JP2019034273A - アンモニウムイオンまたは/およびアンモニアを含有する水溶液の製造方法、アンモニウム塩の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

アンモニウムイオンまたは/およびアンモニアを含有する水溶液の製造方法、アンモニウム塩の製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便かつ低コストで、高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を製造する製造方法、アンモニウム塩の製造方法及び製造装置の提供。【解決手段】アンモニウムイオン又は/及びアンモニア分子を含有する媒体から高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を得るための水溶液の製造方法であって、一般式(I)で表される組成を主成分とする金属シアノ錯体、を有効成分とするアンモニア吸着材を使用し、前記吸着材に接触させてアンモニウムイオン又は/及びアンモニア分子を吸着させる吸着工程、及び、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する脱着工程からなり、前記脱着工程が、前記吸着材を容器に充填した状態で、脱離再生水としてカリウムイオンを含有する水溶液を吸着材に通液する工程であり、通液後の前記脱離再生水中に存在するカチオンの総量に対する、アンモニウムイオンのモル含有率が、95%以上である、アンモニウム含有水の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニアを含有する水溶液の製造方法、アンモニウム塩の製造方法およびその製造装置に関する。
アンモニア(NH)は極めて大量に化学生産されている化学品であり、その大半はアンモニウム塩に転換され、肥料用途に利用されている。このため、環境中にアンモニウム塩が大量に散布され、様々な問題の原因となっている。例えば、大気中に浮遊する2.5マイクロメートル以下の微粒子であるPM2.5は、その多くが農業セクターから排出されるアンモニアが起源となったアンモニウム塩であるし、水系に放出されたアンモニウム塩は富栄養化などの原因となっている。
また、バナジウム化合物製造業およびモリブデン化合物製造業の工場や、畜産場、下水処理場などでは大量のアンモニウム塩含有排水が発生する。これらは例えば生物を利用した硝化・脱窒工程によりアンモニウムイオンを窒素分子に転換し、無害化することで排水を可能にしている。しかしながら、硝化・脱窒はその処理に要する電力が莫大であるとともに、排水中に窒素分が多い場合には、硝化・脱窒工程に必要な炭素分が足りず、メタノールなどを別途添加する場合もある。
これらのことから、排水などのアンモニウムイオン水溶液から、アンモニウム塩を回収することで、排水処理費の低減と、有価物生成の両方を実現することが求められている。有価物生成について、例として塩化アンモニウムを生成する場合を考えると、肥料取締法により、肥料用の塩化アンモニウムはその濃度として窒素分で25%、すなわち塩化アンモニウムとして95.4%以上の純度が必要となる。また、食品添加物の場合は99.0%(非特許文献1参照)、試薬の場合は99.5%の純度が求められる(非特許文献2参照)。一般に純度が高くなると価格が上がるため、できるだけ高純度のものを生成することが望ましい。
このような背景のもと、各種排水からアンモニウムイオンを取り除き、有価物とする取り組みがなされている。
例えば、特許文献1では、アンモニウムイオン水溶液のpHと温度を調整し、アンモニウムイオンをアンモニアとして大気中に放散させ、その後酸水溶液を用いて回収する方法が提案されている。しかしながら、この方法ではpHや温度の調整に費用が掛かり、また、酸水溶液での吸着においては、装置が過大になることが欠点である。また、特許文献2では、リン酸マグネシウムアンモニウムとして廃液中のアンモニアを回収する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、廃液中のアンモニウム、リン酸、マグネシウム濃度に応じて添加する薬剤の量を調整する必要があり、完全にアンモニアを回収するためには適宜濃度調整などの作業が煩雑となる。
上記の欠点を解決する方法として、アンモニウムイオンを選択的に吸着する吸着剤の使用が考えられる。ゼオライトやイオン交換樹脂などの一般的なイオン吸着材は選択性に乏しく、アンモニウムイオンだけを吸着することはできない。このため、不必要なイオンまで吸着することになり、共存イオン濃度が高い場合はアンモニウムイオン吸着能が著しく低減する。さらには吸着後、アンモニウムイオンを脱離しても、他のイオンも併せて脱離されるため、アンモニウムイオンの純度を高めることができない。
一方、特許文献3および非特許文献3には、アンモニウムイオンに対し選択性のある吸着材として、特定の金属シアノ錯体を活用する方法が提案もしくは開示されている。例えば銅ヘキサシアノ鉄錯体がアンモニウムイオンを選択的に吸着し、また、高濃度カリウムイオンで脱離再生できることが示されている。さらに非特許文献3には、下水処理中に発生する消化汚泥のろ液からでもアンモニウムイオンだけを選択的に吸着し、また、1モル/Lの塩化カリウム水溶液を再生水として用い、その中にアンモニウムイオン吸着後の材料を浸漬することで90%を脱離することが可能であることが示されている。
