかの工程で原料以外の有機溶媒を使用するため、反応容器に高い防爆機能が必要になる。
【0014】
以上のように、従来のイミダゾリジノン誘導体の製造工程では、危険な操作を要する場合がある上、煩雑な操作が多く、各段階での取得ロス等によって高い収率を得るのは難しい。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従来のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、α−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程、単離工程、イミダゾリジノンの製造工程、単離工程等に分かれていて工程が多く煩雑である上に、有機溶媒の使用、発生した青酸ガスや大量に残るシアン化物などの処理、過酸化水素水の使用等の問題を有し、安全性の点でも十分とはいえない。
【0016】
本発明はこのような課題を解決するものであり、本発明の目的は、安全性が高く、効率的なイミダゾリジノン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニウムイオン換算で0.8〜5モルのアンモニアまたはその塩を使用し、水の存在下、塩基性条件でシアン化水素またはその塩と、下記式(1)
【0018】
【化5】
【0019】
(式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1およびR2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい)で表されるケトンとアンモニアまたはその塩を反応させることにより、式(1)で表されるケトンのアミノニトリル化物が選択的に生成したのち、これまで進行しなかった、水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系での式(1)で表されるケトンとアミノニトリル化物のイミダゾリジノン環形成反応が逐次的に進行して、イミダゾリジノン誘導体が効率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明の上記目的は以下の本発明により解決できる。すなわち本発明は、
(i)シアン化水素またはその塩と、
(ii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜3モルの下記式(1)
【0021】
【化6】
【0022】
(式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1およびR2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい)で表されるケトンと、
(iii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニウムイオン換算で0.8〜5モルのアンモニアまたはその塩を
(iv)水とケトンにより水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系で、塩基性条件下に反応させ、下記式(2)
【0023】
【化7】
【0024】
(式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5およびR6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環およびアリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得ることを特徴とするイミダゾリジノン誘導体の製造方法である。
【0025】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、一段でイミダゾリジノン誘導体を製造することができるので煩雑な操作を必要とせず、しかも、有機溶媒を必要としない上、青酸ガスなどの有害性物質がほとんど発生せず、効率的かつ安全性の高いものである。
【0026】
ここで不溶原料とは、前記(i)および(iii)の物質のうち、式(1)で示されるケトンにも水にも溶解していないものをいう。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0028】
本発明は、上記式(1)で表されるケトンから上記式(2)で表されるイミダゾリジノン誘導体を製造するものである。
式(1)中、R1とR2とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。これらのシクロアルキル環、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。
【0029】
式(2)中、R3とR4とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示し、R5とR6とでそれらが結合している炭素原子とともに炭素数5〜8のシクロアルキル環を形成するか、R5、R6はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す。
【0030】
上記アルキル基は直鎖状でも分枝鎖を有していてもよい。また、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
これらのシクロアルキル環、アリール基は、メチル基およびエチル基からなる群から選ばれるひとつまたはふたつの基で置換されていてもよい。これらの置換基は、イミダゾリジノン骨格に対していずれの位置にあってもよい。
【0032】
式(2)中のR3〜R6は、原料の式(1)で表されるケトンによって決まる。式(2)においてR3とR4が異なる場合、式(2)のイミダゾリジノン環が表示されている側を上面とすると、R3が上側にありR4が下側にある場合とR4が上側にありR3が下側にある場合とで異性体が存在する。R5とR6が異なる場合も同様にR5とR6の位置関係による異性体が存在し、R3とR4、R5とR6がシクロアルキル環を形成する場合も、シクロアルキル環の置換基の位置によっては、同様の異性体が存在する場合がある。式(2)におけるR3とR4、R5とR6の組み合わせは、式(1)におけるR1とR2またはその異性体となるR2とR1との組み合わせに相当する。これらの異性体は、蒸留や再結晶、カラム精製などの既知の操作で容易に単離できる。
