JP3841941B2 - 樹脂組成物の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)樹脂組成物の製造法に関し、更に詳しくは熱安定性、ロングラン成形性等に優れたEVOH樹脂組成物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
かかる成形にあたっては、通常溶融成形が行われ、かかる成形により、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状、チューブ状、パイプ状等の形状に加工されて実用に供されており、その加工性(成形性)は大変重要であり、かかる成形性を向上させるために、EVOHにリン酸化合物を配合することが試みられており、本出願人も熱安定性や溶融成形性(フィッシュアイやゲルの抑制等)の改善のためにEVOHをリン酸化合物で処理する方法を提案した(特開昭62−143954号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、昨今の新たなる成形物への要求性能の高まりに対応すべく、上記の技術について、詳細に検討を重ねた結果、直径が0.1mm以上のフィッシュアイやゲル等の改善は認められるものの、0.1mm未満の小さなものについては、上記の技術では必ずしも解決できるものではなく、成形条件等により0.1mm未満のフィッシュアイ等が発生する恐れがあり、新たなる改良が望まれることが判明した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、酢酸(B)およびリン酸化合物(C)を含有してなる樹脂組成物を製造するにあたり、酢酸(B)水溶液にリン酸化合物(C)を仕込んで溶解させた混合液(I)に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)を接触せしめることにより、溶融成形性に優れ、特に直径が0.1mm未満のフィッシュアイ等の発生を抑制することができ、かつロングラン成形時においても良好であるEVOHの樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明のEVOH(A)としては、特に限定されないが、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリヤー性、熱安定性、耐湿性等が低下して、好ましくない。
また、EVOH(A)は、メルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)が0.1〜100g/10分(更には0.5〜50g/10分)のものが好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、溶融成形性が低下して好ましくない。
【0006】
該EVOH(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば懸濁重合、エマルジョン重合、溶液重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
該EVOHは、少量であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0007】
上記のEVOH(A)と同時に含有されるのは、酢酸(B)およびリン酸化合物(C)で、かかるリン酸化合物(C)としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸水素亜鉛、リン酸水素バリウム、リン酸水素マンガン等を挙げることができ、好適にはリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムが用いられる。
【0008】
本発明においては、上記の(A)〜(C)を配合するにあたり、予め酢酸(B)水溶液にリン酸化合物(C)を仕込んで溶解させた混合液(I)を調製しておき、かかる混合液(I)にEVOH(A)を接触せしめて樹脂組成物を得ることを最大の特徴とするものであり、その方法について詳細に説明する。
酢酸(B)水溶液は、0.001〜0.1重量%程度のメタノール、エタノール、プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル等を含有していても差し支えない。
酢酸(B)水溶液中の酢酸濃度は、0.005〜1重量%が好ましく、更には0.01〜0.8重量%が好ましく、かかる濃度が0.005重量%未満では、酢酸の効力が発揮されなくなり、逆に1重量%を越えると混合するリン酸化合物の効力が発揮されなくなって好ましくない。
【0009】
次いで、得られた酢酸(B)水溶液にリン酸化合物(C)を溶解させて混合液(I)を得るのであるが、このときのリン酸化合物(C)の溶解量(含有量)は混合液(I)中に0.0001〜0.5重量%含有することが好ましく、更には0.001〜0.3重量%が好ましく、かかる濃度が0.0001重量%未満では、リン酸化合物の効力が発揮されなくなり、逆に0.5重量%を越えると酢酸の効力が発揮されなくなって好ましくない。
かかるリン酸化合物(C)の溶解は、20〜40℃程度で行うことが好ましい。
また、上記の混合液(I)を調製するにあたっては、あらかじめ酢酸(B)濃度1〜10重量%(更には3〜9重量%)の水溶液を作っておき、該水溶液にリン酸化合物(C)を溶解させた後、水希釈して上記のリン酸化合物(C)の含有量となるように調製することが、フィッシュアイの低減化の点で好ましい。
【0010】
最後に、得られた混合液(I)にEVOH(A)を接触せしめて、樹脂組成物を得るのであるが、最終的には混合液(I)にEVOH(A)を接触させて、EVOH(A)に上記の(B)および(C)を含有させればよく、かかる方法としては、特に限定されず、▲1▼混合液(I)中に直接EVOH(A)のペレットや粉体等を浸漬させて含有させる方法、▲2▼EVOH(A)の水/アルコール混合溶液の多孔性析出物を混合液(I)中に浸漬させて含有させる方法、▲3▼EVOH(A)の水/アルコール混合溶液に混合液(I)を添加後、(凝固槽等で)析出させて含有させる方法、▲4▼溶融状態のEVOH(A)に混合液(I)を添加して含有させる方法等が挙げられるが、(B)および(C)をより均一に効率良く含有させるという点では、▲2▼や▲3▼の方法が好適に用いられる。
【0011】
上記の方法により目的とする樹脂組成物が得られるのであるが、EVOH(A)に含有される(B)および(C)の量は特に限定されないが、酢酸(B)の含有量としては、(A)100重量部に対して0.05重量部以下が好ましく、更に好ましくは0.0005〜0.03重量部、特に好ましくは0.0005〜0.01重量部で、かかる(B)の含有量が0.05重量部を越えると成形時のロングラン成形性が低下して好ましくない。
また、リン酸化合物(C)の含有量としては、リン酸根換算で(A)100重量部に対して0.0005〜0.05重量部が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.04重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部で、かかる(C)の含有量がリン酸根換算で0.0005重量部未満ではロングラン成形性が低下し、逆に0.05重量部を越えると成形物の外観性が低下して好ましくない。
