JP2014138923A - 汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質除去装置 - Google Patents

汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質除去装置 Download PDF

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Abstract

【課題】難分解性汚染物質を、選択的かつ効率的に、低コストで回収することができ、また二次廃棄物等による廃棄物量の増大を抑制可能な汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質の除去装置を提供する。
【解決手段】実施形態の汚染物質除去剤2は、セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子が担持されてなる。
【選択図】図3

Description

本発明の実施形態は、汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質除去装置に関する。
工場や農場、家庭等の排水において、フェノール類等の難分解性の汚染物質の混入が懸念されている。
フェノール類は、一般に、強い毒性を有しており、代表的なものとして、ビスフェノールA(BPA)や、PPCPs(Pharmaceuticals and Personal Care Products)が知られている。
フェノール類は、例えば合成(フェノール)樹脂、染料中間体、界面活性化剤、消毒剤、歯科用局部麻酔剤等の原料として用いられている。フェノール類の生産量は、国内で約92万トン/年、世界的には約660万トン/年といわれており、今後更に需要が拡大すると見込まれる。
一方、フェノール類の毒性は、魚類や微生物等の生態系に悪影響を及ぼすおそれがあり、また水道水中に微量でも含まれる場合には、塩素処理の際にクロロフェノール類を生成し、強烈な異臭味を放つことが知られている。このため、フェノール類に関しては、水質汚濁防止法、廃棄物処理法、水道法、下水法等により法規制がなされている。
ビスフェノールA(BPA)は、合成樹脂の原料として利用されており、食品衛生法により、2.5ppm以下の溶出規制が設けられ、PRTR法により管理物質に指定されている。BPAに関する諸外国の法対応として、カナダでは環境保護法による規制が決定されており、米国では米国食品医薬品局(FDA)によりBPAに関する評価が実施中である。欧州では欧州食品安全機関(EFSA)によりBPAに関する評価が行われており、耐容一日摂取量は0.05mg/kg 体重/日)と設定されている。日本では、厚生労働省により、公衆衛生上の見地から、ビスフェノールAの摂取を減らすことが推奨されており、耐容一日摂取量は欧州と同様の水準に定められている。
一方、PPCPsに関しては、現在のところ、溶出量等に関する規制は設けられていないものの、フェノール類は、低濃度でも生態系に影響を及ぼすおそれがあることから、PPCPsに関しても、今後、規制対象とされる可能性が高いと見込まれる。
医薬物質(PPCPs)は、具体的には、例えばサリチル酸、ケトプロフェン、カルバマゼピン等、多種類の物質が排水中から確認されている。これらの物質は、低濃度でも生体に影響を与える可能性が懸念されることから、諸外国では、これら医薬物質(PPCPs)についての法整備化も検討されており、特に欧米では、水環境モニタリング調査、生体毒性試験、環境リスク評価等の研究が行われている。
医薬品は、新規汚染物質(emerging contaminants)の一つであり、医療分野や畜産分野で大量かつ広範囲に使用され、環境中に放出されている。人用医薬品としては、血圧降下剤、消化性潰瘍用剤、血管拡張剤、解熱鎮痛消炎剤、抗菌剤、精神神経用剤等が知られており、畜産分野では、抗生物質、ホルモン製剤等が知られている。
医薬品類による水環境汚染に関しては、具体的には、上記のものに加え、解熱鎮痛剤(イブプロフェン、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム)や抗てんかん剤(カルバマゼピン)等が下水処理水から検出された例が報告されている。しかしながら、これらの医薬品類由来の化学物質を完全に除去できる下水処理システムは得られていないのが現状である。また、海外では、下水処理場での処理を経た河川水から、避妊薬由来の合成エストロゲン(環境ホルモン物質)が検出された例も報告されている。
下水中に残留する医薬汚染物質は、薬剤耐性菌を出現させる原因物質としての側面も有している。実際に、医薬品類による環境汚染の現状について、水生生物における急性毒性による影響が確認され、臨床や畜産現場では、薬剤耐性菌が多数出現したとの報告がある。アメリカでは、抗生物質による水質汚染と、細菌の耐性との関係について研究がなされており、366種の細菌のうち72%の種類の細菌が、複数の抗生物質に対して耐性を示したことが報告されている。
上記の状況を受けて、日本でも、環境中に排出された医薬品が生態系に及ぼす影響を考慮して、環境省により、「化学物質環境実態調査」の対象に新たな医薬品成分が追加されている。また、諸外国においても、医薬品を含む15種の化学物質(例えば、エストラジオール(E2)、エチニルエストラジオール(EE2)、ジクロフェナク(DCF)等)が、欧州委員会により水質環境基準の優先リストに追加されている。
上記した有害物質を排出する汚染源としては、主に化学工場、病院、研究施設、家庭からの排水等が挙げられる。
水中や土壌中から有害物質を除去する方法としては、例えばカルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイト等の天然由来鉱物により、土壌等に含まれる有害物質を吸着して除去する方法(吸着法)が知られている。
上記した吸着物質は、いずれも高い吸着性能を示すことが知られているが、吸着処理後には、有害物質を吸着する吸着体自体が有害な二次廃棄物となり、その廃棄処理の方法が問題となる。一方、吸着処理後の吸着体を、埋め立て用材やコンクリート等に混入させて再利用する試みも提案されているが、吸着体に吸着された毒性物質が、土壌等に溶出する危険性が高く、実用には適しないものであった。また、上記した吸着物質は、いずれも高い吸着性能を示すことが知られているが、一般に、土壌や河川水等に含まれる汚染物質は低濃度であることから、汚染物質の除去処理に大量の吸着剤が必要となり、処理コストが増大するという問題もあった。
有害物質を含む廃液を、オゾンや紫外線(UV)を用いて酸化処理する方法(酸化処理)として、例えば、農薬廃液に対してオゾンによる酸化反応を行い、有害物質の河川や海への流出を防止するようにした農薬廃液の処理方法が提案されている。
また、医薬品や医薬部外品を含む汚染水に、放射線を直接照射して酸化処理することにより、医薬品や医薬部外品に含まれるベンゼン環の開環や炭素−炭素間結合の解離を生じさせて、二酸化炭素、酢酸等の無害な低分子化合物に分解する方法も提案されている。しかしながら、これらの手法は相当の高エネルギーを要するため、コストが高く、汎用性が低いという問題がある。また、特に医薬物質においては、分解処理過程において中間体として生成する物質が、更なる毒性を有する物質に分解されるおそれもある。
土壌に含まれる汚染物質を、微生物を用いて分解処理することにより浄化する方法(生分解法)も提案されているが、難分解性汚染物質に対しては、分解能が必ずしも十分でなく、医薬品由来の汚染物質の分解除去に適用するには、性能が不十分であった。
一方、工場から排出される煤塵や粉塵、自動車の排ガス中に含まれる黒煙等を主な発生源とする、浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)が、大気汚染の原因物質として知られている。中でも、粒子径が2.5μm以下のものは、PM2.5として、国内外において、広く知られている。このような浮遊性粒子状物質は、大気中に長期間滞留して、肺や気管等の呼吸器等に付着しやすく、また、喘息、気管支炎等の健康被害の原因物質や、発がん性物質との関連性が指摘されている。
例えば、ベンゾ(a)ピレン等の多環芳香族炭化水素(PAH:Polycyclic Aromatic Hydrocarbon)は、殺虫剤、接着剤、塗料、潤滑油等の工業製品の製造において、主に有機物の不完全燃焼によって発生し、ガス状となって大気中に放出されるとともに、その一部が、例えば上記した浮遊粒子状物質に付着して飛散する。多環芳香族炭化水素(PAH)は、その派生物も含めて、その多くが毒性を有し、発がん性を有する可能性も指摘されている。このような有害物質が、浮遊粒子状物質(SPM)に付着して飛散すると、発生源の国内に止まらず、国外にも飛散することから、世界的な規模での環境問題として、近年、注目されている。
大気中に浮遊する浮遊粒子状物質(SPM)に関しては、室内においては、空気清浄機等により、フィルターに汚染物質を吸着させることで、大気中から回収除去することが行われている。しかしながら、浮遊粒子状物質(SPM)等の有害物質を、フィルター等の吸着体により捕捉しても、吸着体自体が有害な二次廃棄物となり、その廃棄処理の方法が問題となる。また、汚染物質を吸着した吸着体を、長期間放置すると、汚染物質が室内に再放出されるおそれがある。
また、吸着処理を行った後の吸着体を、埋め立て用材やコンクリート等に混入させて再利用する試みも提案されている。しかしながら、この場合には、吸着体に吸着された汚染物質が、土壌等に溶出するおそれがあり、実用には適しないものであった。
