JP3895011B2 - 樹脂組成物およびその積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)樹脂組成物及びそれを用いた積層体に関し、更に詳しくは溶融成形時のロングラン性に優れ、フィッシュアイやスジが少なく外観性に優れ、かつ積層体としたときに層間接着性に優れた樹脂組成物及びそれを用いた積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
かかる成形にあたっては、通常溶融成形が行われ、かかる成形により、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状、チューブ状、パイプ状等の形状に加工されて実用に供されており、その加工性(成形性)は大変重要であり、また、一般的には機械的強度、耐湿性、ヒートシール性等を付与するためにポリオレフィン系樹脂等の基材と接着剤層を介して共押出されて積層体とされており、該積層体の層間接着性も重要である。
即ち、成形物の外観性(フィッシュアイやスジのない成形物)、溶融成形時のロングラン性(長時間の成形においてもフィッシュアイやスジのない成形物が得られる)、層間接着性等を十分満足する必要がある。
かかる層間接着性の向上のためにEVOHにホウ素化合物を配合することが提案されており(特開昭59−192564号公報)、本出願人も溶融成形性の改善のためにEVOHにホウ素やその塩を配合した組成物の成形法を提案した(特開昭55−12108号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる特開昭59−192564号公報開示技術や特開昭55−12108号公報開示技術では、上記の成形物の外観性や溶融成形時のロングラン性については十分に考慮されておらず、更に層間接着性についても新なる改善が望まれるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、エチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度が90モル%以上のEVOH(A)、ホウ素化合物(B)、酢酸(C)およびリン酸化合物(D)を含有してなり、かつ(B)の含有量がホウ素換算で(A)100重量部に対して0.001〜1重量部、(C)の含有量が(A)100重量部に対して0.05重量部以下、(D)の含有量がリン酸根換算で(A)100重量部に対して0.0005〜0.05重量である樹脂組成物が、かかる課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
尚、上記の(B)〜(D)の含有量の測定にあたっては、以下の方法によって測定することができる。
(B):樹脂組成物をアルカリ溶融して、IPC発光分光分析により、ホウ素量を定量
(C):樹脂組成物を熱水抽出して、抽出液をアルカリで中和滴定して酢酸量を定量
(D):樹脂組成物を温希硫酸抽出して、吸光光度法(モリブデン青)により、リン酸根を定量(JIS K 0102に準拠)
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明のEVOH(A)としては、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリヤー性、熱安定性、耐湿性等が低下して、本発明の目的を達成することができない。
また、EVOH(A)は、メルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)が0.5〜100g/10分(更には1〜50g/10分)のものが好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械的強度が不足して好ましくない。
【0006】
該EVOH(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、公知の任意の重合法、例えば懸濁重合、エマルジョン重合、溶液重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
該EVOHは、少量であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0007】
上記のEVOH(A)に含有されるホウ素化合物(B)としては、ホウ酸またはその金属塩、例えばホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)が用いられる。
【0008】
かかる(B)の含有量は、ホウ素換算で(A)100重量部に対して0.001〜1重量部で、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.002〜0.1重量部で、かかる(B)の含有量が、ホウ素換算で0.001重量部未満では(B)含有の効果は得られず、逆に1重量%を越えるとゲルやフィッシュアイが多発して、本発明の目的を達成することができない。
(A)に(B)を含有させる方法としては、特に限定されず、▲1▼(A)に直接(B)をブレンドする方法、▲2▼(B)を水等の溶媒に溶解した後、(A)に混合する方法、▲3▼(B)の溶液に(A)を浸漬させる方法、▲4▼溶融状態の(A)に(B)をブレンドする方法、▲5▼(A)の水/アルコール溶液に(B)の溶液を添加後、凝固槽中に析出させてその(多孔性)析出物を乾燥する方法、▲6▼(A)の水/アルコール溶液の多孔性析出物を(B)の溶液中で含浸させた後、乾燥する方法等が挙げられるが、(B)をより均一に効率良く分散させるという点では、▲5▼や▲6▼の方法が好適に用いられる。
【0009】
また、上記のEVOH(A)に含有される酢酸(C)の含有量は、(A)100重量部に対して0.05重量部以下で、更に好ましくは0.0005〜0.03重量部、特に好ましくは0.0005〜0.01重量部で、かかる(C)の含有量が0.05重量部を越えるとロングラン性が低下して、本発明の目的を達成することができない。
(A)に(C)を含有させる方法としては、特に限定されず、上記の(B)と同様の含有方法を採用することができる。
【0010】
更に、上記のEVOH(A)に含有されるリン酸化合物(D)としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸水素亜鉛、リン酸水素バリウム、リン酸水素マンガン等を挙げることができるが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムが好適に用いられ、(D)の含有量は、リン酸根換算で(A)100重量部に対して0.0005〜0.05重量部で、更に好ましくは0.001〜0.04重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部で、かかる(D)の含有量がリン酸根換算で0.0005重量部未満ではロングラン性や層間接着性が低下し、逆に0.05重量部を越えると成形物の外観性が低下して、本発明の目的を達成することができない。
(A)に(D)を含有させる方法も特に限定されず、上記の(B)と同様の含有方法を採用することができる。
【0011】
本発明においては、上記の如きEVOH(A)に、ホウ素化合物(B)、酢酸(C)およびリン酸化合物(D)を特定量含有させることにより、はじめて目的とする樹脂組成物が得られるのであって、これらの条件を満たさない場合は上記の如く本発明の目的は達成できないものである。
上記の如き本発明の樹脂組成物には、更に、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、フィラー、他樹脂などの添加剤を使用することも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