【0012】
上記の(B)および(C)の含有量を調整するには、混合液(I)のそれぞれの含有量やEVOH(A)との接触時間、温度、撹拌速度、接触後の乾燥条件等をコントロールすればよく、特に限定はされない。
尚、上記の(B)および(C)の含有量の測定にあたっては、以下の方法によって測定することができる。
(B):樹脂組成物を熱水抽出して、抽出液をアルカリで中和滴定して酢酸量を定量
(C):樹脂組成物を温希硫酸抽出して、吸光光度法(モリブデン青)により、リン酸根を定量(JIS K 0102に準拠)
【0013】
上記の如き本発明の方法により、熱安定性やロングラン成形性等に優れた樹脂組成物が得られるわけであるが、かかる樹脂組成物には、更に、必要に応じて、可塑剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、フィラー、他樹脂などの添加剤を使用することも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
また、EVOH(A)として、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリヤー性を保持したまま、更に高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性が向上するので有用である。
【0014】
かくして本発明の方法で得られた樹脂組成物は、成形物の用途に多用され、溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することも多い。
溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜250℃の範囲から選ぶことが多い。
【0015】
本発明の方法で得られた樹脂組成物は、上述の如き成形物に用いることができるが、特に該樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる積層体として用いることが好ましく、実用に適した積層体が得られる。
【0016】
該積層体を製造するに当たっては、本発明の方法で得られた樹脂組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該組成物のフィルム、シートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該組成物を溶融押出する方法、該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたEVOH組成物のフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
【0017】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物も共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PETが好ましく用いられる。
【0018】
更に、本発明の方法で得られた樹脂組成物から一旦フィルム、シート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
積層体の層構成は、本発明の方法で得られた樹脂組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0019】
又、共押出の場合、aにb、bにaをブレンドしたり、aやbの少なくとも一方に両層面の密着性を向上させる樹脂を配合することもある。
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
【0020】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等の延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0021】
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。又、得られた延伸フィルムは必要に応じ、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深しぼり加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0022】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られた積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
実施例1
[混合液(I)の調製]
6%の酢酸(B)水溶液に、リン酸二水素カルシウム(C)を0.35%となる様に溶解させ、更にこれを50倍の水で希釈して、最終的に0.12%の酢酸(B)及び0.007%のリン酸二水素カルシウム(C)を含有する混合液(I)を得た。
エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)のケン化後の水/メタノール溶液の多孔性析出物(EVOH(A)100部に対して水100部含有)を水で洗浄後、上記の混合液(I)に投入し、30℃で5時間撹拌した後、110℃で8時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カルシウム(C)をそれぞれ0.009重量部および0.005重量部(リン酸根換算)含有する樹脂組成物を得た。
次いで、得られた樹脂組成物をTダイを備えた単軸押出機に供給し、下記の条件で、厚さ120μmのEVOHフィルムの成形を行って、下記の要領で直径が0.1mm未満の微細なフィッシュアイの発生およびロングラン成形性の評価を行った。
【0024】
Figure 0003841941
【0025】
(フィッシュアイ)
上記の成形直後のフィルム(10cm×10cm)について、直径が0.01mm以上で0.1mm未満のフィッシュアイの発生状況を目視観察して、以下のとおり評価とした。
◎ −−− 0〜 3個
○ −−− 4〜10個
△ −−− 11〜50個
× −−− 51個以上
(ロングラン成形性)
また、上記の成形を10日間連続に行って、その時の成形フィルムについて、同様にフィッシュアイの増加状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
○ −−− 増加は認められなかった
△ −−− 若干の増加が認められた
× −−− 著しい増加が認められた
【0026】
実施例2
[混合液(I)の調製]
0.15%の酢酸(B)水溶液に、リン酸二水素カリウム(C)を混合液(I)中に0.057%となる様に溶解させて混合液(I)を得た。
次いで、上記の混合液(I)に、エチレン含有量40モル%、ケン化度99モル%、MI6g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)を投入して、30℃で4時間撹拌した後、110℃で9時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カリウム(C)をそれぞれ0.01重量部および0.02重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、実施例1と同様に評価を行った。
【0027】
実施例3