一方、排水や土壌中に含まれる、PPCPsや多環芳香族炭化水素(PAH)等の汚染物質を、多糖類等の有機化合物を用いて捕捉し、排水中から除去する技術が試みられており、その一例として、シクロデキストリンが知られている。
シクロデキストリンは、主に超分子化学、分子認識の分野において研究が進められている。しかしながら、シクロデキストリンは、環状構造の外表面が親水性であり、単体で使用すると水中に溶解し易いことから、水中に含まれる汚染物質の回収、除去には適しないものであった。
例えば、シクロデキストリンをポリビニルアルコール中に共有結合状態で存在させた、シクロデキストリン含有ポリビニルアルコールゲルを用いて、有機化合物を含む排水処理を行う方法が提案されている。
しかしながら、上記した方法では、水中での耐久性に劣るため、排水等の水浄化処理に適用すると、短時間の使用でもポリマー構造が損傷するおそれがあった。
また、シクロデキストリンを有するもの(高分子化合物)として、シクロデキストリンが複数個結合したシクロデキストリンポリマー(CDP)が知られている。シクロデキストリンポリマー(CDP)は、汚染物質を高い収率で回収できるため、環境浄化技術への適用が試みられている。
しかしながら、シクロデキストリンポリマー(CDP)も、水中での耐久性に劣るため、
排水等の水浄化処理に適用すると、短時間の使用でもポリマー構造が損傷するおそれがある。特に、被処理水の流速の増大や、被処理水に含まれる不純物により、ポリマー構造の損傷の度合いが高まることが懸念されている。
特開2010−253401号公報 特開2001−340881号公報 特開2004−74119号公報 特開2004−97962号公報 特開2012−12582号公報
このように、従来の方法では、汚染物質の分解性能や回収性能の面で、必ずしも十分な特性を得られておらず、また、二次廃棄物等による廃棄物量の増大や、コスト増大などの問題を生じ易いものであった。このため、環境に配慮した、効率的かつ持続性を有する汚染物質の回収除去方法が求められている。
特に、医薬品由来の汚染物質は、河川等における蓄積濃度が微量であるため、現状では法整備がなされていないものの、世界的な人口増加や、医薬品の大量使用等により、今後問題になることが懸念される。また、薬剤耐性菌が出現した場合には、微量であっても生態系に多大な影響を及ぼすおそれがあるため、早急な解決が望まれている。また、多環芳香族炭化水素(PAH)は、浮遊粒子状物質(SPM)等の微粒子に付着することで、国内外から飛散するため、人体に対する影響が懸念されており、早急な解決が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、大気、排水、土壌、河川等に含まれる難分解性汚染物質、特にフェノール、ビスフェノールA、ケトプロフェン、サリチル酸、カルバマゼピン等のフェノール類や、ベンゾ(a)ピレン等の多環芳香族炭化水素(PAH)を、選択的かつ効率的に、低コストで回収することができ、また二次廃棄物等による廃棄物量の増大を抑制可能な汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質の除去装置を提供することである。
実施形態の汚染物質除去剤は、セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子が担持されてなる、ことを特徴とする。
実施形態の汚染物質除去剤の製造方法は、セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子を担持させる、ことを特徴とする。
実施形態の汚染物質除去方法は、上記した実施形態に係る汚染物質除去剤を、汚染物質で汚染された水、土壌又は気体と接触させ、前記汚染物質除去剤に含まれる、前記環状分子に前記汚染物質を包接させて、前記水、土壌又は気体から前記汚染物質を回収する分離回収工程を有する、ことを特徴とする。
実施形態の汚染物質除去構造体は、上記した実施形態に係る汚染物質除去剤を、薄膜状に形成するか、又は、フィルターに添着してなる、ことを特徴とする。
実施形態の汚染物質除去装置は、汚染物質で汚染された水、土壌又は気体中に含まれる汚染物質を連続的に除去する汚染物質除去装置であって、上記した実施形態に係る汚染物質除去剤と、前記汚染された水、土壌又は気体を含む流体を流通させつつ前記汚染物質除去剤と前記汚染された水、土壌又は気体とを接触させて、前記汚染物質を、前記汚染物質除去剤に含まれる前記環状分子に包接させて回収する汚染物質循環管路と、疎水性溶媒を流通させて、前記汚染物質を包接する前記環状分子から、前記汚染物質を脱離させる汚染物質抽出管路と、を具備することを特徴とする。
実施形態に係る汚染物質除去構造体の構成を示す概略図。 図1に示す汚染物質除去構造体に含まれる汚染物質除去剤及びこれに包接される汚染物質を拡大して示す図。 実施形態に係る汚染物質除去装置の概略図。 実施形態に係る汚染物質除去剤の汚染物質除去と再生のサイクルを模式的に示した図。 実施形態に係る汚染物質除去装置の概略図。 実施例1〜3及び比較例1〜4に係る各汚染物質除去剤とBPA水溶液との接触時間と、BPA水溶液中のBPA濃度との関係を示す図。 実施例1〜3及び比較例3〜4に係る各汚染物質除去剤の徐放率を示す図。 実施例3に係る汚染物質除去剤及び比較例2に係る汚染物質除去剤(β−シクロデキストリン)の拡散反射スペクトルを示す特性図。 比較例2に係る汚染物質除去剤(β−シクロデキストリン)の一部を拡大して示す走査型電子顕微鏡像。 比較例4に係る、汚染物質回収試験前の汚染物質除去剤(β−シクロデキストリンポリマー)の一部を拡大して示す走査型電子顕微鏡像。 比較例4に係る、汚染物質回収試験前の汚染物質除去剤(β−シクロデキストリンポリマー)の一部を拡大して示す走査型電子顕微鏡像。 比較例4に係る、汚染物質回収試験後の汚染物質除去剤(β−シクロデキストリンポリマー)の一部を拡大して示す走査型電子顕微鏡像。 汚染物質回収試験における、実施例4〜9及び比較例7〜8に係る各汚染物質除去剤の包接率を示す図。 汚染物質脱離試験における、実施例4〜9及び比較例7〜に係る各汚染物質除去剤の徐放率を示す図。
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係る汚染物質除去剤は、セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子が担持されてなる。以下、汚染物質除去剤を単に除去剤と示す。
担体に担持される分子としては、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなるものを用いることができる。これらの環状分子の中でも、入手のし易さ、及び汚染物質の包接し易さの観点から、シクロデキストリンを好適に用いることができる。以下、本明細書においては、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる分子を、環状分子と示す。
シクロデキストリンは、D−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合した環状構造を有する環状オリゴ糖であり、α−シクロデキストリン(シクロヘキサアミロース)、β−シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)、γ−シクロデキストリン(シクロオクタアミロース)が例示される。
シクロデキストリンは、無底の円筒形の分子構造を有しており、環の内部が疎水性、環の外表面が親水性で、5〜8Åの環径を有している。
シクロデキストリンの環径は、ベンゼン環と同等程度であり、その環内には、例えばフェノールや多環芳香族炭化水素(PAH)等の難分解性汚染物質が選択的に包接され、保持される。
シクロデキストリンの環の内表面又は外表面には、他の官能基、例えば炭素原子数1〜4の低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基等が付加されて修飾されていてもよい。例えば、シクロデキストリンとしては、メチル−β−シクロデキストリンも好適に用いられる。
特に、7個のグルコースユニットからなるβ−シクロデキストリンの環径は、例えばビスフェノールAや多環芳香族炭化水素(PAH)等の難分解性の汚染物質に含まれるベンゼン環とほぼ同等であり、これらの汚染物質を、その環内に、選択的に包接し、保持できるため好ましい。
シクロデキストリンの環内部に包接される汚染物質の種類や包接挙動は、シクロデキストリンの環径や環内部に導入される官能基の種類を選択することにより、適宜調整することができる。
環状分子は、担体の表面に担持されていてもよく、担体の内部に担持されていてもよい。
環状分子を、不溶性多糖類、無機酸化物又は活性炭からなる担体に担持することで、除去剤として、汚染物質の包接及び除放を安定的に行うことができる。
すなわち、不溶性多糖類、無機酸化物又は活性炭からなる担体に環状分子を担持させることで、環状分子の水中への溶解が抑制され、除去剤全体として、不溶化することができる。このため、例えば工場排水や河川水等に含まれるフェノール類や多環芳香族炭化水素(PAH)等の難分解性の汚染物質を、環状分子の環内に選択的に包接し、回収することができる。また、不溶性多糖類、無機酸化物又は活性炭からなる担体に、環状分子を担持させることで、工場排水や自動車の排ガス等に含まれる汚染物質を、環状分子の環内に、選択的に包接、回収することができる。
さらに、後述するように、環状分子の環内に汚染物質を包接した除去剤を、疎水性溶媒と接触させることで、除去剤から汚染物質が脱離される。このため、汚染物質の回収に使用した除去剤を再生し、再度繰り返し、汚染物質の回収除去に使用することができる。
