JP4707783B2 - 水酸基含有熱可塑性樹脂改質用の樹脂組成物およびその使用法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)等の水酸基含有熱可塑性樹脂の改質に用いる樹脂組成物およびその使用法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂は溶融成形されて、各種の用途に用いられており、特に、EVOHはその透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。かかる成形にあたっては、通常溶融成形によりフィルム状やシート状等に成形されるのであるが、このときには該EVOHに対して、滑り性が求められる。すなわち、(1)成形用機械(溶融押出機)内での装置壁面と溶融状態のEVOHとの滑り性、(2)かかる成形時のロールや案内板等の装置とEVOH成形物との滑り性、更には、(3)得られたフィルム状やシート状等の成形物をロール巻にして保存した場合にも成形物同士の滑り性(耐ブロッキング性)が挙げられ、かかる(1)の対策として、本出願人はEVOH溶液に滑剤を添加した後ペレット化することを提案した(特開昭62−106904号公報)。また、(2)や(3)の対策としては、EVOHに無機物微粒子等のアンチブロッキング剤を溶融混合した後に溶融成形することが一般的に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、EVOHに滑剤や無機物粒子を添加すると、上記の滑り性については改善効果は見られるものの、溶融成形時に添加された滑剤や無機物粒子の成形機内での凝集が進行して、やがて異物(目ヤニ)としてダイリップに集積し成形物に付着して排出されてくるため、生産性の低下や得られる成形物の商品価値の低下(ゲルやダイラインの発生)を招くことが判明した。また長時間連続成形を行った場合、得られるフィルムやシート等の成形物に流れ方向の大きなスジ(ダイライン)が発生することも判明した。この現象は、EVOHを用いて積層体を溶融成形する時に起こりやすく、特に該EVOHが直接ダイ壁面と接触するような層構成、すなわち該EVOHの層を最内層や最外層とする積層体において顕著であることも分かった。
近年では、EVOHの表面光沢性、耐摩耗性、非帯電性、香気成分の非吸着性、耐薬品性等の特性を生かすために、積層体の最内層や最外層にEVOH層を配することも多くなり、成形時の目ヤニ発生防止も重要な課題となってきた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて、EVOHの改善に当たり、エチレン含有量が30〜60モル%のEVOH(A)、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンおよびこれら複合体の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物(B)および炭素数8以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の高級脂肪酸類(C)を含有し、かつ(B)及び(C)をそれぞれ(A)に対して0.001〜5重量%含有してなる水酸基含有熱可塑性樹脂改質用の樹脂組成物が有用であり、特に該熱可塑性樹脂が、エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物であるとき本発明の作用効果を顕著に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。本発明の改質用の樹脂組成物に用いられるEVOH(A)としては、エチレン含有量が30〜60モル%であり、ケン化度は特に限定されないが、80モル%以上(更には90モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量やケン化度が上記の範囲外にあるときは、被改質樹脂のEVOHとの相溶性が不良となったり、改質用の樹脂組成物自体の熱安定性が低下して、本発明の効果が得られないことがあり好ましくない。また、EVOH(A)は、メルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)が1〜100g/10分(更には3〜50g/10分)のものが好ましく、該メルトインデックスが該範囲外にあるときは、被改質樹脂のEVOHとの相溶性が不良となり、本発明の効果が得られないことがあり好ましくない。
【0006】
該EVOHは(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0007】
また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、N−アルキル(炭素数1〜18)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0008】
本発明の改質用の樹脂組成物に用いられる酸化物(B)としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンおよびこれらの複合体の中から少なくとも1種以上を選ぶことができる。また、これら酸化物の粒子径は0.1〜10μmが好ましく、更には0.5〜5μmが好ましく、かかる粒子径が0.1μm未満では滑り性の改善効果に乏しく、逆に10μmを越えると成形物中にゲルやフィッシュアイ等が発生して外観不良となって好ましくない。また、上記の酸化物の中では、酸化ケイ素(ケイ酸)や酸化ケイ素−酸化マグネシウム(ケイ酸マグネシウム)を用いることがEVOHとの相溶性の点で好ましい。
【0009】
また、本発明の改質用の樹脂組成物に用いられる高級脂肪酸類(C)としては、炭素数8以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種であり、より具体的には高級脂肪酸としては、炭素数8以上の脂肪酸で、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、カプリン酸、ベヘニン酸、リノール酸等が挙げられ、高級脂肪酸金属塩としては、上記高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩の他、亜鉛金属塩等を挙げることができ、高級脂肪酸エステルとしては、上記高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができ、高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等のビス脂肪酸アミド等を挙げることができる。これらの中でも、ステアリン酸のアルカリ、アルカリ土類・亜鉛金属塩およびオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が好適に用いられる。
