JP5911060B2 - 放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去材料及び放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去方法 - Google Patents

放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去材料及び放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去方法 Download PDF

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本発明は放射性物質の吸着除去材料に関するものである。原子力発電所や放射性同位元素取扱等事業所をはじめとする原子力関連施設から発生する放射性物質含有廃液から、放射性物質を除去するための材料およびその製造方法に関する。特に、原子力関連施設の事故に伴い発生する放射性物質を含む廃液から、放射性物質を効率よく分離除去し、作業者の被ばくを最小限に抑えることを可能とする材料およびその製造方法に関するものである。
より詳細には、本発明は、特に海、河川、地下水、溜め水などの水系に、放射性物質が流出した場合に、これを捕集することのできる選択固着剤、及び、これを用いて放射性物質を実質的に含有しない水を得る方法に関する。本発明は、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させ、得られた縮合ポリマーの末端に水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類をエステル化させることにより得ることができる、新規な構造を有するシクロデキストリンポリマーを用いて、水中に含有された放射性物質を選択的に固着する方法に関する。さらに本発明は、上記の新規な構造を有するシクロデキストリンポリマーならびにその製造方法に関する。本発明に係るポリマーは、水中に含有された各種放射性物質を選択的かつ効率的に固着することが出来る。
環境中に大量放出された放射性セシウム(137Cs)は、水溶性であって生体内での挙動がカリウムやルビジウムに似ているため、人体、動植物に取り込まれると放射線による内部被爆を引き起こす化合物である。放射性セシウムの半減期は約30.2年であり、有害性が比較的長期間にわたって持続する。このため放射性セシウムが大気、土壌、海水、地下水等に放出された場合は、直ちに除去し、安全に保管する必要がある。
同様に放射性ストロンチウム(90Sr)は、カルシウムと電子配置および原子半径が似ているため、生体内に取り込まれると骨のカルシウムと置き換わり、体内に蓄積して長期間にわたり放射線を放出する。放射性ストロンチウムの半減期は28.8年であり、放射性セシウムと同様、比較的長期間にわたってその有害性が持続する。
従来、放射性セシウムや放射性ストロンチウムを含む汚染水処理技術としては、フェロシアン化鉄などの無機塩、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂を用いる手法などが一般的であるが、不燃性の無機物質を用いる手法は、汚染物を吸着させた物質の減容処理が困難であり、またゼオライトを用いる方法では、塩存在下で放射性物質の吸着性能が低くなるという問題があった。一方、イオン交換樹脂などの有機材料を用いる方法は、放射線による材料自体の劣化の問題があり、逆浸透膜を用いる手法は、一度に処理できる量が著しく少ないという問題があった。
特許文献1(特開2001−133594号)には、コバルト、マンガン、鉄、クロム、亜鉛、ストロンチウム、セシウムなどの陽イオンの放射性核種の少なくとも一種を選択的に吸着して除去しうる吸着剤を充填した吸着剤充填塔を用いる、原子炉冷却水からの放射性核種の除去方法が開示されている。特許文献1では、吸着剤として、母体である高分子に放射性核種とキレートを形成しうる配位基が導入されたキレート樹脂を使用することが開示され、放射性核種とキレートを形成しうる配位基として、チタン酸塩およびフェロシアン化物のいずれか一方を使用できることが開示されている。
特許文献2(特開2007−271306号)には、廃液に含まれる放射性セシウムおよびストロンチウムを脱窒菌またはセシウム蓄積菌で処理してセシウムを吸着除去する方法が開示されている。金属イオンを処理する方法に微生物を用いる本方法によれば、放射性物質を選択的に確実に減少させることができるが、環境中に広範に放出された放射性物質を処理するには難がある。
特許文献3(特開平5−66295号)には、キチン質またはキチン質とハイドロキシアパタイトとの複合体に放射性物質を吸着させることにより、液体中に混在している放射性物質を除去する方法が開示されている。本方法によれば放射性ストロンチウムを有効に除去することができるが、放射性ストロンチウムを吸着したハイドロキシアパタイトの処理をどのようにするかという問題が残る。
特許文献4(特許第3749941号)には、多孔性担体の細孔内に水溶性ヘキサシアノ鉄(II)酸塩を担持させ、これを銅塩を溶解させた溶液で処理して得たセシウム分離材が開示されている。この分離材を使用して放射性セシウムを分離除去できると考えられるが、他の特許文献に開示された発明と同様に、放射性セシウムを吸着させた多孔性担体をどのように処理するかという問題が残る。
環境中に放出された放射性セシウムならびにストロンチウムを吸着除去する技術を開示する文献は多くはなく、効率的にこれらの放射性核種を吸着除去する材料の開発がなお一層望まれている。
このような観点から、本発明者らは、減容処理が困難なゼオライト等の無機物質を用いることなく、減容処理が容易な有機物質を探索することにした。そして、放射線量の強い放射性物質汚染水中で使用しても性能劣化が生じない有機物質として、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを見いだし、これを含有する選択的放射性物質除去剤を提供する。シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たポリマーを含有するポリマーは、放射性物質汚染水からセシウム及び/又はストロンチウムを選択的に除去することができ、セシウムならびにストロンチウムを含まない水を回収することを実施例にて明らかにした。
特開2001−133594号 特開2007−271306号 特開平5−66295号 特許第3749941号
三菱重工技報、Vol.35、No.4、282頁〜285頁 エバラ時報、No.218、29頁〜34頁
本発明は、水に含有される放射性物質、特に放射性セシウム及び/又はストロンチウムを選択的に固着し、水中から放射性物質を除去することにより、放射性物質の処理を容易にすることを可能とする選択除去材料を提供することを目的とする。また本発明は、かかる選択除去材料を使用して、水中に含有される放射性物質を選択的に捕集し、以って放射性物質を含有しない水を高い回収率で得る方法を提供する。
本発明者らは、水溶性であるシクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーの末端に、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、多価カルボン酸類を反応させて生成した、水不溶性の新規なシクロデキストリンポリマーを除去材料の成分として使用して、水中に含有される放射性物質を捕集し、放射性物質を含有しない水を高い回収率で得ることができることを見いだした。この放射性物質除去材料を、放射性物質を含有する水に直接投入し、あるいは、カラム内に充填して放射性物質を含有する水を通過させる等の手段により、効率的に放射性物質を捕集することができることを発見した。
