JP4114897B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法 - Google Patents

エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)のペレットの製造法に関し、更に詳しくは成形時の滑り性に優れ、かつシートやフィルム等の成形物にしたときの耐ブロッキング性に優れるEVOHペレットの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリヤー性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
【0003】
かかる成形にあたっては、通常溶融成形によりフィルム状やシート状等に成形されるのであるが、このときには該EVOHに対して、滑り性が求められる。すなわち、(1)成形用機械(溶融押出機)内での装置壁面と溶融状態のEVOHとの滑り性、(2)かかる成形時のロールや案内板等の装置とEVOH成形物との滑り性、更には、(3)得られたフィルム状やシート状等の成形物をロール巻にして保存した場合にも成形物同士の滑り性(耐ブロッキング性)が挙げられ、かかる(1)の対策として、本出願人はEVOH溶液に滑剤を添加した後ペレット化することを提案した(特開昭62−10694号公報)。また、(2)(3)の対策としては、EVOHに無機物微粒子等のアンチブロッキング剤を溶融混合した後に溶融成形することが一般的に行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開昭62−10694号公報開示の方法では、溶融成形時の押出機内での樹脂の滑り性は良好であるものの、ダイから出て製膜されてロール等の金属部に接した時の滑り性についてはまだまだ十分とは言い難く、更に成形後のフィルム等の成形物の耐ブロッキング性については考慮されておらず、また無機物を溶融混合する方法は、無機物の分散性が不十分で充分な効果を得ることができないばかりか、得られる成形物には無機物の凝集によるゲルやフィッシュアイ等が発生してしまうことがあり、更には無機物微粒子をEVOHに溶融混合する必要があり、新たにかかる溶融混合工程が不可欠となり、製造工程が繁雑になったりして経済的にも不利となるという問題があるので、溶融成形時の滑り性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れ、かつ外観性にも優れた成形物を得ることができるEVOHペレットの製造法が望まれるところである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、EVOHの溶液に特定量の酸化物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレット化したEVOHが、上記の目的に合致することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
【0007】
本発明に用いられるEVOHとしては、特に限定されないが、エチレン含有量が20〜60モル%(更には25〜55モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリヤー性、溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えると充分なガスバリヤー性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリヤー性、熱安定性、耐湿性等が低下して好ましくない。
【0008】
また、該EVOHのメルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)は、0.1〜100g/10分(更には0.5〜50g/10分)が好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械強度が不足して好ましくない。
【0009】
該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0010】
該EVOHは、少量であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0011】
本発明に用いられる酸化物としては、特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンおよびこれらの複合体等を挙げることができ、これらの中から少なくとも1種以上を選ぶことができる。また、これら酸化物の粒子径は0.1〜10μmが好ましく、更には0.5〜5μmが好ましく、かかる粒子径が0.1μm未満では滑性や耐ブロッキング性の改善効果に乏しく、逆に10μmを越えると成形物中にゲルやフィッシュアイ等が発生して外観不良となって好ましくない。また、上記の酸化物の中では、酸化ケイ素(ケイ酸)や酸化ケイ素−酸化マグネシウム(ケイ酸マグネシウム)を用いることがEVOHとの相溶性の点で好ましい。
【0012】
本発明においては、上記のEVOHに上記の如き酸化物を含有させるにあたり、溶液状態のEVOHに酸化物を含有させた後、ペレット化することを最大の特徴とするもので、かかる方法について詳細に説明する。
【0013】