【0010】
EVOH(A)に含有される(B)及び(C)成分の含有量は、それぞれ0.001〜5重量%(更には0.01〜5重量%、特に0.05〜1重量%)で有ることが必要で、かかる含有量が0.001重量%未満では、改質効果が得られず、逆に10重量%を超えると、得られる成形物の外観が悪化し、また改質用の樹脂組成物自体の熱安定性が大きく低下し、本発明の目的を達成できない。
【0011】
上記の如き(A)〜(C)を含有する改質用の樹脂組成物を得るに当たっては、特に限定されず、▲1▼(A)の水/アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール等)混合溶液に(B)および(C)を直接或いはその水分散液(0.1〜10重量%程度)を加えて混合した後、(B)および(C)を含有した(A)を凝固浴(水、水/アルコール混合溶媒、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル等)中で析出させて、得られた析出物を乾燥して得る方法、▲2▼(A)の溶液に(B)を直接或いはその水分散液を加えて混合してから凝固浴中で析出させて、得られた析出物を必要に応じて乾燥後、(C)を加えて押出機等で溶融混練する方法、▲3▼(A)の溶液に(C)を直接或いはその水分散液を加えて混合してから凝固浴中で析出させて、得られた析出物を必要に応じて乾燥後(B)を加えて押出機等で溶融混練する方法、▲4▼(A)〜(C)を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法、▲5▼(A)と(B)の混合物および(A)と(C)の混合物を任意の方法により作製した後、その両者を押出機等で溶融混練する方法等を挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには▲1▼の方法が好ましい。
【0012】
かくして本発明の改質用の樹脂組成物が得られるのであるが、かかる樹脂組成物には、更に、必要に応じて、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、無機フィラー((B)を除く)などの添加剤を配合したり、ポリオレフィン類、ポリアミド類などの他樹脂をブレンドすることも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤を添加することもできる。
【0013】
また、EVOH(A)として、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が4モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリヤー性を保持したまま、更に高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性が向上するので有用である。また、酸成分(酢酸、リン酸、ホウ酸等)を添加することも目ヤニの発生抑制効果が更に増す点で好ましい。
【0014】
以下に、本発明の改質用の樹脂組成物の使用法について説明する。かかる樹脂組成物を用いて改良する水酸基含有熱可塑性樹脂としては、上記の如くEVOHが有用で、かかるEVOHとしては、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものを用い、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリヤー性、熱安定性、耐湿性等が低下して好ましくない。
【0015】
また、メルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)が0.5〜100g/10分(更には1〜50g/10分)のものが好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械的強度が不足して好ましくない。さらに該EVOHは、改質用の樹脂組成物に用いられるEVOH(A)と同じでも良く、また異なるEVOHでも良い。前者の場合には両者の相溶性が良好であるため、極めて優れた本発明の改質効果が得られ、後者の場合は本発明の改質効果に加えて、熱延伸成形性の向上という効果が期待でき、特に後者の場合においては、安定した熱延伸成形が可能となり、得られる熱延伸成形物の膜厚が均一になる点で好ましく、かかる場合は、被改質樹脂のEVOHに比べて改質用の樹脂組成物に用いられるEVOH(A)のエチレン含有量は4モル%以上(更には6〜20モル%、特に6〜15モル%)大きくすることが好ましく、かかる差が4モル%未満では、延伸性の改善効果が小さくなって好ましくない。被改質用のEVOHが2種類以上のブレンド物の場合は、その中でエチレン含有量が最小のものとEVOH(A)との差が上記の条件を満足すればよい。また、ケン化度も同様に1モル%以上(更には1.5〜10モル%、特に2〜5モル%)小さくすることが好ましく、かかる差が1モル%未満では、同様に延伸性の改善効果が小さくなって好ましくない。被改質用のEVOHが2種類以上のブレンド物の場合は、上記と同様にその中でケン化度が最大のものとEVOH(A)との差が上記の条件を満足すればよい。
【0016】
本発明の改質用の樹脂組成物を被改質樹脂のEVOHに配合する方法としては、特に限定されず、それぞれをドライブレンドした後に一括して溶融混合する方法、それぞれを溶融状態で溶融混合する方法、どちらか一方を溶融状態にしておいて固体状のもう一方を供給して溶融混合する方法等を挙げることができ、生産上好適には、それぞれをドライブレンドした後に一括して溶融混合する方法が用いられる。かかる溶融混練手段についても特に限定はなく、該改質用の樹脂組成物とEVOHが十分に溶融混練されればよく、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミル等の公知の混練装置を用いることができ、通常は120〜300℃(更には150〜280℃)で、2分〜1時間程度溶融混練することが好ましく、工業的には単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いることが有利であり、揮発成分の脱揮のためにベント付き押出機を用いることも好ましい。
