JP3871437B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融成形性に優れたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットを得るためのエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下EVOHと略記する)は透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
EVOHは、エチレンと酢酸ビニルを共重合し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を得て、更にケン化して得られ、通常該EVOHのアルコール溶液もしくはアルコール/水の混合溶液をストランド状に成形し、該ストランドを切断してペレットとし、次に乾燥して製品ペレットとなるが、該ペレットの乾燥方法については、例えば、特公昭46−37665号公報には、EVOHを不活性ガスで酸素含有率5%以下の雰囲気下に95℃以下で撹拌を伴う流動乾燥を行うことが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記開示技術では、EVOHのフィッシュアイの減少については効果が見られるものの、溶融成形時のトルク変動が大きく、更には、成形物の厚みの均一性について欠点があることが明らかになり、また、成形条件によっては得られたフィルムには0.1mm前後の微小なフィッシュアイが多発し、フィルム外観等の点でその商品価値が低下することが判明した。特に積層体等においては、機械的強度、熱安定性、層間接着性の向上を目的として、EVOHにホウ素化合物、酢酸塩、リン酸化合物の少なくとも1つを添加した場合、該EVOHの成形物に微小なフィッシュアイが多発するという傾向が強いことが明らかになった。現在、市場からはこれらの欠点を解決し溶融成形性に優れ、かつ微小なフィッシュアイがないEVOHペレットが得られる乾燥方法が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルコール溶液もしくはアルコール/水の混合溶液に溶解させられたEVOHペーストをストランド状に成形し、該ストランドを切断して得られたペレットを乾燥する際に、少なくとも二段階の乾燥を行い、その第一次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0〜10m/secとし、かつ第二次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0m/sec未満とすると、目的とするEVOHペレットが得られることを見出し本発明を完成するに到った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるEVOHとしては、特に限定されないが、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが好ましく、該エチレン含有量が、20モル%未満では溶融成形物の高湿時のガスバリアー性が大きく低下し、逆に60モル%を越える場合や、該ケン化度が90モル%未満の場合には、ガスバリアー性や耐薬品性が低下して好ましくない。
【0006】
本発明に用いるEVOHには、少量の変性成分として、例えば不飽和カルボン酸、その無水物、塩、エステルやα−オレフィン類、ビニルエーテル、ビニルシラン、ニトリル、アミド類をはじめ任意の変性重合成分が含まれていても良い。又、本発明においては、エチレン含有量及びケン化度が上記の如き範囲のEVOHであれば、単独で用いても、異なるEVOHを2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0007】
本発明の乾燥の対象となるEVOHペレットは、EVOHのメタノール等のアルコール溶液もしくはアルコール/水の混合溶液をストランド状に成形し、該ストランドを切断してペレット化したものであれば特に制限されないが、含水率が20〜80重量%(更には30〜70重量%)になるように調整したものが好ましい。
上記において、含水率が20重量%未満では、得られるEVOHペレットを溶融成形した場合に微小フィッシュアイが多発し、逆に80重量%を越えると第一次乾燥あるいは第二次乾燥させる段階でペレットが融着を起こす場合があり好ましくない。
【0008】
本発明では該ペレットを乾燥する際に、少なくとも二段階の乾燥を行い、その第一次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0〜10m/secとし、かつ第二次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0m/sec未満とすることを最大の特徴とするもので、かかる方法について詳細に説明する。
【0009】
ペレット状のEVOHは、まず第一次乾燥が行われるわけであるが、このときの乾燥器内のペレット表面を通過する加熱ガスの速度は1.0〜10m/secとすることが必要であり、好ましくは1.0〜5.0m/sec、更には1.0〜3.0m/secで、かかる速度が1.0m/sec未満ではペレットの融着が起こり、逆に10m/secを越えると微粉やペレットの欠けが発生し不適当である。該速度は、加熱ガスの通過量を調節したり、乾燥器内に邪魔板等設けることによりコントロールされる。
【0010】
かかる条件を満足する第一次乾燥の具体的な方法としては、特に制限されず、静置乾燥、流動乾燥等の方法を採用することができ、該静置乾燥には回分式通気流箱型乾燥器、バンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器が用いられ、流動乾燥には円筒、溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、(塔型、箱型)回転乾燥器、(半連続式2段、連続横型多室式、連続多孔板多段)流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器が用いられる。
