JP4836087B2 - 媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤及び選択固着方法 - Google Patents
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Description
現在、ハロゲン化芳香族化合物処理技術は、ハロゲン化芳香族化合物を微量に含有する媒体のみならず、ハロゲン化芳香族化合物自体を処理する技術も確立されており、ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族化合物を高濃度(1%以上)に含有する高濃度含有媒体を直接処理するプロセス(以下「高濃度処理」と記載することとする)が稼働し始めている(特許文献3)。
1.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤。
2.有機二塩基酸がテレフタル酸である、上記1に記載の選択固着剤。
3.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーが、固体担体に固定化されている、上記1または2に記載の選択固着剤。
4.ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、上記1〜3のいずれかに記載の選択固着剤。
5.有機媒体が、絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記1〜4のいずれかに記載の選択固着剤。
6.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤と、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを混合し、該有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーに固着させ、次いで該ハロゲン化芳香族化合物を固着した該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーを該有機媒体より分離することを特徴とする、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を捕集する方法。
7.有機二塩基酸がテレフタル酸である、上記6に記載の方法。
8.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーが、固体担体に固定化されていることを特徴とする選択固着剤を使用する、上記6または7に記載の方法。
9.ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、上記6〜8のいずれかに記載の方法。
10。有機媒体が、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記6〜9のいずれかに記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
γ−シクロデキストリンを有機溶媒(例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等。好ましくは乾燥ピリジン)に溶解させる。一方二塩化テレフタロイルを有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン等。好ましくは乾燥テトラヒドロフラン)に溶解させ、これを先に用意したγ−シクロデキストリン溶液に滴下する。この際、縮合反応による熱が発生するので、γ−シクロデキストリン溶液を氷浴などで冷却しながら滴下することが望ましい。そのまま反応液を撹拌すると結晶が析出するのでこれを適宜洗浄、乾燥すると、γ−シクロデキストリンとテレフタル酸との縮合ポリマーを得ることができる。γ−シクロデキストリンの他、α−及びβ−シクロデキストリンでも同様の縮合ポリマーを形成することができる。本明細書では、このように得たポリマーを「テレフタル酸γ−CD」「γ−CDテレフタル酸」等と略称することがあるが、いずれも縮合ポリマーのことである。
本発明に使用するハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体は、上述のハロゲン化芳香族化合物を少なくとも1種含有しており、特にハロゲン化芳香族化合物の含有量が0.5-1%程度の場合に「極微量」「微量」あるいは「低濃度で」含有していると称される。ハロゲン化芳香族化合物を低濃度で含有する有機媒体は、処理すべきハロゲン化芳香族化合物は極少量であるのに、有機媒体自体の体積が非常に大きくなり、したがって貯蔵に困難をきたすとともに化学的に処理するには多大な時間を要する。よって、極微量に溶解しているハロゲン化芳香族化合物を有機媒体から濃縮分離して、処理すべきハロゲン化芳香族化合物と、再利用可能な有機媒体とに分けることができれば、ハロゲン化芳香族化合物の処理効率が上がる一方、かかる有機媒体の貯蔵の問題も解決することができる。
滴下ロート、風船付き三方コック及びセプタムの付いた300mlの3つ口フラスコに、γ-CD(6.0 g, 3.1 mmol、純正化学株式会社)と乾燥ピリジン(120 ml、和光純薬工業)をいれた。フラスコを氷浴につけた後、乾燥テトラヒドロフラン(40ml)に溶解した二塩化テレフタロイル(7.5g, 25 mmol、東京化成工業)を30分間かけて滴下した。そのまま氷浴で2時間撹拌した後、氷浴を外し、更に17時間室温で攪拌した。析出した白色結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を水、アセトンの順で洗浄し、80℃で真空乾燥した。12.7gのテレフタル酸γ-CD高分子(以下、「TPGCD」と称する。)が得られた。
[実施例1]TPGCDによる1,2,4−トリクロロベンゼンの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(204mg)を注射器に充填した。1,2,4−トリクロロベンゼン(「1,2,4−TCB」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、1,2,4−TCB込みで435mg)を前記注射器に流し込み、シリンジを押すことにより分離したところ、111mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる1,2,4−TCB濃度は、GC−2010(島津製作所)装置を使用して内部標準法(内部標準物質:2−クロロトルエン)により測定し、1,2,4−TCBは検出されなかった。
[実施例2]TPGCDによる4−モノクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(203mg)を注射器に充填した。4−モノクロロビフェニル(「4−MCBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、4−MCBP込みで401mg)を前記注射器に流し込み、シリンジを押すことにより分離したところ、126mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる4−MCBP濃度は、QCMS−QP5050(島津製作所)装置を使用し、M/Z=188を用いてSIM法(selective ion monitoring)による内部標準法(内部標準物質:2−クロロトルエン)により測定し、4−MCBPは検出されなかった。
[実施例3]TPGCDによる2−モノクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(203mg)を注射器に充填した。2−モノクロロビフェニル(「2−MCBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、2−MCBP込みで408mg)を前記注射器に流し込み、シリンジを押すことにより分離したところ、115mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる2−MCBP濃度は、実施例8と同様に測定し、2−MCBPは検出されなかった。
