JP3981588B2 - アダマンタンポリオール類の製造方法 - Google Patents

アダマンタンポリオール類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学材料、合成潤滑油、医農薬等の原料として有用なアダマンタンポリオール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アダマンタンポリオール類の製造方法については、これまでに種々の方法が提案されている。例えば、特開平8−38909号公報、特開平9−327626号公報、及び特開平10−286467号公報には、N−ヒドロキシフタルイミドを触媒として、アダマンタン類を酸素酸化する方法が開示されている。しかし、この方法は選択性が低く、モノオール、ジオール、トリオール、テトラオールの混合物となるため、その分離に煩雑な操作が必要となる。
【0003】
また、特開2001−335519号公報には、ルテニウム化合物の存在下、アダマンタン類と次亜塩素酸又はその塩とを有機溶媒/水の2相系で反応させる方法が開示されている。しかし、この反応ではテトラオールはほとんど得られず、さらにジオールとトリオールの選択性も低く、分離に煩雑な操作が必要となる。
【0004】
さらに、特開平2−196744号公報には、第三級アミン化合物の存在下、トリブロモアダマンタンを加水分解することによりトリオールを得る方法が開示されている。しかし、この方法では150〜280℃という高温条件を必要とする上、アダマンタンからトリブロモアダマンタンを得る前工程も必要である。また、Liebigs.Ann.Chem.717巻、60ページ(1968)には、テトラブロモアダマンタンからアダマンタンテトラオールを得る反応が記載されている。しかし、この反応は官能基と等量の硫酸銀を使用するという非常に不経済な方法である上、やはりアダマンタンからテトラブロモアダマンタンを得る前行程が必要である。
【0005】
一方、クロム酸を用いてアダマンタン類を酸化する方法も知られている。例えば、特開昭42−16621号公報には、アダマンタン類に対し、3〜5当量(モル)のクロム酸を用いることにより、ジオールを得る方法が開示されている。しかし、この方法ではトリオール、テトラオールは得られない。また、特開平2−104553号公報には、アダマンタン類に対し、4〜8当量のクロム酸を用いることによりまずジオールを得、これを原料として再び同様の操作を行うことにより、トリオール又はテトラオールを得る方法が開示されている。該公報においては、ジオール製造の際、8当量を超えるクロム酸を用いると望ましくない不純物が多くなることが記載されているが、さらにクロム酸の量を増やした場合に如何なる結果が得られるかについてはなんら記載されていない。
【0006】
このように、従来、クロム酸を用いる方法においては、アダマンタン類から直接トリオール類、又はテトラオールを得る方法は知られていない。
【0007】
以上のように、これまでの製造方法は必ずしもアダマンタン類からアダマンタンポリオール類を選択性良く、しかも効率良く得る方法であるとは言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、アダマンタントリオール類あるいはアダマンタンテトラオールを、工業的に効率よく製造する方法が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アダマンタン類からアダマンタンポリオール類、具体的にはアダマンタントリオール類もしくはアダマンタンテトラオールを選択性良く、かつ効率良く製造する方法について鋭意検討を行った。その結果、アダマンタン類に対し、特定の量のクロム酸を用いることにより、アダマンタン類からアダマンタントリオール類、もしくはアダマンタンテトラオールが効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化3】
Figure 0003981588
【0011】
(式中、Zは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基、又はハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基から選ばれる少なくともいずれか1つで置換された炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される少なくとも3つの橋頭位に水素原子を有するアダマンタン類を、有機酸水溶液中においてクロム酸で酸化するに際し、該アダマンタン類1モルに対し、9〜50モルのクロム酸を用いることを特徴とする、下記一般式(2)
【0012】
【化4】
Figure 0003981588
【0013】
(式中、Zは一般式(1)におけるZが水素原子以外である場合にはZと同義、Zが水素原子の場合には水素原子又は水酸基を示す。)
で表されるアダマンタンポリオール類の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で原料として用いられるアダマンタン類は、上記一般式(1)で表される。ここで、Zは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基、又はハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基から選ばれる少なくともいずれか1つで置換された炭素数1〜6のアルキル基である。当該Zが水素原子以外の場合には、該Zは本発明におけるクロム酸酸化によっては変化しないため、反応の前後で変化することがなく(Z=Zである)、よって各種のZを有するアダマンタントリオール(但し、Zが水酸基である場合には、アダマンタンテトラオールとなる)が得られる。
【0015】