しかしながら、これらの方法では、例えば、10%程度の塩化カリウムが再生水中に残留するため、その再生水の活用が困難であることが課題である。しかも、前述のように、肥料、食品添加物または試薬として活用する場合、それぞれ95%、99.0%、99.5%の純度のアンモニウム塩が必要とされるため、この再生水を活用するには、さらなる高純度化の工程が必要になる。
特開2003−275746号公報 特開2015−058413号公報 国際公開第2015/186819号
厚生労働省食品添加物公定書 D.成分規格・保存規格「塩化アンモニウム」 JIS K 8116 日本工業規格「塩化アンモニウム」 Prospective Application of Copper Hexacyanoferrate for Capturing Dissolved Ammonia,Durga Parajuli,Hiromi Noguchi,Akira Takahashi,Hisashi Tanaka and Tohru Kawamoto,Industrial & Engineering Chemistry Research,55(23),6708−6715,2016
このように、共存イオンを含むアンモニウム塩水溶液から、アンモニウム塩だけを高純度に含む水溶液を簡便に製造できれば、高純度アンモニア塩もしくはその水溶液を、排水などから低コストで製造できるようになる。
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、簡便かつ低コストで、高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を製造する製造方法、該水溶液でアンモニウム塩を製造する製造方法およびその製造装置を提供することを課題とする。
発明者らは、様々な検討の結果、アンモニア吸着材として金属シアノ錯体を使用することおよびその使用方法が重要であることがわかった。
特に、アンモニア吸着材の吸着したアンモニウムイオンを脱着する際、脱着工程で使用する再生水としてカリウムイオンを含有する水溶液を使用すること、および、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する間、例えば、アンモニア吸着材が充填された容器内で位置を変えないようにするなど、アンモニア吸着材の形状を保ったままで、脱着することで高純度のアンモニウム塩水溶液を得ることが可能であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
(1)アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する媒体から高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を得るための水溶液の製造方法であって、
下記一般式(I)で表される組成を主成分とする金属シアノ錯体、を有効成分とするアンモニア吸着材を使用し、
前記媒体もしくは前記媒体から得られた水溶液を前記アンモニア吸着材に接触させてアンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を吸着させる吸着工程、および、
前記アンモニア吸着材に、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する脱着工程からなり、
前記脱着工程が、前記アンモニア吸着材を容器に充填した状態で、脱離再生水としてカリウムイオンを含有する水溶液を該アンモニア吸着材に通液する工程であり、
通液後の前記脱離再生水中に存在するカチオンの総量に対する、アンモニウムイオンのモル含有率が、95%以上であることを特徴とする水溶液の製造方法。
Figure 2019034273
一般式(I)において、Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金および銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、Aは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンを表す。xは0〜3の数を表し、yは0.1〜1.5の数を表し、zは0〜6の数を表す。
(2)前記脱着工程において、前記アンモニア吸着材が、前記再生水を通液して、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する間、前記容器内で位置を変えないことを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)前記アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する媒体が、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する水溶液であることを特徴とする(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材を容器に充填した状態で、前記媒体もしくは前記媒体から得られた水溶液と接触させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)前記吸着工程および前記脱着工程で、前記アンモニア吸着材が充填される容器が同一の容器であって、該吸着工程における通液方向と該脱着工程における通液方向が同じ方向であることを特徴とする(4)に記載の製造方法。
(6)前記吸着工程における通液方向と前記脱着工程における通液方向が、いずれも前記容器の下方から上方であることを特徴とする(5)に記載の製造方法。
(7)前記吸着工程および前記脱着工程で、前記アンモニア吸着材が充填される容器が同一の容器であって、該吸着工程における通液方向と該脱着工程における通液方向が逆方向であることを特徴とする(4)に記載の製造方法。