EVOHを溶液にするにあたっては、EVOHを溶解可能な溶媒に溶解すればよく、その溶媒や方法等については限定されないが、該溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等の溶剤やこれらの溶剤を含有する水溶液(混合溶媒)を挙げることができ、該水溶液の場合には溶剤/水の重量混合比を90/10〜30/70とすることが好ましく、溶液中に含有されるEVOHの量としては、2〜60重量%(更には5〜60重量%、特に10〜55重量%)が好ましく、EVOHの量が2重量%未満では所定量の酸化物をEVOH中に含有させることが困難となり、逆に60重量%を越えると酸化物が分散不良となって好ましくない。また、溶液を調整する方法としては、▲1▼酸化物を含有していないEVOHの粉体やペレット等を溶剤や溶剤/水の混合溶媒中で所定の濃度となるように溶解したり、▲2▼EVOH製造時のケン化処理後のEVOHの溶剤溶液に溶剤、水またはその混合溶媒を適当量添加したり、▲3▼EVOH製造時の析出または析出−水洗後の含水EVOHのペレットを溶剤または溶剤/水の混合溶媒中で所定の濃度と液組成になるように溶解したりする方法を挙げることができ、生産上好適には▲2▼の方法が採用され得る。
【0014】
次いで、上記の如く得られたEVOHの溶液に上記の酸化物を含有させるのであるが、かかる含有については特に限定されず、例えば該溶液に酸化物を直接添加する方法、或いは酸化物を0.1〜10重量%程度の水溶液または水/溶剤混合溶液に分散させた後に添加する方法等を採用することができる。
【0015】
このときのEVOHの溶液中に含有される酸化物の量は、EVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(更には0.005〜0.2重量部が好ましい)となるように調整する。かかる量が0.001重量部未満では所定量の酸化物をEVOHに含有させることが難しく、逆に1重量部を越えると酸化物が分散不良となって好ましくない。また、酸化物を含有させるときのEVOH溶液の温度は、10〜100℃(更には20〜60℃)が好ましく、10℃未満では酸化物が分散不良となり、逆に100℃を越えると溶液の取扱いが難しく生産上不利となる。次に、上記で得られたEVOH溶液をストランド状に押し出してペレット化するのであるが、かかる溶液はそのままでもよいし、該溶液を適宜濃縮あるいは希釈したり、更には水を加えてストランド製造用の溶液を調整することも可能である。この時点で、飽和脂肪族アミド( 例えばステアリン酸アミド等) 、不飽和脂肪酸アミド( 例えばオレイン酸アミド等) 、ビス脂肪酸アミド( 例えばエチレンビスステアリン酸アミド等) 、脂肪酸金属塩( 例えばステアリン酸カルシウム等) 、低分子量ポリオレフィン( 例えば分子量500〜10, 000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等) などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、紫外線吸収剤、着色剤、抗菌剤等を配合しても良い。
【0016】
調整されたEVOHは、次いで凝固液中にストランド状に押し出して析出させるのであるが、EVOH溶液中のEVOHの濃度としては10〜60重量%が好ましく、更に好ましくは15〜50重量%で、該濃度が10重量%未満では、凝固液中での凝固が困難となり、逆に60重量%を越えると得られるペレットの空隙率が低下し、成形時の熱安定性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0017】
次にかかるEVOH溶液を凝固液中にストランド状に押し出して析出させるのであるが、凝固液としては水又は水/アルコール混合溶媒、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル等が用いられるが水又は水/アルコール混合溶媒が好ましい。
【0018】
該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールが用いられるが、好ましくはメタノールが用いられる。
【0019】
EVOH溶液を凝固液と接触させる温度は、−10〜40℃が好ましく、更には0〜20℃である。上記の有機溶媒は該ケン化物の非溶剤出あるので、該ケン化物が凝固液に溶解して樹脂損失を招く心配は殆どないが、なるべく低温での操作が安全である。
【0020】
EVOH溶液は任意の形状を有するノズルにより、上記の如き凝固液中にストランド状に押出されるのであるが、かかるノズルの形状としては、特に限定されないが、円筒形状が好ましく、その長さは1〜100cmが好ましく、更には3〜30cmで、内径は0.1〜10cmが好ましく、更には0.2〜5.0cmである。
【0021】
かくしてノズルよりEVOH(溶液)がストランド状に押し出されるのであるが、ストランドは必ずしも一本である必要はなく、数本〜数百本の間の任意の数で押し出し可能である。
【0022】
次いで、ストランド状に押し出されたEVOHは凝固が充分進んでから切断され、ペレット化されその後水洗される。かかるペレットの形状は、成形時の作業性や取扱い面から円柱状の場合は径が2〜8mm、長さ2〜8mmのもの(更にはそれぞれ2〜5mmのもの)が、又球状の場合は径が2〜8mmのもの(更には2〜5mmのもの)が実用的である。
【0023】
また、水洗条件としては、ペレットを温度10〜60℃の水槽中で水洗する。かかる水洗により、EVOH中のオリゴマーや不純物が除去される。
【0024】