【0033】
原料の式(1)で表されるケトンとしては、脂環式ケトン、芳香族ケトン、脂肪族ケトンなどが挙げられ、市販のもの、公知の製造方法で合成したものが使用できる。
【0034】
脂環式ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さから、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノン、3,5−ジメチルシクロへキサノン等が好ましく、反応性の点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノンであることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−メチルシクロへキサノンが特に好ましい。
【0035】
芳香族ケトンとしては、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、p−メチルベンゾフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3’−エチルアセトフェノン、2’,4’−ジメチルアセトフェノン、3’,4’−ジメチルアセトフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さからアセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノン、3’−エチルアセトフェノンが好ましく、反応性の点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノンであることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトフェノン、プロピオフェノンが特に好ましい。
【0036】
脂肪族ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、3−ヘプタノン、3−オクタノン、3−ノナノン、3−デカノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、3,5−ジメチル−4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘプタノン等が挙げられる。室温での形態や粘性など取り扱いの容易さの点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることが好ましく、反応性の点から、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等であることが好ましく、目的物の選択性、精製のしやすさの点から、アセトン、3−ペンタノンが特に好ましい。
【0037】
シアン化水素またはその塩としては、シアン化水素、シアン化ナトリウムやシアン化カリウム等のアルカリ金属塩、シアン化バリウム、シアン化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、シアン化銀やシアン化銅等の重金属の塩、シアン化アンモニウム等が挙げられる。中でも、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のアルカリ金属塩、シアン化バリウム等のアルカリ土類金属塩が反応性の点から好ましく、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムなどが選択性の点からより好ましい。また、アセトンシアンヒドリンなどのシアノ化合物から上記のような塩を合成してもよい。
【0038】
シアン化水素またはその塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0039】
シアン化水素またはその塩は、一種または二種以上を、水に溶解または懸濁した状態で使用される。
【0040】
アンモニアまたはその塩としては、アンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、よう化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸との塩、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。アンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等が取り扱いやすさの点から好ましい。アンモニウム塩の中でも、アンモニウムイオンに対するカウンターイオンがOH-イオンやCO3 2-イオンであるアンモニア、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどが反応性の点から好ましく、中でも、アンモニウムイオンに対するカウンターイオンがOH-イオンとなるアンモニアまたはアンモニア水が反応性の点から特に好ましい。OH-イオン以外のカウンターイオンが存在すると、シアン化水素の塩由来の金属陽イオンを捕捉するため、反応性やイミダゾリジノン誘導体選択性が低下する場合がある。この場合、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属を添加することにより、反応性が向上する場合がある。アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物の添加量は、OH-イオン以外のカウンターイオンに対し、0.01〜2倍モルが好ましい。アンモニアまたはその塩は、一種を用いても二種以上を併用してもよい。アンモニアまたはその塩は、一種または二種以上を水に溶解または懸濁した状態で使用される。
【0041】
アンモニアまたはその塩の使用量は、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量が十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対してアンモニウムイオン換算で0.8モル以上であり、好ましくは1.0モル以上、特に1.2モル以上が好ましい。また、本反応では、アンモニアまたはその塩がシアン化水素またはその塩に対して大過剰存在すると、イミダゾリジノン環の形成が抑制され、収率が著しく低下するので、アンモニアまたはその塩の使用量はシアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対してアンモニウムイオン換算で5モル以下に抑える。好ましくは3モル以下である。