担体は、セルロース又はキチンから選択される不溶性多糖類からなるものであってもよく、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物からなるものであってもよく、活性炭であってもよい。これらの中でも、シリカは安価であり、環状分子を安定的に担持できるため、担体として好適に用いられる。
担体と環状分子とは、両者の表面水酸基の加水分解により、化学的に結合させてなることが好ましい。担体として、例えば、表面水酸基量が少ないものを用いる場合には、シランカップリング剤等の表面修飾剤を添加することで、シリカ多層膜等が形成され、担体表面における表面水酸基量を増大させることができる。
すなわち、担体と環状分子とが、表面修飾剤を介して化学結合されてなるものとすることで、安定した担持状態が得られるため好ましい。特に、担体が無機酸化物や活性炭からなるものである場合には、環状分子を、表面修飾剤を介して担体に化学的に結合されたものとすることで、安定した担持状態が得られるため好ましい。
表面修飾剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドn水和物等の脱水縮合剤が挙げられる。
担体は、内部に微細孔を有する多孔質体を用いるのが好ましい。担体として、内部に微細孔を有するものを用いることで、担体表面だけでなく、細孔内部にも環状分子が担持され、単位体積当たりの環状分子担持量が高められるため好ましい。
無機酸化物からなる担体は、ゾルゲル法を用いて合成されたものが好ましい。
ゾルゲル法により合成された担体は、内部に含まれる微細孔が多く、高い比表面積や細孔容積を得られるとともに、合成条件を調整することで、その比表面積や重合度等が所望の範囲に制御されたものとすることができる。
特に、環状分子を表面修飾剤とともに配合したゾル体をゲル化して合成された除去剤は、担体の内部を含む全体に、環状分子が均一に担持されるため、単位体積当たりの環状分子担持量が高く、汚染物質に対して優れた回収性能を有するものとすることができる。
なお、無機酸化物を担体とする除去剤は、必ずしもゾルゲル法により合成したものに限られず、例えば、シリカ粒子等の無機酸化物粉体に、表面修飾剤等を介して、環状分子を化学的に結合させて担持させたものであってもよい。
母体の比表面積は、100〜1000m・g−1であることが好ましく、650〜1000m・g−1であることがより好ましく、800〜950m・g−1であることがさらに好ましい。また、母体の細孔容積は、0.45〜3.00ml・g−1であることが好ましく、2.50〜2.70ml・g−1であることがより好ましい。担体の比表面積が100m・g−1未満である場合、又は担体の細孔容積が0.45ml・g−1未満である場合には、環状分子の担持量を高められず、汚染物質について十分な回収性能を得られないおそれがある。一方、担体の比表面積が1000m・g−1を超える場合、又は担体の細孔容積が3.00ml・g−1を超える場合には、担体としての強度が低下するおそれがある。
担体の気孔率は、40〜85%であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましい。担体の気孔率が40%未満であると、環状分子を十分量担持することができず、汚染物質の回収量が低下するおそれがある。一方、担体の気孔率が85%を超えると、担体としての強度が低下するおそれがある。
担体が、セルロース、キチン等の不溶性多糖類からなるものである場合には、環状分子としては、環の外表面が、例えばメチル基、エチル基等の低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基により修飾されていることが好ましい。
除去剤の粒子径は、0.5〜4000μmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましい。除去剤の粒子径が4000μmを超えると、汚染物質の回収性能が低下するおそれがある。一方、除去剤の粒子径が0.5μm未満であると、除去剤から汚染物質を脱離させるときに、外部エネルギーの加重が必要となり、全体としての処理コストが増大するおそれがある。
除去剤に含まれる環状分子については、担体/環状分子mol比が10〜0.1であることが好ましく、1〜0.5であることがより好ましい。除去剤に含まれる環状分子の量が多いほど、排水等の被処理体から回収される汚染物質の量が増大するが、除去剤に含まれる環状分子が、担体/環状分子=0.1以下であると、除去剤自体が脆くなり、再生使用を繰り返し行うことが困難となる。一方、除去剤に含まれる環状分子が、担体/環状分子=10以上であると、汚染物質の回収性能を十分に得られないおそれがある。
実施形態に係る除去剤は、例えばゾル−ゲル合成により製造することができる。
ゾル−ゲル法により除去剤を製造する場合、まず、金属アルコキシドと有機溶媒、少量の酸又はアルカリとを混合し、さらに表面修飾剤を加えて混合液を調製する。この混合液を撹拌して、母体前駆体溶液を調製する。
金属アルコキシドとしては、例えば、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル等のケイ素アルコキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラブトキシド等のチタニウムアルコキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを好適に用いることができる。
有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール、トルエン等を好適に用いることができ、これらを単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、珪素のアルコキシド1molに対して、0.5〜50molが好ましく、10〜50molがより好ましい。
酸又はアルカリは、金属アルコキシドの重合速度を調整するため、適宜添加してもよい。
酸としては、例えば希硫酸、硝酸等を好適に用いることができ、アルカリとしては、例えば炭酸水素アンモンニウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を用いることができ、これらを単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
酸又はアルカリとしては、概ね1mol/l以下程度のものを好適に用いることができるが、酸又はアルカリの濃度は特に限定されない。
上記した混合液には、アミン類等の界面活性剤や、ポリエチレングリコールを加えてもよい。界面活性剤やポリエチレングリコールを添加することで、界面活性剤やポリエチレングリコールをゲル体から除去する際に、担体中にメソ細孔が形成される。
界面活性剤としては、例えば、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド等のアミン類を好適に用いることができる。
界面活性剤を使用する場合、その添加量としては、特に限定されないが、金属アルコキシド1molに対して、0.1〜5molが好ましく、0.5〜1molがより好ましい。
ポリエチレングリコールを使用する場合、その添加量としては、特に限定されないが、金属アルコキシド1molに対して、0.1〜5molが好ましく、0.5〜1molがより好ましい。
表面修飾剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドn水和物等の脱水縮合剤を好適に用いることができる。
表面修飾剤の添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド1molに対して、0.05〜1.5molが好ましく、0.1〜1molがより好ましい。
撹拌条件は、特に限定されないが、常圧下、25〜100℃程度で、概ね0.25〜24時間程度行うことが好ましいが、撹拌時間は特に限定されない。撹拌は、金属アルコキシド、有機溶媒、酸又はアルカリ、界面活性剤及び表面修飾剤、脱水縮合剤を混合した混合液を撹拌してもよく、金属アルコキシド及び有機溶媒の混合液と、表面修飾剤、界面活性剤及び有機溶媒の混合液とを、それぞれ別個に撹拌した後、両者を混合してさらに撹拌するようにしてもよい。
次いで、所定量の環状分子を、水に溶解させて十分に撹拌し、環状分子含有溶液を調製する。
環状分子としてシクロデキストリンを用いる場合には、シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、又はメチル−β−シクロデキストリンを用いるのが好ましい。
環状分子の添加量は、金属アルコキシド/環状分子mol比が10〜60であることが好ましく、10〜30であることがより好ましい。
除去剤に含まれる環状分子の量が多いほど、排水等の被処理体から回収される汚染物質の量が増大するが、モル比で、金属アルコキシド/環状分子=10以下であると、除去剤自体が脆くなり、繰り返し利用が困難となる。一方、モル比で、金属アルコキシド/環状分子=60以上であると、汚染物質の回収性能を十分に得られないおそれがある。
この環状分子含有溶液を、金属アルコキシドを含む前駆体溶液に徐々に添加し、30〜70℃、より好ましくは30〜60℃程度の低温で加熱して、混合体をゲル化する。
環状分子含有溶液の添加後、又は添加と同時に、ゲル化促進剤として希硫酸等を添加してもよい。
