JP5725502B2 - シリカ含有シクロデキストリンポリマーを利用して媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に吸着除去する方法 - Google Patents

シリカ含有シクロデキストリンポリマーを利用して媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に吸着除去する方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物等に代表される有機媒体中に含有されたハロゲン化芳香族化合物を捕集することのできる選択固着剤、及び、これを用いてハロゲン化芳香族化合物をほとんど含有しない有機媒体を得る方法に関する。より詳細には、シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させ、得られた縮合ポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類、またはフェノール類をエステル化させることにより得ることができる、新規な構造を有するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを用いて、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着する方法に関する。さらに本発明は、上記の新規な構造を有するシクロデキストリンポリマーならびにその製造方法に関する。本発明に係るポリマーは、球状多孔質形状を有するシクロデキストリンポリマーの空孔中にシリカが存在する特徴的な構造を有しており、これにより有機媒体中に含有された各種化合物を選択的かつ効率的に固着することが出来る。
ハロゲン化芳香族化合物は、人体、動植物に対して強い毒性を示す化合物であり、特に催奇形性などのおそれから、有害物質として廃棄物の処理及び清掃に関する法律により指定されているものが多数ある。これら化合物が土壌、地下水、焼却灰、洗浄水、機械油等に存在する場合は、何らかの処理を施してこれらの濃度を基準値以下に減少させなければならないことが厳密に定められている。
従来、ハロゲン化芳香族化合物が含有された絶縁油等の有機媒体は、原姿のまま化学処理されていた(特許文献1、特許文献2)。ところが、近年、日本国内において、ポリクロロビフェニル類(以下、「PCB」と称する)の不含見解書又はPCB不含証明書のない再生油はもとより、PCB不含見解書又はPCB不含証明書のある絶縁油(新油、再生油)からも、極微量(0.5―100ppm程度、特に0.5〜10ppm程度)のハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体が次々と確認されている。このような大量の有機媒体を従来方法にて化学的に処理するには多大な時間と有用なエネルギーを要することから効率的そして経済的にも問題が残る。
一方、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体を焼却する方法もとりうるが、ダイオキシン対策等の困難な課題が多く、環境に対する安全性に疑問が残る。
現在、ハロゲン化芳香族化合物処理技術は、ハロゲン化芳香族化合物を微量に含有する媒体のみならず、ハロゲン化芳香族化合物自体を処理する技術も確立されており、ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族化合物を高濃度(1%以上)に含有する高濃度含有媒体を直接処理するプロセス(以下「高濃度処理」と記載することとする)が稼働し始めている(特許文献3)。
そこで、極微量に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着することにより該ハロゲン化芳香族化合物を濃縮すれば、上述の高濃度処理によりハロゲン化芳香族化合物のみを効率的に処理することが可能となり、ハロゲン化芳香族化合物を除去した媒体は該不含有として用途の道が開けるとともに処理前の媒体の保管場所を節約することができる。
特許文献4には、修飾シクロデキストリンを用いて有機ハロゲン化合物包接錯体を形成する有機ハロゲン化合物の捕集方法が開示されている。しかし特許文献4に記載される方法は、親水性の該修飾シクロデキストリンを用いて水溶液に含まれる有機ハロゲン化合物を捕集する方法に関し、親油性でない該修飾シクロデキストリンを用いる当該方法を有機媒体系にそのまま適用することは困難である。
このような観点から、本発明者らは、特に有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用することによってハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着することができる化合物を鋭意探索し、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有する選択固着剤を提案した(特許文献5)。シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有するポリマーは、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着することができ、これとハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを接触させることによりハロゲン化芳香族化合物をほとんど含有しない有機媒体を得ることが出来ることが実施例にて明らかにされている。しかしながら本先行技術では、ハロゲン化芳香族化合物をほとんど含有しない有機媒体の回収率がさほど高くないため(実施例では21〜34%)、有機媒体の回収率をより高めることのできる選択固着剤の開発が望まれる。
一方、特許文献6には、種々のシクロデキストリンポリマーの合成方法が開示されているが、これらを有機媒体と接触させ、含有されたハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着させることについては開示していない。
上記の特許文献4、特許文献5および特許文献6にも開示されているとおり、種々の化合物を包接することのできる化合物として、シクロデキストリンがよく知られている。シクロデキストリンは、6個、7個、または8個のグルコースが環状に結合した環状オリゴ糖であり、それぞれα−、β−またはγ−シクロデキストリンと称される。シクロデキストリンは、その環状空孔内に種々の化合物を包接する性質を有している。この性質により、シクロデキストリンに疎水性の物質を包接させて水に溶解させたり、あるいは各種吸着・分離の操作等に用いたりすることができる。しかしながらシクロデキストリンは水溶性が高いため、有機溶媒中での用途は限られている。そこでシクロデキストリンを水不溶性にする試みが種々行われている。
シクロデキストリンを水不溶性にする試みとして、高分子化する方法が挙げられる。これまでにクロロメチルポリスチレンにシクロデキストリン誘導体を反応させたものや、水不溶性高分子化合物にシクロデキストリンを固定化させたものが古くから知られている。またシクロデキストリンをエピクロロヒドリンで架橋させて高分子化合物としたものもよく知られている。
特許文献7は、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させてハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するポリマーの製造について開示する。上にも述べたとおり、特許文献7で製造されるポリマーは、末端が二塩化フタル酸由来のカルボキシル基である。