また、EVOH(A)として、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリヤー性を保持したまま、更に高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性が向上するので有用である。
【0012】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、成形物の用途に多用され、溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することも多い。
溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜250℃の範囲から選ぶことが多い。
【0013】
本発明で得られた樹脂組成物は、上述の如き成形物に用いることができるが、特に該樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる積層体として用いることが好ましく、実用に適した積層体が得られる。
該積層体は、本発明のEVOH組成物を用いているため、ガスバリヤー性、透明性はもとより、高延伸時および真空圧空成形や深絞り成形のような2次加工時の層間接着性に非常に優れた効果を示すものである。
【0014】
該積層体を製造するに当たっては、本発明で得られたEVOH組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該組成物のフィルム、シートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該組成物を溶融押出する方法、該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたEVOH組成物のフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
【0015】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物も共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PETが好ましく用いられる。
【0016】
更に、本発明で得られた樹脂組成物から一旦フィルム、シート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
積層体の層構成は、本発明で得られた樹脂組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0017】
又、共押出の場合、aにb、bにaをブレンドしたり、aやbの少なくとも一方に両層面の密着性を向上させる樹脂を配合することもある。
本発明においては、該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、破断、ピンホール、クラック、デラミ等の生じない延伸性および層間接着性に優れた効果を示すので、非常に優れた積層体である。
【0018】
延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好である。
本発明においては、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
【0019】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0020】
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。又、得られる延伸フィルムは必要に応じ、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深しぼり加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0021】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
実施例1
エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)のケン化後の水/メタノール溶液の多孔性析出物(EVOH(A)100部に対して水100部含有)を0.5%の酢酸水溶液で洗浄し、更に水で洗浄後、0.2%のホウ酸(B)、0.1%の酢酸(C)および0.015%のリン酸二水素ナトリウム(D)を含有する水溶液中に投入し、30℃で5時間撹拌した後、110℃で8時間乾燥を行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.03重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.01重量部(リン酸根換算)含有する本発明のEVOH組成物を得た。
【0023】
次いで、得られたEVOH組成物をTダイを備えた単軸押出機に供給し、下記の条件で、厚さ120μmのEVOHフィルムの成形を行って、下記の要領で外観性およびロングラン性の評価を行った。
【0024】
(外観性)
上記の成形直後のフィルム(10cm×10cm)の外観性について、▲1▼スジおよび▲2▼フィッシュアイの発生状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
▲1▼スジ
○ −−− スジは認められなかった
△ −−− スジが僅かに認められるが、実用上問題なし
× −−− スジが多発し、実用上使用不可
▲2▼フィッシュアイ
◎ −−− 0〜 3個
○ −−− 4〜10個
△ −−− 11〜50個
× −−− 51個以上
【0025】
(ロングラン性)
また、上記の成形を10日間連続に行って、その時の成形フィルムについて、スジ、ゲル、フィッシュアイの増加状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
○ −−− 増加は認められなかった
△ −−− 若干の増加が認められた
× −−− 著しい増加が認められた
また、得られたEVOH組成物を用いて、フィードブロック5層Tダイにより、ポリプロピレン層/接着樹脂層/EVOH組成物層/接着樹脂層/ポリプロピレン層の層構成となるように製膜し、多層積層フィルムを作製した。
尚、フィルムの構成は、両外層のポリプロピレン層(ポリプロピレンのMIが1.2g/10分)が100μm、接着樹脂層(接着樹脂が無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、そのMIが2.6g/10分)が25μm、中間層のEVOH組成物層が50μmとした。
かかる多層積層フィルムについて、延伸ムラおよび層間接着性を下記の如く評価した。
【0026】
(延伸ムラ)
上記の多層構造体を8cm×8cmにサンプリングし、該サンプルを150℃で1分間予熱し、100mm/secの延伸速度で、縦方向に3倍、横方向に3倍の順(延伸倍率:9倍)で逐次二軸延伸を行い、得られた延伸フィルムの外観変化により下記の基準で評価した。
◎ −−− スジの発生は全く認められなかった
○ −−− 小さなスジが僅かに認められるものの、実用上問題なし
△ −−− 大きなスジが1〜2本のスジが発生し、実用上の使用に制限あり
× −−− 大きなスジが3本以上発生し、実用上使用不可
【0027】
(層間接着性)
上記の多層構造体の延伸フィルムのEVOH層と接着剤層の接着強度をオートグラフにて、20℃、引張速度300mm/minでTピール法により測定して、以下のとおり評価した。
○ −−− 1000g/15mm以上
△ −−− 300〜1000g/15mm未満
