明 細 書 塩の水溶液から不純物含量を低減する方法 技術分野
本発明は、水溶性無機塩のような所定の物質を溶解した 7溶液中に含まれる微量 不純物、特には不純物イオンを、異常吸着クロマト現象を利用して除去する方法、 前記の方法を利用して純度 9 9 . 9 9質量%以上という精製塩化ナ卜リウ ム結晶を製造する方法、 力リゥ厶イオン含量の少ない精製塩化ナ卜リゥ ム結晶を水に溶解した、 カリゥ厶イオンに基づく機能障害が抑制された 低力リゥ厶医用食塩水及びその製造方法並びに使用時に必要に応じ水に 溶解して藻類育成用人工海水を調製するための塩化ナ卜リゥ厶組成物及 びその製造方法に関するものである。 背景技術
2種以上の成分を含む混合物中の各成分を分離する方法としては、 蒸 留法、 再結晶法、 溶媒抽出法、 非溶剤洗浄法などが知られているが、 比 較的簡単な操作で、 各成分を高純度で分離できることから、 最近はクロ マ卜グラフィ一法 (以下、 クロマ卜と略称する) が工業的に注目されつ つある。
このクロマ卜グラフィ一法は、 固体吸着剤を充填したカラムに、 分離 すべき混合物を所定の溶剤に溶解した溶液を通過させることによって行 われるが、 これは溶液中の各成分が固体吸着剤側 (固定相) と移動液体 側 (移動相) との間で異なる割合で分配されるために、 各成分ごとに移 動速度に差を生じる現象、 いわゆる吸着クロマト現象を利用して分離す るものである。
このような吸着クロマ卜現象を利用して、 各成分が濃縮された画分を
連続的に取得する方法は、 各分野において工業的に広く行われており、 例えば吸着剤を充填したカラムに複数の成分の混合物と脱着剤とを交互 に供給して、 各成分の吸着帯が隣接部分で重なるように調整しながら行 う方法 (日本国特開昭 5 7 - 2 0 7 5 0 7号公報)、 所望の成分を含む 画分から脱着剤を除いたものと原料混合物とを逐次的にカラムに供給す る方法(日本国特開昭 5 8— 2 0 2 0 8号公報)などが提案されている。 一方において、 吸着クロマ ト現象では、 吸着剤の選択性が重要なファ クタ一となるため、 それぞれの目的に応じて種々の吸着剤が開発されて いる。 例えば、 力リゥムを選択的に吸着するものとして、 含水黒色系マ ンガン酸化物を酸で抽出した吸着剤 (曰本国特開平 8— 3 8 8 8 7号公 報)、 特定の物性をもつバインダーレス 3 A型ゼ才ライ 卜ビーズ吸着剤 (日本国特開 2 0 0 2— 1 1 9 8 4 9号公報) などが提案されている。 しかしながら,、 一般に水溶液中 (こ微量に含まれる不純物は、 主成分と 類似した性質を有することが多く、 吸着剤における主成分と不純物との 選択係数が小さい上に、 この選択係数の向上には理論的にも限度がある ため、 主成分と不純物との分離は、 非常に困難である。
すなわち、 通常の吸着クロマト現象においては、 混合物溶液の所定の 成分に対し選択性を示す吸着剤を固定相として、 また混合物溶液を移動 相として用い、 吸着剤を充填したカラムに混合物溶液を流し、 通過した 画分を経時的に分取して、 所定の成分が濃縮された画分を捕集するので あるが、 この際の画分中の所定の成分の濃度についてみると、 これは原 溶液中の該成分の濃度 (以下初めの濃度という) を超えることはなく、 吸着剤の吸着容量と体積により決定される吸着量に達するまでは、. 吸着 剤による吸着が続けられ、 溶液中の該成分の濃度は次第に減少し、 最後 に吸着量が飽和して吸着能力を失い、 通過する溶液中の濃度は一定にな 本発明の第一の態様は、 上記した通常の吸着クロマ卜現象とは全く別
異の吸着クロマト現象を利用して、 水溶性化合物水溶液中に存在する微 量の不純物、 特には不純物イオンを効率よく除去し、 該水溶性化合物を 高純度の状態で収得することを目的としてなされたものである。
次に、 これまで、 海水や、 かん水のような塩化ナトリウム希溶液から 塩化ナ卜リゥム結晶を得るには、 この溶液に石灰石、 大理石、 方解石な どの粒子を接触反応させる方法 (日本国特開昭 5 3 - 9 1 1 5 1号公 報)、 回転ドラム型乾燥機のドラム本体に火炎を吹き込み、 その外表面 に海水を吹き付けて水分を蒸発させて結晶を析出させる方法 (曰本国特 開 2 0 0 0— 2 2 8 9 6 4号公報)、 内側水槽に海水を供給し、 この内 側水槽内の海水面に熱風を吹き付けると共に、 内側水槽内の海水を内側 水槽の外側に設けた外側水槽の温水で加熱し、 水分を蒸発させて製塩す る方法 (曰本国特開 2 0 0 1 — 1 5 8 6 1 6号公報) などが知られてい る
しかしながら、 このようにして得られる塩化ナトリウム結晶には、 力 リウムイオン、 マグネシウムイオン、 カルシウムイオンが不純物として 含まれているため、 高純度が要求される工業用原料として使用する場合 には、 これを精製して純度を向上させる必要がある。
これまで、 このような粗製塩化ナ卜リ ゥムの精製方法としては、 飽和 食塩水中で天日塩の粒子を流動させながらふるい分けし、 粒径の小さい 不純物の多い部分を除去する方法 (曰本国特開平 8— 1 1 9 6 2 7号公 報)、 塩化力リゥ厶及び硫酸イオンで汚染された塩化ナ卜リゥ厶ブライ ンにカルシウム化合物を添加して、 硫酸イオンを硫酸カルシウムとして 沈殿させて除去し、 その残液から塩化ナトリウム結晶を析出させる方法 (日本国特表 2 0 0 2 - 5 2 3 3 3 0号公報) などが提案されている。 —方、 固体吸着剤を用い、 通常の吸着クロマト現象を利用して、 2成 分以上の混合物から各成分が濃縮した画分を連続的に取得する方法は 種々提案されており、 そのうちのいくつかは既に工業的にも行われてい
る (日本国特開昭 5 7— 2 0 7 5 0 7号公報、 同 5 7— 2 0 7 5 0 8号 公報及び同 5 8— 2 0 2 0 8号公報)。
そして、 これらの吸着クロマ卜現象を利用する分離方法においては、 吸着剤の選択が重要であり、 このため所望成分に対し、 高い選択係数を 示す多数の無機イオン交換体 (日本国特開平 3 - 1 5 3 5 2 2号公報、 同 8— 3 8 8 8 7号公報、 特開 2 0 0 2— 1 1 9 8 4 9号公報) や、 キ レート樹脂(日本国特開平 5 - 1 8 6 2 1 5号公報)が開発されている。 しかしながら、 塩化ナ卜リゥム中に通常不純物として含まれている力 リウ厶イオン、 マグネシウムイオン、 カルシウムイオンは、 ナトリウム イオンと性質が類似しているため、 溶液中のナトリウムイオンから分離 しにくい上に、 結晶化に際して塩化ナ卜リゥム結晶の結晶格子中に入り 込んだり、 その結晶表面に強固に付着し、 簡単には除去されない。
したがって、 通常の吸着クロマ卜現象を利用して塩化ナ卜リゥム結晶 を精製する場合、 精製物の純度が制限されるのを免れない。
本発明の第二の態様は、 このような事情のもとで、 本発明の第一の態 様である水溶性化合物水溶液中に含まれる微量不純物イオンを除去する 方法、 すなわち、 従来の吸着クロマ卜現象の代りに、 それとは全く異な つた挙動を示す異常クロマ卜現象を利用して、 純度 9 8質量%以上、 特 に純度 9 9 . 9 9質量%以上の精製塩化ナ卜リゥム結晶を得る方法を提 供することを目的としてなされたものである。
本発明の第三の態様について述べると、 食塩、 すなわち塩化ナ卜リウ 厶は、 N a +や C 1 —の欠乏による種々の症状を回復するための栄養補 給剤、 注射剤溶解のための体液等張液、 リンゲル液、 ロック液などの生 理液として用いられるほか、 皮膚、 創傷、 粘膜の洗浄、 湿布、 医療用器 具の洗浄など多くの医療用分野にわたって広く用いられている。
ところで、 食塩は主として海水、 かん水、 岩塩、 原塩から製造される が、 これらは塩化ナトリウムとともにカリウムイオンを含んでいるため,
得られる食塩中に力リ ゥムイオンが混合してくるのを避けられない。 この力リ ゥムイオンは、 人体における細胞内陽イオンの大部分を占め、 平均約 1 5 0 m E q /リ ツ トルの濃度で存在し、 また血清中にも通常 3 . 5〜5 . O m E q /リ ッ トルの濃度で含まれている。 そして、 この血清 中のカリ ウムイオン濃度は比較的低いが、 その変化が細胞内外の力リ ウ ムイオン濃度比に与える影響は大きく、 さらに膜電位を介して細胞の機 能、 特に神経、 筋肉の機能に重要な影響を与える。 またこのカリウムィ オンは、 細胞内で起る様々の酵素反応にも必須の因子であり、 タンパク 質合成、 グリコ一ゲン合成において重要な役割を果している。
このカリ ウムイオンの体内における濃度は、 主として腎臓によるカリ ゥ厶イオン排泄量の調節に依存しているが、 大量の力リ ゥムイオンの摂 取、 細胞内から細胞外へのカリ ウムイオンの移動量の増大、 腎臓のカリ ゥムイオン排泄機能の低下などによって、 血清力リ ゥムイオン濃度が 5 . 0 m E q /リ ツ トル以上になると、 いわゆる高力リ ゥ厶血症となり、 筋 の弛緩性麻痺、 四肢の知覚障害、 下肢重感などの症状をひき起すことが 知られている (大久保昭行編集、 「臨床検査ガイ ド ' 9 5」、 文光堂、 1 9 9 5年、 p . 2 9 3— 2 9 8 )。
したがって、 カリ ゥムイオンの外部からの摂取はできるだけ避けるこ とが望ましいが、 現在市販されている医療用食塩は、 それを 2 0質量% 水溶液に調製したときの力リ ゥムイオン含有量は、 平均 0 . 1 ないし 1 2 m g /リ ツ トルと高く、 また通常使用されている生理食塩水の場合も 平均 0 . 3 m g /リッ トルと高いのが現状である。
ところで、 水溶液中の力リ ゥ厶イオン濃度を低下させるには、 ゼ才ラ ィ 卜のような無機ィオンの選択的吸着作用を有する吸着剤を充填した力 ラムに、 該水溶液として通過させるのが最も簡単な方法であるが、 従来 のゼ才ライ 卜におけるナ ト リ ウムイオンに対するカリ ゥ厶イオンの選択 係数の理論値は約 1 0 0なので、 高濃度塩化ナト リ ウム水溶液中のカリ
ゥ厶イオンの除去には用いることができなかった。
本発明の第三の態様は、 このような事情のもとで、 外部からの力リゥ ムイオンの摂取を抑制し、 高力リゥ厶血症の発症を防止するために、 力 リゥムイオン含有量の低い精製塩化ナ卜リゥム結晶を用い、 これを水に 溶解してなる低力リゥム医用食塩水を提供することを目的としてなされ たものである。
