JP4823405B2 - 樹脂組成物及びその製造方法、その用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水膨潤性層状無機化合物を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、EVOHを略記する)樹脂組成物及びその製造方法、その用途に関し、更に詳しくはガスバリヤー性、成形性に優れた樹脂組成物及びその製造方法、その用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下EVOHと略記する)は、透明性、帯電防止性、耐油性、耐溶剤性、ガスバリヤー性、保香性等に優れており、又、溶融成形可能な熱可塑性樹脂であり、食品包装等、種々の包装材料用途に用いられている。
しかし、このようなEVOHは外部の湿度や温度という環境の変化によりガスバリヤー性や機械物性が大きく変化するという欠点を有している。
これに対して、近年ではEVOHと水膨潤性無機化合物とのブレンド物が、ガスバリヤー性の改善を目的として注目を浴びており、例えば、特開平5−39392号公報には、水の存在下にEVOHと水膨潤性フィロケイ酸塩を混合することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、本発明者が詳細に検討した結果、上記開示技術では、水の存在下に水膨潤性フィロケイ酸塩を投入するため、いわゆるママコが発生しやすく、そのため均一に分散することができず、又均一分散させるにはかなりの時間を必要とすることが判明したり、又、EVOHと水膨潤性フィロケイ酸塩のブレンド物では経時的に増粘し易く、押出加工時に滞留物が多く発生し、ロングラン成形時に成形物にスジやフィッシュアイ、着色等が発生する等の問題点があり、まだまだ満足のいくものではないことが判明した。
更に、該公報開示技術により得られる樹脂組成物を押出加工により製膜すると、立ち上げ時のフィルムと数時間ロングラン成形を行った後のフィルムのガスバリヤー性に差が生じるといった問題点があることが判明した。
そこで、このような背景下において、本発明では、成形加工性に優れ、安定してガスバリヤー性に優れるフィルムが得られる樹脂組成物、及びその製造方法、その用途を提供することを目的とするものである。
【0004】
【問題点を解決するための手段】
そこで、本発明者は上記の事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、EVOH(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)を含有してなり、リン酸化合物(B)の含有量が樹脂組成物全体に対して、リン酸根換算で10〜1000ppmである樹脂組成物が上記目的に合致することを見出し本発明を完成した。
【0005】
本発明では、EVOH(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)を含有してなる樹脂組成物を製造するに当たり、水膨潤性層状無機化合物(C)を、水/アルコール=0/100〜50/50(重量比)の混合溶剤に分散させた後、更に水を添加して、水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)に調整して、水膨潤性層状無機化合物(C)を膨潤させた後、EVOH(A)を混合して得られる樹脂組成物(1)に、リン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)を混合する樹脂組成物の製造方法、特にはEVOH(A)を混合するに際して、予め、水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)の混合溶剤に溶解させたEVOH(A)溶液を混合する製造方法が好ましく、本発明の効果を顕著に発揮するのである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるEVOH(A)としては、特に限定されないが、エチレン含有量が10〜60モル%で、ケン化度が80モル%以上であることが好ましい。エチレン含有量は好ましくは20〜50モル%で、ケン化度は好ましくは90モル%以上である。エチレン含有量が10モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られなくなり好ましくない。又、ケン化度が80モル%未満ではガスバリヤー性や熱安定性、耐湿性が低下し好ましくない。
【0007】
又、該EVOH(A)のメルトインデックス(MI)は0.5〜50g/10分(210℃)であることが好ましく、更には1〜35g/10分(210℃)であることが好ましい。該メルトインデックス(MI)が該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、又、該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械的強度が不足して好ましくない。
【0008】
該EVOH(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、公知の任意の重合法、例えば懸濁重合、エマルジョン重合、溶液重合等により製造され、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0009】
又、該EVOH(A)は、透明性、ガスバリヤー性、耐溶剤性等の特性を損なわない範囲で少量であれば、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーを共重合成分として含んでいても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等、後変性されても差し支えない。