【0011】
この時用いられる加熱ガスとしては空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては95℃以下が好ましく、更には40〜90℃、特には60〜90℃である。
また、乾燥の時間としては5分〜48時間が好ましく、更には10分〜24時間である。
【0012】
上記の第一次乾燥によりEVOHの含水率が5〜60重量%になるように乾燥を行うのが好ましく、更には10〜55重量%である。更に第一次乾燥後の含水率を第一次乾燥前の含水率より5重量%以上(更には10〜45重量%)低くするように乾燥を行うのが好ましい。かかる含水率が5重量%未満では得られるEVOHペレットを溶融成形した場合に吐出変動が起こりやすくなり、逆に60重量%を越えると、第二次乾燥でペレットの融着が起こり易くなり好ましくない。又、第一次乾燥後の含水率の低下が乾燥前よりも5重量%未満の場合、得られるEVOHペレットを溶融成形した場合に微小フィッシュアイが多発する傾向にあり好ましくない。
【0013】
上記の第一次乾燥を行った後、第二次乾燥が行われるのであるが、この時の乾燥器内の加熱ガスのペレット表面を通過する速度は1.0m/sec未満とすることが必要で、好ましくは0.01〜0.5m/secである。かかる速度が1.0m/secを越えると微粉やペレット欠けが発生し不適当である。 また、この時の乾燥方法及び乾燥器は前記の乾燥方法及び乾燥器は前記の第一次乾燥に記載の中から選択することができる。
また、この時用いられる加熱ガスとしては空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては75℃以上が好ましく、更には85〜150℃である。
【0014】
また、乾燥の時間としては10分〜72時間が好ましく、更には1〜48時間である。
上記の第二次乾燥によりEVOHの含水率が2.0重量%以下、特に0.001〜2.0重量%(更には0.01〜1.0重量%)になるようにするのが好ましい。含水率が2.0重量%を越えると成形品中に水の発泡が発生しやすくなり好ましくない。
【0015】
かくして本発明の乾燥方法により、溶融成形性に優れ、微小フィッシュアイが少ないEVOHペレットが得られるわけであるが、本発明においては、乾燥前のEVOHに、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸化合物の少なくとも1つが含有されるとき、本発明の作用効果が顕著に発揮される。
該ホウ素化合物としては、ホウ酸またはその金属塩、例えばホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第一マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)が用いられる。
【0016】
かかるホウ素化合物の含有量は、ホウ素換算でEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部で、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.002〜0.1重量部で、かかるホウ素化合物の含有量が、ホウ素換算で0.001重量部未満では、ホウ素化合物の添加によるEVOHペレットの機械的強度、熱安定性、層間接着性の向上が期待できず、逆に1重量部を越えるとゲルやフィッシュアイが多発する傾向があり好ましくない。
【0017】
EVOHにホウ素化合物を含有させる方法としては、特に限定されず、▲1▼EVOHに直接ホウ素化合物をブレンドする方法、▲2▼ホウ素化合物を水等の溶媒に溶解した後、EVOHに混合する方法、▲3▼ホウ素化合物の溶液にEVOHを浸漬させる方法、▲4▼溶融状態のEVOHにホウ素化合物をブレンドする方法、▲5▼EVOHの水/アルコール溶液にホウ素化合物の溶液を添加後、凝固槽中に析出させる方法、▲6▼EVOHの水/アルコール溶液の多孔性析出物をホウ素化合物の溶液中で含浸させる方法等が挙げられるが、ホウ素化合物をより均一に効率良く分散させるという点では、▲5▼や▲6▼の方法が好適に用いられる。
【0018】
また、EVOHに含有させる酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸コバルト、酢酸亜鉛等を挙げることができるが、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムが好適に用いられ、酢酸塩の含有量は、金属換算でEVOH100重量部に対して0.001〜0.05重量部で、更に好ましくは0.0015〜0.04重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部で、かかる酢酸塩の含有量が金属換算で0.001重量部未満では酢酸塩の添加によるEVOHペレットの機械的強度、熱安定性、層間接着性の向上が期待できず、逆に0.05重量部を越えると成形物の外観性が低下する傾向があり好ましくない。
EVOHに酢酸塩を含有させる方法も特に限定されず、上記のホウ素化合物と同様の含有方法を採用することができる。
また、上記の酢酸塩含有量の調整にあたっては、EVOHの製造時に調整することも可能で、例えば、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム)を酢酸で中和して、副生成する酢酸ナトリウムの量を水洗処理等により調整したりすることも可能である。
【0019】