× −−− 300g/15mm未満
【0028】
実施例2
実施例1において、エチレン含有量40モル%、ケン化度99モル%、MI30g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A)を用いて、0.2%のホウ酸(B)、0.1%の酢酸(C)および0.007%のリン酸二水素カルシウムを含有する水溶液で処理した以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素カルシウム(D)をそれぞれ0.02重量部(ホウ素換算)、0.008重量部および0.005重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、実施例1と同様に評価を行った。
【0029】
実施例3
実施例1において、0.5%のホウ酸(B)、0.1%の酢酸(C)および0.018%のリン酸二水素マグネシウム(D)を含有する水溶液で処理した以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素マグネシウム(D)をそれぞれ0.07重量部(ホウ素換算)、0.008重量部および0.015重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0030】
実施例4
実施例2において、0.1%のホウ酸(B)、0.05%の酢酸(C)および0.01%のリン酸二水素カリウム(D)を含有する水溶液で処理した以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素カリウム(D)をそれぞれ0.009重量部(ホウ素換算)、0.005重量部および0.008重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0031】
実施例5
実施例2において、EVOH(A)として、エチレン含有量30モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A1)とエチレン含有量42モル%、ケン化度99.6モル%、MI15g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A2)の混合物(A1/A2の混合重量比が70/30)を用いた以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二カルシウム(D)をそれぞれ0.018重量部(ホウ素換算)、0.008重量部および0.005重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0032】
実施例6
実施例1において、EVOH(A)として、エチレン含有量30モル%、ケン化度99.5モル%、MI20g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A1)とエチレン含有量47モル%、ケン化度97モル%、MI35g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(A2)の混合物(A1/A2の混合重量比が80/20)を用いた以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.029重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.011重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0033】
比較例1
実施例1において、水溶液中のホウ酸(B)量を0.001%とした以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.0005重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.01重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0034】
比較例2
実施例1において、水溶液中のホウ酸(B)量を3%とした以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ1.3重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.01重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0035】
比較例3
実施例1において、水溶液中の酢酸(C)量を1%とした以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.03重量部(ホウ素換算)、0.08重量部および0.01重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0036】
比較例4
実施例1において、水溶液中のリン酸二水素ナトリウム(D)量を0.0005%とした以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.03重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.0003重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
【0037】
比較例5
実施例1において、水溶液中のリン酸二水素ナトリウム(D)量を0.1%とした以外は同様に行って、EVOH(A)100重量部に対して、ホウ酸(B)、酢酸(C)およびリン酸二水素ナトリウム(D)をそれぞれ0.03重量部(ホウ素換算)、0.009重量部および0.08重量部(リン酸根換算)含有するEVOH組成物を得て、同様に評価を行った。
実施例、比較例のそれぞれの評価結果を表1にまとめて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明は、EVOH組成物は、ホウ素化合物、酢酸およびリン酸化合物を特定量含有せしめているため、溶融成形時のロングラン性に優れ、フィッシュアイが少なく、外観性にも優れた成形物が得られ、更には該成形物を積層体として、延伸や深絞りなどの二次加工後も該積層体の層間接着性にも優れ、各種の積層体とすることができ、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用で、特に延伸を伴う二次加工製品等に好適に用いることができる。
Claims (4)
- エチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、ホウ素化合物(B)、酢酸(C)およびリン酸化合物(D)を含有してなり、かつ(B)の含有量がホウ素換算で(A)100重量部に対して0.001〜1重量部、(C)の含有量が(A)100重量部に対して0.05重量部以下、(D)の含有量がリン酸根換算で(A)100重量部に対して0.0005〜0.05重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
- リン酸化合物(D)がリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2記載の樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなることを特徴とする積層体。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3記載の積層体。
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