本発明の態様は、以下の通りである:
1.シクロデキストリン類と、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーに、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類を反応させて得たポリマーを含む、放射性物質除去材料。
2.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、ジグリコール酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記1に記載の材料。
3.多価アルコール類が、炭素数1〜10を有する二価アルコール類、三価アルコール類、または四価アルコール類から選択され、多価アリールアルコール類がヒドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ビスフェノール類または置換ビスフェノール類から選択され、多価カルボン酸類が、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、またはテトラカルボン酸類から選択される、上記1または2に記載の材料。
4.放射性物質が、放射性セシウム及び/又はストロンチウムである、上記1〜3のいずれか1つに記載の材料。
5.シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーの末端に、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類または多価カルボン酸類を反応させて得たポリマーを含有する、放射性物質除去材料と、放射性物質を含有する水とを接触させ、該水に含有された放射性物質を該放射性物質除去材料に固着させて、放射性物質を含有しない水を得ることを特徴とする、方法。
6.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、ジグリコール酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記5に記載の方法。
7.多価アルコール類が、炭素数1〜10を有する二価アルコール類、三価アルコール類、または四価アルコール類から選択され、多価アリールアルコール類がヒドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ビスフェノール類または置換ビスフェノール類から選択され、多価カルボン酸類が、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、またはテトラカルボン酸類から選択される、上記5または6に記載の方法。
8.放射性物質が、放射性セシウム及び/又はストロンチウムである、上記5〜7のいずれか1つに記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、シクロデキストリン類と、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーに、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類を反応させて得たポリマーを含む、放射性物質除去材料に係る。まず、本発明の放射性物質除去材料を構成するポリマーについて説明する。
シクロデキストリン類は、数分子のD−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をとったオリゴ糖の一種である。一般的にグルコースが6個、7個または8個結合したものが知られており、それぞれ、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンと称される。シクロデキストリン類は、その環状構造の内部が小さな分子を包接できる空孔となっている。シクロデキストリンのヒドロキシ基は空孔の外側に位置するため、空孔内部は疎水性であり、疎水性物質を包接しやすい。
有機二塩基酸類とは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪酸を含み、本発明においては、シクロデキストリン分子中の−CHOH基と反応して逐次縮合し、ポリマーを形成しうる化合物のことである。このような有機二塩基酸類として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ジグリコール酸等が挙げられる。有機二塩基酸ハロゲン化物とは、上記の有機二塩基酸類の酸ハロゲン化物を指す。本発明では特に有機二塩基酸であるテレフタル酸、又は有機二塩基酸ハロゲン化物であるテレフタル酸ジクロライド(二塩化テレフタロイル)を用いることが好適である。シクロデキストリンと有機二塩基酸との反応は、例えば約50〜100℃、好ましくは約60〜90℃で行うことができる。
水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類を反応させる、とは、上記のように得たシクロデキストリン縮合ポリマーの末端に残る有機二塩基酸由来のカルボキシル基を、特定の置換基でエンドキャップすることを意味する。カルボキシル基をエンドキャップするために、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、多価カルボン酸類を反応させ、エステル化することができる。シクロデキストリン類と有機二塩基酸類とを反応させる際に、シクロデキストリン類と有機二塩基酸との割合を、例えば1:3〜10、好ましくは1:3〜5等、有機二塩基酸類が過剰な条件下で反応させる。すると、シクロデキストリン類の分子中に存在する複数のヒドロキシル基に有機二塩基酸類が反応することになる。
先に説明したとおり、シクロデキストリン類は、空孔の外側が親水性、空孔の内側が疎水性の性質を有する。このシクロデキストリン類に過剰の有機二塩基酸類を反応させると、シクロデキストリン類の外側に疎水性の基が導入されることになる。そして結合した有機二塩基酸類を介してシクロデキストリン類が架橋構造を形成していく。シクロデキストリン類自体は基本的に水溶性の物質であるが、このように疎水性の基を導入することによってシクロデキストリン類を水不溶性にすることができる。さらに親水性基と疎水性基とのバランスを工夫することにより、水に不溶性、あるいは難溶性ではあるが、水中に含有する物質と相互作用することができる親水基を有する物質を作ることが可能となる。
再度詳しく説明すると、シクロデキストリン類と有機二塩基酸類との縮合ポリマーの末端に水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類を反応させる、とは、例えば炭素数1〜10のアルコールから選択される二価アルコール類、三価アルコール類、または四価アルコール類、芳香族環にヒドロキシル基を2以上有する多価アリールアルコール類、または1分子内にカルボキシル基を2以上有する多価カルボン酸類を、有機二塩基酸由来のカルボキシル末端基に反応させて、エステル結合を形成することを意味する。すなわち、シクロデキストリン類に結合した有機二塩基酸類の末端を、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類でエンドキャップすることである。末端のエンドキャップに用いた多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類は、複数のヒドロキシル基を有しているため、有機二塩基酸類の末端のエンドキャップに寄与しなかったヒドロキシル基が残ることになる。このようにヒドロキシル基をポリマーの末端に存在させることにより、末端基の水への親和性が向上するため、水中の放射性物質との相互作用の機会も増加すると考えられる。このように生成したポリマーは、疎水性の有機二塩基酸類部分と親水性の末端基とを有するため、水に不溶性または難溶性であるが水中に含有された放射性物質と相互作用することができる。すなわち、本発明のポリマーは、シクロデキストリン部位の空孔内に、水中に含有された放射性物質を取り込む能力を有している。