かくして、本発明の製造法により目的とするEVOHペレットが得られるのであるが、通常は、上記のペレット化の後に乾燥工程を経て、EVOHペレットが得られるのである。
【0025】
かかる乾燥方法として、種々の乾燥方法を採用することが可能であるが、本発明では、流動乾燥を行うことが好ましく、更には該流動乾燥の前または後に静置乾燥を行う乾燥方法、即ち、流動乾燥処理後に静置乾燥処理を行う方法又は静置乾燥処理後に流動乾燥処理を行う方法が特に好ましく、かかる乾燥方法について説明する。
【0026】
ここで言う流動乾燥とは、実質的にEVOHペレットが機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる乾燥を意味し、該乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥とは、実質的にEVOHペレットが撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる乾燥を意味し、該乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型サイロ乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
まず、流動乾燥処理後に静置乾燥処理を行う方法について説明する。
【0028】
該流動乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、95℃以下が好ましく、更には40〜90℃が好ましく、該温度が95℃を越えるとEVOHペレットが融着を起こして好ましくない。
【0029】
更に、乾燥器内の加熱ガスの速度は、0.7〜10m/secとすることが好ましく、更には0.7〜5.0m/secで、特に1.0〜3.0m/secが好ましく、かかる速度が0.7m/sec未満ではEVOHペレットの融着が起こりやすく、逆に10m/secを越えるとEVOHペレットの欠け等の発生が起こりやすくなって好ましくない。
【0030】
また、流動乾燥の時間としては、EVOHペレットの処理量にもよるが、通常は5分〜36時間が好ましく、更には10分〜24時間が好ましい。
【0031】
上記の条件でEVOHペレットが流動乾燥処理されるのであるが、該処理後のEVOHペレットの含水率は5.0〜60重量%(更には10〜55重量%)とすることが好ましく、かかる含水率が5.0重量%未満では、静置乾燥処理後の得られるEVOHペレットを溶融成形した場合に吐出変動が起こり易く、逆に60重量%を越えると後の静置乾燥処理時にEVOHペレットの融着が起こりやすくなって好ましくない。
【0032】
また、かかる流動乾燥処理において、該処理前より5.0重量%以上(更には10〜45重量%)含水率を低くすることが好ましく、該含水率の低下が5.0重量%未満の場合にも、後の(静置)乾燥処理時にEVOHペレットの融着が起こりやすくなって好ましくない。
【0033】
上記の如く流動乾燥処理されたEVOHペレットは、次いで静置乾燥処理に供されるのであるが、かかる静置乾燥処理に用いられる加熱ガスも同様に不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられるが、該加熱ガスの温度は75℃以上が好ましく、更には85〜150℃で、該温度が75℃未満では、乾燥時間を極端に長くする必要があり、経済的に不利となって好ましくない。
【0034】
更に乾燥器内のガスの速度は1.0m/sec未満とすることが好ましく、更には0.01〜0.5m/secが好ましく、かかる速度が1m/secを越えるとEVOHペレットを静置状態に保つことが困難となり好ましくない。
【0035】
また、静置乾燥処理の時間もEVOHペレットの処理量により一概に言えないが、通常は10分〜72時間が好ましく、更には1.0〜48時間が好ましい。
【0036】
上記の条件でEVOHペレットが静置乾燥処理されて最終的に乾燥されたEVOHペレットが得られるのであるが、該処理後(最終)のEVOHペレットの含水率は0.001〜2.0重量%(更には0.01〜1.0重量%)になるようするのが好ましく、該含水率が0.001重量%未満では、EVOHペレットのロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に2.0重量%を越えると成形品に発泡が発生しやすくなり好ましくない。
【0037】
次に、静置乾燥処理後に流動乾燥処理を行う方法について説明する。
【0038】
このときの静置乾燥処理時の条件は、上記の静置乾燥処理時の条件と基本的には同じであるが、加熱ガスの温度を100℃以下とすることが好ましく、更には40〜95℃が好ましく、該温度が100℃を越えるとEVOHペレットが融着が起こりやすくなって好ましくない。
【0039】
また、静置乾燥処理の時間としては、EVOHペレットの処理量にもよるが、通常は10分〜48時間が好ましく、更には30分〜36時間が好ましい。
【0040】
該処理後のEVOHペレットの含水率は10〜70重量%(更には15〜60重量%)とすることが好ましく、かかる含水率が10重量%未満では、流動乾燥処理後の得られるEVOHペレットを溶融成形した場合にゲルやフィッシュアイが多発する傾向にあり、逆に70重量%を越えても、得られるEVOHペレットを溶融成形した場合に吐出変動が起こり易いため好ましくない。
【0041】