【0042】
式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、十分な収量が得られ、毒性の高い未反応シアン化物の量も十分少なくできるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して1.6モル以上が好ましく、より好ましくは1.8モル以上、特に2.0モル以上が好ましい。また、式(1)で表されるケトンの使用量は、通常、未反応ケトンの量を十分少なくでき、廃液処理の煩雑さを問題ない程度にまで低減できるので、シアン化水素またはその塩1モル(シアンイオン換算)に対して3モル以下が好ましく、より好ましくは2.5モル以下、特に2.2モル以下が好ましい。本反応系は、水相と油相の二相に分離する。ケトンの使用量が上記範囲より多いと、油相の容量が大きくなり、水相との接触効率の低下、ケトンの反応性の低下の傾向があり、反応が円滑に進行しにくくなる傾向があるという点で不利である。
【0043】
本発明は、原料として使用される式(1)で表されるケトン、シアン化水素またはその塩、アンモニアまたはその塩、水、反応液を塩基性にするための薬剤のみで実施できる。
【0044】
水の量は通常、質量で式(1)で表されるケトンに対して0.1〜1000倍が使用されるが、反応を円滑に進め、副生成物を抑制する点から水の量は0.5倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、反応速度や廃溶媒量の点から水の量は100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。水の他に、原料に含まれる有機溶媒、原料を溶解するのに使用する有機溶媒が含まれていても良いが、反応の操作性、廃液処理の点から出来うる限り少なくすることが望ましい。具体的には、反応液の体積が増えることによる操作効率低下の点から水に対し有機溶媒の量を重量で0.2倍以下にするのが好ましく、反応を円滑に進める点から0.1倍以下にするのがさらに好ましく、廃液処理の点から0.01倍以下にするのが特に好ましい。なお、上記した原料に含まれる有機溶媒および原料を溶解するのに使用する有機溶媒が、式(1)で表されるケトンである場合はこの限りではない。この場合は、原料に含まれるもしくは原料を溶解するのに使用する式(1)のケトンは、前記(ii)として示される原料であるケトンとして考える。このような有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン中に不純物として含まれるシクロヘキサノール等が挙げられる。本反応系は、水相と油相の二相に分離する。有機溶媒の含有量が上記範囲より多いと、油相の容量が大きくなり、水相との接触効率の低下、ケトンの反応性低下の傾向があり、反応が円滑に進行しにくくなる傾向があるという点で不利である。
【0045】
反応は、アンモニアまたはその塩およびシアン化水素またはその塩の水に対する溶解度などにより、水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系で行われるが、いずれの場合でも反応は進行する。
【0046】
反応温度は、通常、十分短時間で反応が完結するので0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、特に20℃以上が好ましく、十分に副生成物の生成が抑制され、高収率が得られるので80℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以下、特に60℃以下が好ましい。
【0047】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、2〜48時間程度が好ましい。
本反応は反応が円滑に進行するので高いpH域で反応を行うのが好ましい。pH12以上が好ましく、反応速度の点からpH13以上がより好ましい。
【0048】
pHの調整に用いる塩基性物質としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第三アミン、ピリジン等が挙げられる。中でも、水への溶解度の点からアルカリ金属水酸化物、ピリジン、第三アミンが好ましい。なお、これらは一種を用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
以上の反応により、反応液中に目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体が生成する。
【0050】
反応終了後、冷却によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別してイミダゾリジノン誘導体を回収することができる。また、生成するイミダゾリジノン誘導体によっては、反応時からイミダゾリジノン誘導体が析出する場合がある。この場合も、さらに冷却等の操作によってイミダゾリジノン誘導体を析出させ、これをろ別して回収することができる。
【0051】
反応液中には、目的生成物であるイミダゾリジノン誘導体の他に、未反応の出発原料、反応により副生する無機塩、中間生成物やその誘導体またはその塩等の挟雑物が微量含まれることがある。本発明においては、析出したイミダゾリジノン誘導体のろ別だけで十分に使用可能な純度のものが得られるが、必要に応じて水や有機溶媒による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製して用いてもよい。
【0052】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン54.0g(0.55モル)、水150gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.4であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(4)で表されるジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.2%で45.1g得た(シアンイオンベース収率 80.6%)。