ゲル化する際の加熱条件は、25〜100℃、より好ましくは30〜60℃の温度範囲で、0.25〜48時間より好ましくは0.25〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
ゲル化により流動性が失われたゲル体を、25〜120℃、より好ましくは25〜55℃の温度範囲で10〜240時間保持して、乾燥させる。乾燥処理は、加熱して行ってもよく、自然乾燥により行ってもよい。
乾燥後のゲル体を、純水中で所定時間撹拌、洗浄した後、吸引ろ過により回収する。シリカゾル前駆体溶液に界面活性剤としてアミン類を加えた場合には、回収されたゲル体を、さらにアルコールや希酸含有アルコール溶液中で十分に撹拌し、洗浄する。
洗浄後、ゲル体を加熱して乾燥処理することで、無機酸化物を担体とする除去剤を得ることができる。加熱条件は、上記したゲル体の乾燥処理と同様の条件で行うことが好ましい。
なお、シリカ等の無機酸化物を担体とする除去剤の製造方法は、上述した方法に限られず、例えば、無機酸化物からなる粒子を担体として用意し、その表面に、表面修飾剤を介して化学的に環状分子を結合させるようにしてもよい。例えば、金属アルコキシドを用いたゾルゲル法により担体を予め作成した後、その表面に、表面修飾剤を介して化学的に環状分子を結合させるようにしてもよい。
具体的には、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、担体として、シリカ粒子等の無機酸化物粉体を用意し、この粉体を、110℃程度で十分に乾燥させる。一方、環状分子と、シランカップリング剤等の表面修飾剤とを、アルコール等の有機溶媒中で十分に撹拌し、環状分子含有混合液を調製する。
無機酸化物粉体としては、シリカ粒子、チタン粒子、アルミナ粒子、又はゼオライトから選択される少なくとも一を用いることができる。
無機酸化物粉体の粒子径は、1μm〜5mmであることが好ましい。無機酸化物粉体の粒子径が5mmを超えると、環状分子を十分量担持させることができず、得られる除去剤において、汚染物質の回収性能が低下するおそれがある。一方、無機酸化物粉体の粒子径が1μm未満であると、粉体が凝集し易く、環状分子を均一に担持させるのが困難となる。
無機酸化物粉体の比表面積は、400m・g−1以上であることが好ましい。
なお、有機溶媒、及び表面修飾剤としては、上述したゾルゲル法を用いた製造方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
環状分子として、例えばメチル基等の低級アルキル基を導入したシクロデキストリンを用いる場合には、混合液には、必ずしも表面修飾剤を配合しなくてもよく、アルコール等の有機溶媒中で環状分子を撹拌して混合液を形成してもよい。
上記した環状分子含有混合液に、乾燥処理後の無機酸化物粉体を投入し、十分に撹拌する。この際、無機酸化物粉体の細孔内に溶液を浸透させるため、混合液中への無機酸化物粉体の投入、撹拌を、真空脱気下で行うようにしてもよい。
撹拌条件は、特に限定されないが、撹拌温度は、25〜100℃、より好ましくは50〜75℃で行うことが好ましく、撹拌時間は、0.25〜24時間、より好ましくは12〜24時間行うことが好ましい。
撹拌後の混合液を固液分離した後、固体成分を純水で十分に洗浄し、加熱乾燥することで、無機酸化物からなる担体の表面に、環状分子が担持された除去剤を得ることができる。加熱条件は、特に限定されないが、25〜120℃の温度範囲で、1〜100時間行うことが好ましい。
セルロース又はキチンから選択される不溶性多糖類を担体とする除去剤は、以下のようにして製造することができる。
まず、担体として、セルロース又はキトサン粉末を用意する。
担体として用いるセルロース又はキトサン粉末の粒子径は、1〜500μmであることが好ましい。
セルロース又はキトサン粉末を、110℃程度の温度範囲で十分に乾燥させる。一方、環状分子とシランカップリング剤等の表面修飾剤とを、アルコール等の有機溶媒中で十分に撹拌し、混合液を調製する。
なお、有機溶媒、及び表面修飾剤としては、上述したゾルゲル法を用いた製造方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
環状分子として、メチル基等の低級アルキル基を導入したシクロデキストリンを用いる場合には、混合液には、必ずしも表面修飾剤を配合しなくてもよく、アルコール等の有機溶媒中で環状分子を撹拌して混合液を形成してもよい。
上記した混合液に、乾燥処理後のセルロース又はキトサン粉末を投入する。
次いで、この混合液を十分に撹拌する。混合液の撹拌条件は、特に限定されないが、撹拌温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜75℃であり、撹拌時間は、好ましくは3〜24時間、より好ましくは12〜24時間である。
撹拌後の混合液を固液分離し、固体成分を純水で十分に洗浄した後、25〜120℃の温度範囲で、1〜100時間保持して乾燥させることで、不溶性多糖類からなる担体の表面に、環状分子が担持された除去剤を得ることができる。
活性炭を担体とする除去剤は、以下のようにして製造することができる。
具体的には、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、担体として、活性炭粉末を用意し、この活性炭粉末を、110℃程度で十分に乾燥させる。一方、環状分子と、表面修飾剤とを、アルコール等の有機溶媒中で十分に撹拌し、環状分子含有混合液を調製する。
活性炭粉末の粒子径は、5μm〜5.0mmであることが好ましい。活性炭粉末の粒子径が5.0mmを超えると、環状分子を十分量担持させることができず、得られる除去剤において、汚染物質の回収性能が低下するおそれがある。一方、活性炭粉末の粒子径が5μm未満であると、粉体が凝集し易く、環状分子を均一に担持させるのが困難となる。
活性炭粉末の比表面積は、700m・g−1以上であることが好ましい。
表面修飾剤としては、例えば、ジメチルジクロロシラン等のシランカップリング剤を好適に用いることができる。
なお、有機溶媒としては、上述したゾルゲル法を用いた製造方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
環状分子として、メチル基等の低級アルキル基を導入したシクロデキストリンを用いる場合には、混合液には、必ずしも表面修飾剤を配合しなくてもよく、アルコール等の有機溶媒中で環状分子を撹拌して混合液を形成してもよい。
上記した環状分子含有混合液に、乾燥処理後の活性炭粉末を投入し、十分に撹拌する。この際、活性炭粉末の細孔内に溶液を浸透させるため、混合液中への活性炭粉末の投入、撹拌を、真空脱気下で行うようにしてもよい。
撹拌条件は、特に限定されないが、撹拌温度は、30〜100℃、より好ましくは40〜60℃で行うことが好ましく、撹拌時間は、0.5〜12時間、より好ましくは3〜8時間行うことが好ましい。
撹拌後の混合液を固液分離した後、固体成分を純水で十分に洗浄し、加熱乾燥することで、活性炭からなる担体の表面に、環状分子が担持された除去剤を得ることができる。加熱条件は、特に限定されないが、50〜80℃の温度範囲で、1〜8時間行うことが好ましい。
除去剤の使用形態は、特に限定されないが、例えば、除去剤を薄膜状に形成するか、又はフィルターに添着してなる汚染物質除去構造体100として、使用することが可能である。図1は、実施形態に係る汚染物質除去構造体の構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示す汚染物質除去構造体100に含まれる汚染物質除去剤2及びこれに包接される環状物質4を拡大して示す図である。図2に示すように、除去剤2は、担体8の表面に、環状分子7が担持されて構成されており、この環状分子7の環内に、汚染物質4が包接される。汚染物質除去構造体100の具体的な使用方法は、後に詳述する。
実施形態に係る汚染物質の除去方法は、上記の実施形態で説明した除去剤を、汚染物質で汚染された水又は土壌と接触させて、この水又は土壌から汚染物質を回収するか、又は上記の実施形態で説明した除去剤を、汚染物質で汚染された気体と接触させて、この気体から汚染物質を回収する、分離回収工程を有するものである。汚染物質で汚染された気体としては、例えば、ガス状の汚染物質や汚染物質が付着した微粒子等の、汚染物質を含む気体が挙げられる。
具体的には、汚染物質の除去方法は、汚染物質を含む水、土壌又は気体に除去剤を接触させて、該除去剤に含まれる環状分子に汚染物質を包接させて回収する工程(汚染物質分離回収工程)と、環状分子に包接された汚染物質を保持する除去剤を、疎水性溶媒と接触させて、除去剤から汚染物質を脱離させる工程(汚染物質脱離工程)とを含む。
汚染物質を含む水又は土壌に除去剤を接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、汚染物質を含む水又は土壌を収容する反応浴槽中に、上記した実施形態に係る除去剤を入れて撹拌し、反応浴槽中で両者を接触させる方法、又は除去剤を充填したカラムに、汚染物質を含む液状体を連続的に通水し、カラム内で両者を接触させる方法などによって行われる。これにより、汚染物質が汚染物質除去剤に含まれる環状分子に包接され、水又は土壌中から回収される。
なお、土壌中に含まれる汚染物質の回収処理を、カラム内に通水して行う場合には、前処理として、汚染物質を含む土壌を水中に分散させ、この分散体を、カラムに通水するようにしてもよい。
汚染物質を含む水又は土壌を、除去剤に接触させるときの反応温度、接触時間、除去剤の使用量等は、回収対象とする汚染物質の種類や処理対象物の量、及び処理対象物に実質的に含まれる汚染物質の量等に応じて、適宜調整することができる。