本発明で用いるシクロデキストリンポリマーの化学構造式は、例えば以下の式で表されると考えられる:
この式において、シクロデキストリン類の部分は、円錐台形で表されており、有機二塩基酸としてはテレフタル酸が用いられている。シクロデキストリン類中の水酸基と有機二塩基酸とがエステル結合により交互に結合し、網目状の構造を形成している。そしてポリマーの末端は、多価アルコール類であるトリエチレングリコールと反応させた結果として、ヒドロキシ基を有するトリオキシエチレン基によりキャップされている。末端のエンドキャップに用いる化合物によって、末端基の長さを変えることができる。除去したい放射性物質の性質に応じて、シクロデキストリン類と有機二塩基酸類との結合数の割合、および末端基の長さを適宜変更し、シクロデキストリンポリマーの水との親和性ならびに水中に含有される放射性物質との親和性を変えることが可能である。
本発明の放射性物質除去材料にて捕集を意図する放射性物質は、放射能を有する物質の総称であり、これに含まれる放射性元素(または核種)は、放射線を放射しながら時間と共に崩壊し、最終的に放射能を持たない安定な同位体となる。本発明の材料で捕集を意図する放射性物質として、ウラン235、セシウム137、コバルト60、ストロンチウム90、ヨウ素129、ヨウ素131等が挙げられる。本発明の材料は、特に水中に含有されるセシウム137およびストロンチウム90の捕集に高い性能を発揮する。
次に、本発明の放射性物質除去材料を用いて、水に含有された放射性物質を捕集する方法を説明する。本発明は、シクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーの末端に、水、多価アルコール類、多価アリールアルコール類または多価カルボン酸類を反応させて得たポリマーを含有する、放射性物質除去材料と、放射性物質を含有する水とを接触させ、該水に含有された放射性物質を該放射性物質除去材料に固着させて、放射性物質を含有しない水を得ることを特徴とする、方法に係る。上に説明した本発明の放射性物質除去材料は、固体または半固体の形態を有している。そこで、放射性物質を含有する水に本発明の放射性物質除去材料を分散させて、よく攪拌することにより、本発明の放射性物質除去材料と、放射性物質を含有する水とを接触させ、該水に含有された放射性物質を固着させることができる。より詳細には、含有されている放射性物質に対して10倍−1000倍のシクロデキストリン部位を含む本発明の放射性物質除去材料を投入し、よく攪拌する。本発明の放射性物質除去材料中の活性成分であるポリマーは、水中に分散し、水中に含有される放射性物質と接触する。放射性物質と相互作用するポリマー中の相互作用部分(シクロデキストリン部位)との相互作用により、放射性物質が当該相互作用部分またはその近傍に固着される。処理する水の量や放射性物質の濃度、及び本発明の放射性物質除去材料の量にもよるが、一般的には5時間〜数日間にわたり攪拌等による方法で接触させることができる。固着反応は常温で好適に行うことができ、必要に応じて加熱することもできる。例えば、20〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは70〜90℃の温度にまで加熱することができる。本発明の放射性物質除去材料に含まれるポリマーは、特に低温下でも放射性物質を固着することができる点が有利である。
このように放射性物質と相互作用するポリマーに水中に含有される放射性物質が固着された後、放射性物質が固着されたポリマー(または当該ポリマーを含む組成物)のみを分離する。分離は既存の固液分離技術を用いて行えばよく、例えば、遠心分離機、加圧濾過機を使用する方法があげられる。分離する際のフィルタは、市販のフィルタ、ガラスフィルタ、メンブレン、脱脂綿、金属、樹脂等を用いて行うことができる。本発明の放射性物質除去材料に含まれるポリマーを分離することができる孔径のものであれば、いかなるフィルタ、メンブレンを用いても良いが、一般的なポリマーの粒径を考慮して、孔径約0.1−100μmのものを使用することが好ましい。
分離により得た放射性物質を固着したポリマー(ポリマー組成物)は、焼却するなどの減容処理を行うことができる。ポリマーに固着させた放射性物質を環境に再度放出することがないように、減容処理や焼却処分には細心の注意を要するが、例えば上記に示した従来文献にて確立した方法を用いることができる(非特許文献1、非特許文献2等を参照のこと。)。
放射性物質を固着したポリマーを分離した後に得られた水は、放射性物質が実質的に完全に除去されている。したがって、放射性物質が含まれているが故に従来は移動することができなかった水を、再利用可能なものは再利用し、あるいは通常の方法、例えば海や河川に廃棄することができる。
この方法を、海水や河川水が放射性物質を含む場合への対処に応用することができる。すなわち、放射性物質を含有する海水や河川水に、本発明の放射性物質除去材料を投入し、所定の時間の経過後に本発明の放射性物質除去材料を回収することができる。上記の通り、本発明の放射性物質除去材料は海水中または河川水中に含有する放射性物質を固着しており、これを捕集網や回収装置を用いて回収すれば、環境に存在する放射性物質を直接回収することが可能となる。
本発明の放射性物質除去材料をカラムに充填し、放射性物質を含有した水をカラムに流通させて、放射性物質除去材料と放射性物質を含有する水とを接触させる方法により、放射性物質除去材料に放射性物質を固着させることも可能である。このようなカラム処理法では、一度に大量の放射性物質含有水を連続的に処理することができる。
なお、本発明の方法に使用する放射性物質を含有する水は、上述の放射性物質を少なくとも1種含有しているものである。放射性物質は、水中いかなる濃度で溶解していても良いが、通常、原子力関連施設等から排出されうる放射性物質汚染水は極微量(例えば0.00017ppm等)の放射性物質を含有している。このように放射性物質を極微量含有する水は、処理すべき放射性物質は極少量であるのに、水自体の体積が非常に大きくなる。このような汚染水を保管しておくことは非常に困難であるとともに環境への流出の危険性も増大する。よって、極微量に溶解している放射性物質を水から濃縮分離して、処理すべき放射性物質と、再利用可能な水とに分けることができれば、放射性物質の処理効率が上がる一方、かかる大量の水の問題も解決することができる。
本発明の放射性物質除去材料として、活性成分である、放射性物質と相互作用するポリマーを、たとえばシリカゲル、ポリマービーズ、イオン交換樹脂、発泡体、フィルム、メンブレン、各種格子状構造物及び網状構造物、多孔質物質などの担体に固定化させたものを好適に使用することもできる。たとえばシリカゲル、ポリマービーズ又はイオン交換樹脂等の固体担体に本発明で使用するポリマーを担持させたものをカラム内に積層し、ここに放射性物質を含有する水を常圧下または加圧下にて流し、当該ポリマーと相互作用させ、水中に含有された放射性物質を効果的に除去することが可能となる。あるいはフィルタ、メンブレンなどの固体担体に本発明で使用するポリマーを担持させたものを用いて、放射性物質を含有する水を常圧または減圧濾過することにより、水中に含有される放射性物質をメンブレン又はフィルタに固着させて、放射性物質を除去することが可能となる。あるいは発泡体、網状構造物、格子状構造物、多孔質物質などの固体担体に本発明で使用するポリマーを担持させたものを放射性物質を含有する水中、海水中、あるいは河川水中に投入して、当該固体担体の網状部分、格子状部分、あるいは孔部分に水を吸収させ、水中に含有された放射性物質を本発明のポリマーに固着させ、次いで、必要に応じて当該固体担体に圧力をかけて(たとえば搾る等の操作を行って)、放射性物質が除かれた水を得ることができる。