一方、Zが水素原子である場合には、後述するように、使用するクロム酸の量等により未反応のまま水素原子として残存する場合と、水酸基へと変換される場合がある。従って、反応生成物として、アダマンタントリオールが得られる場合と、アダマンタンテトラオールが得られる場合、並びに両者の混合物が得られる場合がある。なお本発明では、上記一般式(1)で示される化合物をZの種類に係わらず原料アダマンタン類と、上記一般式(2)で示される生成物のうちZが水酸基であるもの以外をアダマンタントリオール類と総称する。また、一般式(2)で示される化合物で、Zが水酸基である化合物はアダマンタンテトラオールである。さらに、これらアダマンタントリオール類とアダマンタンテトラオールの両者を併せてアダマンタンポリオール類と称する。
【0016】
上記一般式(1)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
【0017】
また、上記炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数2〜6のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基等が例示される。
【0018】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
上記炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基としては、上記した炭素数1〜6のアルキル基により置換されたアミノ基が挙げられ、この場合には、置換しているアルキル基は各々同一でも異なっていても良い。具体的には、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−エチル−N−プロピルアミノ基が挙げられる。また、炭素数2〜6の環状アミノ基としては、窒素原子を1つだけ有す、飽和の含窒素複素環基が好ましく、具体的にはピロリジノ基、ピペリジノ基等が例示される。なおこの場合、該環状アミノ基は、その有する窒素原子によりアダマンタン骨格と結合する。
【0020】
ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基から選ばれる少なくともいずれか1つの基で置換された炭素数1〜6のアルキル基としては、上記した炭素数1〜6のアルキル基の水素原子の1つ又は複数が、上記した各置換基で置換されたものが挙げられ、具体的には、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、ブロモエチル基、クロロエチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、3−オキソペンチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、シクロプロピルオキシメチル基、N,N−ジメチルメチル基、N,N−ジエチルメチル基、ピペリジノメチル基等が例示される。
【0021】
本発明においては、上記一般式(1)で表される少なくとも3つの橋頭位に水素原子を有する原料アダマンタン類1モルに対し、9〜50モルのクロム酸(HCrO)を使用する。なお本発明の製造方法は、該原料アダマンタン類の橋頭位の水素原子を水酸基に変換するものであり、アダマンタンの4つの橋頭位のうち、2つの橋頭位にしか水素原子を有さない(2つの橋頭位が置換されている)ものを用いても本発明の目的物は得られない。
【0022】
使用するクロム酸の量が原料アダマンタン類1モルに対して9モルに満たない場合には、主生成物はアダマンタンジオール類となってしまい、また、50モルを超えると高分子成分と思われる不純物の生成量が増え、十分な収量が得られなくなる。好ましくは10〜30モルのクロム酸を用いる。
【0023】
なお、上記一般式(1)において、Zが水素原子の場合には、9〜50モルのクロム酸を使用することにより、アダマンタントリオール類及び/又はアダマンタンテトラオールが生成し、その生成比率はクロム酸の使用量、反応時間等の条件に影響されるが、このうちクロム酸の使用量による影響が最も大きい。即ち、クロム酸を9〜15モル程度、好ましくは10〜14モル程度とした場合には主としてアダマンタントリオールが得られ、またクロム酸を15〜50モル程度、好ましくは16〜30モル程度とした場合には主としてアダマンタンテトラオールが得られる。
【0024】
一方、Zが水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基、又はハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基から選ばれる少なくともいずれか1つの基で置換された炭素数1〜6のアルキル基の場合には、原料アダマンタン類1モルに対して9〜50モル、好ましくは10〜20モルのクロム酸を使用することにより、相当するアダマンタントリオール類を選択性良く、かつ効率良く得ることができる。またZが水酸基である場合には、同様にしてアダマンタンテトラオールを得ることができる。
【0025】
本発明において、クロム酸を発生させる方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。即ち、三酸化クロムを水に溶解する方法、二クロム酸ナトリウムや二クロム酸カリウム等のクロム酸のアルカリ金属塩を硫酸等の酸に溶解する方法等が挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、溶媒として有機酸水溶液が使用される。当該有機酸としては酢酸、プロピオン酸等が例示されるが、コストや収率の点で酢酸が最も好ましい。該有機酸の使用量は特に制限されないが、原料を溶解し、十分な反応速度を確保するという観点から、酢酸の量が原料アダマンタン類1モルに対し5〜50モルの範囲となることが好ましい。また水の量は特に制限されないが、該有機酸の濃度が30〜99重量%、好ましくは40〜95重量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0027】
各原料の添加順は特に制限されるものではないが、好ましくは、原料となるアダマンタン類を有機酸に溶解し、そこへクロム酸の水溶液を添加する方法が好適である。
【0028】
本発明の反応温度は、10〜250℃の範囲で行うことができる。十分な反応速度を確保し、かつ高分子成分の生成を避けるという観点から、60〜120℃の範囲が好ましい。
【0029】