また、かかる静置乾燥処理において、該処理前より3.0重量%以上(更には5.0〜30重量%)含水率を低くすることが好ましく、該含水率の低下が3.0重量%未満の場合は、後の(流動)乾燥処理時にEVOHペレットの欠け等が発生しやすくなり好ましくない。
【0042】
上記の如く静置乾燥処理されたEVOHペレットは、次いで流動乾燥処理に供されるのであるが、かかる流動乾燥処理の条件も上記の流動乾燥処理時の条件と基本的には同じではあるが、加熱ガスの温度を80℃以上とすることが好ましく、更には95〜150℃が好ましく、該温度が80℃未満では、乾燥時間を極端に長くする必要があり、経済的に不利となって好ましくない。
【0043】
また、流動乾燥処理の時間もEVOHペレットの処理量にもよるが、通常は10分〜48時間が好ましく、更には30分〜24時間が好ましい。
【0044】
かかる流動乾燥処理を経て、上記と同様、最終的に目的とする含水率0.001〜2.0重量%のEVOHペレットが得られるのである。
【0045】
尚、本発明においては、得られるEVOHペレット中の酸化物の含有量は、通常はEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(更には0.005〜0.2重量部が好ましい)になるように調整するかかる含有量が0.001重量部未満では酸化物添加の効果が十分ではなく、逆に1重量部を越えると成形物にゲルやフィッシュアイ等が多発することになって好ましくない。
【0046】
上記の如き本発明の方法により、成形性等に優れたEVOHペレットが得られるわけであるが、かかるEVOHペレットには、更に、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、フィラー、他樹脂などの添加剤を使用することも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
【0047】
また、EVOHとして、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリヤー性を保持したまま、更に高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性が向上するので有用である。
【0048】
かくして得られたEVOHペレットは、溶融成形等により、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)を用いて再び溶融成形に供することもでき、かかる溶融成形方法としては、押出成形法、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0049】
また、本発明で得られたEVOHペレットは、単層として用いることもできるし、EVOHペレットからなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層等を積層して多層積層体として用いることも有用である。
【0050】
該積層体を製造するに当たっては、該EVOHペレットからなる層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該EVOHペレットからなるフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該EVOHペレットを溶融押出する方法、該EVOHペレットと他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたEVOHペレットからなるフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0051】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。他のEVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PETが好ましく用いられる。
【0052】
更に、本発明で得られるEVOHペレットから一旦フィルムやシート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0053】
積層体の層構成は、本発明で得られたEVOHペレットからなる層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0054】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0055】
上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
【0057】
実施例1
EVOH[エチレン含有量35モル%、ケン化度99.5モル%、MI12g/10分(210℃、荷重2160g)]の水/メタノール(水/メタノール=40/60混合重量比)混合溶液(EVOH濃度45%)100部に無定形シリカ(富士シリシア化学社製『サイリシア310』、二酸化ケイ素主成分、平均粒子径1.4μm)の1%分散液5部を加えて40℃で30分間混合撹拌して、無定形シリカ含有のEVOH溶液(EVOH100部に対して無定形シリカ0.11部)を得た。
【0058】
次いで、該溶液を5℃に維持された凝固液(水/メタノール=95/5(重量比)の混合液)槽に内径0.4cm、長さ6.0cmの円筒形のノズルよりストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径5mm、長さ5mmで、含水率50%)を得た。