このように本発明で使用するポリマーを固体担体に固定化させた組成物は、放射性物質を含有する水からバッチ処理にて放射性物質を除去する方法に用いられる他、連続的に処理する方法にも非常に好適に用いられる。
このように本発明の放射性物質除去材料は、水中に含有された放射性物質を選択的に固着し、これを水中から除去することができる。本発明の放射性物質除去材料を使用することにより、微量の放射性物質が溶解しているが故に移動することができなかった水から、厳密かつ慎重な処理が必要な放射性物質のみを除去、濃縮することができるので、放射性物質の処理効率が飛躍的に高まる一方、効率よく回収された安全な水は通常の方法で処理するか、再利用することが可能となる。本発明の放射性物質除去材料を使用して、水に含有された放射性物質を除去する方法は、水中に放射性物質除去材料を投入・分散させ、攪拌などにより放射性物質を固着させ、これを分離するという比較的容易な方法であり、常温で行うことも可能であるため、放射性物質が大気中に拡散するおそれのない、安全な方法である。本発明の放射性物質除去材料として、放射性物質と相互作用するポリマーを各種固体担体に固定化させた物質を用いると、水に含有された放射性物質を連続的に除去することが可能となる。
なお、高分子材料は、放射線を照射するとポリマー主鎖や側鎖に断裂等の構造的な破壊が生じ、一般的には脆くなるなどの現象が観察される。本発明に使用するポリマーは、放射性物質に接触させるという用途を考慮すると、放射線の照射に耐えうる充分な強度を有している必要がある。本発明に使用するポリマーは、放射線を照射しても強度や放射性物質の固着性能が減殺することがなく、放射性物質除去材料という用途に充分使用できる。
放射性物質除去性能の評価法を模式的に説明する図面である。 放射性物質除去性能の別の評価法を模式的に説明する図面である。 放射性物質除去性能の別の評価法を模式的に説明する図面である。
本発明の放射性物質除去材料の活性成分としての、ポリマーの典型的な製造方法を模式的に示す:
上のスキームに従い、α−シクロデキストリンから本発明に使用するポリマーを製造する方法の具体例を説明する。
α−シクロデキストリン(以下、「α−CD」と称する。)を有機溶媒(例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等。好ましくは乾燥ピリジン)に分散させる。一方、二塩化テレフタロイルを有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン等。好ましくは乾燥テトラヒドロフラン)に溶解させ、これを先に用意したα−CD分散液に滴下する。この際、縮合反応による熱が発生するので、α−CD分散液を氷浴などで冷却しながら滴下することが望ましい。その後50〜100℃の湯浴に反応器をつけて、反応液を激しく撹拌する。反応終了後、湯浴をはずし、さらに必要に応じて冷却して反応容器内温を0〜10℃に下げ、水、多価アルコール類(トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、グルコース等)、多価アリールアルコール類(ヒドロキノン、フロログルシノール、ベンゼンジメタノール等)、または多価カルボン酸類(イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グルタミン酸等)を加え、さらに撹拌を続ける。得られた固体をアルコール類、水、アセトンなどの洗浄液体で洗浄し、乾燥すると、本発明で使用するポリマーを得ることができる。この際、溶媒として用いたピリジン等や、原料である二塩化フタロイルがメチル化したフタル酸ジメチル等の副生物がポリマー内に残存することを防止する観点から、得られたポリマーを、吸引濾過用漏斗上に溜め、ここにアルコール類/水混合溶媒を添加して吸引し、該漏斗上にアセトンを添加して吸引し、これらの工程を少なくとも2回以上繰り返す洗浄方法を採用することが望ましい。
本発明で使用するポリマーは、α−CDの他、β−及びγ−シクロデキストリンを用いても同様のポリマーを形成することができる。
本明細書では、このように得たポリマーを「TC3−WA−αCD」(α−CDと二塩化フタロイルとを1:3のモル比で反応させて得た縮合ポリマーの末端を水でエンドキャップしたポリマー)、「GC10−WA−βCD」(β−CDとジグリコリルクロリドとを1:10のモル比で反応させて得た縮合ポリマーの末端を水でエンドキャップしたポリマー)、「TC10−IA−βCD」(β−CDと二塩化フタロイルとを1:10のモル比で反応させて得た縮合ポリマーの末端をイミノ二酢酸でエンドキャップしたポリマー)、あるいは「TC10−TG−βCD」(β−CDと二塩化フタロイルとを1:10のモル比で反応させて得た縮合ポリマーの末端をトリエチレングリコールでエンドキャップしたポリマー)等と表す。これらはいずれも本発明の放射性物質除去材料の活性成分たるポリマーである。
[合成例1]α−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC3−WA−αCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥α-シクロデキストリン(以下、「α−CD」と称する。0.97 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)とを入れて、室温で15分間撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(0.61 g、3.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.11 g、6.0 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.28 gのTC3−WA−αCDが得られた。
IR 3445, 2979, 1716, 1268, 1096, 1044, 1016, 730 cm-1
[合成例2]α−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC5−WA−αCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥α−CD(0.97 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(1.02 g、5.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.18 g、10 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.52 gのTC5−WA−αCDが得られた。
IR 3423, 2971, 1716, 1268, 1098, 1044, 1017, 729 cm-1
[合成例3]α−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−WA−αCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥α−CD(0.97 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.36 g、20 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。2.14 gのTC10−WA−αCDが得られた。