【0054】
【化8】
【0055】
(実施例2〜4)
シクロヘキサノンおよびアンモニア水の使用量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成した。
【0056】
表1に、得られたジシクロヘキシルイミダゾリジノンの収量、純度、収率を示す。収率はシアンイオンベースで計算した。表1には、実施例1の結果も示す。
【0057】
【表1】
【0058】
収率は、シアンイオンベースで計算した。
【0059】
(比較例1)
窒素気流下、シアン化ナトリウム11.4g(シアンイオン 0.232モル)の水溶液28mlと29質量%アンモニア水120mlとの混合溶液に酢酸12.0mlをゆっくり滴下し、さらにシクロヘキサノン20.0ml(0.193モル)を滴下した。そして、6時間、40℃で加熱して反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは12.4であった。反応液を分析した結果、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンは検出されなかった。
【0060】
得られた反応液を室温に戻してトルエンで抽出し、有機層をアンモニア水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。そして、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液の有機溶媒を留去して1−シアノシクロヘキシルアミン18.5g(シアンイオンベース収率 64.3%、シクロヘキサノンベース収率77.5%)を得た。
【0061】
次に、98.4質量%エタノール40mlにナトリウム1.4gを加えて調整したナトリウムエトキシド溶液にこの1−シアノシクロヘキシルアミン10.5g(0.085モル)を加え、室温で21時間撹拌した。そして、析出物をろ過し、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物を真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.2%で8.7g得た(1−シアノシクロヘキシルアミンベース収率 92.3%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、シアンイオンベース収率 59.4%、シクロヘキサノンベース収率 71.5%であった。
【0062】
(比較例2)
1Lフラスコにシクロヘキサノン103ml(1.0モル)と33mlのジエチルエーテルを入れて溶解させ、塩化アンモニウム60.4g(アンモニアイオン 1.13モル)を183mlの水に溶解させた水溶液を加え、さらに氷冷しながら、シアン化ナトリウム50.5g(シアンイオン 1.03モル)を133mlの水に溶解させた水溶液をゆっくり滴下し、23℃で一晩撹拌して反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは、10.4であった。反応液を分析した結果、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンは検出されなかった。
【0063】
反応液を塩酸でpH1に調整し、析出した1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩をろ過して集め、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミン塩酸塩を1M水酸化ナトリウムに溶解し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。また、残った反応液からジエチルエーテルで未反応シクロヘキサノンを回収する操作を3回繰り返し、1M水酸化ナトリウムで水溶液のpHを12に調整し、ジエチルエーテルで1−シアノシクロヘキシルアミンを回収する操作を3回繰り返した。そして、1−シアノシクロヘキシルアミンを含むジエチルエーテル相を集め、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧してジエチルエーテルを溜去した。得られた1−シアノシクロヘキシルアミンの収量は75.7g(シアンイオンベース収率 59.2%)であった。
【0064】
この1−シアノシクロヘキシルアミン12.4g(0.1モル)とシクロヘキサノン9.8g(0.1モル)とをメタノール50mlに加え、室温で撹拌しながらこの溶液に40%水酸化ナトリウム水溶液1mlを滴下し、室温で8時間撹拌反応させ、析出した結晶をろ取した。さらに、ろ液に20gの水を加え、氷浴で冷却しながら一晩撹拌し、析出物をろ過した。得られた析出物をエタノールで再結晶、真空乾燥し、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度99.9%で18.7g得た(1−シアノヘキシルアミンベース収率 84.0%)。一段目と二段目の反応を通してのトータル収率は、49.7%であった。
【0065】
(実施例5)
密閉型耐圧容器に、シクロペンタノン46.3g(0.55モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の炭酸アンモニウム水溶液を60.1g(アンモニウムイオン 0.50モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.3であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0066】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(5)で表されるジシクロペンチルイミダゾリジノンを純度97.1%で34.7g得た(シアンベース収率 69.3%)。
【0067】
【化9】
【0068】
(実施例6)
密閉型耐圧容器に、シクロヘプタノン72.9g(0.65モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の炭酸アンモニウム水溶液を60.1g(アンモニウムイオン 0.50モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.1であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0069】