また、汚染物質を含む気体を除去剤と接触させる方法は、例えば、上記した汚染物質除去構造体100(図1参照。)を用いて行うことができる。
具体的には、例えば、図1に示す汚染物質除去構造体100に、汚染物質を含む気体を
通気し、汚染物質除去構造体100に含まれる除去剤と汚染物質を含む気体とを接触させる方法によって行うことができる。これにより、汚染物質が除去剤に含まれる環状分子に包接され、気体中から回収される。
なお、微粒子に付着した汚染物質を、除去剤に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、前処理として、汚染物質が付着した微粒子を含む気体を、一旦、空気清浄機等に通気し、フィルター等の吸着体に捕捉された微粒子を加熱して汚染物質を気化させた後、得られたガス状の汚染物質を、汚染物質除去構造体100(図1参照。)に通気することによって行うことができる。
汚染物質を含む気体を、除去剤に接触させるときの反応温度、接触時間、除去剤の使用量等は、回収対象とする汚染物質の種類や処理対象物の量、及び処理対象物に実質的に含まれる汚染物質の量等に応じて、適宜調整することができる。
汚染物質を含む液状体の通水や、汚染物質を含む気体の通気は、1パスで行ってもよく、これらを、複数のカラム間又は複数の汚染物質除去構造体間に循環させて行ってもよい。
環状分子に包接された汚染物質を保持する除去剤を、疎水性溶媒と接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、除去剤と疎水性溶媒とを混合して撹拌する方法、又は汚染物質を保持する除去剤が充填されたカラム内又は汚染物質除去構造体内に、疎水性溶媒を連続的に通水し、カラム内又は汚染物質除去構造体内で両者を接触させる方法などによって行われる。これにより、環状分子に包接された汚染物質が脱離し、疎水性溶媒中に徐放される。
疎水性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール又はエチルアルコール等のアルコールを好適に用いることができる。アルコールは、100%濃度のものを用いてもよく、20〜95%程度の濃度のアルコール水溶液を用いてもよい。
環状分子に包接された汚染物質を保持する除去剤を、疎水性溶媒と接触させるときの反応温度、接触時間、疎水性溶媒の使用量等は、除去剤に保持された汚染物質の種類や量に応じて、適宜調整することができる。
汚染物質が脱離された後の除去剤は、再び汚染物質分離回収工程において再使用(リサイクル)される。
一方、疎水性溶媒中に回収された汚染物質は、再び合成樹脂や染料等の合成原料として用いられる。
疎水性溶媒の通水は、1パスで行ってもよく、複数のカラム間又は複数の汚染物質除去構造体間に循環させて行ってもよい。
回収対象となる汚染物質としては、環状分子の環構造内部に包接可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、フェノール、ビスフェノールA、ケトプロフェン、サリチル酸、カルバマゼピン等の医薬物質(PPCPs)や、ベンゾ(a)ピレン、アントラセン、ベンズ(a)アントラセン、アントラキノン、2−ニトロフルオレン、1−ニトロピレン、エストラジオール等の多環芳香族炭化水素(PAH)等の難分解性汚染物質の回収処理に、好適に適用される。
本実施形態によれば、上記した実施形態に係る汚染物質除去剤を用いることで、汚染物質除去剤として、汚染物質の包接及び除放を安定的に行うことができる。
すなわち、実施形態に係る汚染物質除去剤によれば、環状分子の水中への溶解が抑制されており、水中に混入した汚染物質を、選択的かつ効率的に回収することができる。また、実施形態に係る汚染物質除去剤によれば、気体中に混入した汚染物質を、環状分子の環内に、選択的に、かつ安定的に包接、回収することができる。
また、実施形態に係る汚染物質除去剤は、疎水性溶媒と接触させることで、環状分子に包接された汚染物質を脱離させることができる。このため、汚染物質の回収処理に使用した後、除去剤を再生して再度使用することができ、二次廃棄物等により廃棄物量の増大を抑制することができる。
また、上記の実施形態に係る汚染物質は、糖類である環状分子を用いており、仮に土壌中に混入しても生分解され、周辺環境に害を及ぼすおそれがないため、安全性に優れている。さらに、上記した実施形態に係る除去剤を用いた汚染物質除去方法は、例えばオゾン処理や放射線処理の場合に用いるような大規模な設備を要しないことから、例えばプラント建設において、コスト面で有利であり、広く実用化が可能である。
図3は、汚染物質で汚染された汚染水のような汚染物質を含む液状物質を除染するのに用いられる実施形態の汚染物質除去装置の概略図である。この汚染物質除去装置10は、上記した実施形態に係る除去剤2が充填されたカラム31、32を備えている。これらのカラム31、32間には、図示を省略したポンプにより汚染物質を含む液状物質を循環させる、汚染物質循環管路5が配設されている。汚染物質循環管路5には、切替え弁51,52を介して被処理液供給配管53、処理水排出配管54が接続されている。
また、カラム31、32間には、汚染物質循環管路5とは独立的に、図示を省略したポンプにより汚染物質を脱離させて溶解する疎水性溶媒を循環させる、汚染物質抽出管路6が配設されている。汚染物質抽出管路6には、切替え弁61,62を介して疎水性溶媒供給配管63、疎水性溶媒排出配管64と接続されている。
図示を省略したが、この実施形態の装置における切替え弁51,52,61,62の切換え及びポンプの運転は、図示を省略した制御装置により、例えば、被処理液供給配管53から導入された汚染物質を含む液状体が所定の時間カラム31、32間を循環した後、処理水排出配管54から排出され、次いで疎水性溶媒供給配管63から導入された疎水性溶媒が所定の時間カラム31、32間を循環した後、疎水性溶媒排出配管64から排出されるサイクルを繰り返すシーケンシャルな制御が行われる。
図3に示すように、河川や土壌から採取された汚染物質を含む汚染水は、被処理液供給配管53に通水され、切替え弁52の閉鎖、切替え弁51の解放により、汚染物質循環管路5に通水される。汚染水は、汚染物質循環管路5内を循環する過程で、カラム31、32内に通水され、除去剤2と接触する。
汚染水が除去剤2と接触することで、汚染水に含まれる汚染物質が、除去剤2の環状分子の環状構造内に包接され、汚染水中から回収除去される。汚染水は、汚染物質循環管路5内で所定時間循環された後、汚染物質が除去された処理水として、切替え弁52の解放により、処理水排出配管54に放出され、汚染物質除去装置1外部に排出される。
処理水排出配管54から処理水が排出された後、疎水性溶媒供給配管63に疎水性溶媒が通水され、切替え弁62の閉鎖、切替え弁61の解放により、汚染物質抽出管路6に通水される。疎水性溶媒は、汚染物質抽出管路6内を循環する過程で、カラム31、32内に通水され、汚染物質を包接する環状分子を有する除去剤2と接触する。
疎水性溶媒が、除去剤2と接触することで、除去剤2に保持される汚染物質は、除去剤2から脱離されて疎水性溶媒中に徐放され、除去剤2が再生される。汚染物質を含む疎水性溶媒は、切替え弁62の解放により、疎水性溶媒排出配管64に放出され、回収槽65に回収される。再生された除去剤2には、再び、汚染物質循環管路5により、汚染水が通水され、汚染物質回収処理に供される。
なお、図3においては、汚染水及び疎水性溶媒が、それぞれ、除去剤を有するカラム31、32間を循環する構成を示したが、本発明の汚染物質除去装置は、必ずしもこのような構成に限られず、汚染水及び疎水性溶媒が、除去剤2を有するカラムを1パスで通過する構成としてもよい。
図4は、上記実施形態における汚染物質除去剤の汚染物質除去と再生のサイクルを模式的に示したものである。シクロデキストリン等の環状分子7は、環状構造を有するため、汚染物質4と接触すると(図4(a))、汚染物質4を環状構造内に取り込み、汚染物質4が包接されるが(図4(b))、疎水性溶媒と接触すると汚染物質4は、環状分子7から脱離されて疎水性溶媒中に徐放される(図4(c))。これによって、汚染物質除去剤2は初期状態に再生されるので、ふたたび、汚染物質4の除去が可能になる(図4(a))。
図5は、汚染物質を含む気体を除染するのに用いられる実施形態の汚染物質除去装置の概略図である。なお、図5において、図3に示す構成要素と同一又は類似の構成要素に関しては、同一の符号を用いて説明する。
この汚染物質除去装置20は、汚染物質除去構造体33、34を備えている。汚染物質除去構造体33、34は、図1に示す汚染物質除去構造体100と同様の構成を有するものである。
これらの汚染物質除去構造体33、34間には、図示を省略したポンプにより汚染物質を含む気体を循環させる、汚染物質循環管路5が配設されている。汚染物質循環管路5には、切替え弁55,56を介して被処理ガス供給配管57、処理ガス排出配管58が接続されている。
また、汚染物質除去構造体33、34間には、汚染物質循環管路5とは独立的に、図示を省略したポンプにより、汚染物質を脱離させて溶解する疎水性溶媒を循環させる、汚染物質抽出管路6が配設されている。汚染物質抽出管路6には、切替え弁66,67を介して疎水性溶媒供給配管68、疎水性溶媒排出配管69と接続されている。
図示を省略したが、この実施形態の装置における切替え弁55,56,66,67の切換え及びポンプの運転は、図示を省略した制御装置により、例えば、被処理ガス供給配管57から導入された汚染物質を含む気体が所定の時間汚染物質除去構造体33、34間を循環した後、処理ガス排出配管58から排出され、次いで疎水性溶媒供給配管68から導入された疎水性溶媒が所定の時間汚染物質除去構造体33、34間を循環した後、疎水性溶媒排出配管69から排出されるサイクルを繰り返すシーケンシャルな制御が行われる。