本発明の第四の態様について述べると、 一般に、 藻類育成用人工海水 は、 天然海水の組成に近い組成に調製されている。 そして、 天然海水は. その 1 k g中に各種無機塩類を約 3 5 g含んでおり、 その主なイオンと 化合物の含有量は、 表 1 に示すとおりである (日本海水学会 . 日本ソル ト - サイエンス研究財団共編、 「海水の科学と工業」、 1 9 94年、 p . 28 )。
表 1
イオンと化合物の種類 含有量 ( g )
N a + 1 0. 5 5 6 1
M g+ + 1 . 27 20
C a+ + 0. 400 1
K + 0. 3 800
S r + + 0. 0 1 3 3
C 1 ― 1 8. 9 7 9 9
S 04— 2. 648 6
H C 03- 0. 1 3 97
B r " 0. 0646
F _ 0. 00 1 3
H 3 B O 3 0. 0 2 60
これらのイオンと化合物のほか、 天然海水には微量元素として、 リチ ゥ厶、 ネオン、 ケィ素、 リ ン、 アルゴン、 チタン、 バナジウム、 クロム, マンガン、 鉄、 コバル 卜、 ニッケル、 銅、 亜鉛、 ヒ素、 セレン、 ク リプ 卜ン、 ルビジウム、 モリブデン、 銀、 カ ドミゥ厶、 アンチモン、 ョゥ素, セシウム、 タングステン、 ウランなどが含まれている (気象庁編、 「海 洋観測指針」、 1 9 9 0年、 p . 1 4 7 )。
したがって、 藻類育成用人工海水は、 これらのイオンを生成する無機 塩を、 水に所定の割合で溶解して調製されるが、 その主要成分は塩化ナ ト リウムであり、 添加する無機塩の約 6 0〜7 0質量%を占めている。 しかしながら、 通常、 塩化ナ トリ ウム中には、 難溶解物質として、 硫 酸カルシウム、 炭酸カルシウム、 塩基性塩化マグネシウムが含まれてお り、 これらが人工海水の濁度を上昇して、 光の透過を阻止し、 藻類の成 長を妨げたり、 あるいは藻類表面に付着して藻類の成長を抑制する原因 となっていた。
このような難溶解物質の生成を防止するために、 塩基性塩化マグネシ ゥ厶の発生源であるマグネシウムイオンや炭酸力ルシゥ厶の発生源であ るカルシウムイオンを塩化ナト リゥ厶水溶液からソ一ダ灰のような薬品 を添加して除去する方法が試みられたが、 大量の塩化ナト リ ゥ厶を処理 するには、 大規模な設備を必要とする上に、 処理に長時間を要すること が大きな問題になっていた。
本発明の第四の態様は、 このような事情のもとで、 藻類育成用人工 海水の調製に用いたときに、 海水の汚濁や藻類の成育を妨げる原因とな る難溶解物質を生成することのない塩化ナ 卜 リ ゥム組成物を提供するこ とを目的としてなされたものである。 発明の開示
通常、 クロマ 卜グラフィ一法により混合物溶液から特定成分を分離す
る場合、 該成分に対して選択性を示す吸着剤を固定相として、 また混合 物溶液を移動相として用い、 吸着剤を充填したカラムに混合物溶液を流 し、 通過した画分を経時的に分取して、 所定の成分が濃縮された画分を 捕集するのであるが、 この際の画分中の所定の成分の濃度についてみる と、 これは原溶液中の該成分の濃度 (以下初めの濃度という) を超える ことはなく、 吸着剤の吸着容量と体積により決定される吸着量に達する までは、 吸着剤による吸着が続けられ、 溶液中の該成分の濃度は次第に 減少し、 最後に吸着量が飽和して吸着能力を失い、 通過する溶液中の濃 度は一定になる。
本発明者らは、 水溶性化合物水溶液から、 その中に含まれている微量 の不純物イオンを効率よく除去するために鋭意研究を重ねた結果、 あら かじめ不純物イオンと同種のイオンを吸着している又は吸着させた吸着 剤を充填した吸着カラムを用いて、 これに処理すべき水溶液を通液すれ ば、 異常吸着クロマ卜現象を生じ、 原溶液中の不純物イオン濃度よりも 高い不純物イオン濃度を有する溶出液画分が形成され、 これを除去する ことにより通過後の最終処理液として、 微量不純物イオンが除かれた純 度の高い水溶性化合物を含む水溶液が得られることを見出し、 この知見 に基づいて本発明の第一の態様を完成するに至った。
すなわち、 本発明の第一の態様は、 少なく とも 1種の微量不純物ィ才 ンを含有する水溶性化合物水溶液を、 その不純物イオンを選択的に吸着 する吸着剤を充填したカラムに通して、 不純物イオンを除去するに当り 異常吸着クロマ卜現象を起させて、 原溶液中の微量不純物イオン濃度よ りも高い不純物イオン濃度を有する溶出液画分を形成させ、 該画分を除 去することを特徴とする溶液中の微量不純物イオン除去方法を提供する ものである。
本発明者らは、 水溶性化合物として塩化ナ卜リゥ厶に注目し、 その水 溶液から、 その中に不純物として含まれているカリウムイオン、 マグネ
シゥ厶イオン、 カルシウムイオンを効率よく除去するために銳意研究を 重ねた結果、 あらかじめこれらのィオンと同種のイオンを吸着した吸着 剤を用いて、 これに処理すべき不純物イオン含有塩化ナ ト リゥ厶水溶液 を通液すれば、 異常吸着クロマ ト現象を生じ、 原溶液中の微量不純物ィ 才ン濃度よりも高い不純物イオン濃度を有する溶出液画分が形成され、 該画分を除去することにより通過後の最終処理液として、 不純物イオン が除かれた塩化ナ卜リゥムを含む水溶液画分が得られるので、 これから 塩化ナ トリ ゥム結晶を晶出させ、 固液分離工程、 乾燥工程を行うと、 高 純度の塩化ナ 卜 リ ゥム結晶を分離回収しうることを見出し、 この知見に 基づいて本発明の第二の態様を完成するに至った。
すなわち、 本発明の第二の態様は、 カリ ウムイオン、 マグネシウムィ オン及びカルシウムイオンの中から選ばれた少なく とも 1種のイオンを 微量不純物イオンとして含有する固形分含有量 5 0 g / U ッ トル以上の 濃厚塩化ナ卜 リ ゥム水溶液を、 ( A ) その中に含まれているカリ ウムィ オン、 マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの中から選ばれた少な く とも 1 種のイオンに対して選択的な吸着性を示す吸着剤を充填した力 ラムに通液する工程、 ( B ) 異常吸着クロマ 卜現象を利用して微量不純 物イオンを除去する工程、 (C ) 次いでこの処理液から塩化ナ ト リ ウム を晶出させて、 固液分離する工程及び ( D ) その固体分を乾燥する工程 を包含することを特徴とする精製塩化ナ 卜 リ ゥム結晶の製造方法を提供 するものである。
本発明者らは、 さらにカリゥムイオン含有量の低い塩化ナ ト リ ウムを 得るために種々研究を重ねた結果、 海水、 かん水、 岩塩又は原塩から調 製した塩化ナ 卜 リゥムの水溶液を力リ ゥ厶イオンに対し選択的な吸着性 を示す吸着剤と、 カリウムイオン濃度が所定値以下になるまで接触させ たのち、 水を除く ことにより従来の市販塩化ナ 卜 リゥ厶の力リゥムィ才 ン含有量よりもはるかに低い力リ ゥムイオン含有量の塩化ナ 卜 リ ゥム結
晶が得られることを見出し、 この知見に基づいて本発明の第三の態様を 完成するに至った。
すなわち、 本発明の第三の態様は、 2 0質量%濃度の水溶液としたと きに、 力リ ゥムイオン濃度が 0 . 0 7 m g Zリ ヅ トル未満になる精製塩 化ナトリ ウム結晶を用い、 これを水に溶解してなる低カリ ウム医用食塩 水、 及び力リ ゥ厶イオン含有塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液を、 カリ ウムイオン を選択的に吸着する吸着剤と接触させる工程、 力リ ゥ厶イオン濃度が低 減された溶出液から塩化ナ 卜リ ゥム結晶を晶出させる工程、 塩化ナ 卜 リ ゥム結晶を分取し、 乾燥する工程及びこのようにして得た精製塩化ナ ト リゥム結晶を水に溶解する工程を包含することを特徴とする 2 0質量 °/0 塩化ナ卜 リゥム水溶液としたときのカリ ゥ厶イオン濃度が 0 . 0 7 m g /リ ッ トル未満の塩化ナ 卜リゥムを含む医用食塩水の製造方法を提供す るものである。
一方、 本発明者らは、 藻類育成用人工海水について種々研究を重ねた 結果、 難溶解物質の発生原因が原料として用いる塩化ナ ト リウムの全製 造工程の中で乾燥工程前の塩化ナト リ ゥ厶中に含有されるマグネシウム イオン及び場合によりカルシウムイオンにあること、 これらのイオンを 所定濃度以下に減少すれば、 難溶解物質に起因する トラブルを抑制しう ることを見出し、 この知見に基づいて本発明の第四の態様を完成するに 至った。
すなわち、 本発明の第四の態様は、 2 0質量%濃度の水溶液としたと き、 その中のマグネシウムイオン濃度が 1 0 p p m以下になる低マグネ シゥ厶塩化ナ 卜 リ ゥ厶結晶を用い、 それに対し、 藻類生育に必要な無機 成分の必要量を配合してなる藻類育成用の人工海水調製用塩化ナ卜 リ ゥ 厶組成物、 及び海水、 かん水あるいは岩塩又は原塩の水溶液 (以下原料 塩化ナ卜 リゥム水溶液という) から上記塩化ナ トリゥム組成物を製造す るに際し、 マグネシウムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウムィ
オンを不純物イオンとして含有する原料塩化ナ卜 リ ゥム水溶液をマグネ シゥムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウムイオンを選択的に吸 着する吸着剤を充填したカラムに通液して、 マグネシウムイオン又はマ グネシゥム及びカルシウムイオンを該水溶液から除去することにより、 2 0質量%水溶液としたときのマグネシウムイオン含有量又はマグネシ ゥ厶イオン含有量とカルシウムイオン含有量のいずれもが 1 0 p p m以 下に低減された塩化ナ卜リ ゥ厶水溶液を得る工程、 該水溶液から塩化ナ 卜 リ ゥムを分離し、 固形の塩化ナト リ ゥ厶を得る工程及び該固形の塩化 ナト リ ゥムに藻類生育に必要な無機栄養成分を配合する工程を包含する ことを特徴とする藻類育成用の人工海水調製用塩化ナ 卜 リゥ厶組成物の 製造方法を提供するものである。 図面の簡単な説明
図 1 は実施例 1 で得た力リ ゥ厶イオン濃度溶出曲線を示すグラフであ る。
図 2は実施例 2で得た力リ ウ厶イオン、 マグネシウムイオン及びカル シゥ厶イオンの濃度溶出曲線を示すグラフである。
図 3は実施例 3におけるカラム体積に対する溶出液体積の比と力リウ ムイオン濃度との関係を示すグラフである。 .