(8)前記脱着工程における前記脱離再生水の通液速度が、空間速度で5/時間以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造方法。
(9)前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材に、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子、とカリウムイオンの組成比〔アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子の組成÷(アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子の組成+カリウムイオンの組成)×100〕を95%以上とすることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材に接触させる工程が、カリウムイオンも含む水溶液を接触させる工程1と、カリウムイオンを含まない水溶液を接触させる工程2からなることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法。
(11)前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法で得られた水溶液を、乾燥工程を経て、アンモニウム塩を製造することを特徴とするアンモニウム塩の製造方法。
(12)前記脱離再生水が、塩化カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が塩化アンモニウムであることを特徴とする(11)に記載の製造方法。
(13)前記脱離再生水が、硫酸カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであることを特徴とする(11)に記載の製造方法。
(14)前記脱離再生水が、硝酸カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が硝酸アンモニウムであることを特徴とする(11)に記載の製造方法。
(15)前記(5)〜(10)のいずれか1項に記載の水溶液を製造する製造装置であって、
前記容器が、前記アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する水溶液の通液口部、前記再生水の通液口部および水溶液の排出口部をそれぞれ有し、
前記容器の底部に前記アンモニア吸着材が漏出しない部材が設置され、該部材上に、アンモニア吸着材が充填されていることを特徴とする製造装置。
本発明において、高純度とは、純度が95%以上を意味し、99%であることが好ましい。また、一般式(I)で表される組成を主成分とする金属シアノ錯体における主成分とは、金属シアノ錯体が有する組成のうち、一般式(I)で表される組成が50%以上であることを意味し、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上が特に好ましく、実質100%であることが最も好ましい。
また、本発明におけるアンモニアとは、特に断りのない限り、NH およびNHの両方を意味する。水溶液中では、NHおよびNH の両方が存在し、その存在比はpHに依存するが、本発明においては、いずれの形態でもアンモニアとして考える。ただし、アンモニウムイオンはNH を指し、アンモニウム塩はNH を含む塩類を示す。
なお、本発明において、媒体とは、水などの水溶液、排水、廃液、イオンや分子を取り囲むポリマーや有機もしくは無機の固形成分などである。
本発明により、金属シアノ錯体をアンモニウムイオン吸着材として使用することで、簡便かつ低コストで、高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を製造する製造方法、該水溶液でアンモニウム塩を製造する製造方法およびその製造装置を提供することが可能となった。
金属シアノ錯体の典型的な結晶構造を示す図である。 吸着材が充填された円筒状容器において、吸着および脱離時の通液方向を示す模式図であり、分図(1)は、吸着および脱離時の通液方向が同じ方向であり、分図(2)はこれらの方向が逆である場合の模式図である。 実施例1における吸着工程で、銅−鉄シアノ錯体粉末を充填した円筒状容器に塩化アンモニウム水溶液を通水した際の出口のアンモニウムイオン濃度の通水量依存性を示すグラフである。 実施例1における離脱工程で、アンモニウムイオンを吸着させた銅−鉄シアノ錯体粉末を充填した円筒状容器にカリウムイオン水溶液を通水した際の出口のアンモニウムイオンおよびカリウムイオン濃度の通水量依存性を示すグラフである。 実施例2における離脱工程で、銅−鉄シアノ錯体充填カラムから放出された液のアンモニウムイオンおよびカリウムイオンの濃度と脱離のために通液され通液量の関係を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するアンモニア吸着材は、下記一般式(I)で表される組成を主成分とする金属シアノ錯体を有効成分とするアンモニア吸着材である。
Figure 2019034273
一般式(I)において、Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金および銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、Aは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンを表す。xは0〜3の数を表し、yは0.1〜1.5の数を表し、zは0〜6の数を表す。