【0017】
被改質樹脂のEVOHに対する、かかる樹脂組成物の配合量は、該樹脂組成物中の(B)や(C)成分の種類や含有量および改質目的によって異なるため一概に言えないが、被改質樹脂のEVOH100重量部に対して0.5〜100重量部(更には1〜75重量部、特には3〜50重量部)が好ましい。
【0018】
本発明の改質用の樹脂組成物が配合されたEVOH組成物は、成形物の用途に多用され、溶融成形等によりペレット、フィルム、シート、ボトル、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することもでき、かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0019】
また、本発明の改質用の樹脂組成物が配合されたEVOH組成物は、単層として用いることもできるし、該EVOH組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層等を積層して積層体として用いることも有用である。特に前述の通り、該EVOH組成物からなる層を最内層や最外層とする積層体を成形する場合、本発明の効果がより認められるので好ましい。該EVOH組成物層を最内層とした場合は、内容物の香気成分の非吸着性や耐薬品性、耐溶剤性に優れ、該EVOH組成物層を最外層とした場合は、包装袋や包装容器としたときの表面光沢性、耐摩耗性、非帯電性に優れるので特に有用である。
【0020】
該積層体を製造するに当たっては、該EVOH組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該EVOH組成物のフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該EVOH組成物を溶融押出する方法、該EVOH組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法等が挙げられ、必要に応じて層間には変性ポリオレフィン系樹脂等の接着性樹脂が介される。更には該EVOH組成物のフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0021】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族および脂肪族ポリケトン、ポリアルコール等が挙げられる。EVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PET、PENが好ましく用いられる。
【0022】
更に、本発明の改質用の樹脂組成物が配合されたEVOH組成物から一旦フィルムやシート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその金属蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0023】
積層体の層構成は、本発明の改質用の樹脂組成物が配合されたEVOH組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、偏心芯鞘型、貼合わせ型、多層貼合わせ型、分割型等公知の複合形態からなる任意の組み合わせが可能である。
【0024】
上記の如く積層体の積層構成については、特に限定されないが、EVOH(組成物)の表面光沢性、耐摩耗性、非帯電性、香気成分の非吸着性、耐薬品性等の特性を生かして、積層体の最内層や最外層に本発明の樹脂組成物層を配することも好ましく、具体的には熱可塑性樹脂層(最外層)/接着性樹脂層/樹脂組成物(最内層)、熱可塑性樹脂層(最外層)/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/樹脂組成物層(最内層)、樹脂組成物層(最外層)/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層(最内層)、樹脂組成物層(最外層)/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層(最内層)、樹脂組成物層(最外層)/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層(最内層)等が好ましい層構成として挙げられる。
【0025】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、更に該積層体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート、延伸ボトル、延伸容器等が得られる。
【0026】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の絞り成形法等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0027】
延伸が終了した後、次いで熱固定を行うことも好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
【0028】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、チューブ、カップ、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
上記の如く得られたフィルム、シート或いはチューブ、袋、ボトル、容器等は食品、飲料、医薬品、工業薬品、農薬、化粧品、洗剤類等各種の包装材料として有用である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
【0030】
実施例1
EVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)]の水/メタノール(水/メタノール=40/60混合重量比)混合溶液(EVOH濃度45%)100部に、無定形シリカ(富士シリシア化学社製『サイリシア310』、二酸化ケイ素主成分、平均粒子径1.4μm)が3%及びエチレンビスステアリン酸アミド(日本油脂社製『アルフローH−50T』)が4.5%分散した分散液10部を加えて40℃で30分間混合撹拌して、無定形シリカ及びエチレンビスステアリン酸アミドを含有のEVOH溶液(EVOH100部に対して無定形シリカ0.67部、及びエチレンビスステアリン酸アミド1.0部含有)を得た。
【0031】
次いで、該溶液を5℃に維持された凝固液(水/メタノール=95/5(重量比)の混合液)槽に内径0.4cm、長さ6.0cmの円筒形のノズルよりストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径5mm、長さ5mmで、含水率50%)を得た。
得られたEVOHペレットを水で洗浄後、下記の方法により乾燥処理を行った。
【0032】
<流動乾燥工程>
上記で得られたEVOHペレットを回分式流動層乾燥器(塔型)を用いて、75℃の窒素ガスを流動させながら、約3時間乾燥を行って含水率20%のEVOHペレットを得た。
尚、流動乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、流動乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は30%であった。
【0033】
<静置乾燥工程>
次いで、流動乾燥処理後のEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、125℃の窒素ガスで、約18時間乾燥を行って含水率0.3%の乾燥EVOHペレット(改質用の樹脂組成物)[EVOH(A)100重量部に対して、無定形シリカを0.67部、及びエチレンビスステアリン酸アミド1.0部含有]を得た。
【0034】
次いで、得られた改質用の樹脂組成物ペレット20部と、EVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)]ペレット80部をドライブレンドして均一に混合してから、上向き3種3層インフレーションフィルム押出成形装置に供給して、EVOH組成物層(最外層)/接着性樹脂層(三菱化学社製『モディックAP M523』)/直鎖状低密度ポリエチレン層(日本ポリケム社製『ノバテックLL UF331』)(最内層)(厚さが30μm/20μm/70μm)の積層体を押出し、これを鉄板製の案内板から第1ピンチロール、第2ピンチロールを経て巻取機にて巻取ってロール状の積層体を得た。尚、(最外層)とは得られる円筒状フィルムの外側(案内板やピンチロールと接触する)の層で、(最内側)とは円筒状フィルムの内側(案内板やピンチロールと非接触)の層のことである。
得られた積層体の滑り性、外観性、目ヤニの発生状況、ダイラインの発生状況を下記の要領で評価した。
【0035】
(滑り性)
上記の積層体製造時の該積層体と案内板との接触の様子及び得られた積層体の表面状態を目視観察して以下の通り評価した。
○ −−− 積層体と案内板との接触は抵抗なく滑り性は良好で、得られた積層体に折りしわも認められなかった
△ −−− 積層体と案内板との接触には若干の抵抗は認められ、得られた積層体にも若干の折りしわが認められた
× −−− 積層体と案内板との接触は抵抗が大きく滑り性は不良で、得られた積層体には多数の折りしわが認められた
【0036】
(外観性)
上記の積層体製造直後の積層体の表面について、直径が0.2mm以上のフィッシュアイの発生状況(発生個数)を目視観察して以下の通り評価した。
○ −−− 発生個数が0〜10個/100cm2
△ −−− 発生個数が11〜50個/100cm2
× −−− 発生個数が51個/100cm2以上
【0037】
(目ヤニ発生状況)
上記の積層体の製造を48時間連続して行った時の積層体の樹脂組成物層側のインフレーションダイリップ部の目ヤニの発生状況を目視観察して、以下のとおり評価した。
○−−− 目ヤニの発生は全く認められなかった
△−−− 目ヤニの発生が若干認められた
×−−− 目ヤニの発生が著しかった
【0038】
(ダイラインの発生状況)
上記の積層体の製造を48時間連続して行った時の積層体の外観(ダイラインの有無)を目視観察して、以下のとおり評価した。
○ −−− ダイラインは全く認められなかった
△ −−− ダイラインが1、2本認められた
× −−− ダイラインが3本以上認められた
【0039】
実施例2
EVOH[エチレン含有量44モル%、ケン化度97モル%、MI30g/10分(210℃、荷重2160g)]の水/メタノール(水/メタノール=20/80混合重量比)混合溶液(EVOH濃度45%)100部にオレイン酸アミド(日本油脂社製「アルフローE−10」)が10%分散した分散液5部を加えて40℃で30分間混合した。さらに該溶液100部に無定形シリカ(富士シリシア化学社製『サイリシア350』、二酸化ケイ素主成分、平均粒子径1.8μm)の6%分散液4部を加えて40℃で30分間混合撹拌して、オレイン酸アミドと無定形シリカ含有のEVOH溶液(EVOH100部に対してオレイン酸アミドが1.1部、無定形シリカが0.53部)を得た。
【0040】
次いで、該溶液を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径4mm、長さ4mmで、含水率50%)を得た。
得られたEVOHペレットを水で洗浄後、下記の方法により乾燥処理を行った。
【0041】
<流動乾燥工程>
上記で得られたEVOHペレットを流動層乾燥器(連続横型多室式)を用いて、75℃の窒素ガスを流動させながら、約3時間乾燥を行って含水率20%のEVOHペレットを得た。
尚、流動乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、流動乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は30%であった。
【0042】
<静置乾燥工程>
次いで、流動乾燥処理後のEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、120℃の窒素ガスで、約24時間乾燥を行って含水率0.2%の乾燥EVOHペレット(改質用の樹脂組成物)[EVOH100重量部に対して、無定形シリカを0.53部、及びオレイン酸アミドを1.1部含有]を得た。