特許文献6は、シクロデキストリンとテレフタル酸とを反応させ、高分子化することを開示している。特許文献6では、シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルとを縮合させて、末端が二塩化テレフタロイル由来のカルボキシル基であるシクロデキストリンポリマーを製造する方法、シクロデキストリンとテレフタル酸ジメチルとを縮合させて、末端がテレフタル酸ジメチル由来のメチルエステルであるシクロデキストリンポリマーを製造する方法、ならびにシクロデキストリンと各種有機二塩基酸とを縮合させて架橋化シクロデキストリンポリマーを製造する方法についてそれぞれ開示している。特許文献6の実施例には、このように製造されたシクロデキストリンポリマーはフィルム状に成形することができ、特定の酵素によって分解することが記載されている。
さらに本発明者らは、特許文献8にて、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させた、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する多孔質ポリマーを合成し、このポリマーについて各種ハロゲン化芳香族化合物の選択吸着能を検討した。
特許第2611900号 特許第3247505号 特開2003-112034号 特開平5-31212号 特開2009−95792号 特許第3010602号 特開2009−95792号 国際出願PCT/JP2011/053163
本発明は、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着し、有機媒体からハロゲン化芳香族化合物を除去するあるいは濃縮することにより、ハロゲン化芳香族化合物のみの分解処理を容易にすることを可能とする選択固着剤を提供することを目的とする。また本発明は、かかる選択固着剤を使用して、有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に捕集し、以ってハロゲン化芳香族化合物を含有しない有機媒体を高い回収率で得る方法を提供する。
本発明者らは、水溶性であるシクロデキストリンから生成した、水不溶性の新規な多孔質のシクロデキストリンポリマーを選択固着剤として使用して、有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に捕集し、ハロゲン化芳香族化合物を含有しない有機媒体を高い回収率で得ることができることを見いだした。特に、シクロデキストリンポリマーの製造工程中にシリカを導入することによって製造したシリカ含有シクロデキストリンを用いると、より効率的にハロゲン化芳香族化合物を選択的に捕集することができることを発見した。
本発明の態様は、以下の通りである:
1.有機溶媒中に分散したシクロデキストリンにシリカを添加し、次いで
有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物含有有機溶媒を滴下して反応液を撹拌し、次いで
アルコール類、アリールアルコール類、またはフェノール類を添加してエステル化反応させる
ことを含む、シリカ含有シクロデキストリンポリマーの製造方法。
2.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記1に記載の方法。
3.アルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類から選択され、アリールアルコール類がベンジルアルコールまたは置換ベンジルアルコールから選択され、フェノール類がフェノールまたは置換フェノール類から選択される、上記1または2に記載の方法。
4.シクロデキストリンを分散させる有機溶媒が、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、および1−メチルイミダゾールから選択され、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物を溶解させる有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、キシレン、ジメチルホルムアミドおよびトルエンから選択される、上記1〜3のいずれかに記載の方法。
5.シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6.上記1〜5のいずれかに記載の方法で製造された、シリカ含有シクロデキストリンポリマー。
7.シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤。
8.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記7に記載の選択固着剤。
9.アルコール類が炭素数1〜10のアルキル基から選択され、アリールアルコール類がベンジルアルコール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール類から選択され、フェノール類がフェノール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたフェノールから選択される、上記7または8に記載の選択固着剤。
10.シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、上記7〜9のいずれかに記載の選択固着剤。
11.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーが、固体担体に固定化されている、上記7〜10のいずれかに記載の選択固着剤。
12.ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、上記7〜11のいずれかに記載の選択固着剤。
13.有機媒体が、有機液体、絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記7〜12のいずれかに記載の選択固着剤。
14.シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合したポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、ハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤と、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを接触させ、該有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーに固着させて、ハロゲン化芳香族化合物を含有しない有機媒体を得ることを特徴とする、方法。
15.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記14に記載の方法。
16.アルコール類が炭素数1〜10のアルキル基から選択され、アリールアルコール類がベンジルアルコール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール類から選択され、フェノール類がフェノール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたフェノールから選択される、上記14または15に記載の方法。
17.シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、上記14〜16のいずれかに記載の方法。
18.ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーが、固体担体に固定化されていることを特徴とする選択固着剤を使用する、上記14〜17のいずれかに記載の方法。
19.ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、上記14〜18のいずれかに記載の方法。