なお、M、M’が同定されている場合、M−M’シアノ錯体と呼ぶ。例えばMが銅、MM’が鉄の場合、銅−鉄シアノ錯体という。
ここで、金属原子Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であるが、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選ばれる一種または二種以上の金属原子が好ましく、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選ばれる一種または二種以上の金属原子が特に好ましい。
金属原子M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金および銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であるが、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルトおよび白金からなる群から選ばれる一種または二種以上の金属原子が好ましく、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる一種または二種以上の金属原子がより好ましい。
Aは水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムおよびバリウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンである。ただし、繰り返し利用する場合には、脱離の際にカリウムイオンを使用するため、Aはカリウムイオンに置換される。
xは0〜3の数であるが、0〜2.5の数が好ましく、0〜2の数が特に好ましい。
yは0.1〜1.5の数であるが、0.4〜1.3の数が好ましく、0.5〜1の数が特に好ましい。
zは0〜6の数であるが、0.5〜5.5の数が好ましく、1〜5の数が特に好ましい。
ただし、x、y、zは不純物として塩が含まれていたり、プルシアンブルー型錯体の内部構造に取り込まれていない水分を材料が有する場合などは、その効果を除去して評価されなければならない。
また、水以外の溶媒や、不純物として他のイオン等、組成に現れていない材料が含まれていてもよい。
金属シアノ錯体の結晶構造は、図1に示した面心立方構造が一般的であるが、必ずしもそれに制限されない。例えば、K0.67Zn[Fe(CN)0.67・zHOは六方晶を取る。また、M’に配位するシアノ基は6個が一般的であるが、その一部がニトロ基などに置換されていてもよいし、4〜8個以内であれば問題はない。
なお、図1において、MおよびM’は、上記一般式(I)におけるMおよびM’であり、Nは窒素原子、Cは炭素原子である。
金属シアノ錯体は露出した金属部分にNHが配位吸着し、内部に含有する1nm以下のサイズの空隙サイトにNH を吸着する。さらに、空隙サイトにもNHも吸着することが期待できる。なお、NHの吸着後、水と反応し、吸着材内でNH に転換することも知られている。従って、NHとNH を本発明においては区別することは実際上困難である。ただし、カリウムイオンを用いて脱離する場合、基本的にはNH とカリウムイオンの交換反応と考えられる。このため、脱離によって放出されるイオンはアンモニウムイオンと考えられる。ただし、NHとして吸着した場合でも、上記の通り、水と反応し、NH に転換する場合があるため、NHとして吸着し、KとNH がイオン交換することで脱離が起きることもありうる。以上のことから、吸着時に水溶液のpHが高く、NHとして吸着した場合であっても、本発明は成り立つ。
また、金属シアノ錯体によるアンモニアおよび/またはアンモニウムイオンの吸着は、金属アンミン錯体のように、その結晶構造に大きな影響を与えないため、吸着、脱離による大きな体積変化を伴わない。そのため、アンモニアの吸着、脱離による構造の破壊などが起こりづらい。このことが、繰り返し利用を可能にしている。
金属シアノ錯体の望ましい粒径としては、一般論として、吸着速度は材料の比表面積が高いほど速いことが多く、その観点から言うと、一次平均粒径は500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。粒径の下限に特に制限はないが、4nm以上であることが実際的である。なお、本発明において、一次粒径とは、一次粒子の直径をいい、その円相当直径を粉末X線構造解析のピークの半値幅より導出したものでもよい。また、配位子などが粒子表面に吸着している場合もあるが、その場合も一次粒径としては、配位子を除いた粒径を指すものとする。
金属シアノ錯体の合成法に特に制限はないが、目的とした組成を均一に実現できる手法が好ましい。また、加工の都合上錯体表面が各種材料で修飾されていてもよい。具体的な手法としては、例えば特開2006−256954号公報、特開2013−173077号公報などに記載の手法が利用できる。吸着速度を考慮に入れる場合、比表面積の大きいナノ粒子の方が望ましい。また実用上、粒子は均一であることが望ましいため、特開2013−173077号公報に記された均一なナノ粒子製造方法などが適当である。
また、諸々の理由により、他の材料との複合化がなされていても、金属シアノ錯体が含有されており、それがアンモニア吸着材として機能していれば問題はない。例えば、繊維、繊維から作成された織布又は不織布上に担持したり、高分子などのバインダと混合して粒状体にしていたりしてもよい。ただし、本発明においては、アンモニウムイオンの水溶液、およびカリウムイオンの水溶液、もしくはそれらと同時に高濃度の共存イオンが含まれる水溶液にアンモニア吸着材が接触するため、溶解や剥離などの問題が発生しない方式を用いる必要がある。