IR 3480, 2985, 1717, 1268, 1097, 1045, 1017, 729 cm-1
[合成例4]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC3−WA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」と略す、1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(0.61 g、3.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.11 g、6.0 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.41 gのTC3−WA−βCDが得られた。
IR 3384, 2923, 1716, 1272, 1127, 1079, 1049, 731 cm-1
[合成例5]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC5−WA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(1.02 g、5.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.18 g、10 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.64 gのTC5−WA−βCDが得られた。
IR 3394, 2909, 1717, 1271, 1082, 1043, 1017, 730 cm-1
[合成例6]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−WA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.36 g、20 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。2.25 gのTC10−WA−βCDが得られた。
IR 3279, 2936, 1716, 1271, 1099, 1045, 1017, 729 cm-1
[合成例7]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンをイミノ二酢酸でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−IA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、イミノ二酢酸(2.66 g、20 mmol、東京化成工業)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。4.14 gのTC10−IA−βCDが得られた。
IR 3381, 2936, 1716, 1270, 1097, 1044, 1017, 730 cm-1
[合成例8]β−シクロデキストリンとイソフタロイルクロライドの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「IC10−WA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解したイソフタロイルクロライド(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.36 g、20 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。2.51 gのIC10−WA−βCDが得られた。
IR 3381, 2940, 1717, 1270, 1139, 1074, 1044, 728 cm-1
[合成例9]β−シクロデキストリンとジグリコリルクロライドの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「GC10−WA−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解したジグリコリルクロリド(1.71 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.36 g、20 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。2.02 gのGC10−WA−βCDが得られた。
IR 3380, 2946, 1747, 1243, 1136, 1077, 998 cm-1
[合成例10]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンをトリエチレングリコールでエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−TG−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチレングリコール(1.50 g、10 mmol、ALDRICH)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。3.32 gのTC10−TG−βCDが得られた。
IR 3381, 2928, 1717, 1270, 1096, 1043, 1017, 729 cm-1
[合成例11]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンをヘキサエチレングリコールでエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−HG−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、ヘキサエチレングリコール(2.82 g、10 mmol、ALDRICH)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。4.26 gのTC10−HG−βCDが得られた。
IR 3610, 2941, 1717, 1270, 1098, 1045, 1017, 730 cm-1
[合成例12]β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを2,2’−ビスフェノールでエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−BP−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、2,2’-ビフェノール(1.86 g、10 mmol、ALDRICH)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。3.57 gのTC10−BP−βCDが得られた。
IR 3610, 2937, 1719, 1271, 1099, 1046, 1017, 729 cm-1
[合成例13]γ−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC3−WA−γCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥γ−シクロデキストリン(以下、「γ−CD」と称する。1.30 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(0.61 g、3.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.11 g、6.0 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.55 gのTC3−WA−γCDが得られた。