本発明の反応時間は、10分〜48時間の範囲で行うことができる。十分な転化率を確保し、かつ高分子成分の生成を避けるという観点から、30分〜6時間の範囲が好ましい。
【0030】
本発明により生成するアダマンタンポリオール類の取り出しは、必要に応じて反応に用いた溶媒成分を減圧留去等して濃縮した反応液を、水酸化ナトリウム等の塩基により中和した後、適当な溶媒で抽出することにより行うことができる。特に、前記Zが水素原子以外の場合には、抽出溶媒を減圧留去するだけで目的とするアダマンタントリオール類(Zが水酸基以外の場合)又はアダマンタンテトラオール(Zが水酸基の場合)を高純度で得ることができる。このときの抽出溶媒としてはアダマンタントリオール類の場合には酢酸エチルが、アダマンタンテトラオールの場合にはテトラヒドロフランが好適である。
【0031】
一方、前記Zが水素原子である場合でも、前記した範囲で適切な量のクロム酸を用いることにより、アダマンタントリオール又はアダマンタンテトラオールを選択的に得ることが可能であり、そのような場合には上記のように、抽出溶媒を減圧留去するだけで高純度の目的物を得ることができる。また、生成物がアダマンタントリオールとアダマンタンテトラオールの混合物である場合には、まず、酢酸エチル等のアダマンタントリオールを溶解するがアダマンタンテトラオールは溶解しない溶媒で抽出した後、抽出残分からテトラヒドロフラン等のアダマンタンテトラオールを溶解する溶媒で抽出すればよい。
【0032】
このようにして抽出溶媒を減圧留去して得られたアダマンタンポリオール類は、必要に応じて再結晶やカラムクロマトグラフィーにより精製しても良い。
【0033】
さらに、反応液から目的生成物を抽出する際、40℃以上、好ましくは70℃以上に加熱した酢酸エチルを用い、該抽出液を室温以下まで放冷することにより、該抽出液からアダマンタントリオール類の結晶が析出してくる。これにより再結晶等の精製操作を行わなくても高純度のアダマンタントリオール類を簡便に得ることが可能である。また、アダマンタンテトラオールを抽出する場合も、40℃以上、好ましくは70℃以上のテトラヒドロフランを用いることが好ましい。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を説明するために、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1:1,3,5−アダマンタントリオールの合成(クロム酸10倍モル使用)
200mlの三つ口フラスコにアダマンタン13.6g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、そこへ三酸化クロム100g(1.0mol)を水54mlに溶解したクロム酸水溶液を、反応液温度を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で1時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,3−アダマンタンジオールと1,3,5−アダマンタントリオールが24:76の割合で含まれていた。抽出液を一晩放置し、析出した結晶をろ取して、1,3,5−アダマンタントリオール8.5g(純度98.5%)を得た。アダマンタンからの収率は50.1%であった。
【0036】
実施例2:1,3,5,7−アダマンタンテトラオールの合成(クロム酸20倍モル使用)
200ml三つ口フラスコにアダマンタン13.6g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、そこへ三酸化クロム200g(2.0mol)を水108mlに溶解したクロム酸水溶液を、反応液温度を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。さらに続けて60℃以上の熱テトラヒドロフラン1Lで5回抽出した。酢酸エチル抽出液とテトラヒドロフラン抽出液をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析したところ、前者は1,3,5−アダマンタントリオールが100%、後者は1,3,5−アダマンタントリオールと1,3,5,7−アダマンタンテトラオールが2:98の割合で含まれていた。酢酸エチル抽出液を減圧濃縮して1,3,5−アダマンタントリオール2.1g(純度100%)を、テトラヒドロフラン抽出液を減圧濃縮して1,3,5,7−アダマンタンテトラオール8.5g(純度98%)を得た。1,3,5−アダマンタントリオールのアダマンタンからの収率は11.4%、1,3,5,7−アダマンタンテトラオールの収率は41.7%であった。
【0037】
実施例3:1,3,5,7−アダマンタンテトラオールの合成(クロム酸15倍モル使用)
200ml三つ口フラスコに1−アダマンタノール15.2g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、そこへ三酸化クロム150g(1.5mol)を水81mlに溶解したクロム酸水溶液を、反応液温度を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。さらに続けて60℃以上のテトラヒドロフラン1Lで5回抽出した。酢酸エチル抽出液とテトラヒドロフラン抽出液をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析したところ、前者は1,3,5−アダマンタントリオールが100%、後者は1,3,5−アダマンタントリオールと1,3,5,7−アダマンタンテトラオールが2:98の割合で含まれていた。酢酸エチル抽出液を減圧濃縮して1,3,5−アダマンタントリオール1.7g(純度100%)を、テトラヒドロフラン抽出液を減圧濃縮して1,3,5,7−アダマンタンテトラオール9.4g(純度98%)を得た。1,3,5,7−アダマンタンテトラオールの1−アダマンタノールからの収率は47.0%であった。
【0038】
実施例4:7−メチルアダマンタン−1,3,5−トリオールの合成(クロム酸20倍モル使用)