吸着機能については、何らかの条件下でアンモニウムイオンを内部に吸着することが必要である。その際に体積変化が30%以下であることが繰り返し利用の観点からは望ましいが、目的が達成されれば特に制限はない。
以下、本発明の重要部分であるアンモニウムイオンの吸着と、それを脱離する方法について述べる。図2に、吸着材の容器への充填法と、吸着、脱離時の通液方向についての模式図を示す。アンモニウムイオンの吸着においては、特に定めはなく、金属シアノ錯体が十分にアンモニウムイオン水溶液と接触し、アンモニウムイオンを吸着すればよい。一方、脱離再生時は、金属シアノ錯体が容器に充填されていることが重要である。作業を簡便化するためには、吸着時も同様に容器へ充填し、通液することが好ましいが、必須と言うわけではない。
以下、例として、吸着工程、脱離工程において、同じ容器に充填した形状を維持した場合について述べる。
例えば、円筒状の容器に金属シアノ錯体を充填することが考えられる。ただし、容器内のすべての空間を金属シアノ錯体で埋める必要はない。ただし、脱離工程時の間には、吸着材がその位置を変えないことが重要である。その理由については後述する。容器には最低2か所の、液を注入、排出できる口を要する。例えば、図2においては、円筒状容器の上部と下部に口を設置し、上方から下方へ、もしくは下方から上方へ通液する。このようにすることで、流入口側からアンモニア吸着が進み、カリウムイオンが脱離する(一回目の使用の際は、カリウムイオンではなく、Aイオンが脱離する)。次に、カリウムイオンを通液することで、アンモニウムイオンが脱離し、カリウムイオンが吸着される。例えば、図2の分図(1)の場合、吸着工程において、アンモニウムイオン水溶液を通液口Bから注入することにより、通液口B近辺に充填された金属シアノ錯体中のカリウムとアンモニウムがイオン交換を起こし、アンモニウムイオンが吸着される。通液を進めるにつれ、アンモニウムイオンの吸着反応を起こす部位が通液口Aに近づいていき、ついには全ての金属シアノ錯体中のカリウムイオンがアンモニウムイオンに交換される。
次に、脱離工程として、カリウムイオン水溶液を同じく通液口Bから注入する。金属シアノ錯体はアンモニウムイオンを選択的に吸着するが、カリウムイオンを1/10程度の選択性で吸着するため、カリムイオンが十分に供給されると逆にカリウムイオンを吸着し、アンモニウムイオンを放出する。放出されたアンモニウムイオンは他の金属シアノ錯体に吸着されることなく通液口Aから放出される。なぜなら通液口Aに近い部位の金属シアノ錯体は全てアンモニウムイオンを吸着し、カリウムイオンは存在しないためである。この方法を用いることで、高純度のアンモニウムイオン水溶液を脱離再生水として生成することができる。
ここで重要な点は、金属シアノ錯体における、アンモニウムイオンとカリウムイオンの適当な選択性の強度にある。アンモニウムイオンの選択性が弱ければ、そもそも吸着時にアンモニウムイオンだけを吸着することができず、金属シアノ錯体中に他のイオンを同時吸着する。これは前述のゼオライトのケースであり、脱離時にアンモニウムイオンだけを高純度に排出することはできない。一方、選択性が強すぎると、カリウムイオン水溶液を通液した際に、カリウムイオンとアンモニウムイオンの交換の速度が遅く、カリウムイオンが水溶液中に残存してしまうため、アンモニウムイオンの純度を高めることができない。例えば、金属シアノ錯体におけるセシウムイオン吸着の場合がそれにあたる。金属シアノ錯体は極めて高性能なセシウムイオン吸着材であるが、その選択性は極めて高い。その選択性はセシウムイオンの吸着時には力を発揮するが、脱離時にカリウムイオンを完全に水溶液から除去することができず、カリウムイオンとセシウムイオンの混合水溶液しか得ることができない。このように、本発明の考え方は、一般的にどのような吸着材でも成り立つものではなく、カリウムイオンとアンモニウムイオンの選択性が適切である金属シアノ錯体によってはじめて実現するものである。
このように、本発明においては、脱離工程時に排出口付近にカリウムイオンを吸着している金属シアノ錯体が存在しないことが肝要である。そのため、吸着時にはその形状に制限はなく、十分にアンモニウムイオンを吸着させることができればよい。ただし、十分にアンモニウムイオンを吸着させるには、容器に充填し、アンモニウムイオン水溶液を通液することが一般的である。また、吸着時と脱離時に同じ容器に充填することで、簡便に吸着、脱離工程の実施が可能となる。
脱離工程で使用するカリウムイオンを含有する水溶液に含まれるカリウム塩は、どのような塩でも構わないが、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウムが好ましい。
ここで、含有するカリウム塩により、脱離再生水中に含まれることになるアンモニウム塩は塩化カリウムの場合、塩化アンモニウム塩であり、硫酸カリウムの場合、硫酸アンモニウムであり、硝酸カリウムの場合、硝酸アンモニウムである。
本発明では、高純度のアンモニウム塩を得るためには、アンモニウム塩を含有する脱離再生水を除去、すなわち、単に乾燥させるだけで得ることが可能となる。
このため、本発明では、脱離再生水を乾燥させる工程を経ることで高純度のアンモニウム塩が製造できる。
なお、乾燥工程の乾燥条件は、水を除去する一般的な条件が適用される。
次に、脱離時の金属シアノ錯体の固定について述べる。