【0010】
リン酸化合物(B)は、樹脂組成物全体に対して、リン酸根換算で10〜1000ppm含有させる必要があり、更には20〜500ppm、特には20〜150ppm含有させることが好ましい。かかる含有量が10ppm未満では本発明の効果を得ることはできず、1000ppmを越えると成形物にフィッシュアイが多発して外観不良を招き好ましくない。
【0011】
ここで、リン酸化合物(B)としては、リン酸やアルカリ金属のリン酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属のリン酸塩の具体例としては、アルカリ金属のリン酸水素塩やアルカリ金属の第2又は第3リン酸塩が挙げられ、アルカリ金属のリン酸水素塩としてはリン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が例示されるが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムがより好適に用いられる。又、アルカリ金属の第2又は第3リン酸塩としては、リン酸水素2カリウムやリン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸3ナトリウムが挙げられる。これらは単独又は併用して使用される。
【0012】
本発明では、樹脂組成物にリン酸化合物(B)を含有させる方法として、リン酸化合物(B)をそのまま任意の形状にて含有させる方法の他、後述の如き、リン酸化合物(B)をEVOHに含有させ、リン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)として、EVOH(A)及び水膨潤性層状無機化合物(C)に含有させる方法もある。かかるEVOHについては上記EVOH(A)と同様のEVOHの中から任意に用いられる。
【0013】
本発明に用いる水膨潤性層状無機化合物(C)としては、特に制限されることなく、スメクタイトやバーミキュライト等の粘土鉱物、更には合成マイカ等が挙げられ、前者のスメクタイトの具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等が挙げられる。これらは天然のものであっても、合成されたものでもよい。これらの中でもスメクタイト、特にその中でもモンモリロナイトが好ましい。又、Na型フッ素四ケイ素雲母、Na型テニオライト、Li型テニオライト、Na型ヘクトライト等の水膨潤性フッ素雲母系鉱物等も好ましく用いられる。
【0014】
該水膨潤性層状無機化合物(C)の膨潤力は、20℃において、水/アルコール=70/30(重量比)の混合溶剤に対して、30ml/2g以上、好ましくは40ml/2g以上、更に好ましくは、50ml/2g以上であることが好ましく、30ml/2g未満ではガスバリヤー性が不充分となり好ましくない。
尚、水膨潤性層状無機化合物(C)の膨潤力は、日本ベントナイト工業会 標準試験方法容積法により測定されるものである。
【0015】
かかる水膨潤性層状無機化合物(C)の配合量は、EVOH(A)100重量部に対して30重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量部、特に好ましくは1〜15重量部である。かかる配合量が30重量部を越えると溶融成形性が不良となり好ましくない。
【0016】
かくしてEVOH(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)より本発明の樹脂組成物を得るわけであるが、該樹脂組成物の製造方法については、特に限定されず、例えば、EVOH(A)、リン酸化合物(B)、水膨潤性層状無機化合物(C)のうち任意の二成分を混合した後残る成分を混合したり、三成分を一括に混合したり、又、リン酸化合物(B)を混合する代わりにリン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)として混合したりする等、適宜選択され用いられる。
【0017】
かかるEVOH(D)を得る方法としては、EVOHの粉末、ペレット、粒状物にリン酸化合物(B)を任意の形態にして混合する方法、EVOH製造時の任意の段階、即ち重合時、ケン化時、後処理時、乾燥時の任意の段階でリン酸化合物(B)を所定量含有させる方法、EVOHをリン酸化合物(B)中に含浸させる方法、等が挙げられる。但しこれらに限定されるものではない。
【0018】
又、上記EVOH(A)、リン酸化合物(B)、或いはリン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)、水膨潤性層状無機化合物(C)を混合するに際しては、水−アルコール等の混合溶剤中で溶解して混合することも好ましい。
【0019】
更に、本発明では、水膨潤性層状無機化合物(C)を、水/アルコール=0/100〜50/50(重量比)の混合溶剤に分散させた後、更に水を添加して、水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)に調整し、水膨潤性層状無機化合物(C)を膨潤させた後、EVOH(A)を混合して得られる樹脂組成物(1)に、リン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)を混合する製造方法が好ましく、ママコが発生することなく、均一に分散することができ、本発明の効果を顕著に発揮するものである。
特に好ましくは、予め、水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)の混合溶剤に溶解させたEVOH(A)溶液を混合することが好ましい。
【0020】