図5に示すように、工場排出ガスや自動車の排ガス等から採取された、汚染物質を含む気体は、被処理ガス供給配管57に通気され、切替え弁56の閉鎖、切替え弁55の解放により、汚染物質循環管路5に通気される。汚染物質を含む気体は、汚染物質循環管路5内を循環する過程で、汚染物質除去構造体33、34内に通気され、汚染物質除去構造体33、34に含まれる除去剤2(図2参照。)と接触する。
汚染物質を含む気体が除去剤2と接触することで、気体中に含まれる汚染物質が、除去剤2の環状分子の環状構造内に包接され、汚染水中から回収除去される。汚染物質を含む気体は、汚染物質循環管路5内で所定時間循環された後、汚染物質が除去された処理ガスとして、切替え弁56の解放により、処理ガス排出配管58に放出され、汚染物質除去装置20外部に排出される。
処理ガス排出配管58から処理ガスが排出された後、疎水性溶媒供給配管68に疎水性溶媒が通水され、切替え弁67の閉鎖、切替え弁66の解放により、汚染物質抽出管路6に通水される。疎水性溶媒は、汚染物質抽出管路6内を循環する過程で、汚染物質除去構造体33、34内に通水され、汚染物質を包接する環状分子を有する除去剤2と接触する。
疎水性溶媒が、除去剤2と接触することで、除去剤2に保持される汚染物質は、除去剤2から脱離されて疎水性溶媒中に徐放され、除去剤2が再生される。汚染物質を含む疎水性溶媒は、切替え弁67の解放により、疎水性溶媒排出配管69に放出され、回収槽65に回収される。再生された除去剤2には、再び、汚染物質循環管路5により、汚染物質を含む気体が通気され、汚染物質回収処理に供される。
なお、図5においては、汚染物質を含む気体及び疎水性溶媒が、それぞれ、汚染物質除去構造体33、34間を循環する構成を示したが、本発明の汚染物質除去装置は、必ずしもこのような構成に限られず、汚染物質を含む気体及び疎水性溶媒が、汚染物質除去構造体を1パスで通過する構成としてもよい。
本実施形態の汚染物質除去装置10、20によれば、上記した実施形態に係る汚染物質除去剤を用いることで、汚染物質の回収を選択的かつ効率的に行うことができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明したが、上記の実施例は、本発明の一例として挙げたものであり、本発明を限定するものではない。また、上記の各実施形態の説明では、汚染物質除去剤及びその製造方法、並びに汚染物質除去方法、汚染物質除去構造体及び汚染物質除去装置において、本発明の説明に直接必要とされない部分等についての記載を省略したが、これらについて必要とされる各要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、本発明の趣旨に反しない範囲で当業者が適宜設計変更しうる全ての汚染物質除去剤及びその製造方法、並びに汚染物質除去方法、汚染物質除去構造体及び汚染物質除去装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
以下、本発明について実施例、比較例を参照してさらに詳細な説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1−1)汚染物質除去剤の調製
(実施例1〜3)
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(和光純薬製)を、その12倍mol量のエタノール中に分散させた後、1mol/lの希硫酸を加え、3時間撹拌して分散液(i)を得た。また、ヘキサデシルアミン(HDA)を、その5倍molのエタノール中に分散させた後、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を少量加え、十分に撹拌して、分散液(ii)を得た。得られた分散液(i)、(ii)を混合し、十分に撹拌してA液を得た。 A液に分散させるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ヘキサデシルアミン(HDA)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)のモル比は、TEOS:HDA:MPTMS=1:0.5:0.6とした。
一方、純水に、環状分子としてβ−シクロデキストリン(β−CD)を加え、十分に撹拌して溶解させてB液を得た。β−シクロデキストリン(β−CD)は、オルトケイ酸テトラエチルに対する量が、それぞれ0.1倍mol(実施例1)、0.5倍mol(実施例2)、1.0倍mol(実施例3)となるように添加し、3種のB液を調製した。次いで、各B液に、純水と同量のエタノールを加え、十分に撹拌した後、A液にB液を徐々に添加して、混合液を得た。得られた混合液に、ゲル化促進剤として、0.5mol/Lの希硫酸を少量添加し常温で数時間撹拌したところ、ゾル状態から徐々にゲル化し、数時間で固体のゲル体を得た。このゲル体を、70℃の乾燥機内に入れて36時間乾燥させて固化させた。
得られた固化体を、メノウ乳鉢で軽く粉砕した後、エタノール溶媒を加えて3時間撹拌し、固体と液体とを分離する操作を2回繰り返した後、70℃で一昼夜乾燥させて、除去剤を得た。
(比較例1〜4)
汚染物質除去剤として、α−シクロデキストリン(α−CD)(関東化学(株)製)(比較例1)、β−シクロデキストリン(β−CD)(関東化学(株)製)(比較例2)、α−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)(塩水港精糖(株)製)(比較例3)、β−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)(塩水港精糖(株)製)(比較例4)、を用意した。
(1−2)汚染物質回収試験
上記で得られた実施例1〜3及び比較例1〜4の各除去剤について、回収対象物としてビスフェノールA(BPA)を用いて、汚染物質回収試験を行った。まず、BPAに純水を加えて100ppmのBPA水溶液を調製し、このBPA水溶液30mlに、実施例1〜3及び比較例1〜4の除去剤を0.2g加えて室温で撹拌した。撹拌は60分間行い、水溶液の経時的な変化を測定した。各除去剤を添加後、5分、10分、30分、60分の各経過時間毎に、撹拌を停止し、自然沈降により固体と液体とを分離した後、上澄み液についてBPA濃度の測定を行った。
濃度測定は、BPAを含む各上澄み液に発色試薬を加え、吸光度分析計を用いて行った。評価結果を図6に示す。
(1−3)汚染物質脱離試験
実施例1〜3及び比較例3〜4の各除去剤について、上記(1−2)の汚染物質回収試験(以下、汚染物質回収試験(1−2)と示す。)後に得られた各固体成分に、50体積%のエタノール水溶液を30ml加え、常温で60分間撹拌した。撹拌後、遠心分離機により固体−液体を分離して得られた各上澄み液について、汚染物質回収試験(1−2)で行ったのと同様にして、BPA濃度の測定を行い、汚染物質回収試験(1−2)前のBPA溶液濃度に対する、各BPA濃度測定値の百分率を算出して、徐放率を得た。評価結果を図7に示す。
図6に示すように、実施例1〜3の除去剤は、いずれも、高い除去率を示しており、C/T比(オルトケイ酸テトラエチルに対する環状分子の導入mol比)が高いほど、汚染物質の回収除去性能が向上することが認められた。
これは、C/T比が高いほど、除去剤の単位質量当たりのBPA回収量が増大すること示している。特に、C/T=1.0である実施例3では、70%程度と高い回収率を得られることが確認された。また、実施例1〜3の除去剤では、汚染物質回収試験(1−2)及び上記(1−3)の汚染物質脱離試験(以下、汚染物質脱離試験(1−3)と示す。)を行った後のものについて、再度、汚染物質回収試験(1−2)を行ったところ、所定量のBPAを回収できた。
一方、比較例1のα−シクロデキストリン(α−CD)、比較例2のβ−シクロデキストリン(β−CD)は、BPAの除去率がいずれも0%であり、シクロデキストリン自体が水に溶解し、シクロデキストリンによるBPAの包接が行われなかったことが確認された。なお、比較例3のα−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)、比較例4のβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、それぞれ高い除去性能を示しており、特にβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、60分経過後には、98%と高い除去率を示すものの、後述する図12で示す走査型電子顕微鏡像から明らかなように、α−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)、β−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、共に、一旦汚染物質の回収除去を行った後は、ポリマー構造に損傷が生じていた。このため、比較例3、4のα−シクロデキストリンポリマー、β−シクロデキストリンポリマーは、汚染物質脱離試験(1−3)後、2度目の汚染物質回収試験(1−2)には、適用できなかった。