本発明においては、脱離通水時に、容器中に充填した金属シアノ錯体間の相対位置が変わらないようにすることが重要である。これは、通液時の排水口付近にカリウムが残存することを防ぐためである。排水口付近にカリウムイオンが存在すると、アンモニウムイオンが排水口付近を通過する際に、カリウムイオンとイオン交換を起こし、アンモニウムイオンが吸着し、カリウムイオンが放出される。結果、脱離再生水中のアンモニウムイオンの純度が下がってしまうためである。ここで、金属シアノ錯体間の相対位置が変わらない、ことについて詳しく述べる。例えば粒状に加工した吸着材を使用した場合、脱離工程開始時に流入口付近に設置してあった錯体粒子が、脱離工程中に移動し、流出口付近に移動することを避ける、ということを意味している。そのような、カリウムイオンを吸着し再生した金属シアノ錯体が、流出口に移動することがなければ位置に変化があっても問題はない。例えば、充填した吸着材がその形状を保ったまま平行移動する場合などは、上記のような問題は発生しないので、問題はない。
通液方法については、図2の分図(2)のように吸着時と脱離時で方向を反対にすることができる。この場合、金属シアノ錯体全体が十分にアンモニウムイオンを吸着する必要がない、という点で効果的である。前述のとおり、吸着工程では、注入口周辺からアンモニウムイオンを吸着し、カリウムイオンが脱離される。よって、容器内の金属シアノ錯体全体がアンモニウムイオンを吸着していなくとも、脱離工程での排出口付近の金属シアノ錯体が十分にアンモニウムイオンを吸着している状況を作ることができる。よって、このような吸着と脱離時で通液方向を逆にした場合については、吸着時に、金属シアノ錯体全体がアンモニウムイオンを吸着している必要がなくなる。
脱離時の通液速度は、空間速度で100/時間より遅いことが好ましく、10/時間より遅いことがさらに好ましく、5/時間より遅いことが特に好ましい。これは、通液速度を遅くするほど、カリウムイオンとアンモニウムイオンの交換がより狭い領域で生じるため、カリウムイオンの混入を防げるためである。
また、金属シアノ錯体は、アンモニウムイオンに対し、他の大半のイオンに対しては十分な選択性を有するが、カリウムイオンに関しては、10:1〜20:1程度の選択性となっている。これを利用して、カリウムイオン水溶液によるアンモニウムイオンの脱離が可能となる。一方、吸着工程で使用するアンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子を含む水溶液にカリウムイオンが入っている場合、約10:1〜20:1の割合でカリウムイオン水溶液も吸着される。この場合、脱離工程でカリウムイオンが放出され、生成に支障をきたす場合がある。その場合は、この残留カリウムイオンを放出するため、カリウムイオンを含まない水溶液を吸着工程と脱離工程の間に、第二吸着工程として通液することで、脱離工程で得られる液のアンモニウムイオン濃度を上昇させることが可能となる(この場合、本来の吸着工程を第一吸着工程と呼ぶ)。第二吸着工程で必要な液については、10:1〜20:1の割合で残留しているカリウムイオンの放出に必要な量となり、第一吸着工程で必要な通液量の1/10〜1/20となる。よって、カリウムイオンが液に含まれている場合であっても、第二吸着工程で必要な液は十分少なく、本発明を活用することが可能である。
ここで重要なことは第二吸着工程におけるカリウムイオンの濃度である。これは、最終的に得ることが求められるアンモニウム塩濃度によって決定される。例えば99%のアンモニウム塩濃度の水溶液を得る場合、第二吸着工程で使用する液のカリウムイオン濃度としては、1%以下が好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.1%以下が特に好ましい。99.5%のアンモニウム塩濃度の水溶液を得る場合、第二吸着工程で使用する水溶液のカリウムイオン濃度としては、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、0.02%以下が特に好ましい。
本発明では、高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を製造する製造装置は、前述の容器が使用される。すなわち、容器が、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する水溶液の通液口部、再生水の通液口部および水溶液の排出口部をそれぞれ有し、容器の底部にアンモニア吸着材が漏出しない部材が設置され、該部材上に、アンモニア吸着材が充填されている。
容器は、円筒状容器が好ましく、容器の底部にアンモニア吸着材が漏出しない部材としては、例えば、フィルター、ステンレスメッシュ、グラスウールまたはこれらの組合せが挙げられる。
本発明の製造方法では、各種廃液、再生水から簡便な方法で高純度アンモニウムイオン水溶液を生成可能となる。しかも、蒸発乾燥などの作業により、高純度のアンモニウム塩粉末を得ることが可能である。得られた高純度アンモニウムイオン水溶液またはアンモニウム塩粉末は、肥料、食品添加物、試薬、さらには工業用原料など、多種多様なアンモニウム塩の用途に活用できる。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
<調整例1>
(銅−鉄シアノ錯体の調製)
銅−鉄シアノ錯体(KCu[Fe(CN))(以下、PCuと称す)を以下のようにして合成した。
硫酸銅五水和物を純水に溶解させ、銅イオンが0.52モル/Lの水溶液を調整した。また、フェロシアン化カリウム三水和物を純水に溶解させ、フェロシアン化物イオンが0.35モル/Lの水溶液を調整した。これらの液を混合したところ褐色の沈澱が生じた。遠心分離によりMilliQ水で2回洗浄後に、蒸発乾固した後、粉砕し、ふるいにより90μm〜300μmの粉末だけを分級することで、褐色の粉末PCuを得た。