200ml三つ口フラスコに1−メチルアダマンタン15.0g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、三酸化クロム200g(2.0mol)を水108mlに溶解したクロム酸水溶液を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−メチルアダマンタン−1,3−ジオールと7−メチルアダマンタン−1,3,5−トリオールが2:98の割合で含まれていた。抽出液を減圧濃縮して、7−メチルアダマンタン−1,3,5−トリオール14.0g(純度98%)を得た。1−メチルアダマンタンからの収率は69.4%であった。
【0039】
実施例5:7−メトキシメチルアダマンタン−1,3,5−トリオールの合成(クロム酸20モル使用)
200ml三つ口フラスコに1−メトキシメチルアダマンタン18.0g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、三酸化クロム200g(2.0mol)を水108mlに溶解したクロム酸水溶液を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−メトキシメチルアダマンタン−1,3−ジオールと7−メトキシメチルアダマンタン−1,3,5−トリオールが2:98の割合で含まれていた。抽出液を減圧濃縮して、7−メトキシメチルアダマンタン−1,3,5−トリオール14.5g(純度98%)を得た。1−メトキシメチルアダマンタンからの収率は62.3%であった。
【0040】
実施例6:7−ブロモアダマンタン−1,3,5−トリオールの合成(クロム酸20モル使用)
200ml三つ口フラスコに1−ブロモアダマンタン18.0g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、三酸化クロム200g(2.0mol)を水108mlに溶解したクロム酸水溶液を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−ブロモアダマンタン−1,3−ジオールと7−ブロモアダマンタン−1,3,5−トリオールが2:98の割合で含まれていた。抽出液を減圧濃縮して、7−ブロモ−1,3,5−トリオール13.0g(純度98%)を得た。1−ブロモアダマンタンからの収率は57.9%であった。
【0041】
実施例7:7−カルボキシアダマンタン−1,3,5−トリオールの合成(クロム酸20モル使用)
200ml三つ口フラスコに1−カルボキシアダマンタン18.0g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、三酸化クロム200g(2.0mol)を水108mlに溶解したクロム酸水溶液を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の熱酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−カルボキシアダマンタン−1,3−ジオールと7−カルボキシアダマンタン−1,3,5−トリオールが2:98の割合で含まれていた。抽出液を減圧濃縮して、7−カルボキシアダマンタン−1,3,5−トリオール14.3g(純度98%)を得た。1−カルボキシアダマンタンからの収率は61.5%であった。
【0042】
実施例8:
酢酸エチル抽出液を1晩放置せずに、減圧濃縮を行った以外は実施例1と同様の方法でアダマンタンから1,3,5−アダマンタントリオールを合成した。減圧濃縮により得られた白色固体には、アダマンタンジオールとアダマンタントリオールが重量比24:76で存在していた。この混合物をエタノールで再結晶し、純度98.5%の1,3,5−アダマンタントリオールを8.2g得た。
【0043】
比較例1:1,3−アダマンタンジオールの合成(クロム酸5倍モル)
200ml三つ口フラスコにアダマンタン13.6g(0.10mol)と酢酸100g(1.67mol)を入れ、80℃で攪拌しながら、三酸化クロム50g(0.50mol)を水27mlに溶解したクロム酸水溶液を110℃以下に保ちつつ滴下した。その後、100℃で3時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、70℃以上の酢酸エチル1Lで5回抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,3−アダマンタンジオールと1,3,5−アダマンタントリオールが83:17の割合で含まれていた。抽出液を一晩放置し、析出した結晶をろ取して1,3,5−アダマンタントリオール2.2g(純度97%)を得、ろ液を減圧濃縮して、1,3−アダマンタンジオール10.2g(純度97%)を得た。1,3,5−アダマンタントリオールのアダマンタンからの収率は11.6%であった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、光学材料、合成潤滑油、医農薬等の原料として有用なアダマンタンポリオール類を選択性良く、かつ効率良く得ることができる。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0003981588
    (式中、Zは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基、又はハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素数2〜6の環状アミノ基から選ばれる少なくともいずれか1つで置換された炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
    で表される少なくとも3つの橋頭位に水素原子を有するアダマンタン類を、有機酸水溶液中においてクロム酸で酸化するに際し、該アダマンタン類1モルに対し、9〜50モルのクロム酸を用いることを特徴とする、下記一般式(2)
    Figure 0003981588
    (式中、Zは一般式(1)におけるZが水素原子以外の場合にはZと同義であり、Zが水素原子の場合には水素原子又は水酸基を示す。)
    で表されるアダマンタンポリオール類の製造方法。
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