図7で示すように実施例1〜3では、いずれも、除去剤から脱離して疎水性溶媒中に徐放されたBPAが確認され、特に、C/T比が高いものほど、高い徐放率が得られることが確認された。これは、汚染物質回収試験においてBPA含有水溶液から回収されたBPA量が多いほど、高い脱離量(徐放量)が得られることを示しており、回収性能と脱離性能とが、良好な相関関係を有することが確認された。一方、比較例3のα−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)、比較例4のβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)も、疎水性溶媒中に徐放されたBPAが確認されたものの、ポリマー構造が損傷した部分から溶出したものも、一部含まれると推定される。
(1−4)IR分析
実施例3の除去剤、及び比較例2のβ−シクロデキストリン(β−CD)からなる除去剤について、それぞれ分析装置(日本分光株式会社製、装置名「FT−IR−6000」)及び拡散反射スペクトル測定装置(日本分光株式会社製、装置名「FT−IR−6000」)を用いて、固体表面IR分析を行い、拡散反射スペクトルを測定した。測定結果を図8に示す。なお、図8は、横軸が波数、縦軸がクベルカームンク(Kubelka−Munk)変換を行った強度であり、破線は実施例3に係る除去剤の拡散反射スペクトルを示し、実線は比較例2に係る除去剤(β−シクロデキストリン)の拡散反射スペクトルを示す。
図8に示すように、実施例3に係る除去剤(破線)は、比較例2に係る除去剤(β−シクロデキストリン)(実線)と、近似したスペクトルを示すことが確認された。すなわち、実施例3の除去剤では、シリカ担体上にシクロデキストリンが担持されており、難分解性汚染物質の回収除去処理に、有効に機能し得ることが確認された。
(1−5)SEM観察
比較例2の除去剤(β−シクロデキストリン)、及び比較例4の除去剤(β−シクロデキストリンポリマー)の一部を、走査型電子顕微鏡により撮像した。この走査型電子顕微鏡像を図9〜12に示す。なお、比較例4の除去剤(β−シクロデキストリンポリマー)については、汚染物質回収試験(1−2)前の状態(図10、11参照。)、及び汚染物質回収試験(1−2)後の状態(図12参照。)のそれぞれについて、走査型電子顕微鏡像の撮像を行った。
図9に示すように、比較例2に係るβ−シクロデキストリン(β−CD)は、角形の形状を有しており、粒子径にばらつきを有することが確認された。また、
図10、11で示すように、汚染物質回収試験(1−2)の前の、比較例4に係るβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、球状体が凝集して存在する構造体であることが確認された。一方、図12で示すように、汚染物質回収試験(1−2)後の、比較例4に係るシクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、球状の構造体が破損していることが確認された。すなわち、β−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、汚染物質回収試験(1−2)の撹拌処理により、球状体の凝集構造が容易に破損するものであり、BPAの回収処理後に使用したものを、再生して再度BPAの回収処理に使用するのは困難であった。
(1−6)担体特性
(比較例5〜6)
実施例1において、A液にヘキサデシルアミン(HDA)及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を添加せず、またB液を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子からなる除去剤を得た(比較例5)。また、実施例1において、A液に3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を添加せず、またB液を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子からなる除去剤を得た(比較例6)。
比較例5、6に係るシリカ粒子の比表面積、細孔容積、及び気孔率を測定した。評価結果を表1に示す。
比表面積は、窒素ガス吸着法により、BET多点式比表面積・細孔分布測定装置により測定した。また、気孔率は、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)を用いて測定した。
表1に示すように、A液にヘキサデシルアミン(HDA)を配合した比較例6のシリカ粒子では、ヘキサデシルアミン(HDA)を配合していない比較例5のシリカ粒子と比較して、比表面積及び細孔容積が大きく、また高い気孔率を得られており、シリカ粒子中に微細孔が形成されていることが確認された。
(2−1)汚染物質除去剤の調製
(実施例4〜9)
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(和光純薬製)を、その10倍mol量のエタノール中に分散させ、十分に撹拌した後、この分散液に対して少量の純水を徐々に加え、50℃で1時間撹拌し、A液を得た。
一方、少量のトルエンに、環状分子としてメチル−β−シクロデキストリン(関東化学株式会社製)を加え、さらに純水を加えて十分に撹拌し、完全に溶解させた後、常温でさらに1時間撹拌し、B液を得た。
メチル−β−シクロデキストリンは、メチル−β−シクロデキストリンに対するオルトケイ酸テトラエチルの量が、それぞれ、10倍mol(C/T=0.1、実施例4)、20倍mol(C/T=0.05、実施例5)、30倍mol(C/T=0.03、実施例6)、60倍mol(C/T=0.017、実施例7)、5倍mol(C/T=0.2、実施例8)、100倍mol(C/T=0.01、実施例9)となるように添加し、6種のB液を調製した。なお、括弧内には、C/T比(オルトケイ酸テトラエチルに対する環状分子の導入mol比)を示す。
次いで、A液にB液を徐々に添加し、混合液を得た。得られた混合液を50℃に保持して十分に撹拌した後、エタノールを少量添加し、さらに少量の希塩酸(0.5mol/L)を添加した。混合液をさらに撹拌したところ、流動性が失われ、ゾル状態から徐々にゲル化した。得られたゲル体を、乾燥機により55℃に保持して120時間乾燥させて固化体を得た。なお、実施例4〜9では、界面活性剤を添加していないが、本発明においては、上記したA液及びB液の混合液に、界面活性剤として、例えばアミン類を所定量添加してもよい。
得られた固化体を、メノウ乳鉢で軽く粉砕した後、純水及びエタノール溶媒を加えて3時間撹拌し、固体と液体とを分離する操作を2回繰り返した後、55℃で一昼夜乾燥させて、除去剤を得た。なお、撹拌には、純水又はエタノール溶媒のいずれか一方を用いて行ってもよい。
(比較例7〜8)
比較例として、市販のシクロデキストリンポリマー(CDP)を用意し、それぞれ、α−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)(塩水港精糖(株)製)(比較例7)、β−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)(塩水港精糖(株)製)(比較例8)、を用いた。
(2−2)汚染物質回収試験
上記で得られた実施例4〜9及び比較例7〜8の各除去剤について、回収対象物としてビスフェノールA(BPA)を用いて、汚染物質回収試験を行った。
まず、BPAに純水を加えて100ppmのBPA水溶液を調製し、このBPA水溶液10mlに、実施例4〜9及び比較例7〜8の除去剤を0.05g加えて室温で撹拌した。撹拌を30分間行い、さらに遠心分離により固液分離を行った後、分離された液体を回収して、BPAの濃度測定を行った。濃度測定は、実施例1〜3と同様、BPAを含む各液体に発色試薬を加え、吸光度分析計を用いて行った。得られた各BPA濃度測定値を用いて、以下の式(1)により、包接率を算出した。
包接率=[(汚染物質回収試験(2−2)前のBPA溶液濃度)−(各BPA濃度測定値)]/(汚染物質回収試験(2−2)前のBPA溶液濃度)×100
・・・(1)
(2−3)汚染物質脱離試験
汚染物質回収試験(2−2)における固液分離により得られた、実施例4〜9及び比較例7〜8の各固体成分に、50体積%のエタノール水溶液を10ml加え、常温で30分間撹拌した。撹拌後、遠心分離機により固液分離を行い、分離された液体について、汚染物質回収試験(2−2)で行ったのと同様にして、BPA濃度の測定を行い、汚染物質回収試験(2−2)前のBPA溶液濃度に対する、各BPA濃度測定値の百分率を算出して、徐放率を得た。
徐放率測定後、実施例4〜9及び比較例7〜8の各固体成分を回収し、この固体成分に含まれる除去剤を用いて、汚染物質回収試験(2−2)及び汚染物質脱離試験(2−3)を再度行った。このようにして、汚染物質回収試験(2−2)及び汚染物質脱離試験(2−3)を合計5回行った。汚染物質回収試験(2−2)で得られた包接率の評価結果を図13に示し、汚染物質脱離試験(2−3)で得られた徐放率の評価結果を図14に示す。なお、2回目〜5回目の各試験における包接率及び徐放率の算出には、「汚染物質回収試験(2−2)前のBPA溶液濃度」として、「1回目の汚染物質回収試験(2−2)前のBPA溶液濃度」を用いた。
図13に示すように、無機酸化物からなる担体に、メチル−β−シクロデキストリンを担持させた実施例4〜9の除去剤は、いずれも、1回目から5回目までの各汚染物質回収試験(2−2)において、所定の包接率を得られており、繰り返し使用した後においても、メチル−β−シクロデキストリンの環内への、汚染物質(BPA)の包接が行われることが確認された。特に、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が10〜60倍mol(C/T=0.017〜0.1)である、実施例4〜7の除去剤では、1回目から5回目までの包接率の変動が少なく、汚染物質の回収及び脱離を繰り返して行った後でも、安定した包接が行われることが確認された。