得られたPCuについて、X線回折装置で評価したところ、既知物質の回折パターンを集めたデータベース中のKCu[Fe(CN)のピーク位置と一致した。
また、得られたPCuの平均一次粒径を粉末X線回折のピーク幅からシェラーの式で算出したところ、約29.8nmであった。なお、シェラーの式は以下のように表される式である。
Figure 2019034273
さらに、粉末のPCuの組成を次の方法で評価した。
粉末PCu1 50mgを塩酸4mL、硝酸2mLに添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社、Multiwave3000)によりマイクロ波分解を行った後、ICP−MS(パーキンエルマー社、NEXION300D)によりK、CuおよびFeの定量を行った。CおよびNは軽元素分析法、HOは熱重量測定により定量した。
この結果、PCuの水分子を含む組成は、K0.64Cu[Fe(CN)0.66・3.21HOと求められた。
実施例1
1.吸着材への吸着工程
調整例1で得られたPCuを2g、内径10mm、高さ5cmのガラス製円筒容器に投入したところ、PCuが占める高さは約3.5cmとなった。円筒容器の底部にはPCu1が漏出しないようにグラスウールとフィルターを設置した。まず、PCuの洗浄作業を次の通り行った。ペリスタティックポンプを用い、純水をガラス製円筒容器の下部から上部の方向に100mL通液した。流量は1.9mL/分で行った。次に同様の装置を用い、アンモニウムイオン濃度として2000mg/Lの塩化アンモニウム水溶液を0.22mL/分の流量で100mL通水した。排出口から放出された通液後の水を5mLずつ分取し、0.45μmのフィルターでろ過後、ろ液を、イオンクロマトグラフを用い、アンモニウムイオンの濃度を測定した。この結果を、通水量に対するアンモニウムイオンの出口濃度のグラフを図3に示す。縦軸がアンモニウムイオンの濃度(出口濃度:単位はppm)であり、横軸は通水量(mL)である。
図3に示すように、通水初期はアンモニウムイオンが検出されなかった。このことより、十分にアンモニウムイオンが吸着されていることがわかる。また、通水終期には、アンモニウムイオン濃度が通液前の濃度にほぼ一致した。これより、吸着材内のPCu1の組成であるK、すなわちカリウムイオンは十分に排出され、アンモニウムイオンに置換されたことがわかる。
2.吸着材に吸着したアンモニウムイオンの脱離工程
上記1の吸着材への吸着工程でアンモニウムイオンを吸着させたPCuを充填するガラス製円筒容器の下部から、容器内に残っている液を排出した。次に、カリウムイオン濃度として2000mg/Lの塩化カリウム水溶液を100mL、上記1の吸着材への吸着工程と同様に容器の下部から上方の向きで通水した。流量は0.22mL/分であった。PCuの高さは約3.5cmであり、内径が10mmであるため、PCuの占める体積は約2.75mLである。このため、空間速度は4.8/時間であった。排出口から放出された通液後の水溶液を5mLずつ分取し、0.45マイクロメートルのフィルターでろ過後、ろ液を、イオンクロマトグラフを用い、アンモニウムイオン濃度およびカリウムイオン濃度の測定を行った。この結果を、通水量に対するアンモニウムイオンの出口濃度(▲でプロット)およびカリウムイオンの出口濃度(●でプロット)のグラフを図4に示す。縦軸がイオン濃度(出口濃度:単位はmmol/L)であり、横軸は通水量(mL)である。
図4に示すように、塩化カリウム水溶液の通水初期はアンモニウムイオンだけが検出され、カリウムイオンはほとんど検出されなかった。具体的な塩化カリウム水溶液の通水初期でのアンモニウムイオン濃度およびカリウムイオン濃度を下記表1に示す。NH /(NH + K)のモル比は全て0.95を超えており、高純度でアンモニウムイオン水溶液を製造できることがわかる。特に、通水量が10〜15mLの範囲では、そのモル比は0.99に達した。これは、食品添加物グレードであるアンモニウム塩の純度99.0%に相当する。
Figure 2019034273
実施例2
<下水消化汚泥ろ液からの高純度アンモニウム塩生成>
下水処理場内消化槽から採取した消化汚泥をクロスフィルター膜分離により、ろ液と濃縮汚泥に分離した。得られたろ液に塩化アンモニウムを添加し、試験液L1を作成した。試験液L1のアンモニウムイオン濃度とカリウムイオン濃度をイオンクロマトグラフで測定したところ、それぞれ3178ppm、251ppmであった。
実施例1に準じてガラス製カラムにPCuを充填したカラムを準備した。ただし、PCuの高さは3.9cmとした。このカラムに試験液L1を流量0.2g/分の流量で233.5g通液した。通液において、カラムから放出された液の最終の3gをサンプリングし、そのアンモニウムイオン濃度およびカリウムイオン濃度を測定したところ、3067ppmおよび264ppmであった。通液前と、通液後において、アンモニウムイオン濃度、カリウムイオン濃度ともにほぼ同一であることから、PCuによる吸着工程はほぼ終了していることがわかった。
次に、脱離工程として以下の作業を行った。
PCu充填カラム内に残留した液体をカラム下部から放出した後、1015ppmに調製した塩化カリウム水溶液をPCu充填カラムに通液した。流量は0.214g/分、通液総量は13.7gとした。カラムから放出された通液後のアンモニウムイオン濃度およびカリウムイオン濃度の変化を図5に示す。縦軸がイオン濃度(mmol/L)であり、横軸は通液量(g)である。