得られた反応液を反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(6)で表されるジシクロヘプチルイミダゾリジノンを純度93.8%で37.0g得た(シアンベース収率 55.5%)。
【0070】
【化10】
【0071】
(実施例7)
密閉型耐圧容器に、4−メチルシクロへキサノン67.3g(0.60モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の水酸化ナトリウム水溶液を2.5g(0.025モル)及び25質量%の炭酸水素アンモニウム懸濁液を113.8g(アンモニウムイオン 0.36モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.1であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0072】
得られた反応液を反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(7)で表されるジ(4−メチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度97.0%で42.9g得た(シアンベース収率 66.5%)。
【0073】
【化11】
【0074】
(実施例8)
密閉型耐圧容器に、3,5−ジメチルシクロへキサノン94.7g(0.75モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、50質量%の硫酸アンモニウム13.2g(アンモニウムイオン 0.10モル)及び15質量%のアンモニア水を22.7g(アンモニウムイオン 0.20モル)添加した。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を40℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは12.9であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0075】
得られた反応液を反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(8)で表されるジ(3,5−ジメチル−シクロヘキシル)イミダゾリジノンを純度95.1%で47.6g得た(シアンベース収率
65.1%)。
【0076】
【化12】
【0077】
(実施例9)
密閉型耐圧容器に、シクロヘキサノン58.8g(0.60モル)、水80gを入れ、氷浴で冷却しながら、40質量%の水酸化ナトリウム水溶液を5.0g(0.05モル)及び25質量%の塩化アンモニウム水溶液を85.6g(アンモニウムイオン 0.40モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは約14であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、ジシクロヘキシルイミダゾリジノンを純度97.3%で36.9g得た(シアンイオンベース収率 64.7%)。
【0078】
(実施例10〜12)
40質量%の水酸化ナトリウムの使用量を表2に示すように変えた以外は実施例9と同様にしてジシクロヘキシルイミダゾリジノンを合成した。
【0079】
表2に、得られたジシクロヘキシルイミダゾリジノンの収量、純度、収率を示す。収率はシアンイオンベースで計算した。表2には、実施例9の結果も示す。
【0080】
【表2】
【0081】
収率は、シアンイオンベースで計算した。
【0082】
(実施例13)
密閉型耐圧容器に、プロピオフェノン73.8g(0.55モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.4であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0083】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(9)で表される2,5−ジフェニル−2,5−ジエチルイミダゾリジノンを純度98.7%で38.7g得た(シアンイオンベース収率 51.9%)。
【0084】
【化13】
【0085】
(実施例14)
密閉型耐圧容器に、アセトン29.0g(0.50モル)、水100gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、30質量%シアン化カリウム水溶液54.3g(シアンイオン0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.3であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0086】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(10)で表される2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジノンを純度99.5%で29.1g得た(シアンイオンベース収率 81.3%)。
【0087】
【化14】
【0088】
(実施例15)
密閉型耐圧容器に、3−ペンタノン47.4g(0.55モル)、水120gを入れ、氷浴で冷却しながら、15質量%のアンモニア水を34.1g(アンモニウムイオン 0.30モル)入れた。そして、密閉型耐圧容器のふたを閉め、氷浴中で撹拌しながら、25質量%シアン化ナトリウム水溶液49.0g(シアンイオン 0.25モル)を注入口から、フィードポンプでゆっくりと滴下した。滴下終了後、浴温を30℃にし、8時間撹拌しながら反応させた。このとき反応液は二相に分離しており、水相のpHは13.2であった。反応終了後、反応液中に多くの白色析出物が見られた。
【0089】
得られた反応液を氷浴で冷却しながら一晩撹拌した。析出物をろ別し、真空乾燥を行い、下記式(11)で表される2,2,5,5−テトラエチルイミダゾリジノンを純度99.3%で40.1g得た(シアンベース収率 80.2%)。
【0090】
【化15】
【0091】