一方、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が5倍mol(C/T=0.2)である、実施例8の除去剤では、担体に対するメチル−β−シクロデキストリンの担持量が多すぎるため、除去剤全体としての構造が不安定となり易く、初回の汚染物質回収試験(2−2)では高い包接率を得られたものの、2〜5回目には、包接率の低下が認められた。また、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が、100倍mol(C/T=0.01)である、実施例9の除去剤では、担体に対するメチル−β−シクロデキストリンの担持量が少ないため、実施例4〜8と比較して、包接率は、初回から大幅に低いものであった。
これに対し、比較例7のα−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)、比較例8のβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)は、いずれも、シクロデキストリンのポリマー体単独で構成されており、除去剤自体が脆く、損傷が生じ易いものであった。このため、初期には90%を超える高い包接率を得られたものの、繰り返しの使用により、包接率の著しい低下が認められた。なお、比較例7〜8においては、ビスフェノールA(BPA)は、シクロデキストリンの分子環内への包接だけでなく、シクロデキストリンポリマーのポリマー体に対する物理的な吸着も生じていると推定される。一方、ビスフェノールA(BPA)は、シリカには吸着しないため、実施例4〜9においては、担体に対する物理的な吸着は殆ど生じておらず、BPA水溶液から除去されたBPAの大半は、メチル−β−シクロデキストリンの環内に包接されている。
また図14で示すように、実施例4〜9の除去剤では、いずれも、1回目から5回目までの各汚染物質脱離試験(2−3)において、除去剤から脱離して疎水性溶媒中に徐放されたBPAが確認された。特に、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が10〜60倍mol(C/T=0.017〜0.1)である、実施例4〜7の除去剤では、いずれも、60〜70%程度の高い徐放率を示しており、汚染物質の回収及び脱離を5回繰り返して行った後でも、安定した徐放率を得られることが確認された。
一方、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が5倍mol(C/T=0.2)である、実施例8の汚染物質除去剤では、初回の汚染物質脱離試験(2−3)では高い徐放率を得られたものの、2回目〜5回目には、徐放率の低下が認められた。また、オルトケイ酸テトラエチルのメチル−β−シクロデキストリンに対するモル比が、100倍mol(C/T=0.01)である、実施例9の除去剤では、メチル−β−シクロデキストリンに包接されるビスフェノールA(BPA)の量が少ないことから、徐放率も低いものであった。
一方、比較例7のα−シクロデキストリンポリマー(α−CDP)、比較例8のβ−シクロデキストリンポリマー(β−CDP)では、除去剤自体が脆く、損傷が生じ易いため、繰り返しの使用により、徐放率の低下が認められ、特に、比較例7では、徐放率の顕著な低下が認められた。
以上説明したように、市販のシクロデキストリンポリマーでは、汚染物質の回収性能、脱離性能(徐放性)は確認できたが、短時間の撹拌でもポリマー構造が損傷し、耐久性に劣ることが確認された。一方、実施形態に係る除去剤によれば、無機酸化物、不溶性多糖類又は活性炭からなる担体にシクロデキストリン等の環状分子を担持させたものとすることで、例えばフェノール等の汚染物質について、優れた回収性能及び脱離性能(徐放性)を得ることができ、また、再利用も可能であることから、汚染物質の回収除去に、継続的に使用することができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の汚染物質除去剤及びその製造方法、並びにこれを用いた汚染物質除去構造体、汚染物質除去方法、汚染物質除去装置によれば、難分解性の汚染物質を選択的かつ効率的に回収することができ、また、再利用が可能であることから、二次廃棄物等による廃棄物量の増大を抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
2…汚染物質除去剤、31,32…カラム、33,34…汚染物質除去構造体、
4…環状物質、5…汚染物質循環管路、51,52…切替え弁、53…被処理液供給配管、54…処理水排出配管、55,56…切替え弁、57…被処理ガス供給配管、
58…処理ガス排出配管、6…汚染物質抽出管路、61,62…切替え弁、63…疎水性溶媒供給配管、64…疎水性溶媒排出配管、65…回収槽、66,67…切替え弁、68…疎水性溶媒供給配管、69…疎水性溶媒排出配管、7…環状分子、8…担体、
10…汚染物質除去装置、20…汚染物質除去装置、100…汚染物質除去構造体

Claims (14)

  1. セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子が担持されてなる、ことを特徴とする汚染物質除去剤。
  2. 前記担体と前記環状分子とが、表面修飾剤を介して化学結合されてなる、請求項1に記載の汚染物質除去剤。
  3. 前記担体が前記金属アルコキシドと表面修飾剤とを用いたゾル−ゲル法により製造されてなる、請求項1又は2のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤。
  4. 前記担体が微細孔を有しており、該担体に前記環状分子が担持されてなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤。
  5. セルロース若しくはキチンから選択される不溶性多糖類、シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物又は活性炭からなる担体に、クラウンエーテル、シクロデキストリン、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリルから選択される少なくとも一からなる環状分子を担持させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤の製造方法。
  6. ケイ素、アルミニウム及びチタンから選ばれた少なくとも1種のアルコキシドを含む金属アルコキシドと前記環状分子とを混合してなる混合液を用いたゾル−ゲル法により、
    シリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物からなる担体に前記環状分子を結合させる、請求項5に記載の汚染物質除去剤の製造方法。
  7. ケイ素、アルミニウム及びチタンから選ばれた少なくとも1種のアルコキシドを含む金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル法によりシリカ、チタニア、アルミナ、ゼオライトから選択される無機酸化物からなる担体を製造する工程と、前記担体に前記環状分子を結合させる工程と、を有することを特徴とする請求項5又は6記載の汚染物質除去剤の製造方法。
  8. 前記担体が金属アルコキシド、表面修飾剤及び界面活性剤を用いたゾル−ゲル法によりゾル体を形成した後、前記界面活性剤を除去して形成された、微細孔を有する担体に、前記環状分子を結合させる、請求項6又は7に記載の汚染物質除去剤の製造方法。
  9. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤を、汚染物質で汚染された水、土壌又は気体と接触させ、前記汚染物質除去剤に含まれる、前記環状分子に前記汚染物質を包接させて、前記水、土壌又は気体から前記汚染物質を回収する分離回収工程を有する、ことを特徴とする汚染物質除去方法。
  10. 前記汚染物質が、多環芳香族炭化水素である、請求項9に記載の汚染物質除去方法。
  11. 前記汚染物質を保持する前記汚染物質除去剤を、疎水性溶媒と接触させて、前記汚染物質除去剤から前記汚染物質を脱離させる脱離工程を有し、前記脱離工程を経た後の前記汚染物質除去剤を、前記回収工程に使用する、請求項9又は10に記載の汚染物質除去方法。
  12. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤を、薄膜状に形成するか、又は、フィルターに添着してなる、ことを特徴とする汚染物質除去構造体。
  13. 汚染物質で汚染された水、土壌又は気体に含まれる汚染物質を連続的に除去する汚染物質除去装置であって、
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の汚染物質除去剤と、
    前記汚染された水、土壌又は気体を含む流体を流通させつつ前記汚染物質除去剤と前記汚染された水、土壌又は気体とを接触させて、前記汚染物質を、前記汚染物質除去剤に含まれる前記環状分子に包接させて回収する汚染物質循環管路と、
    疎水性溶媒を流通させて、前記汚染物質を包接する前記環状分子から、前記汚染物質を脱離させる汚染物質抽出管路と、
    を具備することを特徴とする汚染物質除去装置。
  14. 請求項12に記載の前記汚染物質除去構造体を用いた、請求項13に記載の汚染物質除去装置。
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