図5から、アンモニウムイオンとカリウムイオンの総和のモル量に対するアンモニウムイオンの含有モル比率はほぼ95.4%以上で安定しており、目的の濃度のアンモニウムイオン水溶液が得られたことがわかる。

Claims (15)

  1. アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する媒体から高純度のアンモニウムイオンを含有する水溶液を得るための水溶液の製造方法であって、
    下記一般式(I)で表される組成を主成分とする金属シアノ錯体、を有効成分とするアンモニア吸着材を使用し、
    前記媒体もしくは前記媒体から得られた水溶液を前記アンモニア吸着材に接触させてアンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を吸着させる吸着工程、および、
    前記アンモニア吸着材に、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する脱着工程からなり、
    前記脱着工程が、前記アンモニア吸着材を容器に充填した状態で、脱離再生水としてカリウムイオンを含有する水溶液を該アンモニア吸着材に通液する工程であり、
    通液後の前記脱離再生水中に存在するカチオンの総量に対する、アンモニウムイオンのモル含有率が、95%以上であることを特徴とする水溶液の製造方法。
    Figure 2019034273
    一般式(I)において、Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金および銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子を表し、Aは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンを表す。xは0〜3の数を表し、yは0.1〜1.5の数を表し、zは0〜6の数を表す。
  2. 前記脱着工程において、前記アンモニア吸着材が、前記再生水を通液して、吸着されたアンモニウムイオンを脱着する間、前記容器内で位置を変えないことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する媒体が、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材を容器に充填した状態で、前記媒体もしくは前記媒体から得られた水溶液と接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記吸着工程および前記脱着工程で、前記アンモニア吸着材が充填される容器が同一の容器であって、該吸着工程における通液方向と該脱着工程における通液方向が同じ方向であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記吸着工程における通液方向と前記脱着工程における通液方向が、いずれも前記容器の下方から上方であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記吸着工程および前記脱着工程で、前記アンモニア吸着材が充填される容器が同一の容器であって、該吸着工程における通液方向と該脱着工程における通液方向が逆方向であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  8. 前記脱着工程における前記脱離再生水の通液速度が、空間速度で5/時間以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材に、アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子、とカリウムイオンの組成比〔アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子の組成÷(アンモニウムイオンまたは/およびアンモニウム分子の組成+カリウムイオンの組成)×100〕を95%以上とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記吸着工程において、前記アンモニア吸着材に接触させる工程が、カリウムイオンも含む水溶液を接触させる工程1と、カリウムイオンを含まない水溶液を接触させる工程2からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法で得られた水溶液を、乾燥工程を経て、アンモニウム塩を製造することを特徴とするアンモニウム塩の製造方法。
  12. 前記脱離再生水が、塩化カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記脱離再生水が、硫酸カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
  14. 前記脱離再生水が、硝酸カリウム水溶液であり、前記アンモニウム塩が硝酸アンモニウムであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
  15. 請求項5〜10のいずれか1項に記載の水溶液を製造する製造装置であって、
    前記容器が、前記アンモニウムイオンまたは/およびアンモニア分子を含有する水溶液の通液口部、前記再生水の通液口部および水溶液の排出口部をそれぞれ有し、
    前記容器の底部に前記アンモニア吸着材が漏出しない部材が設置され、該部材上に、アンモニア吸着材が充填されていることを特徴とする製造装置。
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