更に、EVOHに含有させるリン酸化合物としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸水素亜鉛、リン酸水素バリウム、リン酸水素マンガン等を挙げることができるが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムが好適に用いられ、リン酸化合物の含有量は、リン酸根換算でEVOH100重量部に対して0.0005〜0.05重量部で、更に好ましくは0.001〜0.04重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部で、かかるリン酸化合物の含有量がリン酸根換算で0.0005重量部未満ではリン酸化合物の添加によるEVOHペレットの機械的強度、熱安定性、層間接着性の向上が期待できず、逆に0.05重量部を越えると成形物の外観性が低下する傾向があり好ましくない。
EVOHにリン酸化合物を含有させる方法も特に限定されず、上記のホウ素化合物と同様の含有方法を採用することができる。
【0020】
上記の乾燥方法により得られたEVOHペレットは、成形物の用途に多用され、溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することが多い。
【0021】
溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
また、該EVOHペレットは、積層体用途にも多用され、特にEVOHからなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる積層体として用いられる。
【0022】
該積層体を製造するに当たっては、EVOHの層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該EVOHのフィルム、シートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該EVOHを溶融押出する方法、該EVOHと他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたEVOHのフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0023】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。EVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PETが好ましく用いられる。
【0024】
更に、本発明の方法で得られるEVOHペレットから一旦フィルム、シート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
積層体の層構成は、EVOHの層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0025】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
【0026】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0027】
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
また、生肉、加工肉、チーズ等を熱収縮包装する用途に用いる場合は、延伸後の熱固定は行わなず製品フィルムとし、上記生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納して、50〜130℃好ましくは70〜120℃で2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装する。
【0028】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、例中、「%」、「部」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
液温50℃に調整したEVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%]のメタノール/水〔50/50(重量比)〕混合溶液をノズルより5℃に維持された水槽にストランド状に押し出した。凝固終了後、水槽の端部に付設された引き取りローラーを経て、ストランド状物をカッターで切断し、直径4mm、長さ4mmのペレット(1)を得て、更に該ペレット(1)を30℃の温水中に投入して、4時間撹拌して、含水率50%のEVOHペレット(2)を得た後、該ペレット(2)を0.2%ホウ酸水溶液に投入し、30℃で5時間撹拌して、含水率50%のペレット(3)を得た。該ペレット(3)中のホウ酸含有量はEVOH100部に対して0.03部(ホウ素換算)であった。該ペレット(3)を下記の第一次乾燥工程及び第二次乾燥工程を経て乾燥ペレットとした。<第一次乾燥工程>
回分式塔型流動層乾燥器にて75℃の窒素ガスをペレット(3)表面を2.0m/secの速度で通過させ、3時間乾燥を行って含水率20%のペレット(4)を得た。第一次乾燥前後の含水率差は30%であった。
【0030】
<第二次乾燥工程>
次いで、上記ペレット(4)を、回分式通気流箱型乾燥器により、125℃の窒素ガスで、ペレット表面を0.3m/secの速度で通過させ18時間乾燥を行って含水率0.3%の乾燥ペレットを得た。
得られた乾燥ペレットをフィードブロック5層Tダイを備えた多層押出装置に中間層として供給して、ポリエチレン(三菱化学社製、ノバテックLD LF525H)、接着樹脂(三菱化学社製、モディクAP 240H)を用いて、以下の条件でポリエチレン層/接着樹脂層/上記EVOH層/接着樹脂層/ポリエチレン層(厚み50/10/20/10/50μ)の3種5層の多層積層体(フィルム)を作製して、以下のようにフィッシュアイを測定して評価した。また、96時間連続運転を行って、その時のEVOH押出機のトルク変動、EVOH層の膜厚変化を評価した。
【0031】
【0032】
(フィッシュアイの測定)
上記の成形直後のフィルム(10cm×10cm)の微小フィッシュアイの発生状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
◎・・・0〜3個
○・・・4〜10個
△・・・11〜50個
×・・・51個以上
評価結果を表1に示した。