20.有機媒体が、有機液体、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記14〜19のいずれかに記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーの製造方法を説明する。
本発明は、有機溶媒中に分散したシクロデキストリンにシリカを添加し、次いで有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物含有有機溶媒を滴下して反応液を撹拌し、次いでアルコール類、アリールアルコール類、またはフェノール類を添加してエステル化反応させることを含む、シリカ含有シクロデキストリンポリマーの製造方法にかかる。ここでシクロデキストリンとは、6個、7個または8個のグルコースが環状に結合した環状オリゴ糖のことであり、それぞれα−、β−またはγ−シクロデキストリンと称される。
有機二塩基酸類とは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪酸を含み、本発明においては、シクロデキストリン分子中の−CHOH基と反応して逐次縮合し、ポリマーを形成しうる化合物のことである。このような有機二塩基酸類として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸が挙げられる。有機二塩基酸ハロゲン化物とは、上記の有機二塩基酸類の酸ハロゲン化物を指す。本発明では特に有機二塩基酸であるテレフタル酸、又は有機二塩基酸ハロゲン化物であるテレフタル酸ジクロライド(二塩化テレフタロイル)を用いることが好適である。
アルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類をポリマー末端に反応させる、とは、縮合ポリマーの末端に残る有機二塩基酸由来のカルボキシル基を、特定の置換基でエンドキャップすることを意味する。カルボキシル基をエンドキャップするために、アルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させ、エステル化することができる。本発明において末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させる、とは、例えば炭素数1〜10のアルコールから選択されるアルコール類、ベンジルアルコールまたは置換ベンジルアルコールから選択されるアリールアルコール類、またはフェノールまたは置換フェノール類から選択されるフェノール類をカルボキシル末端基に反応させて、アルキルエステル、アリールエステルまたはフェニルエステルにすることを意味する。例えば縮合ポリマーをメタノールと反応させれば末端基はメチルエステル(−COOMe)となり、エタノールと反応させればエチルエステル(−COOEt)となり、ベンジルアルコールと反応させればベンジルエステル(−COOBz)となる。
本発明においてシリカとは、一般に二酸化ケイ素(SiO)のことであり、その構造により種々のシリカが存在する。本発明に於いて用いるシリカは、いかなる構造のシリカであってもよいが、特に多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択されることが望ましい。
ここで、シリカの存在下で、複数のシクロデキストリンと有機二塩基酸類とが逐次縮合し、この末端をアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類で処理したものであれば、例えばシクロデキストリンと有機二塩基酸類とが合計で数個〜10個程度縮合した、いわゆる一般的には「オリゴマー」と呼ばれるような化合物であっても、本明細書では全て「ポリマー」と総称するものとする。本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、分子量の異なる重合体が混合した組成物であってもよい。
本発明で用いるシリカ含有シクロデキストリンポリマーの化学構造式は、例えば以下の式で表されると考えられる:
この式において、シクロデキストリンの部分は、円錐台形で表されており、有機二塩基酸としてテレフタル酸が用いられている。シクロデキストリン中の水酸基と有機二塩基酸とがエステル結合により交互に結合し、網目状の構造を形成している。そしてポリマーの末端は、メタノールと反応させた結果として、メチル基でキャップされている。反応系中に導入されたシリカは、シクロデキストリンと有機二塩素酸との縮合ポリマーの空孔中に包含されている。
例えば、γ−シクロデキストリンと、有機二塩基酸ハロゲン化物として二塩化テレフタロイルとを、シリカの存在下で縮合させ、次いで末端にメタノールを反応させた場合、以下のようなスキームで反応が進行し、ポリマーを得ることができる:
二塩化テレフタロイルの一方の酸クロライド基(−COCl)は、γ−シクロデキストリンの−CHOH基と反応し、エステル結合する。そしてもう一方の酸クロライド基は、別のγ−シクロデキストリンの−CHOH基と反応する。これを繰り返し、縮合ポリマーが得られる。シクロデキストリンには多数の水酸基が存在するが、縮合に関与する置換基は−CHOHの部分であり、このような基はα−シクロデキストリンの場合6個、β−シクロデキストリンの場合7個、そしてγ−シクロデキストリンの場合8個分子内に存在する。得られる縮合体は、シクロデキストリンと有機二塩基酸とが交互に縮合したもののほか、架橋構造や3次元網目構造となる場合もある。縮合反応の終了時にメタノールを反応させると、末端の酸クロライド基は−COOCHとなる。反応系中に導入されたシリカは、シクロデキストリンや二塩化フタロイルとは反応せず、シクロデキストリンと有機二塩素酸との縮合ポリマーにより形成された空孔中に包含された状態を保っている。このようにして得たシリカ含有シクロデキストリンポリマーの電子顕微鏡写真を図1に示す。本発明の製造方法にて製造されたシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、反応系にシリカを存在させたことにより、適度な大きさの空孔を有する多孔質ポリマーを形成している。
なお、比較のために、比較合成例1で製造した、γ−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルとを縮合させ、末端をアルコールでエンドキャップしたポリマー(シリカの非存在下で縮合反応させて得たポリマー)の電子顕微鏡写真を図2に示す。図2のポリマーは多孔質形状を有しているが、シリカを含有している本発明の多孔質シクロデキストリンポリマーと比べて、空孔の容積が大きくない。このようなポリマーの微細構造のわずかな違いにより、後に説明する有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤としての性能には大きな違いが見られる。
次に本発明の選択固着剤について説明する。本発明は、シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤に係る。
本発明において「ハロゲン化芳香族化合物」とは、芳香族化合物にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が1以上置換した化合物全般を指す。本発明では、例えばポリクロロビフェニル類(PCB)、ダイオキシン類、フロン類、ポリクロロナフタレン類およびポリクロロベンゼン類等を指す。PCBとは、ビフェニル骨格に塩素原子が数個置換した化合物の総称であり、塩素原子の置換位置、置換数により多数の異性体が存在する。またダイオキシン類とは、狭義の意味ではダイオキシン類対策特別措置法で指定される特定の化合物を指すが、本発明では、いわゆる内分泌撹乱物質(環境ホルモン)として疑われるハロゲン化化合物を全て含む。