以下、本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法について詳述する。
先ず、水膨潤性層状無機化合物(C)を水/アルコールの混合溶剤に分散させる。水/アルコールの混合溶剤は水/アルコール=0/100〜50/50(重量比)、好ましくは20/80〜40/60(重量比)のものを用いる。該水/アルコールの混合割合が上記範囲以外では分散性が不良となり本発明の効果を発揮しない。又、アルコールについてはイソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、メタノール、エタノール等が用いられる。
【0021】
次に、更に水を添加して、水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)、好ましくは80/20〜60/40(重量比)に調整して、水膨潤性層状無機化合物(C)を膨潤させた後、上記EVOH(A)を混合する。このときの水/アルコールの割合が90/10〜51/49(重量比)の範囲以外ではEVOH(A)の溶解性が不充分となる。
【0022】
又、本発明では、EVOH(A)を混合するときは、ペレット状や粉末状にて添加したり、予めEVOH(A)を水/アルコールの混合溶剤に溶解させておきEVOH(A)溶液として添加したりする等の方法がある。中でも、相溶性の点でEVOH(A)溶液として添加することが好ましく、更にはかかるEVOH(A)溶液にするための水/アルコール混合溶剤の組成を上記の水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)の範囲で同じ組成比にした混合溶剤を用い溶解しておくことが好ましい。
EVOH(A)溶液として添加する場合は、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の濃度に調整することが望まれる。
【0023】
尚、水を更に添加して水/アルコール=90/10〜51/49(重量比)に調整した後は、通常20〜60℃で0.5〜4時間程度撹拌を行うことで、水膨潤性層状無機化合物(C)を膨潤させることができる。
【0024】
かくして得られる樹脂溶液は5〜25℃程度の冷水中に放出されたり、該樹脂溶液の入った容器を氷水で冷却されたりして、樹脂組成物として析出され、乾燥されて樹脂組成物(1)となる。かかる乾燥については特に限定されず、風乾、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥等により行われる。
更に、得られた樹脂組成物(1)に、リン酸化合物(B)を含有するEVOH(D)を混合して、本発明の樹脂組成物が得られる。
混合に際しては、EVOH(D)をドライブレンドしたり、溶液状にしてブレンドしたり、溶融状態でブレンドしたり等、適宜選択される。
【0025】
又、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、EVOH等)、可塑剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、乾燥剤、帯電防止剤等を配合することも可能である。又、ゲル化防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
【0026】
かくして本発明の樹脂組成物は成形物の用途に多用され、溶融成形等により、ペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することもできる。
溶融成形としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は150〜250℃の範囲から選ぶことが多い。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、上述の如き成形物に用いることができるが、特に該樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる積層体として用いることが好ましく、実用に適した積層体が得られる。
【0028】
該積層体を製造するに当たっては、本発明の樹脂組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。但しこれらに限定されるものではない。
【0029】
▲1▼溶液コーティング法
該樹脂組成物の水−アルコール(或いは溶剤)含有溶液をマイヤーバー、グラビア及びリバースロール方式等のローラーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法等の公知の方法で熱可塑性樹脂フィルムにコーティングして積層体を作製する。その後、公知の方法で乾燥が行われる。一例を挙げると乾燥温度が40〜180℃、好ましくは60〜140℃程度で5秒〜5分程度加熱すればよい。かかる乾燥において塗膜中の揮発分(水、アルコール或いは溶剤)が除去されるのであるが、通常揮発分が2重量%以下となるまで行えばよい。
本発明の樹脂組成物層と熱可塑性樹脂フィルムの接着強度を向上させるために通常のアンカーコート剤(ポリウレタン系、ポリエステル系等)を予めフィルム上にコートしてもよい。
【0030】
▲2▼押出コーティング法
本発明の樹脂組成物のフィルム、シートに熱可塑性樹脂を溶融押出して積層体を作製する。又、逆に熱可塑性樹脂等の基材に本発明の樹脂組成物を溶融押出して積層体を作製する。
【0031】
▲3▼押出成形法
本発明の樹脂組成物を単独で押出して、又は他の熱可塑性物樹脂と共押出して積層体を作製する。共押出の場合の相手側樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、EVOH等が挙げられる。上記の中でも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が好ましく用いられる。