【0059】
得られたEVOHペレットを下記の方法により乾燥処理を行った。
<流動乾燥工程>
上記で得られたEVOHペレットを回分式流動層乾燥器(塔型)を用いて、75℃の窒素ガスを流動させながら、約3時間乾燥を行って含水率20%のEVOHペレットを得た。
【0060】
尚、流動乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、流動乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は30%であった。
<静置乾燥工程>
次いで、流動乾燥処理後のEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、125℃の窒素ガスで、約18時間乾燥を行って含水率0.3%の乾燥EVOHペレット[EVOH(A)100重量部に対して、無定形シリカを0.11部含有]を得た。
【0061】
次いで、得られたEVOHペレットを上向き単層インフレーションフィルム押出成形装置に供給して、厚さが40μmのEVOHフィルムを押出し、これを鉄板製の案内板から第1ピンチロール、第2ピンチロールを経て巻取機にて巻取ってロール状のEVOHフィルムを得た。得られたEVOHフィルムの滑り性、耐ブロッキング性、外観性を下記の要領で評価した。
(滑り性)
上記のEVOHフィルム製造時のEVOHフィルムと案内板との接触の様子及び得られたEVOHフィルムの表面状態を目視観察して以下の通り評価した。
【0062】
○ −−− EVOHフィルムと案内板との接触は抵抗なく滑り性は良好で、得られたEVOHフィルムに折りしわも認められなかった
△ −−− EVOHフィルムと案内板との接触には若干の抵抗は認められ、得られたEVOHフィルムにも若干の折りしわが認められた
× −−− EVOHフィルムと案内板との接触は抵抗が大きく滑り性は不良で、得られたEVOHフィルムには多数の折りしわが認められた
(耐ブロッキング性)
得られたロール状のEVOHフィルムを20℃、80%RHで24時間放置後に手で該EVOHフィルムを巻き解いて、以下のとおり評価した。
【0063】
○ −−− 殆ど抵抗なく巻き解けて、ブロッキングが全く認められない
△ −−− 若干の抵抗があり、ブロッキングも若干認められる
× −−− 抵抗が大きく、ブロッキングが著しい
(外観性)
上記の製造直後のEVOHフィルムの表面について、直径が0.2mm以上のフィッシュアイの発生状況(発生個数)を目視観察で測定して、以下のとおり評価した。
【0064】
○ −−− 0〜10個/100cm2
△ −−− 11〜50個/100cm2
× −−− 51個/100cm2以上
実施例2
エチレン含有量35モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を50%含むメタノール溶液100部に、該共重合体の酢酸基に対して0.017等量の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液およびメタノール150部を供給してケン化せしめた。次にメタノール100部に対して水50部の割合で混合したメタノール水溶液60部を共沸点過下で供給した。得られたEVOH溶液(樹脂濃度40%)は完全透明な均一溶液で、EVOHの酢酸ビニル成分のケン化度99.8モル%であった。
【0065】
次いで、該EVOH溶液(EVOH濃度40%)100部に無定形シリカ(富士シリシア社製『サイリシア350』、二酸化ケイ素主成分、平均粒子径1.8μm)の1%分散液3部を加えて50℃で30分間混合撹拌して、無定形シリカ含有のEVOH溶液(EVOH100部に対して無定形シリカが0.075部)を得た。
【0066】
次いで、該溶液を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径4mm、長さ4mmで、含水率50%)を得た。
【0067】
該ペレットを温度30℃の水槽中で水洗した後、下記の方法により乾燥処理を行った。
<流動乾燥工程>
上記で得られたEVOHペレットを流動層乾燥器(連続横型多室式)を用いて、75℃の窒素ガスを流動させながら、約3時間乾燥を行って含水率20%のEVOHペレットを得た。
【0068】
尚、流動乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、流動乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は30%であった。
<静置乾燥工程>
次いで、流動乾燥処理後のEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、120℃の窒素ガスで、約24時間乾燥を行って含水率0.2%の乾燥EVOHペレット[EVOH100重量部に対して、無定形シリカを0.075部含有]を得た。
【0069】
得られたEVOHペレットについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0070】
実施例3
EVOH[エチレン含有量40モル%、ケン化度99.0モル%、MI6g/10分(210℃、荷重2160g)]の水/メタノール(水/メタノール=20/80混合重量比)混合溶液(EVOH濃度45%)100部に板状含水ケイ酸マグネシウム(林化成社製『ミセルトン』、二酸化ケイ素−酸化マグネシウム主成分、平均粒子径1.4μm)の2%分散液4.5部を加えて60℃で40分間混合撹拌して、板状含水ケイ酸マグネシウム含有のEVOH溶液(EVOH100部に対して板状含水ケイ酸マグネシウムが0.2部)を得た。