[実施例4]TPGCDによる4、4’−ジクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(204mg)を注射器に充填した。4,4’−ジクロロビフェニル(「4,4’−DCBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、4,4’−DCBP込みで399mg)を前記注射器に流し込み、シリンジを押すことにより分離したところ、118mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる4,4’−DCBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=222の値を用いた)、4,4’−DCBPは検出されなかった。
[実施例5]TPGCDによる3,4,4’−トリクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(218mg)を注射器に充填した。3,4,4’−トリクロロビフェニル(「4,4,4’−TRCBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、3,4,4’−TRCBP込みで428mg)を前記注射器に流し込み、注射器を80℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、89mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる3,4,4’−TRCBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=256の値を用いた)、3,4,4’−TRCBPは検出されなかった。
[実施例6]TPGCDによる3,4’,5−トリクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(217mg)をマントルヒーターを装着した注射器に充填した。3,4’,5−トリクロロビフェニル(「4,4’,5−TRCBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、3,4’,5−TRCBP込みで406mg)を前記注射器に流し込み、注射器を80℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、74mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる3,4’,5−TRCBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=256の値を用いた)、3,4’,5−TRCBPは検出されなかった。
[実施例7]TPGCDによる3,3’,5,5’−テトラクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(200mg)をマントルヒーターを装着した注射器に充填した。3,3’,5,5’−テトラクロロビフェニル(「3,3’,5,5−TECBP」、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、3,3’,5,5’−TECBP込みで422mg)を前記注射器に流し込み、注射器を80℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、140mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる3,3’,5,5’−TECBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=294の値を用いた)、3,3’,5,5’−TECBPは検出されなかった。
[実施例8]TPGCDによる2,3’,4,5,5’−テトラクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(201mg)をマントルヒーターを装着した注射器に充填した。2,3,4,5,5’−ペンタクロロビフェニル(以下、「2,3’,4,5,5’−PECBP」と称す、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、2,3,4,5,5’−PECBP込みで411mg)を前記注射器に流し込み、注射器を100℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、123mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる2,3,4,5,5’−PECBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=326の値を用いた)、2,3,4,5,5’−PECBPは検出されなかった。
[実施例9]TPGCDによる2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(204mg)をマントルヒーターを装着した注射器に充填した。2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニル(以下、「2,2’,4,4’,5,5’−HECBP」と称す、東京化成工業)を100ppm含有する高圧絶縁油(谷口石油精製、2,2’,4,4’,5,5’−HECBP込みで406mg)を前記注射器に流し込み、注射器を110℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、127mgの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれる2,2’,4,4’,5,5’−HECBP濃度は、実施例8と同様に測定し(但しM/Z=358の値を用いた)、2,2’,4,4’,5,5’−HECBPは検出されなかった。
[実施例10]TPGCDによるポリクロロビフェニルの選択固着
上記の合成例1にて合成したTPGCD(4.6g)をマントルヒーターを装着した注射器に充填した。ポリクロロビフェニル(以下、「PCB」と称す)を25ppm含有する高圧絶縁油(実際に存在するPCB汚染油)9.2gを前記注射器に流し込み、注射器を120℃に維持してシリンジを押すことにより分離したところ、3.1gの絶縁油を得た。得られた絶縁油に含まれるPCBの濃度を、平成4年厚生省告示第192号別表第3の第1に規定される方法によりガスクロマトグラフィで測定したところ、PCBは検出されなかった。
Claims (10)
- ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤。
- 有機二塩基酸がテレフタル酸である、請求項1に記載の選択固着剤。
- ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーが、固体担体に固定化されている、請求項1または2に記載の選択固着剤。
- ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、請求項1〜3のいずれかに記載の選択固着剤。
- 有機媒体が、絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の選択固着剤。
- ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤と、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを混合し、該有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物に固着させ、次いで該ハロゲン化芳香族化合物を固着した該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物を該有機媒体より分離することを特徴とする、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を捕集する方法。
- 有機二塩基酸がテレフタル酸である、請求項6に記載の方法。
- ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーが、固体担体に固定化されていることを特徴とする選択固着剤を使用する、請求項6または7に記載の方法。
- ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
- 有機媒体が、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
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