又、共押出の場合、本発明の樹脂組成物に熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂に本発明の樹脂組成物をブレンドしたり、本発明の樹脂組成物や熱可塑性樹脂の少なくとも一方に両層面の密着性を向上させる樹脂を配合することもある。
【0032】
上記の他の積層方法として、本発明の樹脂組成物のフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートして積層体を作製することもできる。
上記の中でも▲3▼押出成形法が安定生産が可能である点で有利である。
【0033】
更に、本発明の樹脂組成物から一旦フィルム、シート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸延伸又は二軸延伸プラスチックフイルム又はシート、織布、不織布、金属綿条、木質面等)が使用可能である。
【0034】
積層体の層構成としては、本発明の樹脂組成物の層をa(a1,a2,・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1,b2,・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等、任意の組合せが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型、等の任意の組み合わせが可能である。
【0035】
上記樹脂組成物あるいは積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更には物性改善のために延伸処理を施すことが好ましく、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好である。
【0036】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等の延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0037】
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。又、得られた延伸フィルムは必要に応じて、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0038】
かくして得られる積層体等の成形品の形状は任意のものであってよく、フィルム、シート、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。
上記の如く得られるフィルム、シート或いは容器等は、一般食品、レトルト食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)からなるため、成形加工性及びロングラン成形時のフィルムのガスバリヤー性に優れた効果を発揮するのである。
【0040】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
実施例1
5lの容器に、イソプロピルアルコール120部を入れて、次いで水膨潤性層状無機化合物(C)として天然モンモリロナイト[膨潤力は水/イソプロピルアルコール=70/30(重量比)の混合溶剤に対して67ml/2g]2部を添加し撹拌して分散液(イ)を得た。
【0041】
更に、そこへ水280部を徐々に加え、40℃で2時間撹拌して(C)を膨潤させた後、EVOH(A1)(エチレン含有量30モル%、ケン化度99.6モル%、メルトインデックス(MI)8g/10分(210℃、荷重2160g))のペレット100部を添加し、90℃で2時間撹拌して完全溶解させた。
次に、得られた溶液を700部の冷水(5℃)に流し込み樹脂組成物を析出させ、真空乾燥を行った。
【0042】
乾燥して得られた樹脂組成物100部に対して、リン酸(B)を含有するEVOH(D1)(エチレン含有量35モル%、ケン化度99.8モル%、メルトインデックス(MI)3g/10分(210℃、荷重2160g)、EVOHに対してリン酸の含有量はリン酸根換算で100ppm)を100部混合して本発明の樹脂組成物を得た。(リン酸の含有量は、リン酸根換算で、樹脂組成物全体に対して50ppmであった。)
【0043】
尚、リン酸、アルカリ金属のリン酸塩の定量法は、JIS K 0102に準じモリブデン青(アスコルビン酸)吸光光度法により行った。
但し、試料の調製は次の手順により行った。
1.試料1gを精秤し、300mlのケルダールフラスコに投入する。
2.純水約5mlを加え、濃硫酸約15mlを徐々に滴下する。
3.ケルダールフラスコをヒーターで加熱し、乾固直前まで水と硫酸を除去する。
4.冷却後、濃硫酸約5mlを追加し、ケルダールフラスコの口を漏斗で覆い、再び加熱する。
【0044】
5.白煙がケルダールフラスコ内に充満し始めた後、濃硫酸数滴を徐々に加え、ケルダールフラスコ内が、NOxガスで茶褐色を呈した後、硫酸の滴下を中止し、白煙に置換されるまで加熱を続ける。加熱下の硫酸滴下操作を数回繰り返す。
6.ケルダールフラスコ内の溶液が無色〜黄緑色透明を呈した後硫酸の滴下を中止し、溶液中の残硫酸及び残水分を追い出す。
7.ケルダールフラスコの口を覆った漏斗を取り出し、残量2〜3mlになるまで強熱して硫酸を追い出す。
◎別に(試料)を加えない空試験も同時に実施する。
【0045】
得られた樹脂組成物を単軸押出機に供給しT−ダイキャスト法にて押出機設定温度210℃の条件下で製膜を行い、厚み30μmのフィルムを得た。
該フィルムについて下記の如く評価した。
【0046】
(加工性)
フィルム成形加工において、3時間の連続成形を行った時のフィルム上の外観を観察し、下記の項目を評価した。