本発明においてハロゲン化芳香族化合物を含有する「有機媒体」とは、広く一般的に有機溶剤のことであり、特にハロゲン化芳香族化合物を良好に溶解する有機溶剤、さらに詳細には、使用の態様から、ハロゲン化芳香族化合物を含有する可能性の高い絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物等を意味する。本発明において「有機媒体」とは、その大部分(例えば6割以上)が前記の有機媒体であればよく、場合によっては水を含むことがあるが、当該ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体全体としての性質は、水溶液でなく、あくまで有機溶液のそれである。
また、固体物質(例えば紙、木材、焼却灰、岩石、土壌等)に含有されたハロゲン化芳香族化合物を分解処理するために、これら固体物質に含有されたハロゲン化芳香族化合物を抽出して有機媒体に移行させたものも、本発明の選択固着剤の処理対象となる「ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体」となりうる。
本明細書において「ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する」とは、上述のハロゲン化芳香族化合物と吸引的に(すなわち、斥力ではないことを意味する)相互作用することを意味し、このような特性を有する化合物を「ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物」と総称する。このような化合物は、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する環状部分、置換基、シーケンスなどを有する。本明細書において「ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物」のことを、場合により、単に「吸引的相互作用化合物」「相互作用化合物」あるいは「相互作用する化合物」などと省略して記載することがある。
本発明において、ハロゲン化芳香族化合物を「選択的に固着」するとは、有機媒体に溶解、分散等により含有されたハロゲン化芳香族化合物のみ、あるいは当該ハロゲン化芳香族化合物を内部に含む有機媒体分子の会合体と相互作用して、これを取り込むあるいは定着させることをいう。本明細書において「固着」とは、化学的結合や接着、ならびに物理的吸着や吸引、あるいは単に引っかかった状態であるものなどを全て含み、必ずしも定常的に接着されていることを意味するものでない。たとえば、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用し、所定の時間ごく近距離に位置した状態となる場合や、吸引的な相互作用により所定の時間接触した状態であれば、広い意味で本明細書にいう「固着」した状態に該当するものとする。すなわち本発明の「選択固着剤」とは、選択固着剤に含有される活性成分が、有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物と吸引的に強く相互作用し、ハロゲン化芳香族化合物を活性成分分子構造内にしっかりと取り込むあるいは定着させるような薬剤のほか、かかる活性成分が、ハロゲン化芳香族化合物と少なくとも一時的に接触した状態にあるか、至近距離に位置した状態を維持することができる薬剤を意味する。
したがって本発明の選択固着剤は、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用することによりこれらを固着することができる組成物を含む。かかる組成物の活性成分として、シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得た、シリカ含有シクロデキストリンポリマーが挙げられる。ここに例示するハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物は、分子構造内にハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用することが可能なシクロデキストリンの環状部分を分子内に有する化合物であり、この相互作用化合物は、有機媒体に少なくとも分散させることができる。相互作用化合物分子内に存在する吸引的に相互作用する部分、すなわちシクロデキストリンの環状部分と、ハロゲン化芳香族化合物とが相互作用することにより、ハロゲン化芳香族化合物を当該相互作用部分またはその近傍に固着させる。
本発明の選択固着剤は、前記のハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物を活性成分として含むほか、必要に応じて担体、基材、希釈剤等の助剤を含むことができる。また活性成分であるハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物は、場合により担体または基材に固定化されていても良い。たとえばシリカゲル、ポリマービーズ、イオン交換樹脂、ガラス、フィルタ、メンブレン、各種網状構造物又は格子状構造物、発泡体、多孔質物質などの固体担体にハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物を固定化させることができる。ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物の担体又は基材への固定化は、たとえば共有結合あるいはイオン結合などに代表される比較的強い化学結合の他、疎水性相互作用、ファンデルワールス力などの比較的弱い力での物理的相互作用によっても行うことができる。
最後に、本発明の選択固着剤を用いて、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を選択的に除去する方法を説明する。本発明は、シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合したポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、ハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤と、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを接触させ、該有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーに固着させて、ハロゲン化芳香族化合物を含有しない有機媒体を得ることを特徴とする、方法に係る。
本発明に使用するハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体は、上述のハロゲン化芳香族化合物を少なくとも1種含有している。ハロゲン化芳香族化合物は、有機媒体中いかなる濃度で溶解していても良いが、特にハロゲン化芳香族化合物の含有量が0.5-1%程度の場合に「極微量」「微量」あるいは「低濃度で」含有していると称される。特にハロゲン化芳香族化合物を低濃度で含有する有機媒体は、処理すべきハロゲン化芳香族化合物は極少量であるのに、有機媒体自体の体積が非常に大きくなり、したがって貯蔵に困難をきたすとともに化学的に処理するには多大な時間を要する。よって、極微量に溶解しているハロゲン化芳香族化合物を有機媒体から濃縮分離して、処理すべきハロゲン化芳香族化合物と、再利用可能な有機媒体とに分けることができれば、ハロゲン化芳香族化合物の処理効率が上がる一方、かかる有機媒体の貯蔵の問題も解決することができる。