【0033】
(トルク変動)
連続製膜中のEVOH押出機のモーター負荷(スクリュー回転数40rpm)でのスクリュートルクA(アンペア)の変動を以下のとおり評価した。
○・・・5%未満の変動
△・・・5〜10%未満の変動
×・・・10%以上の変動
【0034】
(EVOH層膜厚変化)
1時間毎にフィルムを採取してMD方向の断面を顕微鏡で観察して、EVOH層の厚みを測り、20μmを中心値として変動比を求めて、以下のとおり評価した。
○・・・±5%未満の変動比
△・・・±5〜±10%未満の変動比
×・・・±10%以上の変動比
上記各項目の評価結果を表1に示した。
【0035】
実施例2
実施例1で第一次乾燥工程の乾燥器として流動層乾燥器(連続横型多室式)を使用して、窒素ガスをペレット(3)表面を1.5m/secの速度で通過させた以外は同様にして、含水率22%のペレット(4)を得た。第一次乾燥前後の含水率差は28%であった。第二次乾燥工程も実施例1と同様に実施し、含水率0.3%の乾燥ペレットを得、実施例1と同様に評価した。
【0036】
実施例3
実施例1で第二次乾燥工程で、ペレット(4)を、回分式回転乾燥器により、125℃の窒素ガスで、ペレット表面を0.08m/secの速度で通過させた以外は同様にして、含水率0.3%の乾燥ペレットを得、実施例1と同様に評価した。
【0037】
実施例4
実施例1で0.2%ホウ酸水溶液の替わりに0.03%酢酸カルシウム水溶液を用いて同様に処理した。乾燥前のペレット中の酢酸カルシウム含有量はEVOH100部に対して0.0075部(カルシウム換算)であった。実施例1と同様に第一次乾燥、第二次乾燥を実施し、得られた含水率0.3%の乾燥ペレットを実施例1と同様に評価した。
【0038】
実施例5
実施例1で0.2%ホウ酸水溶液の替わりに0.02%リン酸二水素マグネシム水溶液を用いて同様に処理した。乾燥前のペレット中のリン酸二水素マグネシム含有量はEVOH100部に対して0.018部(リン酸根換算)であった。実施例1と同様に第一次乾燥、第二次乾燥を実施し、得られた含水率0.3%の乾燥ペレットを実施例1と同様に評価した。
【0039】
実施例6
実施例1と同様にして、ペレット(2)を得、ホウ酸処理を行わずに、実施例1と同様の第一次乾燥、第二次乾燥を行い、含水率0.3%の乾燥ペレットを得た。
得られた乾燥ペレットを実施例1と同様に評価した。
【0040】
比較例1
実施例1の第一次乾燥工程で、窒素ガスをペレット(3)表面を0.3m/secの速度で通過させた以外は同様にして含水率40%のペレット(4)を得た。第一次乾燥前後の含水率差は10%であった。第二次乾燥工程も実施例1と同様に実施し、含水率0.6%の乾燥ペレットを得、実施例1と同様に評価した。
【0041】
比較例2
実施例1の第一次乾燥工程で、窒素ガスをペレット(3)表面を15m/secの速度で通過させた以外は同様にして含水率3.0%のペレット(4)を得た。第一次乾燥前後の含水率差は47%であった。第二次乾燥工程も実施例1と同様に実施し、含水率0.1%の乾燥ペレットを得、実施例1と同様に評価した。
【0042】
比較例3
実施例1において、第二次乾燥工程の通過速度を2.0m/secとして、含水率0.1%の乾燥ペレットを得、実施例1と同様に評価した。
実施例2〜6、比較例1〜3の評価結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明では、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアルコール溶液もしくはアルコール/水の混合溶液をストランド状に成形し、該ストランドを切断して得られたペレットを乾燥する際に、少なくとも二段階の乾燥を行い、その第一次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0〜10m/secとし、かつ第二次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0m/sec未満としているので、得られたEVOHペレットは、溶融成形性に優れ、微小フィッシュアイの少ない成形物を得ることができ、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用である。
Claims (5)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアルコール溶液もしくはアルコール/水の混合溶液をストランド状に成形し、該ストランドを切断して得られたペレットを乾燥する際に、少なくとも二段階の乾燥を行い、その第一次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0〜10m/secとし、かつ第二次乾燥ではペレット表面を通過する加熱ガスの速度を1.0m/sec未満とすることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの含水率が第一次乾燥前で20〜80重量%、第一次乾燥後で5〜60重量%で、かつ第一次乾燥前後のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの含水率差が5.0重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの含水率が第二次乾燥後で2.0重量%以下であることを特徴とする請求項1あるいは2記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレット中にホウ素化合物、酢酸塩、リン酸化合物の少なくとも1つが含有されることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法。
- エチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの乾燥方法。
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