実施例1において、6%の酢酸(B)水溶液に、0.92%のリン酸二水素マグネシウム(C)を仕込んで溶解させた後、50倍の水で希釈して混合液(I)を調製した以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素マグネシウム(C)をそれぞれ0.009重量部および0.018重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0028】
実施例4
実施例1において、4%の酢酸(B)水溶液に、0.08%のリン酸二水素ナトリウム(C)を仕込んで溶解させた後、50倍の水で希釈して混合液(I)を調製した以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素ナトリウム(C)をそれぞれ0.006重量部および0.008重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0029】
実施例5
実施例1において、EVOH(A)として、エチレン含有量30モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A1)とエチレン含有量42モル%、ケン化度99.6モル%、MI15g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A2)の混合物(A1/A2の混合重量比が70/30)を用いた以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カルシウム(C)をそれぞれ0.009重量部および0.005重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0030】
実施例6
実施例1において、EVOH(A)として、エチレン含有量30モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A1)とエチレン含有量47モル%、ケン化度97モル%、MI35g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A2)の混合物(A1/A2の混合重量比が80/20)を用いた以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カルシウム(C)をそれぞれ0.009重量部および0.005重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0031】
実施例7
0.6%の酢酸(B)水溶液に、リン酸二水素カルシウム(C)を混合液(I)中に0.2%となる様に仕込んで溶解させて混合液(I)を得た。
次いで、上記の混合液をエチレン含有量40モル%、ケン化度99モル%、MI6g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)のケン化後の水/メタノール溶液に練り込み、多孔性析出物(ペレット)とした後、水で洗浄し、110℃で9時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カルシウム(C)をそれぞれ0.01重量部および0.022重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様の評価を行った。
【0032】
実施例8
8%の酢酸(B)水溶液に、リン酸二水素マグネシウム(C)を0.75%となる様に仕込んで溶解させ、更にこれを25倍の水で希釈して、最終的に0.32%の酢酸(B)及び0.03%のリン酸二水素マグネシウム(C)を含有する混合液(I)を得た。
次いで、上記の混合液をエチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)のケン化後の水/メタノール溶液に練り込み、多孔性析出物(ペレット)とした後、水で洗浄し、110℃で8時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素マグネシウム(C)をそれぞれ0.01重量部および0.007重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様の評価を行った。
【0033】
比較例1
実施例1のEVOH(A)のケン化後の水/メタノール溶液の多孔性析出物(EVOH(A)100部に対して水100部含有)100部に水500部を混合してスラリー化し、更に1%酢酸(B)水溶液50部および0.3%リン酸二水素カルシウム(C)水溶液50部を同時に加えて、30℃で5時間撹拌した後、110℃で8時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、酢酸(B)およびリン酸二水素カルシウム(C)をそれぞれ0.01重量部および0.01重量部(リン酸根換算)含有する樹脂組成物を得て、実施例1と同様に評価を行った。
実施例、比較例のそれぞれの評価結果を表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003841941
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法で得られた樹脂組成物は、直径が0.1mm未満の微細なフィッシュアイの発生がなく、かつロングラン成形性にも優れ、各種の積層体とすることができ、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用で、延伸を伴う二次加工製品等にも好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、酢酸(B)およびリン酸化合物(C)を含有してなる樹脂組成物を製造するにあたり、酢酸(B)水溶液にリン酸化合物(C)を仕込んで溶解させた混合液(I)に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)を接触せしめることを特徴とする樹脂組成物の製造法。
  2. 混合液(I)中の酢酸(B)濃度が0.005〜1重量%であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造法。
  3. 混合液(I)中のリン酸化合物(C)濃度が0.0001〜0.5重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物の製造法。
  4. 混合液(I)が、あらかじめ酢酸(B)濃度1〜10重量%の水溶液にリン酸化合物(C)を仕込んで溶解させた後、水希釈して調製されたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物の製造法。
  5. リン酸化合物(C)がリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物の製造法。
  6. 樹脂組成物中の(B)の含有量を(A)100重量部に対して0.05重量部以下、(C)の含有量をリン酸根換算で(A)100重量部に対して0.0005〜0.05重量部とすることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物の製造法。
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