ハロゲン化芳香族化合物を特に含有しやすい有機媒体は、各種有機液体のほか、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料、インク及びこれらの混合物である。ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体を反応容器に入れる。これら有機媒体を貯蔵する貯蔵容器をそのまま反応容器として使用しても良い。ここに、含有されているハロゲン化芳香族化合物に対して10倍−50倍、好ましくは50-200倍(モル基準)のハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物を含む本発明の選択固着剤を投入し、よく攪拌する。本発明の選択固着剤中の活性成分であるハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含む組成物は、有機媒体中に分散し、有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物と接触する。ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマー中の吸引的相互作用部分との相互作用によりハロゲン化芳香族化合物が当該吸引的相互作用部分またはその近傍に固着される。処理する有機媒体の量やハロゲン化芳香族化合物の濃度、及び本発明の選択固着剤の量にもよるが、一般的には5時間〜数日間にわたり攪拌等による方法で接触させることができる。固着反応は常温で好適に行うことができ、必要に応じて加熱することもできる。
このようにハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーに有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物が固着された後、ハロゲン化芳香族化合物が固着された当該ポリマー(または当該ポリマーを含む組成物)のみを分離する。分離は既存の固液分離技術を用いて行えばよく、例えば、遠心分離機、加圧濾過機を使用する方法があげられる。分離する際のフィルタは、市販のフィルタ、ガラスフィルタ、メンブレン、脱脂綿、金属、樹脂等を用いて行うことができる。本発明の選択固着剤に含まれる包接化合物類を分離することができる孔径のものであれば、いかなるフィルタ、メンブレンを用いても良いが、一般的な相互作用化合物の粒径を考慮して、孔径約0.1−100μmのものを使用することが好ましい。
分離により得たハロゲン化芳香族化合物を固着したシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、必要に応じて固着したハロゲン化芳香族化合物のみを脱離し、吸引的相互作用化合物に固着されたハロゲン化芳香族化合物又は前記脱離操作により得たハロゲン化芳香族化合物を、必要に応じて希釈した後、例えば化学抽出分解法などの化学的処理方法により分解処理を行うことができる。
ハロゲン化芳香族化合物を固着したシリカ含有シクロデキストリンポリマーを分離した後に得られた有機媒体は、ハロゲン化芳香族化合物が実質的に完全に除去されている。したがって、ハロゲン化芳香族化合物が含まれているが故に従来は保管せざるをえなかった有機媒体を、再利用可能なものは再利用し、あるいは通常の方法、例えば焼却処分等により廃棄することができる。
本発明の選択固着剤として、活性成分である、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを、たとえばシリカゲル、ポリマービーズ、イオン交換樹脂、発泡体、フィルム、メンブレン、各種格子状構造物及び網状構造物、多孔質物質などの担体に固定化させたものを好適に使用することができる。たとえばシリカゲル、ポリマービーズ又はイオン交換樹脂等の固体担体に本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーを担持させたものをカラム内に積層し、ここにハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体を常圧下または加圧下にて流し、当該シリカ含有シクロデキストリンポリマーと相互作用させ、有機媒体中に含有されたハロゲン化芳香族化合物を効果的に除去することが可能となる。あるいはフィルタ、メンブレンなどの固体担体に本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーを担持させたものを用いて、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体を常圧または減圧濾過することにより、有機媒体中に含有されるハロゲン化芳香族化合物をメンブレン又はフィルタに固着させて、ハロゲン化芳香族化合物を除去することが可能となる。あるいは発泡体、網状構造物、格子状構造物、多孔質物質などの固体担体に本発明の吸引的相互作用化合物を担持させたものをハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体中に投入して、当該固体担体の網状部分、格子状部分、あるいは孔部分に有機媒体を吸収させ、含有されたハロゲン化芳香族化合物を固着させ、ついで必要に応じて当該固体担体に圧力をかけて(たとえば搾る等の操作を行って)、ハロゲン化芳香族化合物が除かれた有機媒体を得ることができる。
このように本発明のハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを固体担体に固定化させた組成物は、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体からバッチ処理にてハロゲン化芳香族化合物を除去する方法に用いられる他、連続的に処理する方法にも非常に好適に用いられる。
本発明の選択固着剤として、活性成分である、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマー自体を、カラムなどに充填し、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体を常圧下または加圧下に流すことによって、有機媒体からハロゲン化芳香族化合物を除去することもまた可能である。
このように本発明の選択固着剤は、有機媒体中に含有されたハロゲン化芳香族化合物を選択的に固着し、これを有機媒体中から除去することができる。本発明の選択固着剤を使用することにより、微量のハロゲン化芳香族化合物が溶解しているが故に保管せざるを得なかった有機媒体から、厳密な分解処理が必要なハロゲン化芳香族化合物のみを除去、濃縮することができるので、ハロゲン化芳香族化合物の分解処理効率が飛躍的に高まる一方、効率よく回収された安全な有機媒体は通常の方法で処理するか、再利用することが可能となる。本発明の選択固着剤を使用して、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を除去する方法は、有機媒体中に選択固着剤を投入・分散させ、攪拌などによりハロゲン化芳香族化合物を固着させ、これを分離するという比較的容易な方法であり、常温で行うことが可能であるため、ハロゲン化芳香族化合物が大気中に拡散するおそれのない、安全な方法である。本発明の選択固着剤として、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物を各種固体担体に固定化させた物質を用いると、有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を連続的に除去することが可能となる。
図1は、合成例1で合成した、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマー(多孔質シリカ含有γ−CD−メチル高分子)の電子顕微鏡写真(10000倍)である。 図2は、比較合成例1で合成した、シクロデキストリンポリマー(γ−CD−メチル高分子)の電子顕微鏡写真(10000倍)である。
本発明の選択固着剤の活性成分としての、シリカの存在下で、シクロデキストリンと有機二塩基酸類とを縮合させ、末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得たシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、例えば以下のような方法で製造することができる:
γ−シクロデキストリン(以下、「γ−CD」と称する。)ならびにシリカを有機溶媒(例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等。好ましくは乾燥ピリジン)に分散させる。一方、二塩化テレフタロイルを有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン等。好ましくは乾燥テトラヒドロフラン)に溶解させ、これを先に用意したγ−CD分散液に滴下する。この際、縮合反応による熱が発生するので、γ−CD・シリカ分散液を氷浴などで冷却しながら滴下することが望ましい。その後50〜100℃の湯浴に反応器をつけて、反応液を激しく撹拌する。反応終了後、反応容器内温を湯浴をはずして温度を下げ、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール等の炭素数1〜10のアルコール類)、アリールアルコール類(ベンジルアルコールまたはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール)またはフェノール類(フェノール、アルキル、アリールまたはアシル基で置換されたフェノール類)を加え、さらに撹拌を続ける。得られた固体をアルコール類、水、アセトンなどの洗浄液体で洗浄し、乾燥すると、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーを得ることができる。γ−CDの他、α−及びβ−シクロデキストリンでも同様の縮合ポリマーを形成することができる。本明細書では、このように得たポリマーを「シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」(末端をメタノールで処理した場合)、「シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−エチル高分子」(末端をエタノールで処理した場合)、「シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−ベンジル高分子」(末端をベンジルアルコールで処理した場合)、「シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−フェニル高分子」(末端をフェノールで処理した場合)等と略称することがあるが、いずれも本願発明で使用する、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する化合物である、シリカ含有シクロデキストリンポリマーのことである。
次に、市販のγ−CDと二塩化テレフタロイルとを、多孔質シリカの存在下で縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「多孔質シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」と称する。)の具体的な合成方法を示す:
まずγ−CDを有機溶媒(例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1−メチルイミダゾール等)に分散させ、ここに多孔質シリカを添加する。γ−CDの有機溶媒中の濃度は10〜30重量%、好ましくは15〜20重量%である。またγ−CD分散液中に添加する多孔質シリカの量は、有機溶媒に対して0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%である。一方、用意したγ−CDの10〜30倍量(mol)の二塩化テレフタロイルを有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、キシレン、ジメチルホルムアミド、トルエン等)に、濃度5.0〜10.0重量%、好ましくは9.0〜9.5重量%で溶解させ、これを先に用意したγ−CD分散液に滴下し、激しく撹拌する。撹拌は、磁気撹拌子や撹拌棒などを用いて行うが、特に撹拌羽根を備えた撹拌棒を用い、反応液の上部と下部とで撹拌速度に差が出ないよう、満遍なく撹拌することができる撹拌装置を用いて行うと好都合である。撹拌効率を高めることができる撹拌羽根であれば、種々の形状の撹拌羽根を使用することができる。γ−CDと二塩化テレフタロイルとの縮合反応が進行するにつれ、熱が発生するので、γ−CD分散液を氷浴などで冷却しながら滴下を行うのが好ましい。好ましくは反応容器内の温度は約0〜5℃の範囲を維持するようにする。滴下後、反応容器内の温度を約95〜105℃の範囲まで上げて、攪拌する。次に、氷浴をはずして反応容器内温度を下げて約15〜25℃にし、次いでここにγ−CDに対して30〜80重量%の量の、アルコール類(好ましくは炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類)、アリールアルコール類(好ましくはベンジルアルコールまたは置換ベンジルアルコール)、またはフェノール類(好ましくはフェノールまたは置換フェノール類)を、添加する。例えば、アルコール類としてメタノールを加えた場合は、約1〜24時間撹拌を続けることができる。こうして、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーの固体が析出するので、析出した結晶を濾取し、水およびアセトンで洗浄して、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマー(テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子)を得ることができる。得られるポリマーの同定は赤外吸収により行うことができ、形態の観察は電子顕微鏡で行うことができる。
本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーと、従来法で作製したシクロデキストリンポリマーや、末端基をエンドキャップしていない従来の縮合ポリマーとを比較すると、本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、縮合反応系にシリカを存在させたことにより、シクロデキストリンと有機二塩基酸とが適度な大きさの空孔を有する多孔質ポリマーを形成している。本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーは、従来のポリマーに比べて表面積が広く、より多くの有機液体と接触させることができる。よってこのような方法で得たハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを、そのまま選択固着剤として使用することができ、また必要に応じて各種添加剤または助剤を加えた選択固着剤組成物とすることができる。本発明のシリカ含有シクロデキストリンポリマーを有機液体中に含有される化合物の分離のために使用する場合は、該ポリマーを例えばカラムなどに充填し、ここに有機液体を流通させることにより簡便に所望の化合物を分離することができる。