図 4は実施例 4におけるカラム体積に対する溶出液体積の比と各成分 濃度との関係を示すグラフである。
図 5は実施例 5における 3 0質量%塩化ナ卜リ ゥム水溶液についての 力リゥムイオン濃度の溶出曲線を示すグラフである。
図 6は参考例 2における塩化ナ卜 リゥ厶水溶液中のマグネシウムィ才 ン及びカルシウムイオンの溶出曲線を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
一般に、 少なく とも 1種の微量不純物を含む水溶性化合物水溶液、 例 えば微量の力リ ゥ厶イオンを含む塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液を、 力リ ゥ厶ィ オンを選択的に吸着する吸着剤、 例えばアンモニゥムイオン型ゼ才ライ 卜を充填したカラムに通す際に、 この吸着剤にあらかじめ微量不純物と 同種のイオン、 すなわちカリ ウムイオンを吸着させておく と、 主成分た るナト リ ウムイオンが、 細孔中に存在する力リウムィオンと置換し、 ナ 卜 リゥムイオンと置換した力リ ゥムイオンが水溶液中に不純物として含 まれるカリ ゥムイオンとともに流出し、 もともと水溶液中に含まれてい るカリ ウムイオンの濃度よりも高濃度の画分が得られる。 このような異 常吸着クロマ 卜現象が起る機構はまだ十分には解明されていない。 本発明の第一態様は、 このような異常吸着クロマ ト現象を利用して、 水溶性化合物水溶液中に含まれる微量不純物イオンを除去して、 純度の 向上した水溶性化合物を得る方法である。 本発明の第二ないし第四態様 の方法では、 前記の方法を利用して塩化ナト リ ゥ厶水溶液中に含まれる カリウムイオン、 マグネシウムイオン、 カルシウムイオンのような微量 不純物イオンを除去して、 純度の向上した塩化ナ ト リ ゥム結晶を得る。 異常吸着クロマ ト現象は、 通常、 以下の過程の存在により特徴づけら れている。 すなわち、 あらかじめ除去されるべき微量不純物と同種のィ オンを含む吸着剤を充填したカラムを用いてクロマ トグラフィーを行つ た際に、 溶出液画分は次の経過をたどる。
( 1 ) カラムに微量不純物を含む所定物質の濃厚溶液を導入後、 カラム からの溶出液体積がカラム体積の 5倍に達するまでに、 該微量不純物が 富化された溶出液画分を生じる段階、
( 2 ) 次いでその微量不純物が単調減少する溶出液画分を生じる段階、 ( 3 ) 引き続いて該微量不純物濃度が初濃度 (原液中の濃度) よりも小 さな値で一定となる溶出液画分を生じる段階、
( 4 ) さらに引き続いて該不純物濃度が初濃度よりも小さい値で単調増 加する溶出液画分を生じる段階、 及び
( 5 ) 場合により該不純物濃度が初濃度よりも大きい値となる溶出液画 分を生じる段階。
なお、 本発明の不純物除去方法においては、 上記の ( 1 ) ないし
( 5 ) の過程のうちの ( 1 ) の過程を欠く異常吸着ク口マ 卜現象 (以下 擬似異常吸着クロマ 卜現象という) についても同様に利用可能である。 本発明方法で処理される微量不純物を含有する水溶性化合物水溶液と しては、 接触反応により得られる微量触媒成分を含む反応混合物水溶液. 微量モノマーを含むオリゴマー水溶液などを挙げることができるが、 好 ましいのは、 微量不純物を含む無機塩水溶液、 例えば対応するカリ ウム イオン、 リチウムイオン、 マグネシウムイオン、 カルシウムイオンを微 量不純物として含む硫酸ナ 卜リ ゥ厶水溶液、 硝酸ナ トリゥム水溶液、 リ ン酸ナ卜リゥ厶水溶液、 特にハロゲン化ナ 卜 リ ゥム水溶液、 中でも塩化 ナト リ ウム水溶液である。
この場合の各水溶性化合物水溶液の濃度としては、 その水溶性化合物 の種類、 使用する吸着剤の種類、 クロマ 卜グラフィ一条件、 例えば温度 圧力、 カラムへの通液速度などにより変わるが、 通常は 1 質量%を下限 とし、 上限は飽和濃度の範囲内、 好ましくは 1 〜3 5質量%の範囲内で 選ばれる。
本発明の第二態様の精製塩化ナ 卜 リ ゥム結晶を得るためには、 塩化ナ トリ ゥム水溶液の濃度は、 より好ましくは 2〜3 0質量%の範囲内で、 通常は固形分含有量 5 0 g Zリ ツ トル以上で選ばれる。
本発明の第三態様の医用食塩水に用いる低力リ ゥム精製塩化ナ卜 リ ウ 厶結晶を得るためには、 塩化ナ ト リ ウム水溶液の濃度は、 より好ましく は 3〜3 0質量%の範囲で選ばれる。
水溶性化合物水溶液中に主成分以外の成分として含まれる微量不純物
の濃^としては、 主成分の水溶性化合物の濃度の 2 0分の 1 以下、 好ま しくは 5 0分の 1 以下が望ましい。
本発明方法において用いられる吸着剤としては、 除去しょうとする水 溶液中の微量不純物の種類により左右されるが、 不純物が金属イオンの 場合は、 陽イオン型ゼ才ライ 卜、 例えばアンモニゥムイオン型ゼ才ライ ト、 H +型天然ゼ才ライ 卜などや力チ才ン交換樹脂が用いられる し、 微 量不純物が有機物の場合は、 シリカゲル、 アルミニウム才キシ ド、 活性 炭、 セルロース、 化学修飾シリカゲル、 セフアデヅクス、 ポリアクリル アミ ドゲルなどが用いられる。 これらの吸着剤は通常粒怪 0 . 2 At m〜 2 . 5 m m、 好ましくは 0 . 1 ~ 2 . 5 m mの粒子として用いられる。 不純物が力リウ厶イオン、 マグネシウムイオン又はカルシウムイオン である場合は、 それらに対して優れた吸着性を示すイオン交換性物質、 例えばアンモニゥ厶イオン型ゼ才ラィ 卜やセルロース性イオン交換体や セフアデックスイオン交換体などが好適である。 これらは通常粒径 0 . 2〜2 . 0 m mの粒子としてクロマ トグラフィー管、 すなわちカラム中 に充填して用いられる。
特にカリ ゥ厶イオンを選択的に吸着する吸着剤としては、 陽イオン型 天然ゼ才ライ 卜、 例えばプロ トン型、 アンモニゥ厶イオン型、 アルキル アンモニゥムイオン型のクリノプチ口ライ ト、 モルデナィ トなどが好ま しい。 上記のアルキルアンモニゥ厶イオン型天然ゼォライ トは、 例えば 天然ゼ才ライ 卜をモノメチルアンモニゥム、 ジメチルアンモニゥ厶、 ト リメチルアンモニゥム、 テ 卜ラメチルアンモニゥムにより陽イオン置換 することによって得られる。 通常、 これらの陽イオン型天然ゼ才ライ 卜 は、 平均粒径 0 . 2〜5 0 0 z mの粒状体としてカラムに充填して用い られる。
一方、 マグネシウムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウムィ才 ンとを除去する際に用いる吸着剤としては、 例えば、 プロ トン型、 アン
モニゥ厶イオン型若しくはアル力リ金属イオン型の天然ゼ才ライ ト又は 合成ゼ才ライ 卜や、 キレ一 卜樹脂を挙げることができる。
本発明方法においては、 不純物を選択的に吸着する吸着剤が、 あらか じめ不純物と同種のイオンを吸着していることが必要である。 特に陽ィ オン型天然ゼォライ 卜を吸着剤として用いてカリ ゥ厶イオンを除去する 場合には、 あらかじめカリ ゥ厶イオンを吸着している吸着剤を用いるの が有利である。 この場合の吸着量と しては、 吸着剤 1 g当り 0 . 1 〜 1 0 m o 、 好ましくは 1 . 0〜 1 0 μ ηη ο 1 の範囲で選ばれる。 なお. この場合、 吸着剤として既に不純物と同種のイオンを吸着しているもの を用いれば、 特に不純物と同種のイオンを吸着させる処理を行う必要は ない。
吸着剤を充填したカラムに水溶性化合物の水溶液を通す通液の際の線 速度としては、 通常、 0 . 1 〜 3 0 0 c m Z h r、 好ましくは 0 . 1 〜 1 0 0 c m / h rの範囲で選ばれる。 通液に際しては、 所望により加圧 又は減圧して通過を促進することもできる。
本発明の不純物除去方法を好適に行うには、 カラムに通した水溶性化 合物水溶液のカラム溶出液全画分を分取し、 各画分中における所望成分 の濃度を測定し、 濃度が近似している画分を捕集する。 そして、 このよ うに、 特定成分の濃縮された画分をまとめて採取することにより、 所望 成分の濃縮溶液を得ることができる し、 また微量不純物の濃度が初濃度 に比べ、 低い溶出液画分を捕集することにより、 高純度の水溶性化合物 を得ることができる。
さらに、 カラムに一時的に吸着された所定成分を適当な溶離液により 脱離させることにより、 その成分を濃縮した溶液を得ることもできる。 本発明方法の好適な実施態様を、 微量カリ ウム塩を含む濃度 2 . 3質 量%のナ卜リ ゥム塩水溶液を例にして説明すると、 まずあらかじめ力リ ゥムイオンを吸着した吸着剤、 例えば陽イオン型ゼ才ライ 卜に上記水溶