IR 3385, 2922, 1715, 1271, 1149, 1080, 1018, 731 cm-1
[合成例14]γ−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC5−WA−γCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥γ−CD(1.30 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(1.02 g、5.0 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.18 g、10 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。1.77 gのTC5−WA−γCDが得られた。
IR 3386, 2923, 1712, 1269, 1149, 1081, 1017, 730 cm-1
[合成例15]γ−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンを水でエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−WA−γCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥γ−CD(1.30 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水(0.36 g、20 mmol)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。2.37 gのTC10−WA−γCDが得られた。
IR 3386, 2941, 1716, 1269, 1097, 1043, 1017, 729 cm-1
[比較合成例1]β−シクロデキストリンとtert-ブチルジメチルシリルクロリドの縮合シクロデキストリンポリマー(以下、「TBDMS−β−CD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック及びセプタムの付いた200mlの3つ口フラスコに、β-シクロデキストリン(5.0 g、4.4 mmol、和光純薬工業)と乾燥ピリジン(44 mL、和光純薬工業)とを入れた。フラスコを氷浴につけた後、乾燥ピリジン(26 mL)に溶解したtert-ブチルジメチルシリルクロリド(6.03 g、40 mmol、東京化成工業)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外し、室温で11時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水(200 mL)に注ぎ、析出してきた白い結晶を濾取した。この白い結晶をジクロロメタンに溶かし、水で洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた白い結晶をシリカゲルカラム精製とアセトンによる再結晶によりTBDMS−β−CD(2.3g、収率:27%)を単離した。
[比較合成例2]
β−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルの縮合シクロデキストリンをジエチレングリコールモノメチルエーテルでエンドキャップして得たポリマー(以下、「TC10−MG−βCD」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓の付いた200 mLの三つ口フラスコに、乾燥β−CD(1.13 g、1.0 mmol、含水量1%以下、純正化学)と特級ピリジン(50 mL、和光純薬工業)を入れて室温で15分撹拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(40 mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(2.03 g、10 mmol、東京化成工業)を30分かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(80℃)で3時間撹拌した。反応終了後、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(2.40 g、20 mmol、ALDRICH)を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過した後、得られた結晶を蒸留水(50 mL×3)、1級アセトン(50 mL×3、純正化学)の順で洗浄し、得られた固体を70℃で終夜真空乾燥した。4.26 gのTC10−MG−βCDが得られた。
IR 3605, 2933, 1715, 1260, 1105, 1040, 1006, 730 cm-1
[合成例16]γ線を照射したポリマーの合成−照射線量:0.61 kGy、使用脱イオン水量:5 mL)
本発明の放射性物質除去材料に使用するポリマーが、放射線の照射に耐えうるものであるかを確かめるために、以下の合成例では、本発明に使用するポリマーに放射線を照射した試料を作成することとした。
ねじ口試験管に、合成例1、6、7、9、10及び比較合成例1で得られたポリマー350 mg、(TC3−WA−αCD、TC10−WA−βCD、TC10−IA−βCD、GC10−WA−βCD、TC10−TG−βCD、TBDMS−aCD)を入れた後、5 mLの脱イオン水を入れた。準備した6本のねじ口試験管に0.61 kGyのγ線を照射した。γ線を照射したポリマーを吸引濾過した後、1級アセトン(50 mL、純正化学)で洗浄し、70℃で終夜真空乾燥した。約350 mgのγ線を照射したポリマー(TC3−WA−αCD−SS、TC10−WA−βCD−SS、TC10−IA−βCD−SS、GC10−WA−βCD−SS、TC10−TG−βCD−SS、およびTBDMS−βCD−SS)が得られた。
[合成例17」(γ線を照射したポリマーの合成−照射線量:0.61 kGy、使用脱イオン水量:15 mL)
ねじ口試験管に合成例1、6、7、9、10及び比較合成例1で得られたポリマー350 mg(TC3−WA−αCD、TC10−WA−βCD、TC10−IA−βCD、GC10−WA−βCD、TC10−TG−βCD、TBDMS−βCD)を入れた後、15 mLの脱イオン水を入れた。準備した6本のねじ口試験管に0.61 kGyのγ線を照射した。γ線を照射したポリマーを吸引濾過した後、1級アセトン(50 mL、純正化学)で洗浄し、70℃で終夜真空乾燥した。約350 mgのγ線を照射したポリマー(TC3−WA−αCD−SL、TC10−WA−βCD−SL、TC10−IA−βCD−SL、GC10−WA−βCD−SL、TC10−TG−βCD−SL、およびTMDMS−βCD−SL)が得られた。
[合成例18](γ線を照射したポリマーの合成−照射線量:3.91kGy、使用脱イオン水量:5 mL)
ねじ口試験管に合成例1、6、7、9、10及び比較合成例1で得られたポリマー350 mg(TC3−WA−αCD、TC10−WA−βCD、TC10−IA−βCD、GC10−WA−βCD、TC10−TG−βCD、TBDMS−βCD)を入れた後、5 mLの脱イオン水を入れた。準備した6本のねじ口試験管に3.91 kGyのγ線を照射した。γ線を照射したポリマーを吸引濾過した後、1級アセトン(50 mL、純正化学)で洗浄し、70℃で終夜真空乾燥した。約350 mgのγ線を照射したポリマー(TC3−WA−αCD−LS、TC10−WA−βCD−LS、TC10−IA−βCD−LS、GC10−WA−βCD−LS、TC10−TG−βCD−LS、およびTBDMS−βCD−LS)が得られた。