[合成例1]多孔質シリカの存在下で、γ−CDと二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「多孔質シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」あるいは「MBMCD-B20高分子」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、および活栓の付いた300mLの3つ口フラスコに、乾燥γ−CD(2.0 g, 1.76mmol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(100ml、和光純薬工業)と多孔質シリカ(0.1g、粒径2.0〜2.5μm、鈴木油脂工業)とを入れて室温で0.5時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(3.6g, 17.6mmol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応器を氷浴から外し、湯浴(100℃)につけて3時間攪拌した。反応終了後、湯浴を外し、1級メタノール(1.13g、35.2mmol 、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を1級メタノール(50mL×3、純正化学工業)、1級アセトン(50ml×3、純正化学工業)の順で洗浄し、得られた固体を120℃で終夜真空乾燥した。5.62gの多孔質シリカ含有テレフタル酸-γ-CD-メチル高分子(以下、MBMCD-B20高分子と略す)が得られた。
[合成例2]無孔質シリカの存在下で、γ−CDと二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「無孔質シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」あるいは「NBMCD-C10高分子」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、および活栓の付いた300mLの3つ口フラスコに、乾燥γ−CD(2.0 g, 1.76mmol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(100ml、和光純薬工業)と多孔質シリカ(0.2g、粒径3.0〜5.0μm、鈴木油脂工業)とを入れて室温で0.5時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(3.6g, 17.6mmol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応器を氷浴から外し、湯浴(100℃)につけて3時間攪拌した。反応終了後、湯浴を外し、1級メタノール(1.13g、35.2mmol 、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を1級メタノール(50mL×3、純正化学工業)、1級アセトン(50ml×3、純正化学工業)の順で洗浄し、得られた固体を120℃で終夜真空乾燥した。5.37gの無孔質シリカ含有テレフタル酸-γ-CD-メチル高分子(以下、NBMCD-C10高分子と略す)が得られた。
[合成例3]合成例2よりも少量の無孔質シリカの存在下で、γ−CDと二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「無孔質シリカ含有テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」あるいは「NBMCD-C20高分子」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、および活栓の付いた300mLの3つ口フラスコに、乾燥γ−CD(2.0 g, 1.76mmol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(100ml、和光純薬工業)と無孔質シリカ(0.1g、粒径3.0〜5.0μm、鈴木油脂工業)とを入れて室温で0.5時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(3.6g, 17.6mmol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応器を氷浴から外し、湯浴(100℃)につけて3時間攪拌した。反応終了後、湯浴を外し、1級メタノール(1.13g、35.2mmol 、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を1級メタノール(50mL×3、純正化学工業)、1級アセトン(50ml×3、純正化学工業)の順で洗浄し、得られた固体を120℃で終夜真空乾燥した。5.89gの無孔質シリカ含有テレフタル酸-γ-CD-メチル高分子(以下、NBMCD-C20高分子と略す)が得られた。
[比較合成例1]γ−CDと二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「テレフタル酸−γ−CD−メチル高分子」あるいは「TPGCDM高分子」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、および活栓の付いた300mLの3つ口フラスコに、乾燥γ−CD(2.0 g, 1.76mmol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(100ml、和光純薬工業)を入れて室温で0.5時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(3.6g, 17.6mmol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応器を氷浴から外し、湯浴(100℃)につけて3時間攪拌した。反応終了後、湯浴を外し、1級メタノール(1.13g、35.2mmol 、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を1級メタノール(50mL×3、純正化学工業)、1級アセトン(50ml×3、純正化学工業)の順で洗浄し、得られた固体を120℃で終夜真空乾燥した。5.99gのテレフタル酸-γ-CD-メチル高分子(以下、TPGCDM高分子と略す)が得られた。
IR (KBr) 3448,1719,1277,1105,1018,732 cm-1
[実施例1]MBMCD-B20高分子による2,2‘,3,3’,5,5‘−ヘキサクロロビフェニル(以下、「2,2’3,3’5,5’−HECBP」と称する。)の選択固着
MBMCD-B20高分子(200mg)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ348.3mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPは含まれていなかった。結果を表1に記載する。
[実施例2]NBMCD-C10高分子による2,2’3,3’5,5’−HECBPの選択固着
NBMCD-C10高分子(200mg)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ351.7mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPは含まれていなかった。結果を表1に記載する。
[実施例3]NBMCD-C20高分子による2,2’3,3’5,5’−HECBPの選択固着
NBMCD-C20高分子(200mg)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ344.6mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPは含まれていなかった。結果を表1に記載する。
[比較実施例1]TPGCDM高分子による2,2’3,3’5,5’−HECBPの選択固着
TPGCDM高分子(200mg)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ361.1mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが30.44ppm含まれていた。結果を表1に記載する。
[比較実施例2]多孔質シリカによる2,2’3,3’5,5’−HECBPの選択固着