液を通すと、 吸着剤に吸着していた力リ ゥ厶イオンが移動相に溶出し、 カラムから溶出した溶出液の体積がカラム体積の 5倍に達するまでの画 分 (以下最初の画分という) において、 原液中の不純物イオン濃度より も高濃度になる。 その後、 さらに水溶液の通液を続けると、 移動相から 吸着剤への微量不純物イオンの吸着量が、 吸着剤から移動相への微量不 純物イオンの脱着量より多くなり、 原液中の濃度よりも低濃度の溶出液 画分が現われる。 この際の微量不純物イオンの濃度変化は、 原液濃度の 1 0 0倍以上から 1 0 0分の 1 以下の範囲で変動するが、 破過点に達す ると、 通常の吸着クロマ 卜グラフィ一における破過曲線と同様、 原液濃 度まで上昇し、 条件によってはそれ以上にもなる。
本発明方法における操作は、 通常の吸着クロマ 卜グラフィ一の場合と 全く同様にして行うことができる。 この際の操作条件としては、 通常、 室温、 大気圧下が選ばれる。
本発明方法において、 異常吸着クロマ ト現象が起っているかどうかは. カラム溶出液の各画分を分取し、 分析することによって確認することが できる。
本発明の第二態様では、 カリウムイオン、 マグネシウムイオン及び力 ルシゥ厶イオンの中から選ばれた少なく とも 1 種のイオンを微量不純物 として含有する固形分含有量 5 0 g /リ ツ トル以上の濃厚塩化ナ 卜 リ ゥ 厶水溶液から、 前記の不純物イオンを除去する方法を利用して、 最終的 に不純物濃度が固形分質量に基づき 1 質量%以下の精製塩化ナトリ ゥム 結晶を得ることができる。 そして、 濃厚塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液を通した 後の不純物イオンを吸着した吸着剤カラムは、 例えば塩化水素又は塩化 ァンモニゥムの水溶液を通液することによって再生し、 再利用すること ができる。 また、 この際、 カリ ウムイオンが富化した画分同士、 マグネ シゥムイオンが富化した画分同士、 あるいはカルシウムイオンが富化し た画分同士を集め、 上記の再生操作を行えば、 それぞれ力リ ゥ厶イオン
マグネシウムイオン又はカルシウムイオンに富んだ画分を得ることがで きるので、 これを濃縮すれば、 それぞれに対応する塩、 すなわち塩化力 リゥム、 塩化マグネシウム、 塩化カルシウムを回収することができる。 この再生に用いられる塩化水素水溶液又は塩化ァンモニゥ厶水溶液の濃 度には特に制限はないが、 取り扱いやすさの点で 0 . 5 ~ 5 M—濃度の 範囲が適当である。
カラムを通して不純物を除去した後の濃厚塩化ナト リ ゥ厶水溶液から 塩化ナ ト リ ゥ厶結晶を得るには、 蒸発乾固するのが最も普通であるが、 そのほか、 処理液に水溶性アルコール類、 例えばメチルアルコール、 ェ チルアルコール、 プロピルアルコールなどを加えて塩化ナ ト リ ウムを晶 出させてもよい。 また処理液に水酸化ナ ト リゥ厶を加えて不純物の沈殿 を生成させ、 この沈殿を除去し、 水溶性アルコール類を加えて塩化ナト リ ウ厶を晶出させることにより、 さらに高純度の塩化ナ ト リ ウムを得る こともできる。
例えば、 カリ ウムイオン濃度の低い画分を集め、,濃縮後、 水溶性アル コール類 (好ましくはエチルアルコール) を添加することで、 塩化ナ卜 リ ゥムの結晶を得ることができる。 塩化ナ卜 リ ゥ厶が濃厚 ( 2 0質量% 以上) であれば、 濃縮することなく、 結晶を得ることも可能である。 す なわち、 塩化ナトリ ウム濃厚溶液に水溶性アルコール類 (好ましくはェ チルアルコール) を添加することにより、 高収率で塩化ナ 卜 リ ゥムの結 晶を得ることができる。 通常の条件では、 塩化ナ ト リ ゥム純度が低いた め、 不純物の混入により純度低下が考えられるが、 原料水溶液が塩化ナ 卜リ ゥム純度 9 9 . 9 5質量%以上の高純度溶液であるため、 カリ ウム. カルシウム、 マグネシウムの混入による純度低下は、 ほとんど認められ ない。
この水溶性アルコール類添加による高純度塩化ナ ト リ ウム (塩化ナト リ ゥム純度 : 9 9 . 9 9質量%以上) の結晶化は、 また、 マグネシウム
イオン選択的イオン交換体処理後のマグネシウムイオン除去画分からの 高純度塩化ナ卜 リ ゥム結晶化あるいはカルシウムイオン選択的イオン交 換体処理後のカルシウムイオン除去画分から高純度塩化ナト リ ウム (塩 化ナ卜リ ゥ厶純度 : 9 9 . 9 9質量%以上) の結晶化などにも有効であ る。
本発明方法を好適に行うには、 不純物成分である力リ ウ厶イオン、 マ グネシゥムイオン、 カルシウムイオンのうち 1 種類以上のィオンを含む 濃厚塩化ナ 卜リ ゥム水溶液 (蒸発乾固物含有量 1 0 0 g /リ ッ トル、 蒸 発乾固物中の塩化ナ 卜リ ゥ厶純度は 9 0質量%以上) のカラム溶出液の 全画分を分取し、 カリ ウムイオン、 マグネシウムイオン、 カルシウムィ オンのうち 1種類以上のイオンの濃度を分析し、 カリウムイオン、 マグ ネシゥムイオン、 カルシウムイオンのうち 1種類以上のイオン濃度の類 似した画分を集めることである。 初濃度に比べ力リ ウ厶イオン、 マグネ シゥ厶イオン、 カルシウムイオンのイオン濃度の低い画分を集めること により、 さらに濃厚な塩化ナトリ ウム母液を得ることができる。
このようにして得られた濃厚な塩化ナ 卜 リゥム母液を蒸発晶析又は反 応晶析などにより晶析することにより、 高純度塩化ナトリウム (塩化ナ 卜 リゥム純度 : 9 9 . 9 9質量%以上) を製造することができる。 本発明方法においては、 力リ ゥ厶イオンの選択的イオン交換体を用い た場合、 対カチオンとして、 アンモニゥムイオン又はプロ トンが適当で ある。 カリ ゥ厶イオンの選択的イオン交換体は、 カリ ウムイオンと親和 性が高いため、 塩酸処理のみでは、 力リ ゥムイオンを充分除去すること ができない。 そのため、 カリ ウムイオンと類似したイオン半径を有する アンモニゥムイオンとのイオン交換処理 (好ましくは塩化アンモニゥム 溶液による処理) は有効である。
アンモニゥムイオン型にしたイオン交換体を直接力リ ウムイオン除去 に用いることは可能であるが、 塩化ナ 卜 リ ゥム結晶化の際に塩化アンモ
二ゥ厶が混入する可能性がある。 その点、 イオン交換体をプロ トン型に しておく と、 塩酸は析出することはないので、 高純度塩化ナ ト リ ウムを 得ることが保証される。 ただし、 塩酸処理を行うと吸着剤が溶解し、 構 成元素が溶出しやすくなるので、 充分洗浄することが必要である。 この 塩酸洗浄は、 上記に限定されず、 マグネシウムイオン選択的イオン交換 体を用いた場合のマグネシゥムイオン除去あるいはカルシウムイオン選 択的イオン交換体を用いた場合のカルシウムイオン除去などにも有効で める。
本発明の第三の態様である低ナ卜 リ ゥ厶医用食塩水に用いる低力リ ゥ ム精製塩化ナトリウム結晶は、 2 0質量%濃度の水溶液としたときに力 リ ウ厶イオン濃度が 0 . 0 7 m g /リ ッ トル未満、 好まし〈は 0 . 0 6 m g /リ ツ トル以下という低濃度になることによって特徴付けられるも のである。 このような低いカリ ゥ厶イオン濃度は、 従来の市販の日本薬 局方塩化ナ トリウムを 2 0質量 °/0濃度の水溶液としたときにカリ ウムィ オン濃度 0 . 1 〜 1 . 2 m g /リ ッ トルを示し、 また従来の市販の生理 ' 食塩水を蒸発乾固して得た食塩を 2 0質量%濃度の水溶液としたときの 力リ ゥ厶 'イオン濃度が約 0 . 3 m g /リ ッ トルであることを考えると、 全く予想外に低い力リ ゥムイオン濃度であることが分る。
この力リ ゥ厶イオン濃度を塩化ナ ト リ ゥ厶結晶の質量に基づく割合に 換算すると、 0 . 3 5 p p m未満になる。
本発明の医用食塩水を構成する、 このようなカリ ウムィォン含有量の 低い塩化ナ 卜リ ゥム結晶を得るには、 例えば先ず海水又はかん水から得 られた力リ ゥムイオン含有塩化ナ 卜 リゥ厶を水に溶かして水溶液を調製 する。 この際の水溶液の塩化ナ 卜 リ ゥム濃度としては、 特に制限はない が通常 1 〜3 5質量%、 好ましくは 3〜3 0質量%の範囲で選ばれる。 力リゥムイオン含有塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液と接触させる、 カリウムィ オンを選択的に吸着する吸着剤としては、 陽イオン型天然ゼ才ライ 卜、
例えばプロ トン型、 アンモニゥムイオン型、 アルキルアンモニゥムィ才 ン型のクリ ノプチ口ライ 卜、 モルデナィ 卜などが好ましい。 その中でも アンモニゥムイオン型クリノプチ口ライ トが特に好ましい。 上記のアル キルアンモニゥ厶イオン型天然ゼ才ライ 卜は、 例えば天然ゼ才ライ 卜を モノメチルアンモニゥム、 ジメチルアンモニゥム、 トリメチルアンモニ ゥム、 テ 卜ラメチルアンモニゥムにより陽イオン置換することによって 得られる。 通常、 これらの陽イオン型天然ゼ才ライ 卜は、 平均粒径 0 . 2〜5 0 0 yu mの粒状体としてカラムに充填して用いられる。