[合成例19](γ線を照射したポリマー合成−照射線量:3.91 kGy、使用脱イオン水量:15 mL)
ねじ口試験管に合成例1、6、7、9、10及び比較合成例1で得られたポリマー350mg(TC3−WA−αCD、TC10−WA−βCD、TC10−IA−βCD、GC10−WA−βCD、TC10−TG−βCD、TBDMS−βCD)を入れた後、15 mLの脱イオン水を入れた。準備した6本のねじ口試験管に3.91 kGyのγ線を照射した。γ線を照射したポリマーを吸引濾過した後、1級アセトン(50 mL、純正化学)で洗浄し、70℃で終夜真空乾燥した。約350 mgのγ線を照射したポリマー(TC3−WA−αCD−LL、TC10−WA−βCD−LL、TC10−IA−βCD−LL、GC10−WA−βCD−LL、TC10−TG−βCD−LL、およびTBDMS−βCD−LL)が得られた。
[実施例1](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(1):サンプル管法)
本発明の放射性物質除去材料の放射性物質除去性能を、以下の方法に従い、評価した。
脱イオン水に塩化セシウム(ALDRICH)を溶解し、セシウム水溶液(脱イオン水)を作製した。25 gのセシウム水溶液(脱イオン水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのセシウム水溶液(脱イオン水)を採取した。サンプル管に、上記合成例にて作製した各ポリマー(20 mg)を入れ、500 rpmで30分撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のセシウム濃度をICP発光分析装置で測定し、セシウムの吸着率を算出した。図1には、本評価法を模式的に説明する図を示した。使用したポリマーの種類と、セシウム吸着率の結果を表1に示した。
実施例1の方法にて、フェロシアン化鉄(大日精化工業株式会社)及びA型ゼオライト(東ソー株式会社)についてセシウム吸着率を測定した。結果を表1(比較)に示した。
[実施例2](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(2):シリンジ法)
本発明に使用するポリマーをシリンジに充填し、ここに放射性物質を含有する水を流通させることにより、簡易に放射性物質を除去することができることを確かめるために、実施例5を行った。なお、本実施例は、本発明に使用するポリマーをカラムに充填し、ここに放射性物質を含有する水を流通させる方法による放射性物質除去方法のモデルとなるものである。
脱イオン水に塩化セシウム(ALDRICH)を溶解し、セシウム水溶液(脱イオン水)を作製した。シリンジに、作製した各ポリマー(200 mg)を充填した後、20 gのセシウム水溶液(脱イオン水)を流した。ポリマーを充填したシリンジを通過した水溶液を回収した後、水溶液中のセシウム濃度をICP発光分析装置で測定し、セシウムの吸着率を算出した。図2には、この評価法を模式的に説明した図を示した。使用したポリマーの種類と、セシウム吸着率の結果を表2に示した。
実施例2の方法にて、フェロシアン化鉄(大日精化工業株式会社)、A型ゼオライト(東ソー株式会社)および脱脂綿(株式会社大和工場)についてセシウム吸着率を測定した。結果を表2(比較)に示した。
[実施例3](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(3):シリンジ法)
脱イオン水に塩化セシウム(ALDROICH)を溶解し、セシウム水溶液(脱イオン水)を作製した。シリンジに、γ線を照射したポリマー(200 mg、合成例16〜19)を充填した後、20 gのセシウム水溶液(脱イオン水)を流した。ポリマーを充填したシリンジを通過した水溶液を回収した後、水溶液中のセシウム濃度をICP発光分析装置で測定し、セシウムの吸着率を算出した。使用したポリマーの種類と、セシウム吸着率の結果を表3〜6にそれぞれ示した。
また、放射線を照射していない各ポリマーについても同様の実験を行った。結果を表7に示した。
[実施例4](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(4):サンプル管法) 本発明の放射性物質除去材料の放射性物質除去性能を、以下の方法に従い、評価した。
脱イオン水に塩化ストロンチウム(ALDRICH)を溶解し、ストロンチウム水溶液(脱イオン水)を作製した。25 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を採取した。サンプル管に、上記合成例にて作製した各ポリマー(20 mg)を入れ、500 rpmで30分撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のストロンチウム濃度をICP発光分析装置で測定し、ストロンチウムの吸着率を算出した。図3には、本評価法を模式的に説明する図を示した。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表8に示した。
実施例4の方法にて、フェロシアン化鉄(大日精化工業株式会社)及びA型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表8(比較)に示した。
[実施例5](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(5):サンプル管法)
実施例4にて最も良い吸着率を示したポリマー(合成例6)について、吸着時間を延長することにより吸着率を向上させることができるかどうかを測定した。
脱イオン水に塩化ストロンチウム(ALDRICH)を溶解し、ストロンチウム水溶液(脱イオン水)を作製した。25 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を採取した。サンプル管に、上記合成例6にて作製したポリマー(20 mg)を入れ、500 rpmで6時間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のストロンチウム濃度をICP発光分析装置で測定し、ストロンチウムの吸着率を算出した。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表9に示した。
実施例5の方法にて、A型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表9(比較)に示した。
[実施例6](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(6):サンプル管法)
実施例4にて最も良い吸着率を示したポリマー(合成例6)について、ポリマーの量を増やすことにより吸着率を向上させることができるかどうかを測定した。
脱イオン水に塩化ストロンチウム(ALDRICH)を溶解し、ストロンチウム水溶液(脱イオン水)を作製した。25 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を採取した。サンプル管に、上記合成例6にて作製したポリマー(200 mg)を入れ、500 rpmで30分間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のストロンチウム濃度をICP発光分析装置で測定し、ストロンチウムの吸着率を算出した。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表10に示した。