多孔質シリカ(200mg、粒径2.0〜2.5μm、以下、「M−B」と称する。)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ397.7mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが95.19ppm含まれていた。結果を表1に記載する。
[比較実施例3]無孔質シリカによる2,2’3,3’5,5’−HECBPの選択固着
無孔質シリカ(200mg、粒径3.0〜5.0μm、以下、「N−C」と称する。)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ10mm)を温度制御付オーブン内に取り付け、そのカラム内に2,2’,3,3’,5,5’-HECBP含有絶縁油(濃度:100ppm、総重量:400mg、絶縁油は谷口石油精製株式会社の高圧絶縁油)を窒素ガスで流し込み、130℃で注出したところ389.8mgの絶縁油が得られた。その絶縁油の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度を、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法による内部標準法(内部標準物質:2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル)で測定を行ったところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが95.58ppm含まれていた。結果を表1に記載する。
上記実施例および比較実施例の結果を表1にまとめる。
なお、今回実施例にて用いた高分子の合成法の相違点を、以下の表2にまとめて記載する。
[産業上の利用可能性]
本発明により、環境に安易に放出できないダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類などの有毒物質たるハロゲン化芳香族化合物を含みうる絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ等に代表される有機媒体を保管せざるを得ない産業、及びこれら化合物を含みうる紙、木材、焼却灰、岩石、土壌等に代表される固体物質を保管せざるを得ない産業において、これら化合物の安全で効率的な吸着・分離処理により、分解処理の大幅な負担軽減と、かかる媒体の保管スペースの節約を同時に実現することができる。

Claims (16)

  1. 有機溶媒中に分散したシクロデキストリンにシリカを添加し、次いで
    テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選ばれる有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物含有有機溶媒を滴下して反応液を撹拌し、次いで
    アルコール類を添加してエステル化反応させる
    ことを含む、シリカ含有シクロデキストリンポリマーの製造方法。
  2. アルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. シクロデキストリンを分散させる有機溶媒が、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、および1−メチルイミダゾールから選択され、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物を溶解させる有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、キシレン、ジメチルホルムアミドおよびトルエンから選択される、請求項1または2に記載の方法。
  4. シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、請求項1〜3の何れかに記載の方法。
  5. シクロデキストリンと、シクロデキストリンのモル量に対して10倍の、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選ばれる有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを、シクロデキストリンの重量に対して5.0%〜10%のシリカの存在下で縮合させたポリマーの末端に、シクロデキストリンのモル量に対して20倍のアルコール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、有機媒体に含有されるハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤。
  6. アルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコールから選択される、請求項に記載の選択固着剤。
  7. シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、請求項5または6に記載の選択固着剤。
  8. ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーが、固体担体に固定化されている、請求項5〜7のいずれかに記載の選択固着剤。
  9. ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、請求項5〜8のいずれかに記載の選択固着剤。
  10. 有機媒体が、有機液体、絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5〜9のいずれかに記載の選択固着剤。
  11. シリカの存在下で、シクロデキストリンとテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選ばれる有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合したポリマーの末端にアルコール類を反応させて得た、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーを含有する、ハロゲン化芳香族化合物の選択固着剤と、ハロゲン化芳香族化合物を含有する有機媒体とを接触させ、該有機媒体に含有されたハロゲン化芳香族化合物を該ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーに固着させて、ハロゲン化芳香族化合物を含有しない有機媒体を得ることを特徴とする、方法。
  12. アルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコールから選択される、請求項11に記載の方法。
  13. シリカが、多孔質シリカまたは無孔質シリカから選択される、請求項11または12に記載の方法。
  14. ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用するシリカ含有シクロデキストリンポリマーが、固体担体に固定化されていることを特徴とする選択固着剤を使用する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
  15. ハロゲン化芳香族化合物が、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル類、またはポリクロロベンゼン類である、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 有機媒体が、有機液体、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
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