この陽イオン型天然ゼ才ライ 卜を吸着剤として用いてカリ ゥムイオン を除去する場合には、 あらかじめカリ ウムイオンを吸着した吸着剤を用 い、 異常吸着クロマ 卜現象を利用してカリ ゥムイオンを除去するのが有 利である。 この際のカリウムイオンの吸着量としては、 吸着剤 1 g当り 0 . 1 〜 1 0 μ m o Ί の範囲が好ましい。
異常吸着クロマ 卜現象を利用してカリ ゥ厶イオンが富化された画分を 除外すれば、 非常にカリ ウムイオン濃度の低い塩化ナトリ ウム水溶液を 得ることができる。
本発明の低力リゥム塩化ナ卜 リ ゥム結晶を水に溶解した医用食塩水の 好適な製造方法は、 力リ ゥ厶イオンを選択的に吸着する吸着剤粒子を適 当な寸法のカラムに充填し、 それに力リ ゥ厶イオン含有塩化ナ 卜 リ ゥ厶 水溶液を通液し、 溶出液を集めて、 この中から塩化ナト リ ウム結晶を析 出させる方法である。 この際の通液速度については特に制限はないが、 通常は線速度として 0 . 1 〜3 0 0 c m / h r、 好ましくは 0 . 1 〜 1 0 0 c m / h rの範囲が用いられる。
吸着剤充填カラムへの通液は、 得られた塩化ナ卜 リ ゥム結晶を 2 0質 量%濃度の水溶液としたとき、 その中のカリ ウムイオン濃度が 3 . 0 m g /リ ッ トル以下、 好ましくは 1 . 5 m gノリ ッ トル以下、 より好まし くは 0 . 5 m gノリ ヅ トル以下になるまで行うことが必要である。
カラムを通過させた塩化ナ卜リ ゥム水溶液から塩化ナトリ ゥム結晶を 析出させるには、 本発明の第二態様と同様、 例えばこれを蒸発乾固する のが最も普通であるが、 そのほか、 処理液に水溶性アルコール類、 例え ばメチルアルコール、 エチルアルコール、 プロピルアルコールなどを加 えて塩化ナトリ ウムを析出させてもよい。 また処理液に水酸化ナ卜 リ ウ 厶を加えて不純物の沈殿を生成させ、 この沈殿を除去し、 水溶性アルコ —ル類を加えて塩化ナ 卜 リ ゥムを晶出させることにより、 さらに高純度 の塩化ナ卜リゥム結晶を得ることができる。
通常の条件では、 塩化ナト リ ゥ厶純度が低いため、 他の不純物の混入 により全体の純度が低下することも危惧されるが、 原液として純度の高 い塩化ナトリゥ厶の水溶液を用いれば、 他の不純物の混入による純度低 下はほとんど起らない。 また、 塩化ナト リゥム水溶液を通した後の力リ ゥ厶イオンを吸着した吸着剤カラムは、 例えば塩化水素又は塩化ァンモ 二ゥ厶の水溶液を通液することによって再生し、 再利用することができ る。
このようにして、 2 0質量%濃度の水溶液としたときのカリ ウムィ才 ン濃度が 0 . 0 7 m g Zリ ッ トル未満、 好ましくは 0 . 0 6 m g /リ ツ トル以下の低力リ ゥム塩化ナトリ ゥム結晶と水から調製される低力リ ゥ ム医用食塩水が得られる。
このようにして得られた医用食塩水は、 そのままで N a +や C 一の 欠乏時の無機塩補給剤として、 1 回 1 〜 2 g程度摂取させることができ るし、 また所要濃度の水溶液として注射剤の希釈液、 リ ンゲル液や口ッ ク液などの生理液、 塩化ナ 卜 リ ゥム注射液として用いることができる。 そのほか、 等張液として、 皮膚、 創傷面、 粘膜の洗浄や湿布に用いるこ ともできるし、 また医療用器具の洗浄に用いることもできる。
本発明の第四の態様である藻類育成用の人工海水調製用塩化ナト リ ゥ 厶組成物は、 マグネシウムイオン及び場合によりカルシウムイオン濃度
が所定値以下の塩化ナト リ ウム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾 燥することにより調製された難溶解物質生成防止塩化ナ卜リ ゥムを使用 することにより特徴づけられるものであり、 2 0質量%濃度の水溶液に 換算したとき、 マグネシウムイオンが 1 O p p m以下、 すなわち 0〜 1 O p p mであること、 また場合によりさらにカルシウムイオンが 1 O p P m以下、 すなわち 0〜 1 O p p mであるという要件を備えている塩化 ナ 卜 リ ゥム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調 製された難溶解物質生成防止塩化ナ トリ ゥムを用いることが必要である ( このような難溶解物質生成防止塩化ナ 卜 リ ゥ厶は、 例えば
( 1 ) 原料塩化ナ 卜 リゥム水溶液を、 マグネシウムイオン又はマグネシ ゥムイオンとカルシウムイオンに対し選択的な吸着性を示す、 あらかじ めそれらと同種のイオンを吸着した吸着剤を充填したカラムに通し、 そ の通過液から塩化ナトリ ウムを晶出させ、 生成したマグネシウムイオン 又はマグネシウムイオンとカルシウムイオンを低減させた塩化ナ 卜 リウ 厶結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥するか、
( 2 ) 原料塩化ナ卜 リゥム水溶液から蒸発濃縮、 非溶剤添加又は析出剤 添加により塩化ナ卜 リゥ厶結晶を晶出させ、 分離し、 この分離した結晶 を再び水溶液として同じ操作を繰り返すことにより不純物を除去し、 次 いでマグネシウムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウムイオンを 低減させた塩化ナトリウム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥す るか、 あるいは
( 3 ) 原料塩化ナトリゥ厶水溶液からイオン交換処理によりマグネシゥ 厶イオン又はマグネシウムイオンとカルシウムイオンを除去し、 次いで 処理液中からマグネシウムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウム イオンを低減させた塩化ナ ト リ ウム結晶を晶出させたのち、 これを分別. 乾燥することによって調製することができる。
( 1 ) の方法は、 本発明の不純物を除去する方法を利用した、 原料塩
化ナ卜リゥム水溶液をマグネシウムイオン及び場合によりカルシウムィ オンを選択的に吸着する吸着剤を充填したカラムに通して、 該溶液中の マグネシウムイオン又はマグネシウムイオンとカルシウムイオンとを除 去する方法であるが、 この際に用いる吸着剤としては、 例えば、 プロ ト ン型、 アンモニゥムイオン型若しくはアルカリ金属イオン型の天然ゼ才 ライ 卜又は合成ゼ才ライ 卜や、 キレ一 卜樹脂を挙げることができる。 このような吸着剤を充填したカラムに原料塩化ナトリゥム水溶液を通 過させ、 カラム溶出液の中のマグネシウムイオン濃度の低い画分を集め, 蒸発晶析で結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥するか、 濃縮後に アルコール類のような非溶剤を添加するいわゆる反応晶析で結晶を晶出 させたのち、 これを分別、 乾燥することにより、 所望の塩化ナ ト リ ウム 結晶を得ることができる。
この場合、 カラムのマグネシウムイオン吸着容量が満たされ、 カラム 溶出液中のマグネシウムイオン濃度がカラム添加液中のマグネシウム濃 度に達したならば、 塩酸をカラムに通液することにより、 カラムに吸着 したマグネシウムイオンをカラムから脱着し、 カラムを再生することが できる。 この塩酸によるカラム再生処理は、 温度の如何に関わらず行え るが、 好ましい再生処理温度は 2 0〜8 0 °Cである。
また、 ( 2 ) の方法は、 原料塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液から、 ( 1 ) の場合 と同様にして蒸発晶析又は反応晶析により、 塩化ナ ト リ ウム結晶を析出 させることを繰り返し行う、 いわゆる再結晶法により、 マグネシウムィ オン又はマグネシウムイオンとカルシウムィ才ンの含有量を低下させた 塩化ナ卜リ ゥ厶結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することによ つて行われる。
次に、 ( 3 ) の方法は、 ポリエチレン、 ポリスチレン、 フエノール樹 脂、 アクリル樹脂などを基本骨格とするポリマーに、 スルホン酸基、 ホ スホン酸基、 硫酸エステル基、 リン酸エステル基などの陽イオン性基を
導入した樹脂膜を通して、 イオン交換により、 原料塩化ナ卜 リ ゥム水溶 液中のマグネシウムイオン及び場合によりカルシウムイオンを、 ナ 卜リ ゥムイオンその他のアル力リ金属ィオンと交換し、 次いでその通過液か ら塩化ナ卜リゥム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥させる方法 であ^。
これらの方法は、 いずれも単独で行ってもよいし、 2種以上を組み合 わせて行ってもよい。