▲1▼スジ
スジの有無を下記の基準で評価した
○・・・加工3時間経過してもスジの発生が見られなかった。
×・・・加工3時間以内にスジの発生が見られた。
【0047】
▲2▼フィッシュアイ
フィッシュアイの有無(フィルムサイズ:10cm×10cm)を下記の基準で評価した。
○・・・3個未満
△・・・4〜20個
×・・・21個以上
【0048】
▲3▼着色
着色の有無を下記の基準で評価した。
○・・・着色は認められなかった。
△・・・黄着色が僅かに認められた。
×・・・黄着色がひどく、実用上使用困難であった。
【0049】
(酸素透過度)
フィルム成形開始直後に得られるフィルムと開始5時間後に得られるフィルムにおいて、MOCON社のOXTRANを用いて、20℃で、100%RHの条件下で測定を行い、開始5時間後に得られるフィルムの酸素透過度(S2)と開始直後に得られるフィルムの酸素透過度(S1)の比(S2/S1)により評価した。
○・・・S2/S1が1.5未満
×・・・S2/S1が1.5以上
【0050】
実施例2
5lの容器に、イソプロピルアルコール150部、水150部を入れて、次いで水膨潤性層状無機化合物(C)として天然モンモリロナイト[膨潤力は水/イソプロピルアルコール=70/30(重量比)の混合溶剤に対して67ml/2g]5部を添加し撹拌して分散液(ロ)を得た。
更に、そこへ水100部を徐々に加え、40℃で2時間撹拌して(C)を膨潤させた後、EVOH(A2)(エチレン含有量30モル%、ケン化度99.6モル%、メルトインデックス(MI)3g/10分(210℃、荷重2160g))の水−アルコール混合溶液(濃度20%、水/アルコール=50/50(重量比))500部を添加し、90℃で2時間撹拌して完全溶解させた。
次に、得られた溶液を700部の冷水(5℃)に流し込み樹脂組成物を析出させ、真空乾燥を行った。
【0051】
乾燥して得られた樹脂組成物100部に対して、リン酸二水素ナトリウム(B)を含有するEVOH(D2)(エチレン含有量35モル%、ケン化度99.8モル%、メルトインデックス(MI)3g/10分(210℃、荷重2160g)、EVOHに対してリン酸二水素ナトリウムの含有量はリン酸根換算で440ppm)を300部混合して本発明の樹脂組成物を得た。(リン酸二水素ナトリウムの含有量は、リン酸根換算で、樹脂組成物全体に対330ppmであった)
得られた樹脂組成物について実施例1と同様の評価を行った。
【0052】
実施例3
実施例1において、リン酸をリン酸水素2ナトリウムに変更した以外は同様に行い、実施例1と同様に評価を行った。(リン酸水素2ナトリウムの含有量は、リン酸根換算で、樹脂組成物全体に対して60ppmであった)
【0053】
実施例4
実施例1において、水膨潤性層状無機化合物(C)としてNa型フッ素四珪素雲母[膨潤力は水/イソプロピルアルコール=70/30(重量比)の混合溶剤に対して96ml/2g]2部を用いた以外は同様に行い、実施例1と同様に評価を行った。
【0054】
比較例1
実施例1において、リン酸(B)を含有するEVOH(D1)を混合せず、EVOH(A1)及び水膨潤性層状無機化合物(C)を水/イソプロピルアルコール=280部/120部の混合溶剤中で混合した以外は同様に行い、実施例1と同様に評価を行った。
【0055】
比較例2
実施例1において、天然モンモリロナイトを添加せず、EVOH(A1)及びリン酸(B)からなる樹脂組成物(リン酸の含有量は、リン酸根換算で、樹脂組成物全体に対して75ppm)を用いて製膜した以外は同様に行い、実施例1と同様に評価を行った。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)からなり、リン酸化合物(B)の含有量が樹脂組成物全体に対して、リン酸根換算で10〜1000ppmであるため、フィルム、シート等の成形加工性に優れ、更にロングラン成形時のフィルムのガスバリヤー性に優れた効果を示すものである。これら樹脂組成物はフィルム、シート或いは容器等に供せられ、一般食品、レトルト食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
Claims (6)
- エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)、リン酸化合物(B)及び水膨潤性層状無機化合物(C)を含有してなり、リン酸化合物(B)の含有量が樹脂組成物全体に対して、リン酸根換算で10〜1000ppmであることを特徴とする樹脂組成物。
- エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)のエチレン含有量が10〜60モル%、ケン化度が80モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 水膨潤性層状無機化合物(C)が、20℃において水/アルコール=70/30(重量比)の混合溶剤に対して、30ml/2g以上の膨潤力(測定規格:日本ベントナイト工業会 標準試験方法容積法)を有することを特徴とする請求項1または2いずれか記載の樹脂組成物。
- 水膨潤性層状無機化合物(C)が、スメクタイト又は水膨潤性フッ素雲母系鉱物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物。
- 水膨潤性層状無機化合物(C)の含有量がエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)100重量部に対して30重量部以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を少なくとも1層とする積層体。
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