実施例6の方法にて、A型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表10(比較)に示した。
[実施例7](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(7):サンプル管法)
実施例4にて最も良い吸着率を示したポリマー(合成例6)について、ポリマーの量を増やし、かつ吸着時間を延長することにより吸着率を向上させることができるかどうかを測定した。
脱イオン水に塩化ストロンチウム(ALDRICH)を溶解し、ストロンチウム水溶液(脱イオン水)を作製した。25 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのストロンチウム水溶液(脱イオン水)を採取した。サンプル管に、上記合成例6にて作製したポリマー(200 mg)を入れ、500 rpmで6時間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のストロンチウム濃度をICP発光分析装置で測定し、ストロンチウムの吸着率を算出した。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表11に示した。
実施例7の方法にて、A型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表11(比較)に示した。
[実施例8](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(8))
実施例4にて最も良い吸着率を示したポリマー(合成例6)が、地下水中の放射性物質を除去することができるかどうかを確かめるために、実施例8を行った。
国立大学法人大阪大学構内より採取した地下水に塩化ストロンチウム(ALDRICH)を溶解し、ストロンチウム水溶液(地下水)を作製した。25 gのストロンチウム水溶液(地下水)を50 mLのサンプル管に入れた後、5 gのストロンチウム水溶液(地下水)を採取した。サンプル管に、上記合成例6にて作製したポリマー(200 mg)を入れ、500 rpmで30分間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、水溶液を回収した。回収した水溶液中のストロンチウム濃度をICP発光分析装置で測定し、ストロンチウムの吸着率を算出した。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表12に示した。
実施例8の方法にて、A型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表12(比較)に示した。
[実施例9および10](合成したポリマーの放射性物質除去性能の評価(9)および(10))
実施例8の方法にて、ポリマーの量を500mg(実施例9)、ならびに1g(実施例10)に増やした。ポリマーの種類と、ストロンチウム吸着率の結果を表13(実施例9)ならびに表14(実施例10)に示した。
実施例9および10の方法にて、A型ゼオライト(東ソー株式会社)についてストロンチウム吸着率を測定した。結果を表13(比較)(比較例9)ならびに表14(比較)(比較例10)に示した。
[補足説明]
なお、上記各実施例1〜10における分析方法は、以下の通りである:
合成した各ポリマーの性状は、Spectrum 100 FT-IR Spectrometer (PerkinElmer)で、赤外分光法により測定し、同定した。また、水溶液中のセシウムおよびストロンチウム濃度は、ICPS-7510(SHIMADZU)を使用し、IPC(誘導結合プラズマ)発光分析法により行った。
[実施例ならびに比較例の考察]
サンプル管中のセシウム水溶液に本発明のポリマーを直接添加し攪拌する方法(サンプル管法)により、セシウムを吸着することができた。しかしながら、フェロシアン化鉄やA型ゼオライト等、無機物質の吸着率には及ばなかった。これに対し、シリンジに本発明のポリマーを充填し、セシウム水溶液を流す方法(シリンジ法)によると、フェロシアン化鉄やA型ゼオライトに匹敵するレベルのセシウムを吸着することができた。本発明のポリマー末端のカルボキシル基と、水溶液中のセシウムイオンは、吸着と脱着を繰り返していると考えられ、本発明のポリマーに一度吸着されたセシウムイオンがすぐに脱着してしまう可能性がある。本発明のポリマーを使用して、サンプル管法により無機物質と同等レベルにてセシウムイオンを吸着除去することは、困難である可能性があると推察される。
一方、シリンジ法では、充填されたポリマーに一度吸着されたセシウムイオンが脱着しても、直ちに近傍のポリマーに再吸着されるため、ポリマーの保持能力が高いと考えられる。
本発明のポリマーにγ線を照射しても、セシウムイオンの吸着量の低下は見られなかった。本発明のポリマーは、ポリマー表面に放射線が照射されるような環境においても、劣化することなく放射性物質を吸着除去することができる。
1価イオンのセシウムとは異なり、2価のイオンであるストロンチウムは、本発明のポリマーを用いたサンプル管法にて効果的に吸着させることができた。これは2価のイオンであるストロンチウムは、一度ポリマーに吸着されるとほとんど脱着しないからであると推察される。そして、本発明のポリマーの量や吸着時間を調整することにより、A型ゼオライトとほぼ同等の吸着率を得ることができることがわかった。
本発明のポリマーは地下水に溶解したストロンチウムイオンを吸着することができた。本発明のポリマーを用いて、環境中に放出された放射性ストロンチウムを吸着除去することが可能である。

Claims (2)

  1. シクロデキストリン類に、テトラヒドロフランに溶解した、テレフタル酸、イソフタル酸、ジクリコ−ル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物を滴下することにより反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーに、水、トリエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールから選択される多価アルコール類、2,2’−ビスフェノールから選択される多価アリールアルコール類またはイミノ二酢酸から選択される多価カルボン酸を反応させて得たポリマーを含む、放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去材料。
  2. シクロデキストリンに、テトラヒドロフランに溶解した、テレフタル酸、イソフタル酸、ジクリコ−ル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物を滴下することにより反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーの末端に、水、トリエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールから選択される多価アルコール類、2,2’−ビスフェノールから選択される多価アリールアルコール類またはイミノ二酢酸から選択される多価カルボン酸を反応させて得たポリマーを含有する、放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去材料と、放射性セシウムまたは放射性ストロンチウムを含有する水とを接触させ、該水に含有された放射性セシウムまたは放射性ストロンチウムを該放射性セシウムまたは放射性ストロンチウム除去材料に固着させて、放射性セシウムまたは放射性ストロンチウムを含有しない水を得ることを特徴とする、方法。
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