本発明の藻類育成用人工海水調製用塩化ナト リ ゥム組成物は、 このよ うにして得られた難溶解物質生成防止塩化ナ ト リ ゥム結晶に対して、 天 然海水中に通常含まれている塩化ナ 卜 リ ゥ厶以外の、 藻類の生育に必要 な無機成分、 例えば、 塩化マグネシウム、 硫酸マグネシウム、 塩化カル シゥム、 硫酸ナ ト リ ウム、 塩化カリ ウム、 臭化カリ ウム、 塩化ス トロン チウ厶、 フッ化ナ ト リ ウム、 オル卜ホウ酸ナト リ ウム、 ホウ酸、 炭酸水 素ナ 卜 リ ゥムなど、 場合によりさらに天然海水に含まれる微量成分、 例 えば、 リチウム、 ネオン、 ケィ素、 リン、 アルゴン、 チタン、 バナジゥ 厶、 クロム、 マンガン、 鉄、 コバル 卜、 ニッケル、 銅、 亜鉛、 ヒ素、 セ レン、 クリプトン、 ルビジウム、 モリプデン、 銀、 カ ドミウム、 アンチ モン、 ヨウ素、 セシウム、 タングステン、 ウランなどの必要量を配合す ることによって製造される。
次に、 本発明の藻類育成用人工海水調製用塩化ナト リ ゥ厶組成物を用 いて藻類育成用人工海水を調製するには、 組成物中の難溶解物質生成防 止塩化ナ卜リ ゥム結晶の質量に基づき、 水 1 k g当り 5〜8 0 g、 好ま しくは 2 0 ~ 4 0 gの割合で水に溶解する。
このようにして調製された人工海水中において、 緑藻類、 褐藻類、 紅 藻類に属する藻類、 例えばコンプ、 ホンダワラ、 アマノ リ、 フノ リ、 テ ングサ、 ワカメ、 才ゴノ リ、 ッノマ夕などを育成すると、 天然海水中と 全く同等、 場合によっては同等以上の生育状態を示す。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、 本発明はこれら によってなんら限定されるものではない。
実施例 1
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクションコレクタ一からなる装置 を用いて、 不純物としてカリ ウムイオン 1 3 m g /リ ツ トル、 マグネシ ゥ厶イオン 4 m g /リ ツ トル及びカルシウムイオン 2 m g /リ ツ トルを 含む 1 M—塩化ナ トリ ゥ厶水溶液中から力リ ゥムイオンの分離を行った ( ガラス製カラム (内径約 1 O mm、 高さ 5 00 mm) に、 吸着剤とし てカリ ウムイオン約 5 ; m o l /gを吸着したアンモニゥムイオン型天 然ゼ才ライ 卜 (サンゼ才ライ ト社製、 ク リノプチ口ライ 卜、 商品名 「サ ンゼ才ライ 卜」、 平均粒径 0. 5 mm) を、 高さ 47 0 mmまで充填し. 恒温室 ( 2 7°C) 中において、 上記の塩化ナ卜リ ゥ厶水溶液を、 流速 0■ 1 m 1 Z分で通液した。 このときのカラムからの溶出液を 2 m Ί ずつの 画分として分取し、 各画分について力リ ゥ厶イオン濃度を定量分析した, このようにして得た各画分中のカリ ゥムイオン濃度溶出曲線を図 1 に示 した。 この図の縦軸は、 20画分ごとのカリゥムイオン濃度 (m g/リ ッ トル)、 横軸はカラム体積に対する溶出液体積の比である。
この図から分るように、 初期段階で力リゥムイオンが濃縮された画分 が現われ、 その後力リゥムイオンが除去された画分が現われる。
実施例 2
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクションコレクターからなる装置 を用いて、 不純物としてカリ ウムイオン 1 3 m g /リ ッ トル、 マグネシ ゥムイオン 4 m g/リ ツ トル、 カルシウムイオン 2 m g /リ ツ トルを含 む 1 M—塩化ナト リ ゥム水溶液からの不純物の分離を行った。
ガラス製カラム (内径 5 0 mm、 高さ 200 mm) に、 吸着剤として カリ ウムイオン約 7 Atm o 1 / gを吸着した H+型天然ゼ才ライ 卜 (サ ンゼォライ 卜社製、 クリノプチ口ライ 卜、 商品名 「サンゼ才ライ 卜」、
平均粒径 0. 5 mm) を 70 mmの高さまで充填し、 温度 50°Cにおい て流速 1 m 1 /分で上記の塩化ナ卜 リ ゥム水溶液を通液した。
次いで、 カラムからの溶出液を 2 m 1 ずつの画分に分取し、 各画分に ついて力リ ウ厶ィオン濃度、 マグネシウムイオン濃度及びカルシウムィ オン濃度を定量分析し、 その結果をグラフとして図 2に示した。
図 2の縦軸は画分中の各不純物イオンの濃度 (m g/リッ トル)、 横 軸はカラム体積に対する溶出液体積の比である。 この図から初期段階で . カリ ウムイオン、 マグネシウムイオンが濃縮された画分が溶出し、 その 後カリウムイオン、 マグネシウムイオンが除去された画分が溶出してい ることが分る。 また、 カルシウムイオンについては、 濃縮されることな く除去されていることが分る。
実施例 3
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクショ ンコレクタ一からなる装置 を用いて、 不純物としてカリウムイオン 1 3 m g /リ ツ トル、 マグネシ ゥ厶イオン 4. 5 m g/リ ッ トル及びカルシウムイオン 3. 5 m gノリ ッ トルを含む 1 M—塩化ナトリゥ厶水溶液中から力リゥムイオンの分離 を行った。
ガラス製カラム (内径約 1 0 mm、 高さ 5 00 mm) に、 吸着剤とし てカリウムイオン約 5 m o l /gを吸着したァンモニゥムイオン型天 然ゼ才ライ 卜 (サンゼ才ライ ト社製、 ク リノプチ口ライ 卜、 商品名 「サ ンゼ才ライ 卜」、 平均粒径 0. 5 mm) を、 高さ 47 0 m mまで充填し 恒温室 ( 2 7。C) 中で、 上記の塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液を、 線速度 3 0 c m/h rで通液した。 このときのカラムからの溶出液体積のカラム体積 に対する比と溶出液中の力リゥ厶イオン濃度 (m gZリ ッ トル) との関 係を求めた。 このようにして得た濃度溶出曲線を図 3に示した。 この図 から、 異常吸着クロマ ト現象が起っていること及び力リ ゥ厶イオンが除 去されていることが分る。
次いで、 カリウムイオン濃度の低い画分を集め、 口一タリーエバポレ 一夕一で濃縮したのち、 エチルアルコールを添加し、 結晶を析出させた, この結晶をろ別し、 エチルアルコールで洗浄後、 乾燥し、 精製塩化ナ ト リ ゥムを得た。
このようにして得た塩化ナ トリ ウムを水に溶解して 1 0質量%水溶液 とし、 原子吸光光度法で分析したところ、 カリ ゥムイオン濃度 0. 4 m g /リ ッ トル、 マグネシウムィ才ン濃度 0. 0 3 m g Zリ ッ トル、 カル シゥ厶イオン濃度 1. 3 mgZリ ッ トルであった。
実施例 4
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクションコレクタ一からなる装置 を用いて、 不純物としてカリ ウムイオン 9 m gノリ ツ トル、 マグネシゥ 厶イオン 1 m g/リ ッ トル、 カルシウムイオン 0. 8 m g /リ ツ トルを 含む 30質量%塩化ナ 卜 リ ゥ厶水溶液からの不純物の除去を行った。 ガラス製カラム (内径 1 0 mm、 高さ 500 mm) に、 吸着剤として. アンモニゥ厶イオン型天然ゼ才ライ 卜 (才クタゼ才ライ 卜社製、 ク リノ プチ口ライ 卜、 商品名 「才クタゼ才ライ 卜」、 平均粒径 0. 5 mm) を 4 5 O mmの高さまで充填し、 温度 50 °Cにおいて線速度 9 c m/ h r で上記の塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液を通液した。
このようにして、 カラム体積に対する溶出液体積の比と各不純物成分 濃度 (m g/リツ トル) との関係を求め、 グラフとして図 4に示した。 この図から、 カリ ゥムイオンについて著しい異常吸着クロマ 卜現象が起 つていることが認められ、 0. 0 5 m g/リ ッ トルまでカリ ウムイオン 濃度の低下していることが分る。
次に、 カリウムイオンの低い画分を集め、 2倍体積量のェチルアルコ —ルを添加し、 結晶を析出させることにより、 精製塩化ナ卜リ ゥ厶結晶 を得た。
このようにして得た精製塩化ナ 卜 リ ゥ厶結晶を真空乾燥後、 水に溶解
して 1 0質量%水溶液とし、 これについて、 原子吸光光度法で分析した ところ、 カリウムィ才ン濃度 0. 3 m 9 /リッ トル、 マグネシウムィ才 ン濃度 0. 03 m g/リ ッ トル、 カルシウムイオン濃度 0. 04 m g/ リ ッ トルであった。
参考例 1
6個の製造ロッ 卜の異なる局方生理食塩水 ( N a C 1濃度 0. 9質 量%) のそれぞれを蒸発乾固して得られた固形物を用いて 6個の 2 0質 量%濃度の塩化ナ卜 リ ゥム水溶液を調製した。 別に、 製造メーカーの異 なる ( A及び B ) 局方塩化ナト リ ウム (結晶) 製品について、 それぞれ 6個の製造ロッ 卜の異なる合計 1 2個の製品を入手し、 それぞれ 20質 量%濃度の水溶液とした。 上記の合計 1 8種類の水溶液について、 その 中の力リゥ厶イオン含有量を原子吸光光度法で測定し、 得られた結果を 表 2に示した。