以上のように、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、比較例1および2に代表される従来法よりも高収率であり、しかも、残留シアン化物が少なくてより安全性が高い。また、従来法は有機溶媒を使用したいくつかの工程から成り立っているのに対し、本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、原料ケトン以外の有機物を使用せず、簡易な操作によりイミダゾリジノン誘導体を製造でき、安全かつ効率的な製造方法である。
【0092】
【発明の効果】
本発明のイミダゾリジノン誘導体の製造方法は、式(1)で表されるケトンと、シアン化水素またはその塩と、アンモニアまたはその塩とを水を使用して、塩基性条件下、反応させるものである。1−シアノシクロヘキシルアミンやα−アミノイソブチロニトリル等のα−アミノニトリル体や1−シアノシクロヘキサノール等の原料製造工程と精製工程、イミダゾリジノン誘導体の製造工程と精製工程等に分かれている従来の製造方法に対し、本発明は前述の一工程の操作によりイミダゾリジノン誘導体を製造できる効率的な方法である。しかも、本発明は、有機溶媒を使用しない上に、残留シアン化物が少なく、従来の製造方法よりも安全性が高い。
Claims (8)
- (i)シアン化水素またはその塩と、
(ii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜3モルの下記式(1)
(iii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニウムイオン換算で0.8〜5モルのアンモニアまたはその塩を
(iv)水とケトンにより水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系で、塩基性条件下に反応させ、下記式(2)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得るイミダゾリジノン誘導体の製造方法であって、
式(1)で表されるケトンが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロへキサノン、3−メチルシクロへキサノン、4−メチルシクロへキサノン、2,5−ジメチルシクロへキサノン、2,6−ジメチルシクロへキサノン、3,4−ジメチルシクロへキサノンおよび3,5−ジメチルシクロへキサノンからなる群から選ばれる一種以上である
イミダゾリジノン誘導体の製造方法。 - (i)シアン化水素またはその塩と、
(ii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜3モルの下記式(1)
(iii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニウムイオン換算で0.8〜5モルのアンモニアまたはその塩を
(iv)水とケトンにより水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系で、塩基性条件下に反応させ、下記式(2)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得るイミダゾリジノン誘導体の製造方法であって、
式(1)で表されるケトンが、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ペンタノフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン、p−メチルアセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、3’−メチルアセトフェノン、p−エチルアセトフェノン、2’−エチルアセトフェノンおよび3’−エチルアセトフェノンからなる群から選ばれる一種以上である
イミダゾリジノン誘導体の製造方法。 - (i)シアン化水素またはその塩と、
(ii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して1.6〜3モルの下記式(1)
(iii)シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニウムイオン換算で0.8〜5モルのアンモニアまたはその塩を
水の存在下に塩基性条件で反応させることにより、水相と油相の二相に分離した状態またはさらに不溶原料が存在する不均一系で式(1)で表されるケトンとアミノニトリル化物のイミダゾリジノン環形成反応を進行させ、下記式(2)
で表されるイミダゾリジノン誘導体を得るイミダゾリジノン誘導体の製造方法であって、
式(1)で表されるケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−メチル−2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノンおよび2,6−ジメチル−4−ヘプタノンからなる群から選ばれる一種以上である
イミダゾリジノン誘導体の製造方法。 - シアン化水素またはその塩のシアンイオン換算1モルに対して、アンモニアまたはその塩をアンモニウムイオン換算で0.8〜3モル使用する請求項1〜3のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- 塩基性条件がpH12以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- アンモニアまたはその塩がアンモニア、アンモニア水、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硫酸水素アンモニウムから選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- アンモニアまたはその塩がアンモニアまたはアンモニア水である請求項1〜6のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
- シアン化水素またはその塩がシアン化ナトリウムおよびシアン化カリウムからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載のイミダゾリジノン誘導体の製造方法。
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