【0071】
次いで、該溶液を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOHペレット(ペレット形状は直径4mm、長さ4mmで、含水率50%)を得た。
【0072】
得られた樹脂組成物を下記の方法により乾燥処理を行った。
<静置乾燥工程>
得られたEVOHペレットを回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、70℃の窒素ガスで、約5時間乾燥を行って含水率30%のEVOHペレットを得た。
【0073】
尚、静置乾燥前のEVOHペレットの含水率は、50%で、静置乾燥前後のEVOHペレットの含水率差は20%であった。
<流動乾燥工程>
次いで、静置乾燥処理後のEVOHペレットを、回分式流動層乾燥器(塔型)を用いて、120℃の窒素ガスを流動させながら、約18時間乾燥を行って含水率0.2%の乾燥EVOHペレット[EVOH100重量部に対して、板状含水ケイ酸マグネシウムを0.2部含有]を得た。
【0074】
得られたEVOHペレットについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0075】
実施例4
実施例1において、溶媒を水/イソプロパノール(=50/50混合重量比)混合溶液にした以外は同様に行って、得られたEVOHペレット[EVOH100重量部に対して、無定形シリカを0.11部含有]について、実施例1と同様に評価を行った。
【0076】
実施例5
実施例1において、無定形含水ケイ酸アルミニウム(林化成社製『ASP600』、二酸化ケイ素−酸化アルミニウム主成分、平均粒子径0.6μm)の1%分散液2部を用いた以外は同様に行って、得られたEVOHペレット[EVOH100重量部に対して、無定形含水ケイ酸アルミニウムを0.044部含有]について、実施例1と同様に評価を行った。
【0077】
比較例1
実施例1において、無定形シリカ分散液に変えてエチレンビスステアリン酸アミドを0.11部添加して、ストランド状に押し出してEVOHペレットを得た以外は同様に行って、得られたEVOHペレットについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0078】
比較例2
実施例1において、EVOHと無定形シリカ0.11部を二軸押出機にて220℃で溶融混練してEVOHペレットを得た以外は同様に行って、得られたEVOHペレットについて、実施例1と同様に評価を行った。
【0079】
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
【0080】
【表1】
Figure 0004114897
【0081】
【発明の効果】
本発明の方法で得られたEVOHペレットは、シートやフィルム等の成形物の製造時において、押出装置のロールや案内板等の金属面との滑り性に優れて、かつ得られる該成形物は、耐ブロッキング性に優れるため、成形物の生産性に優れ、またしわやゲル、フィッシュアイ等のない外観性好な成形物を得ることができ、更に得られた成形物は耐ブロッキング性に優れており、保管性も良好で、各種の積層体とすることができ、食品や医薬品、農薬品、工業薬品包装用のフィルム、シート、チューブ、袋、容器等の用途に非常に有用である。

Claims (5)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の溶液に酸化物をエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100重量部に対して0.001〜1重量部となるように含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレット化することを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法。
  2. 酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンおよびこれら複合体の群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法。
  3. 溶液がメタノール、エタノール、プロパノール、フェノール、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、またはこれらの水溶液であることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法。
  4. エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の溶液中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の含有量が2〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法。
  5. ペレット化した後、得られたペレットを流動乾燥処理することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造法。
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