表 2
力リ ゥ厶イオン含有量 (m gZリ ッ トル) サンプル
N o . 局方塩化ナ ト 局方塩化ナ 卜
局方生理食塩水
リウム A リ ウ厶 B
1 0. 2 5 0. 1 1 1 . 0 7
2 0. 2 9 0. 1 0 1 . 5 0
3 0. 3 1 0. 09 1 . 1 5
4 0. 2 1 0. 09 1 . 0 9
5 0. 4 5 0. 1 0 1 . 2 0
6 0. 30 0. 1 1 1 . 2 0 平均値 0. 30 0. 1 0 1 . 2 0
実施例 5
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクションコレクタ一からなる装置 を用いて、 不純物としてカリウムイオン SmgZリツ トルを含む 30質 量%塩化ナ卜 リ ゥ厶水溶液中の力リ ゥ厶イオンの除去を行った。
ガラス製カラム (内径約 1 Omm、 高さ 500mm) に、 吸着剤とし てカリ ウムイオン約 5 mo lノ gを吸着したアンモニゥムイオン型天 然ゼ才ライ ト (サンゼ才ライ 卜社製、 ク リノプチ口ライ 卜、 平均粒径 0 , 5 mm) を、 高さ 450m mまで充填し、 恒温室 ( 27°C) 中において, 上記の塩化ナ 卜リゥム水溶液を、 流速 20 m 1 /h rで通液した。 この 際のカリ ウムイオンの溶出曲線を図 5に示す。
この図において縦軸は力リ ゥムイオン濃度 (m g/リ ッ トル)、 横軸 は溶出液体積 (m l ) を表わす。 この図から分るように、 初期段階で力 リ ウムイオンが減少し、 約 0. 4 m g /リ ツ トルまで低下した後、 カリ ゥムイオン濃度が上昇していることがわかる。 30質量%塩化ナ ト リ ウ 厶水溶液中のカリウムイオン濃度が 1 . 5 m g/リッ トル以下の溶出画 分 (図 5では溶出液体積 3 Om lから 400m lに相当する画分) を集 め、 次いで集めたこの画分にエチルアルコールを添加し、 低力リ ゥ厶塩 化ナ 卜 リゥムの結晶を得た。
次に、 カラムに 20°Cにおいて 3 m o 1ノリ ヅ 卜ル濃度の塩化ァンモ ニゥ厶水溶液を通して吸着剤を再生した。
上記の 30質量%塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液中の力リ ゥムイオン濃度が 1
5 m gZリ ツ トル以下の画分を集める操作、 この画分から塩化ナ 卜 リゥ ムを晶析させる操作及びカラムの再生操作をそれぞれ 6回ずつ繰り返し.
6口ッ 卜の低力リゥム塩化ナ卜リ ゥム結晶を得た。 このようにして得た 低力リ ゥム塩化ナ 卜 リゥ厶結晶中の力リ ゥ厶イオン含有量を参考例 1 と 同様にして原子吸光分析により定量し、 その結果を表 3に示した。
表 3
このように、 本発明の医療材料を形成する塩化ナ卜リゥム中の力リゥ 厶イオン含有量は、 参考例 1 に示した市販品のいずれよりも低い力リゥ 厶イオン含有量である。
比較例
3 0質量%塩化ナ卜リゥム水溶液中の力リゥムイオンの除去を蒸発晶 析工程により行った。 3 0質量%塩化ナ卜リゥム水溶液中の力リウムィ オン濃度が 5 . 5 m g /リッ トルである塩化ナトリウムを蒸発晶析試料 とした。 晶析は異なった蒸発晶析試料 6種類について行い、 6ロッ 卜の 晶析工程による塩化ナトリゥ厶結晶を得た。 その結果を表 4に示した。
表 4
この表から分るように、 本発明方法を用いないで得た塩化ナ卜リ ゥム 中のカリゥ厶イオン含有量は、 参考例 1 に示した市販品とほぼ同じか、 あるいはそれ以上の値を示している。
参考例 2
送液ポンプ、 吸着剤カラム及びフラクションコレクタ一からなる装置 を用いて、 岩塩を蒸留水に溶かして調製した 1 M塩化ナ 卜 リ ゥム水溶液 からマグネシウムイオン及びカルシウムイオンの除去を行った。 原水溶 液のマグネシウムイオン濃度は 4. 4 m gZリ ッ トル、 カルシウムィ才 ン濃度は 5. 2 m gZリ ッ トルであった。
ガラス製カラム (内径約 50 mm、 高さ 200 mm) に、 吸着剤とし てプロ 卜ン型天然ゼ才ライ ト (サンゼ才ライ 卜社製、 クリノプチ口ライ 卜、 平均粒怪 0. 5 mm) を、 高さ 70 mmまで充填し、 恒温室 ( 2
7°C) 内において、 上記の塩化ナ卜 リゥム水溶液を、 体積流速 60 m 1
/h rで通液した。 この際のマグネシウムイオン及びカルシウムイオン の溶出曲線を図 6に示す。
この図において縦軸は各イオン濃度 (m g /リ ッ トル)、 横軸は溶出 液体積 (リ ッ トル) を表わす。 この図から分るように、 初期段階でマグ ネシゥ厶ィオンが濃縮され、 その後マグネシゥムィオンが除去されてい ること、 カルシウムイオンについては濃縮されることなく除去されてい ることがわかる。
次いで、 1 M塩化ナ トリ ウム中のマグネシウムイオン濃度が 2 . 5 p p m以下 ( 2 0質量%塩化ナトリ ゥム水溶液中のマグネシウムイオン濃 度が 8 . 6 p p m以下) の溶出画分 (図 6では溶出液体積 2 . 3 リ ツ 卜 ルから 3 . 3 リ ツ トルに相当する溶出液画分) を集め、 次いで集めたこ の画分にエチルアルコールを添加し、 低マグネシウム低カルシウム塩化 ナト リゥ厶の結晶を得た。
このようにして、 1 M塩化ナ 卜 リ ゥ厶中のマグネシウムイオン濃度が 2 . 5 p p m以下 ( 2 0質量%塩化ナト リ ウム中のマグネシウムイオン 濃度が 8 . 6 p p m以下) の溶出画分を集める操作、 晶析 (結晶化) 操 作とカラムの再生操作を繰り返し行う実験をそれぞれ 6回ずつ行い、 6 □ッ 卜の低マグネシウム低カルシウム塩化ナ ト リ ゥ厶を得た。 得られた 6口ッ 卜の塩化ナ 卜 リ ゥム中のマグネシウム含有量は、 低マグネシウム 低カルシウム塩化ナ 卜 リ ゥム結晶を真空乾燥機内で 5 0 °Cで 1 6時間乾 燥した後、 乾燥品を蒸留水に溶かし水溶液の状態に戻して、 原子吸光分 析により定量した。 6ロッ トの低マグネシウム低カルシウム塩化ナ ト リ ゥ厶中のマグネシウム含有量の平均値は 0 . 0 0 0 1 5質量%、 変動係 数 C V (相対標準偏差) は 3 6 . 5であった。 変動係数 C V (相対標準 偏差) は試料 (標本) の標準偏差 S ( S = σ η _ ! ) を試料 (標本) の平 均 Xで割った値に 1 0 0を乗じて算出した。 また、 マグネシウムイオン 及びカルシウムイオン除去処理を行う前の塩化ナ ト リ ゥ厶を未処理塩化 ナ トリウムといい、 6ロッ 卜の未処理塩化ナ卜リ ゥ厶中のマグネシウム 含有量を測定し、 平均値 0 . 0 0 7 5 3質量%、 変動係数 C V (相対標
準偏差) 7. 5 9を得た。 この結果を表 5に示す, 表 5
低マグネシウム低カルシウム塩化ナ卜 リゥ厶及び未処理塩化ナ 卜 リウ ムについての含有マグネシウム量測定値は、 統計処理し、 等分散性の検 定及び T検定を行った。 等分散性の検定の結果、 低マグネシウム低カル シゥム塩化ナ 卜リ ゥ厶及び未処理塩化ナ 卜 リ ゥ厶の母集団に関して等分 散性が仮定できた ( F = 4. 43 5 , 有意確率 p = 0. 06 1 >有意水 準ひ: = 0. 050 )。 T検定 ( 2つの母平均の差の検定) の結果、 t値 = - 3 1 . 49 9, 有意確率 (両側) p < 0. 0 1 であった。 未処理塩 化ナ卜リゥムのマグネシウム含有量は平均 0. 007 5 3質量%である のに対して、 低マグネシウム低カルシウム塩化ナ ト リ ウムのマグネシゥ ム含有量は平均 0. 000 1 5質量%であり、 これは未処理塩化ナ卜 リ ゥムに比して有意 ( P < 0. 0 1 ) にマグネシウムが除去されたことが
分る。
このようにして得た低マグネシウム低カルシウム塩化ナト リ ウムを 1 1 o°cにおいて乾燥することにより、 難溶解物質生成防止塩化ナ卜リ ウ ムを調製した。
実施例 6