得られた改質用の樹脂組成物ペレット25部と、EVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)]ペレット75部をドライブレンドで均一に混合したものについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0043】
実施例3
EVOH[エチレン含有量40モル%、ケン化度99.0モル%、MI15g/10分(210℃、荷重2160g)]の水/メタノール(水/メタノール=20/80混合重量比)混合溶液(EVOH濃度45%)100部に板状含水ケイ酸マグネシウム(林化成社製『ミセルトン』、二酸化ケイ素−酸化マグネシウム主成分、平均粒子径1.4μm)を5%及びステアリン酸亜鉛を5%分散させた分散液10部を加えて60℃で40分間混合撹拌して、板状含水ケイ酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛含有のEVOH溶液(EVOH100部に対して板状含水ケイ酸マグネシウムが1.1部及びステアリン酸亜鉛が1.1部含有)を得た。
次いで、該溶液を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径4mm、長さ4mmで、含水率50%)を得た。
得られたEVOHペレットを水で洗浄後、下記の方法により乾燥処理を行った。
【0044】
<静置乾燥工程>
得られたEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、70℃の窒素ガスで、約5時間乾燥を行って含水率30%のEVOHペレットを得た。
尚、静置乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、静置乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は20%であった。
【0045】
<流動乾燥工程>
次いで、静置乾燥処理後のEVOHペレットを、回分式流動層乾燥器(塔型)を用いて、120℃の窒素ガスを流動させながら、約18時間乾燥を行って含水率0.2%の乾燥EVOHペレット(改質用の樹脂組成物)[EVOH100重量部に対して、板状含水ケイ酸マグネシウムを1.1部、及びステアリン酸亜鉛を1.1部含有]を得た。
得られた改質用の樹脂組成物ペレット10部と、EVOH[エチレン含有量30モル%、ケン化度99.2モル%、MI6g/10分(210℃、荷重2160g)]ペレット90部をドライブレンドして均一に混合したものについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0046】
実施例4
実施例1において、積層体の層構成を直鎖状低密度ポリエチレン層(最外層)/接着性樹脂層/EVOH組成物層(最内層)(厚さが60μm/20μm/40μm)に変更した以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。但し、EVOH組成物層表面と押出成形装置の案内板とは接触しないため、滑り性の評価は以下の要領で行った。
【0047】
(滑り性)
得られたチューブ状の積層体の両端を切断して、2枚のフィルムに分離して、以下のとおり評価した。
○ −−− 殆ど抵抗なく分離出来て、ブロッキングが全く認められない
△ −−− 若干の抵抗があり、ブロッキングも若干認められる
× −−− 抵抗が大きく、ブロッキングが著しい
【0048】
実施例5
実施例1において、無定形含水ケイ酸アルミニウム(林化成社製『ASP600』、二酸化ケイ素−酸化アルミニウム主成分、平均粒子径0.6μm)の2%及びエチレンビスステアリン酸アミドの4.5%分散液8部を用いた以外は同様に行って、得られたEVOHペレット(改質用の樹脂組成物)[EVOH100重量部に対して、無定形含水ケイ酸アルミニウムを0.36部、及びエチレンビスステアリン酸アミドを0.8部含有]について、実施例1と同様に評価を行った。
【0050】
比較例1
実施例1において、エチレンビスステアリン酸アミドを含有させずに凝固液中にEVOHを押し出した以外は同様に行って、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0051】
比較例2
実施例1において、無定形シリカを含有させずに凝固液中にEVOHを押し出した以外は同様に行って、得られた樹脂組成物について、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の水酸基含有熱可塑性樹脂改質用の樹脂組成物は、特にEVOHの改質に有用で、溶融成形時の成形装置との滑り性や成形物同士の滑り性(耐ブロッキング性)に優れ、また、溶融成形時に目ヤニが発生することなく、更にはダイラインのない外観性に優れた成形物を得ることができ、食品、飲料や医薬品、農薬品、工業薬品、化粧品、洗剤類包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、ボトル、容器等の用途に非常に有用である。
Claims (2)
- エチレン含有量が30〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンおよびこれら複合体の群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物(B)および炭素数8以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の高級脂肪酸類(C)を含有し、かつ(B)及び(C)をそれぞれ(A)に対して0.001〜5重量%含有してなることを特徴とする、エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物改質用の樹脂組成物。
- 請求項1記載の樹脂組成物を、エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物に配合して用いることを特徴とする、エチレン含有量が20〜60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物改質用の樹脂組成物の使用法。
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