参考例 2で得た難溶解物質生成防止塩化ナ ト リ ウム 548 gに、 塩化 マグネシウム六水和物 250 g、 硫酸ナ トリ ウム 92. 5 g、 塩化カル シゥムニ水和物 35. 09、 塩化力リ ウム 1 5. 8 g、 炭酸水素ナ トリ ゥム 4. 5 g、 臭化カリ ウム 2. 25 g、 オル卜ホウ酸 0. 75 g、 塩 化ス トロンチウム 0. 25 g、 塩化鉄 (III) 六水和物 0. 1 3 mg、 グリセロリン酸ナトリ ゥム五水和物 8. 75 m g s 硝酸ナト リ ウム 4. 0 m gを混合し、 25リ ツ トル用の藻類育成用人工海水調製用塩化ナ ト リ ゥム組成物を調製した。 また、 比較のために未処理塩化ナ 卜 リ ゥム結 晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶 解物質生成防止処理無し塩化ナ卜リ ゥ厶を用いて比較用藻類育成用人工 海水調製用塩化ナ卜 リ ゥム組成物を調製した。 次に、 これをラミネー ト 製袋に密封し 20°Cの恒温室内で保存した。 このようにして、 6ロッ ト の低マグネシウム低カルシウム塩化ナ 卜 リ ゥム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質生成防止塩化ナ トリウムと、 6ロッ トの未処理塩化ナト リ ウム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質生成防止処理無 し塩化ナ トリゥ厶を用いて、 それぞれ 6口ッ 卜の藻類育成用人工海水調 製用塩化ナ 卜リ ゥム組成物を調製した。 調製後に 30日間保存したのち. それぞれの袋を開封し、 濁度測定した。 濁度測定は、 藻類育成用人工海 水調製用塩化ナ 卜 リ ゥム組成物 40 gを 1 リ ッ トル ( 30°C) の蒸留水 に溶解し、 5分間撹拌し、 1分間静置した後で、 50 mm石英セルに分 注し、 島津製作所製スぺク トロフ才 トメ一夕一 U V— 1 20— 01で 6
6 0 n mの吸光度を測定して行った。
6ロッ トの低マグネシゥム低カルシゥム塩化ナ卜リゥム結晶を晶出さ せたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質生成 防止塩化ナ卜リゥムを用いた藻類育成用人工海水調製用塩化ナ卜リゥム 組成物の 4質量%水溶液の吸光度の平均値は 0 . 0 0 0 5、 変動係数 C V (相対標準偏差) は 1 0 9 . 5であった。
変動係数 C V (相対標準偏差) は試料 (標本) の標準偏差 S ( S = σ n _ ! ) を試料 (標本) の平均 Xで割った値に 1 0 0を乗じて算出した。 また、 6ロッ トの未処理塩化ナトリウム結晶を晶出させたのち、 これを 分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質生成防止処理無し塩化 ナ卜リゥムを用いた藻類育成用人工海水調製用塩化ナトリゥム組成物の 4質量%水溶液の吸光度の平均値は 0 . 0 0 2 8、 変動係数 C V (相対 標準偏差) は 2 6 . 6であった。 低マグネシウム低カルシウム塩化ナト リゥ厶結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製さ れた難溶解物質生成防止塩化ナ卜リゥ厶及び未処理塩化ナ卜リゥ厶結晶 を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解 物質生成防止処理無し塩化ナ卜リゥ厶を用いた藻類育成用人工海水調製 用塩化ナ卜リゥム組成物の 4質量%水溶液の濁度測定値を統計処理し、 等分散性の検定及び Τ検定を行った。 等分散性の検定の結果、 低マグネ シゥム低カルシウム塩化ナトリウム結晶を晶出させたのち、 これを分別. 乾燥することにより調製された難溶解物質生成防止塩化ナ卜リゥ厶及び 未処理塩化ナ卜リゥム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥するこ とにより調製された難溶解物質生成防止処理無し塩化ナ卜リゥムの母集 団に関して等分散性が仮定できた ( F = 0 . 0 9 4, 有意確率 p = 0 . 7 6 5 >有意水準 α = 0 . 0 5 0 )。 Τ検定 ( 2つの母平均の差の検 定) の結果、 t値 =ー 6 . 1 3 9 , 有意確率 (両側) p < 0 . 0 1であ つた。 未処理塩化ナ卜リゥ厶結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥
することにより調製された難溶解物質生成防止処理無し塩化ナ卜リゥ厶 を用いた藻類育成用人工海水調製用塩化ナ卜リゥム組成物の 4質量%水 溶液の濁度の平均値は 0 . 0 0 2 8であるのに対して、 低マグネシウム 低カルシウム塩化ナ卜リゥム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥 することにより調製された難溶解物質生成防止塩化ナトリゥムを用いた 藻類育成用人工海水調製用塩化ナ卜リゥム組成物の 4質量%水溶液の濁 度の平均は 0 . 0 0 0 5であり、'これは未処理塩化ナ卜リゥ厶結晶を晶 出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質 生成防止処理無し塩化ナ卜リゥムを用いた藻類育成用人工海水調製用塩 化ナトリウム組成物の 4質量%水溶液に比して有意 ( p < 0 . 0 1 ) に 濁度が低下していることが分る。 これらの結果を表 6に示す。
表 6
応用例
実施例 6で得た低マグネシウム低カルシウム塩化ナ卜リゥム結晶を晶 出させたのち、 これを分別、 乾燥することにより調製された難溶解物質 生成防止塩化ナ卜リゥムを用いた藻類育成用人工海水調製用塩化ナ卜リ ゥム組成物の 3 . 5質量 °/0水溶液 (以下本発明人工海水という) と未処 理塩化ナトリウム結晶を晶出させたのち、 これを分別、 乾燥することに より調製された難溶解物質生成防止処理無し塩化ナ卜リゥムを用いた藻
類育成用人工海水調製用塩化ナ卜リゥム組成物の 3. 5質量%水溶液 (以下対照用人工海水という) とを用いて藻類育成実験を行った。
すなわち、 紅藻類ォゴノ リ科海藻ツルシラモ [グラシラリアシー · グ ラシラリア · コルダ (Graci lariaceae Gracilaria chorda)] の単藻培 養株から長さ 5 m mの生長端 (アビカルフラグメントという) を切り出 し、 人工海水 2 0 0 m l の入った三角フラスコにフラスコ当りアビカル フラグメン卜 6本を添加した。 培養条件は、 温度 2 0°C、 光強度 6 0 υ. m o Ί /c m2 s、 照明周期は 1 4時間明期 1 0時間暗期に設定した。 培養液である人工海水の交換は 1週間毎に行い、 培養中は 1 0 0 r ρ m の速度でフラスコを撹拌した。 本発明人工海水を用いた実験サンプル数 及び対照用人工海水を用いた実験サンプル数はそれぞれ 5に設定した。 培養 4週間後に、 それぞれの人工海水で育成された海藻の湿質量を測定 した。
本発明人工海水で育成された海藻の湿質量の平均値は 6 2. 6 m g s 変動係数 C V (相対標準偏差) は 7. 4 5であった。 一方、 対照用人工 海水で育成された海藻の湿質量の平均値は 5 2. 1 m g、 変動係数 C V (相対標準偏差) は 9. 6 4であった。 本発明人工海水及び対照用人工 海水で育成された海藻の湿質量測定値を統計処理し、 等分散性の検定及 び T検定を行った。 等分散性の検定の結果、 本発明人工海水及び対照用 人工海水の母集団に関して等分散性が仮定できた ( F = 0. 0 0 8, 有 意確率 p = 0. 9 2 9 >有意水準 α = 0. 0 5 0 )。 Τ検定 ( 2つの母 平均の差の検定) の結果、 t値 = 3. 4 3 8, 有意確率 (両側) p < 0 0 1 であった。 対照用人工海水で育成された海藻の湿質量の平均値は 5 2. 1 m gであるのに対して、 本発明人工海水で育成された海藻の湿質 量の平均は 6 2. 6 m gであり、 これは対照用人工海水で育成された海 藻の湿質量に比して有意 ( P < 0. 0 1 ) に育成できる海藻量 (湿質 量) が増加していることが分る。 この結果を表 7に示す。
表 7
産業上の利用可能性
本発明の第一の態様によれば、 微量不純物を含む水溶性化合物水溶液 を、 微量不純物を選択的に吸着し得る吸着剤を充填したカラムに導入す ることにより、 異常吸着クロマ卜現象を利用し、 効率よく微量不純物を 除去することができる。 さらに、 吸着剤の再生処理時に微量成分の濃縮 も可能であり、 しかも吸着剤は繰り返し使用することができるので、 ェ 業的に有利である。
本発明の第二の態様によれば、 カリウムイオン、 マグネシウムイオン 及びカルシウムイオンの中から選ばれた少なくとも 1種の不純物を含む 濃厚塩化ナ卜リゥム水溶液から、 異常吸着クロマ卜現象を利用すること により、 高純度の塩化ナ卜リゥム結晶を安価に得ることができるので、 そのような高純度塩化ナ卜リゥムを必要とする産業分野における本発明 の利用価値はきわめて高い。
本発明の第三の態様によると、 従来の塩化ナトリゥ厶系医療材料に比
ベ、 力リゥムイオン含量の著しく少ない塩化ナ卜リゥ厶結晶と水から調 製された医用食塩水が提供されるので、 高力リゥム血症の発症を抑制し うるという効果が奏されることとなり、 医薬品産業における本発明の利 用価値はきわめて高い。
本発明の第四の態様によると、 水溶液としたときの濁度が低く、 かつ 保存期間が長くても得られる水溶液の濁度の上昇することのない、 難溶 解物質による藻類表面への付着にともなう生育阻害のおそれのすくない 藻類育成用人工海水を与える人工海水調製用塩化ナ卜リゥ厶組成物が提 供されるので、 養殖水産業における本発明の利用価値はきわめて高い。